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東京の一日の新規感染者が再度の9千人を超えました。中国の武漢での発生当初に情報操作があり653人を41と報道し、春節も警告無し警戒無し、マスク無し。これが武漢での当初の実態だった。現在の感染者累計は7万人を超えている様です。感染者は191の国と地域で約8200万人、死者は約180万人を超えた様です。世界保健機関(WHO)によると、世界の感染者の約7割、死者の約8割が欧米に集中している様です。アメリカの累計感染者は約1950万人、死者は約33万人を超えた様です。英政府によると、12月29日の新規感染者数は初めて5万人を超えた様です。この実情から中国政権による自国民を犠牲にした世界的疫病テロとの疑惑も納得できます。なにせ、新幹線の事故ま時に回りに泣き叫ぶ遺族がいるのに遺体と一緒に車両を地面に埋めてしまう国ですから、コロナで一般人が何人犠牲になっても欧米が犠牲になれば良いのでしょう。中国要人の感染者がいない様ですから。-----おしまい
2020.12.31
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<忠相 来訪>-----#195 読売が売られた日の夕餉の刻に橘道場に武士の来訪が有った。 応対に出たのは老婆で伝言を持って食堂にやって来た。 「お客人じゃがね、道場は終め~じゃ言うても帰らん、若旦那さんに言伝を言うでな、ただすけ・・・言うたかのぉ~・・・」 「しまった」 少年が嘆いた・・・誠一郎である。 「どうした、誠一郎」 小兵衛が問うた。 「はぁ、本日、出仕しました直後、父上に呼び出されました、そのおりに今晩付き合えと願われました、が、別口が既にあります、と答えました・・・まさか行先を当てられるとは」 「其方の父上は伊達に奉行の職に着いておるのでは無いわ、其方が出迎えて参れ」 「ははぁ~」 誠一郎が項垂れて玄関へと向かう背に大合唱が響いた。 「未熟者、未熟者、未熟者」 誠一郎が益々項垂れて玄関へと向かった。 編み笠を左手に右手に太刀を持った忠相が項垂れた誠一郎を従えて食堂へ入って来た。 「これは、此れは、大活躍の皆様がお揃いで、まずは此度の助成に感謝致す」 入って来るなり正座し皆に向かって拝礼した。 皆が驚きの眼で見つめ龍一郎が笑った。 「はぁはぁはぁ」 またまた皆が驚いた、龍一郎が高笑いする処など見た事が無かったからである。 「ふぁふぁふぁ」 忠相も釣られる様に高笑いし、三度、皆を驚かせた。 「大岡様は誤魔化せまい、と思うておりました」 「密かに始末する手もあろう、龍一郎殿」 「それは全く考えも致しませんでした、悪しき者にも悪しき行いは成りませぬ、同じ悪しき者になる事だと思うております」 「うむ、皆が其方と同じ思いで有れば奉行所など要らぬのにのぉ~、まぁ少なくとも、ここに居る者は同じ考えであろう」 「誠一郎殿、父上の席を其方の隣に御作り致せ」 「はぁ~」 「誠一郎、儂が来て迷惑を掛けたようじゃな」 「大岡様、我が亭主が申しました様に予想はしておりました、御気に為さらずに寛いで下さりませ」 佐紀が大岡に茶碗を持たせて酌をしながら言った。 「これはこれは天下一の女剣士殿のお酌とは誉にござる、さぞ上手かろう」 「大岡様、上様は気付かれましたかな」 「小兵衛殿、此度の始末人を知るは三人で御座る」 「大岡様、上様、そして加納様で御座いますかな」 「左様、平四郎殿」 「大岡様は某をご存じで御座いましたか」 「師匠の仲間は全て知っておると思うておったが、また増えたようじゃな」 「事の発端の娘が一人増えました」 「一人の娘からじゃと・・・詳しく聞かせてはくれぬか、龍一郎殿」 「この件に関わらぬ者もおります、本日の読売にて知った者もおります。 それ故、皆を集め仔細を知らせるつもりで御座いました。 大岡様、この娘、お雪を見出したは佐紀で御座います、佐紀、其方から話を進めよ」 「はい、旦那様・・・事は私が実家へ・・・・・・」 佐紀が初めてお雪に会った刻からの事を話始めた。 「待て、いや済まぬ、待ってくれぬか、其方らは一日で、たった一日でそれだけの事を調べたのか」 皆が不思議そうな顔で忠相を見つめた。 皆に見つめられた忠相は<こいつらは真ともでは無い、天狗か奇人の集まりか>と感じた。 「そうじゃ、新たな仲間になったお雪、其方は不思議に思うであろう」 尋ねられたお雪は小首を傾け考えて言った。 「そう言われれば、ここに来たばかりの頃は不思議に思う事もありましたが・・・今は何も不思議に思う事は御座いません」 「ふぅ~、化け物どもに囲まれておると化け物を見慣れてしまうと言う事か」 「父上、我らは化け物ですか」 「化け物で悪ければ天狗じゃ、天狗~」 「そんな事より、その後をお聞かせ下さいませ、高は知りとう御座います」 お高が話の続きを聞きたいと願った。 平四郎はお峰に、三郎太はお有に、清吉はお駒に、それぞれの相方に仔細を述べる様に促した。 三人の女子衆は暫く見つめ合いお駒が頷いた。 「お雪ちゃんを仲間に加えるは、その家族も加えると言う事、と言う龍一郎様の言葉に従い、お雪ちゃんの只一人の肉親の婆様を佐倉へ迎えに行きました。 そして龍一郎様は辰三が悪巧みをした刻を懸念し私を婆様の変わりに佐倉に残る様に申しました。 無論、何時までもと言うものでは無く佐倉までの工程を鑑み十日と言う期限でした。 私は龍一郎様の考え過ぎと思うておりました、が、何と数日後に手下たちが本にやって参りました。 危害を加えるつもりでは無い事は解っておりましたので、龍一郎様の指示通りに御府内まで言われるがままにやって来ました。 奴らの歩みの遅い事、遅い事、まぁお陰で思惑通りに薄暗闇に御府内の伝馬町近くに辿り着きました。 そこで影護衛の多分、三郎太がこちらの道場に知らせて呼び寄せた援軍と共に手下と用心棒を捕らえ小伝馬町の牢屋敷に放り込みました。 これが私が知るその日の出来事で御座います、因みにお雪ちゃんの祖母は忠相様を出迎えた者で御座います」 「おぉ、あの婆様がお雪殿の婆様か、お雪、どうじゃ、一緒で嬉しかろ」 「はい、夢の様じゃ、いえ、夢の様で御座います」 「どうじゃな、婆様」 「三食、白米なぞ天国、極楽の様じゃ、罰が当たらぬるかと心配じゃ」 「そうか、天国か、長生きせいよ、婆様」 「ありがていこったで」 「それで、まだ員数が足りぬようじゃが、他の者は何処でどの様に捕らまえたのじゃな」 「父上、其れには私が関わっております」 「何、我が倅も役目を与えて下されたか、龍一郎殿・・・申せ、誠一郎」 「はい、舞殿が囮となりまして御座います」 「何、舞殿が捕まったと申すか」 「いいえ、父上、この道場を辰三の手下と用心棒どもが見張っておりました。 おそらく、婦女子か幼子を人質にと考えての事と思われますが、当道場に出入りする者の多くは三奉行所の与力・同心が多う御座います。 奴らが容易に人質に出来る者など居りませぬ、そこで舞殿に旗本の子女、お嬢様に扮して頂き、私はその付き人、護衛、用心棒に扮しまして御座います。 理由を着けて帰りを舞殿一人の囮とし小伝馬町近くまで奴らを引っ張りまわし一網打尽と言う訳で御座いました」 「そ奴らがあの廃寺におった者たちじゃな」 「左様です、父上」 「うむ、それでも、まだ員数が足りぬ様じゃのぉ~」 「後は、辰三一家と旗本屋敷じゃ、此処に居る者のほとんどで回りから一人一人排除して行っただけの事じゃ、まぁお高とお花は居らなんだがのぉ~」 小兵衛が簡略に説明した。 「小兵衛様、何故に私たち二人にお声を掛けて頂けませんでしたのでしょう」 お高が参加できなかった事に不平交じりの声で尋ねた。 「許されよ、お高、責任を転嫁する訳では無いが儂は呼ぶつもりであった、だがな龍一郎が許さなんだ」 「龍一郎様、何故で御座いましょう、私とお花は技量が足りぬのでしょうか」 「お高殿、其方の技前は十分な物じゃ、お花殿もな、だが、其方らがお店をあの時刻に留守に出来るかのぉ~、出来まい、以前から申しておろう。 其方らがお店を開けても良い様にとな、清吉とお駒の二人は正平夫婦を育てた、故に参加を願った。 解って貰えたかな、お高殿」 「解りまして御座います、龍一郎様」 「改めて言うておく、其方が信頼出来る者を育てる事じゃ、佐紀がお雪を見出した様にのぉ~」 「お雪を私に預けて頂く訳には参りませぬか」 「それは成らぬ、お雪の後見は見出した佐紀じゃ、焦らずに信頼に足る者を心して置く事じゃ、良いな」 「はい・・・龍一郎様は佐紀様の何処に才を見たので御座いましょう、佐紀様はお雪の何処に才を見たので御座いましょう、清吉殿は正平の何処に・・・」 「それは私もお聞きしとう御座います」 佐紀が龍一郎に尋ねた。 「其方が廊下を歩いて来る刻の歩みの音じゃ」 「歩みの音??? 廊下を歩く音で御座いますか」 「左様、其方の歩みの音が弾む様でなぁ~」 「それ程違いが御座いましたか???」 「そうよなぁ、足腰の強さを感じさせる程にのぉ~、聞けば幼き頃より寺社仏閣参りを日課としておったとか」 「佐紀殿が寺社仏閣巡りをのぉ~、それも幼き頃からとはのぉ~」 「お雪も近くの寺を日参していたそうな、長い階段を登ってと申しております、大岡様」 「其方と同じと言う事かのぉ~、佐紀殿」 「龍一郎様、では、あの場で私を嫁にとお考えに成られましたのですか、旦那様」 「今では其方の歩みの音は聞こえぬが、あの音を聞いた刻に嫁にしたいと思うた、其方が受けてくれるとは思いもせぬ事であったがな」 「運命(さだめ)を感じました」 そう言った後、佐紀は龍一郎を見つめ龍一郎が見つめ返した。 「其方らの縁の話では無い、佐紀殿、其方はお雪の何を聞き見て才を感じたのじゃ」 見つめ合う二人に小兵衛が割って入る様に問い掛けた。 「はい、お雪は立ち上がる刻に手も付かず立ち上がりました。 それは見事な立ちい振る舞いで御座いました」 「其方らは眼も特別の様じゃのぉ~」 小兵衛が感慨深げに宣った。 「父上、旗本と城の重鎮、大奥の年寄りはいかがなりましたでしょうか」 「うう~ん、其方、まだ聞いておらぬのか???」 「はい、何方かご存じですか」 「・・・」 誠一郎が回りの人達を見渡した、吊られて舞も見渡した。 「どうやら、知らぬは其方ら二人だけの様じゃな」 「・・・」 「家名は伏せるが大目付は罷免・御家断絶、御典医も罷免・御家断絶じゃ、大奥・年寄りは宿下がりの命が出され城を出た処を捕縛した・・・可哀そうに、この年寄りに唆されし者、数名も後から宿下がりと相成った」 「その者らに、御咎めは無しで御座いますか」 「其方、平四郎と申したな、其方、阿芙蓉の切れた者の行く末を知るまい。 真、酷いものでな、身体から・・・食しておる刻ゆえに詳しくは言わぬが本人にとっても家族にとっても地獄であろう」 「なかなか止められぬ、と聞いておりますが」 「娘の為に手に入れ様とする者もでようなぁ」 「それを奉行の配下なり密偵なりが後を着け、お医師、薬種問屋を突き止める、と言う訳ですかな」 「小兵衛殿、儂には密偵などおらぬ」 「そう聞いておきましょう」 「大奥へ入る程の器量良しじゃ、薬さえ抜ければ良い嫁の口が見つかるであろう、抜ければな」 酒を飲んだり夕餉を食しながら、あれこれと話が弾んだ。 「おぉ忘れておった、余りの楽しき夕餉故にのぉ~。 評定での事じゃ大目付が吐露されて解ったのじゃが広い雑木林と廃絶となった旗本屋敷を我が物としておった。 屋敷は妾に与え林は別邸でも建てるつもりであったようでな、呆れ果てたわい、上様にご報告申し上げた処、拝領屋敷は取り調べ書きに載せよ、が記録に無い旗本屋敷と雑木林は取り調べ書きに載せずとも良いと言われた。 龍一郎殿、上様は此度の褒美に其方に取らすと言うのじゃ、どうじゃ受けてくれるか」 「忠相様、御受けいたさば我らの成した事と認めた事となりますが・・・」 「良いでは無いか、此処に居る者以外では上様と加納殿しか知らぬのじゃによってなぁ。 それにな、その旗本屋敷は何とこの道場の隣でな、元はこの道場と同じ屋敷であった物じゃ、どうじゃ断れまい」 この知らせに龍一郎には珍しく言葉に詰まった。 「願っても無い申し出で御座います、御受け致します」 「そしてな、雑木林の場所じゃが、加賀前田家下屋敷裏でな・・・縁を感じぬか??? どうじゃこれも断れまい」 「忠相様には逆らえませぬな、上様に御礼をお願い致します」 「上様はな、場所を御知りに成られた刻に即刻、其方にと決められた様じゃ。 上様は其方に世話になるばかりなのを気にされておった。 これで少しは恩を返せたと喜んでおられた」 「上様は武人の統領に御座います、誰にも恩を感ぜずとも良いのです」 「儂は初めて知らされた、庭甚八殿の事をな。 上様は其方に何かで報いたいと思うておったのであろう」 「上様にお伝え下さい、龍一郎、確かに頂戴致します、実りあるものにして見せますと」 「解った、伝えよう、さぞや御悦びの事であろう」 忠相は懐から土地の登記権利書を差出し龍一郎は拝礼し受け取った。 「龍一郎、どうするな、何をしようと言うのじゃ」 「まぁ、楽しみにお待ち下さい」 「いやはや、甘露な酒(ささ)で御座った、此れにて暇致す」 「大岡様、毎夜、役宅へ戻られますか、こちらにお泊りになられませぬか」 「そうしたいが役目柄そうもいかぬ」 「戻られぬ刻は勿論奥方様には知らせを致しましょうなぁ」 「それもそうしたいがままならぬ」 「では、本日はこちらにお泊り下さい、皆も泊ります・・・そして、明早朝、庭にて日課の修行を致します」 「・・・泊めて頂こう」 「ならば、もう一献」 「頂こう」 忠相も泊る事となり、今暫くの宴が続いた。 無論、忠相の妻女には泊まる知らせが届けられた。 届けたのは誠一郎と舞だった。知らせだけで退去するつもりの二人であったが誠一郎の母はそれを許さず半刻も留め置かれた。 何事にも動揺せぬ様に鍛錬して来た舞も誠一郎の母親に会うと知ると表情が固まる程に動揺していた。 二人が暇(いとま)を告げ立ち去る刻に母が息子・誠一郎に言った。 「良い、娘子を見つけましたな、手放しては成りませぬぞ」 「・・・」 「・・・」 「はい、手放しませぬ」 そして、母親の前から二人の姿が消えた。<つづく>
2020.12.31
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世界の感染者の累計が8000万人を超えました。イギリスの一日の感染者が4万人を超えました。イギリスで見つかった変異種がスペイン、アイルランドでも見つかっています。スイスで隔離中のイギリス人の420人中の200人が隔離先からいなくなり、行方が解らないらしい。世界中に監視カメラが多数ある現代に不思議な事です、スイスにはホテルにも街頭にもカメラが無いのでしょうか???旅行に行って10日間の隔離は大変ですが、事前に解っていたはずです。200人もの大人数の移動です、現地在住のイギリス人がバスを4台、5台を準備しての計画的な行動と思います。スイスでは隔離中の外出は処罰の対象です、犯罪です、陽性者がいない事を祈ります。-----おしまい
2020.12.30
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九月、高松で二人の我が子を車内に放置し死亡させた母親の名前が「マリア」だった、名前が行いには繋がらないのか??? 私は自分の名前に入っている「誠」を意識して生活してきました、世界中の人々は自分の名前を意識して行動しないのでしょうか???菅内閣の支持率が大きく下落したそうです、理解できません、まだ期間が短く判断できる段階では無いと思います、いろいろな対策も迅速でどちらかと言えばこれまでの総理よりは適格だと思うのですが・・・。確かに、安倍さんよりは答弁に迫力がありませんが、行動の方が大事です。隣の二国から邪魔だと嫌われる総理になってほしいものです。優しく見える人に漬け込むのでは無く、優しい人にはより優しい態度で返す人に成りたいと思っています。菅総理も優しく見えます、TVだけでは無く普段も優しい人であってほしいと思います。議員の不祥事が続いています、さっさと検証して辞職勧告を望みます、連日のニュースは不要です。-----おしまい
2020.12.29
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東京都の一日の新規感染者が900人を超えました。フランスでは一日の新規感染者は2万人を超えています。日本でもイギリス便のパイロットがイギリスの変種に感染しました。20代の女性家族も一人感染した様です。この件で驚いたのは20代の女性に渡航歴がない事、今時の20代の女性に渡航歴がないなんて不思議です。もう一つ、パイロットは検査義務が無かった事です、何故??? 一番必要では ??? 不思議です。日本は外国人の入国を禁止としました。最高水準の対策に近い、次はロックダウン、次は営業停止、次は外出禁止、次は・・・。今は感染し易い時期です、経済を考えている場合ではありません、最大最高レベルの対策を一気に行う必要があります。日本では、まだワクチンの接種が始まってしません、副作用の有無が不明だからでしょうか???私もワクチンの接種が始まっても直ぐには参加しません。通販を利用し完全自宅待機で接触を避ける事に徹します。富山県で国会議員が30人の会合に参加しました。国民の模範となるべき人の行動とは思えません、誤るだけでは許されません。国民の代表たる資質が欠如しています、辞職するべきでしょう、が、本人は悪い事をした意識が多分無いでしょう、「あぁぁ、見つかった」くらいの意識しかないのでしょう。一年前には、此処まで大事になるとは誰も予想しなかったでしょう。治療薬の早期開発を期待します。-----おしまい
2020.12.28
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<辰三 捕縛>----#194 それから四半刻後、月番の南町奉行所に投げ文が有った。 その文は見つけた門番が宛名を見て大急ぎで同心に渡され受け取った同心は、これまた宛名を見ると大急ぎで与力に、与力は年番方与力へ、年番方与力から内与力へ、最後に宛名の奉行に渡された。 封を切った奉行の大岡は一度黙読するともう一度ゆっくりと黙読し内与力に緊急出役を命じた。 奉行所は奉行の出役に大慌てとなった。 大岡は出役装束を着る前に文を一通認めた、その文を内与力の一人に託し代役で届けさせた。 その文の届け先は大岡と入魂の付き合いのある目付の役宅であった。 大岡は出役の組を五つに分け与力に指揮を委ね仔細を説明した。 その説明を聞いた与力たちは驚きと興奮に指揮が高騰した。 今回の捕縛は御禁制の品の中でも最重要とされる阿芙蓉に関する物だけに、忠相は使える手駒を全て当てた。 忠相は配下の者たちを三つの組に分け、組頭に年番方与力と与力の十兵衛を当て、残りの一組は自らが指揮する事とした。 年番方与力は三十名の配下を連れ廃寺へと向かい、そこでこみ包みに包まれた辰三の手下たちを見つけ小伝馬町の牢屋敷へと引き立てて行った。 与力の十兵衛も配下の者たちを連れ、こちらは辰三の家へと向かい、そこで後ろでに縛られ猿轡を噛まされた辰三の手下たちと辰三本人を同じく小伝馬町の牢屋敷へと引き立てて行った。 忠相は佐久間頼蔭(よりかげ)の屋敷の表と裏の門に配下を配置し門前で目付の到着を待ち合流すると梯子を使い門を開けさせると忠相と目付とそれぞれの配下が屋敷に踏み込んだ。 屋敷内は森閑として聞こえる音は忠相たちが立てる音だけだった。 余りの静けさに逆に警戒心が高まり、静々と前進した。 玄関から順に部屋と言う部屋を探したが人気が無く、いよいよ主の住む部屋へと踏み込むと、そこには信じられない光景があった。 主の頼蔭と共に配下と思われる武士や用心棒と思われる武士たち、奉公人と思われる人達が縄で後ろでに縛られ猿轡を噛まされていたのだ。 そして彼らの前には山積みになった阿芙蓉と思しき包みが置かれてあったのである。 忠相と目付は早速包みの一つを手に取り阿芙蓉である事を確認すると配下の者たちに命じ小伝馬町へ引き立てさせた。 そして文机の上には証拠となる阿芙蓉の取引の証書が山積みされていた。 忠相と目付は一部の内容を確認し容易ならざる書き留めを見つけた。 其処には城の重職に着く者の名もあったのである。 一人は大目付、一人は御典医、一人は大奥の年寄りであった。 忠相と目付はお互いを見つめ合い頷き合うとその一冊を忠相が懐に仕舞い他の書付を配下の者たちに運ばせた。 本来なれば、武家の旗本を小伝馬町の牢屋敷へ入れる事は無い、だが旗本を監督する目付が同道しているが為、旗本の職責剥奪を評定に掛けると明言し全員を牢屋敷送りとした。 引き立てられた旗本とその配下、辰三とその配下、合わせて七十三名を牢屋敷の二つの牢に押し込んだ。 辰三が喚き、旗本の佐久間頼蔭(よりかげ)も不当な扱いだと喚き散らしてしたが奉行所の与力・同心は勿論牢屋敷の牢番も全く相手にしようとはしなかった。 彼らは役目柄、甘い言葉には慣れており、それに乗った結末も十二分に知っていた。 それでも時々は誘われる者もいて、その結末も見て来ていた。 忠相と目付は急遽、城へ上がり御側御用取次の加納に目通りし上様との面談を願った。 御側御用の加納に見つけた書付と仔細を述べ至急の面談を願った。 事の仔細と証拠の書付を見せられた御側御用の加納は上様の元へ出向き全ての予定を取りやめ忠相と目付の面談とした。 「忠相、酒井、ご苦労じゃな」 「上様、お忙しい処、至急の面談恐れ入りまする」 「して、証拠の書付とやらは」 「はい、此処に」 忠相は懐から帳面を出して加納に渡した。 加納から受け取った帳面を開き黙読し始めて吉宗は時々唸り最後まで読むと帳面を閉じ暫く瞑目した。 「両名、手柄であった、だが、解らぬ事がある、この探索を進めて居れば必ずや此処に記された者たちからの横槍が入るは必定ではないか、いかにして、この者らの眼を欺いたな」 「はぁ、正直に申し上げます・・・奉行所への投げ文にて捕縛へ向かいました」 「何、投げ文じゃと~・・・悪戯かも知れぬでは無いか」 「その文が達筆にて御座いまして・・・」 「字が綺麗故、悪戯では無いと思うたか」 「上様、私、文の字に見覚えが御座いました」 「何、其方の存じおりの者・・・そうか、そうか、成程のぉ~」 「失礼ながら、上様、上様も忠相殿も投げ文の主をご存じで御座いますか。 我らが駆け付けました刻には既に皆が縄で縛られ我ら何の苦も無く引っ立てただけに御座いました。 投げ文の主の手柄と存じます、七十名を超える数の捕縛で御座いました。 その様な御仁にお二人は心当たりが御座いますのでしょうか」 「酒井、これ以上の詮索はするで無い・・・其方と忠相の手柄で良いでは無いか。 その事よりも、此処に記してある三名の者の処置、いかがいたす所存じゃ」 「至急、評定を開き三名と旗本をその場に立ち会わせとう御座います」 「大奥の年寄りじゃぞ、評定と言う訳にも行くまい」 「はぁ、上様の名代として、ここに居られる加納様のご出席を頂ければと存じまする」 「爺を名代にか・・・良かろう、考えおったな、忠相、手が無くば儂が出ると言うたものを・・・」 目付の酒井が呆気に取られた顔で三名を順番に見つめた。 上様が評定に出るなどと前代未聞な事、それさえも考えさせる程の信頼が忠相にあると言う事実に驚いた。 翌日、城内に大目付罷免・御家断絶、御典医罷免・御家断絶、大奥・年寄りは宿下がりの上、即刻の捕縛との噂が流れた。 その頃、市中では辰三の悪行の数々と刑が書かれた読売が売り出された。 その最後に旗本の一人も改易になったらしいとの仄めかしも記されてあった。 その読売を読んだ、聞かされた中には辰三に給金を吸い取られていた娘たちもいて胸を撫で下ろし、岡場所に売られた娘は里へと帰る支度を初めた。 中でも辰三に寄って闇で妓楼を買い取ろうとしていたとの件では吉原会所が大騒動になっていた。 全くの寝耳に水で気づいてもいず、何処の妓楼だ、ガセネタだ、と大騒ぎになっている処に中妓楼の主が四郎兵衛に面談を求めに来て、読売が事実である事が判明した。 主は読売にまでなっては隠し通せる物では無いと観念し四郎兵衛に許しを請いにやって来たのである。 四郎兵衛は誰かは知らねど、この一件を始末してくれた者に借りが出来たと思った。<つづく>
2020.12.27
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ネットでコロナを調べました。<感染者の多い国>▽アメリカで1823万242人▽インドが1009万9066人▽ブラジルが731万8821人▽ロシアが287万8382人▽フランスが254万7577人<死者の多い国>▽アメリカで32万2765人▽ブラジルが18万8259人▽インドが14万6444人▽メキシコが11万9495人▽イタリアが6万9842人・凄い人数です、人数だけを見ると第三次世界大戦かと勘違いします。昔、流行したスペイン風邪と比較するとどうなのでしょうか???ペスト、黒死病とはどうなのでしょうか???・発生源とされる中国で余り感染していないのが気になります、陰謀説も納得です。-----おしまい
2020.12.26
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日本の一日の新規感染者は二度目の3千人超え、一日の死者も56人、累計では20万人。アメリカでは一日の新規感染者が20万人、累計は1500万人を超えていると言う。死者は第二次世界大戦での人数を超えているとの事です。イギリスでは新車が発見され、南アフリカからの帰国者からまた別の新種も見つかったと言う。一日の新規感染者は3万人を超え累計では170万人を超えている。イギリスの新種の報告で各国では即時にイギリスからの入国を禁止して対応が早くなっている。イギリスの町中の映像でマスクをしていない人がまだ相当数みかけました。日本ではコロナ以前からマスクをしている人が多かったのでマスクに対する抵抗感が無いのが幸いしている様です。日本の町中の映像ではマスクをしていない人はいませんでした、が、人数は発生当初より多い様です。各国でワクチンの投与が始まっています、副反応も若干ある様ですが・・・。ワクチンばかりで治療薬の報道が全く無いのが気になります。安心感と終息には治療薬が必要です、早期の開発を期待しています。-----おしまい
