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少し毛色の変わった猫探偵正太郎ものです。猫の習性が、猫目線で書かれるところは、本当に正太郎が話しているようです。作者さん、前世は猫だったのかと思うくらい。人間と猫とでは歩いていて興味をひかれる対象がだいぶ違うので、同居人と散歩しているとリードを嚼み切ってトンズラしてやろうと思う瞬間もたまにないではなかった。真顔の猫が言っているようで笑えます。 森を散歩していた正太郎は、美しい脚の彼女に会います。久しぶりのときめき。恋をしたかも。 同居人の桜川が、推理作家の三谷を訪ねるのに同行した正太郎。三谷は施設にいましたが、御子柴という老婦人が、管理人室の出入りチェックをくぐって何度か無断外出してしまった謎を提示します。 あの人が御子柴さんと示されたほうには、美しい脚の彼女が…。 去勢猫の正太郎の恋愛観は少し切ない。が、賢くたくましい正太郎です。 滋賀で出会った灰色猫も、神奈川に移って知り合ったアンコとキナコの姉妹猫も、個性があって魅力的です。 同居人(人間側は飼い主と思っている)の桜川ひとみは、普段はちゃらんぽらんですが、言うべき事はきちんと伝えられる人です。それぞれの登場人物と登場動物の設定に引きつけられるお話。 書かれる視点の交錯がトリッキーですが、トリックはブラウン神父などの系統をくむ本格派です。 引用および参照元:柴田よしき『猫は毒殺に関与しない』光文社 から『正太郎恋をする』
August 31, 2020
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宝石店の営業マン水沢は、高校時代の友人加藤の注文した、猫目石のカフスを届けに加藤の自宅へ行きました。 折しもパーティーが開かれていて、ミュージシャンやマジシャンたちが集まっていました。「百足!」という騒ぎになり、百足はおもちゃだった事がわかりますが、騒ぎの間に猫目石が消えてしまいました。 部屋中探しても身体検査までしてもみつからないのですが、どこへ? 謎を解くのは『三番館』のバーテン。消えた猫目石の秘密はなるほどと思わせられます。 フェアな著述、きちんとしたプロットはさすが。トリックは全く違いますが、クリスティーにもこんな短編があったような記憶が。 現代的な面白みには欠けるかもしれませんが、きちんとした本格推理小説は安心して読めます。 参照元:鮎川哲也『ブロンズの使者』創元推理文庫
August 30, 2020
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私に年の離れた妹が生まれ、初めて一家で祖母を訪ねたとき、祖母は妹にだけ小さなポチ袋を渡しました。 なぜ妹だけ?と問う私に祖母は「あれはの、みちしるべ。孫が初めてうちに来たとき、また遊びに来るように願いをこめて渡すんだの。」と答えるのでした。 体調を崩した母を手伝いに来てくれた祖母は庭で大けがをしてしまいます。まっ青な顔の妹。… 亡くなった祖母の墓を訪ねると、はんみょうが道案内をするように飛んでいました。はんみょうは別名「道教え」という名。 ミステリーの要素はありますが、本格推理小説ではありません。気丈で意思のはっきりした祖母が、ずっと会わない孫に示した愛情と、その温かさを心に刻む孫の、悲しくてハートフルなお話です。 自分をはっきり持ったおばあちゃんの生き方は、実にかっこいいのです。そして、その生き方は孫の私に道しるべとして示されたのです。 参照元:『零時の犯罪予報』講談社文庫 から 薄井ゆうじ『みちしるべ』
August 29, 2020
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「イクラ」の語源はロシア語で、魚・両生類一般の卵を指す言葉でした。房状の「筋子」を一粒づつほぐしたものが「イクラ」です。 イクラを題材にした歌をみつけました。舌の上のイクラの粒をつらぬきてわが犬歯ある位置を意識す生るべき稚魚のいくつをかなしめば眼ふとつむりイクラを噛みき重々しき油となりて歯にまとふイクラ幾粒は稚魚の葬り 富小路禎子氏の歌集『未明のしらべ』から。実感としてよくわかる歌です。犬歯でかみしめる、噛んだイクラの皮膜が破れて油質の液体が出てくることは現実そのもの。 そこから先が詩人、歌人の捉え方になります。 食べることは、人間以外の存在の命をいただくこと。生まれるべき前の生命をさえいただいて、私たちは生きます。他者によって生かされる存在の私たち。命は悲しく愛おしい。 歌道の家柄、富小路家は、藤原氏の末裔にして子爵の家柄でしたが、戦後は禎子氏自ら〝斜陽族〟というような状況でした。 禎子氏は都会風景とそこから触発される心情を歌にしました。 引用および参照元:『現代歌集大全 第十三巻』筑摩書房
