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・・「多加女」・・「多加と言ってくださいましたね」新吾の前に跪くと、清七は「お役者あがりの清七とは仮の名、誠は酒井讃岐守の家臣、甲賀新八郎と申すもので」と名乗ります。新吾 「讃岐殿の家臣か」新八郎「はい、主人讃岐の命を受け、新吾様を狙う大賀陣蔵の邪魔をしておったの です」新吾 「そうだったのか」そのとき、廊下を歩いてくる由紀姫の姿が新八郎の目に入ります。由紀姫が新八郎に「ご苦労様でした」と言うと、新八郎は大賀陣蔵を打ちもらしたことを告げます。由紀姫は庭にいる新吾に気づくと、「新吾様」と走りよります。 新吾 「由紀姫殿」由紀姫は、恥ずかしそうに由紀姫「あなた様に、お逢いするために参りました」新吾 「わたしに」由紀姫「はい」 お浪という娘の案内で、二人は奥の部屋に案内されます。(由紀姫は、案内してくれたお浪がまだ廊下にいることを知っていて)、由紀姫は新吾に深くお辞儀をして、父讃岐守の命で来たことを伝え、由紀姫「何卒、当分の間、彦根に御滞在くださいますように」(お浪が片方の障子を閉めました)新吾 「何故です」新吾には、由紀姫のいうことに合点がいきません。 新吾「大賀陣蔵ごときを恐れて、彦根に匿われていることは、私の本意ではない。 由紀姫殿、あなたは私の気性をよくご存じのはずだ」(このとき、片方開いていた障子が閉められます)かしこまった挨拶を交わしていたのですが、由紀姫は障子が閉まり、お浪が行ったことを確認すると、急に態度を変え、媚びるような笑みを浮かべたと思ったら、新吾の顔をしっかりと見て、 由紀姫「由紀姫ではございません。多加とお呼びくださいませ」そういわれて、新吾は少し戸惑いを見せます。新吾 「お別れしたときに、申し上げたはずだ。・・・貴方が酒井家の姫君として現 われたとき、私の胸の中に生きて来た多加女の姿は消えてしまった」 新吾のその言葉に由紀姫が反論します・・・由紀姫「新吾様、それはあまりに勝手なお言葉です。・・・あなた様こそ、我儘なお方だと、お恨みに存じます」 新吾 「私が、勝手な、我儘な人間だと」 由紀姫「はい」 由紀姫「自分勝手な夢を描き、自分勝手に夢を壊し、女ごころなど察しようともな さらず、私の心を奪っておきながら、・・・あなたは、ひどいお方、憎いお 方です。・・・でも、わたしは新吾様が好き、新吾様が好きです」そういい身もだえしている由紀姫に言葉をかけることが出来ずにいる新吾です。 新吾だって由紀姫のことは好きなはず。恋い焦がれる苦しさに身悶えしている由紀姫が「新吾様」と言ってきたとき、新吾にもこらえていた気持ちの変化が見えました。 その瞬間、由紀姫は自分を抑制することがでず、新吾の胸に身を投げ出していきます。新吾 「姫」由紀姫「姫ではありません。多加です」 多加だといわれては、さすがに、新吾の気持ちも抑えきれなくなっていました。新吾 「多加女」由紀姫は、そう言った新吾の顔をじっと見つめにっこりして、由紀姫「多加と、・・・多加と言ってくださいましたね」 二人は無言で、お互いじっと見つめ合います。 新吾が由紀姫を抱き寄せようとすると、由紀姫はハッとしたように身を縮めますが、新吾はも一度強く抱いていきます。 そのとき、誰かが部屋の方へやってくる足音が聞こえ、慌てて二人は離れます。 お浪がお茶を持って来たのです。二人の間に気まずい空気が少しの間流れます。戸惑いを隠し新吾は、お浪を意識して由紀姫に声をかけます。新吾 「あなたも旅疲れのはず、今夜はおやすみなさい」由紀姫「いいえ、わたくしは・・・」新吾 「でも、今夜はもう遅い。・・・明日ゆっくりお話を聞こう」新吾はそう言い、足早に部屋を出て行きました。 あなたが邪魔をしなければ・・・と、由紀姫はお浪を睨みつけます。二人で過ごせるはずだった夜は・・・。新吾も由紀姫も床に入ってもなかなか眠れない様子です。 続きます・🎥『新吾二十番勝負』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。新吾二十番勝負・・・(1)新吾二十番勝負・・・(2)新吾二十番勝負・・・(3)新吾二十番勝負・・・(4)新吾二十番勝負・・・(5)新吾二十番勝負・・・(6)新吾二十番勝負・・・(7)新吾二十番勝負・・・(8)この記事の下のコマーシャルの下にも、橋蔵さんに関するものを載せています。時々下の方までスクロールしてみてくださいね。