2020.12.25
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<二人のゲスト>-----#037「お嬢様、お帰りなさい、奥様と彼は・・・後ろでしたか、お二人のお客様も一緒ですか」「ええ、ジョナサンとカトリーヌよ、泊って貰います」ゲートが開いて車は敷地に入り何時もの玄関手前の道の脇に止まった。「さぁ、着いたわよ」キャサリンがそう言い後ろのトランクを開けるキーを押し車を降りた。続いて皆が降り、ジョナサンが後ろのトランクからカリーの荷物を降ろしてあげた。「ありがとう」カリーが荷物を受け取ろうとすると「このまま私が運びましょう」「ありがとう」玄関のドアが開き執事が皆を出迎えた。「奥様、お嬢様、桜井様、お帰りなさい、二名のお客様で御座いますね」「そう、お願いね」「畏まりました、ようこそお出で下さいました。私はマサトと申します、御用が有れば何なりとお申し付け下さい」「ジョナサン・シーモアと言います、こちらこそよろしくお願いします」ジョナサンはそう言って手を出し握手を求めマサトはそれに答えて二人は握手した。「私はカトリーヌ・キャロンと言います、お世話になります」カリーもそう行って手を出しマサトと握手した。皆は一旦、居間へと向かいソファーに座った、勿論、サクライ以外で、彼は何時もの様にテラスへと向かった。ジョナサンとカリーが目で彼を追った。「彼の事は気にしないで、いつもの場所に行っただけだから」「何時ものって、ここに住んでいるんですか」「そうよ、私の実家だもの当然でしょ」「本当に貴方と結婚しているんですね、でも普通は男性の家に住みませんか」「彼は日本人よ、だからアメリカではここに住んでいるのよ。でも彼にお金が無い訳じゃ無いのよ、彼は凄いお金持ちなのよ。でも、私の家族が彼と一緒に住みたがるからなのよ」「・・・あの~正直に言って良いですか」「どうぞ」「何だか詐欺師の手口を聞いている様で・・・何処かで似た話を聞いた様な・・・」「そうね、当然ね・・・あぁ、彼のお金がこの家の金庫に5000万ドル入っているわ。それって彼にすれば有っても無くても関係無い額みたいね」「5千万ドルがどうでも良い額なのですか」「彼にはそうみたいね、家族が彼を気に入っているのは勿論、お金の為じゃ無いわよ。今も手着かずに金庫の中にあるわ」「彼は何を・・・仕事は何ですか」「話の前に何か飲み物は、珈琲、紅茶、日本茶、何でも言ってみて」キャサリンの隣に座ったヘレンが向いに座った、ジョナサンとカリーに尋ねた。「僕は紅茶をお願いします」「私はオレンジ・ジュースをお願いします」「ちょっと、待っててね」キャサリンが台所に向かいドアを開けて誰かに二人の注文を伝えた。「彼は無職、仕事はしていないの」キャサリンに変わってヘレンが応えた。「無職で大金持ち・・・ですか、何かのベンチャー企業を売った訳ですか」「いいえ、ある企業のオーナーなのよ、キャシー何処の会社なの、もう良いんじゃないの」「えぇ~、上院議員もご存じ無いのですか」「そうなの、時期が来たら教えてくれるらしいのよ。でもキャシーにだけは知らせているのよ、ね~キャシー」「ええ、私は知っています、でも・・・時期が・・・来てるのかな~。それに二人も居るし・・・」キャサリンはそう言って三人を見回した。その時、テラスから彼の声が聞こえた。「良いですよ」「えぇ~、貴方、良いの」テラスからの返事は無かった。「彼が良いって言ったから言うわ。貴方たち二人はアメリカへはどうやって来ましたか」「どうって飛行機に・・・まさか、まさか・・・確かにあの会社のオーナーならとんでもない大金持ちですね」「そんな~、だってあの会社の社長をテレビで見ましたけど別の人でしたよ」ジョナサンとカリーがそれぞれの反応を見せた。「お母さんは社長じゃ無くてオーナーと言ったのよ」「オーナーなのね、処で本社は日本にあるのですか、工場は日本にあるのですか」「本社事務所はスイスに在ります、工場は秘密です、誰も知りません」「誰も、誰も知らないのですか、多分、世界中のメディア、政府が調べたでしょうが、解らない様です」「でも、勿論、彼は知っていますよね」「えぇ、当然です」「ひょっとしてキャシー、貴方も知っているんじゃないの」「さぁ~、どうでしょう」その時、玄関から声が聞こえた。「ただいま~」「あら、マーグの声ね、帰ってくるのは週末じゃ無かったの」「そうよね~、マーガレットと言って私の妹よ」居間のドアが開いて元気な娘が入って来た。「只今~、あら失礼、お客様だったのね、こんにちは」日本語から英語に切り替えて挨拶した。「おかえり、マーグ、帰るのは週末じゃなかったの」「だってつまらないんだもの、でも勉強は大丈夫だから安心して」「あんなに家に帰らなかった人の言葉とも思えないわね~」「ええ、何とでも言って、何故かお兄さんの顔を見ないと落ち着かないのよね~」母の質問と姉の嫌味ににっこりと笑って答えた。「だから言ってるでしょ、彼は私の旦那様なの」「はい、はい、解っていますって、取ったりしないから、減るものじゃ無し良いじゃ無い」「前の様に素行が悪いのも困るけど、私の旦那様にまとわり付くのも困るわね」二人の会話を聞いているジョナサンとカリーが目を丸くしていた。台所から女性が現れ四人の飲み物とお菓子を置いた。「マーグ、飲み物は何にしますか」飲み物を運んで来たヨウコが尋ねた。「面白いわね、四人がばらばらなんて・・・じゃ~私にはここに無いのは・・・珈琲ね、お願い、ヨウコ」「はい、珈琲ですね」ヨウコが台所へ戻って行った。「ジョナサン、貴方には発掘の指揮を取って貰うから私たちがエリア51に行く時に一緒に行って下さい。カリー、貴方は物理学者ですが今からは私の秘書、助手になって貰います。彼ともいつも一緒ですから物理、天文の勉強になります、今日からこの家に住んで下さい。彼の説を聞いてご自分なりに考え論文を提出しても構いません。エリア51にも一緒に行ってもらいます、宜しいですか」「解りました、彼に何でも聞いて良いのでしょうか」「聞くのは貴方の自由です、でも、彼が答える、答えないも彼の自由です。誰が聞くか、何時聞くか、に寄って返事が違うでしょう。只、言えるのは彼は嘘や誤魔化しは一切言わないし、しないと言う事です、忘れないで下さい」「解りました、あのピラミッドは本当にエリア51にあるのですか」「お二人には実物を見て頂きます、実は私もまだ見ていません、皆で一緒に見ましょう。ジョナサン、貴方が発掘の責任者です、貴方はそのままエリア51に残って指揮を取って頂きます。カリー、貴方は私たちと一緒に戻る事になります」「キャシー、私は???」「お母さんも一緒に戻って貰います」「お姉さん、そのエリア51って何、あのエリア51の事、私は聞いてはいけなかったんじゃ無いの」「勿論、極秘プロジェクトの話です、これは貴方に対するテストです、秘密が守れるかのね」「・・・お姉さん、怖い・・・」キャサリンは妹の感想など聞こえないかの様に無視した。「プロジェクトの話はこれでおしまいにしましょう。お二人、我が家のつもりで寛いで下さいね」キャサリンはそう言って飲み物を持って彼の居るテラスに行き何時もの様に彼に寄り添い眼を瞑った。「あの~、上院議員、質問しても宜しいでしょうか」「何かしら」「彼も変わっていますが、彼女も不思議な方ですね。彼女の自信と言うか、威圧感と言うか威圧じゃ無いですね、不快では無いですから・・・ええと、何と言えば良いのでしょうか、説得力と言うのでしょうか・・・」「そうなのよね~、以前はそんな事無かったのよ、私の言いなりだったのよ。でも彼と一緒にいる様になってどんどん変わって今ではあの子の言いなりよ。凄い威圧感と言うか説得力と言うか」「お母さん、まだ二人を紹介して貰っていないんだけど、何方???」「あぁ、そうだったわね・・・」ここで三人の自己紹介が始まり経歴や出身地の話になった。その最中に玄関から声が聞こえた。「ただいま~」「只今~」「あ、お父さんとお兄さんが帰って来たみたい」居間のドアが開いて二人の男たちが入って来た。「お客さんかい」ここで再度の自己紹介が始まり仕事の話や生まれや旅行の話に盛り上がった。「お姉さ~ん、ご飯よ~って、何時ものポーズね~」「えぇ」キャサリンが一瞬抱き上げられ立たされた。「ありがと」キャサリンが礼を言うと首を傾け彼にキスをした。三人が食堂へ入ると二人のお客を含めた皆が既に席に着いていた。三人は何時もの席に座った。彼の隣がキャサリンで母ヘレンの隣が兄のデビットでその隣にお客のカリーが座り、キャサリンの隣にマーグが座り、その隣にお客のジョナサンが座った。当然、当主のヘンリーは正面に座っていた。「我が家は全て日本食だ、口に合えば良いが、合わなければ言って下さい。家のコックは何でも作れますから、さて、早速、頂こう、頂きま~す」「頂きます」「頂きます」一家の皆が合掌してそう言ったので、二人のお客も見よう見真似で合掌し、皆が食べ始めた。「私は学会が日本の東京で在り日本食を食べた事が有ります、嫌いではありません、でも、此れはステーキですよ、日本食とは言えないですよね」「僕も学会で東京へ行き、京都、奈良と回った事が有ります。京都の日本食は美味しかった、只、量が少ないのには困りました」カリーとジョナサンが日本食について語った。「それは私たちも感じたな、まぁ、慣れれば・・・私たちは慣れなかったがね。量は本来の日本食よりも少し多くなっている。このステーキについてはソースが日本風なんだ。貴方のフランス料理との違いはデザート以外は一緒に出す処かな」「僕もこの方が好きですね、どれを食べようか迷ってしまいますが・・・処でこれらの食器は日本の陶磁器の様ですが、ナイフは日本の物ではありませんね」「おぉ、君はナイフの違い、鋸(ノコギリ)の違いを知っている様だね」「はい、日本に行った時に切れないので苦労していたら一緒食べていた日本人が教えてくれました、鋸も同様に日本の鋸は押して切るのでは無く、引いて切るのだと」「そう、ナイフも日本の物は引いた時に切れるんだ、食器はね、私たちが作った物だ」「作った、作ったって・・・皆さんは陶芸をなさるのですか」「そう陶芸もする、でもね実は私たちが作った物は極一部で殆どは彼が持ち込んだ物なのです。その中には古伊万里と言うとても貴重な物やロサンジン・キタオオジ(北大路 魯山人)と言う有名な陶芸家にして美食家の物もあるのです」 「高価な物なのですか」「貴方の給料は知りませんが、多分、年俸を超える物もありますよ」「年俸を超える・・・」「そんな高価な物は使わずに飾った方が良いのではありませんか」「私もそう言ったのだが、彼が使うから食器で飾れば美術品になる。作った人は食器を作ったのであって美術品を作ったのでは無い、と言うのだ」「確かにそうですが・・・使うには余りにも高価です。私の使っている物、私の前にある物がその中のどれなのですか」「私たちには解りません、彼が教えてくれないのです」「キャサリン、貴方は御存じですか」「ジョナサン、御免なさいね、ここで、この場面で知っている、とは言えないでしょう」「・・・そうですね、失礼しました」「でも、美術品に詳しい人がゲストになって食事をしたら、流石、上院議員と言うでしょうね」「ありがとう、カリー、でもね、いくら上院議員でもこんな高価な物を飾らずに使っている人はいませんよ、彼のお陰です。これは彼の財力と言うよりも考え方の特異な処ね、魅力かもね。実はね、娘が初めて彼を連れて来た時に一目見て気に入ったの。その日からこの家に泊って貰っているのよ」話題になっている彼はと言えば全く我感せずとゆっくりと食事を楽しんでいた。「ヘレンだけじゃないんだ、家族全員で彼を我が家に住まわせたんだ」「彼がお金持ちではなかったら詐欺師だと思いますね」「・・・成程、そうだね、そうか、それで彼は初日に5千万ドルを渡したのか」「確かにね、あれで少なくとも私は彼を信用したわね。でも巧妙ね、お金持ちじゃ無ければ出来ないけど」ヘンリーとヘレンの夫婦が言い合った。「でも、不思議な人だなぁとも思ったな、私は」当の本人は相変わらず美味しそうに食事を続け、時々隣に座るキャサリンと小声で話していた。「あげるの」「駄目ですか」「大丈夫とは思うけど、少し様子を見ましょ」「えぇ、51の帰りでは」「良いと思います」二人はカリーにスーツを与える事について話をしていた。例え他の人に聞こえたとしても何の事か解らないだろう、二人はアダムを通せば声に出さなくても会話が出来るのだか、出来るだけ直接の会話を楽しむ様にしていた、これは彼女・キャサリンの要望だった。デザートの時間になった。「貴方たち、サヴァランと言うケーキは御存じよね」ヘレンがお客のジョナサンとカリーに尋ねた。「ラム酒のケーキですね、私大好きです」「僕は名前は知っていますが食べた事が有りません」「そう、ではパパナシと言うお菓子をご存じかしら」「知りません」「僕も知りません」「パパナシはね、ルーマニアのお菓子、ケーキなのよ、どちらが良いかしら」「私はそのルーマニアのケーキをお願いします」「僕はサヴァランが良いです」「はい、二人は決まり、皆は???」ヘレンが考える間を開けた。「サヴァランの人」彼以外の人が手を上げた。「では、カリーと婿殿がパパナシね、よろしくヨウコ」ヘレンが台所へのドアの処に立つ女性に伝えた。「了解しました」「サヴァランて美味しいものなんですね、あんなに美味しいなんて、もっと前から知っていたらなぁ~」「私が食べたパパナシも美味しかったですよ」「そうなんだ、君は良いなぁ~此処に住むんだから、また食べられるよね」「どうかしら、でも、彼が住み続けるのが解るわ」何時もの様にデザートを食べ終えると彼とキャサリンはテラスへ行ってしまった。「それは違うわね、今日の二つのケーキは彼が何処かから届けさせた物なのよ、逆なのよ逆、私たちが御馳走になっているのよ」妹のマーガレットが裏事情を話した。「あら、そうなんですか、食器、ケーキ・・・彼が来てこの家は変わったのですね」「そう言われればそうね~、マーグも家に居る様になったものね」ヘレンがポツリと呟いた。「それはそうと二人とも、ここに居る事を家族や友達に知らせなくても良いのかい」ヘンリーが尋ねた。「僕の場合は仕事が仕事ですから発掘に行けば半年、一年は戻りませんから、それに友達と言ってもたまに帰ると飲みに行くくらいですから連絡の必要はありません」「私も同じです、天文台の近くに一人で住んでいますし職場と家の往復だけで友達はいません、職場の天文台には連絡した方が良いですね・・・明日にでも連絡します・・・何て言えば良いのでしょうか」「そうねぇ~、明日、キャサリンに確認すると良いわ、でも少なくともジョナサンの現場には行く事になるわね」「僕も職場には明日連絡します、が内容も行先も言えませんね、う~ん、何と言おうかなぁ~」「二人とも悩んでもしようが無いわ、明日キャサリンと彼に相談しましょう。でも、プロジェクト・メンバーは皆さん同じでしょうね・・・何て言うのかしら」「そんなの簡単よ、アメリカの極秘プロジェクトに参加する事になりました。しか無いでしょ、何かそれ以上聞かれても、極秘です、しか無いんじゃないの」娘のマーガレットがいとも簡単に答えた。「それで納得するかしら」「どうせ、秘密保持契約の書類にサインしているんでしょ、極秘ですで良いんじゃないの。でも、誰が参加しているのか知らないけど、あの国とあの国とあの国の人がいたら拷問されるかもね。そしたら喋っちゃうわね」「何、あの国、あの国って・・・あぁ、あの国と・・・確かに、でも大丈夫よ、それらの国からは誰も来ていないから」「えぇ~、ジョナサンは考古学者って言ってたわよ、ならあの国からも来ているでしょ」「ミス・マーガレット、あの国の方は一般人も学者も国政に沿った事しか言いません。考古学でも国が認めた教科書の内容しか言わないのです。ですから呼ばなかったのは正しいと思います」「ええ、彼は政治情勢も国の事情も考慮していて秘密が守られる国からしか呼んでいない様よ」「流石お兄さんね、彼は何処からそんな情報を得るのかしら、世界中でしょ」「彼があの会社のオーナーなら簡単な事なんじゃないですか」「そうね、そんな処かしらね」「こうやって彼の話をしていると確かに彼は不思議で魅力的な方ですよね。明日からが楽しみです」「彼といると飽きないわよ、驚かされるわよ」「何、お母さん、彼に何か驚かされたの」「それは極秘、極秘だから内緒、カリーもジュナサンも見たり聞いたりした事を人に言う時は十分に注意をしてね」「はい」「気を付けます」「今日は二人共いろいろと気を使って疲れたでしょ、マーグ、二人を部屋へ案内して上げて」「ありがとう御座います、確かに疲れている様です。お言葉に甘えて眠らせて頂きます、お休みなさい」「私も寝ます、お休みなさい」二人のゲストはマーガレットに案内されてゲスト・ルームへ向かった。「なかなか直な人達ね」「そうだね、デビッドはどう思ったかね、ずっと無口に観察に徹していたようだが」「ええ、二人とも屈託なく正直な人達だとの印象でした。彼とキャシーの人選だから間違いは無いとは思っていたけど、今時珍しい程、直な人達ですね、僕は気に入りました」「カリーもかね」「ええ」「おや、お前の興味を引く女性がやっと現れたかな」「そうなの??? お母さん、応援するわよ」「ぜひ、お願いします」「おや、本気だね~、ヘレン頼むよ」「貴方、任せて下さい」<つづく>
2020.12.24
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<新たな仲間>-----#036キャサリン、ヘレン、サクライにとっては本日三度目となる庭のカフェに皆でやって来た。近づいて来るのを目敏く見つけたカフェのスタッフが出迎え席へ案内し人数分の椅子を配置しオーダーを確認して店内へ去って行った。皆が席に着き落ち着いたところでヘレンが英語で口火を切った。「皆さん、お疲れ様でした、キャサリン、初めての進行役にしては上出来でしたよ。この場はまず、貴方の自己紹介から始めましょう」ヘレンがそう言うと会場でキャサリンに声を掛けられ同行した女性を見つめた。「あぁ、はい、カトリーヌ・キャロンと言います、フランスの物理学者です」「あら、フランスの方なの英語がお上手ね、今後、貴方をどう呼べば良いかしら」「友達からはキャロンとかカトリーヌと呼ばれていますが家族からはカリーと呼ばれています」「では、私たちもカリーと呼んで良いかしら」「はい」「ありがとう、御歳は幾つ・・・失礼かしら」「いいえ、27歳です」「貴方の紹介が先になりましたが改めて皆で自己紹介をしましょう。私はヘレン・ヘイウッド、米国上院議員をしています。貴方と違って若くないから年齢は勘弁してね、じゃあ、ミスター・ヘーゲンどうぞ」「私はNSA副長官のアレックス・ヘーゲンです、どうぞよろしく」「次は私ね、でもその前に私の隣の男性を紹介しておくわね。会合でも言った様に二つのプロジェクトのリーダーは彼、彼は日本人、名前はミスター・サクライ、そして私が彼の通訳のキャサリン・ヘイウッド、名前から解る様にヘレンは私の母です」「私はジョナサン・シーモア です、イギリスの考古学者で32歳」「カリー貴方も今晩、家に泊まってもらうわ、良いかしら」「・・・OK」キャサリンの言葉に一瞬戸惑った彼女も了承した。「貴方のホテルは何処なの」「ホテルはまだ取っていないのです、荷物はここで預かって貰いました」「では、帰りに戻して貰いましょう、この中で家に来ないのはミスター・ヘーゲンだけね」「その様ですね、私に何かする事はありますか」「貴方は良い方ね、NSAの副長官と言う高い地位にある方なのに腰が低いわ」「腰が低い・・・とはどう言う意味でしょうか」「あぁ、御免なさい、この言い方は日本語なのよ、意味は地位を利用して偉ぶらない人、他人を地位に関係無く平等に扱う人と言う意味かしら・・・どう通訳のキャシー???」「良いと思うわ、上院議員」「キャシー、彼に聞いてミスター・ヘーゲンにお願いする事はあるかしら」キャシーがサクライに耳元で囁いた。「貴方、今度、お空には何時連れて行ってくれるの」「ヘーゲンさんには考古学者を今度はエリア51に集めて調査して貰う事と一か月に一度物理と天文学者に論文を出して貰う事の指揮をしてほしい・・・と伝えて下さい、空へはエリア51に考古学者が集まった時に観に行った後に行くつもりですが、どうですか」「了解です」キャサリンはそう答えると彼にキスをした。その様子を見ていたヘレン以外の人が驚いた。「ミスター・ヘーゲン・・・えぇ何かありましたか」「貴方たち・・・」「あぁ、うっかりしていました・・・実は私たち結婚しているんです、出会ったその日に婚約しました」またまたヘレン以外が驚いた。「ミス、貴方は美しい方ですから男なら皆求婚するでしょう、当然ですよ」ヘーゲンが男の気持ちを代弁した。「ありがとう御座います、ミスター・ヘーゲン・・でも違うんです、求婚したのは私です」「うっそ~、貴方の様な綺麗な女性が・・・」フランス人のカトリーヌの口から直な気持ちが漏れた。「あら、人は外見じゃない事は綺麗な貴方も解っているでしょう」「確かにそうなんですけど・・・」「彼を知ると解るわ・・・でも彼はもう私の旦那様ですからね」「大丈夫です、私は浮気する人は嫌いです」「処でキャシー、彼は何て」「あぁ、ミスター・ヘーゲン・・・・・・」キャサリンはサクライの要望をヘーゲンに伝えた。「解りました、お任せ下さい、処でエリア51には私も行って宜しいでしょうか」「勿論です、彼も望んでいます」「ありがとう御座います、彼にお伝え下さい、では、私は準備に掛かりますのでお先に失礼致します」彼はそう言って席を立ち皆に挨拶をして会計に寄り管内に戻って行った。「お母さん、彼、ヘーゲンさんてそつの無い人ね」「そつ・・・そつってどう言う意味なの」「手抜かりのない・・・とか、無駄が無い・・・と言う意味よ」「それをそつが無いと言うの、ふ~ん、やっぱり日本語じぁ貴方には勝てないわね」「そりゃ通訳だもの」「何いってんの、通訳は今回が初めてでしょ」日本語で言い合う二人をイギリス人とフランス人の二人は唖然と見つめていた。「失礼ですが今二人が話しているのは日本語ですよね」「貴方もそう思いますか、私もそう感じました」「あら、どうして二人は解るの、喋れるの」「私は日本のアニメが大好きでフランス語の翻訳が遅いのでネットの日本語版を観ていましたので、何となく響きでそうかなと思いました」「私もです、貴方の好きなアニメは何ですか、私はワンピースでした」「私はリボンの騎士です」「へぇ~イギリスにもフランスにも日本のアニメが広まっているのね」「そんな事より、そろそろ家に帰りましょ、お腹が空いたわ、キャシー」「そうね、お母さん、処で二人はここまで何で来たの、車はあるの」「いいえ、タクシーで来ました」「私もです」「じぁ、私の車で帰りましょう、う~と、ジョナサンは大きいから助手席ね、彼には後ろに女性二人に挟まれて貰います」「そうと決まれば帰りましょう、あぁ本当にお腹が空いたわ、今日は何かしらね」キャサリンが会計に寄ると既にヘーゲンが払っていた。「お母さん、ミスター・ヘーゲンが払ってくれていました」「やっぱりね、ええと・・・そうそう、そつが無いだったわね」「ええ、やっぱり、そつが無い人だわ」皆で地下の駐車場へ行き5人が車に乗ってゲートを出て帰路に着いた。「あの・・・この車、古いのに凄いパワーですね」「ありがとう、でも、この車は見た目が古いだけで中身は超が付く最新式なのよ」「道理で早い訳だ、それと私も運転は好きですが貴方程リラックスしては出来ません、運転が好きなのですね」「ええ、好きよ、この車の運転は特にね・・・何故って、この車は自動運転も出来るからよ」「自動運転・・・貴方が眠っても大丈夫と言う事ですか」「そうですよ、でも、内緒にしてね、そうそう、此れから家に行くけど、見たり聞いたりした事は内緒にしてね、貴方もよ、カリー」「はい、本当に自動運転の車なのですか」キャサリンは返事をする変わりに手をハンドルから離し頭の後ろで組んだ。ジョナサンとカリーが息を飲んで前を見つめた。暫く走るとキャサリンが片手をハンドルに置いて暫くすると又手を離した。「今の処にカメラがあるのよ、だから手を置いたのよ」「は~」「はい、このまま家まで帰れるのですか」「ええ、でも、周りの人に見られると困るから手をハンドルには置いているわね」「アメリカはやはり凄い国ですね」「違うわね、此れも内緒の事よ、この技術は彼、サクライの物よ」「ええ~、ミスター・サクライの技術、日本のと言う事ですか」「いいえ、彼、個人の物よ、日本にも無い物よ」「・・・」「・・・」「さぁ着いたわ、貴方、二人の女性に挟まれて天国だったでしょ」「ああ、極楽だったね」彼が流暢な英語で答えた。ジョナサンとカリーの二人は、その事に気が付いていなかった。<つづく>
2020.12.23