August 28, 2020
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あずまやに一人でいたドルース老人が刺殺されました。秘書が庭全体を見渡せる場所で庭の手入れをしていて、娘のジャネットも母屋のテラスからその様子を見ていたにもかかわらず犯人は不明です。 ドルース老の殺された時刻に、犬のノックスは、吠え声とも鳴き声ともつかぬ声を上げていました。 ドルース老の館に招かれていたファインズ青年が語った内容から、ブラウン神父が謎を解きます。安楽椅子探偵的な一作。 「犬のお告げでしょうか」と話すファインズに神父は反論します。「犬を犬として、正しく犬を観察したなら、あんたにも真実がわかったはずですな。」 みつからなかった凶器の隠し方が新鮮です。 状況がわかれば、ノックスにしたらあんな声を出さざるを得なかったことも理解できます。 神秘を語る人々に対して、神父が徹底的に合理的・現実的に反論するのが「ブラウン神父」シリーズの面白いところです。 参照元:G・K・チェスタトン 中村保男・訳『ブラウン神父の不信』創元推理文庫
August 27, 2020
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土近く朝顔咲くや今朝の秋 高浜虚子朝顔の老いゆく花のつぎつぎに小さくなりて至る秋冷 筏井嘉一 朝顔は秋の季語。夏が終わっても花をつけますが、さすがに小さくなってきます。土近く咲くのも盛りを過ぎた花です。老いゆく花の姿は、自分に重なって寂しくなります。露草も露の力の花開く 飯田龍太露草も秋の季語。小さなものひとつひとつが、かけがえのない存在、ちょっと元気をもらえる一句です。 参照元:山本健吉・編著『句歌歳時記 秋』新潮文庫
August 26, 2020
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「なんだこりゃあ」 退役警察官の大道寺は、まぬけな犯罪をまとめて出版し、まあまあの売れ行きを得ていました。彼の元に突然送られてきたのは、推理作家を目指す神田という男の『完全犯罪』なる短編。不備を指摘して欲しいという依頼です。 評論家の畠の紹介とあって断れず、大道寺は原稿を読んで疑問点を書いて送りました。しかし、やりとりは1回だけと思ったのに、次々に改稿された文が送られてきて…。 読みながら「なんだこりゃあ」と言いたくなりますが、最後はキレキレで終わります。サスペンス風で、ユーモアもある若竹氏らしいミステリー。 作中で大道寺が本の中に書いたという、警察署の駐車場で車上荒らしを働いた男とか、息苦しさの余り、監視カメラの正面で目出し帽を脱いでしまった強盗なんてまぬけな犯罪者には笑ってしまいます。 反面、大道寺が原稿を読んで指摘した犯罪の矛盾点は、本格的です。大道寺の最後の一言が効いています。 引用および参照元:『零時の犯罪予報』から 若竹七海『殺しても死なない』講談社文庫
August 25, 2020
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捕鯨船北海丸が沈没してから1年、死んだはずの砲手の小森安吉が、妻の元に現れます。子どもを連れて逃げようと言う安吉。 ですが、妻が子どもを連れて来る間に、安吉は殺されてしまいました。「釧路丸」という言葉を遺して。 釧路丸は、北海丸と同じ会社の持ち船ですが…。 執筆当時の捕鯨事情が解説されていて、初めて殺人の動機がわかります。船の消失トリックは、今読んでも面白いと思います。いつの時代でも悪いことを考えるやつはいるもんです。子鯨を獲り、子を連れた親を狙うなんて言語道断です。 現代、捕鯨には反対の声高く、鯨肉を口にすることもなくなりました。昔は給食の友だったのですが。鯨は肉だけでなく、体全体が無駄なくいろいろな用途に使われてきました。骨や皮から石鹸やゼラチンがとれ、ヒゲは文楽人形のばねになるという具合でした。 捕鯨は、昭和の昔の物語になりつつあるのかと思いながら読みました。 参照元:大阪圭吉『銀座幽霊』から『動かぬ鯨群』創元推理文庫
