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余と瓜二つの者弥太と勘十は訳が分からないまま付いて行ったところは、本庄藩江戸屋敷です。心配することはないと言われ、二人は別天地のような気分でいます。弥太は、気持ちよさそうにのんびりとお風呂に入っています。そこへ腰元達が背中を流すと入ってきたから大変、慌てて肌を湯の中に隠します。勘十の方は、狐につままれているのではと、ご馳走にご満悦です。 お風呂からあがった弥太は、殿さまの着物を着せられ、髪を結いあげられようとしています。町人髷にはさみを入れられたからびっくり。 座敷では権大夫が待っているようです。岩村が「やっと出来上がった」と、弥太を連れてきたようです。岩村 「弥太、こちらへ入れ」姿を見せた弥太の変わりよう・・(馬子にも衣装です)、髷も侍髷になり外見はとてもいい感じです・・が岩村に中へ入るように促され、入る時の格好は船頭の弥太さんです。そして、権太夫と目があった弥太の表情が何といったらよいのでしょう。子供が恥ずかしがってする仕草に色気があるから、権太夫の弥太を見る表情も何とも言いようもないのです。(何が何だか分からずに若殿様の格好になった弥太・・鯔背な弥太がこんな風に恥ずかしがっているこの顔、ちょっと色っぽい?可愛いですね・・この場面の橋蔵さま大好きです。橋蔵さまだから、このような演技も出来るし、いやらしくなく、笑っちゃうくらいの可愛い仕草ができるのです) 権太夫「これならどっから見ても本物と変わりがない」弥太 「お武家さん、あっしにこんな格好をさして、一体どうしようって言うん だい」 権太夫達の仕事に手を貸してほしいというのです。仮の若殿になりすましていてくれればよいと言われます。日当は一日一両だすと聞いて、弥太 「いちんち(一日)一両」 弥太 「う~ん、いちんち一両なら、十日で十両・・何だか夢みてえ話だなあ・・ うまくやれるかどうか分からねえかが・・よし、引き受けやしょう」(梅香が必要とする十両を何とか都合すると言った弥太に、十日で十両という話が舞い込んできたのですから、引き受けてしまうのは仕方ありません)権太夫に、途中で嫌だと言っても許さないと言われます。弥太 「その代わり、十日分の十両、前金でお願いしますぜ」(こんなに簡単に十両が出来てよかったというようにうれしい弥太です) 権太夫が出した十両を受け取り、弥太 「こりゃぁ、すいませんねどうも。これであっしは助かりやす、へっ。そい じぁ、ちょいと」十両を懐に入れ「すまねえな」と言って立つと、、金を払ったのだからもう十日間は自由にはならないと釘をさされます。 勘十は岩村から、弥太からの十両と手紙を預かっていき梅香に渡します。梅香は大きい屋敷に連れて行かれたと聞き心配になります。 (ここからは、ニセ若殿様としての特訓の場面になります。橋蔵さまのぎこちない振舞い、見ていて可笑しくなってしまいます。)本庄藩江戸屋敷では、弥太をニセ若殿様に仕立て上げるための特訓の最中です。岩村も松井も手こずっています。座り方・・手は太ももの上にきちんとのせ、もっと胸を張れ・・と。やったこともない座り方に・・岩村、松山から厳しくなおされます。 次は歩き方・・手はもっとやわらかくおろして、歩いてみるように言われます。手と足のうごきがぎこちなく・・威厳をもって歩くように言われますが・・。(船頭をやっていた弥太には大変なことです。でも、十両もらってしまいましたから、我慢我慢) 今度は、岩村 「人にものを聞かれたらいちいち答える必要はない。こう言えばよいのだ。 良きに計らえ。ちょいとやって見ろ」弥太 「へっっ、(恥ずかしそうな風に) 良きに計らえ、・・てかぇっ」(岩村の顔を恥ずかしそうに?こんな調子かいと言う顔で言うのです・・この言い方がおかしい・・見ていて笑っちゃいます) 権太夫「殿様らしく、もっと威厳をもって言えぬか」言われた弥太は今度は、弥太 「良きに計らえ」 (声に重みをつけて言います。そう、少しはよくなりました、弥太さん)権太夫「だいたいよかろう」では次にと言われ、弥太 「まだあんのかい・・何のためにこんな事やる」岩村 「いまに分かる」弥太 「めんどくさいこと、引き受けちまったなあ」三左衛門が権太夫の部屋の様子を少し離れたところから弥太の姿を見て驚きます。権太夫は、世継ぎの他界は本庄藩にとって浮沈にかかわること、そのため若殿の替え玉を使えば、お家も安泰する。悪いようにはしないので任せてくれというのです。三左衛門はもう一度よく、ニセ若殿弥太の顔を見ますと、その三左衛門に弥太は「どうも・・」というように、きまり悪そうに、頭をさげて挨拶するのです。 三左衛門は死んだとされている若殿様義光のいる隠家にやってきました。義光の推察通り、権太夫が何事か画策しているようだ、と伝えます。義光 「権太夫め、何を企んでおる」権太夫が妙な男を屋敷に連れてきて、若殿のニセ者に仕立てていることを話します。義光 「なに、ニセ者?」顔形といい、姿といい、声まで若殿に瓜二つだと言います。義光 「余と瓜二つの者」 檜笠陣内が、早々国表へ発った方がよいのではと言います。義光 「うん、明日にも江戸を発とう」(義光は、国表に何が起こっているのか、起ころうとしているのか、心配です) 義光が江戸を発つのと同じくして、弥太をニセ若殿様に仕立て上げた行列も江戸を発ちます。さあ、これから本庄藩に向ってのそれぞれの道中が始まります。 続きます。
2017年08月28日