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<辰三の災難>-----#193 仕返しの方法を四つ考えた夜から三日が経ったがどの組からも色好い知らせが無かった。 「どうなってやがる、何で良い知らせが来ないんだ」 辰三の苛立ちが刻が過ぎる程大きくなっていた。 「親分、婆さんを攫いに行った組は佐倉に行くと繋ぎが来てまだ一日ですぜ、在所が解っても家が解らないんだろうよ、第一婆さん連れじゃ早くても江戸に着くのは明日ですぜ」 「解っちゃいるがよ~、捕まえたなら捕まえたと知らせて来ても良いじゃね~か」 「知らせが来るにしても今晩当たりですぜ、親分」 「道場の方はどうだ、色好い返事は無いか」 「へい、なんせあの道場は奉行所の与力・同心ばかりですからね~、下手に手を出す訳にはいかないんですよ」 「それにしたって一人くらい弱そうな奴はいても良いじゃね~か」 「なんせ、上様の試合での勝者と次席がごろごろいる処ですからね、皆が強く見えてもしようが無いでしょうよ」 「餓鬼が一人もいね~訳でもあるめ~が」 「確かに」 「何が、確かにだ、馬鹿にしていやがるのか~」 「親分、誤解ですよ、そんな事を言う訳がね~じゃ無いですか」 「しかしよ~、弱そうな奴がいね~なぁ~、ねぇ~先生」 道場を見張る三下たちの一人が先生と呼ばれた用心棒に話し掛けた。 「あぁ~、現れぬな、これほどの鍛錬所を見たのは初めてだ、流石に奉行所に所縁のある者たちと言うべきか、若い者まで物腰に抜かりが無い・・・、かと言って年寄りには護衛が付いておるしのぉ、どうしたものか」 「そうですぜ、先生、手ぶらで帰ったりなんぞした日にゃ~親分にどやされますぜ。 先生方はやっとうが出来るから親分が怖くは無いでしょうが、あっしらは怖くて怖くて、手ぶらは御免ですぜ、先生」 「怖くは無いが手ぶらでは銭が貰えぬでなぁ、何とかせねばな」 佐倉からの帰りを待ち伏せした刻には務めが無かった舞にも役目がやって来た。 佐倉の刻には人を肩に担ぐ要があった為、舞には役目が無かったのだ。 佐倉の始末の後、皆が集まり龍一郎から段取りの説明が詳しくなされ舞に役目が伝えられた。 次の日の朝、一旦、密かに道場を出た舞と誠一郎は三丁程離れた処で折り返し道場へと歩き出した。 舞が旗本の娘で誠一郎がその護衛と言う役処であった。 二人が道場の前に着くと立ち話を始めた。 そこは辰三の子分たちが張り込みをしている家の一つの前だった。 「お嬢様、本当に橘の佐紀様とお知り合いなので御座いますか」 「えぇ、佐紀様がご実家にいらした頃からの知り合いです」 「佐紀様はその頃から剣術がお強かったのでしょうなぁ~」 「とんでも無い、竹刀さえも握った事は無い・・・と私は思いますよ」 「そんなはずは御座いませぬ、あれ程お強いのですから、出来れば私もご指導頂きたいものです」 「頼んでみましょうか、私の願いなれば、きっと佐紀様は叶えて下さいます」 「それは願っても無い事です、江都中の武士が望む事で御座います」 「それ程の事ですか」 「はい、誰もが武士で有れば望む事と存じまする」 「では、その方の願い、叶えて進ぜようぞ」 「ははぁ~、姫様、有りがたき幸せで御座いまする」 「参りましょう」 「同道仕ります」 二人が離れた家の内側では聞き耳を立てていた手下と用心棒がこれも護衛がいては駄目かと諦めていた。 道場への出入りは頻繁であったが一目で奉行所務めが解る出で立ちで弱く見えても手が出せなかった。 娘と護衛が道場に入って半時が過ぎた頃、二人が道場を出て来た。 先程と同じ家の前で話を始めた。 「お嬢様、お嬢様御一人ではお返し出来ませぬ」 「では、其方は折角の佐紀様のご厚意をお断りになるのですか」 「いえ、出来ればお断りしたくはありませぬ。 ですから、私が指導を受ける間、お待ち頂きたいのです」 「其方は指導を受けたい、私は帰りたい、それで良いではありませぬか」 「なれど御一人で帰られるのは・・・」 「この様な昼の日中に誰が何をすると言うのですか、それに私も武士の娘です」 「お嬢様は確かに武家のお嬢様ですが武芸は出来ぬではありませぬか」 「今が夜なれば其方を待ちます、ですが今は昼なのですよ。 さぁさぁ心配せずに指導を受けて来なされ」 「はぁ、本当に大丈夫ですか」 「佐紀様もご承諾くださったのです、遠慮のうご指導を受けなされ、さぁさぁ」 娘に促され青年武士は道場へ戻って行った。 それを最後まで見届けた娘は振り返り来た道を戻って行った。 板戸を挟んで聞いていた用心棒と手下たちは思わずニヤリと微笑み合った。 「お前たちは先回りしろ、気を付けるのだぞ、娘の家が解らぬのだ、何処で曲がるかも知れぬ、気付かれてもならぬ、人気の無い処を下見しておけ、我らは娘の後を追う、挟み撃ちじゃ、良いな、良し行くぞ」 舞はゆっくりとした歩みで時々小間物屋などに立ち寄り一人歩きを満喫している様だった。 辰三の子分たちには都合が良く見失う事も無さそうだと感じさせた。 前後を子分たちに挟まれながら舞は右に折れ左に折れと歩を進めた。 用心棒からの合図で捕まえる事になっているのだが、どう見ても人通りが多く無理な状況だった。 娘が突然、左に曲がり先を歩いていた子分たちが先回りをしようと別の道に大急ぎで走り込んだ。 後ろを歩いていた用心棒と子分たちも慌てて曲がり角に走り娘を探した。 だが娘の姿は無くあちらこちらを探しながら道を進んだが見つからず、挙句に先行して別の道から来るはずの仲間も現れず、大慌てでまた探し始めたが、用心棒が気付くと一緒に探していたはずの仲間たちも姿が見えなくなっていた。 困惑から恐怖に変わった表情を浮かべた用心棒が脇道に身を潜めて道の様子を伺っていると誰かが肩を叩いたので、何だこんな処に仲間がいたのかと、何気に振り向き、その瞬間に当身を受け意識を失ってしまった。 気を失った用心棒は縄で縛り上げられ、こもむしろに包まれその上からまた縄で縛られ、大きな体にも関わらず軽く肩に担がれると通りに横付けされた荷車に乗せられた。 その荷車には同じ様なこも包みが幾つも載せられ、後ろから別の荷車が続き、その荷車にもこも包みが乗せられていた。 二台の荷車は近くの廃寺に入って行くとこも包みが本堂であった建物に次々に運ばれた。 半刻が過ぎようとする頃にまた二台の荷車が廃寺に入り、こも包みが幾つも運び込まれた。 「おい、まだ知らせは来ね~のか」 「へい、何処からもありやせん」 「どうなっていやがんだ、えぇ~」 「・・・」 「おい、茶をくれ、茶を」 「へい、お~い、親分に茶を頼む、誰かいね~か~」 「どうしちまったんだ~、茶だ~、茶を持ってこ~い」 「・・・」 「あっしが見て参ります」 「おぉ」 代貸が台所に様子を見に行った・・・だが・・・そのまま戻って来なかった。 「お~い、お~い」 「・・・」 その刻、廊下の障子が開けられた。 「てめ~、遅いじゃ・・・」 辰三の言葉が途中で止まってしまった。 廊下には覆面をした男が立っていたからだ。 辰三は悲鳴を上げそうになった処で当身を喰らい意識を無くしてしまった。<つづく>
2020.12.22
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ニューヨーク州で一日の感染者が一万二千人を超えた様です。日本とは桁違いです。アメリカ全土では、いったい何人なのでしょうか。テレビではデモの様子が見られ参加者の多くがマスクをしていませんでした。その多くが大統領支持者の様です、アメリカの感染拡大の大きな要因の一つは間違い無く大統領の言動にあると思います、国家元首のリスクを全く考慮しない言動、信じられません。世界経済の復旧はアメリカの感染が終息しない限り有り得ません。来年一月の新大統領の政策転換に期待したい。-----おしまい
2020.12.21
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<お雪の祖母>-----#192 それから二日後、道場の長屋に老婆が住む様になった。 辰三の子分の三つの組が道場の正門と裏口を見張っていた。 残りの組の一つはお雪の在所が何処かを調べていた。 残りの二組は辰三の住まいの警護していた。 道場の監視の三組は道場近くの長屋に二部屋借りて交代で見張っていた。 だが道場に出入りする者たちは彼らの苦手とする奉行所の与力・同心ばかりで顔を見られぬ様にする事が精一杯だった。 中には見知った同心も居て彼らに取ってはやり難い仕事であった。 お雪の在所はなかなか知れなかった。 辰巳屋の近辺でお雪と同年配の者たちに強面の男たちが聞き込みをしているのだ、怪しまれて当然だった。 三日目になると十手持ちがうろつき出し聞き込みが出来なくなってしまった。 この組の頭に選ばれた男は辰三親分に報告も出来ず、とうとう荒手に出てしまった。 それは辰巳屋の番頭を攫う事であった。 大抵の荷物は小僧が受け取り人か店に知らせに行き受け取り人が店に受け取りに来る。 江戸の時代には他人を騙り受け取るなどほとんど無い事であった。 第一、受け取るものが値打ち物かどうかが解らないので割に合わない事でもあった。 大店やお得意様への届け物は手代が運んで行った。 大名への届け物は主の鳩衛門か番頭の務めと辰巳屋では決めていた。 その日、番頭は大身旗本への届け物を持ってお店を出て行き戻ってこなかった。 次の日に近くの十手持ちに届け出が出された。 その結果、番頭は旗本屋敷に届けた後に行方が解らなくなっていた。 翌日には亭主が戻らないと心配になった女房がお店にやって来て事が大事になっていた。 番頭は通いで大店の辰巳屋の番頭らしく一軒家に住み女房と子も二人いた。 十手持ちが手先を使い探し回ったが見つからなかった、だが、番頭らしき男を三人の男たちが籠に乗せていたとの聞き込みを得てはいた。 十手持ちは手先を駕籠屋探しに絞って探す手筈を整えた刻に辰巳屋から知らせが入った。 「親分さん、番頭さんが家に帰られました、軽い怪我をしております。 只今、医師を向かわせております、大変ご迷惑をお掛けしました、と主が申しております。 落ち着きましたらご挨拶にお伺いするとも申しております」 「いや~、手代さん、良かった、良かった、無事で何よりだ。 だが、わっしも仕事だ、事情を聴きに番頭さんの処へは行かせて貰います、とお伝え下さいよ」 「畏まりました、失礼致します」 「良し、皆、ご苦労だったな、無事で何よりだったじゃね~か、無駄な仕事だったなんぞと思うんじゃないぜ」 「へい」 「はい」 「今回の手当ては何時もの様にな、二、三日待ってくれ、大店の頼み事だ、期待して良いぜ」 「へい」 「へい」 「じゃ」 「おう、ご苦労だったな」 十手持ちは報告と番頭への聞き込みを兼ねて辰巳屋を訪ねるつもりで、当然その刻に辰巳屋の主から何がしかの手当、金子が渡されると目算していた。 その刻に、かどわかしならば犯人を探し出すかの判断も貰うつもりだった。 その翌日に道場に辰巳屋から文が届いた。 普段であれば辰巳屋の小僧が文を持って来るのだが、その日は飛脚屋が運んで来た。 主の鳩衛門が新たなかどわかしを恐れその指示をだしていた。 文を受け取ったのは新たな住人となった老婆だった。 受け取った老婆にはまさか文の内容が自分に関係するとは思いも寄らない事だった。 文は老婆からお久に渡され、辰巳屋からと解るとお久からお佐紀に渡された。 封を開いて文を呼んだお佐紀とお久は道場へ文を持ち込み小兵衛と龍一郎に見せた。 辰巳屋からの文には番頭が何者かに攫われお雪の在所を言わされた、と書かれていた。 文を呼んだ二人が頷き小兵衛が小声で呟いた。 「懲りぬ奴よのぉ~」 「清吉殿とお駒殿たちに任せましょう」 「龍一郎殿は抜かりは御座いませぬなぁ~」 お久が歓心した声を漏らしお佐紀と共に文を持って道場から母屋へ戻って行った。 辰三たちが皆で仕返しの方法を話合っていた刻、その日道場に居なかった誠一郎と舞の二人が天井裏に潜み聞いていたのである。 二人は三郎太の組か平四郎の組のどちらかがいるものと来てみたが誰も居ず、事の全てが掴め探索が終わったと判断したが折角だからと暫く様子を見る事にしたのだった。 そんなおりに辰三が手下を集め仕返しの方法を練り始めたのである。 当初、平四郎から探索の手伝いを依頼された刻には誠一郎は奉行所の捕縛に参加しなければならず依頼を受けられなかった、誠一郎が受けられなければ相方の舞も受けられない、これが決まりだった。 そして誠一郎の手が空いたので交代にと二人でやって来たのだが、その遅れが幸いしたのか辰三の悪あがきを聞く事が出来たのである。 辰三たちの話合いが終わり、代貸の組み分けも終わり見張りを残して寝静まった頃、誠一郎と舞は道場への帰路に着いた。 二人は夜半過ぎにも関わらず、龍一郎の寝間の廊下に立った。 部屋の中から龍一郎の声が小さく聞こえた。 「囲炉裏端で聞こう、先に行っていてくれ」 二人は何も答えず、囲炉裏端へと向かい囲炉裏の火を大きくした。 「ご苦労だったな、聞こう」 「はい、交代にと辰三の処に参りましたが、遅きに失した様で御座いました・・・」 誠一郎がそこで聞いた辰三たちの四つの企みを知らせた。 「お雪の在所をのぉ~、辰三め、小娘一人に固着するは、余ほど女子二人にあしらわれた事が気に入らぬのであろう。 辰三を捕縛するも、懲らしめるも、始末するも簡単な事じゃが・・・未だ辰三の背後にいる人物が解らぬ、阿芙蓉の卸元が解ってはおらぬ、それが解るまでは手出しは出来ぬ・・・」 「我らの誰かが五人、六人に襲われても大丈夫でしょうが、在所が知れるは必定、道場に出入りする誰かが攫われるも必定で御座います、いかが致しましょう」 「・・・」 「・・・」 「良し、この手にするか・・・舞、其方と其方の父、母に働いて貰おう。 三郎太殿の組は其方らの援護、平四郎殿の組は清吉殿らの援護をして貰う、策はこうじゃ・・・」 それから四半時、誠一郎と舞は道場を去り、七日市藩へ寄り、清吉とお駒が営む船宿へ行き、そこに泊った。 翌日の早朝、船宿を平太、舞、清吉、お駒、三郎太、お有の六人が人知れず旅立った。 その翌日、道場に老婆が現れ住む様になった。 辰巳屋の番頭を攫いお雪の在所を聞き出した辰三の手下たちは成田街道を歩いていた。 「兄貴、そろそろ休みにしようぜ」 「馬鹿野郎、まだ歩き始めたばかりじゃね~か、第一、おめいの方が若いだろうが」 「兄貴は田舎生まれでよ~、足腰が強いけどよ~、俺は江戸生まれでよ~歩くのは駄目なんだ」 「あぁ確かに俺は田舎者だ、だがよ、てめいも江戸の外れの押上村じゃねぇ~か、江戸と言えるかよ~」 「こいつは外れの押上だけどよ、おりゃ~深川よ、だけどよ~歩くのは平気だぜ」 「ほら見ろ、生まれは関係ねぇ~んだよ」 「だけどよ~、兄貴~疲れてよたよた歩くよりさ~、疲れたら休み疲れたら休みの方が早く着くと思うけどな~」 「全く、てめいって奴は、口の減らねぇ~野郎だぜ、解ったよ、次の茶屋で一休みするか」 「ありがてい、兄貴~、店はまだかね~」 そんなやり取りを何度も繰り返して目的地の佐倉に夜遅くに着いた。 「こんなに暗くっちゃどの家か解らりゃしねいなぁ~」 「こんなに遅くちゃ宿屋も泊めてくれませんぜ、兄貴」 「しょうがあるめい、お堂か寺の床下が今夜の宿だな」 「ちぇ、佐倉くんだりまで歩かされるわ、野宿するわじゃ他の組の方が良かったぜ」 「てめい、俺の組が嫌だって言うのか~」 「兄貴、そうじゃねぇ~よ、兄貴と一緒なのは嬉しい、嬉しいけどよ、兄貴が他の組の頭なら良かったって話ですって」 「しょうがあるめい、代貸が決めた事だ」 皆で月明かりしか無い暗闇の中をとぼとぼと歩き見つけた寺の山門を潜りお堂の中で一晩を過ごした。 翌朝、明るくなるとお百姓が畑仕事に行く前に農家を訪ねて朝ご飯を作って貰いついでにお雪の家を聞いてみた。 訪ねた当初は刀を差した渡世人の大人数を怖がっていたが組頭の配下の者たちへの厳しい躾に好感を持ち始めたのかお百姓の夫婦も気さくに話す様になって行った。 「お雪ちゃんかね、お雪ちゃんも可哀そうな子だよ~、江戸に無理やり奉公に出されただよね~、今頃、どうしているだかね~」 「元気にしてまさ~、それでね、今度ね~婆さん一人じゃ危ないから江戸でお雪と一緒に住んでもらおうてんでお店のわっしらが迎えに来たんですよ」 「そうかね~、そりゃ~良い話だな~、息子が博打で借金してな~首くくってよ~お雪ちゃんが奉公さ行っちまったげな、婆さん一人じゃな~雪ちゃんも心配だったろうな~江戸で一緒にな~良いべ、良いべ~」 「そんでな~そんお雪ちゃんの家だが何処かな~」 「良し、後で教えてやるから、今は飯を食え、食え」 最初に朝飯の銭を渡してあったのが利いた様で珍しく善人扱いされて皆は大いに戸惑っていた。 朝飯を御馳走になりお雪の家に向かって歩いている刻に下っ端が組頭に言った。 「頭、代貸の人選びは確かだぜ、あの百姓はすっかり兄貴に言い包められちまったもんな~」 「あぁ、そうだぜ、俺らが良い人みたいでよ、何だか面食らっちまったぜ」 「手ぶらで帰ってみろ、親分に何されるか解ったもんじゃねぇからよ、必死だっただけの事だ」 「そうかね~、案外、兄貴は善人なんじゃね~のかい」 「馬鹿野郎、良い加減にしやがれ~」 「兄貴、あの家じゃね~ですかい」 畑と田んぼに囲まれた一軒家を指さし手先が言った。 皆でその家に向かい一人が声を掛けて中に入った。 「御免よ~」 「はいよ~、何だべ~」 「おめいさんの孫のお雪の使いの者だ」 「雪の使い~、雪に何かあっただか~」 「大丈夫だよ、元気にしてるぜ、それよかよ~、お雪の主がよ、良い人でな~、お雪が婆さん一人じゃ心配だと言うとよ~、江戸で一緒に暮らしなって言ってよ、儂らを迎えに寄こしたのよ」 「おらが江戸さ行くだか・・・んでもよ畑も田んぼもあるでな~」 「婆さん一人で耕す事も出来め~が、荒れ放題じゃね~か」 「・・・」 「江戸でよ~お雪と一緒に住なよ、婆さん」 「・・・」 「楽が出来るぜ、婆さんよ~」 「・・・」 「家も住める様にしてあるからよ~何も要らないんだ、手ぶらで良いぜ」 「・・・」 「今からなら婆さんの足でも今日中にお雪の顔が見れるぜ」 「雪に会えるだか・・・行くべかな~」 「そうしな、そうしな」 「ちいっと待ってくんろ」 婆さんはそう言うと風呂敷を出し着る物を詰めた。 「婆さん、荷物は俺が持ってやるぜ」 下っ端が荷物を持って外に出た。 婆さんが後に続いて外に出ると大勢の渡世人風の男たちが待っていて婆さんが驚いた。 「婆さん、安心したよ、こいつらは仲間だ、道中危ねえからよ~大勢なら安心だろが」 「魂消ただよ、あにさんの仲間だか」 「さぁ~、行こう、行こう」 渡世人の集団に囲まれる様に婆さんが歩き出した。 婆さんは思ったよりも健脚で先頭を歩く下っ端に遅れる事も無く付いて行った。 下っ端が休むと言うと大丈夫だと言い歩き続けた。 昼餉を食べに道中で一度休んだだけで江戸の外れの長さ六十六間(120m)、幅四間(7m)の千住大橋に薄暗闇の中、到着した。 「しかし、婆さんは健脚じゃ、婆さんとは思えね~、若い娘よりも元気だぜ」 「ほうかのぉ~、儂ももう歳だで、雪に会いたいでがんばったが疲れただよ」 婆さんはそう言うとめっきり足並みが遅くなってしまった。 大通りを北から南へ大勢の渡世人に囲まれてよたよたと歩く婆さんの姿は行き交う人々のに好奇の目で見られた。 「おい、これじゃ何時まで経っても着かね~ぜ、おめい、担げ」 「兄貴、勘弁してくんな、こんな婆さん、御免だぜ」 「周りを見なよ、誰も居ね~じゃね~か、恥ずかしか無いぜ」 回りを見ると丁度人通りが途絶えていた・・・と思ったら、大勢の人に囲まれていた。 異様な雰囲気に組頭が刀を抜こうとすると他の下っ端も同様に刀を抜こうとした。 だが、その前に全員、意識を失い囲んだ人達に担がれて消えてしまった。 一瞬の出来事で次の瞬間には人通りが戻っていた。 当然、佐倉から来た老婆も消えていた。 老婆を騙し佐倉から連れ出した辰三の子分たちが意識を失って目覚めた刻には何故か牢屋の中だった。 そこは小伝馬町の牢屋で南北の奉行所での刑が決まる前の者たちが収監されていた。 目覚めた男たちは大声で叫び、やって来た牢番に「出せ、出せ」「何もやっちゃいねぇ~」などと訴えたが聞き入れられるはずも無かった。 辰三の子分たちを捕らえ牢屋に入れたのは龍一郎たちであった。 尾行していたのは三郎太とお有と清吉で江戸に入った処で三郎太が道場へ走り援軍を呼び小伝馬町の近くで人通りが途絶えた瞬間を見計らい襲撃したのである。 加わっていたのは三郎太、お有、清吉、平四郎、お峰、龍一郎に佐紀、そして老婆に化けたお駒であった。 彼らは手下たちを当身で眠らせると一人が一人を軽々と肩に担ぎ走り出した。 本物のお雪の祖母は二日前から道場に住む様になっていてお駒が入れ替わっていたのである。 当然、警護として亭主の清吉が付いており、三郎太とお有も警護していた。 道場は大勢の辰三の手下たちに見張られていたが龍一郎の仲間たちには気付かれずに道場の出入りをすることは簡単な事だった。<つづく>
2020.12.20
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<初回の物理学会合>-----#035ヘーゲンの先導で会場へ向かい部屋に入った。部屋の中には先程と同じ様に壇に向かって大勢の人が座っていた。ヘーゲンを先頭に壇に上がりキャサリンたちが続いた。「皆さん、世界中からわざわざお集まり頂きありがとう御座います。皆さんは世界中から選ばれた物理学、天文学の研究者の方々です。私の左側に物理学の皆様、右側に天文学の皆様にお座り頂いていると思います。この会合は米国大統領が主導する特別プロジェクトです。皆様には秘密厳守契約の書類にサインを頂いております。それでは、本日の司会者をご紹介致します、このプロジェクトの大統領代理・ミスター・サイライの通訳兼秘書のミス・キャサリン・ヘイウッドをご紹介します、因みに彼女の母は上院議員のミセス・ヘレン・ヘイウッドで議会の顧問として隣にお座りです。では、司会者に代わります。」紹介されたキャサリンは立ち上がりマイクの前に立った。「ご紹介頂きました、キャサリン・ヘイウッドです。まず皆様には携帯、パッド、ノート型等の電子機器をこちらに提出して頂きます、勿論、代わりの機器を差し上げます、ご家族が使用している機器、テレビも含め全て交換致します。勿論、盗聴・盗撮防止の処置です。全ての電子機器の機能は最新です、間違い無く最先端の機器です、録画、録音機器に関してはウイルス等の有無を確認し新しい機器に設定致します。ここで再度、確認です、皆様には秘密厳守契約の書類にサインを頂いておりますが、ここで抜けたいと言う方はご退席下さい」キャサリンは会場を見渡した・・・が誰も立ち去る者は居なかった。「では、これより、時計と電子機器の回収と代わりの機器をお渡し致します。受け取られましたらまず画面を見つめて左右の指の指紋登録をして下さい。画面を見て頂くのは顔の登録と光彩登録です。なお、誰かからの贈り物、記念品と言う事でしたら、このプロジェクトが終わりましたらご希望が有ればお戻し致しますので安心して全てお渡し下さい」壁際に立っていた人たちが箱を持ち回収し後から付いていた人が代わりの機器を渡して回った。127名と大人数の為、多少の時間が掛かった。受け取った人達が認証登録を始め、あちらこちらで驚きの声が聞こえた。「機器を起動して頂ければ解りますがデーターはお使いの機器からサーバーに保管されご自分しかアクセス出来ません。ご安心下さい、これも既に御分りでしょうが今まで使っていた機器のデーターは全て移管されています。ハッキングだ、などとは考えないで下さい、便宜の為の超法規的処置とお考え下さい。但し、データーの中に犯罪の痕跡が見つかれば関係機関へ通報されます。皆さんが手にした機器に意識が行っている様ですので少しお時間を差し上げます」キャサリンは部屋中を見渡し、皆が時計やノート・パソコンなどの機器に夢中で自分の話に集中出来ないと考え、暫く無言で様子を見ていた。15分程経つとチラホラと檀上を見つめる人が現れ30分経つと殆どの人が檀上を見つめていた。キャサリンが頃合いとみて話を再開した。「では、続きを初めます。」「ちょっと待って下さい、質問があるのですが」「何でしょうか」「今、頂いた機器は何処の物ですか、私は電子機器が大好きです、世界中の最新機器を知っているつもりでしたが、こんな機器の話は聞いた事がありません、一体何処の機器なのですか、生産国の表記も製造者の表記もありません」「最新機器と言ったはずです、使う事にご不満でしたら機器を置いて退出して下さい、貴方の元の機器をお返しします」「・・・いいえ、不満はありません、質問はするなと言う事ですね、質問は忘れて下さい」「どうぞ、質問はして下さい、但し全てに回答が得られるとは思わないで下さい。では、話を続けます、まず、物理学者の方々に質問です、この世界で一番早い物早く動く物・物体・存在は何ですか」最前列に座る重鎮たちに冷笑にも似た声と共に「光だろ」と答えが上がった。彼女は冷笑を意に介さず質問を続けた。「アインシュタインの法則、E=MC二乗のEはエネルギーですね、Mは質量ですね、ではCは何ですか」ここで前列に座る重鎮達が二派に別れた、一派は「光だ」、他の一派は「定数だ」であった。他の中堅学者、若手学者達も同様に二派に別れていた。キャサリンは檀上からその様子を眺めていて何人かの人が論戦に参加していない事に気が付き、その中の一人の若い女性に目を止めた。キャサリンはその女性に友人、知り合いがいないのか、他の説を持っているのか・・・と気になった。「そこの貴方、貴方はどちらだと考えていますか」檀上からその女性に問い掛けた。「・・・私は・・・現在の人間が発見していない粒子の運動速度だと思っています」一瞬の静寂の後、罵倒する声が四方八方から発言した女性に浴びせられた。キャサリンは静かになるまで待ち、下火になった頃に・・・「昔、昔、地動説を言った人も今の様に罵倒されたのでしょうね」キャサリンはそう言って部屋の隅から隅までをゆっくりと見渡した。「次の質問です、光で音の速度を測る事が可能だとは私も解ります。では音で音の速度を測れるのでしょうか、光で光の速度が測れるのでしょうか、音で光の速度がはかれるのでしょうか、もし、光より早い物があったとして何で速度を測るのでしょうか」誰かが意見を言ったが、それに疑問を投げかけ否定された、本人も自説を引っ込めた。また、誰かが意見を言ったが、それも理由を説明し否定され、本人も自説を引っ込めた。そんな事が何度もあり、静寂が訪れた。「次は天文学者の方々に質問です。宇宙の始まりはビックバンだとの説が有力な様ですが、指先よりももっともっと小さな中に全宇宙が入っていたのですか・・・私は天文と物理の専門家ではありませんが、私の記憶の中にエネルギー不変の法則と言う言葉が有ります、全宇宙のエネルギーがどんな形で針の先程の中に入っていたのでしょうか。別の質問です、以前、木星は太陽になり損ねた惑星でもう少し質量が有れば恒星になっていたと聞いた事が有ります。処が近年の系外惑星の調査で木星の何倍もの質量の惑星が発見されています。それらは何故恒星になっていないのでしょうか。木星は質量がもっとあっても恒星には成れないと説が変わったのでしょうか。別の質問です、ブラック・ホールは何でも引き付けるとの事ですが、そのブラック・ホール誕生の前に二つの極から何かが放出されるのは何故でしょうか。引き付けない時間があるのでしょうか、ブラック・ホールになる前だから何か出る物が有っても不思議では無いのでしょうか、私には理解できません。引き寄せ、引き寄せ、その結果がブラック・ホールで有れば何かが出てくるはずは無い、素人の私はそう思います」今度は誰も発言する人も無く皆が考えに落ちていた、天文学者だけでは無く物理学者も同様だった、宇宙の話ではあるがいろいろな説の基になっているのは物理の法則だからである。「ここで一つの事実をお伝えしましょう、皆さんが驚く事で嘘だと言う事でしょう・・・。光がこの世で最速と言う理論で兵器を作った結果、原子爆弾が作られました。では、光が最速では無いと言う説で兵器を作ると結果はどうなるでしょうか???」キャサリンは考える時間を十分に取って続けた。「皆さんには、私が述べた疑問に対する新たな理論を考えて頂きたいのです。現行の理論は全て間違っているか、不足しています。それはたった一つの間違いから始まっています。皆さんにして頂きたい事は新たな理論、説を考えて頂く事です。再度の招集直は今の処、考えては居りません。論文の提出をお願いします。月に一度の間隔で途中経過の報告をお願いします。では、本日はここまでとします、ありがとう。あぁ、先程の彼女、こちらに来て下さい」キャサリンは驚く様な事実を述べると言いながら具体的な事を言っていないにも関わらず、罵声も無く、拍手も無く只、静寂が続き暫くは誰も動かなかった。檀上に居た人達が退室する途中で呼ばれた女性が合流し皆が部屋を出て行った。<つづく>
