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鮎の解禁当日のいうのは、遠足に行く前のワクワクした気分と、テストを受ける前の緊張感が同時に降りかかってくる。と、もう何年も感じている。解禁は午前7時から。「色々と準備があるから」と、後輩S君が5時に僕の家に迎えに来る。 友釣りは鮎の縄張り争いを利用した日本独特の釣りで、鮎を釣る前に、あらかじめオトリの鮎が必要だ。オトリ屋さんに着いた時、現場には車が虫のようにうごめいていて、釣り人が列を作っていた。皆さんお年を召してらっしゃる方々で、僕らはどう見ても最年少組だ。 にわか雨が降る中、今シーズンが開幕。普段、3時間も釣れば満足する僕だが、今日の僕はシビアだ。7時から3時過ぎまで昼食を挟んで川に立ち続けた。こんな事は年に何回もないけど、たまにはそういう釣りもいいだろう。雨と風にめげずに張り切ったので、僕は56匹、S君は23匹というお恵みをいただいた。 鮎釣り2年目のS君がこれだけ釣れたのは、師匠の教えが卓越していると言わざるを得ない。「どれだけ自分を褒めれば気が済むんすか?」と指摘されても、大雨のように飛び跳ねる80匹近い鮎を見たら、微笑みを押し殺すことは不可能だ。お互い「すんげえっすわ」と健闘を称える。で、そんな騒ぎをしていたので、写真を撮り忘れる。この辺、シビアさが持続しないのが僕の人生だ。 釣った鮎を、温泉旅館N荘におすそ分け。喜んだ女将のY子さんが、「いつもありがとね。さっそく温泉入っていって!」。んー、ありがたい。釣りの疲れを癒させてもらおう。 温泉の後は、そば処T庵で生ビール。若旦那のT君に、「これからは、釣った魚を塩焼きにしますから、遠慮なく持ってきてください!」。んー、ありがとう。 僕の釣りは、色々な人たちに支えてもらって成り立ってる。支えてくれている仲間に感謝。で、8時間身体を支え続けた両足はこの時、既に「筋肉痛」が成り立っていた。川の流れに立って、笑いながら支えてくれた両足に感謝、感謝。
2007.06.30
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「毎日がフライデー」という看板を、うどん屋Tで目撃した後輩A君から、捜索の同行を依頼される。「この店、なんか臭いますね。重大犯罪の予感がします」という。確かに、毎日が金曜日であってはならない。月月火水木金金なら「働き者を支える意気込み」が伝わるが、金曜日が7日も続くというのはどうか?今国会にも通っていないし、審議もされていない。こんな勝手は許されないし、黙って悪を見逃すわけにはいかない。一般人になりを潜めて暖簾をくぐる。 我々の事前調査によると、この店は大阪に本部を持つ指定うどん店系。全国に系列組織を展開しているらしい。傘下にある各店ごとに、オリジナルのセットメニューを任せ、地域色にそっと身を隠して商売をしているようだ。 店の壁に貼りだしたメニューに目を通すと、酒の肴ばかりが記されている。「無断曜日変更罪」に止まらず、「飲酒運転推奨の店」の疑いもありそうだ。我々は、間もなくメニュー表の中に折り込んである薄っぺらい用紙を発見。ここに、「毎日がフライデー」の真実が隠されていた。 「フライデー」にはいくつかのセットがあるようだ。Aセットはイカ5枚。Bセットはカキ2個、野菜1個、白身魚1個...。何と言うことだ。「フライデー」とは、フライを乗せたうどんメニューの総称だったのだ。我々は罪状を「曜日偽装」「英単語偽証」に変更し、引き続き捜査を進める。 メニューの写真を見ると、それぞれのフライにカレーをたっぷりと掛けている。カレーによる「うどん遺棄」の疑いも出てくる。しかも、量が異常に多いのだ。善良なる市民は、この名前と量に騙されているのだ。これは許せん。即逮捕だ。まずはBセットをパクッてやろう! 思いがけない抵抗をされ、お腹がはちきれんばかりのダメージを食らう。食後の求刑、じゃなくて休憩は10分必要だ。ふと、隣で格闘していた後輩A君は、お腹を抱えながら既に殉職していた。無念。