August 24, 2020
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テヴネ老夫人は、仲違いしていた実の娘に財産を遺すように遺言状を書き換えました。が、サインしたはずの遺言状は一夜のうちに消えてしまいます。 しかも老婦人は卒中の発作を起こして、両目と唇を少し動かせるだけの状態です。必死に視線を送る先は、玩具のうさぎと寒暖計。 パリから訪ねてきたアルマンは、酒場で会ったサディアス・パーリーという男に謎を解いてもらいます。その男とは…。 ディクスン・カーの短編です。アルマンの話だけから、遺言状の行方を推理するパーリーは「あまりにも平凡、自明なので見逃してしまうのだ」と言います。 物を隠すときは、かえって何でもない物のようにカモフラージュして、人の目につきそうなところに置いておくものだということです。ホームズものでもブラウン神父ものでも語られる原則です。 最後の仕掛けにも、やられました。 参照元:ディクスン・カー 宇野利泰・訳『パリから来た紳士』創元推理文庫
August 23, 2020
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あの夏の数かぎりなきそしてまたたつた一つの表情をせよ 小野茂樹君と過ごした夏の日。思い出は数々あって、泣いたり笑ったり驚いたり…お茶目だったり真剣だったり…様々な君の顔が心に残っている。そして、それは唯一の存在に凝縮される、唯一の君へ。 若さには夏がよく似合います。まぶしい一首です。 作者は早稲田短歌会を経て「地中海」会員になり、また編集者としても活躍しました。残念なことに、不慮の事故で三〇代半ばにして亡くなりました。 こんな歌もあります。五線紙にのりさうだなと聞いてゐる遠い電話に弾むきみの声 参照元:東直子ほか編著『短歌タイムカプセル』書肆侃侃書房
August 22, 2020
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ミカサ計量の会長が亡くなり、長男・二男・長女と、亡くなった二女の子(孫)が遺産を相続することになりました。公正な内容で、ただ一点を除けばスムーズに事は進むかのように見えました。 16歳の孫に「私の愛したスッパイものを遺す」という一文だけが理解不可能だったのです。梅干し?レモン?会長は二女の結婚に反対で、孫の敬吾が生まれてからもほとんど交流がなかったのですが、スッパイものとは…? 連作短編集『桜さがし』の続編で、弁護士になった歌義が主人公です。4人の恋愛が絡み合ったミステリーの前作より幅が狭まった感はあります。その分、弁護士の使命ということを考えさせてくれる一冊でした。 弁護士が活躍するミステリーとなれば、いわれなき濡れ衣をかけられた無実の人を救うとか、虐げられた弱い者の味方をするというストーリーになります。でなければ、悪徳弁護士として敵役のように登場するかでしょう。ですが、柴田よしき氏は言います。弁護士は単純な正義の味方であってはならない。時として悪人の味方をし、世間から憎まれ軽蔑される。当たり前のことですが、職務という事を考えさせられました。 謎を解いたのは、事務の紗理奈。歌義はまだまだでした。「スッパイもの」にこめられた会長の思いには、ほろりとさせられます。 引用および参照元:柴田よしき『流星さがし』光文社
August 21, 2020
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オルヅォはイタリアの大麦茶です。これはルピシアのオルヅォ・ショコラータ。チョコレートの甘い香りがします。ストレートでもいいのですが、ミルクにとても合います。水出しで入れて甘みをつけたら、塩みのお菓子と。夏バテ防止!こちらは、源氏物語に因んだあられ。夏のあられを「びいどろ」と。「びいどろ」はルピシアの地域限定茶。紅茶に色とりどりの金平糖が散らされて、楽しいびいどろのイメージです。ゼリーを入れたアイスティーも楽しめます。上は青リンゴゼリーの入ったアップルティー、下は西瓜ゼリー入りのトロピカル紅茶です。ルピシアで買ったベリーのサブレにはピーチ&ローズヒップティー。角形のサブレは、3ナッツのココナツサブレです。琉球トロピカルも地域限定茶。マンゴーとパイナップルの香りが夏らしい紅茶です。メープルシロップのクリームをサンドした、メープルクッキーと。巨峰の緑茶とブルーベリーサンドのソフトクッキー。水出しのお茶は苦みがなく飲みやすいのが特徴です。