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何がそっくりなんで本庄藩の檜笠陣内が急を知らせる早馬で、本庄藩江戸屋敷に入っていきます。義光「挨拶はよい、使者のおもむきは何だ」陣内が言うには、大殿様が突然発病し、原因不明の熱病に侵されている。若殿に至急帰国するように、との知らせでした。義光「そうかぁ、では三左、明朝早々に江戸を発とうぞ」その夜、眠りにつけず、考え事をしている義光です。義光 「夢は正夢であった。国表に何かあるなにかある」 義光の部屋に静かに近づいて来る者がありました。(江戸家老金沢権太夫のようです) 義光 「誰じゃ」権太夫「若殿、まだお休みになりませんので」 義光 「国表のことが気にかかり、今宵は、妙に目が冴えてのう」 権太夫「それはいけません。明日は早いお発ちゆえ、今夜は出来るだけ睡眠をおと りなさらねば、旅はお身体にこたえまする」 義光 「うん」 (声に出すのではなく、うなずくような感じで本当に小さく) 権太夫「よほどお休みになれませぬようであれば、御酒でも少々召しあがられまし てはいかがと、すぐお休みになれると存じまする」 義光 「うん」(ここもうなずくように小さく) 義光は気が進まない様子ですが、 義光 「そうしてくれ」 いま義光に国表へ帰られては困る金沢権太夫、これは「しめた」というように思ったのでしょう。早速、腰元に御酒をもっていかせます。 前におかれた御酒に手を付けず、義光は何かを考えています。 権太夫の部屋では家臣の岩村と松山もいて、何かをじっと待っている様子です。腰元がやって来て、義光のところへ御酒を置いてきたことを告げます。義光は、お酒を飲む気になれません、どうも気になっているのです。 そして、お酒を金魚鉢に注ぎます。 金魚が・・・。 義光は三左衛門を呼び、耳打ちをして、”金魚を見てみよ”というように手で示します。御酒の効き目を待っている権太夫の部屋に、三左衛門が慌てた様子で「一大事じゃ」とやってきます。若殿が何者かに毒殺されてたったいま亡くなられたというのです。そして、権太夫に、大殿ご重体の今、たった一人の世継ぎ義光がなくなったことが公儀にしれれば、本庄藩お家断絶は必定。幸い今宵のことを知っているのは我々だけ。若殿には気の毒であるが、今宵のうちに密葬をして、誰にも知られないようにしなければならない、と三左衛門は義光との打合せ通りことを運ぶのでした。檜笠源内が辺りを見まわし衣装箱のようなものが一緒に出て行きます。 翌日、弥太の舟に、赤沢の秀五郎と梅香が乗っていました。秀五郎は女将から梅香がお袋さんの薬代に十両いることを聞いて、十両を持っていけと言うのです。秀五郎は梅香に岡惚れしているのでこれ幸いというところ。梅香はお金が必要なので覚悟を決めお酒を飲んで・・・というところに、弥太が入ってきます。 弥太は梅香の頬を殴り、女の弱みにつけこみおかしな口説きはよしてもらいたい、と秀五郎に言い、秀五郎が刀を抜いてきたところを、川の中に放り込んでしまいます。 弥太は梅香からお袋さんの病気を治すためお金が必要だったので体を張ったことを聞きます。 弥太 「すまなかったぁ。・・芸者は売りもの買いもの・・ましてご本人がその気 になっているものを邪魔しちまって、とんでもねえおせっかいだったな あ。だが俺は、おめえがあんな奴に好きなようにされるのを、黙って見て はいられなかったんだ」 梅香は弥太のその気持ちは嬉しいがおっかさんを見殺しには出来ないと泣いています。 弥太 「よし、俺が何とかするぜ」梅香 「弥太さんが・・でも十両なんて」 弥太 「分かってるよ、十両だろう。俺も男だ、まかしときな」 翌日、弥太の住んでいる家から家財道具が運ばれているのを、同僚の勘十が見て 勘十「おい、弥太さん」 弥太 「おう」 勘十 「おめえ、引っ越すのか」 弥太 「あっ、そうじゃねえよ、売ったんだよ」 勘十 「売った?」 そこへ売ったもののお金を持ってきたのですが、たったの一両でした。弥太 「一両か・・あと九(きゅう)枚か」勘十も話を聞いて俺もと家財を売ったものの二朱にしかならず、弥太 「あっはっ、一両二朱かい、がっかりさせるぜ」 勘十が一両二朱を元手に十両稼げると言います。弥太 「ほんとか、勘十」勘十 「まかしとけ」弥太 「危ねえもんだ」 勘十「大丈夫」と言って、弥太と共に賭場に行き、最後に”半”とはり、すっからかんになってしまいます。悪く思わないでくれ、と言う勘十の言葉に、弥太 「元も子も取られちまって、あんまり良くも思えねえよ」 金沢権大夫に捜して来いと言われ、舟よしに行ったが弥太に会えなかった岩村鬼斎と松山竹十郎とすれ違い呼び止められます。 岩村 「なるほど、これはよく似ている」 松山 「そっくりだ」 弥太 「何がそっくりなんで」 岩村 「いや、実はそのほうに、折入って頼みたい儀があってさがしていたんだが」 弥太 「えっ、あっしを」 (弥太と勘十は連れて行かれてどうなるのでしょう。弥太を、亡き者にした若殿義光に仕立てることで、どんな悪事を企てるのでしょうか。権太夫が何かをしようと察しがつき、毒殺によって死んだと見せ江戸屋敷から出た若殿義光はどうしたのでしょう。義光と弥太の身が心配ですね。) 続きます。
2017年08月23日