2020.12.19
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容疑者が逮捕されパトカーの後ろの席に座っている様子がテレビに映りました。その容疑者は当然、時期が時期だけにマスクをしていました、がそのマスクに「257」書かれていました。売っている物にその様な番号が刻印されているなど見た事がありません、デザインとも思えません。考えられる事は容疑者がマスクをしていなかったか古かったので警察が与えたか貸し出したかです。当然、税金です、容疑者から回収するのでしょうか、安い物ですが、全国でとなると多額になります。必要な事とは言え納得出来ない、不可思議な事です。官房長官などの記者会見で記者の質問に対して100%回答します。事前に質問内容を提出しているからだと思います。それは、良いのですが、記者の質問が良く聞こえません、提出しているのですから、代読ではっきりと聞こえる様にしてはと常々感じています。-----おしまい
2020.12.18
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<辰三の怒り>-----#191 その頃、辰三は相変わらず機嫌が悪かった。 用心棒たちは普段と変わらずに辰三の傍で囲炉裏端で酒を飲んでいたが手下たちは辰三の機嫌の悪さに怖気付き傍へも寄れず台所で酒を飲んで辰三の機嫌の悪さを詮索していた。 「おい、何で親分の機嫌が悪いだ、誰か知らねえか」 「兄貴、それがよ~、最後に取り立てに行った辰巳屋でよ~銭が取れなかったんだ~」 「辰巳屋と言や~廻船問屋のか~」 「その辰巳屋だ」 「何とか言う小娘の給金だろうが、そんな端金なんぞ、取れんでも良いじゃないか、それで何であがいに機嫌が悪いんだ、こっちまで気分が悪くなるぜ、今朝までは上機嫌だったじゃね~か」 「それがよ~兄貴、娘が里帰りしていやがって、親父が強気だったんだよ」 「強え~息子じゃあるめーし嫁に行った娘一人だろうが、それで何で親父が強気になるんだよ」 「一人じゃ無かったんだよ、姑が一緒だったんだ、その姑がいけね~や」 「何がいけねーんだよ、何処か大店の女将か、そんなのは別の美味しい獲物じゃね~か」 「そうじゃねえんですよ、兄貴、兄貴はこの間の上様の天覧試合を観に行きましたよね」 「行ったぜ、それがどうした、これと何の関係が有るって言うんだ」 「兄貴は女子の部の決勝を覚えていますかい」 「そりゃ覚えていら~な、あんなすげ~のは、そうそう観られるもんじゃね~からなぁ~、勝った美形の女は強かったが負けた婆さんも強かったね~」 「それなんですよ、それ」 「何がそれ何だよ、おめ~の話はまどろっこしくて先が見えね~、だから試合がどうした、それってなぁ何なんだよ」 「その次席の婆さんが辰巳屋の嫁の姑だったんですよ」 「何だって・・・て事は娘は勝者の美形って事か」 「そうなんでさ~、魂消るでしょう」 「そんな出来過ぎた話があるか~、処で先生方も一緒だったんだろう、次席とは言っても女だろうが、先生方が何とかしたんだろうが」 「それが一人は相手をする前に止めたと言っちまい一人は手も触れずに尻餅を着かされちまいました」 「だらしがね~な、俺っちよりも高い銭を貰っているくせに、それでお前たちはどうした」 「それが、その場に居たのは次席の婆さんだけじゃ無かったんですよ」 「まさか、勝者の娘もいたんじゃね~だろうな」 「そのまさかなんで~」 「あの美形だ、いりゃ~解るだろうが」 「それが、顔に刀傷のある男に化けておりやして解からなかったんですよ。」 「男に化けていた~化けていたってあの美形だ解るだろうが」 「それが不思議なんで、あの女が素顔になるまで解らなかったんで~」 「素顔になったのか、やっぱり美形か」 「そりゃ~もう美形も美形、吉原の花魁も務まる位の美しい女でしたぜ」 「そりゃ~俺も見たかったね~」 「いや~、綺麗なんだが怖えんだ、何てったって優勝者だからね、次席が手も触れずに先生の一人をのしちまったんだぜ、その上を行く女だぜ、怖いのなんのって震えがきたね」 「そんで取りっぱぐれて逃げ帰ったわけだ、そりゃ~親分の機嫌が悪いわけだ」 「今朝までの上機嫌が嘘のようだぜ、昨晩も取引が上手く行った様で上機嫌だったのによ~」 「馬鹿やろう、その話はするな、取引の話はご法度なんだよ」 「解ってるよ、兄貴、ここだけの話じゃね~か」 「此処だけでも、何処だけでも駄目なんだよ、親分に聞かれたら三途の川を渡る事になるぜ」 「兄貴、脅かしっこ無しにしてくんな」 その刻、親分辰三の怒鳴り声が家中に響いた。 「てめいら集まりやがれ」 辰三の声に皆が慌てて囲炉裏端に恐る恐る集まった。 「おりゃよ~何とか今日の辰巳屋の一件を忘れようした、商売には成功も失敗もある、解っちゃいるが今日の辰巳屋の一件だけは忘れられね~、このままあのあまどもに舐められてたまるかよ~」 「だがな~、辰三、相手はこれまでの様に力でどうにかなる奴らでは無いぞ」 「そうじゃ、小娘が道場にいる限り手は出せぬ、某は御免じゃ」 「それ程に強いのか、其方らが言うのだから間違いはあるまいが~」 「この中で儂に勝てる者は居るまい・・・その儂が言うておるのだ」 「だが、親分が言う以上、我らが何とかせねば」 「ああそうだぜ、先生方が役にたたねぇ~んなら辞めて貰いますぜ」 「小娘が一人になるのを待つか、あの婆さんが一人の刻を狙うか、いかに強くとも我らが五人でならば仕留められるわ」 「辰三親分はどっちなのだ、小娘を取り戻したいのか、婆さんに仕返しがしたいのか」 「そんなのは決まっていら~、両方だよ、両方」 「両方ともか~、あ奴らの弱みは小娘じゃ、小娘を捕まえれば仕返しも出来るわい」 「あの~親分」 「何だ、何か良い案でもあるのか、ええ~」 「あの~、道場に出入りする弟子の中から一番弱っちい奴を捕まえちゃ~どうでしょう。 そいつを人質にすりゃ~奴らもこっちの言う事を聞くんじゃないかと~駄目でしょうか」 「人質なぁ~、弱っちい奴か・・・おめい汚ねえ奴だなぁ~」 「ひぃ~」 「気に入った、誰か他に案はね~か」 「・・・」 「あの~親分」 今、案を出した下っ端が再度呼び掛けた。 「何だ、まだ汚ね~手があるのか」 「へぇ~、小娘にも親、兄弟が居りましょう、そいつらを攫って来ちゃ~どうですかい」 「親、兄弟か~」 「辰三親分、あんたの処には悪知恵の回る奴がいるなぁ~」 「良し、代貸~、てめいが指揮して四つの組に分けろ、良いな」 「四つともやるんで、親分」 代貸と呼ばれた大男が確認した。 「お~よ、全部やるのよ」 「あの~、親分」 二つの案を出した下っ端がまた親分に声を掛けた。 「何だ、まだあるのか」 「いえ、ここの守りも居るんじゃないかと、それで組は五つの方が・・・」 「親分、その三下は使えるぜ、なぁ~」 用心棒の一人が他の用心棒に同意を求めた。 「如何にも、その三下を親分の傍に置いて知恵を出させてはどうだ」 「良し、おめえは組に入るな、俺の世話係だ、良いな」 「へい」 「良し、みんな、掛かれ~」 「へい」 子分たちが声を揃えて返事をし別室に移り、代貸が組み分けを始めた。<つづく>
2020.12.17
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<会合の合間>-----#034「ミスター・ヘイゲン、いえ、アレックス、物理学者と考古学者の会議は何時になりますか」皆が好きな飲み物を注文し、今回もスタッフが運んでくれるという事で席に着いていた。「皆様がお疲れと思いますが今日の午後の2時から先程の会議室でとなります。」「ミスター・サクライ、宜しいですか」ヘレンは何時もの婿殿とは呼ばなかった。「はい、そのつもりでおりました」「ミスター・サクライ、何か必要な物、要望はございますか、大統領から、貴方の要望は何でも叶える様にと言われております」「ありがとう、有ります、彼、ミスター・シーモアさんをエリア51に行かせて下さい、シーモアさん直ぐに、行けますか」「はい、そのつもりで来ています」「貴方には、他の方々よりも先に現地に入って頂いてグループの配置方法、発掘方法、宿泊施設の確認などを事前にお願いしたいのです」「何方か補助してくれる方はいらっしゃいますか」「いえ、残念ですが居りません」「ヘイウッド上院議員、貴方のお嬢さんの一人は大学生で考古学専攻と聞いております、彼女にシーモアさんの助手をお願い出来ないでしょうか」「娘にですか、娘の専攻は考古学では無く情報処理です」「上院議員、申し訳ありません、お手数ですが、電話で本人にこちらの依頼を伝えて頂けますか」「今ですか」「はい、今この場でです」「・・・聞いてみましょう」ヘレンが携帯電話をバックから取り出しマーグに繋いだ。「・・・あぁ、マーグ、お母さんよ、貴方にお願いしたい仕事があるの、貴方の専攻では無く考古学なのだけど、ええ、どの時代って、ちょっと待ってね」「ピラミッドの時代です」「ええそうよ、婿殿のご指名なのよ、ジョナサン・シーモアと言う方の助手だけど、良いの~、ちょっと待ってね、良いと言っているわ」「彼には今晩我々と一緒に家に泊まって貰うつもりですが良いですか、お母さん」「ええ、ゲスト・ルームは一杯あるから大丈夫よ」「シーモアさん、良いですね」「はい、結構です、お願いします、ホテルをキャンセルし荷物を運ぶ必要がありますが」「ホテルも荷物もそのままで良いです、必要な物が有れば言って下さい、では、決定です」「お母さん、マーグには今晩詳しく説明すると言って下さい、大学は暫く休学して貰います」「もしもし、マーグ聞こえた、そう婿殿がそう言っているわ、じゃあ詳しくは今晩ね、バイバイ」ミスター・ヘーゲンが最初は呆れたと言うか驚いたと言うかの表情だったが途中から微笑みを浮かべて見つめていた。「上院議員、殆どが日本語の様で、私にはジョナサンが貴方の家に泊まる事になった様だとしか解らないのですが、私にお役に立てる事はありますか」「御免なさいね、我が家では会話は日本語なのです、日本に駐在していた時に家族全員が話せる様になりましてね、貴方も日本語を勉強すれば解る事ですが、日本語は語意が多く言葉による誤解が少ないのです、それに発音も穏やかです、攻撃的な発音では無いのです・・・質問の回答ですが、ジョナサンは今晩、私の家に泊まります、彼の助手に私の下の娘を付けます、これはミスター・サクライの提案であり本人が了承しましたので要望になりました、宜しいですか」「勿論です、彼の要望は命令です」日本語での話し合いであったのでヘレンとサクライが家族である事がヘーゲンにもシーモアにも解らなかった。突然、サクライが右手を上げカフェのスタッフを見るとそのスタッフが急ぎあしで近づいてきた。「ここで昼食を取りたいと思います、貴方が良いと思うものを人数分作って下さい、飲み物もいろいろとお願いします」サクライの言葉をキャサリンが通訳し伝えた。「イエッサー」スタッフは返事をすると又速足で店内に戻って行った。「この店はセルフ・サービスだと思っていました」ヘーゲンが不思議そうに感想を述べた。「シーモアさん、午後2時から物理学者と天文学者と量子力学者が参加する会議が有ります。貴方が参加した会議と同様に初回ですので顔合わせです、参加しませんか」「宜しいのですか、実は考古学者には物理学、天文学も学んだ者も多いのです。私も物理学を学びました、ですから、その申し出はとても嬉しい事です」「では参加して下さい、但し、参加者側では無く檀上の主催者側です」皆で昼食を食べながら考古学、天文学、物理学、世界情勢などいろいろな話題に盛り上がった。「話が弾んでいる処を申し訳ないのですが、そろそろ時間ですので会場へ参りましょう」ヘーゲンが皆に言いキャサリンがサクライに通訳する振りをした。「ミスター・サクライがお話しがあるそうです、直ぐに済むそうです、先程はミスター・サクライの通訳をキャサリン、私がしましたが、物理学・天文学の司会はキャサリンが・・・えぇ私がするのぉ」「大丈夫です、貴方なら出来ます」「私、物理学も天文学も素人ですよ」「それで良いのです、直に解らない事は解らない、理解できない事は出来ないと言って下さい」「それで良いのですか」「はい、貴方の後ろには私がいます、安心して下さい」「良し、やってみますか、と言う事で私が司会をします、肩書は通訳兼秘書でお願いします」「解りました、私が最初に話をし貴方を紹介します、後はお願いします」ヘーゲンが提案を受けて答えた。「キャシー貴方、大丈夫???」「彼が付いているから大丈夫よ、さぁ行きましょう」<つづく>
2020.12.16
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<探索の報告>-----#190 夕餉の話柄は双角の事もあったが、やはり辰三についてが主だった。 お久とお佐紀が辰巳屋での出来事を話し初めて直ぐに平四郎を先頭にお峰、三郎太、お有、平太、清吉、お駒、お高、お花と皆が集まった。 「龍一郎様、おや、一人、御客人がおる様ですがお話しは後刻と致しますか」 「平四郎殿、この者は宝蔵院槍術家・双角殿じゃ、やがては家族にと思うておるで気遣いは無用」 「ほほう、それはそれは、仲間が増えますか、楽しみな事で御座います」 「処で平四郎殿、皆が揃うておると言う事は探索の目途が立ったと言う事ですかな」 「はい、本日をもって辰三の探索は終了で御座います、ほぼ全容が掴めたものと思われます」 「何とも早々と・・・卸元が掴めましたかな」 話を初めながら後から来た者たちの食事の用意がなされていた。 その支度のほとんどを既にこの家に馴染んだお雪がてきぱきと熟していた。 その様子を皆が歓心の目で追った、特にお高、お花、清吉、お駒と客商売の者たちの歓心はひとしおだった。 「お花、お前も覚えが早かったがお雪には負けたね」 「はい、頭の良い子ですね、女将さん」 お高とお花が小声で話し有っていた。 その隣では清吉とお駒が小声で話しをしていた。 「お雪を家に貰えないものかね、お前さん」 「そうだな、だが龍一郎様が手放すまい」 「龍一郎様よりもお佐紀様かもしれませんよ」 「さて、さて、二件のどちらの話を先にきこうかのぉ、龍一郎」 「父上、その前に一件御座います」 「おや、まだ有ったかのぉ~」 「お雪の今後についてで御座います」 己の名が上げられお雪が一瞬、身を固めた。 「鍛錬するのではないのか???」 「はい、そのつもりで御座います、まずはお雪と一緒に皆で山に行き皆で鍛錬致します。 その後、お雪を甚八殿に預け鍛錬の指導をして頂きます。 これには他の側面も御座います、辰三がお雪を諦めておらぬやも知れませぬ故に御府内にいない方が良いと言う事です。 山での鍛錬は半年を予定しております、その後、又皆での山への修行の戻りに府内に連れ戻します・・・さて、問題はその後で御座います」 「その役目、私にお任せ願えませぬか、躾、行儀、礼儀を教えます」 お高が名乗りを上げた。 「私もお役に立ちとう御座います」 お駒も名乗りを上げた。 「其方らもお雪の才を見抜いたのであろう。 その眼力、見事成り・・・だが其方らの仕事は世間との繋がりが濃い。 辰三らの始末次第じゃが、お雪を見知った手下が居らぬとも限らぬ。 平四郎殿の七日市藩藩邸ならば世間との繋がりは薄い。 それは、この道場にも言える事じゃ、道場は確かに人の出入りは激しいがその大半が奉行所の与力・同心か幕府の職にある者じゃ、儂はお雪を見出した佐紀に任せたいと思うておる。 双角殿の鍛錬も同時期にと思うておる、双角殿はお久殿にお任せしたい。 いかがかな、お久殿、其方には鐘四郎殿も居られるが・・・」 「お雪を見出したのが佐紀なれば、双角殿を見出したのは私で御座います。 そのお役目お引き受け致します」 「お高殿、お駒殿、ご理解頂きたい、お高殿、其方はお花を跡取りに育てる役目が、お駒、其方には平太、正平夫婦を跡取りにする役目があろう」 「畏まりまして御座います」 お高、お駒を初め清吉、平太、お久、お佐紀が平伏して賛意を示した。 新参のお雪と双角はここに来て統領は龍一郎なのだと改めて理解した。 「話始めておった故に辰巳屋の話をまず聞かせて頂きましょう、父上」 「解った、お久、佐紀、続きを願おう」 「はい・・・・・・」 お久とお佐紀は辰巳屋での出来事と会話を細かく報告した。 「ほほう、佐紀の親父殿がのぉ~、流石は廻船問屋の主じゃ、一旦腹が座ると落ち着いたものじゃのぉ~」 「はい、私も我が父ながら感服致しました、我ら二人が後ろに控えているとは申せ・・・」 「横に佇む女将さんも堂々としておられましたなぁ~」 「それでじゃ、逃げ出した辰三はどうしたな」 「我らが朝から跡を追っておりました」 三郎太が応えた。 「これはこれは、辰巳屋の屋根裏は大所帯であったのぉ~」 「はい、我ら三人が辰巳屋まで辰三の跡を着けますと清吉親方とお駒様が居られました」 「それで辰三は家に戻ったのかな」 「はい、そのまま家に戻りましたが、事の外、荒れておりました」 「そうだろうとも、何しろ取り立てに失敗してやがる、それも女子二人の邪魔立てでなぁ~」 清吉が伝法な口振りで語った。 「辰三は、その後どう致したな」 「平四郎殿が見えられ昨晩、辰三が武家の屋敷に出かけたと聞きまして探索は一旦終了と決めまして御座います、詳しくは平四郎殿よりお願い申します」 三郎太は平四郎へ話し手を振った。 「平四郎、誰の屋敷であったな」 「館長、佐久間頼陰(よりかげ)と申す貧乏旗本の次男の家で御座いました。 それが不思議な事に実家は貧乏旗本を絵に描いた様な住まいなのですが、次男は豪奢な別邸に住まいしておりました。 不思議に思い本日仔細に調べました処、この者の叔父が佐久間信就(のぶなり)と申しまして数年前まで長崎奉行の任に着いておりました。 頼陰はこの叔父を頼って長崎に行っていた様で御座います」 「長崎奉行のぉ~、して叔父と甥、どちらが卸元であったな、それとも両者かな」 「館長、順を追って話させて下さい・・・辰三は二人の浪人、用心棒と一人の手下を連れて別邸に行きました、行く刻には手下が何やら小さな重い包みを持っておりました。 ところが帰りは少し大きな包みを軽そうに持っておりました」 「行きは小判で帰りは・・・と言うわけじゃな」 「はい、間違い御座いませぬ、我らの眼で取引を観ました故に」 「では、甥の加担は間違いは無いのぉ~、後は長崎奉行で有った叔父が関わっておるかどうかじゃなぁ」 「まだ後ろに幕閣の大物がおるのでは無いか、又は長崎との荷運びに廻船問屋が絡んでは居らぬか」 「それはこれからの探索次第で御座いますが辰三をこれ以上調べても無駄と思い中止し致しました、某の判断は間違っておりましたでしょうか」 「どうじゃ、龍一郎、儂は良き判断であったと思うがのぉ~」 「自信を持たれよ、平四郎殿、良き判断で有ったと私も思います」 「ありがとう御座います、皆、ありがとう」 「平四郎殿、三郎太殿、平太、お有殿、お峰殿、清吉殿、お駒殿、お高殿、お花、皆、ご苦労でした、ありがとう・・・明日からは佐久間の叔父、甥に的を絞っての探索をお願いしたい。 但し、辰三の処の用心棒よりも腕の立つ剣客がいる事は間違いは無い、くれぐれも用心をな、其方らの安全が第一じゃ無理はいかぬぞ、平太、其方に特に言っておく」 「大師匠様、俺は技量が上がっていると思うのだけど、何だか用心深くなってよ~。 何だか前よりも弱くなったんじゃないかとも思うんだ」 「平太、それが技量が上がった証なのじゃ、達人が長生きなのは何も強いばかりでは無い。 用心深くなり、危ない処には近づかないからじゃよ」 「そうか~、弱くなったからじゃないんだね、解った、此れまで以上に用心するよ」 平太は大師匠の龍一郎に諭され嬉しそうにほほ笑んだ。 この光景を見ていた双角は師匠、師範の心得を一つ会得したと感じた。 お雪はと言えば、龍一郎を見つめる目に畏敬の念が溢れ、平太を見つめる目には微笑みがあった。 「明日からの探索の順番と配置は平四郎殿と三郎太殿にお任せ致します。 只、時々は辰三の見張りもお願い致す、お雪を直に諦めたとは到底思えぬのです」 「私も同感です、まさか道場には手を出さぬでしょうが、お雪の一人歩きはさせぬ様にお願い申します」 「お雪、解ったで有ろうな、何度も言うが其方の勝手な行動が皆の手を煩わせる事になる。 外に出る時は誰ぞの同道を願え、それが引いては手間を省く事になる、心せよ」 「重々解りまして御座います」 「大師匠、その役目、愚僧にいただけませぬか」 双角が龍一郎を大師匠と呼び、お雪の護衛に名乗りを上げた。 「良かろう、外に出る刻は其方に任そう、じゃが其方は次席じゃ、其方の図体では目立つ故な、家の内外の指導は平太、其方に任せる、其方に任が無き刻は其方にお雪を任せる、良いな」 「・・・はい、畏まりまして御座います」 「三郎太、良いな」 「ははぁ~」 三郎太に取ってはお有と二人だけの機会が増えるかもとの期待に否は無かった。<つづく>
2020.12.15
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愛犬リリー#007「2019年度」マンションの規則で敷地内の散歩は禁止、なので敷地境界の側溝で手中から降ろします。直ぐに愛犬は決まって用を足します。<20190113-162652><20190519-190752><20190825-202655>ペット・ホテルのサービスで毎日、写真を送ってくれます。この頃は沖縄・座間味にダイビングでした。仲間に囲まれて楽しそうです。<20190825-203027>何故かいつも口を開けてします。<20190826-144720>カットを終えてすっきりしています。翌日、帰宅です。<20191001-143424>またまた得意のポーズで寝ています・・・とおもうのですが・・・。<つづく>
2020.12.14