August 20, 2020
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『マーキュリーの靴』も「雪の上の足跡」トリックを使っています。 都会で5㎝ほどの積雪があった朝、編集者の戸山は作家の今井とも江を訪ねました。 今井の家は、高層ビルの屋上に建つ一戸建て、おしゃれなペントハウスでした。屋上の出口から、今井宅の玄関まで、雪の上には彼女の足跡しか残っていませんでした。戸山が訪ねたとき今井は既に死んでいました。 自殺?と思われたのですが… ローマ神話のマーキュリー(ギリシャ神話ではヘルメス)は、ゼウスの密命を果たす忠実な部下で、空を飛ぶことのできる金のサンダルを履いていたと伝えられます。また、泥棒・嘘つきの才能を持たされたと。 鮎川哲也の生んだ探偵は、鬼貫警部が有名ですが、短編集『ブロンズの使者』の探偵役は、バー「三番館」のバーテンです。 弁護士に事件の調査を依頼された私立探偵が、困るとバーテンダー相手に事件の概要を語り、バーテンが解決の糸口を示してくれる筋立て。私立探偵の実地捜査が加わった安楽椅子探偵ものといったところです。 この話では、バーテンは犯人に電話をかけ、カーの『白い僧院の殺人』や大阪圭吉の『寒の夜晴れ』などを挙げてよく読んでいらっしゃるのですね…と、トリックを見破ったことを伝えます。 読後に、なるほど『マーキュリーの靴』はぴったりの題名だと納得できます。 参照元:鮎川哲也『ブロンズの使者』から『マーキュリーの靴』創元推理文庫
August 19, 2020
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8月18日は小林製薬の制定で「糸ようじ」の日です。8(歯)と8(歯)の間に1(糸)が通っているように見えるところからの日付の語呂合わせです。 歯科でお世話になるデンタルフロスと日本人にはおなじみの爪楊枝を組み合わせて、使いやすい「糸ようじ」を考案、発売したのが小林製薬でした。 「糸ようじ」は登録商標です。他社製品には「糸つきようじ」「フロス&ピック」などと名前がついていました。 小さい頃は、外食時など爪楊枝を使う両親を不思議に思っていましたが、今は事情がよくわかります。年齢を重ねると歯の隙間が空いてきて、食事後の「糸ようじ」が欠かせなくなります。 のび太君、30代中盤も歯科医から、夕食後は糸ようじ使用を厳命されています。恐怖心が強くて、自分ではなかなか入れられません。初心者向けの持ちやすい糸ようじで練習中です。持ち手が丸く安全なピック
August 18, 2020
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星はすばる。ひこぼし。夕づつ。よばひ星、すこしをかし。尾だになからましかば、まいて。枕草子第二百三十九段です。 「すばる」(昴)は、外来語のような響きがありますが、枕草子の時代から使われた純然たる日本語です。今のプレヤデス星団のことです。 「すばる」は「統べた状態になる」=一つにまとまることで、星団が数個の星の集合に見えたここから。プレヤデス星団は、牡牛座の中にある肉眼で6個に見える星。 「ひこぼし」は牽牛星。「夕づつ」は金星のこと。明星・赤星とも言いました。「よばひ星」は流星です。「よばひ」は、夜男性が女性の寝所に忍んでやってくることで、名前がちょっと面白いと述べます。しっぽがなければもっといいのにと言う感想。尻尾があるのは彗星で、流星と混同されているようです。 柄があるのは…ヘイ、え、がら 古くから日本人にも親しまれたのが北斗七星です。「七つ星」「四三の星」「柄杓(ヒシャク)星」「カギ星」といろいろな和名を持ちます。 「カギ星」は佐渡の言葉で、囲炉裏の自在鉤に形が似ることからだそうです。 形が覚えやすいことから、北斗七星は世界中で人気があり、様々な神話を生んでいます。 参照元:金田一春彦『ことばの歳時記』新潮文庫
