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古川日出男『アラビアの夜の種族』~角川文庫、2006年~ 古川さんの本を読むのは、これが初めてです。 文庫版で全3巻。とにかく壮大で、そして途中から物語にぐいぐいと引き込まれました。 簡単な内容紹介(ほぼ意味をなしませんが)をメモしておきます。ーーー ナポレオン軍が攻めてくる少し前―。支配層の一人、イスマイール・ベイの忠実な家臣、アイユーブは、ベイに対して、ある秘策を持ちかける。軍事力ではナポレオン軍に勝つ術はない、しかし、歴史上重大な役割を果たしてきた『災厄の書』を献呈しよう、というのである。 そして夜ごとに、夜の種族による語りは行われ、書記たちは丹念に美しい本を作っていく。 まずは、稀代の妖術師、アーダムの物語…。 そして、3人の主人公たちの物語は次第に交錯していく。ーーー 書物の災厄に巻き込まれるような、くらくらした感覚も味わいながら、とにかく楽しく読み進めました。
2014.10.25
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二階堂黎人『悪霊の館』~立風書房、1996年~ 二階堂蘭子シリーズの長編です。ノベルス版で670頁という分厚い1冊となっています。 それでは、簡単に内容紹介と感想を。ーーー 昭和43年(1968年)8月。 二階堂家とも縁のある志摩沼一族の暮らす館は、本来の名の「アロー館」をもじって悪霊館と呼ばれていた。多くの甲冑が陳列されたギャラリー、数々の転落死、そして幽霊の噂など、近所の人々も気味悪がるその館で、奇怪な殺人事件が起こる。 きっかけは、ある老婆の残した遺言による、遺産をめぐる一族の対立だった。もとより、本家と2つの分家は互いに憎しみあっていたが、奇妙な遺言が発表されてから、緊張はさらに増していく。 そんな中、密室状況の中で、首や手足の指が切断された女性の死体が発見されるという報告が二階堂蘭子たちにもたらされた。現場には、4つの甲冑が置かれ、さらには死体のまわりには無数の本が積み上げられ、さらに死体の下には五芒星が描かれていた…。 一族の長の非協力的な態度に悩まされながらも調査を進める蘭子たちだが、さらに犯人の凶行は繰り返される。ーーー 10年以上ぶりくらいの再読ですが、楽しく読むことができました。 これでもかというくらい凝った密室、幽霊の目撃談など、興味をそそる謎が豊富で、それぞれに現実的な答えが示されていく過程はミステリの醍醐味ですね。そして、意外な犯人にも驚きました。 立て続けに二階堂さんの作品を読んできて、なんとなく登場人物たちの会話にも慣れてきたのか、そんなに違和感なく、楽しめました。
2014.10.18
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小田内隆『異端者たちの中世ヨーロッパ』~NHKブックス、2010年~ 中世の代表的な異端運動について、聖書にさかのぼるその起源から、権力をめぐる問題をもあわせて論じた興味深い一冊です。 著者の小田内先生は立命館大学教授で、西洋中世の異端運動について多くの論文を発表されています。 本書の構成は次のとおりです。ーーー関連年表序章 異端からのまなざし第1章 正統と異端の地平 1 「異端」―一つの言葉の誕生 2 中世異端史の舞台の成立第2章 「身体」をめぐる抗争―カタリ派二元論 1 カタリ派の出現 2 「身体」をめぐる抗争 3 カタリ派の運命第3章 「言葉」をめぐる抗争―ワルド派 1 リヨンからヴェローナへ―「不服従の異端」への道 2 神の言葉の支配をめぐって―俗人説教の問題 3 キリスト教世界の周辺で第4章 「富と権力」をめぐる抗争―フランチェスコ会聖霊派とベガン 1 フランチェスコ会の清貧論争 2 異端ベガンの誕生 3 殉教への道第5章 キリストのための戦い 1 「不服従の異端」の地平 2 「悪魔の陰謀」としての異端 3 新しい権力の形象終章 権力の歴史へ参考文献図版出典図書一覧あとがきーーー 極端な二元論を唱えたカタリ派、俗人でありながら説教活動を展開したワルド派、清貧を理想とするフランチェスコ会の中で極端な清貧を唱えたフランチェスコ会聖霊派―これら3つの、中世西欧の代表的な異端運動を主要な柱として(そしてそれぞれを、身体、言葉、富と権力というキーワードで示し)、第1章でその前史と概念的な枠組みを論じ、終章では異端問題を権力関係というより広い視野で捉え直すという、構成もわかりやすい一冊となっています。 特に面白かった点をいくつかメモしておきます。 まず、もともとは異端は教義をめぐる問題だったのが、次第に正統派の権力に対する「不服従」の問題となっていく、ということです。 そして、俗人説教の問題。本来は、説教を行うことは、聖職者に限定された職能でした。ところが、11-12世紀頃から、聖職者腐敗の改革が教会で行われたのと並行して、俗人たちが自分たちで説教を行おうとする動きが出てきます。ペトルス・カントルという神学者は、こうした俗人たちによる説教に一定の理解を示しました。しかし、それはけしからんという立場の聖職者たちも多く、いったんワルド派は異端宣告を受けます。その後、ワルド派の一部は、正統教会にうまく取り込まれていくことになります。 面白いのは、彼らは異端宣告を受けますが、自分たちは社会をよくしようと思っていた、ということ。具体的には、大きな脅威とされたカタリ派を食い止めるために説教活動を行うこともありました。権力者の微妙なさじ加減で、異端にもなれば正統にもなれるという、これは面白い実例だと思います(堀米庸三『正統と異端』でも、ワルド派やフランチェスコに対する教会の立場を読みながら感じたことですが)。 本書の第3章や第5章はまさに自身の関心事ですし、今後もじっくり読んでいきたい一冊です。
2014.10.11
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二階堂黎人『聖アウスラ修道院の惨劇』~講談社文庫、1996年~ 二階堂蘭子シリーズの長編です。 それでは、簡単に内容紹介と感想を。ーーー 野尻湖畔に位置する聖アウスラ修道院で、密室状態の塔の一室から生徒が墜落死した。何者かに、刃物で切られていたという。さらに、近くの木には、首を斬られた男の全裸の死体がさかさまに吊されていた。 昭和44年(1969年)6月。 異常な事件を受け、二階堂蘭子は聖アウスラ修道院の修道女から調査を依頼される。また、聖アウスラ修道院の卒業生である友人からは、被害者の生徒と関係があるという謎の暗号文も送られていた。 事件の直前に失踪した生徒がいることや、前任の院長が死亡したという情報が得られていく。不可解な謎が深まるなか、被害者はさらに増えていき…。ーーー 解説を書かれている大森望さんも言われていることですが、謎解きでの論理性の重視にはあまり重点が置かれていない印象でした。ただ、猟奇的な事件の裏にある数々の謎は魅力的ですし、アウスラ修道院の秘密も面白かったです。 今回は、蘭子さんのキャラクターにあまりとっつきにくさを感じずに読むことができて良かったです。
2014.10.04
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