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フランチェスコ・シオヴァロ/ジェラール・ベシエール(鈴木宣明監修)『ローマ教皇―キリストの代理者・二千年の系譜―』(Francesco Chiovaro / Gerard Bessierre, Urbi et Orbi. Deux mille ans de papaute, Gallimard, 1995)~創文社、1997年~ 原題は、『ウルビ・エト・オルビ(ローマと全世界へ)―教皇権の2000年―』。「ウルビ・エト・オルビ(ローマと全世界へ)」は、降誕祭(クリスマス)と復活祭に発表される教皇からのメッセージです。 本書の構成は次のとおりです。ーーー日本語版監修者序文第1章 ペトロとローマ教皇第2章 ローマの印璽第3章 発展の時代第4章 危機の時代第5章 革命のただなかで第6章 2000年の歴史を超えて資料編―歴史の中の教皇― 1.古代の教皇職 2.教権と帝権 3.ルネサンスと芸術の庇護者としての教皇 4.教皇の不可謬性 5.ヨハネス23世と第2ヴァアチカン公会議 6.教皇と他の宗教 7.ヴァチカンでの生活 8.ヴァチカンの組織図歴代教皇表INDEX出典(図版)参考文献ーーー 初代教皇ペトロから、本書刊行時の教皇ヨハネ=パウロ2世までの主要な教皇たちについて、豊富な図版とともに概略が示されます。 初期教会には、ローマのほか、アンティオキア、アレクサンドリアなどの教会も重要な位置づけがありました。ローマの首位性を、聖書の一節「あなたはペトロ。わたしはこの岩[ペトロ]の上にわたしの教会を建てる」を用いて主張した最初の人物は、ダマスス1世(位366-384)だったそうです。 古代末期から初期中世には、レオ1世(大教皇、位440-461)やグレゴリウス1世(大教皇、位590-604)と、歴代教皇の中で「大」を冠せられる二人の教皇が活躍しました(グレゴリウス大教皇については、以前紹介したピエール・リシェ『大グレゴリウス小伝』を参照)。 第3章では、初期中世から盛期中世までが概観されます。面白いエピソードをいくつかメモしておきます。教皇になったことについて生前から批判があった教皇フォルモスス(位891-896)の死後、彼の後に教皇になったステファヌス6世(位896-897)は、彼の遺骸を掘り起こし、裁判にかけたとか。また、903-1046年までのあいだには、「教皇にふさわしい人格をまったく持ち合わせてはいなかった」ヨハネス12世(位955-964。高校の授業で、不倫相手の旦那に殴り殺されたと聞いた覚えがありますが、根拠に当たれていません)がいたり、教皇の位が金で売られるような事態もあったりと、ひどい時代だったそうです。(「発展の時代」ということで、聖職叙任権闘争や十字軍などで重要な役割を果たした教皇たちも、もちろん紹介されます)。 第4章では、教皇がローマを離れてアヴィニョンに住むようになる時代からが描かれます。この時代、教皇よりも公会議の方に首位性を認めるという考え方も現れてきます。また、ルネサンスの時代には、芸術文化を庇護する教皇もいました。この章で面白かったのは、メディチ家出身のレオ10世(位1513-1521)が、枢機卿の数を31名も増やしたということ。これには、枢機卿の数を増やすことで、枢機卿一人一人の権力を弱めようという意図があったそうです。 第5章、第6章では、フランス革命や二つの世界大戦といった大きな事件や、科学技術のめざましい進展などを経験した教皇たちが、いかに立ち振る舞ったかが描かれます。人によって対応がまちまち(たとえば、科学技術への態度)なのが興味深いです。 最後に、ヨハネ=パウロ2世以降の教皇の名前と在位年などをメモしておきます。・ヨハネ=パウロ2世(第264代教皇、位1978-2005。ポーランド出身)・ベネディクト16世(第265代教皇、位2005-2013。ドイツ出身)・フランシスコ(第266代教皇、位2013-。初のラテンアメリカ出身の教皇)
2014.05.31
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霧舎巧『名探偵はどこにいる』~講談社ノベルス、2009年~『名探偵はもういない』の続編です。 それでは、簡単に内容紹介と感想を。ーーー 今寺啓二は、後動刑事が20年前に携わった事件の再調査にあたることとなった。 殺人をほのめかしていた双子の姉妹は、22年前に島で失踪し、また遺体となって発見された教師を殺害していたのか。だとしたら、それはどちらが手を下したのか。 彼女たちの父親であり、警視庁の重要な役職につく男に脅迫をしてくる男に対して、後動刑事は何を語り、危機を乗り切ったのか。 そしてなぜ今、その事件の再調査が必要となったのか…。ーーー これは面白かったです。 大きな謎は、22~20年前の事件ですが、主人公の今村刑事の級友の死や、妻との思いが物語のなかで絡まっていて、謎解き自体よりも人間模様が楽しめた一冊です(『名探偵はもういない』の記事でも、人間模様にふれていますが…)。 シリーズものでなければ、はじめにつけたタイトルという『鍵のかかる日記帳』というタイトルでも素敵だったと思います。 買ってからしばらく読めていませんでしたが、今回読めて良かったです。
2014.05.24