August 17, 2020
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昭和10年代、古き懐かしき時代(私でさえ生まれていませんが)の真面目な本格推理小説です。 北国のある市でのこと。クリスマスイブの日は、夕方の雪が8時になるとピタリと止んで、「寒の夜晴れ」といわれる天気になりました。 教師の浅見宅を訪ねた生徒の三木は、戸締まりがしていないのに、ひと気がないのを不審に思って、教師仲間の私の家に駆け込んできました。 浅見宅に駆けつけた私は、浅見の奥さんと従弟の死体を発見します。折から浅見は出張中でした。子どもの姿は見当たりません。 私は犯人のものらしきスキーの跡をたどりますが、原っぱの真ん中で消えていました…。 「雪の上の足跡」ものです。大阪圭吉氏は現代では名前を聞きませんが、正統派の推理作家であり、作品には論理的な破綻がありません。現代的なセンセーショナルな作品ではないので、やや物足りない感はありますが、端正な感じを受けます。 プロット、トリックの模範として後世に残る作品です。 参照元:大阪圭吉『銀座幽霊』から『寒の夜晴れ』創元推理文庫
August 16, 2020
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国難に殉じけりと慰むれ親には子なり天皇の兵一穴(いっけつ)に五遺体を埋め番号を記して墓とす犬猫ならぬを死にし子の年を数ふる愚かさをしばしばもしぬ愚かなり親は「イルクーツクの墓には息子茂二郎が眠る」とあります。窪田空穂の歌。名前ではなく番号をつけられた墓に、愛する息子は葬られたのでした。犬・猫であっても葬儀をあげてもらい、りっぱな墓石の下に眠るのに。 戦争とは、人が人でなくなること。 参照元:大岡信・編『窪田空穂歌集』岩波文庫
August 15, 2020
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ジョン・ディクスン・カーの短編『空中の足跡』も、雪の上についた足跡への疑問が主題になります。 ドロシー・ブラントは、父親と従兄弟のハリーと共にスケートを楽しもうと、山荘にやってきました。隣の別荘でトパム夫人が亡き母のアクセサリーをつけているのを見て激しい口論になってしまいました。その夜、トパム夫人は別荘で殺され、疑いはドロシーにかかります。 山荘から隣の別荘まで続く足跡は、サイズの小さいドロシーの靴のものでした。 謎を解くのはマーチ大佐です。マーチ大佐は警視庁の不可能犯罪捜査課長。まずもって明白な事実に目をつけること。あとは神様が解決してくださる! 足跡トリックの解明にはちょっとした発想の転換が必要です。日本のミステリーでも、このトリックをどこかで読んだ気がします。 引用および参照元:ディクスン・カー 宇野利泰・訳『不可能犯罪捜査課』創元推理文庫
August 14, 2020
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ブラウン神父が「雪上の足跡」の謎を解く話。足跡ミステリーの基本として有名な作品です。 財産家の老エールマーには3人の息子と1人の養子ジョン・ストレークがありました。老人はストレークに全財産を譲ると遺言して亡くなりました。3人の息子は、ストレークが老人を惑わせて遺言させたと無効を申し立て、受理されました。無一文で放り出されたストレークは、3人の息子を呪って復讐を誓います。 2人の兄は、自殺と事故に見える状況で亡くなり、おびえた三男のアーノルドは警察に助けを求めます。 様子を見に来たブラウン神父。銃声がして、アーノルドの「ストレークを仕留めたぞ」の声。 中庭の真ん中にストレークの死体がありましたが、雪の周囲は真っ白で足跡がひとつもありません。彼は一体どこから現れたのでしょう? ブラウン神父が訪ねてきてから雪が降り始めます。ドアを透かして見る外界は日光の消極的な白さだけではなく、雪の積極的な白さになっていました。 印象的な描写です。 ブラウン神父は、窓から差し込む光の加減やちょっとした行動から、疑問を抱き謎を解いていきます。神父の鋭い観察眼が光る作品です。色と光の描写が優れた作品でもあります。 引用および参照元:G・K・チェスタトン『ブラウン神父の不信』創元推理文庫