2007.06.29
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梅雨時はあっさりしたものが食いたくなるなぁ、後輩Sの字。今宵は、蕎麦でもたぐるとするか。美味い肴を食わせるオイラの知り合いの店が、ちょいとこの先にある。いいから、着いてきな。 おう、ここだ。蕎麦処Iって言ってな、暮れ六つからは完全予約制ってぇこった。天涯孤独な主1人で切り盛りしてるてぇと、お客にドッと来られたんじゃぁ、たまんねえわな。何?今宵は予約してあるかってか?んなもん一々やってられるかってんだ。江戸っ子は気が短ぇんだ。おう、ジャマするぜぃ。酒とな、なんか美味い肴くんな。 近頃の店は、西洋からくりの空気調節機が置いてあるが、あれは味気ないのう。頭ぁキンキンしやがるし、氷の部屋で仕置きされてるみてえだ。エゲレスだかオランダだか知らねえがな、海の向こうの得体の知れねえモモンガみたいなもん、こちとら気味悪ぃやな。小脇に仕込んだ扇子で、パタパタッと涼をとるのが粋ってもんさ。 それに引き換え、この店は...!おう、主、このちょうちんみてえなもん、いってえ何だい?からくり団扇?ほーう、いい風送ってくれるじゃねえか。酒が進んじまうわな、こりゃ。 それにしても、このからくり団扇、なかなかの働きモンだ。どこの誰が動かしているか知らねえが、小遣いをくれてやろう。おう、手ぇ出しな! 「ブーン」 おう、返事ぐらいしろい! 「ブーン」 ったく、仕事は熱心だが愛想のねえヤツだ。おうおう、おめえ起きてるのか? 「ブーン」 けっ!涼しい顔で、イビキかいて寝てやがる。
2007.06.28
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連日連夜の飲酒が、身体にいいわけがない。生ビール→日本酒→焼酎→カクテル...延々と続くふしだらな飲酒生活から、僕はそろそろ脱却しないといけない。健全な肉体と精神は、健全な飲酒生活に宿るのだ。 今宵、仲間3人で訪れた居酒屋Hは、そんな僕の試練の場だった。いつも通りに生ビールを2杯飲み干し、熱燗を頼んだ時に、脳裏をよぎったのが「健全な飲酒生活への転換」である。そこで、僕は「薬草酒」を注文した。いつもと違うもう1人の僕が、いかにも健全なメニューを呼び寄せたのだ。健全な生活は、漢方にはじまり漢方に行き着くのだ。 高麗ニンジン、またたび、杏仁の種など、6種類の薬草配合。5年もの間、じっくりとエキスをにじませてきた漢方な1品である。養命酒も真っ青のコッテリとした味わいが、いかにも身体に良さそう。けど、ずいぶん舌がヒリヒリするな。 「かっちゃん、それアルコール度数が50度もあるから、ゆっくり飲んでね!」。…うかつだった。このままじゃ、胃腸や肝臓へのダメージが避けられなくなる。ここは迅速に、体内のアルコールを熱燗で薄めてやろう。 結果、酔いの回りが速くなる。ブレーキを踏みながらアクセルを踏む行為が、この時、翌朝の漢方薬を呼び寄せるとは知るよしもなかったのである。漢方酒にはじまり、漢方薬に終わる。何という健全な飲酒生活。
2007.06.27
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日照条件が良過ぎると、生き物にとっては様々な弊害が生まれてくる。被害者は農作物ばかりではない。人間だってシミ、ソバカスの原因にもなるし、水気が失せればひび割れも起きる。美人になるための道をジャマする。雨乞いは、尼乞いにも通じる、女性の有史以来の願いを代弁する儀式でもあるのだ。 今年、桃の産地は、日照条件が良すぎて困っているという。梅雨の勢いが弱いので、お日様の恩恵を遠慮せずに受けてしまっているらしい。結果、実が小さくなってしまい、熟す前にポトリと落ちてしまうんだって。 でも、小さくて赤みが強いだけで、味の方までは影響ない。どことなく人間に共通する桃に愛着を覚え、Kさんのバーで「小ぶりの桃で1杯作って」とお願いした。 桃のマティーニ。ジンの味の後に、桃の青みがかった甘さが瑞々しく訪れる。お日様が育てたフレッシュフルーツの味わいだ。 ふと、店内を見回すと、カウンターに肉の塊が置いてある。ん?よーく見ると、お弁当屋のMちゃんだった。昼間はお店の中で働くので、日照条件が悪いらしい。彼女の膨らんだ肌は真っ白な桃のようだ。お日様乞いが必要だ。