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<槍術家 双角>-----#189 辰巳屋をお久とお佐紀が立ち去る刻にお久が主夫婦には理解出来ない事を言って立ち去った。 「清吉殿、お駒殿、五日で良かろうと思います、よろしく」 「何ですね、お久様」 「いえいえ、私も歳でしょうか、めっきり独白が多くなりました、失念下さい」 主の鳩衛門の問いにお久は惚けた。 「本日はありがとう御座いました、心の重荷が取れまして御座います、お礼申します。 佐紀もありがとう、手数を掛けましたな」「いいえ、父上、母上、何の事が御座いましょう」 「また、龍之介の顔を見せに寄ってくだされよ」 「お二人も孫の顔を見に道場においで下さい、それでは」 お久、お佐紀が辰巳屋を後にし道場へと戻って行った。 「佐紀、あの者、辰巳屋にまた顔を出すと思いますか」 「懲りたとは思いますが、頭の弱い者は何をするか解らぬ処が御座います」 「どちらにせよ、三郎太殿、平四郎殿、清吉殿から知らせが参るでしょう」 「清吉殿とお駒さんには五日の見張りを願いましたが交代に誰をお選びになられるでしょう」 「お高殿、お花と思いますがな」 「正平殿と言う事も有り得ます、最近二人の技量の伸びは目覚ましいですから」 二人が道場に着いた刻、何やら道場に緊張感が漂っていた。 二人は目配せし裏口から道場を覗いた。 そこに見た光景は異様ではあったが、この道場ではたまに見られるものだった。 六尺を超える大男が槍を脇に縦に抱えて道場の門弟たちと対峙していた。 「お前たちでは話にならぬ、主は居らぬのか、師範、師範代はおらぬのか」 「残念てすが、居られませぬ、何故に稽古の合間の指導者が居られぬ刻に参られましたな」 「愚僧の稽古場と稽古の刻が違ごうたのじゃ、何時までまてば良い」 「どうなされた・・・おぉ腹が空いておるのであろう、どうだな、飯でも食うて待たれてはどうかな、その内、高弟の一人くらいは戻って来よう」 「只の高弟では駄目じゃ、上様の天覧試合に出た者の誰かでのうてはな」 「おぉ、其方は試合が太刀だけであったが為に試合に出られず我が技前を試したいので御座ろう」 「そうじゃ、それ故、試合に出た者で出来れば勝者、成人の部の勝者と相対したいのである」 「其方は、此れまでの道場破りとは違ごうて礼儀がある様じゃ。 どうだな、腹が空いては力も出まい、馳走する故、少々早いが夕餉を食べて待たぬか」 「馳走してくれるのか・・・う~ん、お願いもうそう」 己の腹具合を確かめる様にした後にそう答えた。 「では、奥の食堂(ジキドウ)へ参ろう、おぉそうじゃ其方の名を聞いておこう、何と呼べば良いかな」 「愚僧は禅栄房双角と申す・・・双角と呼んで下されよ」 門弟が双角を食堂へ案内しようとした刻、お久と佐紀が道場に顔を出した。 「奥方様、若奥様、お戻り成されませ、ご苦労様で御座いました」 道場の中で一番歳かさの門弟が二人を労った。 「其方、見事な応対で御座いました、日頃の鍛錬が偲ばれる仕儀で御座いました」 「お褒めに預かりありがとう御座います、お聞きで御座いましたか」 「中程からですが聞きました、其方の提案に私たちも一緒させて頂きましょう」 皆が奥へと進み囲炉裏端の席に着いた。 「奥方様で御座いますか、愚僧は・・・」 「双角殿・・・でしたな、十文字槍と言う事は宝蔵院流槍術で御座いますか」 「左様で御座います」 「其方は幾つに御成りで幾年の修業を成されましたな」 「八つの頃より十五年の修業を致しました」 「修行の場は奈良と思いますが、其方には言葉に訛りが御座いませぬな」 「江戸へは五年程前に参りました、増上寺の主様より槍の指導にとのご依頼が奈良に参りまして愚僧が推薦されました」 「では、増上寺で指導成されておられるのですね、人の模範となるべき方が道場破り紛いの行いとは・・・」 「愚僧にはどうでも良い事なのですが、門下生の僧侶たちから指導者、つまりは愚僧の技前を知りたい、まぁ本当に強い指導者から習いたいとこちらの道場を願われました」 「こちらに来たは其方の本意では無いと申されますか」 「当初はそうで御座いました、ですが次第に己の力量を知りたいと言う欲求が生まれどんどん強くなりまして御座います、修行の未熟故で御座いましょう」 「人と言う物、中々に欲は捨てられませぬなぁ~」 「はい、難しゅう御座います」 「其方の願い、叶えて差し上げましょう」 「愚僧の願い、願いを叶える・・・どう言う事でしょう」 「其方の相手を、其方の技量を私が調べて差し上げる、と言う意味ですよ」 「貴方がお相手下さる・・・」 「次席の私で不足でしたなら、勝者のこの佐紀がお相手を致しましょう。 それでも不足ならば当館、館長・小兵衛がお相手を致しましょう。 それでも不足ならば勝者・龍一郎がお相手致しましょう、いかがですね」 「これはまた勿体ないお言葉、何の不足が御座いましょう」 「では、夕餉の後に腹ごなしにいかがですね」 「よろしく、お願い申します」 「そうと決まれば力が十二分に出る様にな、たんと食べなされ」 双角がそう言われて見るとお久とお佐紀は丼飯を二杯食べ終え鍋汁も二杯食べ三杯目をよそっている事に気付いた。 弟子たちも二杯目に手を付け大食いと言われる双角と同じ量を食べていた。 双角は呆れて二人の女子を見つめていた。 「どうなされましたかな、双角殿、お口に合いませぬか」 「いえ、そうでは御座いませぬ・・・」 「奥方様、あの~」 門弟の一人が話に割って入った。 「なんですね」 「お二人の食べっぷりに驚いておられるのではと・・・」 「あれ、私とした事が・・・、佐紀、其方も・・・」 「母上、気が付かず申し訳御座いませぬ、身内だけでは無い事を失念しておりました」 「お二人は何時もその様に大食漢なので御座いますか」 「双角殿、お二人だけでは御座らぬのです、橘の上位者は皆、大食漢で御座います」 「我々も仲間内では大食いと言われては居りますがこちらの皆さまには太刀打ち出来ませぬ」 「愚僧も寺では大飯喰らいと言われておりますが小食と思わされました」 「大飯喰らいが達人では御座いますまい、ご自分に有った分を召し上がって下さいな」 結局、お久、お佐紀が四杯づつ、双角と他の者たちは三杯づつ食べて満足した。 食後、茶を飲みながら、双角は少し無理をして食べたと後悔していた。 双角は誰かから聞いた言葉を思い出していた。 「活力は食にあり」と言う言葉で有った。 二人の女子は沢山食べているのに体付きは太ってはいない、食べた以上に使っている、つまり動いていると言う事なのか・・・などと双角は考えていた。 「食事の直ぐ後は動きが鈍るものです、其方が良いと思う刻に始めましょう」 「愚僧に合わせて頂けるのですか・・・お二人はあれ程食べられたのに、何時でも宜しいのですか」 「双角殿、信じられぬでしょうが、あれでもお二人には少ないので御座いますよ」 「何と、あれ程の量が遠慮した量と言う事ですか・・・いやはや」 夕餉の後の茶を楽しみながら双角の生い立ちや修行の地などの話を聞き刻を過ごした。 四半刻程過ぎた頃、双角が言った。 「そろそろお願い申す、愚僧は真槍しか持参しておりませぬ」 「構いませぬ、剣に生きる者に男子、女子の区別も獲物の区別もありませぬ。 私は木刀でお相手致しましょう」 皆が道場へと移動した。 その時、道場に小兵衛、龍一郎が顔を出した。 二人は即座に事情を察し小兵衛が言った。 「我々の事は気にせずにお続け成され」 「お前様、夕餉は暫くお待ち下され、事が終わり次第、支度を致しますでな」 「気にせずとも良い、存分になされよ」 「ありがとう御座います、ついでと言っては何ですがこの場の審判をお願い申します」 「母上、審判は私が致しましょう」 龍一郎が審判を買って出た。 双角が十文字の真槍を立てて立ち、対するお久が木刀を持ち向き合った。 「事の事情は分からねど、果し合いでは御座らぬ、ご両者宜しいな・・・は・じ・め・・・」 双角は立てた槍をゆっくりと正面に立つお久へと向けた。 対するお久もゆっくりと木刀を双角へと向けた。 その途端、双角は驚いた、対峙するお久に殺気も闘志も無く微かな笑みを浮かべているのだ。 それだけでは無い事にも気が付いた、そこに存在すると言う気さえも感じられないのである。 奈良の山奥で山々を駆け巡り動物の気を感じる修行を重ねた双角は5年の江戸の暮らしが気の練りを鈍らせたと感じた。 真槍を前にしても笑みを浮かべる者に太刀打ちなど出来るものでは無いと理解した。 その上で双角は仕掛けた。 何度か前後にしごいた槍を差し殺す勢いで一気に前に突き出した。 突き刺さると思った次の瞬間にはお久は十文字の内側に入り木刀が槍の側面に触れながら前進してきた。 そして、木刀の先端を双角の額の前、寸余の処で止めた。 双角は槍を床に寝かせ、膝を付き負けを認めた。 「参りまして御座います・・・お久様、橘道場には槍術は御座いましょうか」 「体術、手裏剣、武術に関する事、全て御座います」 「弟子にして頂く訳には参りませんでしょうか」 「そこにお座りの館長・橘小兵衛殿に尋ねる事です」 双角は館長へと向きを変え平伏し門弟になる事を願った。 「ぜひ、門弟の端にお加え下さい、お願い申します」 「双角と申したな、其方程の技前ならば、何処かの師範ではないのか、そちらを捨て置いてよいのかな」 「考えも致しませんでした、確かに増上寺の分社で指導しております」 「増上寺で有れば通えるがのぉ~一度帰って相談してみてはいかがかな」 「・・・はぁ~」 「どうしたな」 「相談すれば遺留されるは目に見えております」 「龍一郎、先の事は解らぬが、儂は新たな家族いしても良いと思うが其方はどうか」 「私よりもまずは母上と佐紀に尋ねることが先と思えますが」 「おぉそうじゃな」 「どうかな、ご両者」 「私は大賛成で御座います、直な良い青年で御座います、どうか、佐紀」 「私も賛成です、三郎太殿の良き相手に成長いたしましょう」 「三郎太ののぉ、あ奴は幼き頃より修行の日々で有った男ぞ」 「この双角殿も八つの頃より修行をして来たそうで御座います、何より武術だけでは無く、僧侶の修業もしているはずです、きっと皆の役に立ってくれると思います」 「双角自身が説得できぬ刻は我らの誰かが増上寺に出向き助成せねばなるまいな」 「父上、私にお任せ下さい」 「龍一郎、其方、増上寺にも伝手があるか」 「あると言えばあり、無いと言えば無いと言う処でしょうか、とにかくお任せ下さい」 「何にせよ、まずは双角殿本人に任せよう、寺では行先を知っているのであろう。 音沙汰なしでは道場破りで返り討ちに合い、大怪我をしたか、この世の人では無いと思われるでな、早々に一度顔をだしなされ、良いな」 「聞いての通りじゃ、其方を歓迎しておる事を忘れるでないぞ」 「勿体ないお言葉ありがとう御座います、厚かましいお願いですが、今晩はこちらに泊めて頂き明日、寺に戻り相談したいと思います、お許し頂けましょうか」 「長屋が空いて居ろう、後で泊る支度を頼むぞ」 小兵衛が内弟子の一人に願った。 小兵衛と龍一郎には一度目の夕餉、他の者たちには二度目の夕餉を食し語り合った。 双角はこれほど気心の知れた者通しの夕餉の席は初めての経験だった。 双角は、何としても仲間に加わると心に決めていた。<つづく>
2020.12.13
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テレビの再放送で「プリティー・ウーマン」を観ました。5回目でしょうか、6回目でしょうか、何度観ても素晴らしい映画です。役者の表示は「リチャード・ギア」さんが最初で次が「ジュリア・ロバーツ」さんですがタイトルから言えば女性が主役と言う事でしょうか???この映画が製作された時点では断然「リチャード・ギア」さんの方が格上でした。物語自体は単純なシンデレラ物ですが役者の旨さ、ちょっとしたコメディー風な処、音楽が良いのでしょうか、私は特にホテル・マネージャー役の俳優が印象に残りました、最初に見た時から印象に残る方でした。その後、映画は忘れましたが、この俳優が同様な役で出ているのを観ましたので私だけでは無いのだなぁ~と思いました。キャスティング・ディレクターもこの俳優を思い浮かべたのではないでしょうか。「ジュリア・ロバーツ」さんはこの映画から快進撃が始まり超売れっ子女優になるのですから転機の一作でしょう。何度も再放送を観てしまう映画に「ジュリア・ロバーツ」さんの「ノッティング・ヒルの恋人」があります、DVDを持っていて、何時でも見れるのに再放送があると必ず観てしまいます。現在の世界情勢では素晴らしい映画を観ている時だけでも幸せな気分になりたいものです。-----おしまい2025/05/08 更新
2020.12.12
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日本の一日の新規感染者が約3000人になりました。東京は約600人です。第3波なのは間違いないところです。このごに及んでまだ「Go To xx」を検討中と言っています、何だかな~。世界ではアメリカのこれまでの感染者が29万人を超え、一日の死者が2000人を越えました。一日の感染者では無く死者なのです、目を疑いました。大統領の軽視が起こした人災です、この状況でも自分の対策は成功だと言う厚顔さが信じられません。世界中でちょっと落ち着くと緩和、悪くなると規制の繰り返し・・・終息するまで緩めない時期を迎えていると思います。ワクチンの使用が始まっています、無いよりは良いのですが、治療薬の開発のニュースが無い事が気になります。発生源とされる中国のニュースがありません、気になります。陰謀説も信じたくもなります。<おしまい>
2020.12.11
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<辰三の来店>-----#188 「御免下さい」 お久が声を掛けて暖簾を潜り、その後を塗笠を被った侍が続いた。 「いらっしゃいまし~」 お店中から声が飛んで迎えた。 「主の鳩衛門殿と女将さんにお会いしたいのですが、取り次いでいただけますか、私は橘久と申します」 応対に出て来た手代と思られる男にお久が願いを告げた。 「橘様・・・橘様と申されますと、あの橘道場の・・・あぁ~天覧試合で次席に入られたお方だ~。 内のお嬢様の母上様で御座いますね」 「はい、左様で御座います、お取次ぎをお願い申します」 「はい、只今、少々お待ち下さい」 言うが早いか脱兎の如く店の奥へとすっ飛んで行った。 暫くすると奥からどかどかと廊下を急ぐ足音が聞こえ内暖簾の前で止まった。 一瞬の後、内暖簾を掻き分けて初老の男女と先程の奉公人が現れた。 「これはこれは、お久様、わざわざのお運びありがとう御座います」 「こちらこそ、一度ご挨拶にと思うておりましたが機会を得ず本日近くへ来たものですから寄らせて頂きました、ご迷惑でなければ宜しいのですが」 「迷惑などとんでも御座いません、さぁさぁ奥へお通り下さい」 「ありがとう御座います、では、お言葉に甘えて上がらせて頂きます」 お久と武士が店に上がると、奉公人の一人が直ぐに二人の履物の向きを変えた。 主の鳩衛門が先導し廊下を奥へと進み主夫婦の居間と思われる部屋に案内した。 部屋に入った主・鳩衛門と女将のお滝は上手では無く下手に席を取った。 居間に入ったお久と武士は入った処に席を決め、お久は手で鳩衛門に上座の主の席に座る様に促した。 受けた鳩衛門は上座を避けお久の正面に移動しお滝も並んだ。 「お先に失礼致します」 「どうぞ、こちらこそ失礼致します」 二人が言葉を交わし四人が座った。 「突然のお訪い、ご迷惑をお掛けします」 「迷惑などとんでも御座いません、ようこそいらっしゃいました。 私どももお会いしとう御座いました」 鳩衛門はそう答えながらお久の隣に控える武士に目をやっていた。 「嬉しいお言葉ありがとう御座います」 「ところで佐紀がご一緒で無いのは佐紀に何かありましたのでしょうか」 「何も変わりは無いと存じます・・・が詳しくは本人にお聞き下さい」 「・・・本人・・・本人」 鳩衛門はお久に移していた目線を隣の武士に戻した。 塗笠を被り少し俯き加減の武士の鼻が見え左の頬には刀傷と思われる縦に大きな傷跡が見えた。 その武士が塗笠の顎の紐を解きながら初めて言葉を発した。 「父上、母上、先日以来のご無沙汰で御座います」 塗笠を取った武士が頭を下げ礼をして顔を上げた。 「・・・」 「・・・」 「・・・其方は佐紀か??? 佐紀なのか」 「お前様、佐紀で御座います・・・が、その傷はどうなされた、その肌の色はどうなされた」 「これは変装で御座いますよ、父上、母上、傷も作り物です、ご安心下さい」 「変装??? 偽物??? 何故かな・・・そうか、今日は晦日、其方、今日が晦日故に来てくれたか」 「お雪を預かったのは私で御座います、後の始末も私の仕事で御座いましょう」 「何と、あ奴の相手を其方がしてくれると言うのか」 「はい、お任せ下さい」 「しかし、相手はならず者たちだぞ、無法者たちだぞ、用心棒もおるのだぞ」 「そうですよ、佐紀、貴方にもしもの事があれば龍一郎様に龍之介に何と詫びれば良いやら」 佐紀の父母が心配を口にした。 「お二人、心配は解ります、解りますが、思い出して下さいな、佐紀は先日の天覧試合の勝者ですよ、女子の部とは言え勝者なのです」 「おぉ~、忘れておりました、どうも昔の知る娘の佐紀と試合の橘佐紀殿が一緒にはなりません、同じだと頭では解っているのですが、昔の佐紀を思い浮かべますと・・・」 「お気持ちは解ります、幼き頃の少女から大人になる頃に大奥に三年、戻れば思い出を作る間も無く武家へ嫁がれ、お二人には幼き頃の思い出しか無いので御座いましょう。 思い出の幼き華憐な娘が剣術の天覧試合に出るまでの剣術の達人になるなど、それも勝者になるなど夢か幻の様に感じられるので御座いましょう」 「はい、その様な思いがあるので御座いましょう。 只、今思えば幼き頃からの鍛錬が生きているのかも知れませんなぁ~」 「幼き頃の鍛錬と申されますと・・・佐紀、何を成されましたな」 お久は話の途中で佐紀本人に問い質した。 「母上、私には覚えが御座いませぬ」 「あぁ~、佐紀、お前には毎日の日課だったから特別な事では無かったのでしょうねぇ~」 「お花もお琴も習っていましたが毎日の事ではありませんでしたが」 「習い事は昼餉の後だったでしょう、朝餉の後には何をして居ましたのか覚えていませんか」 「朝餉の後は愛宕神社にお参りに行っていただけで他には何も無いと思いますが」 「何と其方もお雪と同じで毎日お参りに行っていたのですか」 お久が驚きの声で佐紀に尋ねた。 「私はお雪ちゃんと違い毎日ではありませんでした」 「佐紀、其方の思い違いですよ、ほとんど毎日でしたよ、晴れていればな。 何せ共の奉公人が根を上げる位でしたからなぁ~」 「父上、母上、私は幾つの頃から神社通いをしておりましたでしょうか」 「其方が最初に神社に行き始めたのは四つか五つの頃ですよ、其方を連れて三人でお参りに行った事が始まりでしたなぁ~」 「母上、お言葉ですが四つ五つで愛宕は無理で御座いましょう」 「其方はなぁ~、最初は神田明神に通っていたのですよ、覚えていないのですね」 「三人でお参りに行った次の日に今度は一人で行くとだだを捏ねましてなぁ~。 子守が一緒に行きました、途中で疲れておぶわれて戻って参りましたがな。 それも始めの頃だけでしたなぁ~、八つ頃でしたかな、誰に聞いたか、この江戸で一番のお山、愛宕の山に行きたいと言い出しましたなぁ。 奉公人たちも当初は同行を喜んで交代で行きましたが毎日では行きたがる者も居らず結局子守が一緒でしたなぁ~、話によれば増上寺、芝大明神へも行った様で御座いますよ、覚えていませんか」 「昔、若武者が馬で登ったと言う石段を登った事を思いだしました」 「おぉ、それが愛宕神社だの~、戻って来た子守が泣いて勘弁して下さいと交代を願った事を其方は知るまいなぁ」 「それは迷惑な事で御座いました、お詫び申し上げます」 「朝餉、昼餉、夕餉が人の日常の様に其方に取っては参拝も日常であったのかのぉ~。 大奥ではどうしていたのですな」 「はい、当初は緊張のせいでしょうか、何も感じませんでしたが、慣れて来た頃でしょうか、体が動く事を求めているようでした。 それで建屋から御門までの階段道を何度も何度も歩いておりました。 それが可笑しな事に大奥の流行り事になりました」 「それは面白い話ですね、大奥に住む皆に閉じ込められた思いが有るのでございましょう」 「佐紀、其方はなるべくして龍一郎殿の嫁になった様ですね」 「そうやも知れませぬ、お久様」 その時、廊下を小走りに歩く音が聞こえ若手の番頭が現れた。 「旦那様、晦日の取り立てが参りました」 障子越しに辰三が現れた事を伝える声が聞こえた。 四人が目配せし、お久と佐紀が頷きあった。 「まずは何時もの様に応対して下さい、但し、お雪は居らぬ故に払わぬと申して下さい」 「大丈夫で御座いましょうか、暴れませんでしょうか」 「天覧試合の勝者と次席が控えております、ご安心下さい。 お二人は大いにあ奴を怒らせてくださいな、手を出す前が私たちの出番と思うて下さい」 「怒らせるのですか・・・お客様を怒らせぬ様にする事は得意なのですが・・・」 「これまでの鬱憤を晴らして下さいな、後はお引き受け致します」 「・・・渡りました、お願い申します」 四人が立ち上がり店へと向かって廊下を歩き出した。 主の鳩衛門と女将のお滝が内暖簾を潜り店に顔をだすと、そこには何度も見た光景があった。 後ろに用心棒二人と下っ端三人を従えた辰三が板の間に腰掛け薄笑いを浮かべて店の中の奉公人たちを見渡していた。 「遅いじゃねぇ~か、鳩衛門よ、晦日の決まり事だからよ、店先で待っているものだろうが」 用心棒と下っ端たちもにやにやと薄笑いを浮かべて主と女将を眺めていた。 「それがのぉ、辰三さんや、もう払えん様になってしまいましてなぁ~」 「何だと、てめぇの処では只で奉公人を使おうと言うのか、えぇ~」 「いえいえ、自慢では御座いませんが私どもは他のお店よりも奉公人への給金は多いと思うておりますよ、辰三どん」 「何が辰三どんだ、てめいにどんなどと呼ばれる筋合いはねぇ、言うなら様と言え様と」 「失礼とは存じますが私には与太者に様を付ける習わしは御座いませんでなぁ」 「与太者だと、俺を与太者と言うのか・・・今日はえらく威勢が良いじゃねぇか、どうした」 「私も驚いておりますよ、これまでの鬱憤が思いの外に溜まっていた様ですなぁ~」 「てめぇ~、俺にそんな口きいて只で済むと思うなよ」 「おやおや、お怒りの様で御座いますね、どう成されますか、私をお斬りになりますか。 そうなりますと、奉行所にお縄になり打ち首で御座いますなぁ~。 まぁ私も斬り殺される訳ですから痛み分けと言う事でしょうか。 それとも殴りますかな、痛いのは困りますなぁ~」 余りの恐れを知らぬ言葉に呆れた辰三が問うた。 「何だかよぉ~今日はえらく強気じゃねぇ~か、儂が聞きてぇのは何で払えんのかだぜ」 「おぉそうでしたな、それはですな、払うお雪が居らぬからですよ、辰三どん」 「そのどんは止めろっていってんだろうが、まぁ良いか、何でお雪が居ないんだよ、まさかお前、お雪を吉原に売ったんじゃね~だろうなぁ」 「辰三どんじゃあるまいし吉原なんぞに売りませんよ」 「じゃあどうしたんだよ」 「橘道場と言う処をご存じですかな、辰三どん」 「橘道場、橘・・・おぉこの間の上様の試合で大活躍した道場じゃね~か、その道場がどうした」 「その橘道場に奉公変えになりましたんですよ」 「奉公変えって、てめ~誰の許しで変えやがった、俺は許しちゃいね~ぞ」 「おや、主は私ですよ、辰三どんは何の権利がありますので」 「お雪が俺に借金があるからに決まってんだろ、態度がでけ~のもいい加減にしやがれ~」 「兎に角、お雪は我が家とは何の縁ももはや在りませんので来られても困りますなぁ~」 「じぁ~何かてめ~儂らに橘の道場に行けとでも言うのか」 「お雪の給金が欲しければ、そうするしか御座いませんなぁ~」 「勝者がうようよ居る処に行く訳が無いと騙っていやがるなぁてめ~、売ったのはてめ~何だからてめ~が道場から貰って儂に寄こすんだよ、解ったな」 「私はね~お雪を売ってなどおりませんよ、奉公が変わっただけですよ、給金が上がりますのでね」 「何、金が、銭が増えたのか、そりゃ~良いや、今から取りに行ってくんな、旦那よ~」 「だから、何故私が行かねばならぬのですか、もう何の関係もありませんし。 其方の手先でもありませんしな。 そうですよ、其方の手先と強そうな用心棒殿に取りに行かせれば宜しい」 「どうしちまったんだ、旦那さんよ~、今日は本当に強気だな、まるで別人だぜ・・・」 「そうでしょうか、まぁ、そう言う訳ですからお引き取り下さい」 「そうはいかね~んだよ、だってよ~旦那が裏にお雪を隠していてよ~橘に行ったと言ってよ~俺が橘に行かね~と思ってるって手かもしれね~しな」 「そんな手は使いませんよ、信じて頂けませんかね、仕方ありませんなぁ~。 これは言いたくは無かったのですが、言いましょう。 私どもには娘が居りましてな、その娘の名が佐紀でしてな、其方は先の天覧試合の女子の部の勝者の名をご存じですかな」 「橘だろうが・・・まさか勝者が娘だと言うんじゃ無いだろうなぁ~武家の娘だぜ」 「それが、そうなのですよ、辰三どん、勝者の橘佐紀殿は私どもの娘なのですよ。 その娘が里帰りをしましてな、お雪を引き取って行ったのですよ。 ですから橘道場を利用した出任せでは無いのですよ、ご理解いただけましたかな」 「商家の娘が武家に嫁に行ったと言うのか。無いとは言わね~が、そう有る話じゃね~だろ」 「大奥に行儀見習いに行っていた事が縁で御座いましょうか。 成人の部で勝者になられた橘龍一郎様の嫁になったのですよ」 「おいおい、怖い事言うねい、橘の若先生が義理の息子だと言う事じゃね~か」 「まぁそう言う事です、辰三どん」 「成程、それで強気な訳か、やっぱり、お雪は裏にいるなぁ~、先生方、奥を調べてくんな」 辰三に命ぜられた用心棒二人と手下たちが奥を探そうと動き出したその時、内暖簾を分けて武家の奥方と左頬に刀傷のある武士が姿を見せた。 「何だ、何だ、てめ~の店では用心棒を飼っているのか、ええ~」 「何と失礼な、こちらの武家の奥方は橘の奥方のお久様で御座いますよ」 板の間に足を上げようとしていた用心棒の足が止まり後ろに下がった。 「先生方、どうしちまったんです」 「馬鹿者、辰三、橘久と言えば次席に入った女子じゃぞ、それに後ろに不気味な武士がおる」 「次席と言っても女子でしょ、大した腕じゃありませんよ、先生方にかかっちゃね」 「其方が相手をするなら止めはせぬが某は遠慮しよう」 辰三のけしかける言葉に一人の用心棒は拒否しもう一人に尋ねた。 「辰三の言う通り・・・勝者とは言え女子では無いか、それも次席じゃぞ」 そう言うと歩を進め板場に上がろうとした時に用心棒の目の前にお久が突然現れた。 「土足はいけませんよ」 余りの突然のお久の現れ方に驚いた用心棒は腰が砕けて後ろに尻餅を着いてしまった。 「おやおや、驚かせてしまいましたか、大丈夫で御座いますか、お怪我は御座いませぬか」 座っていた辰三がお久を見つめてゆっくりと立ち上がり後ろへゆっくりと下がった。 「やい、てめえら銭を払っているんだ、何とかしねいか」 尻餅を着いていた用心棒がお久から目を離さずにゆっくりと立ち上がり後ろへと下がった。 「いや、遠慮しておこう、命有っての物種と申すからの」 「相手は女子な上に手ぶらじゃね~かよ、銭を返しやがれ~第一こいつは次席じゃね~か」 「勝者であろうが次席であろうが女子であろうが問題では無い、我らがこの年まで生きておるのはな・・・強い相手とは戦わぬからじゃ・・・のぉ~」 尻餅を着いた用心棒に賛同を求めた。 「拙者も賛同致す、諦める事じゃ、辰三」 「橘の者が一人しかいない処で取れないんじゃ、うじゃうじゃ居る道場には行けないじゃないか」 「辰三さん、橘の者は一人ではありませんよ」 お久がそう言って後ろに立つ武家を振り返った。 皆が見つめる中、武士は後ろを向くと数舜後に振り返った。 お店いる全員が見つめる中、振り返った武士の顔を見てお久以外の全員が驚いた。 後ろを向く前の黒く陰鬱な顔付きで何と言っても目立つ左頬の刀傷が無くなり顔の色も透き通る様に白くその顔は眉目秀麗で優美なものに変わっていたのだ。 「佐紀・・・」 「お佐紀・・・」 聞かされていた主夫婦も驚きを隠せなかった。 「お佐紀お嬢様・・・」 知らされていなかった番頭が奉公人を代表する様に叫んだ。 「な・な・なんじゃ~女子ではないか~」 辰三が馬鹿にした様に怒鳴った。 「辰三、佐紀と申したのだぞ、橘の佐紀なれば、先の試合の勝者ではないか」 お久との対峙を拒絶した用心棒が応えた。 「次席のこの年増よりも強いと言う事か」 「そうじゃ、某はこの仕事は降りた、辰三、諦めろ、命有っての事ぞ」 「某も降りた」 二人の用心棒が手を引くと言った。 「何だよ、何だよ、戦いもせず、剣も抜かずに降参かい、だらしがね~なぁ、高い銭を払ってるんだぜ、お二人さんよ、剣くらい抜きね~な」 「馬鹿者、武士は刀を抜いた時が始まりであり終わりなのだ。 某はまだまだ命が惜しいでな、遠慮もうそう」 「某も同様じゃ、辰三、他を当たれば良いでは無いか、商売は諦めが肝心であろう」 「てめいらに商売を教えられる筋合いはねい、おい、先生方が駄目なら手前たちがやれ~」 辰三は手下の三人をけしかけた。 三人の手下たちは尻込みしお互いを見合った。 「てめいら行かね~か、行け~」 辰三にけしかけられた三人が少し前に出た。 その途端に「ブーン、ざぁざぁ」と音が聞こえ三人が見つめていた佐紀が二人になった。 そして、次の瞬間に三人が悲鳴を上げた。 辰三が三人を見ると左の腕が肘以外の処で曲がっていた・・・折れたのだ。 辰三が慌てて佐紀を見ると二人に見えた姿が一人に戻り顔には微かな微笑みを浮かべていた。 綺麗な顔をした女が微笑みを浮かべ三人の腕を折った事実に辰三は恐怖に体を震わせた。 「うわぁ~、うわぁ~、勘弁してくれ~」 辰三は悲鳴を上げたが、用心棒の二人は見えなかった佐紀の動きに恐怖を感じ言葉も無く動く事も出来なかった。 「辰三さんと言いましたね、私がこの家の娘、今は橘に嫁いで橘となった佐紀で御座います。 お雪は間違い無く私がお預かり致しました、お雪の給金が欲しければ橘道場に取りに来なさい。 只、借財と此れまでの支払いを鑑みますと支払いは既に終わっております。 今後、この辰巳屋に顔を出したり、お雪に近づけば私が怒るかも知れませぬ。 ご理解頂けましたね、もし、ご理解いただけぬ行いを其方がなされた刻には・・・お分かりですね。 本日は其方の手下三人の左腕で私の怒りを収めましょう。 ご理解いただけたならお引き取り下さい・・・辰三さん」 最後の辰三さんと名前を呼んだ声は地獄の底から聞こえた様に響き辰三だけでは無く、お久以外の全員を震え上がられた。 辰三が無言で脱兎のごとく暖簾を潜り駆け出して行った。 辰三を追って用心棒の二人が後ずさりで暖簾を潜り外に出ると辰三を追って走って行った。 腕を折られた手下三人は右手で左手を抱えながらよろめく様に暖簾を潜って行った。 六人の無法者が居なくなった店先には虚脱感が溢れ暫くは声も無かった。 「父上、母上、お茶をもう一杯頂きとう御座います」 佐紀の何とも長閑な声が静寂を破り店先に響き、主夫婦と奉公人の大きなため息とともに日常の店先に戻って行った。 主夫婦とお久、お佐紀が奥へと消えた店先では奉公人は仕事処では無かった。 皆を監督する番頭も仕事にならず皆と一緒になって起こった出来事を話しあっていた。<つづく>