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ミシェル・パストゥロー(平野隆文訳)『熊の歴史―<百獣の王>にみる西洋精神史―』(Michel Pastoureau, L'Our. Histoire d'un roi dechu, Paris, 2007)~筑摩書房、2014年~ 何度も紹介しているフランスの歴史家、ミシェル・パストゥローの邦訳最新刊です。原著の英訳版(Michel Pastoureau (tr. by George Holoch), The Bear. History of a Fallen King, The Belknap Press of Havard University Press, 2011)については、すでに通読しているので、内容的には読むのは二度目となります。 本書の構成は次のとおりです(章の連番はないのですが、[ ]内に補足しました。原著に章番号がなくても、ふっていた方が見やすい気がします)。ーーー[プロローグ]動物と向かい合う歴史家[第1部] 畏敬される熊―旧石器時代から封建時代まで [第1章] 最初の神? [第2章] 百獣の王 [第3章] 人類の祖先[第2部] 闘いを挑まれた熊―シャルルマーニュからサン・ルイまで [第4章] 野獣より強い聖人 [第5章] 悪魔に引き寄せられる熊 [第6章] ライオンの戴冠式[第3部] 王位を剥奪された熊―中世末から現代まで [第7章] 侮辱された動物 [第8章] 君主の想像、婦人たちの幻想 [第9章] 山から博物館へ[エピローグ] 熊の反撃注訳者あとがき索引/典拠・書誌ーーー 本書が論じている熊の歴史の概要については、英訳版についての記事に譲りますが、あらためて、パストゥローの博覧強記ぶりに驚かされます。英訳版の記事でも似たような感想は書きましたが、旧石器時代の熊崇拝をめぐる研究者たちの熾烈な論争からはじまり、アイヌの熊にまつわる儀礼をはじめとする民族学の知見や、英語、仏語、独語、ラテン語はもちろん、それ以外の言語の文献も注に挙げられているなど、とにかく熊にまつわる膨大な資料が参照されています。 そして、邦訳も見事な訳業です。本文中に割注が豊富に挿入されており、理解の助けになります。そして、パストゥローの文章は原文も読みやすいですが(本書は原著にあたっていませんが)、邦訳もとても読みやすいです。 あえて残念な点をあげれば、本書には多くの図版が掲載されていますが、(パストゥローの)邦訳書にはしばしばあることですがカラーではなく、またせっかく本文中に参照すべき図版番号の案内があるのに、図版がとびとびに掲載されているので、目当てのものを探しにくい、というところがありました。ちなみに英訳版では、カラー図版で、上質紙のページにまとめられています(逆に英訳版では図版番号がないのが欠点)。 それはともあれ、あらためてミシェル・パストゥローの研究の面白さにふれられる一冊でした。
2014.05.17
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関田涙『刹那の魔女の冒険』~講談社ノベルス、2004年~ ヴィッキーシリーズ第3弾にして、3部作の最終刊です。 第1弾『蜜の森の凍える女神』、第2弾『七人の迷える騎士』とシンクロする2つの事件と、作中ヴィッキーシリーズ最新刊発売のイベントで起きた事件の、3つの事件が本書の柱となります。 イベントでの事件(とその後のもろもろ)をメインとするAの読み方、シンクロする2つの事件を描くBの読み方、最初から最後まで全部読む読み方という3つの読み方が、最初に提示されます。最初に読んだときと同じく、全部通して読みました。 冒頭でヴィッキーが言うように、物語の構造自体に複雑な仕掛けがあります。その構造がもたらす一つの効果は面白かったのですが…。 第1巻、第2巻を楽しく読んできた分、ちょっと残念な終わらせ方だと感じてしまいました。 個々の密室トリックは面白かったです。 三部作を続けて再読しましたが、ちょっともやっとしてしまう読後感でした。 青い鳥文庫のシリーズはあまり読めていないので、そちらも楽しみにしていきたいです。
2014.05.10
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池上俊一『お菓子でたどるフランス史』~岩波ジュニア新書、2013年~ ものすごいスピードで著作を刊行されている池上先生の最新刊です。以前紹介した岩波ジュニア新書『パスタでたどるイタリア史』の続編です。 本書の構成は次のとおりです。ーーー序章 お菓子とフランスの深い関係第1章 キリスト教信仰と中世の素朴なお菓子第2章 略取の名手フランス第3章 絶対王政の華麗なるデザート第4章 革命が生んだ綺羅星のごとき菓子職人第5章 ブルジョワの快楽第6章 フランスの現代とお菓子あとがきフランス史年表ーーー 最近読んだ池上俊一『世界の食文化15 イタリア』は、まさにイタリアの食、特にパスタを中心に、イタリア史の背景が描かれていました。『パスタでたどるイタリア史』も、パスタという中心テーマがあって、関連する時代背景が描かれていたように思います。 一方本書は、フランス史の概要を少しふれたのちに、その時代のお菓子の話、その時代の有名人と食やお菓子にまつわるエピソードの紹介、といった構成が多く、前2著と比べると若干物足りない感じがしました。 もっとお菓子の歴史を全面に出しても良かったのでは、という印象でした。 本書のなかで特に面白かったのは、序章のなかの、「受け入れ、同化させる国」という節です。フランス国籍を得るには、長いあいだ「出生地主義」がとられていた(19世紀から「血統主義」と併用)ということ、そうして多様な民族を受け入れる一方で、「ひとたびフランス人になると、移民たちはフランスという国家にいわば忠誠を誓い、国家の基本原理を遵守」しなければならないということ。こうした背景は、イタリアなど他国から入ってきたお菓子の文化をうまく取り入れ、洗練し、フランスの文化として主張していくという流れにつながっていく、という趣旨でした。 その他、18世紀に幾度も経験するイギリスとの戦争は、砂糖をめぐる戦いだった、という指摘も面白かったです。七年戦争(1756-1763)と並行して行われた大西洋上での戦いに敗れたフランスは、アンティル諸島ではなく、カナダを手放すことにしました。それは、その島々で砂糖がとれたから、砂糖の方を優先した、というのですね。 歴史上の有名人の、お菓子についての逸話など、面白い話題も盛りだくさんの一冊です。
2014.05.03
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