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原作小島健三さんの同盟小説の映画化です。企画は新芸プロ福島社長。瓜ふたつの若殿六郷義光と船頭弥太が、義光を亡きものにして本庄藩を乗っ取ろうとする側室と家老一味を相手に立ち向かうという、橋蔵さま二役の東映スコープ痛快娯楽作品です。「大江戸喧嘩纒」でデビューした松原千浪さんがこの作品から改名し桜町弘子さんになっています。桜町さん、橋蔵さまと本格的な共演で相手役になります。もう一人の共演者千原しのぶさんは、橋蔵さまの相手役としてはこの作品が最後になったのでは。1958年からは脇役にまわっています)おっとりしてはいるが剣はたつ美男の義光と紺の半纏で粋なべらんめえ船頭弥太と、橋蔵さま初の二役を演じ、気品と鉄火の二面の魅力を十分に画面いっぱいに発揮しています。橋蔵さまは根がべらんめえ的ですから、おっとり型への早変わりが難しくて、橋蔵さまとしては珍しく何回もNGを出した作品だったようです。橋蔵さまにとって、画期的な役でした。橋蔵さまは、どちらが演りやすかったかの問いに「さあ? それは・・・それぞれに苦労はしました。ファンの方々の批判もまちまちでしたから、皆様のご想像におまかせいたします。」と言っています。 あなたは、どうお思いになりますでしょうか。◆第25作品 1957年5月封切 「ふたり大名」 六郷義光 大川橋蔵弥太 大川橋蔵梅香 千原しのぶ琴姫 桜町弘子赤沢の秀五郎 加賀邦男金沢権太夫 永田靖秋田三左衛門 清川荘司六郷乗政 三島雅夫岩村鬼斉 吉田義夫檜笠陣内 立松晃岩木兵庫頭 堀正夫勘十 杉狂児松山竹十郎 津村礼司お欄の方 鳳衣子梢 美山れい子栗原源之丞 藤木錦之助 船宿”舟よし”の船頭弥太は、恋仲の芸者梅香の母の病気に必要な高麗人参を買う10両がどうしても必要でした。出羽本庄藩江戸家老金沢権太夫は、若殿六郷義光がいる限り、自分の思いどおりにならない・・思案しているところへ、若殿に瓜ふたつの船頭の弥太を見て、若殿の身代わりに立てることを考えます。弥太は10両もらえるというので、訳も分からず身代わりを引き受けます。若殿義光は権太夫に毒殺されたと見せかけて安心させ、権太夫一味のお家乗っ取りを暴いていきます。偽の若殿、町人姿の義光、権太夫一味、そして弥太を追う梅香達が、江戸から出羽へとの道中の模様が描かれていきます。 逆夢であってくれればよいが出羽国本庄藩六郷乗政のところで、岩木兵庫頭と義光の許嫁の琴姫を迎えての祝宴が開かれています。若殿義光は江戸出府中で不在です。庭の方へきた琴姫は一本の桜の木に目が止まり、懐かしそうに惹きつけられていきます。桜の木の幹に思い出があったのです。琴姫の想い出が・・・桜の幹にたけくらべでお互いにつけあったキズの時の事を思い出していました。桜の木のところに琴姫が立って義光が幹に記しをつけています。今度は義光が幹のところに立ちます。義光「さっ、今度は、そちが」(うわぁ、橋蔵さま、表情も可愛らしく、とっても優しく可愛い言い方です)琴姫「はい」 琴姫が義光の背丈の傷を幹に一生懸命つけようとしていますが、なかなかつけられず、義光の顔に近づいてしまい、その後は・・・このように。(お二人とも初々しい・・こちらが恥ずかしくなってしまいますわ) そのころ、側室お欄の方は弟の猪三郎を家老職後任にして欲しいと、六郷乗政に頼み見込んでいますが、義光とも相談しなければ、と言われ、江戸にいる江戸家老金沢権太夫に若殿に良しなに計らいを頼むとの書状を届けます。金沢権太夫は猪三郎が国家老職についても利口者の若殿がいてはどうにもならない、目的はもっと違うところにあると言うのです。岩村鬼斎と松山竹十郎と何かを企んでいます。そんな時、寝入っていた義光が飛び起きました。(琴姫との三年前の表情でなく、凛々しい義光になっています) 三左衛門「若殿」義光「三左か・・」三左衛門がうなされていたようだが、どうしたのかと聞きます。義光「やな夢を見た」どんな夢を見たのかと三左衛門が聞きます。義光「何か城の屋根の上へ黒い雲が覆いかぶさり、払おうとしても払いきれず、 だんだんその中へ巻きこまれていくような」 三左衛門は逆夢といい、国表に何かあれば直ちに知らせが来るはず、と。義光「そちの申す通り、逆夢であってくれればよいが・・」 ここ4,5日将軍家御法要の役で勤めが大変だったのでお疲れになったのでしょう。明日は気晴らしに舟遊びをしては如何でしょうと、義光に提案をします。義光「舟遊びか」 翌日、舟遊びに出ていると、金沢権太夫はすれ違った舟を漕いでいる船頭に目がいきます。 義光「権太夫、如何いたした」権太夫「いや、別に」義光「さあ、久しぶりの遊山じゃ、遠慮なく飲むが良い」権太夫「かたじけのう存じます」と言いながらも、舟の船頭が気になっています。 権大夫が気になった船頭とは・・・(私達も、その舟に目を向けて、ちょっと様子を見てみましょう) 屋形舟を芸者の梅香が貸し切りで乗っています。(ここから少し、好きあっている弥太と梅香の会話を聞いてください。橋蔵さまと千原さんお二人の粋なセリフのやり取りは最高です。「若さま侍捕物帖魔の死美人屋敷」「喧嘩道中」そして「ふたり大名」とおふたりのポンポンと出てくるセリフを聞いていると、こちらまで引きこまれてしまいます。そして、橋蔵さまの、目の動きが良いのです。二人の会話中の橋蔵さまの目をずっと追って見てください)梅香が弥太に川の水が温んで春なんだね、と話しかけてきます。弥太「おう、お梅さん、水のことはどうでもいいから、もうすこしそっちに入って いてくんねえかな。そばでがちゃがちゃ言われたんじゃ、漕ぎにくくてしょ うがねえんだ」 梅香「悪かったわね。弥太さん、あたしゃお客なんですよ。