August 13, 2020
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モーリス・ルブランといえばアルセーヌ・ルパン。ルパンは怪盗の代名詞のような存在です。昔ルパンの冒険に心躍らせた思い出があります。 ルパン=盗むというイメージなのですが、実は彼は名探偵でもありました。その探偵ぶりが詰まった連作短編が『八点鐘』です。 八点鐘は8時の鐘。レニーヌ公爵がオルタンス若夫人に、今後三ヶ月間一緒に七つの冒険をして、8回目に彼女が盗まれた古いコサージュの留め金を取り返しましょうと約束する話です。古城の夜8時の鐘が鳴るまでに。 『八点鐘』の中に『雪の上の足跡』という短編があります。今では様々なバリエーションがある“雪の上の足跡”の謎の原型ともいえる謎が提示されています。 ラ・ロンシエールの従姉の家に来たオルタンスは、井戸屋敷と呼ばれるゴルヌ邸に住む、乱暴な夫と気品ある妻を見かけます。夫は、最近現れた美貌の騎士が妻にぞっこんらしいのが気に入りません。 ある日井戸屋敷で三発の銃声が聞こえ、敷地内には格闘の跡がありました。邸内は空っぽで、雪の上の足跡は、往復違う靴跡1人分だけでした。 屋敷に入るゴルヌの足跡と、帰る騎士の足跡。状況からは、騎士が雪が降る前から邸内にいて、帰ってきたゴルヌと乱闘になり、ゴルヌを井戸に突き落とし、妻をさらって逃げたと思われました。しかし、レニーヌ公爵は…。 前書きで断言はされていませんが、レニーヌ公爵はおそらくルパンとあります。『八点鐘』のルパンは盗みません。いえ、盗むのはオルタンス若夫人の♡だけというところでしょうか。 この1冊の中に、足跡トリックから、科学的トリック、密室殺人、遠距離殺人、盗んだ物の意外な隠し場所とミステリーの原型がぎっしり詰まっています。 どこかで聞いたトリックだと思われるのは、後に続く作家たちがこぞってバリエーションを書いたためで、ルーツはルブランにあります。 参照元:モーリス・ルブラン 堀口大學・訳『八点鐘』新潮文庫
August 12, 2020
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8月11日は「きのこの山」の日です。(ライバル「たけのこの里」の日は3月10日だそうです。)きのこの形からの語呂合わせでこの日に。「きのこの山」は試作から発売まで5年かかっています。発売当時は板チョコ・チョコバーの全盛期で、チョコスナックの発売には賛否両論あったそうですが、今では「きのこ・たけのこ」はすっかりおやつの定番になりました。現在は東京パラリンピックバージョンのパッケージです。季節限定、地域限定のきのこもいろいろ。 きのこ党・たけのこ党どちらもありですが、サクッとしたクラッカーの軸が好きなので、私はきのこ党です。
August 11, 2020
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毎月10日はコッペパンの日です。「コッペパン」は、フランスのクッペやアメリカのホットドッグバンズに似た形ですが、生粋の日本生まれです。大正時代に日本で初めてイーストによる製パンを開発した田辺玄平氏の考案です。 私たちの世代にとっては、コッペパンといえば給食。プレーンなパンにマーガリンやジャムがついたり、時にきなこをまぶした揚げパンになって出てきました。 昔は学校を休むと、わら半紙に包んだパンを近所の同級生が届けてくれたものです。武蔵新城の「ミュールミュラン」のコッペパン。 久しぶりに、素朴な懐かしい味に出会いました。ここのパン屋さんではリクエストすればジャムやクリームを挟んでくれます。 具を挟むとき、東日本では「腹割り」(上下に開く)、西日本では「背割り」(上部を切る)が多いそうです。
August 10, 2020
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岸…ガン、きし 源五郎右衛門は、7歳になる娘、加奈から化け猫の相談に乗ってほしいと頼まれました。元は木槌だった化け物を成仏させてほしいという依頼でした。子供を殺す道具に使われた過去にさいなまれて、木槌は人を襲うようになったのです。 盂蘭盆のころ。化け物になった理由が悲しい話です。結末は悲しさを残しながらも、明るさが見えます。依頼主、三毛猫タマからの謝礼がしゃれています。生と死の間に揺れる愛情に、宮部みゆきらしい温かさを感じます。 参照元:日本推理作家協会・編『奇想博物館』光文社 から 宮部みゆき『野槌の墓』
