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■今日のまとめ 1. 新興国の株式市場は年初から下がっているところが多い 2. 業績予想にもかなり変化が出た国が多い 3. PEGレシオは全般に下がった 米国のサブプライム問題の余波を受けて新興国の株式市場も大きな調整を入れる市場が相次ぎました。加えて先進国の経済成長見通しの暗転で新興国の企業の業績見通しにも変化が出ました。主な修正点としては: 1. 輸出型企業を中心に業績予想が修正された 2. 金融市場に収益が左右されやすい業種で業績予想が修正された 3. 原油高等商品相場の水準を反映させて業績予想が修正されたが挙げられます。これらのことから今年の年初の時点での新興国各国のPEGレシオ(*)と3月20日現在のPEGレシオでは極めて大きな変化が出ています。 チリの市場は年初から7%程度下落しましたが業績予想が下方修正されたため、PEGレシオは悪化(=増大)しています。相変わらず新興国の中で最も割高な市場です。 メキシコの市場は年初から3%程度の調整となっています。メキシコは米国に隣接するため米国経済への依存度が高く、業績予想は下方修正されています。これを受けてPEGレシオは大幅に悪化し、現在ではチリに次いで新興国の中で2番目に割高な市場になっています。 トルコの市場は年初から28%程度の大きな調整となっています。業績予想は下方修正されましたが株価の下落の方が急激でしたのでPEGレシオは1.4から1.1へと改善しました。 韓国の市場は年初から13%程度の調整となっていますが業績予想も少し下方修正されました。PEGレシオは0.92から0.85へと若干改善していますが他の国の水準調整が大きかったため、相対的には割高さの順位が上がり、これまでの割高な順で第7位から今回は第4位へと繰り上がりました。 インドの市場は年初から25%程度の調整となっています。業績予想もITアウトソーシング企業を中心に下方修正されました。業績予想の下げより株価の下落の方が急でしたのでPEGレシオは1.05から0.84に改善しています。 南アの市場は年初から3%程度の調整を見ました。業績予想も堅調です。したがってPEGレシオも比較的一定で、0.86から0.78へと下がった程度です。 台湾の市場は年初の水準とほぼ横ばいです。一方、米国経済の減速を受けて業績予想は下がりましたからPEGレシオは逆に上昇しています。もはや世界で最も割安の市場ではなくなりました。 マレーシアの市場は年初から17%程度の調整となっています。一方、業績予想は改善を見ましたのでPEGレシオは大きく改善しました。 インドネシアの市場は年初から11%程度下げています。業績予想も少し悪化した結果、PEGレシオはほぼ一定でした。 中国の市場は指数にもよりますが年初から21~25%程度の調整となりました。業績予想の下方修正はごく僅かです。従ってPEGレシオは0.84から0.66へと下がり割安感が強まりました。 ロシアの市場は年初から16%程度調整しました。一方業績予想は原油高などの要因で大幅に上昇しました。このためPEGレシオは1.7から0.65へと大幅な改善を見ています。 イスラエルの市場は年初から19%近い調整となりました。一方業績予想は堅調です。したがってPEGレシオは0.87から0.5へと改善しました。 タイランドの市場は年初から4%程度の調整です。業績予想にも余り変化はありません。 ブラジルの市場は年初から8%程度の調整となりました。一方、業績予想は上方修正されていますのでPEGレシオは改善しました。■まとめ 現在、新興国のPEGレシオは割高なチリ、メキシコ、トルコの3国を除けばいずれも1以下に下がっており、たいへん妙味のある水準であると言えます。先進国との比較においても遥かに内容の良い新興国の株式市場がいつまでも現在のような極めて割安な水準で放置され続けるとは考えにくいです。(*)PEGレシオとは株価収益率(PER)をEPSの成長率で割り算した数字です。一般にPEGレシオが1以下なら妥当な株価水準であるという使い方がされます。
2008年03月24日

■今日のまとめ 1. ITアウトソーシングは銀行・証券の顧客からの注文減少が懸念される 2. 前回の下げ相場時と比べると銀行、エンジニアリングの調整が足りない 3. 逆にITアウトソーシングや薬品、自動車はもう下値は限られている■ITアウトソーシング このところBRICs各国の株式市場の中では中国とならんでインドの下げがきついです。そこで今日はインド株式市場のセクター別の株価水準を点検してみたいと思います。先ずインドを代表するITアウトソーシングのセクターですが、株式市場のセンチメントはよくありません。この理由はインドのITアウトソーシング企業にとって米国の金融セクターは良いお客さんなので、最近のように米国の銀行や証券の経営が揺れると注文の減少などの悪影響を蒙ると考える投資家が多いからです。具体例で見るとインフォシス(INFY)の場合、2007年12月期決算の売上高に占める銀行・証券からの売り上げ比率は29.5%であり単独のセクターとしては最大です。 インフォシスの顧客全体のアンケートで見ると今年のIT予算は前年比で+6%程度の増加を予定しています。これは去年の数字(+8%)より少し低く、やはり景気後退の兆候を見て米国企業がIT予算を絞り込もうとしている態度が伺われます。