何も怒られるすじは ないわよ」弥太「別に怒ってはしねえよ」梅香「じゃ、何も、そんな言い方しなくたっていいじゃないか」弥太「へぇっ、俺の言い方が何か気に障ったってえのかい。俺はただ、邪魔だか らもう少しそっちへ入っててくれと言っただけじゃねえか」 梅香「邪魔でわるかったわねえ・・あぁぁ、こんな舟に乗るんじゃなかった」弥太「へぇっ・・」梅香「いいわよ、ここから飛び込んでやるから」と、梅香が飛び込もうとするのを、「あぶねえ」と慌てて梅香をしっかりと抱き止める弥太・・二人は慌てて離れます。(橋蔵さまは、こういう濡れ場??は苦手なんですよね)弥太「あぶねえな、まったく・・なんて無茶なことする姉さんだ」 弥太の船が船着き場に戻ってきました。弥太「おう、お梅さん、いつまで乗ってるつもりだい。着いたぜ」梅香「うるさいわね、今降りるわよ」舟から船着き場に上がるのに手こずっている梅香を見かねて、「世話のやける姉さんだ」と手をかしてくれた弥太に、 梅香が「弥太さんにも、わりに親切なところがあるのね」と言うと、弥太「これぐれいの親切から、船頭は誰にだってしてやるぜ」弥太は照れ隠しのように、捨て台詞を言うのです。(相愛なのに会えば喧嘩をするという二人なのです。千原しのぶさんと橋蔵さまのやりとり聞いていて、とても気持ちがいいのですね) 梅香の母親の具合がよくなく、医者から高麗人参を飲ませることだと言われます。それには十両は必要だというのです。 続きます。
2017年08月19日
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他には何にも心残りはござんせんお雪の位牌の前に、肩を落としている半次郎と金介の姿があります。半次郎はお雪の形見になった黒髪を手にとり涙声で言うのです。半次郎「やっと会えたと思ったのもつかの間、一夜明けりゃ可愛い妹は一握りの黒 髪だ・・・はかねえなあ」 お雪の黒髪を手拭いで包み懐に入れます。半次郎「可哀想なやつ」(涙声です) 金介は、斬ってくれと半次郎に言いますが、半次郎は、斬ったって妹は帰っては来ない。供養がわりにいいことをしろと言うのです。おたえは、半次郎にことづけをして上方へ発ちたいので、おかつに金介を呼んできてくれと頼みます。 おかつが外へ出た時、赤戸達と一緒にいた彦作に見つかってしまいます。おかつがおたかに知らせに戻った時、彦作が入ってきました。おかつとおしんまでが加担していたとは・・という彦作に、会わなければならない人がこの宿場にいる、とおたかが言います。おたか「深川のお雪様。お雪様は昨夜、兄の半次郎さんに看取られて、お果てなさ いました」 彦作 「ええっ」 「会ってお詫びをしなければ、あんたは人で無し・・」とおたかが彦作に・・、。おたかと彦作は急いで扇やへ向かいます。 駕籠で遅れて鞠子の宿に入ってきた彦右衛門は彦作とおたかの姿を見つけます。おたかが彦作を連れて扇やについた時、半次郎は扇やを発とうとしていました。 おたか「兄さん、この方がお雪さんの」 半次郎「うぬっ。彦作だな」 半次郎は彦作ににじり寄っていき、長ドスを抜きます。しかし、半次郎は、彦作を見て妹お雪の彦作に対しての気持ちを思い出し、長ドスを振りかざししますが、はっと思いとどまります。 長ドスをおさめ彦作にしみじみ言うのです。半次郎「こいつは、俺がわるかった。おめえさんとお雪の仲は、二人だけが知って ること。いくら俺が兄だからと言って、妹が臨終の夢にまで見たおめえさ んを、腹立ちまぎれに斬る道理はねえ。・・・悪く取っておくんなさる な」 半次郎「だが、彦作さん。たった一人の可愛い妹を、うらぶれの旅に死なせた草間 の半次郎が、その後生を祈って申し上げます。・・どんな時でも、妹さん だけは大切にしなせい。自分の欲で妹さんの一生を台無しにしてはいけま せんぜ」 そして金介にも、淋しそうに 「達者でくらしな」と言い、「待ってください」という彦右衛門の声に足を一瞬止めますが、半次郎はそのまま立ち去ります。 彦作は松平藩江戸家老高坂との今回のご縁はきっぱりと断る、と赤戸に言います。その申し出には応じられない、おたかを高坂の言いつけ通り国表までつれていく、と言う赤戸に、彦作は、そのような事は許さないときっぱりいうのです。 赤戸達は町人の分際で松平藩を虚仮扱いにするつもりかと腹を立て、おたかを力づくで用意していた駕籠にのせ連れ去ってしまいます。その様子を見ていた金介は、半次郎に知らせるために走ります。 「おーい、兄貴」の声に半次郎が振り向きます。 金介 「た、た、大変だ、おたかさんが松平の家中の者に攫われた」 半次郎「なにぃ⤴」(橋蔵さまのあの独特な言い方です・・好きだなこのイントネーション) 金介 「早く、早く行ってやっておくんなせい」行こうとした半次郎でしたが、ふと頭をよぎることがありました。 半次郎「そうしてえが金介、江戸には俺のけえりを待っているお袋がいるんだ」と迷っているところへ、金介 「けれども兄貴、その家中のなかには、昔の俺の棒組の小平や弥吉の顔も混 じっているんだ」 半次郎「なるほど、そうか。・・で、戸倉屋彦作は」 金介 「兄貴の言葉に改心して、おたかさんの引き渡しを拒んだ。・・そこで奴ら 無理やりに」 彦作が、おたかの縁談をきっぱり断ったと聞いて、半次郎はおたかを助けるために走ります。(全速力で走っていきます。走る、走る。橋蔵さまは走ることも得意ですから、半端ではありません、いくらカットがあっても凄いスピードで走ります。景色が変わるところで8場面走ります。