2020.12.11
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<初回の考古学会合>-----#033桜井が日本語で話し隣でキャサリンが英語に訳してマイクに向かって話した。「まず最初に脅しから始めます」この言葉に場内が騒然とし暫く収まるのを待って桜井が話し出した。「皆さんは守秘契約書に署名されました、この場の出来事、会話は全て極秘です。米国政府からの発表前に一言でも漏らせば処罰の対象に成ります。この中には米国以外の国籍の方も多数いらっしゃいます。本国に帰れば本国政府からの開示要求もあるでしょう、しかしそれも拒否して頂きます。もし、漏らせば罰の対象に成ります、本国政府は守ってはくれません。信じて頂けないようでしたら、どうぞ報告して下さい・・・二度と国外に出る事は出来なくなります。これはお約束します。では、本題にはいりましょう・・・古代文明の専門家とお聞きしました。まずお聞きします、古代文明は何処の何と言う文明ですか・・・何方かお答え下さい」皆の視線が最前列の中央に座る初老の男性に向けられた。「メソアメリカ、アンデス、黄河、インダス、メソポタミア、エジプトの六つが古代文明だ」「文明の定義は何ですか」「国家を形成していた事、ある程度の人口がいた事、国土となる領域をもっていた事、農耕が行われていた事、文字を持っていた事、建造物があった事・・・だな」「メソアメリカとアンデスには文字があったのですか」「・・・」「六つの文明の発生年代を教えて下さい」「・・・紀元前4000から5000年前だ」「テル・アブ・フレイラを勿論ご存知ですね」「メソポタミア西部の遺跡だ」「その遺跡には11000年前に穀物を栽培した跡があった・・・と何かの資料で見ましたが」「それは年代測定の間違いだ」「ギョベクリ・テペと言う遺跡は1万4000年位前の物と聞いていますが勿論ご存知ですね」「それも年代測定の間違いだ」「中国文明も一説には11000年前との事ですが」「条件が満たされていない」「条件のなにがですか」「専門家でも無い者に話ても無駄だ」「貴方は何のために考古学を発掘を行っているのですか」「決まっているだろう、人類の歴史を知る為だ」「只人類の歴史を知るならば中世でも近世でも良いでしょう。何故古代なのですか、とお聞きしているのですが」「中世、近代など下らない、やはり古代だろう」「その言葉は中世や近世を研究している方に失礼なのではないでしょうか」「そんな事は知った事では無い、第一貴様は何様のつもりだ。俺は考古学の第一人者だぞ、儂がノーと言えばノーなんだよ」「貴方は古代文明の研究に人生を捧げているのですか」「勿論だ、やっと解ってくれたようだな」「では、専門家のご意見を伺いたいのですが、先日、エジプトのピラミッドとスフィンクスが輝いたのはご存じですね、あれは、どう言う事なのでしょうか」「・・・」「・・・」「会長、副会長、専門家のご意見をお願いします」「あんな物はまやかしだ、マジックだ、イリュージョンだ」「そうですか、あれは何処かのイリュージョニストの仕業ですか」「そうだ、それが専門家の見解だ」「それが協会の総意でしょうか、何方か違う意見の方がいるのではないのですか」「儂の意見に反対する者などいない」「今の話は聞こえたと思います、皆さんの中にピラミッドの光がまやかしだとする意見以外の考えの方はいませんか」キャサリンがサクライに言われて会場にいる人たちに問い掛けた。キャサリンが会場を見渡すと吊られる様に会長と副会長も会場を見渡した。静まり返った会場に突然一本の手が上がった。「其処の手を上げている方、何か説をお持ちですか」手を上げていた人物が手を下ろし立ち上がった。「はい、宜しければ聞いて頂きたいのですが・・・」「お前、私に逆らうのか」会長が怒声を上げた。「貴方は黙って居なさい、歳よりなのに若い者の話を聞く寛容さも無いのですか」これはサクライの通訳では無く、キャサリン自らの言葉だった。「さぁ、どうぞ、こちらに来てマイクにお話し下さい」二十代後半か三十代前半と思われる青年が前にやって来て檀上に上がりマイクの前に立った。「では、私の説をお話しします、ピラミッドとスフィンクスが光出してから光が消えるまでの時間を記録しました、ほぼ同時に光出しましたが消えたのは順番が有りました。最初にメンカウラー王のピラミッド、次にカウラー王、次にクフ王、そして最後にスフィンクスです。毎回、この順番に消えました。そして、それぞれが消える間隔も同じだったのです。何の順なのか、何か意味があるのかを考えました。皆様ももうお気づきと思いますが、製造された年の新しい順に消えているのです。そこでメンカウラー王のピラミッドの光が消えた時間とカウラー王のピラミッドの光が消えた時間の差を製造年に対比させました、そしてクフ王のピラミッドの消えた時間を製造年に対比させると一万年以上も前、約一万三千年と計算されました。同様にスフィンクスも計算した処、一億年以上前になりました。算出した私も驚きましたが、有り得無い事では無いと思います、今語られている建設年代に何ら物的証拠も無いのですから・・・以上が私の説です」「馬鹿者、一万年前~、一億年前~、あるはずも無いだろう、大馬鹿者め、主催者の顔を立てて聞いてみれば、馬鹿な説を言いおって、貴様なんぞ学会から追い出してやる」檀上の青年の顔が蒼ざめ苦渋と後悔に歪んだ。「今更、後悔しても遅い、貴様は追放だ、儂に逆らいおって」青年はぶるぶると震え出したが突然開き直ったのか、顔を上げると老人の顔を睨み付けた。「何だ貴様、その顔は、その目は、儂に逆らってこの業界で生き残れると思うなよ」そこでサクライが間に入って英語で言った。「会長、貴方にそんな権限はありませんよ」「何だと貴様こそ誰に向かって言っているのか解っているのか、この東洋の山猿が」サクライがまた話そうとした時にキャサリンがマイクをひったくり話だした。「おい、そこのボケ老人、お前こそ誰に向かって言っているのか解って無い様だね。お前こそもう終わりだ、もうお前は今後一切飛行機には乗れない、海外には船で行くんだね。第一この人はプロジェクト・リーダーなんだよ、この部屋で一番偉いんだよ。大統領の、アメリカの大統領の指名なんだよ、解って無いのはあんたの方さ」とても綺麗で上品な顔立ちの娘から出た言葉に会場の全員が息を飲み驚いた。荒い息遣いの後、大きく深呼吸をしてキャサリンがまた話し出した。「会場の皆さまにお詫び致します、私がこれほど怒りを感じた事が有りませんでしたのでお見苦しい処をお見せしました、えぇなんですか、皆さま少々お待ち下さい」サクライがキャサリンに何事かを言い、キャサリンがとても驚き暫くサクライの話を聞いていた、そして、最後にサクライがスーツの懐から書類を出し渡した。キャサリンはサクライから渡された書類を何枚か読み時々顔を上げ会長と副会長を睨み付けていた。マイクの前に帰って来たキャサリンの眼はまた怒りに満ちたものに変わっていた。「ここに何枚かの書類があります」「何の書類だというのだ、その書類がこのプロジェクトに何の関係がある」「この文書によると貴方は車をお持ちですね、フェラーリと言う車をね」「嘘だ、そんな車は持っていない」「他にベンツが一台にレクサスもお持ちですね」「そんな車は持っていないと言っているだろう」「車以外に別荘をナッソーとモナコにお持ちですね」「そんな別荘など持っていない」「貴方も往生際の悪い方ですね、ここに協会運営費からケイマン諸島の貴方の口座への振り込み、そしてケーマンから車両販売会社と不動産会社への入金の証明書があるのですが、どう言う事でしょうか」「そんな物は偽物だ、儂は知らん」「本当に往生際が悪いですね、貴方の彼女たち、奥様以外の女性たちの証言もあります。彼女たちは素直なようですよ、隣にお座りの副協会長はいかがですか、貴方も往生際が悪いのですか」「わ・わ・私ですか、私が何か」「ここまで言えば貴方の証拠も揃っている事はお分かりでしょう。それともケイマンもスイスの銀行も顧客の情報を漏らさないと思っているのですか」彼ら重鎮たちを回りの各国の人たちが怒りの眼で見つめ始め騒めきが起き始めた。会長と副会長が立ち上がり周りを見渡しながら叫んだ。「今のは全部、嘘だ、でっち上げだからな、信じるなよ、私に逆らえばどうなるか解っているだろうな」「・・・」「・・・」会場がまた静かになった。「どうだ私の力が解ったか、貴様の言う事など誰も信用などしないのだよ、解ったか」「はい、解りました、貴方がこの協会には必要無いと言う事が良く解りました、貴方のその尊大な態度と軽薄さからこれまでに何人の論文を自分の論文にしてきた事かと想像されます」「何を儂が他人の論文を盗用したと言うのか、何処に証拠がある」「証拠、証拠ですか、証拠ならここにいっぱいありますよ」「何処にある、見せてみろ」「ここにいる人達ですよ、貴方と隣の方に盗用された方が何人いるでしょうね~」会長がまた立ち上がり周りを見渡し叫んだ。「しゃべったらどうなるか解っているだろうなぁ」「本当に往生際の悪い方ですね、副会長、貴方はどうですか、そろそろ観念しませんか、それともその隣の財務責任者の方、貴方が正直に話しますか」突然、指名された財務責任者はぶるぶると震え出した。「皆さんは幾らだと思いますか、三人が着服したお金の総額は???」会場内がまた騒めきだした。「100万ドル」誰かが大きな声で金額を言った。会場内の騒めきが一段と大きくなった。「200万ドル」「300万ドル」「500万ドル」会場がまるでオークション会場になったかの様に金額が叫ばれた。「煩い~」会長がまた叫んだ・・・が今度は誰も耳を貸さず静けさは戻らなかった。暫くして、サクライが右手を上げると何故かピタッと会場が静かになった。サクライが話、驚いたキャサリンが英語でマイクに向かって言った。「8000万ドルだそうです」「8千万ドル~」「貴様ら~」「恥を知れ、恥を~」罵声が会場中に響き渡った。会長、副会長、財務責任者の三人にはもう抗議する力は無かった。サクライがキャサリンに何かを言いキャサリンがマイクに向かった。「この中で盗用された方は挙手をお願いします」瞬く間に会場が静かになり、暫くして一人が手を上げるとまた一人手を上げ次々に手が上がり総勢17人になった。「やはり、人様の論文盗用で今の地位を保持していたのですね。しかし、これだけ多いとは、自分の説も無い方が他人の説に文句を言う資格があると思うのですか。まぁ貴方がたに節度と常識を期待しても無駄ですね。あぁ、そうそう、言い忘れましたが、このプロジェクトにはNSA、FBI、CIA、シークレット・サービス、米国三軍、Nasaにインターポールも参加しています。論文盗用は脅迫罪と窃盗罪、公金着服・私的使用は窃盗罪、米国だけで無く各国からと企業からの寄付金も含まれていますのでFBIとインターポールの担当です。盗用については正規の作成者を調査し即刻マスコミを通して国際的ですからNSAとインターポールから発表して貰いましょう。この場での身柄拘束はFBIの方にお任せします、お願いします、会議の邪魔になるだけですから」会場の壁際に立っていた人たちが三人に近づいて行った。「この証拠の書類はFBI長官を通してお渡しします、言っていない罪もありますので」キャサリンがFBIの捜査官と思われる人物に伝えた。三人は後ろ手に手錠を掛けられ項垂れてとぼとぼと部屋から出て行った。その間、部屋の中は誰もいないかの様に静まりかえっていた。「プロジェクト・リーダーは、ここに居るミスター・サクライですが現場のリーダーが必要です。と言うのも、これから皆さんには世界中の遺跡調査をして貰う事になるからです。その遺跡のほとんどは、此れまでに知られていない物です。中には既に知られている物も在りますが新たな手法で調査を行います。きっと驚く新発見がある事でしょう、大いに期待して下さい。では、皆さんをまとめる代表者は先程の青年にお願いします、言っておきますが年齢は関係ありません。会長、副会長に屈していた人たちには任せられないと言う事です。彼にはミスター・サクライとの連絡係も兼ねて頂きます。まず彼にはこの会議のメンバーを10の組に分けて貰います。これをグループとし長と副長を選定して下さい、このグループ毎に発掘場所へ派遣されます。では新たな代表者にご挨拶をお願いします」突然、代表者に指名された青年は緊張の面持ちでマイクの前に立った。「私はイギリス考古学協会に所属するジョナサン・シーモアと申します。突然の大任に戸惑っていますが、皆さんのご協力でプロジェクトに貢献したいと思います。よろしくお願い致します」会場中に拍手が広まった。だが、拍手している大半が若者たちである事にキャサリンは気掛かりを感じた。「ここには197名の方・・・いえ194名の方がいらっしゃいます。彼にグループ分けをと申しましたが、既にこちらで10組に分け組リーダー・・・これからはチーフと呼びます、チーフも選定してあります。その前にもう一度、確認させて頂きます。このプロジェクトに参加したく無いと思われる方は今直ぐに退出して下さい。」キャサリンが暫く会場を見渡したが退出する者は一人もいなかった。「では皆さんが参加と言う事で携帯電話とパッドとノート・コンピューターを回収致します。ご安心下さい、代わりの物を提供致します、当然ですが通信料金の自己負担はありません。入っているデータはそのままです、お渡しする機器は情報漏洩対策が万全です。今後一切のセキュリティーに関する心配は無用になります。通信環境は世界中のどんなに辺鄙な処でも良好です。お渡しする電話、パッド、ノート・コンピーター此れは今後ノートPCと呼びます。自宅にデスクトップ・コンピーターをお持ちと思いますが今後一切使わないで下さい。データは全てサーバーに保存されます、お使い頂ければ解りますが通信速度は内部保存と変わりません、必要なアプリが有ればヘルプ・デスクへご要望下さい、対処致します」キャサリンが話している間に携帯電話が配られ始めていた。「携帯電話を手にした方は、まず生体セキュリティの設定として画面を親指でタッチして下さい。その後、暫く画面を見ていて下さい、それで指紋認証と顔認証と光彩認証が設定されます。パッドもノートPCも同様です、中身のダータも元の通りのはずです、ご確認下さい。確認の為もう一度言っておきますが、貴方方のプライバシーよりも機密が優先されます。当然お渡しした機器にはGPSが内臓されています。そして母国に帰りそれらの機器を政府機関などが調べ様とすると内部は崩壊しプロジェクト・メンバーから外れる事になります。政府に対し機器の情報を得るよりもプロジェクトに参加し続けるメリットを伝えて下さい。勿論、私たちも同様の機器を使用しています、プライバシーは無くなりますが安全は保障されます。何処の政府が相手でも保障します、信じられないでしょうが信じて頂くしかありません。そこで再度、確認します、納得出来ない方はご退席下さい」キャサリンが再度会場を見渡したが誰も退席せず立ち上がる者、迷う素振りを見せる者さえいなかった。機器が順に渡され指紋、顔、光彩を登録して行った。会場中が騒めき登録作業について話合い、機器を立ち上げて余りの画面の綺麗さと速度の速さと以前の機器のデーターの漏れの無さに驚いていた。実は皆が手にした機器はデータが入っていない全く同じ物で生体認証に寄って所有者が決定し繋がりサーバーの接続先も決定される様になっていたのである。「皆様に渡される物は他にもあります、まずは腕時計です、時計をされない方もいらっしゃると思いますが、今からは着けて頂きます、この時計はGPSは勿論、皆様の健康管理も行います。なお、高級時計をお持ちの方もいらっしゃるでしょうがご安心下さい。この時計にはダイヤモンドが装飾されその価格は1万ドルです」キャサリンは時計が皆に配られこれまで着けていた時計が回収されるのを見つめた。「時計の画面が赤く点滅している方はこの会議の後で別室に行って頂きます。残念ですが何等か(ナンラカ)の病気があります、プロジェクトの作業に参加して頂く前に病気の治癒が先になります、病気と申しましたがご安心下さい、2、3日で完全治癒致します」全員の着けていた時計が回収され新たな時計を付け終わると治療の必要な者は27名であった。「配布される物は他にもあります。まずはご家族の時計、携帯電話、家庭のテレビなどの電子機器全てです。これはプロジェクトに参加された皆さまのご家族の安全を確保する事と盗聴を防止する事を目的としています。ご家族の方のノートPCも同様です・・・ここで皆様の中には監視されるのかとご心配の方もいらっしゃる事でしょうが監視ではありません。皆様の安全確保が目的です、次は情報漏洩です、情報を漏洩した方は即座にプロジェクトを抜けて頂き、規約違反で起訴させて頂きます。それは自分が参加者である事、誰が参加者か、何処に行ったか、何を見たか、何を発見したかなどプロジェクトに関する全てです。この様に話すとまるでプロジェクトから抜けてほしい様に聞こえるでしょうが違います。その証拠に貴方がたに魅力的な発掘する遺跡の一つをご紹介します、一つです・・・他にもありますが、今は一つでけご紹介します。では、ご覧下さい。」キャサリンがサクライの言葉を通訳した途端に正面の壁に映像が映り、部屋が暗くなった。映像は何処かの小高い丘を映していた。「この丘は何処にでもある小さな丘の様に見えますが・・・」画像の丘の土が少しずつ消え始め光輝くピラミッドの先端が現れた。「これは此れまでに人類が発見していない遺跡です。場所が何処か、何処にあるのか気になると思います。私も気になるわ、あぁ失礼しました、此れは私の気持ちでミスター・サクライの言葉ではありません、では、場所をお知らせしましょう」また、キャサリンが通訳した途端に画面が上空からの物に変化して行きどんどん上空からの映像になりとうとう宇宙からのものになった。「この未発掘のピラミッドはアメリカ合衆国ネバダ州のエリア51と呼ばれる処に存在します。今、現地では大騒動になっている事でしょう、現在見えている部分は約2メートルです。全体はエジプトのクフ王のピラミッドと呼ばれている物と同じ大きさです。どうですか、発掘に参加したいと思いませんか。最初の皆さんの現場はここになります、10のグループ全員で行って貰います。では、最後にもう一度お聞きします、最後です、このプロジェクトを抜けたいと言う方はご退出下さい」キャサリンが見渡すと皆は正面の画像に目が行き立ち上がる者など居なかった。「では、皆さんが参加と言う事でこれからお持ちの携帯に所属するグループのリストが表示されますのでグループ毎に集まって下さい。左の手前から第一グループで時計周りに2、3と別れて下さい。なお、リーダーの方を選定してありますのでその方の指示に従って下さい。皆さんの初めての仕事は副リーダーを決めて頂く事です、どうぞ」携帯には所属するグループのメンバーの写真、名前、年齢、略歴が乗っていた。皆がグループ毎にわいわい、がやがやと騒がしく分かれ集まり自己紹介が始まっていた。「それでは皆さん、これからの予定をお知らせします。これから皆さんには一度帰宅して頂きます、一週間後に再度集まって頂き現場へ行くことになります。発掘には一か月以上掛かりますし、他の発掘現場へ行く事も有り得ます。皆様は長期の発掘に慣れている事と思います、もしも、国に帰りたくない、帰れない方はご相談下さい。では、本日は此れにて解散です、ご苦労様でした。あぁ~、最後に会場内にいる政府等の機関の方も同様に機器交換をお願いします。勿論、守秘義務についても同様です、では、よろしく」因みに時計や携帯などは会議が始まる前にサクライの名前で会場に説明書付きで届けられていた。会場に居た者たち、考古学者は勿論、警護のNSA、FBI、CIAの者たちも全員が知らされた情報に頭が着いて行かない様で質問も無く一人、二人と会場を後にして行った。無論、警備の者たちと檀上の人たち以外である。「ミスター・シーモア、貴方にはお話しが有ります、少々お時間を下さい」「ミス・ヘイウッド、私の事はジョナサンと呼んで下さい、勿論です、私もお聞きしたい事も有りますので」「では、午後のお茶でも飲みながらにしましょう、ミスター・ヘーゲン、貴方もご一緒にいかがですか」「喜んでお供させて頂きます、ミス・ヘイウッド」「お二人とも、私の事はキャシーと呼んで下さい、ヘイウッドはもう一人居りますのでね」「おぉそうですな、お会い出来て光栄です、上院議員」「こちらこそ、ミスター・ヘイゲン」「私の事はアレックスとお呼び下さい」「貴方とは今後会う機会が増えそうですね、アレックス、私は立場上愛称でと言う訳にはいきません、申し訳ありませんが」「はい、承知しております」キャサリンが先導して中庭のカフェに本日二度目の来店となった。<つづく>
2020.12.10
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<将来の旅先>-----#034「本当に貴方は徹底しているのね」「何がかね」「低温環境での弾道計算と実戦でしたっけ・・・カナダの」「そうですね、どうせ何かをやるのなら徹底的に極めたいと思っています。射撃であれば何時も絶好の環境とは限りませんのでいろいろな環境で試しました。その一つが砂の舞う高温の砂漠で有り気温の低い砂漠で有り極寒の氷の粒の舞う氷原でした」「貴方は本当に徹底しているのね、凄いわ」「臆病なだけですよ」「貴方が臆病・・・臆病ですって、私、貴方ほど男を感じた人を知らないわ」「用心深いの別の見方は臆病ですよ」「・・・成程、そう言う見方もあるのね、何だか哲学的だわ」「カナダの話に戻るけれど君は通常の拳銃、ライフルは及第点、特にスナイパーの素質がある、けれど条件が悪くなるとまだまだですね」「グアムでの練習は意味が無いと言う事ね」「そうですね、グアムはダイビングに行く事か射撃の間が空いた時に利用するしか行く意味がありませんね」「アメリカとカナダへ行きましたが南米やヨーロッパ、アフリカには行かないのですか」「射撃場は世界中にあります、徴兵制を実施している国にはまずあります。ヨーロッパではスイスとスウェーデンが徴兵制を取っていて射撃場も有ります。ですが管理が厳しく会員でなければならず観光客には無理な様です。ヨーロッパへは只の観光で行きます、世界遺産を観る事が好きですのでね。アジアでは韓国、タイでも射撃が出来る様です。南米へは行くのに時間が係り過ぎるので行っていません、ブラジルで射撃が出来るそうですがね。アフリカへはエジプトにだけ行った事があります、只行った時期がクーデターとクーデターの合間でとても射撃など出来る状況ではありませんでした。貴方は何処か行ってみたい処がありますか」「冗談でアマゾンて言ったけど現実となると・・・う~んやはりパリかな・・・グレート・バリアリーフもいいわね、ハワイも、ベリーズもイタリアも良いわね」「それぞれの目的は何???」「グレート・バリアリーフ、ハワイ、ベリーズはダイビングですね、パリとイタリアは只の観光です、私はどの国で射撃が出来るのか知らないですから」「私も行った事が無いのでネット情報ですがオーストラリアのケアンズで射撃が出来る様です。ハワイはアメリカですから勿論できます、ベリーズ、フランス、イタリアは解りません」「じゃあ~オーストラリアね、ケアンズで射撃をしてバリアリーフでダイビングね」「良いですね、では次回はオーストラリアを検討しましょう」「私も日程を考えて良いですか」「勿論です、お願いします」「でも、私は普通の環境では及第点なのでしょう、やはり砂漠と氷原での訓練が必要なのじゃないかしら、家も銃も既にある訳だし使わないと勿体ないわ」「君がそれで良いのなら良いですよ、でもダイビングや射撃訓練の為の旅行では無く只の観光旅行もたまには良いと思いますよ」「ダイビングと射撃が目的ならオーストラリアで観光だけならパリで良いの???」「勿論、良いとも」「じゃ~両方調べて計画を立てるわ、でも、過酷だけどアメリカの砂漠もカナダの氷原もまた行って訓練したいわ」「そうだね、君の才能も勿体ないからね」「私の命中率が良いのは極普通の環境、それもすごく良い時だけだわ、どうしたら砂漠の砂の舞う中や氷原の氷の舞う中で命中率を上げられるの???」「砂漠で砂嵐になれば狙撃どころでは無い、生存するだけでも大変だ。氷原でも眼の前が見えなくなる程の吹雪もある、幸いにも君はまだ二つに会っていないがね」「経験してみたい様な怖い様な・・・」「今、どちらの訓練をしたいと聞かれたらどちらを選びますか」「う~ん、砂漠に行けばその前にエディー達に会えるけど、どうも私はアドレナリン・ジャンキーになったみたいね、カナダの氷原で吹雪を経験してみたいわ」「武術の上位者は、達人と言われる人は皆ジャンキーだと思いますよ、辛い事がいやでは成長できませんからね」「そうですよね、此れで良いのですよね」「はい、貴方はまだまだ上達します、成長過程です」「世界が此れまでと違って見えるのかしら」「ええ、此れまで気付かなかった事に気付く様になります。それに過酷な環境で生き抜ければ普通の環境が過ごし易くもなりますよ」「成程、それで貴方は町中ではハツラツとしているのね」「そうですか、私は四方に警戒のバリアーを張り捲らせた臆病者ですよ」「貴方が臆病ですって、笑っちゃいますよ、貴方ほど堂々としている人はいないと思いますよ」「ありがとう、でも、他にもいるのですよ・・・グアムで有った男とあの女刑事です」<つづく>