インドのGDP成長率の見通し インド全体のGDP成長率はどうでしょうか?2月28日に発表された第3四半期(12月期)のGDP成長率は8.4%でした。これは第2四半期の8.9%から減速しています。ちなみに去年の第3四半期は9.1%でした。この流れから考えて今年のインドのGDP成長率は8.2%程度になると予想されます。去年9%以上で成長したことを考えると確かにスローダウンですが、それでも立派な数字だと思います。ただ、インドは農業など世界経済とは無関係なセクターが経済に占める比率が高いので、企業部門だけを見ると減速はもう少し顕著であると考えられます■2002年のボトムとの比較 実際、前回世界の経済が減速局面に入った2002年にかけてのダウンサイクルではインドの株式市場はほぼ半値になりました。但し当時はミレニウムで年号の下三桁が000になるので旧式なコンピュータが停止するのではないか?という懸念からIT関係の仕事に特需があって、インドのIT関連株も人気化したこと、更にドットコム・ブームでハイテク関連企業の株価評価が極端に高かったという特殊事情があります。ですからそのときのITセクターと現在のITセクターを比較する際には少しその事情を考慮する必要があるように思います。それを断った上で、2002年秋の、インド株式市場のPERがボトムをつけた際の各セクターのPERと今現在のインドの各セクターのPERを比較して、若し仮にいまのインドの各セクターが前回のボトムの際のPER評価まで下がったとすると、それぞれのセクターが何パーセント下落するか?というのを計算したのが下のグラフです。 これで見ると既に薬品は2002年の際の底値のPERと同じ水準になっているのでもう下がらないと考えることが出来ます。その意味では自動車セクターなども余り下がらないと思います。その反面、最近まで極めて人気の高かった銀行、エンジニアリング、通信、金属、石油などのセクターはまだまだ大きな下値余地があることがわかります。最後にITアウトソーシングについては現在の段階で既に前回のボトムの時のPERより既に25%程度も割安になっていることがわかります。
2008年03月19日

今日のまとめ 1、イスラエル株は妥当な水準である 2、イスラエル株の多くはナスダックに上場されている 3、イスラエル株は最近のブームから外れているので新鮮味がある 4、世界を相手に商売しているグローバル企業が多い ■割安なイスラエル市場 イスラエル市場の現在のPERは11.3倍で、これは新興国の中ではタイランドに次いで低いです。 次にイスラエルの今年のEPS成長率は13%が見込まれておりこれは新興国の中ではちょうど中くらいです。2007年のEPS成長率は16%だったので成長率の落ち込みは他国に比べると少ないです。 PERをEPS成長率で割った、所謂、PEGレシオで見ればイスラエルは0.87と新興国の中では中位に位置づけています。PEGレシオが1以下であるということは同国の株価水準が適正であるということを示していると思います。■テルアビブ取引所 イスラエルの株式市場はテルアビブ取引所です。テルアビブ証券取引所は1935年に創設されました。上場企業数は650で時価総額はおよそ2000億ドルです。イスラエル株の少なからぬ銘柄はアメリカの株式市場にも上場されており、特にナスダックとの結びつきが強いです。これはイスラエル企業にはハイテクや薬品企業が多いこととも関係しています。現在ナスダックに上場されているイスラエル企業は70社を数え、その時価総額の合計は約600億ドルです。それらのナスダック上場イスラエル銘柄の多くはテルアビブ取引所にも同時上場されています。下に比較的流動性の高い銘柄のリストを掲げます。 これらのイスラエル企業の多くはこれまで人気になってきた新興国の投資テーマ、具体的には商品ブームやインフラストラクチャー投資などとは縁遠いです。それはこれらの銘柄が余り注目されておらず、新鮮味があることを意味すると思います。バリュエーション的にも割安感の強い銘柄が多いです。イスラエルは国土が狭いため、イスラエル企業ははじめから世界を相手に商売しようという気概が強く、米国流の企業統治や企業風土をいちはやく取り入れているところが多いです。アメリカで取引されているこれらの銘柄のうち、上場してからの歴史が比較的長く、かつ今のイスラエルを代表する銘柄を紹介します。■アラジン・ナリッジ・システムズ(ALDN) アラジン・ナリッジ・シズテムズ(ALDN)はソフトウエアの著作権を保護するシステム(商品名『HASP』)を作っています。また、同社はネットワークのユーザーを認証し、特定のユーザーだけが保護されたサイトにアクセス出来るようなシステム(商品名『イー・トークン』および『イー・セイフ』)を作っています。同社のソフトウエア著作権保護システムならびにユーザー認証システムはUBS(ユニバーサル・シリアル・バス)トークンなどのハードウエアに基づいた商品です。ソフトウエアの著作権保護システムの市場は1.7億ドル程度の市場で、年率10%程度で成長しています。アラジンは約37%の市場占有率を有しておりマーケット・シェア・リーダーです。一方、USBによるユーザー認証システムの市場は1.4億ドル市場で、近年個人情報の漏洩防止などのニーズの高まりから年率40%程度と高成長しています。この市場ではアラジンは20%程度のマーケット・シェアを持っており、セイフネットに次いで業界第2位です。