1場面数秒でも全速力で走っているところからの数秒を使っているわけですから体力がないと出来ませんね。東映の時代劇、特に橋蔵さまは走る場面も多かった) (橋蔵さまは全速力で走っている姿も綺麗です) まず、彦作と彦右衛門に追いついきます。半次郎「及ばずながら、お手助けをいたしやす。もし、あっしに万一の事がございましたら、深川木場材木町に住む、あっしのお袋よろしくお願げえ申しやす」 と言って、赤戸一味を追って駆けだして行きます。 半次郎「待て―っ・・待てーっ」 追いついた半次郎は、小平と弥吉に「前へ出ろ」と言います。半次郎「てめえ達、峠で聞いた俺の言葉を忘れちゃいめえな」 「忘れるもんか」「胸に刻んで覚えている」と言う二人です。 半次郎「そうかい、それじゃ早いとこ抜きやがれ」 そこへ赤戸がよまいをいたすとただおかないと言って出てきました。 半次郎「そーらおいでなすった。そう来なくっちゃ、話にならねえ」 赤戸 「なんだと」半次郎「もしご一党さん。おめえさんがた、女衒まがいの街道がらすのくさぼうに ひるひなか、生きてる女を盗んで逃げるとはなんてえこったぁ。上を見な せい・・お天道様が顔をしかめていなさるぜい」 「無礼者」赤戸が半次郎めがけ笠を投げつけると、侍達の笠も飛びちり刀を抜きます。半次郎「ふん、他に挨拶の持ち合わせがねえとは、飽きれけえったどさんぴんだ。 ちぇっ、ふざけるねい」 と言うと、半次郎は飛び降りて・・立回りとなります。(ここから初めてのやくざ剣法になります。約2分15秒の立回りでスピード感があります) 弥吉、小平、赤戸も斬り、残りの者が逃げていくのを追いかけて、おたかが乗せられていた駕籠の前まできた時、「半次さん」と声をかけたおたかの手を「おぉ」と言って一瞬握ろうとした半次郎ですが、一歩引いて「無事でよかった」と言うのです。(一瞬の動作ですから、見逃さないで・・本当は、「おたかさん」と言って二人が手を握りあうとか抱き合うのでしょうが、ここに半次郎の分別が。大店の娘さん・・という、思っても自分とは程遠い)彦作と彦右衛門の方に行き、この一件は草間の半次郎がかぶるというのです。 彦右衛門が「深川木場のお袋様、けしって粗末にはいたしません」と約束します。半次郎「へい、そううけたまわりますれば、・・他には何にも心残りはござんせん。御免なすって」 半次郎が歩きだした時、「兄貴~」と金介の声が・・金介が半次郎の笠と合羽を渡すと、「おぅ、すまねえな」と半次郎。 金介の「また、どっかで会えるでしょうね」に「さあなあ~」とこたえて旅に出る半次郎です。 彦右衛門は半次郎を見ているおたかの様子を見て、おたかを戸倉屋に置いておくのは松平様に申し訳がない、今日限り勘当する、「半次郎さんという道連れがあるだろう行きなさい」と粋な計らいをするのです。 おたかが来たのでびっくりする半次郎、みんなが見送る中、幸せな二人旅の始まりです。 (ここから”喧嘩道中”の歌が流れます。今までとは違って、二人のとても明るく幸せな顔があるので、歌も明るく感じます) 何処へ行くのか 旅人さんは 笠に隠した横顔を 娘つばめが 覗いて通る しんとんとろりと良い男 とーことろりことんとんとん 何もしらない 乙女の胸に いつか思案の波がたつ これも恋ゆえ あの人ゆえに しんとんとろりと何としょう とーことろりことんとんとん ハッピーエンド!! 草間の半次郎さんとおたかさんの幸せそうな明るい笑顔が見られてよかった。半次郎さん可愛い!! (完)「旗本退屈男・謎の決闘状」で橋蔵さまを見た脚本家の比佐芳武さんは、大川橋蔵はやくざものもいけると思ったということは、前に触れたと思います。ベテラン比佐芳武さんの原作で、橋蔵さま、初めての本格的やくざ映画になりました。歯切れの良い啖呵と橋蔵さまの若々しさで際だった草間の半次郎は、批評家にも絶賛されました。また、橋蔵さまにとってこれも初めての東映スコープで上映されるものとなりました。この時期の東映のスコープには問題がありました。先にスコープで撮った錦之助さんの作品が失敗していたので、橋蔵さまはじめプロダクションの人達も大変心配していたそうです。制作部で責任をもつと言われたので撮ることに踏み切ったそうです。スタッフの協力で成功して本当によかったですね。橋蔵さまはこの時の事を「いささか、やくざとしての修行が不足だったかもしれません。はじめてのスコープ作品で心配しましたが、幸い好評でした。」と言っていらっしゃいます。 こうして、草間の半次郎が認められシリーズものになっていくのです。橋蔵さまの新しい面が見いだされました。殺陣はまだ完璧とは言えません。侍とやくざの剣法は違いますが、橋蔵さま熱心な方ですからやくざ剣法も大丈夫。これからの作品での成長が楽しみになります。時代劇が板について、見ていて不安感はなくなってきました。セリフ回しも安心して聞いていられます。この作品を境に、橋蔵さまの役柄が広くなっていきます。(私は橋蔵さまの股旅やくざものは大好きです。哀愁があり、義理人情に厚いやくざものはいいなぁ。橋蔵さまはやくざ姿でも颯爽としているし、歩いている姿、立姿を見ていると映像の中に吸い込まれてしまいます。このような役のセリフ回しもすごいものです。)
2017年08月16日