August 9, 2020
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いまや梱包には欠かせないプチプチくん。気泡シートの「プチプチ」は草分け企業、川上産業の登録商標だったんですね。他社製品は「エアーキャップ」などの名前がついています。 8・8の並びが、プチプチの粒の並びを連想させることから、8月8日は「プチプチの日」だそうです。
August 8, 2020
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秋きぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる古今集秋の歌の一番歌です。立秋の日の歌としてこれほど有名な歌はない位の歌です。詠んだのは藤原敏行。百人一首には「住の江の岸に寄る波よるさへや夢の通ひ路人目よくらむ」が採られていますが、わたしは秋の歌の方が好きです。 秋が来たなんて目にはっきり映るものではありませんが、気がつくと立春の今日、吹く風の音が昨日とは違って聞こえ、はっとすることです。 さらりとした詠みぶりが心地よく、感覚としてわかる感じがします。古今以降立春・立秋を堺に“暦上の季節が代わったから、実際にも昨日と何かが違って感じられる”という感覚が伝統的に詠まれていくようになります。後世には定型に過ぎる歌も多くなってしまいますが、敏行の歌は清明です。硝子(びいどろ)の魚(いを)おどろきぬ今朝の秋蕪村の句も立秋の日のことで、「秋きぬと目には~」の本歌取りです。秋が来たことにはっとして硝子鉢の中の小魚もはねているのだといいます。 和歌の伝統も踏まえて、はねる魚(金魚でしょうか?)に視点を当てるところが新鮮な俳諧の世界です。 参照元:山本健吉・編著『句・歌歳時記 秋』新潮文庫
August 7, 2020
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桑…ソウ、くわ 災難を避けようと思わず唱える言葉に「くわばらくわばら」があります。 いわれには諸説ありますが、その一つが、菅原道真に関わるもの。道真が太宰府に流された後に祟りの雷で藤原氏を苦しめたと言いますが、道真の領地であった桑原にだけは落雷がありませんでした。 そこで厄除けに「くわばらくわばら」と唱えるというのが一説です。 別の説は、ドジな雷の話です。誤って桑原の井戸の中に落ちた雷が、井戸に蓋をされて出られなくなりました。困った雷は、今後ここ(桑原)には落ちないから出してくれと懇願して出してもらいました。 これにあやかるように「くわばらくわばら」と唱えるのだといいます。 今では雷よりもっと怖いものがたくさんあります。「くわばらくわばら」で退散してくれるとうれしいのですが。 参照元:金田一春彦『ことばの歳時記』新潮文庫
August 6, 2020
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写楽 奴一平 8月5日は「奴の日」です。8(やっ)月5(ご→こ)日の語呂合わせから。 「奴豆腐」は、正方形に切った豆腐のことで、暑い日の冷や奴は、定番メニューです。 「奴に切る」は四角く切ることなので、語源はそこにあると言われます。ほかにも、「奴」と呼ばれた武家の使用人が、衣服につけていた四角い紋が奴豆腐の形に似ているので、「奴」という名前になったという説もあります。
August 5, 2020