2007.06.26
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手打ちそばと手打ちうどんが看板商品のD亭は、60代のおばさんが1人で切り盛りしている。キリリとした目とポチャリとした身体が印象的で、口数の少なさが常連客を絞り込んでいる。 窓際に飾られたいくつもの鉢植えは管理が行き届いているし、テーブルの上にはホコリ1つなく、それが店のおばさんの几帳面な一面をのぞかせる。 考えてみれば、僕はおばさんの笑った顔を1度も見たことがない。必要以上の言葉のキャッチボールはないし、咳払いさえもしないところが、下手なジョークを受け入れられそうにない壁さえ感じるのだ。世間で言う「とっつきにくい」という種族にランキングされそうな雰囲気を放っている。 ふと、NHKで固定されているテレビを見上げ、僕はおばさんの見えない一面を覗くことになった。テレビの横に、韓国のドラマや映画のDVDが、何枚も並んでいたのだ。 この女性も、韓流ブームに流された1人らしい。DVDの1枚を、あえて背ではなく表紙面を客席側に向けてアピールしている。無口なおばさんの精一杯なテレと、心底のめり込んでいる現状を、あからさまに証明している。名前は知らないけど、おばさんの心を射止めた俳優の顔が並んでいる。 「いらっしゃいませ」。席に着いた僕のところへ、おばさんが注文を取りに来た。が、顔は僕の方を向いているのだが、視線の先にあるのはDVDの1点。心なしか、目が潤んでいる。...というより、口元がゆるんでいる。僕は、この間がジワジワと恐ろしくなってきて、メニューを見るまでもなく天ざる定食をお願いしていた。 それからのおばさんの仕事はキビキビしていた。規則正しく天ぷらを揚げる音が聞こえてくる。今、あのおばさんの脳裏には、何が浮かんでいるのだろう? もう1度、DVDの山に目を向ける。デジタル血圧計が置かれている。血圧を測りながら、韓国ドラマを鑑賞しているおばさんの姿に目に浮かぶ。「お待たせいたしました。天ざるです」。 天ざるを食べながら、僕は並んだDVDが気になって、そればかり見ていた。1度も見たことがないおばさんと微笑と、鼻をかみながら泣きじゃくるシーンが見えてくる。いつしか自分の血圧の高まりと、食欲の低下を感じていた。
2007.06.25
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...東方、佐藤錦。山形県出身、国産部屋。西方、米国桜坊(本名=アメリカン・チェリー)。米国出身、外国産部屋。行司は、かっちゃん之助。お中元場所、最後の取り組みです。 -大横綱のベテラン佐藤錦に、農産物の輸入規制解除の波に乗った米国桜坊の圧力が、どこまで通用するか注目される一番です。先場所の「スーパーマーケット場所」では、米国桜ん坊が怒涛の攻めで佐藤錦を「価格引き落とし」で下しました。土俵上の双方は、鮮やかなルビー色に染まった佐藤錦に対し、米国桜ん坊は濃赤色の見事なツヤ。まわしの色は両横綱とも緑色ですが、米国桜ん坊の方が若干黒味がかっています。さあ、制限時間いっぱい。「ハッケヨイ、のこったぁ!」 -...っと、米国桜ん坊がいきなりネコダマシ!外国産部屋得意のハッタリだー。佐藤錦これにもろともせず、単価の上手を取ったぁ!「のこった、のーこったぁ!」 -米国桜ん坊、質より量の手数!勢いつけて佐藤錦を土俵際まで追い込んだ!こらえる佐藤錦、押す米国桜ん坊!「のこった!のこった!」 -おっと、今度は米国桜ん坊が佐藤錦を吊り上げる。佐藤錦の値段はフワッと浮いて、どこまで上がるか予測もつきません!「ハッケヨイ、ハッケヨーイ!」 -米国桜ん坊が切り返して、単価の下手投げ!...が決まらない!おっと、行司のかっちゃんがもんどり打って倒れました!「佐藤錦!」 -行司のかっちゃん、土俵でうずくまりながらも軍配は佐藤錦へ上げています。 決まり手は「値段よりも味!」のようです!おや?土俵上に、行司のホッペが落ちています!んー、激しい戦いを物語っていますね。それではこのへんで、お中元場所が開かれたかっちゃん家の台所から、ごちそうさまでした。
