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とはいえ、決して、気を緩めているわけではなかった。
自らが放った斥候の報告によって、対峙している敵軍の将が、副王の嫡男アラゴンらしいと掴んでいるアパサにとって、相手が油断ならぬ大敵だという自覚は十分にあった。
それでも、いや、それだけに、このアパサにとっては、愉快でならなくもあったのだ。
「あのトゥパク・アマルにしろ、アラゴンにしろ、皇族だの、王族だのってのは、いつだって軟弱だったらありゃしねえなぁ!!」
疾駆しながら傲然と言い放ったアパサの周囲では、「へぇ、全く、お頭(かしら)の言う通りでさぁ!」「情けねえっすよねぇ!」と、彼の部下たちも、アパサ同様、口の減らない者たちばかりである。
アラゴン率いる大軍1万は、もう、すぐ目の前である。
アパサの目つきが鷲のように鋭くなった。
腰に括(くく)り付けた、いかにも獰猛そうな斧に、自動的に右手が走る。
そんな彼の風貌はといえば、身長は中位で筋骨逞しく、その相貌も、その目は小さいながらも深く窪み、活動性と意志の強さが漲っている。
地方豪族にすぎない彼は、外見に頓着しない性格もあいまって、戦闘姿も貫頭衣に胸甲を当てただけという簡素さだが、それだけに、機動性が高く、身も軽い。
決して美男とはいえないが、不遜なほど不敵な覇気を全身に纏ったその姿は、多分に人目を惹く雰囲気をもっている。
【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆
≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)
反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。
インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。
インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。
「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。
清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。
≪アパサ≫
「ラ・プラタ副王領」の豪族で、トゥパクの最も有力な同盟者。「猛将」と謳われる一方で、破天荒で放蕩な性格の持ち主だが、実は、洞察と眼力が鋭く、全体をよく見通している。
かつてアンドレスを戦士として鍛え上げた恩師でもある。
≪アラゴン≫(スペイン軍)
スペインの植民地であるペルー副王領を統治する副王ハウレギの息子。
反乱鎮圧に手こずる軍に痺れを切らした副王により派兵されたスペイン王党軍を統率している。
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