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「お雪、俺だ、兄だ、半次郎だよ」 おたかを追っている高坂は彦右衛門が相も変わらず駕籠でゆっくり来るのに郷を煮やし、彦作にかまわず先を急ぐことにしようと言います。その様子を見て彦右衛門は、成り行きが変わったので駕籠屋に急ぐように言いました。道端にたたずんだおたかに、おかつとおしんがどうしたのかと心配します。おたかは二人に、このまま江戸へ帰ってほしい、と言いますが、二人は今さらそんなことは出来ない、とにかく上方まで行こうと言います。おたかは、上方へは行かずお雪さんを探すというのです。兄に代わってそうしなければ、半次郎にすまない・・・三人一緒に力を合わせて探そう、ということになりました。三人に追いついた金介は、おかつから話があるので、今夜の鞠子で泊まる宿を半次郎に伝えてほしいと言われ、半次郎を待っています。金介 「おっ、兄貴」半次郎「やめろ、俺はおめえの兄貴じゃねえ」 金介 「そんなら、半次郎さん。こいつは、三人組からの言付けなんだが、今夜の 泊は鞠子の宿、宿は岩田屋・・」 半次郎が振り向き 半次郎「おめえも、そこに泊まるのか」 金介 「へい」 半次郎「そんなら、俺もそこへ落ち着こう。今夜は、おれは、折入ってとっくり とおめえに聞きてえことがある」 金介 「ええ?」 半次郎「待ってるぜ」 場所は、鞠子の宿。金介が”扇や”という店に入っていきます。(金介は半次郎の妹お雪の事が気になっていたのですね)聞きたいことがあると店の番頭に言います。去年の春に酌女でここへ売られてきた、江戸深川生まれのお雪という女はいるか聞いています。 「おきぬのことですね」と言う番頭に、どうしているかと聞きますと、ふた月前から患っていて、今日明日知れない命だ、というのです。それを聞いた金介は店を飛び出して、急いで半次郎のところへ。 金介 「半次郎さん、何処にいなさる。半次郎さん。半次郎さん何処だ」 部屋から出て来た半次郎に、 金介 「あっ、兄貴、すまなかった、勘弁しておくんなさい。あっしが悪かった、 あっしが悪い」 半次郎「ただそれだけじゃ分からねえ。仔細を言え」 去年、小平と弥吉と棒組で、お雪さんをそそのかして江戸から連れ出し、悪事の手先に使ったあげく、自棄になっているのをいいことにして、この鞠子の宿の扇やへ酌女として売り飛ばした。いま、そこへ行って見ると、ふた月まえからの患いで今日明日知れない命、と半次郎に全てを話します。(金介から思いもかけない話を聞いている半次郎の様子です) 半次郎「何だと・・」 金介「お詫びは後で、あとでどんなお仕置きでも受けますから、さっ、兄貴、早く 来なせい」 急いで飛び出して行く二人を見て、おたか達も扇やへ向かいます。 扇屋にやってきた半次郎と金介は、番頭にお雪のところへ案内してもらいます。 半次郎「お雪、俺だ、兄だ、半次郎だよ」 (おたか達もやって来て庭さきにいます) 半次郎「お雪、お雪」 金介 「お雪さん」 お雪が目を開けました。 半次郎「俺だ、俺だよ、半次郎だ・・」 半次郎「分かるか、えっ、分かるか」 お雪 「あっっ、お兄さん」 半次郎「お雪」 お雪 「おっかさん、おっかさんは」 半次郎「達者で毎日、おめえのけいりを待っているぜ・・・だから、早く良く なって俺と一緒に・・・」お雪 「だめ、帰れません・・・どんなに会いたくても・・もう帰れません・・ だから、不幸のお詫びを兄さんから・・・」半次郎「そんな・・」お雪 「だめ、だめなんです。・・・それよりも、先ほどの夢、夢で彦作さんが 会いに来てくれました」半次郎「なに、彦作が」(小さい声で)お雪 「恨みに恨んだお人だったけれど、・・会えばやっぱり嬉しさが先に立ち ました」(お雪は彦作を恨んでいるのだ思っていたが、ずっと彦作を思っていたのだ・・半次郎は複雑な気持ちになったのでしょう・・・そんな表情でしょうか) お雪 「江戸へお帰りになったら・・・彦作・・彦作さんに・・」 半次郎「しっかりしろ・・しっかりしろお雪」お雪の手を握り呼びかけますが、お雪は事切れてしまいました。庭先にいたおたかが部屋に入ってきます。お雪の手を握り悲しみに暮れる半次におたか「半次さん、戸倉屋のおたか、兄、兄に代わってお詫びいたします」 半次郎は、悲しみを押え、お雪の両の手を重ね、顔に手拭いをかぶせてから、おたかに言うのです。半次郎「おたかさん・・・あっしは、おめえさんの身元は菊屋でそれと分かってい た。兄は兄、妹は妹、さして憎いとは思わなかった。だが、事がこうなっ ちゃ俺も人の子、彦作の縁に繋がる奴はどいつも憎い、腹が立つ。けえれ ・・けえってくれえ。二度と俺のめえに面だすな」 おたかは「はい」と言って部屋を出ると、廊下で泣き崩れるのです。 続きます。
2017年08月11日
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気持ちはこれで解れたわけじゃねえ呑みこみの金介も菊屋に宿をとりました。宿の外には、小平と弥吉が待っています。金介は気が進まぬ様子です。おたかは先ほど半次郎から言われたことで眠れないでいます。夜更けになり、金介の手引きで小平と弥吉の二人が半次郎の部屋に近づいていきます・・半次郎は、気配を感じました。おたかも何かの気配を感じました。 おたかがそっと障子を開けた時、二人が刀を抜いて半次郎の部屋に入ろうとしていたので、おたか「半次さん、危ない」 その声で、半次郎は飛び起きます。 宿の部屋の中と廊下での斬り合いになります。 二人は、太刀打ちできず金介の部屋から外へ逃げていきました。危ないとこでした、という金介に、不用心にあきれる、何故雨戸を締めておかなかったと、半次郎は言い放します。