2007.06.24
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小学校で、「皆勤賞」が軒並み姿を消しているらしい。 1日も休まず学校に行って、クラスみんなの前で表彰されるのは、テストで100点を取るよりも難しい。雨の日も風の日もあるし、軽い病気にかかったり、二日酔いの日だってあるだろう。それを押してランドセルを背負うのだ。先生にだってできない芸当だ。「学校に行きたくても行けない子がいる」「不登校児にいらぬ影響を与えかねない」というのが大方の理由らしい。 だがしかし、誰もができないことを立派に成し遂げたんだから、それを褒めてあげないでどうする?子どもを叱りもしない、褒めもしないというのは、大人の資格がないということだ。先生たちには、「皆勤賞」の意味をもう1度考えてほしい。 で、千曲川の鮎の「解禁」が30日に迫った。先日、漁協のおじさんたちが試し釣りをしたところ、「21cmを超える鮎が釣れた!」と騒いでいる。これが、その時の記録写真。 僕は、鮎釣りを始めて10年以上になるけど、いまだに「鮎釣り小学校」の1年生だ。登校拒否児童でもないし、引きこもりでもないが、よんどころない事情で出席日数が足りない。去年なんか、地元の小学校以外にも新潟や山形や秋田や青森の林間学校にも顔を出したが、90日近くある鮎釣り小学校には結果的に30日ぐらいしか行けず、留年してしまった。だから、「皆勤賞」がうらやましい。 鮎釣りシーズンが近くなる度に、いつかはクラスみんなの前で「皆勤賞」をもらいたいと思っている。学校の先生には、僕のような大人がいることも、心の隅に置いてほしいのだ。
2007.06.23
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皆様、手前に鎮座ましますのは、皆様のようなお年寄りにとっては大変に縁起の良い「ぴんころ地蔵」でございます。 今から遡ること、たった四年前。このまちの商店街の方々が重箱の隅をつつき、「商店街活性化」のお題目のもと建立されました新参者でございます。以降、物珍しさに訪れる観光客、視察団、冷やかし、要参拝対象者等の皆様で「長野県S市の観光名所として、やんややんやと賑わうようになった」とのことでございます。 本日はお日柄も良く、人っ子1人参拝者はおりませんが、それは本日の「縁起物バスツアー~近くの家族より遠くの年寄り~」にご参加された皆様の深い信心に対し、ぴんころ地蔵菩薩が痛く感動され、ほかの参拝者を追っ払ったのでございましょう。 さて、この「ぴんころ」の名前の由来をご紹介いたしましょう。特別難しいものではございません。「ぴんぴん」と元気に生きて、「ころり」とご逝去できますように-との願いが込められております。噂が噂を呼び、「うちのじいさんが1日も早くあの世に行きますように」と、人目を忍んでお参りなさる方々もいらっしゃるようでございます。 このまちは、「長寿日本一」をウリにしております。具体的な数字を言っても、皆様のようなお年よりには難しいと思いますので省略いたします。ただ、大きな声では申せませんが、なんでも昭和40年代前後は脳卒中による死亡率が日本一で、血管の「ピンピン」が「コロリ」につながったという説もございます。まぁ、いずれにいたしましても縁起物でございます。 さあ、「年寄りは盛り上がりが短い」とも申します。長々としたご説明はここまでにして、どうぞ皆様、心行くまでご参拝くださいませ。