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元探偵の成瀬は、ある日駅のホームから自殺しようとした麻宮さくらを助けて恋心を抱きます。一方フィットネスクラブ仲間の愛子から「おじいさんがひき逃げに遭ったの。蓬莱倶楽部という悪徳商会が絡んでいないか調べて欲しい」と依頼されます。 探偵時代のエピソードも挟まれ、話は交錯します。 最初の一ページからだまされました。途中で引っかかる部分もありますが、まさかこういう展開とは…。 最後の方での衝撃が斬新な作品とか、だまされた(笑)という評も多く、日本推理作家協会賞・本格ミステリ大賞を受賞しています。 ですが、気持ちのいいだまされ方ではありませんでした。ミスリードも目立ち、読者が思い込むであろう状況より、明かされた状況の方が楽しいかというと、そうではないので。 できたら、こんなだまし方でなくトリックで勝負して欲しいと思いました。性格がはっきりしないヒロインにも、今ひとつ魅力を感じられませんでした。同じ著者の『ずっとあなたが好きでした』の方が楽しくだまされたと思えました。 題名の意味は後半でわかりますが、葉桜より、桜の葉の紅葉の季節といったほうがよいかと。 参照元:歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』文春文庫
August 4, 2020
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吉…キチ、よし 普通、地名や名前の「キチ」は「吉祥寺」「三吉」のように「士」+「口」の「吉」を使います。常用漢字に入っているのはこの「吉」です。ですが、「よしのや」の「よし」は「土」+「口」の「」を使っています。 「」は「つちよし」「吉」は「さむらいよし」と言って区別することもあります。「」は常用漢字にも人名漢字にも入っていないので、現在の名付けには使えませんが、戸籍上「」が苗字に使われている方もいます。「野家」さんも古い創業を思わせます。 *「つちよし」がフォントに入っていなかったので、画像を使っています。 読みにくくてすみません。
August 3, 2020
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ロンドン塔逆賊門の階段で、ひとりの男の死体が発見されました。カジュアルな上着とゴルフズボンという服装に合わないオペラハットが頭にのっていました。その帽子は、彼の伯父ウィリアム・ビットン卿が盗まれたものでした。 巷では、弁護士のカツラを盗んでレスター広場の馬にかぶせたり、有名な紳士からトップハットを盗んでトラファルガー広場のライオン像にかぶせる「帽子収集狂」なる者が跋扈していたのです。 ギデオン・フェル博士の登場です。 布袋腹の大柄な博士は、サンタクロースのようだと形容されます。血色のよい顔に眼鏡越しにいたずらっぽく光る細い目。周囲をびっくりさせるような大声で話しかけてくる陽気な博士は、会う人皆を陽気にします。 事件からは引退したと言いながら、ハドリー警部とはいい相棒で、今回はアメリカから来た若い青年ランポールも加わり、捜査会議が持たれます。 密室こそ登場しませんが、不可能犯罪と思われる怪事件は、カーの真骨頂です。長編なので、登場人物が多く、それぞれの性格や来歴が書きこまれ、複雑に絡んで読むのは大変でした。 大体、翻訳物は名前からして覚えにくい。 霧の街ロンドンだからこそ成立する犯罪です。ホームズものもしかりですが、霧のロンドンという背景が前提です。日本の気候・地形では、目撃者が現れるところ。 参照元:ディクスン・カー 田中西二郎・訳『帽子収集狂事件』創元推理文庫
August 2, 2020
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月も日もとろりと赤し梅雨の果(はて) 原コウ子梅雨がやっと開けたかと思うと、今度は日差しの強さに辟易とする梅雨明けです。蓋あけしごとく極暑の来りけり 星野立子「蓋開けしごとく」が効いています。突然の暑さの到来がよく表されています。 梅雨が明けると暑さへ向かう覚悟が必要です。今年はマスクの着用で例年以上に暑い夏になりそう。うまく乗り切れますように…。
August 1, 2020
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8月1日はハイビスカスの日です。 8月はハイビスカスの花の最盛期で、8=ハ(月)1(イ)日の語呂合わせからこの日になりました。 琉球神話では、ハイビスカスは「天と地をつなぎ、幸せを運ぶ花」といわれるそうです。
August 1, 2020
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