部屋へ戻る途中、おたか達の部屋の前に来た時、半次郎「さっき声をかけてくださったのは、おめえさんかね」おたか「はい」半次郎「お蔭であっしが先手をとり、かすり傷ひとつつけなかった。あつく礼を 言いますぜ」おたか「そんな」 (おたかは半太郎の言葉にうれしそうに答えます)半次郎「だが、気持ちはこれで解れたわけじゃねえ、それはそれ、これはこれだ。 どうか忘れねえでおくんなさい」 と言って立ち去るのを見て、おたかは、気持ちは変わっていない、やっぱりだめかとしょんぼりするのです。翌日、由井宿を発ち、次の宿場に向います。山街道を半次郎、金介、おたか達が別々で歩いていきます。ここで「三味線道中」の歌が流れます。♪何処へ行くのか 旅人さんは 笠に隠した横顔を 娘つばめが 覗いて通る (ここはおたか達三人の鳥追い姿で歩いている場面です。この後は半次郎が歩いていく姿の時に流れます)♪しんとんとろりと良い男 とーことろりことんとんとん (橋蔵さまの歩く姿綺麗でしょう) ここで、半次郎がお雪とのことを思い出しながら歩いているのでしょう。「いろは笠」の歌をお雪(丘さとみさん)が歌います。 ♫いろのいの字は 命のいの字 恋にゃ女は 命がけお雪「あら、お兄さん」 ♫それも承知で 振りきるつらさ (ここは半次郎が草笛を吹きます) ♬忘れておくれよ 好きで別れる いろは笠 画面は、現在に戻ります。(ここから「いろは笠」が山形英夫さんの歌で流れます。) (暫く歌と共に、半次郎の綺麗な歩く姿をご覧ください)♪いろはにほえど 他国の恋は いつか泪で ちりぬるお ♪惚れちゃなるまい 好かれもすまい 忘れておくれよ 野暮な男の いろは笠 半次郎の足が止まります。後ろからくるおたか達の方を見てから、休んでいる二人連れのところにより 半次郎「失礼さんでござんす」と言うと、顔を検める様に笠をあげます。 (いままでの半次郎のセリフもそうでしたが、ここからの半次郎のぽんぽんとしたやくざ言葉、書くとなると非常に難しい。映画を見ながらですと、意外と画面に集中して台詞はこんなものかと聞いているのですよね。またこのセリフ回しを橋蔵さまがうまいので、真剣に聞くと、ちょこっとずつ、言葉を詰めたり流すのです。さすが上手いものです。やはり、橋蔵さまのやくざものが良いのが分かります) 二人の名を聞き、半次郎「申し遅れやしたが、手前は草間の半次郎。事改めて申し上げるまでも ねえ、お二人さんとも先刻ご承知のはず」小平が顔も名も初めてだと言います。半次郎「その言葉に嘘はねえか」小平「ねえとも」 弥吉「ねえよ」半次郎「なるほどな。へぇっ、こいつはおいらが間違ってた。お二人さんのその 面つきじゃ、このぐれいのことじゃ泥は吐くめい」半次郎は二人から離れると、見張るように石に腰掛け、半次郎「動くとためにならねえぜ、じっとしてろい」 小平「どうするおつもりだねえ」半次郎「今に分かる待ってろ」(その間にも、半次郎はお雪のことを考えているような表情を見せます) (橋蔵さまのちょっと視線を下に向けた憂いのある表情は、見ている私たちを引きこむ魅力があります)半次郎「おう、三人さん、こんな所でうろうろしていると、狼の餌食になるぜ。 早くいきなせい」おたか達が通り過ぎ、小平と弥吉も行こうとした時、半次郎が前に立ちはだかり 半次郎「動くんじゃねえ」 半次郎「へっ、手の内は知ってるだろ、斬られたくなかったら、おとなしくそこ にいろ」 そこへやってきた金介がおたか達と先に行こうとしたが、半次郎に呼び止められます。小平と弥吉の二人とはいつからの付き合いかと聞かれ、三人はお互いにないと慌てています。金介が面識はないのだから二人の疑いを解いてくれるようにお願いします。半次郎「それ、おめえ、自分の首にかけて言うんだな」 金介は、半次郎に嘘をつける男ではない、と言います。はなからの悪党でない金介がそう言うなら、この幕は引く、と言って金介を行かせます。(ここで、抜いていた長脇差を鞘におさめるのですが、くるりとまわして・・格好良いのです)半次郎「後日のためにいっとくが、ことの次第がはっきりして、もしおめえさん がたに用の出来た時には、俺は何処の果てえだって出かけて行く。 草の根分けたって逢わずにはおかねえから、その覚悟でいな」と言って半次郎は旅を急ぐのでした。 半次郎がついているのでは、おたかには近づくのは命がけ・・500両は無理だという弥吉に、小平はおたかには追ってがかかっている・・その追っ手にきっかけをつけ500両を頂き、半次郎の始末をつけさせればよいというのです。 続きます。
2017年08月06日
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今限りきっぱり心の仕切りをつけますぜ松平江戸家老高坂格之進の手先の赤戸武兵衛は戸倉屋の彦作と隠居の彦右衛門を連れ、おたかを追っています。追いつきたいので急いでいるのですが、彦右衛門は駕籠に乗り出来るだけゆっくり行こうとしています。(伊東亮英さんの彦右衛門さんが、この作品の中でホッとする瞬間を作っています。彦右衛門さん物分かりがよくしっかりしている)上方方面に歩いていた二人連れの鬼の小平と役者の弥吉は、高坂が手をまわしている先ぶれの三吉から戸倉屋の娘を見つけ知らせたなら500両が出ると聞き、後戻りするのでした。一癖ありそうな二人です。半次郎は今日も行く先々でお雪のことを探し聞きながら歩いています。おたか達とまた会った半次郎は足を速めます。それを見ておたかは二人に先に行くと言って半次郎の後を追います。