なお、お参りの際は、手を2回「ぴんぴん」と叩き、頭を深々と垂れ「ころり」とお唱えください。では、合掌。 ご参拝の後は、参道にて「ぴんころ地蔵」の携帯ストラップ、タオル、最中、お箸などのオリジナルグッズも販売しております。日頃憎まれ口を叩かれているご家族の皆様に、この世の名残にお買い求めになられてはいかがでございましょう?何と言っても縁起物でございますから、ピンピンコロリと騙されてみるのも結構かと思われます。 あら?そこのおばあちゃん、顔色が悪いですよ。はぁ?「酔止薬を飲みすぎた」って?さっきまであんなにピンピンしていたんだから、そのまま「コロリ」と逝かないでくださいね!縁起悪いですから。
2007.06.22
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「このガキ!」が口癖の後輩YK君は、頭のてっぺんが1cm、横が3mmのヘアスタイルを、週1回の床屋で維持している。宴会に出かける時は、紫のスーツを身にまとい、ポッケに手を突っ込んでよたよた歩くので、僕はなるべく近くに寄らずに「この人、僕のお友だちじゃありません」と、無言のアピールをするようにしている。 後輩や家族に対しても「このガキ!」と呼ぶ。この前も、小学校4年生の長男に向かって、「おい、かっちゃんさんにちゃんと挨拶しろ!このガキ!」と、小さな坊主頭をペシッと叩いていた。 何を考えてのことか知らないが、YK君は空手道場に足繁く通い、心身ともに「このガキ!」の凄みを鍛えた。TPOを無視して「グー」にした両手を開き、「ウッス!」と挨拶するのは、道場で教えられた作法だ。 この春、彼は酔っ払って転び、右腕を骨折した。首から吊るした白い包帯に向かって、「ったく、このガキ!」と怒っていたが、そんなおまじないが通じてか、今ではすっかり完治。空手道場を辞めたのは、骨折したショックがあったからに違いないけど、道場で発散していた「このガキ!」が、夜のチマタのあちこちで発せられている今日この頃である。 で、今夜は「岩ガキ」を食べた。今が旬である。大人しく食べるために、YK君は抜きである。小料理Aの、見事な一品である。 焼いて食べるのもいいけど、やっぱり生が一番いい。ツルッと来るのど越しが、YK君の頭を髣髴とさせる。味?味は言うまでもない。それこそ、「この、岩ガキ!」と叫びたくなる代物である。ウッス!
2007.06.21
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ほんの5年くらい前。この飲み屋街の端にある小路は、夜になると香水の匂いを風に乗せて街中に運んでいた。店の扉が東西南北に向いた3坪ほどの店が、雑草のようにひしめき合って、独特の集落を形成していたのだ。 この集落を支えていたのは、遠路はるばる外国から来た、冬でも肌をさらすお姉さんたちだった。こんなに狭い小路なのに、灯りに寄って来る虫のように、お父さんやお兄さんたちの往復が絶えなかった。今考えれば、パヤパヤ話すお姉さんたちにとっては、広々とした繁華街よりも、こういう小路の方が棲みやすかったんだろう。 ちょっとした噂が、風に乗る香水のようにチマタに広がると、お客さんも増えたけど、警察や入管の手入れも多くなった。それから程なく、香水の匂いはお役人たちの振りまく消臭剤でかき消された。匂いが消えて、この小路の命も消えた。 僕も、この小路には何度か、というか無理やり拉致された。で、店に入ると知り合いや近所のおじさんなんかもいて、この狭い小路が余計に窮屈に感じた。その後、僕の足は自然と小路から遠のいた。 久しぶりに今日、この小路近くの中華料理屋さんで昼食を食べた。小路の様子が気になって、細長く曲がる迷路を歩いてみる。シャッターや扉は閉まっているが、昼間の明るさが入り口に生い茂ったペンペン草や、「入居者募集」と書いた不動産屋のビラに、真っ白いスポットライトを当てている。取り壊された店もあって、風通しだけは良くなっている。あれだけ匂っていた香水の風は、どこから吹き抜けていたんだろう?代わりに漂うカビの匂いが、死に際の老人のようで、何となく哀れだった。