2025年07月25日
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刺客?あの清七と名乗る男がそうではないか酒井讃岐守は、新吾を父子対面の日まで彦根に引き止めておくため、新吾のあとを由紀姫に追わしたのです。その由紀姫は町人の娘多加になり、彦根に向かっていました。水面を見つめていると、「多加女、・・・貴方は普通の女ではない。何かすぐれたものを持っている。私は多加女が好きだ。・・・今まで逢ったどの女の人より好きだ」と恋い焦がれる新吾が現れます。何としても引き止める、彦根で上様と御対面していただくのです、と強い決心をするのです。 新吾は彦根城に着いていました。井伊直惟と家老夏目外記とが話をしていて、六平太が夏目の甥の夏目六平太と告げられます。夏目六平太が新吾に挨拶をします。六平太「お許しくださいませ。なにぶん主命なれば」 井伊直惟が「私が命じたのです」と言い直惟 「実は、酒井讃岐守様から、あなたの身辺お守りするよう頼まれたのです」新吾 「讃岐殿から」新吾の評判を恐れた西丸の太田備中守が秘かに刺客を送っている、というと、新吾は「刺客?」と・・・ 新吾は六平太に聞きます。新吾「白根弥次郎という男では」六平太「いいえ、伊賀流の達人、大賀陣蔵とか」新吾「伊賀流の忍者」もしかして、あの清七と名乗る男がそうではないか、新吾の中で疑惑が深まっていったのです。 その清七は、薬売りの姿をした大賀陣蔵が彦根に入ったのを見て、新吾の近辺に来ていることを察します。ある夜、寝静まった頃、清七が部屋から出て動きます。新吾はそれを察知します。忍びの支度をした清七が外の様子をうかがいながら動き廻るのを新吾が見ていました。 清七が「あっ、新吾様」と言うと、新吾はやはり刺客であったかと思い、新吾「とうとう化けの皮がはがれたな。・・・わしをつけ狙う忍者とは、お前のこ とだったのか」 違うという清七の言葉を新吾は受け入れません。新吾 「黙れ。伊賀流の大賀陣蔵とは、汝のことであろうが」新吾に何かいおうとした清七が、屋根の方に目をやるや「あっ危ない」と叫び、新吾も屋根の方に視線を走らせます。 暗闇につつまれた中、新吾目掛け手裏剣が次から次へ飛んできます。 その隙に屋根にあがり、大賀陣蔵であろう黒装束と闘っている清七を見守っている新吾、そこに六平太が大勢の者を連れやって来ます。陣蔵は引きあげようと下に飛び降りた時、新吾が振り下ろした一刀に傷つきますが、素早くその場を逃げて行きます。 賊を追おうとする清吉、六平太に、新吾は「追いかけても無駄だ。・・・到底お前達でも追いつくまい」といいます。かぶり物をとった清七に向い、「貴様も仲間か」という六平太に、新吾が「違う」と、新吾「清七のおかげで、わしは助かったのだ」 清七「何卒、お許しください」清七は、新吾に身分を明かすことになります。 続きます。🎥『新吾二十番勝負』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。新吾二十番勝負・・・(1)新吾二十番勝負・・・(2)新吾二十番勝負・・・(3)新吾二十番勝負・・・(4)新吾二十番勝負・・・(5)新吾二十番勝負・・・(6)新吾二十番勝負・・・(7)この記事の下のコマーシャルの下にも、橋蔵さんに関するものを載せています。時々下の方までスクロールしてみてくださいね。
2025年07月14日
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