『イー・トークン』は警察などの政府機関、教育機関、金融機関などに導入されています。また、今後は中国やインドなどの新興国でも需要の伸びが期待できます。現在の売上構成比は著作権保護システムが約6割、ユーザー認証システム(エンタープライズ・セキュリティー、この中には『イー・セイフ』を含む)が4割となっています。アラジンの売上高成長は2004年あたりを境に成長率が上がっていますが、これは『イー・トークン』の貢献によるところが大きいです。アラジンの今年のガイダンスは売上高が19.8%成長、EPSが18.6%成長となっています。■チェックポイント・ソフトウエア(CHKP) チェックポイント・ソフトウエア(CHKP)はインターネットのファイアウォールならびにVPN(バーチャル・プライベート・ネットワーク)のソフトウエアの会社です。同社は企業向けITセキュリティーのみに特化しています。現在の顧客数は10万社で、「フォーチュン100」にランクインしている企業の100%、「フォーチュン500」の企業の98%を顧客としています。つまりこの分野では既に確固とした地位を築いているわけです。同社は単価にして150ドル程度のスモール・オフィス向けのソリューションから大企業向けのブレード・サーバーに基づく本格的なシステムまで幅広い品揃えを誇っています。さらに去年からアプライアンスと呼ばれるハードウエア製品も発売しました。アプライアンスの登場によって同社のビジネス・モデル、ソフトウエア契約の形態、売上計上タイミングなどは微妙に変化しています。さて、チェックポイントの業績は先に述べたアラジンと同様、最近好調です。それはデータ・セキュリティーの市場の成長が原因です。ネットワーク・セキュリティー市場全体は年間8~10%でしか成長していませんが、データ・セキュリティーのセグメントだけは年間30~40%で急成長しているからです。第4四半期の売上高成長は29%と好調でした。これは新製品のアプライアンスの売上が貢献しているためです。同社のバランスシートには12億ドルのキャッシュが載っており、負債はありません。さらに年間3.6億ドルの営業キャッシュ・フローがあります。今年の売上、EPSともに約10%程度の成長が見込まれています。■ナイス・システムズ(NICE) ナイス・システムズ(NICE)はコール・センター管理システムを作っている会社です。具体的にはコール・センターに電話や電子メールやビデオで入ってくる情報を追跡、記録、管理、再生、分析することを可能にするシステムを作っています。さらに同社は公安関係のセキュリティー監視システムも作っています。顧客別では売上の75%が企業向け、25%が政府や治安当局などの公的機関です。企業向け顧客の典型的な使用例としてはコール・センター、トレーディング・ルーム、リモート・オフィスなどが挙げられます。地域別では米国が総売上高の55%を占めています。また売上に占めるハードウエア・ソフトウエアなどの製品が6割、サービスやメインテナンスなどの継続的支援から来る売上が4割です。SOX法のような法規制は同社の製品へのニーズを喚起します。またリスク・マネージメントも最近は重要度を増しています。例えば最近、ソシエテ・ジェネラルでトレーディングの不祥事があり、トレーディング・ルームのモニター・システムの重要性が再認識されました。同社の製品は従業員の不正の発見、防止にも活用されています。これらのことから現在 ナイス・システムズの受注残は過去最高の水準であり、今年の売上の半分は既に確定しています。しかし不透明要因としてはサブプライム問題で米国の金融機関の経営が苦しくなっており、今後、設備投資を絞り込む会社が出てくる可能性がある点です。■テバ・ファーマシューティカルズ(TEVA) テバ・ファーマシューティカルズ(TEVA)はジェネリック薬、API(アクティブ・ファーマシューティカル・イングリーディエンツ)、ニッチ・ブランド薬などを作っている製薬会社です。売上規模で世界の薬品メーカーのトップ20に入っています。地域別の売上構成比は米国が約60%、欧州が25%、残りが世界のその他の国となっています。同社にとって米国の薬品市場が最も重要度が高いわけですが、米国のジェネリック市場は過去5年、年率31%で成長しており、世界の中でもとりわけジェネリック化が進んでいます。現在米国で売られている全ての薬の数量ベースでは63%、金額ベースでは16%がジェネリックになっています。この中にあってテバは処方箋の数量ベースでは既にファイザーなどの大手製薬会社を抜いて全米第1位になっています。別の角度から見れば北米の全ての処方薬の12%、ジェネリック薬の処方の20%が同社製品でした。米国のジェネリック市場の向う5年間の年率成長予想は15%程度です。 欧州市場は過去5年間に年率33%程度で成長しました。向う5年間の成長率は年率19%程度と予想されています。欧州の中でもイタリア、スペイン、フランスのジェネリック市場の成長が著しいです。その他の世界におけるジェネリック薬の成長率は過去5年で年率42%でした。向う5年間の成長率は21%程度だと予想されています。中でも日本とブラジルのジェネリック市場は急成長が期待されています。同社の経営目標としては2012年までに売上高を200億ドルにするというものです。因みに2007年の同社の売上高実績は94億ドルでした。
2008年03月10日
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