2007.06.20
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飲食店で、最初に運ばれてくるものと言えば「お冷」。よほど効率的に手を抜いている店でない限り、万人がお目にかかれるサービスだ。ただ、お冷1つとっても店の形態やサービス度合い、そこに見え隠れする店主の生き様などが見えてくる。このほど、僕ら有志が行った「お冷実態調査」の経過報告を、この場をお借りして行いたい。 ステンレス製のポットを着席と同時に運ぶ店は、概ねレストラン系が多い。この場合、ポットが汗をかいているかどうかがポイントで、調査隊メンバーは「できれば汗をかいていないものが良い」との結論に達した。使いまわされた形跡がないというのがその理由。喫茶店の場合、テーブルが小さいのでポットはジャマになるが、お冷の補充で長居できるということがポット据え置き型の特徴だ。 同じ据え置き型でもプラスティック、特に緑色系のポットは中華料理店で幅を利かせている。中にウーロン茶を入れている店もあって、つい「もう1杯」を誘う。ただ、コップもプラスティックが使用されているところもあって、今ひとつ味気ないのが玉にきずだ。 さて、我々調査隊員が「お冷の伝承文化」と位置づけているのは、場末食堂のお冷である。ビールメーカーの名前が記されたグラスに、7分目まで注がれた水道水が僕らの心を捉えて放さない。氷は、製氷機なんて立派なもので作るのではなく、家庭用冷凍庫の中で白々と固形化している。当然、グラスには指紋の跡が付いていたりするが、場末な雰囲気をかもし出すには、充分な心配りといっていいだろう。 今日の昼食は場末食堂Iだった。運ばれてきたお冷は「正に伝承文化系」。一気に飲み干すと、おばあちゃんは「これ置いていくねぇ」と、汗だらけの魔法瓶をテーブルにドスン。魔法瓶の蓋ははずれかけ、ガムテープの上には店の名前も書いてある。あまりに完璧なお冷サービスに、僕は背中に一筋のお冷が流れるのを感じた。
2007.06.19
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クリーニング業を営むK君が、宴会後に「かっちゃんさん、僕の修行を見てください」と絡み付いてきた。日頃の素行の悪さを反省してか、K君は自らの肉体に鞭打って、新たな新境地を探ろうとしているようだ。それを彼は「修行」というステージに求めている。僕は、そんな彼の精神の旅立ちを見守ってあげようと思った。 修行の儀式は「火渡りの神事」とのこと。既に、彼は日本酒やビールなどの「お神酒」をずいぶんとやっつけている。この神事には、相当量のアルコールが必要らしい。いつしか焦点が定まらなくなったK君の視線に、僕は返す言葉を失った。今日は、神事に臨む装束を忘れたので、普段着で行うという。「じゃ、いいすか?」の掛け声の後、彼は火に向かって走り出した。 それでは、K君の「火渡りの神事」、トクとご覧ください。 K君は、「ぅあちち、あちち」の呪文とともに、時折赤く光る白い炭の上を歩く。それも数回。修行会場を囲んだ仲間は、そんなK君を笑い声で包んでいる。何と素晴らしい男の世界だろう。K君はフラフラになりながらも、「火渡りの修行」を続けるのであった。 涙の修行の後、K君は僕にそっと足のウラを見せてくれた。 どうも、焚き火の中に、針金のような灼熱の物体があったらしい。横一線に黒く焼け付いた跡が、今回の修行の厳しさを物語っている。 心頭滅却すれば火もまた涼し。というか、人道脱却すれば人の顔は涼し。この神事は、酔っ払いだけが許されるので、良い子のみなさんは決して真似をしてはいけない。
2007.06.18