(ここから、少しの間、橋蔵さまと千原さんの江戸っ子のポンポンという何とも言えない会話にご注目してください) 追いついたおたかは半次郎をこのように見て、・・半次郎はこのような表情をします。 さっさと行く半次郎におたかはついて行きます。半次郎「何だ」おたか「何です」半次郎「何か用かと聞いているんだ」おたか「いえ、別に」半次郎「そんなら、とっとと先へ行け。行くのが嫌ならうしろへ下がれ」 おたか「おや、とんだ言いがかりをおつけなんですね」半次郎「言いがかりだと」おたか「この街道はお前さんだけのもの?他の者が気ままに歩いちゃいけないとで もおっしゃるんですか」半次郎「へっ、屁理屈を叩きやがる」半次郎はおたかにかまってはいられないと歩き出します。 着いて来るおたかに半次郎が話かけていきます。半次郎「おめえ、生まれは何処だ」おたか「江戸の神田ってとこ」半次郎「名は何とゆう」おたか「おけい」 半次郎「そのおけいさんが、この俺に付きまとう魂胆のほどは何だ」おたか「分からない」半次郎「分からねえと」おたか「どうしてだか、自分で自分が」半次郎「ちぇっ」 (半次郎、おたかにちょっと心を許したかしら・・・) 半次郎「女だてらに酒ばかり飲んでいやがると、どうせ末はよくねえぜ」おたか「そうかしら」 (力なく言います)おたかに気を許してきたのか、妹お雪の話をするのです。半次郎「論より証拠。俺の妹のお雪とゆうのは、心の痛手を酒で消そうと日ごと飲 んだくれているうちに、ついしたはずみで悪い野郎の口車に乗り行方知れ ずになってしまった。その頃俺は旅かけていて、どう手の打ちようもなか ったが、過ぎて一年、今頃は何処にどうして」 おたか「わかった。お前さんの訪ねているって人は、その妹さんだったのね」半次郎「そうよ。だから、どんな訳があろうと酒だけは飲むな」おたか「はい、これからはけっして」 おたかも半次郎に好きな人がいると思っていたのが妹だと分かり、さっきまでとは違って素直になり、仲良く歩く二人の後ろ姿です。(大店のお嬢様でこういう性格の役は千原しのぶさんはピッタリ。橋蔵さまとも気が合い、次回作「ふたり大名」でも、橋蔵さまとの共演者が続くのです) あとから来ていた金介が、今晩の宿は由井の菊屋だと言います。 由井宿に金介とおたか達の姿がありました。おたかが半次郎も必ず同じ宿に泊まるのか聞いていた金介を鬼の小平と役者の弥吉が見つけます。この三人は昔の相棒のようです。金介が連れていた中に戸倉屋のおたかがいることを知り、分け前は三人でといわれ、金介は仕方なく呑みこむのでした。しかし、そこで草間の半次郎と言う男がついていることを金介は話すのです。強い弱いの話ではなく、半次郎に対して”八分の引け目”弱みがあると言うのです。それは、去年江戸から連れ出して、自棄になっているのをいいことにして、さんざん悪事の手先に使い女郎に売った、今は鞠子の宿にいるお雪の兄貴だと言います。鬼の小平は半次郎が明日鞠子の宿に入ってお雪にあえば面倒になる、今夜半次郎をかたずける話になりました。足を洗ったのだから片棒は担げないという金介ですが、手引きをするようになってしまいます。 菊屋に半次郎も草鞋をぬいていました。半次郎の部屋に、おたかが訪ねてきます。半次郎は、「近くに寄るな」とおたかに言います。心の底が分からない、勘ぐれば勘ぐる程その正体がぼやけてくる・・だから気味が悪いと言います。用がなければ部屋へ来てはいけないのかと言うおたかに、用もないのに差し向かいになるほど、親しい仲ではない、と言うのです。おたかは、妹がどうして身を崩したか聞いてきます。半次郎はおたかが戸倉屋の娘とは知らずとうとう言ってしまいます。半次郎「持ち崩したそのもとは、戸倉屋彦作だ」おたかは、はっとします。半次郎が言います・・彦作は遊びのつもりだったろうが、お雪には心底からの恋だった。その夢が破れては自棄にもなるだろう。・・それを聞いていたおたかがうなだれているのを見て・・・半次郎は何かを感じたようです。 (ここから半次郎の言葉がきつくなります) 半次郎「どうしなすった、おい、おけいさん」 おたかが顔をあげ、半次郎を見つめます。半次郎「泣いていなさるようだが、どうしなすったね」おたか「はい、あんまり世間が狭いもので」半次郎「どう世間が狭いんだ」 おたかは自分も戸倉屋には恨みがあると言います。半次郎は腹が立っているように、おたかに詰め寄ります。おたかが矢場で・・・と言った時、半次郎「待ちなせい、見たところ俺の目には、矢場女の人品とは思えねえが」おたかは、本当に矢場にいて、戸倉屋彦作の口車にのせられ・・・と言った時、半次郎は「いや、分かった。そのうえ何も言いなさんな」(おたかは、はっとします)(半次郎は何かを抑えているのです。言葉がきつい。おたかに腹が立っているのかもしれない、もしかしたら、今までの行状から見ていて、気がついているのかもしれない) 半次郎、少しの間気持ちを抑えると、おたかに言うのです。半次郎「二度とねえ折だから、男らしく打ち明けますがね、わっしは、口じゃぽん ぽん言ちゃいるが、実のところおめえさんという旅の道連れに、けっして 悪い気持ちは持っちゃいなかった。だが、今限りきっぱり心の仕切りをつ けますぜ」 引き取ってくれと言って、後ろを向いた半次郎の背中は震えていました。(おたかに心が揺れている半次郎ですが、妹の敵とかかわりのあると見たおたか、これ以上深入りをしたくないためのきつい言葉を発したのでのでしょう) 続きます。
2017年08月01日
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