2020.12.09
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「アレシボ天文台が崩落」<2020年12月06日のニュース>2020年12月01日、アメリカの国立科学財団が管理するプエルトルコのアレシボ天文台が崩落、つまりは壊れたのです。このニュースに寂しさを感じました。何故なら、私の好きな「007」のロケ地だったからです。007 ゴールデン・アイでボンド役は「ピアース・ブロスナン」さんでした。映画ではキューバにある設定になっていて、通常は池の中に隠されている設定でした。実物はプエルトルコにあり、反射面の直径は305メートルで上部に吊るされたプラット・フォームは900キロもあったそうです、勿論、池の中には有りません。いみじくも、映画の最後にボンドに寄ってブラットフォームが爆発・崩落する設定でした。現実にはドローンの映像があり、プラット・フォームの崩落映像を見ました。まるで映画を観ているような感覚でした。305メートルと途轍もなく大きな施設ですが世界一では無くなっているそうです。再建されず廃棄と決まっている様です、また、世界に巨大な文明の廃墟が増えるのです。因みに現在の世界一大きな電波天文台は中国のFAST、500メートルだそうです。-----おしまい
2020.12.08
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<ペンタゴンの会議場へ>-----#032「まさか、二日も・・・」「ストップ、お母さん話は車に乗ってからにしましょ」キョサリンが母・ヘレンの愚痴の様な話を止めた。「何なの、この子は・・・ぶつぶつ」三人が車の定位置に乗った、キャサリンが運転席、彼が助手席、母・ヘレンが後部座席である。「さぁ、良いわよ、お母さん、その前に言っとくけど現代科学は凄いのよ、とても遠くの声も拾えるし、遠くから見て唇の動きで会話の中身も解るのよ、そして、この車の中はいろいろな防御装置が有って盗聴防止もその一つよ・・・さぁ、どうぞ」「・・・はい、解りました、あんたの勝ちよ、しかし、キャシー、貴方変わったわね、FBIのせいか、婿さんのせいなのか・・・多分・・・」「さて出発よ」キャサリンが車を発進させた。「一人で二日続けて、大丈夫なの」「平気よ、お母さん、私、運転大好きだから・・・全然平気」三人を乗せた車は家のゲートで挨拶を交わし4日前に通った道を通ってペンタゴンへと向かった。途中でヘレンが叫んだ。「キャシー~~お前寝てるんじゃ無いよね」「もう、煩いわね~今何時・・・ふーん、お母さん、もう30分以上前から私が運転してるんじゃないわ、アダムよ、運転しているのはアダム」「アダムってそんな事も出来るのぉ」「アダムに聞いてみたら、この車が出来る事を・・・」「そうね」暫くの沈黙の後、ヘレンが彼に言った。「婿殿、私の車も改造出来ないかしら」「出来ます、ですが問題があります。運転手、秘書、護衛官などの同乗者たちに私の秘密を打ち明ける事になります。秘密が秘密として保てるでしょうか」「無理でしょうね・・・諦めます・・・処でキャシーは気持ち良さそうに寝てるわね。本当にアダムが運転しているのね・・・キャシーより安全かも知れないわね」「・・・」「貴方は本当に無口ね、何て言ったかしら・・・そうそう寡黙ね。何か話してくれないかしら・・・そうね~この車の変わった処はどうかしら、これも秘密なの」「いいえ、お母さんには秘密ではありません。この車の見た目は前と同じです、前後左右上下も同じです。ですが全くの別物です、例えX線で見ても同じです」「何が出来るのかしら」「防弾です、水の中にも入れます、今の様に自動運転も出来ます。アダムに行先を言えば連れて行ってくれます。速度は時速400キロ出せます」「400キロ~凄く早いのね・・・そうね警察に捕まるから出さないのね・・・キャシーは知っているの」「勿論、伝えてあります、ですが実際に水の中に入った事も400キロを出した事も銃撃を受けた事もありませんので知っているだけです」「防弾は試してみたくないけれど、水の中へ入ってみたいし400キロも経験したいものね」「残念ですが、試す事は出来ません、人の眼に点くからです、信じて頂くしかありません」「そうね、目立つのは良くないわね・・・でも試したいものだわ」ヘレンも眠くなった様で寝息を立てて眠り出した。「う~ん、あら私眠っちゃたのね、どの辺かしら」「し~お母さんも寝ていますから」キャサリンが後部座席を見た。「私と同じで昨日の夜も服の登録で寝るのが遅かったのかな~」「女性は服に拘りますね、どうしてでしょうか」「男性にも責任があると思うは男性は外見で女性を選ぶでしょ。だから女性は服に化粧に拘るのじゃないかしら」「確かに私の選んだ女性はとても美しい人ですね」「それって私の事・・・嬉しいわ・・・で今どの辺、もう着くかしら」「アダムの予測では10分です」「あぁそうですね、アダムに聞けば良いのでしたね、ところで私の選んだ道とは違う様ですね」「アダムは近道だけでは無く交通状況も考慮して通る道を選んでくれます」「私は寝てなんかいないわよ」ヘレンが後から声を掛けた。「もう少し色っぽい話をするかと遠慮していたけど全然ね、二人は」「お母さん、寝てたでしょ」「違うわよ、アダムにいろいろと聞いていたの、この車の事とかね」母と娘が何だかんだと話を弾ませていた。「そろそろハンドルを握って下さい」「もう着くのね」「いや、もう少し掛かるが車が多くなって来たので君が運転している様に見せないとね」「了解」彼女はハンドルに手を乗せ運転している様に見せかけた。無言の時が暫く続き車はペンタゴンのゲートに着いた。既に連絡があった様で厳しいはずのセキュリティーがすんなりと済みゲートを通った。広い駐車場の空いた処に車を止め二人と一人の三人は歩いた。建物に入って持ち物検査を受け受付で要件を伝え待っていると案内人がやって来た。「ようこそ、随分早いですね」「ちょっと喉を潤したいですね」「そうですか、時間も早いですからご案内します」彼は中央広場のカフェへ連れて行ってくれた。「今日は天気も良いのでこちらで珈琲でもいかがですか」「いいわね、貴方はここに座っていてね、私が買ってくるから」キャサリンが彼を外のテーブルの椅子に座らせて買いに向かった。「キャシー私のも一緒にお願いよ」「はい、お母さん、その代わり文句は無しよ」「はいな」二人は英語と日本語を織り交ぜて話していた。案内人は二人の日本語の会話が解らずにぼ~としていたが。「上院議員、とても綺麗なお嬢様ですね」「ありがとう、でももう人妻よ」「何とも幸運な人がいるものです」「その幸運な人は貴方の前にいますよ」「えぇ~彼ですか???」案内人は彼を上から下へ、下から上へ何度も眺め、信じられないと言う様に首を振った。「貴方、出世出来ないわよ、彼の魅力が解らないようでわね」ヘレンは少しカチンと来て語気を強めに嫌味を言った。「この方の魅力ですか???」キャサリンが手ぶらで戻って来た。「何だか知らないけど、出来たら持って来てくれるそうよ」「キャシー、貴方、色目を使ったんじゃないでしょうね」「何を馬鹿な事言ってるの」「あの~失礼ですが・・・本当にヘイウッド上院議員ですね」「そうですが、何故???」「失礼ですが、噂では冗談も言わない・・・あの~、その~」「笑顔を見せない鬼・・・ですか」「御存じでしたか」「私も只の女、只の母親ですよ、仕事の時以外はね」「今見た貴方でしたら、もし大統領選に出馬したなら一票は確実に入ります」「私に入れてくれると言う事・・・まぁ大統領選に出る事は無いでしょうけどね・・・ありがとう」その時、店のスタッフが頼んだ物を持って来た。「お待たせしました、珈琲と氷とグラスです」「ありがとう、これでお願いね」キャサリンがカードを出して支払いを願った。「はい、ありがとう御座います」「4っあるから貴方も座りなさい」ヘレンが案内人に座る様に言った。「ありがとう御座います、処でグラスと氷は何に使うのですか」「あぁそうよね、アメリカ人には馴染みがないわね、彼と私は珈琲をアイスで飲むのよ」「アイス・・・冷たい珈琲ですか」「そうよ、何度か飲むうちに病み付きになって止められなくなるわよ」ヘレンはブラック珈琲を飲んでいたが、彼とキャサリンは砂糖を入れた珈琲をグラスに注ぎ氷を入れたアイス珈琲を飲んでいた。三人を見ていた案内人はキャサリンの真似をしてアイス珈琲で飲んだ。「こりゃ良い、現代では冬でも室内は暖かいので一年中アイスで良いですね」「また、一人変わり者が増えそうね」「そんな~たかが珈琲の事で」「おっと、お話し中申し訳ありません、そろそろお時間です、参りましょう」「じゃあ、トレイと食器を返さないとね、そう言えばキャシーのカードも返えして貰っていないわね」丁度その時、店のスタッフが伝票とカードを持ってやって来た。「お待たせしました、サインをお願いします、処でお帰りですか」キャサリンが伝票にサインをしながら答えた。「えぇ、美味しかったわ、ありがとう、丁度、トレイを戻そうとしていたところよ」「サインありがとう、カードをお返しします、それから食器は私が戻しておきます。ご利用ありがとう御座いました、上院議員、ご活躍を楽しみにしています」「ありがとう、貴方のご期待に応える様に頑張るわ、じゃあ又来ますね」「はい、お待ちしています」四人はカフェから建物へと向かった。「あの店はセルフ・サービスで自分で片付けるはずなんだがなぁ~」案内人が独り言を言った。案内人はエレベーターに乗せ二階に上り少し歩いて一室に案内した。案内人は扉を二度叩くと返事を待たずに扉を開けた。案内人は中に入ると三人を招き入れた。三人が中に入ると、そこは会議室で大勢の人が集まっていた。「おぉ、見えられたか、こちらへ参られよ」案内人は黙って静かに部屋を出て行った。「上院議員、私はNSA副長官のアレックス・ヘーゲンと申します、どうぞよろしく」「こちらこそよろしく、ミスター・ヘーゲン」「ミスター・サクライのご依頼通りに世界中から考古学者に集まって頂きました。守秘義務契約も済んでいます、お隣の方が通訳のお嬢様ですか」「ええ、娘のキャサリンです」「通訳のキャサリン・ヘイウッドです、よろしく、ヘーゲン副長官」「ええ、以前に別の会議室でお会いしています、今日も通訳をお願いします」「解りました」副長官は集まった考古学者たちの方を向いて話始めた。「お待たせ致しました、それでは会議を始めます。再度申し上げますが、この会議の主催者はアメリカ合衆国大統領です。そしてプロジェクト・リーダーはこれからご紹介する、ミスター・サクライです。彼は日本人で日本語しか話せませんので通訳を通してお話しします、では、ミスター・サクライ、どうぞ」サクライが前に進みマイクの横に立った、そしてマイクの前にはキャサリンを立たせた。<つづく>
2020.12.07
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最近、読んでいる小説は佐伯泰英さんの本が殆どです・・・いいえ、ここの処の数年は雑誌も含め佐伯さんの小説以外の本を買っていません。読んだ本、読んだ文字のある物は購入した機器の説明書、郵便物、ネットの情報、などで小説では「クィネル」の本と「賢者の石」です。あぁ、この「賢者の石」は魔法学校物語の小説ではありません。今、持っている小説など本の整理をしています。雑誌以外の手に入れた本は手放してしませんので膨大な量です。エクセルに登録しデータ・ベース化しました。その過程で同様な機能のアプリがある事が解りアプリへの登録も行いました。アプリは二つ見つけました、二つに登録しましたが、機能に不足と不満はありますが登録はしました。バーコードのある物だけの登録なので全く不十分ですが・・・。私のエクセルのDBは全ての登録です。今回、残す物と売る物に分ける事も行いました。出来るだけ残す物を少なくする事を基準にしました。それでも1/4は残す事になりそうで、もう一度、選定の必要を感じています。データ・ベース化は三度目です、一度目は初期エクセル、二度目はパワーポイントで自分好みのDBをプログラム作成し登録しました、保存していた媒体がフロッピー、MDと利用できる機器が既に無く、3度目の作業になりました。大変な作業ですが、どうも私は好きな様で全ての登録が終わった時には「やった」と言うより「終わってしまった」と言う感じでした。大半を手放す寂しさも有るのかも知れません。残す本は「池波正太郎」「佐伯泰英」「A・J・クィネル」「E・E・スミス」などの作家の本と好みのSF本「賢者の石」「異星の客」などです。我が家を去る本は「ベリー・ローダン・シリーズ」の約300冊、「内田康夫」の浅見光彦シリーズ、「ドン・ペンドルトン」、多数のSF本です。廃棄では無くブックオフへの転売を予定しています。プログラマーとしてITを職業としてき私ですが、紙での読書文化が無くならない事を願っています。手放す本が何方かの手で蘇る事を願っています。-----おしまい
2020.12.06
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GMOのWiMaxを2020年03月25日 ネット発注。2020年03月29日 10:59着。届いて第一の誤算が発覚、何と機器がHUAWEI製だったのです。私は日本が大好きです、反日を訴える国の物は買いたくありません。友達には中国人、韓国人もいますが、製品は買いたくないのです。それなのに買ってしまいました、非常に残念でした。使い始めて、第二の誤算、通信速度測定アプリを使って測定すると光通信は80MBでWiMaxは最高で30MBなのです、ハイ・スピードを選択し使うと上限に達し100KBしか出なくなってしまいました。契約は無制限なのですがハイスピードは制限があるとの事でした。使った実情は各種PCアプリが応答無しになり30秒ほど止まるのです、その現象が10分ごとに起きるのです、使いものになりません。光通信に戻しました。第三の誤算、何時でも0円で解約可能とうたっていましたが、条件が有りました。残念な事に私はその条件に合いませんでした、違約金は約2万5千円です。2年、3年の縛り付きてせす。そして解約時期も限定されていてその時期を過ぎると自動更新され、その後の解約はまた違約金が発生します・・・なんだか詐欺にあった様な気持ちです。基は通信費削減だったのですが、余計に経費が掛かる事になりました。説明文は端から端まできっちりと読むものと、改めて勉強になりました。-----おしまい
2020.12.05
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<二振りの太刀>-----#187 辰三が辰巳屋に顔を出すのは夕暮れと聞いていたのでお佐紀とお久は昼餉を食してのち出かけて行った。 龍之介の子守は舞とお雪の二人である。 前の日とその日の朝も平四郎、三郎太の組が知らせに来たが新たな知らせは無かった。 お久は当然、武家の妻女の着物と髪型で道を歩いていたが、その後ろを着流しに塗笠の武士が用心棒の様に歩く若者が居た。 「良くも龍一郎殿が其方に太刀を貸しましたな、佐紀」 「はい、私も驚きました、母上は試合の後に皆でこの太刀を観た時の事を覚えておいでですか」 「勿論ですよ」 大盛況であった祝勝会も五つ半には絞めを行なわれ皆が引き揚げ内弟子たちが道場の片付けを行い長屋へと引き上げ眠りに着いた。 五つ半の絞めの後、当初からの龍一郎の直弟子たちが母屋に集まっていた。 「龍一郎、其方に改めて礼を言う、一時は死の床に居った儂を上様のおわす試合に出るまでに回復させてくれた、礼を申す」 小兵衛が改めて龍一郎に礼を述べた。 「私も龍一郎様に会わなければ悪たれどもと今頃何をしていた事か、その私が天覧試合に出て少年の部で勝者になる事が出来ました、お礼を申します」 小兵衛に続いて誠一郎が礼を述べた。 「私も龍一郎様に会わなければ抜け忍として始末されていた事でしょう」 三郎太が続いた。 「待て、待て、龍一郎に礼を述べてばかりでは切りが無い・・・言わずとも皆が知っておる、儂は口火を切っただけでな、本当の処は龍一郎に太刀を見せてほしいと言う事じゃ・・・龍一郎、どうじゃ上様が其方の太刀は銘品中の銘品と言うた・・・見せてはくれまいか」 「上様がその様な事を申されましたか」 「うむ、そうか三郎太は上様に会うてはおらぬな、上様がのぉ、勝者に用意してあった太刀はな銘品だが龍一郎には不要と申され儂が貰うたのじゃ」 「龍一郎様の太刀も観とう御座いますが、小兵衛殿が上様に頂戴した太刀も観とう御座います」 「龍一郎様、爺じ、二人共見せてくれるよね」 「何、舞も見たいてか」 「お前様、上様が選ばれた太刀、上様が銘品と申した太刀、どちらも見たいものです」 「お久殿も見たいてか・・・良し、まずは儂の太刀を見てみよう」 小兵衛は立ち上がり神棚の下の刀掛けに置かれた太刀を拝礼して手に取り席に戻った。 座った小兵衛は再度の拝礼をして懐紙を口に挟み鯉口を切った。 小兵衛は次に太刀を縦に持ち替え静かに鞘を上に抜いた。 静かに太刀を下から上に眺めた小兵衛の眼が大きく見開かれ息を止め鞘を太刀に戻した。 「どうされました、お前様」 「粟田口の様ですね、父上」 お久が小兵衛の挙動を訝しがり尋ね、その訳を龍一郎が述べた。 「粟田口ですと・・・その様な・・・銘刀が・・・間違い無いですか、小兵衛殿」 仲間の中でも刀に詳しい小兵衛、龍一郎、平四郎の三人だけに解る会話であった。 「この特徴的な波紋・・・龍一郎の申す通り粟田口に違いあるまい」 「まさか天下五剣の鬼丸ではありますまいな」 平四郎が少し慌て気味に尋ねた。 「平四郎様、天下五剣てなあに」 舞が無邪気に尋ねた。 「天下には、この世には銘刀の中でも格段に優れた銘刀が五刃あるのじゃ。 その一、平安の名工・安綱(やすつな)殿の作・童子切、 その二、同じく平安の三条宗近殿が作られた三日月、 その三、室町の世に典太光世(てんたみつよ)により作られし大典太、 その四、数珠丸の名が付けられた平安の世に青江恒次(あおえつねつぐ)により作られし銘刀、 その五、鎌倉の世に京の粟田口派の刀工・国綱の作とされる鬼丸・・・であったかと・・・」 「ようも存じておるものよ」 小兵衛が平四郎を誉めた。 「鬼丸って何、刀の名前なの」 舞が誰にとも無く尋ねた。 「・・・」 「・・・」 「・・・」 「私が応えよう」 「何、龍一郎は知っておるか」 「事実かどうかは定かでは御座いませぬが言い伝えは御座います。 昔、昔、持ち主の京の公家が悪夢に悩まされていたそうで御座います。 ある夜の夢に刀の精が現れ、太刀を研いでくれ、と願い、さすれば悪夢が消える、と言ったそうな、その公家は早速、太刀を研ぎ寝る時に抜き身で壁に立てかけたそうな。 その夜、立てかけてあった抜き身の太刀が倒れ火箸に当たり火箸の頭が切り落ちたそうな。 公家が火箸を眺めると取れた火箸の頭に鬼が彫られていたのだそうな。 これが鬼丸と呼ばれる由縁と私が読んだ書物に書いて御座いましたなぁ~」 「火箸の頭に鬼がのぉ~」 「あり得ますなぁ~」 「龍一郎様は何でも知っているのね」 「本にお前様の知らぬ事は無いのですか」 小兵衛と平四郎が納得し舞と佐紀が龍一郎に感心した。 「お雪ちゃんよ、解らねぇ事がありゃ~よ、龍一郎様に聞くと良いぜ」 「はい、そう致します、平太様」 「平太様、様は止してくんな、そうだな・・・平太兄ちゃんにしてくんな」 「はい、平太兄さん」 「良いね、今日からお雪ちゃんが妹だな」 「では、父上、拝見仕ります」 小兵衛が龍一郎に拝領の剣を渡した。 龍一郎は柄元から眺め横から眺め立てて眺め火を反射させて眺めと様々に眺めた。 「これは、これは・・・父上、皆が見ました後は勿論、銘の検めをなさいますな」 「無論じゃ、其方には銘に心当たりが有りそうじゃな」 龍一郎が拝礼し平四郎に剣を渡した。 「父上にも銘の心当たりが御有りでは???」 「儂か儂には粟田口の兄弟の誰かであろうとしか解らぬ」 「左様ですか」 「其方は・・・」 二人が話している内に次々と剣が渡されて行った。 「平四郎には銘の当てはあるか」 「御隠居、残念ながら御座いませぬ、私にも粟田口であろう事しか解りませぬ」 「龍一郎は誰の作だと思うのじゃ」 「銘が有れば良いのですが・・・私は粟田口の流れは汲む物の粟田口では無いと思います」 「粟田口では無い粟田口・・・」 「はい、相州・新藤後国光と見ました」 「新藤後国光は短刀の名手では無かったか」 「私もそう思っておりましたが、その短刀の特徴が全て表れておりました」 「其方は新藤後国光を見た事が有るのか」 「屋敷に御座いました」 「うむ~」 お雪は勿論、舞、平太も太刀には興味が無い様で三郎太に渡されたが彼も次へと渡し次々と拒否され佐紀の元に来ていた。 佐紀は太刀の見分を始めたが、それは龍一郎が行った通りになぞったものだった。 最後に拝礼すると太刀をお久に渡した。 お久は受け取ると同じ様に拝礼し彼女もまた龍一郎がした通りになぞって見分した。 お久が最後に拝礼し太刀が小兵衛の元に戻って来た。 小兵衛は脇差から小柄を抜くと太刀の目釘を抜き銘の確認を始めた。 柄が取られ銘が現れた。 太刀は無銘では無かった。 その銘を呼んだ小兵衛の顔が驚きに変わり、ゆっくりと龍一郎に向けられた。 「龍一郎・・・其方と言う奴は・・・・・・皆にこの太刀の銘を知らせよう」 小兵衛が皆に聞こえる様に少し声音を上げて言った。 「相州の刀工・新藤後国光の作じゃ」 「爺じ、銘刀なのか」 「銘刀も銘刀、幻の銘刀じゃろな」 「御隠居様、何故に幻なのですか」 「清吉、この新藤後国光と言う刀工はのぉ、短刀で名の知られた名工でな、太刀も作ったであろうとは言われていたが見たと言う者がおらなんだのだ、それがここにあるのじゃ」 「騙り物じゃないのかい」 お駒が偽物ではないかと疑いの言葉を吐いた。 「おっかぁ、上様からの頂き物だぞ」 「そうか、そうだね、忘れていたよ」 「父上、柄を戻して下さい」 「何をしようと言うのじゃ、龍一郎」 そう言いながらも小兵衛は柄を太刀に戻し龍一郎に渡した。 龍一郎は渡された刀を右手に持ち右肩に担ぐ様に持ち左手で囲炉裏の淵に炭に紛れて置かれた薪を持つと顔の高さに持って行き手から離した。 龍一郎の手から離された薪は囲炉裏の灰に立つと暫くして左右に二つに分かれた。 無論、龍一郎が刀で切ったのであるが刀は龍一郎の肩から離れた様には見えなかった。 見ていた皆が余りの驚きに薪と龍一郎を交互に見つめた。 龍一郎は刀を肩から下ろし刃毀れを確かめる様に仔細に眺め始めた。 「龍一郎・・・其方と言う奴は・・・佐紀は無論見えたのであろうな」 「父上、只今の仕儀は見えませんでした、これが我が亭主殿の真の力と思われます」 「何と其方にも見えなんだか、ならば儂が見えぬのも無理からぬわ・・・平四郎、三郎太はどうじゃ」 「御隠居、佐紀様に見えぬものを私には無理で御座います」 「平四郎様と同じく見えませんでした」 「そうか、見えなんだか」 皆が刀を見分している龍一郎を見つめた。 「父上、良き太刀を手に成されました、硬さ、しなやかさ、重さの芯(重心)、切れ味・・・父上ならば兜割も可能でしょう、天下五剣に劣らぬ太刀で御座います」 「それ程の逸物であるか・・・流石に上様からの拝領刀よのぉ~」 「お前様、おめでとう御座います、ですが、事の趣旨をお忘れでございます」 「まずは、ありがとう・・・事の趣旨・・・おぉ、龍一郎の太刀の見分であったな、龍一郎、願う」 「はい、畏まりまして御座います」 龍一郎が右に置いていた太刀を手に取ると小兵衛に渡した。 太刀を受け取った小兵衛は懐から懐紙を出し口に咥え太刀の鯉口を切った。 そして太刀を胸の前に出し縦にすると鼻で大きく息を吸うと鞘を上に持ち上げ刀身を露わにした。 鼻から息をゆっくりと吐き出しながら下から上に上から下へと眺めを何度も繰り返し、次に刀身を横に寝かすと峰を左手の人差し指に乗せ鞘元から切先までをゆっくりと何度も見た。 特に物打ちと切先を丹念に眺め鼻から大きく息を吐くと平四郎に渡した。 平四郎も渡される前に懐紙を口にしていた。 「流石に天下五剣と言われる銘品じゃのぉ~眼福であった・・・其方、何度も使うておろうに刃毀れどころか曇の一点も無い、手入れも怠り無いようじゃのぉ~」 「手入れを寝る前の日課としております」 「毎日か」 「無論の事」 「儂もこの様な銘刀を手にしたからには其方の様に毎日の日課にせねばな」 その頃、龍一郎の愛刀・大典太光世は清吉の手に有った。 清吉は懐紙の変わりに手拭いを口にして小兵衛と平四郎が行った見分を真似ていた。 清吉の肩越しに口に同じく手拭を噛んだお駒が太刀を眺めていた。 「わっしには太刀の値打ちは解りませんが、この刀がなまくらで無い事だけは解ります」 誠一郎に太刀を渡した清吉が感想を口にした。 舞がお駒と同じ様に誠一郎の肩越しに着物の袖を口に挟んで覗き込んでいた。 「龍一郎、其方、太刀の来歴を存じおるか」 「定かでは御座いませぬが少々は・・・筑後の国・三池の住人・光世の作と銘が御座います。 光世が足利家に献上したそうで御座います。 