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川で子どもを見かけることは、信州だってめずらしい。学校からして「川で遊んではいけません」なんていうオフレを出しているところもある。「夜のチマタで遊んではいけません」ならわかるけど、白昼堂々と水に触れて何が悪いのかな。大体、見張り番の先生もいないのに、「いけません」ていう見張り板に一任する姿勢が味気ない。 仲間のグループで、アウトドア遊びをすることになった。子どももいっしょに参加させたいという。僕は、地元の川で遊ばせる絶好のチャンスと思い、子どもたちに遊ばせる魚を捕獲しようと、昨夜のうちから魚捕りの仕掛けを川に残してきた。 早朝、仕掛けを引き上げたら小さなナマズが3匹。こんなこともあろうかと、川魚の卸をやっているT君に「生きたウナギを持ってきてね」と頼んでおいたので事なきを得た。 生きたウナギを触った経験者は、大人だって少数派だろう。あのヌルヌルとした肌や、クネクネと手からすり抜けていく様は、その代用品が見当たらない。乾電池じゃない動力源を持った融通の利かない生き物が、子どもの歓声と感性を高めるのだ。よし、見張り番の先生を買って出よう。 予想通り、ウナギはこの日の人気ものになった。子どもが寄ってたかってイジリ回すので、「さあ、川に返してあげよう!」と放した時には、ウナギのくせにバテバテで、蒲焼を進呈したいほど瀕死の状態に陥っていた。 バテバテだったのは僕も同じ。遊び友だちに子どもはいないし、これといった理由もなく泣いたり騒いだりする人種の扱いに慣れていない。生ビールと酎ハイと日本酒とワインが全身にまわり、川を後にした僕の足取りは、ウナギのようにクネクネした。
2007.06.17
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-「ドキュメント・川の男」の最終回は、千曲川で川漁師になることを夢見て日夜漁に励んでいる、かっちゃんさんとSさんです。よろしくお願いしまーす。 「あいよ」 -ところで、お2人は今何をしてらっしゃるんですかぁ? 「んなもの、漁に決まってるべぇ?どう見たって阿波踊りには見えねぇべよぉ」 -それもそうですね。で、何の漁をしているのですか? 「ウナギ漁だべよ。明日、とあるイベントで使いたいって注文があっただよ。んで、オラたち川の男に白羽の矢が立ったってアンバイだぁ」 -なるほど。で、こちらにはウナギ漁に使用する仕掛けがありますが...。あら?もうこんなに獲れているじゃないですか! 「そいつは違うべ。それはドジョッ子だべよ。そいつでウナギっ子とっ捕まえるだぁよ。お宅、ドジョッ子知らねえのけ?」 -それは失礼しました。それでは、この漁の仕組みを教えていただけますか? 「んだ。まずはよ、針がいくつも付いた長い仕掛けによ、えさのドジョッ子を引っ掛けて川にほん投げるだよ。んでもって、明日の朝に仕掛けを上げに来るって寸法だぁ」 -お2人は、川漁師になることを夢見ていられるそうですが、その理由は何なんでしょうか? 「それはよ、世の中『川漁師』って少なくなってるべ?んでもよ、海の漁師なんかは『海の男』って持ち上げられるけどよ、オラたち川の男はファンレターの1通も来ねえだよ」 「んだ。川に来るのはジイさまばっかりでよ、若い衆なんか顔を背けるべ。んで、オラたちは川漁師復権に向けて立ち上がっただよ」 -なるほど。で、これまでに何匹くらいのウナギを捕ったんでしょうか? 「何匹って言われても困るけどよ、正確に言うと1匹も捕ってねえだ」 「んだ。ウナギはよ、ヌルヌルしてるべ?だからよ、オラたちの手から逃げちまうだぁよ。んで、さっき友だちのウナギ屋に電話してよ、そーっと注文しといただよ」 -えーっ?それじゃ川漁師どころか川ペテン師じゃないですか! 「シーッ。声がデカイだよ。んなこと人に聞かれたら川の男のメンツ丸つぶれだべよ!へば、オラたち漁が終わったから、これから一杯やりにいくべぇ」 「んだ、んだ。美味い酒かっくらって、ウナギの山の夢でも見るべ!」
2007.06.16