その後、足利家から秀吉公の手に渡り、戦の功績により我が先祖の手にする処となった・・・と聞いております」 「では、銘以外に足利家、豊臣家、前田家の家紋もあるのではないか」 「左様で御座います・・・」 「うむ、何やら含みのある返事じゃな」 「はい、先程、来歴を申しましたが、その来歴にそぐわぬ事が御座います」 「何じゃな」 「それは後ほど直に銘をご覧下さい」 二人は太刀が次々に見分されるのを眺めていた。 太刀がお久の手から龍一郎へと戻された。 「龍一郎殿、眼福で御座いました・・・お前様、上様からの頂き物も見事な物に御座いましたが、流石に天下五剣と言われる程の一剣で御座いますなぁ~、それに龍一郎殿の日頃の手入れも見事で御座います」 「其方、もしや研ぎも・・・刀の研ぎも修行したのではあるまいな」 「堺に居りましたおりに種子島作りと刀の研ぎの修業を致しました」 「何~研ぎだけでは無く鉄砲作りの修業もしたてか」 「はい」 「其方・・・其方と言う奴は・・・出来ぬ事、修行しておらぬ事は無いのか・・・百姓、漁師は」 「畑仕事、稲作りは奥州にて、漁師は佐渡と能登にて・・・」 「成程のぉ~其方の成す事ゆえ半端では終わるまい、師範か師匠・・・農民、漁師では何と言うのじゃ」 「長(おさ)、親方、親分、兄貴、武士を真似て師匠と呼ぶ者も居りました」 「其方の武者修行・・・と言うか放浪と言うか確か八年であったな、何時かその全てを聞きたいものよ」 「お前様、私も龍一郎殿の話を聞きとうは御座いますが今は太刀の銘をお願い申します」 「おぉ、そうであったな、龍一郎、太刀の銘を見せてくれぬか」 龍一郎が目釘を外し柄を抜いて銘を小兵衛に見せた。 二人の周りに皆が集まって覗き込んだ。 「三池典太光世の作じゃな・・・な・何と裏には徳川の家紋があるではないか、何故じゃ、其方の話では足利家、豊臣家、前田家のはずじゃ、何故に前田家の前に徳川の家紋があるのじゃ」 「そこが先程申した謎なので御座います」 「解らぬ事がある方が良いわ、いやはや、流石天下五剣の一剣じゃ眼福であった、礼を申す」 「ありがとう御座いました」 皆が声を揃え龍一郎に礼を述べた。 道場から辰巳屋への途次にお久とお佐紀は昨夜の太刀見分を思い出していた。 「母上は太刀にも見識が御座いましたか」 「昔々の書物の知識ですよ、天下五剣の一剣を見分できる者など稀有の事でしょうなぁ」 「はい、太刀の見識の無い私にも典太光世の優れた剣風が解りました」 「その太刀が今、其方の腰にある・・・どうですね」 「天下五剣の一剣をそれも葵の御紋の入った太刀を差しているなど信じられぬ事で御座います」 「私も武士の形(なり)で小兵衛殿から太刀を借りてくれば良かった・・・はぁ~」 「きっと又の機会も御座いますよ、母上」 際立って堂々とした歩みに皆が避けて道を作り二人は辰巳屋に辿り着いた。<参考>----------(天下五剣)----------------------------------------------天下五剣(てんがごけん)とは、日本刀の中でも特に名刀として名高い5振の刀の総称です。具体的には、童子切安綱(どうじぎりやすつな)、鬼丸国綱(おにまるくにつな)、三日月宗近(みかづきむねちか)、大典太光世(おおでんたみつよ)、数珠丸恒次(じゅずまるつねつぐ)の5振を指します。これらの刀は、その美しさや歴史的な背景、逸話などから、古くから「名刀中の名刀」として賞賛されてきました。特に、童子切安綱は「天下五剣」の中でも最も古い刀であり、筆頭とされています。また、三日月宗近は、その刀身に三日月形の模様があることから名付けられ、美しい姿で知られています。天下五剣の選定基準は明確ではありませんが、室町時代にはすでに「天下五剣」という言葉が使われており、明治時代以降に完全に定着したとされています。これらの刀は、国宝や重要文化財に指定されているものや、皇室の御物となっているものもあります。天下五剣の5振:童子切安綱 : 刀剣界では「西の横綱」と評される名刀。鬼丸国綱 : 江戸時代には「天下第一の剣」とも称された。三日月宗近 : 刀身に三日月形の模様があることから名付けられた美しい刀。大典太光世 : 前田家に伝来した名刀で、前田家の歴史と共に歩んできた。数珠丸恒次 : 重要文化財に指定されている。これらの刀は、現在も多くの人々に愛され、その魅力は時代を超えて語り継がれています。------------------------------------------------------------------------------'<つづく>
2020.12.04
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5歳の愛犬「リリー」<20180114-105712><20180114-144053><20180117-205948(M03)><20180501-170838(M03)>病院の廊下<20180703-225701(M03)>出ました、得意のポーズ<20180718-165749(M03)>得意のポーズ・・・眠っている様です。<20180730-185403(M03)>目が何処なのか解りません、眠っているの??? 起きているの???<20180802-103144(M03)>此れだけ近づいても解らない、眠っているのか???<20180904-180507(M03)>おぉ~大分、毛が長くなっていたのだね~<20180924-163504(M03)>沖縄・座間味への旅行中にペット・ホテルへ、そしてトリミング<20181105-1011>ホテルのサービスの一つ、毎日メールで写真が届きました。-----おしまい
2020.12.03
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以前にも書きましたがニュース見なくなっていた私がコロナの情報を得るため見る様になりました。ネットも併せてコロナの情報を出来るだけ得る様にしています。全世界の感染者は6300万人、死者146万人。アメリカの感染者は1360万人、死者26万人。これだけの人が感染し、亡くなっているのに自分の対策は成功していると言いきる大統領、マスクの重要性を訴えない大統領、選挙の負けを認めない大統領。この大統領が変わらない限りアメリカのコロナは拡大し続けるでしょう。フランスでは1日の感染者が8万人でロックダウン、1万人に減って解除。1日の感染者が1万人もいて解除・・・理解できません。日本の感染者は14万人、死者2千人。東京の感染者は2020/11/30に361人これだけ注意喚起しているのに20人でゴルフに行く人たちもいる、当然感染者が出ました。日本でもまだまだ感染リスクを考えない人が多い様です。では、私はと言うと、以前は毎日の様に行っていたコンビニへ行く事を止めネットスーパーにしています。私は煙草を吸うのですが煙草もネットで4カートン、40箱を月に一度の割合で注文しています。私の利用している煙草の発送元は長崎らしいです、送料に950円と2箱分掛かるのですがまとめて買えるメリットを考えると許容範囲内と思っています。趣味で体育館でスポーツをしていたのですが3月から9月まで自粛では無く体育館が使えず自粛状態でした。9月の中頃から再開しましたが11月に入って再度の流行を鑑み自粛しています。体育館は利用できるのですが、私が参加しているクラブで自粛としました。犬の散歩も10日に一度位に減らし他の犬とのふれあいも無くしています。週一で通っていた教室も教室の自粛に続いて私の判断で休学にして貰いました。2、3か月周期で通っていた2か所の病院も行けない状態でした。1軒は予約をすれば30分程で終わるのですが、1軒は3密の待合室で3時間以上待たされます。薬が必須の心臓の薬ですので2020年10月に3時間を覚悟して病院に行きました。長時間待ちでたった10分の問診後の薬の処方箋です。問診しなければ薬の処方箋が出せない現状はおかしいと思います。行ってみると何と30分待ちで問診、1時間以内で病院を出る事が出来ました。行きは通勤時間に重なりましたのでタクシーを利用しました。帰りは電車でした、行き会う人たちのほとんどがマスクをしていました、が、していない人もいて驚きました。その様な訳で私は殆ど、自宅から出ない生活が続いています。もう、完全に引き籠り状態です。世界の研究者、製薬会社が薬の開発を行っています、ワクチン開発が進んでいる様でファイザーとモデルナからもうすぐ供給される様です。でもワクチンですから用は薄い病原菌を摂取する事ですから心配です。治療薬の開発は進んでいないのでしょうか。前回の大流行の新型インフルエンザを恐れ無くなったのも治療薬が出来たからです。コロナも早期の治療薬の開発を期待します。-----おしまい
2020.12.02
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<探索 三郎太、平太の場合>-----#186 その日は三郎太らからは何の知らせも無く過ぎ、次の日もそろそろ夕餉と言う刻に三郎太と平太が道場の母屋に顔を出した。 「お腹が空いた、今日の菜は何」 平太が家に入るなり叫ぶ様に言った。 「おぉ、ご苦労様でした、伸び盛り故にさぞやお腹も空いた事でしょう」 お久が二人を労い平太に答えた。 「こいつは昼餉も儂と同じ位食べているんですよ、お久様、お佐紀様・・・お雪ちゃんはもう馴染んだ様だ」 三郎太が平太の大食漢を漏らした。 「母上の言われた様に平太殿は伸び盛りですからね」 お佐紀が平太を弁護する様に言った。 「そんでお雪ちゃんはどうな、慣れたかい」 平太がお雪に問い掛けた。 「平太さん、お気遣いありがとう御座います、まだまだです、お二人の様には上手く出来ません」 「この二人は特別だよ、手本するのは良いが同じ質と速さは無理な話だ、精々真似てみる事だね」 「はい、平太さん」 「ほんとだよ、この二人は直ぐにでも料亭の女将さんが出来る位に手際が良いんだ」 「はい、精々真似ます」 「あらあら、平太に褒められたわよ、佐紀、菜を増やしてあげましょうね」 「はい、母上」 その刻、遠くから声が聞こえた。 「お~い、二人共、早うここへ来い、其方らがそこに居ると飯の支度が遅れるじゃろが」 小兵衛の邪魔をせずに囲炉裏端来いとの声が聞こえた。 「爺ちゃん、機嫌が悪いのか」 「平太~儂の機嫌は良いぞ、じゃが飯が遅れると悪うなるのぉ~」 「うへ、耳が良い爺様だ」 と小声で言い大きな声で返事をした。 「は~い、今参りま~す」 三郎太と平太が居間に入ると囲炉裏の周りに人々がいた。 そこには小兵衛と龍一郎は勿論、船宿・駒清の主夫婦の清吉とお駒、料亭・揚羽亭の女将のお高、南町奉行の嫡男・大岡誠一郎、平太の妹・舞も居た。 「皆さんお揃いとは何か御座いますので???」 「何ね、私が昼間にご機嫌伺い参りましたのさ。 お雪ちゃん・・・でしたっけ可愛い娘がいるじゃないですか、それで訳を伺っている内に平太が任に着いているとお聞きしましてね。 じゃあお雪ちゃんを皆に紹介しようと声を掛けましたのさ。 別に止め立ても釘もありませんでしたのでね、何か手伝える事は無いのかい」 お駒は最近、本業の船宿の女将に専念していて、どうも鬱憤(うっぷん)が溜まっている様だった。 「お駒、平四郎とお峰はどうした、遅れているのか」 「それが二人には繋ぎが取れませんでした」 「ん~ん」 小兵衛の問いに皆を集めたお駒が応えた。 「申し訳ございません、お二人には我らの交代要員になって頂きました。 断りも無く申し訳も御座いませぬ」 三郎太が「下賎の辰」の調べを平四郎とお峰に願ったと答えた。 「して、何故に二人に願うたな」 「はい、龍一郎様、お二人は的(まと)の悪評を一度ならずも噂に聞き探索していた様で御座います」 「何、先を越されたてか」 「はい、ご隠居、只始めたのは三日前からだそうで、まだ大した知らせも無いそうで御座います」 「それで其方らが見張りに行った処で会うた訳じゃな」 「はい、左様で御座います」 「父上、その先は皆が顔を揃えてからに致しましょう」 「おぉ、そうじゃのぉ、でかいのがつっ立っとらんで、ま~ぁ座れ・・・小さいのもな・・・う~ん、平太、背がまた伸びたか??? 三郎太の隣に居ると小さく見えるが儂と変わらぬ位になった様だのぉ~」 「爺様、知らぬは本人ばかり成り・・・と言う言葉を知っているよね」 「おぉ、知っとるぞ、舞・・・うぬ、平太の背は儂を超えたか、それを皆が知っておると言う事か」 「あた~~り~」 舞が矢場の娘の様な声を上げた。 小兵衛が立ち上がり一旦座った平太を立たせて背比べをした。 小兵衛は平太の頭の上に手を乗せその手を自分の方へ引いた・・・頭の上を過ぎてしまった。 今度は自分の頭の上に手を乗せ平太の方へ移動させた・・・平太の髪に触れた。 「儂が五尺二寸(約158センチ)のはずじゃから平太は既に五尺三寸(約160センチ)はあろうのぉ~・・・まだまだ伸びそうじゃ・・・父親の清吉は儂と変わらん、母親のお駒の血かのぉ~お駒は女子にしては大きいからのぉ~・・・それとも始終三郎太と居るからかのぉ~」 因みに三郎太は六尺三寸つまり現代風に言えば190センチを超える大男である。 その時、廊下を台所から居間へ歩く音が聞こえた。 「あの音がその内聞こえん様になる訳じゃのぉ~」 「それまでには刻が要りましょう、増してや気配ともなればまだまだ先の話ですね」 小兵衛の嘆きとも取れる言葉にお駒が反応した。 「失礼致します」 「お雪、ご苦労じのぉ」 「いいえ、まだまだお二人のお役に立てておりません」 小兵衛の労いの言葉にお雪が応えた。 お雪は手に持っていた皿と箸立てを囲炉裏端に置いて台所へ戻って行った。 舞と平太が料理運びの手伝いにとお雪を追って台所へ向かった。 「私の元で行儀一般を教えましょうか、小兵衛様」 「それも良いのぉ」 「行儀を習うだけでしたら私もお役に立てますが」 「おぉ、お高さんも手伝うてくれるか、どうじゃな、龍一郎」 お駒に次いでお高も名乗りを上げ小兵衛が龍一郎に尋ねた。 「あの娘・お雪は佐紀が見出しただけに稀に見る逸材です、心身ともに並外れております。 身体は幼い頃からの鍛錬、心は家が貧しいが故に鍛えられております。 私は三月程、山へ送るつもりです、どうですか、暫く皆も山修行に行っておりません・・・で皆でどうかと思いますが」 龍一郎の言葉に鬱憤の溜まっていた皆が喜色満面になった。 龍一郎は皆の顔を診て安心した、辛いはずの修行を待ち望む心があれば心技体の上達が見込まれるからである。 「辰巳屋の一件が片付き次第と思うておるが、支障のある者はおるか」 「・・・」 「・・・」 皆が周りを見渡した・・・誰も異論は無かった。 遅ればせながらお高とお駒も台所へ向かった。 お久を先頭に料理が運ばれて来て平太が持って来た鍋が囲炉裏の自在鉤に掛けられた。 深皿、小皿、箸が順々に渡され皆に行き渡り、お高とお駒の手により自在鉤に掛けられた鍋からごった煮が皆の深皿に次々に取り分けられた。 お雪はお櫃からご飯茶碗に山盛りのご飯を次次によそい、盛られたご飯茶碗が継ぎ継ぎに渡されて行った。 皆に行き渡った処で小兵衛の「いただきます」の言葉に次いで皆が唱和し食事が始まった。 早速、話の続きを小兵衛が始めた。 「お高さんの処と清吉の処は何方が山に行かれるかな」 「亭主も行きたがるでしょうが今回はお店番をお願いしお花を伴いたいと思います」 「わっしの処は四人だけですな、板前がまだまだ未熟でして板長の参加は無理で御座います。 本人は悔しがりましょうが、かみさんは参加するかもしれませんな」 「龍一郎、道場の守番は誰にするのじゃ」 「父上に願います」 「何じゃと、儂は山に行けぬのか、三郎太、平四郎・・・其方でも良いではないか」 「今回の趣旨をお忘れですか・・・お雪の修業で御座います、お雪と歳の近い舞、平太の参加は必定、となれば相方である三郎太、誠一郎殿が参するは必定、私が行かねば皆の次の階段を登れますまい・・・父上が参する手は平四郎殿に願うのみで御座います」 「平四郎にか・・・そう言えば其方の交代と申したが平四郎はどうした、お峰はどうした」 「では、それも含めて三郎太の話を聞きましょうか」 「旦那様、その前に些細な事では御座いますが確かめたき事が御座いますが宜しいでしょうか」 「些細な事、何かな、佐紀」 「平太は何か申しましたか・・・で御座います」 「其方はどう思うておったな」 龍一郎が佐紀に問い返した。 「はい、そろそろ何も言わぬ様になっても良い頃と・・・」 「うむ、其方の願いは叶うたぞ・・・平太、これまでの様に舞に台所を手伝うて居らぬ文句も問いも何故にせなんだな」 「はい、正直申しまして喉まで文句が出て参りました、がこれまでに何度もお佐紀様、龍一郎様に考え不足、読みの浅さをご指摘頂いておりました事を思い出し、まずは思い留まり考えました。 まずは現状を把握せよとの教えに従いました、いつもは台所を手伝う舞が居間に居る事、そして同じく手伝うはずのお駒さん、お高さんも居間にいる事、新たにお雪ちゃんが加わった事・・・これらを合わせればお高さん、お駒さん、舞が何時もの様に手伝おうとしたがお久様かお佐紀様が断りの言葉を述べた・・・訳はお雪ちゃんが早く仕事に、この家に慣れて貰う為・・・と推察致しました。 それ故そのまま舞の事には触れずにおりました」 「見事じゃ・・・さて、三郎太、平太、何処で平四郎殿に合うたか、から聞こうか、がその前にそろそろ降りて来てはどうだ、お有」 龍一郎の言葉に誘われる様に小皿と箸が準備され空いた席にお有が降り立ち座り込んだ。 「やはり龍一郎様とお佐紀様は欺けませんでしたか」 「うむ、お有、其方の技前見事じゃ、三郎太、平太の素知らぬ素振りも見事であった・・・佐紀が空席を作るまで他の者たちは気づかなんだ様じゃ・・・だが何故かお雪は其方の気配を感じて居った様じゃ、どうだな、お雪」 「・・・はい、人が居るとは思いも寄りませんでしたが何かが居る・・・と感じておりました」 「佐紀、其方の眼力大したものじゃ、でかした、お雪、我らは、かように普通の家では無い・・・どうじゃ馴染めそうかな」 「佐紀様には失礼かと思いますが辰巳屋よりもこちらの方が私に合っている様です、第一面白いです」 「面白いとは」 「行儀作法も身に着けたいのですが武術も身に着けたいと思っておりました。 ですが無理だと思っておりましたので嬉しいのです、ぜひ私を鍛えて下さい」 「何故に、お百姓の其方が武術をと思うたな」 「噂で近隣の村々に夜盗や無頼の者たちが現れたと聞いておりました。 そして私も無理やり奉公に出されました。 本人の思いを無視して力で脅す者たちを許せませんでした。 ですが女子の私一人でどうなるものでも無いとも思ってもおりました」 「良き事では無い、他人に力と銭で無理強いする事はのぉ~。 じゃが、其方だけでは無い、それが横行しておるのが日ノ本の今の現状じゃ。 何処でも起こっておる事でな、残念な事よ。 して其方が武術・剣術の力を得たならばどうするな」 「・・・私の在所だけを考えていました」 「其方の在所をどうするつもりなのじゃ、無頼の者たちを次から次と何人も何人も何時なんどき来るやも知れぬ・・・其方一人でどうにかなると思うか」 「・・・」 「其方が我らの家族となる以上、其方の生家が立ち行く様にする事は確約しよう。 じゃが在所の村全体は無理であろう・・・な、それは日ノ本全域を世直しするに等しい・・・出来る事なればそうしたい・・・がのぉ~」 龍一郎とお雪の会話を皆は神妙な顔で聞いていた。 静寂を破る様に三郎太が話始めた。 「私どもはまず町医師の処へ参りました、小箱の中身を確かめに参りました。 中身は朝鮮人参で御座いました、平太の働きで御座います。 平太は人参そのままでは怪しまれると髭を一本持って参りました」 平太が取って来たと言う人参の根の一部を三郎太が懐から取り出した手拭いを広げて見せた。 龍一郎がその根の一部を手に取ると仔細に調べ、それを皆が興味深げに見ていた。 「あくどいのぉ~、偽物じゃ」 「何、偽物じゃと、龍、間違い無いか」 「はい、父上、間違いなく偽物で御座います」 「何と、何と、長崎物ではあるまい、闇の物じゃな、それで偽物とは確かにあくどいのぉ~」 「爺々、闇の物とは密貿易と言うものか」 「平太、そうじゃ、幕府が認めておる長崎物ではあるまいな、正規の商いならば偽物はないはずじゃからのぉ」 「爺じは頭が良い」 「おぉ、爺じは頭が良いか、舞」 「うん、良い、良い」 舞は時々幼い子の様に小兵衛に語り掛けて小兵衛を喜ばせた。 「他にこの様な物も平太が持って参りました」 三郎太が半紙にくるまれた物を龍一郎に渡した。 龍一郎は半紙を開いて呻いた。「やはり阿芙蓉じゃな」 「禁制品と言う事か」 「薬にもなりますが、習慣性が生まれやがて廃人になります、只の町医師が持つ物ではありませぬな」 「どんな病に利くのですか龍一郎殿」 「はい、母上、何の病にも利きませぬ、痛みを無くすると言うか忘れさせるのです」 「では、その医師は痛み止めに使っているのですね」 「母上、その医師が病の者の痛みを和らげる為に使うているかどうか、人参も偽物と知らずに使うているかは三郎太たちに調べて貰いましょう、急ぐ事では無いぞ、三郎太」 「はい、畏まりました」 「それで平四郎殿とは???」 「我らは町医師の後、金貸しの処へ参りました、まずは周辺の確認をし見張りに最適な寺の屋根にて見張っておりましたら平四郎どのから声を掛けられました。」 「三郎太、忍びの其方に言うのも何じゃが、見張りに最適な処は忍びの心得のある者には一番目立つ処じゃ」 「平四郎様・・・肝に銘じます、処で平四郎様も辰三を見張っておられますか」 「あぁ、最近巷で頓に評判が良くない故に調べる事にした、三日になる、其方も辰三と言う事か」 「はい、それが・・・」 三郎太は龍一郎から聞いた経緯(いきさつ)を平四郎とお峰に語った。 「成程のぉ~、あの辰三ならばあり得る話じゃ、我らの調べた処では金貸しだけでは無い。 無法者や腕の立つ浪人どもを集めて縄張りを広げている。 さらには人買い、下賎、そしてどうも阿芙蓉にまで手を出している様でなぁ」 「阿芙蓉とは聞き捨てなりませんな、仕入れ先まで掴んでおりますか」 「そこじゃ、奴には直接手に入れる術(すべ)は無い様に思う、故に誰ぞから手にしているはずなのだが・・・まだ解らぬ、処で三郎太、其方、吉原に伝手(つて)はあるか」 「吉原と申しますと遊女のいる吉原で御座いますか」 平八郎と三郎太はそれぞれの横にいるお峰とお有を気にしながらも話を続けた。 「その吉原じゃ、貧乏浪人から貧乏大名に仕官した身ではとんと縁が無くてな」 「私も元は抜け忍、銭にはとんと縁が御座いませぬ」 「お二人とも銭さえ有れば行ったと言う事で御座いますか」 お峰が話し合う平四郎と三郎太に問うた。 平四郎と三郎太がお峰を見ると二人を睨み付けており、隣のお有も同じ目付きをしていた。 「大人の事情は分からないが見張りの最中に怒りや殺気はいけませんよ」 平太が四人の仲を取り持つ様に話に割って入った。 「それで、その吉原がどうしたのですか」 「まだ詳しくは解らないのだが辰三が吉原の妓楼の一軒を買い取ろうとしている様でな」 「本当ですか、何でも噂では吉原の者以外には店は売らないとの事でしたが」 「本当か・・・う~ん、ではこちらは噂に過ぎぬのかのぉ~大金もいるしのぉ~」 「妓楼にもよりましょうが少なくて三千両、大所では二万両でも済みますまい・・・が上手くすれば元手は直ぐに取り戻せましょうな」 「そうか、では無い事も無い話じゃな、どちらにせよ合わせて探ろうか」 「はい、ですがこの員数は不要でしょう、交代ではいかがですか」 「良いだろう、我らは今来たばかり故これから我らが変わろう」 「解りました、お願い申します、夕餉は大丈夫ですか」 「準備はして来てある、明朝変わろうか」 「はい、お願い申します、龍一郎様にお伝えする事は御座いますか」 「先程話した事以外には・・・・・・無理やり奉公に出された者、身売りされた者は一人だけでは無いと言う事、薬種問屋の金科堂と町医師の中居相順の処にも顔を出すと言う事かな」 「既にその町医師の所へは探索に参りました、証拠の品も手に入れて御座います。 薬種問屋ですが腕の立つ用心棒がいると言う事で龍一郎様が探る手筈になっております」 「そうか、既に・・・手回しの良い事よ」 「では、我らは此れにて失礼致します」 「では」 「では」 三郎太、お有、平太の三人が消え、平四郎とお峰が見張り番に変わった。 「平四郎は此処に居らぬ訳は解ったが・・・」 「父上、何か気になる事でもお有りですか」 「龍よ、儂は吉原の話が気になってなぁ~」 「はい、私もそれは気になりますが、まずは阿芙蓉の卸元を探る事かと存じますが」 「三郎太、平四郎も其処までは解らぬのじゃな」 「はい、掴んでは居りませぬ」 「それを掴むまでは辰三には手を出せぬな」 「お前様、実家・辰巳屋に辰三が参りましたおりには、手を出しては成りませぬか」 「取引をして貰わねばならぬ故、辰三には成らぬ、が連れの用心棒や手下の者たちを懲らしめてやれ、それで我慢するのじゃな、まぁ今や其方に向かって来る者など居らぬと思うがのぉ」 「其方、一人で行くつもりか」 「お前様、私はまだ義理とは申せ母としてご挨拶しておりませぬ、私が同道致します」 「うむ、上手い口実を考え居ったな、お久、其方も鬱憤が溜まっておるか、どうじゃ龍」 「舞が残念でしょうが、ここは母上にお願いいたしましょう。 それと、お雪を一人で他出させぬ様にな、お雪も心して置きなさい。 面倒だの、申し訳無いだのはいかぬ、其方が拐かされた時の方が面倒じゃからな。 今や名の知れた橘の道場に手を出す者はおるまいと思うであろうが、力で他人を制して来た者どもは他人の力を測る事が出来ぬものでな、皆も心して置く事じゃ」 龍一郎の言葉に全面的に納得は出来ぬものの心に留め置く様に頷いた。 「三郎太、お有、平太、他に知らせる事が無ければ体を休めよ、平四郎殿との交代に備えて貰いたい、ご苦労じゃな」 「はい、平太、お有殿、何かあるか」 「御座いませぬ」 「ありませぬ」 「では、休ませて頂きます」 食事も茶も終わっていた三人が消えた。 不思議な事に忍びの様に三人が消えた事にお雪は驚きもせずに龍一郎を見詰めていた。<つづく>
2020.12.01
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