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夕方、辺りがオレンジ色の空間になっていたので、ふと西の空を見上げたら、こんな模様になっていた。 梅雨に入って、いきなりこんな空。遠くの雲は夕日が当たり、近くの雲は灰色にちぎれている。絵の具をこぼしたような雲の向こうに、暮れかけた青空のキャンバスができあがっている。なんか、吸い込まれるようだな。 昼間は暑かったから、頭の中は僕の住むまちにはない「ビアガーデン」が恋しくなっていた。ちょうちんかなんかがぶら下げてあるデパートの屋上とかで、ハワイアンでも聴きながら、枝豆とか鳥のから揚げなんかで生ビールを「プハーッ」ってやりたかった。 でも、こんな空を見ると心のざわめきが落ち着いてしまう。夕空をツマミに、1人寂しく飲んでいる方がオツかな。今日の夕空に負けないような「モノを言う男の背中」でも作ることにしよう。
2007.06.15
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近所の土手に申し訳なさそうに佇んでいる桑の木に、実が付き始めた。子どもの頃に食べた記憶はあるけど、さすがに最近は食べなくなっちゃった。 「山の畑の桑の実を小籠に摘んだはまぼろしか」...は、赤とんぼっていう童謡の歌詞。桑の実のノスタルジックな面影は、記憶の断片からにじみ出てくるこの歌から来る部分が多い気がする。 そういえば、ノスタルジックなものって意外と売られていないな。思い出とか、記憶とかって商品にならないものだし、だからこそ尊いんだな。桑の実も、そんな感じでノスタルジックな思い出となって色付きはじめてきたということか。僕の齢になると。 で、「スーパーで売っていないものは食材ではない」という昨今。そんな風潮が鼻に付くので、桑の実がもう少し色付いたら、こっそり摘まんでみようと目論んでいる。
2007.06.14
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読んでいる内容はソフトなのに、ハードカバーの本ばかり買っていたのが僕の書籍購入の遍歴。文庫本に比べて文字も大きいし、本棚に仕舞った後も、苦労せずに探し出せる。幅はとるけれど、腐るものでもないので積み重ねておけばいいし。 ところが、横になってゴロゴロしながら読書をする僕は、時にハードカバーの重量と大きさに悩まされる。うつ伏せ→右下→左下→仰向け...体勢を変えながらの読書なので、ハードカバーは腕や手首、指の筋肉への負担が思いの外かかるのだ。大体、1冊の本を集中して読むことが多いので、筋肉痛になったりもする。 こうなってくると、読書に集中できなくなる。思わずウトウトし始めることもあって、仰向けで読書している場合は、突然顔の上に本が落ちてくることがある。危険だし、本の顔も見たくなくなって、「おまえなんか、絶対読んでやるもんか!」となるのだ。 最近になって文庫本のありがたさが身にしみるようになった。 だらしない格好での読書にも耐えられるだけのコンパクトさがいい。小さな文字にも慣れ、とっさの改行にも目が付いていくようにもなった。教科書の表紙に通じるような地味なカバーデザインが作品のイメージを貧困にするけど、手のひらに隠してしまえばどうってことない。 で、この2日間で、あれよあれよと言う間に2冊半まで読んでしまった。ハードカバーの筋肉痛からは解放されたけど、若干の寝不足にさいなまれている。
2007.06.13
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信州は、HIV感染者の対人口比が全国2位であるそうな。1位は東京だけど、地方出身者が多いことを差し引けば、事実上のトップは信州ということになる。信州人として、とても自慢できることではない。夜、とある講演会でそんなお話を聴いた。 感染者の多くは性行為感染。外国では、感染者が関係した人をしらみつぶしに探し出し、感染の疑いがあることを告知する国もあるらしい。日本がそこまで至っていないのは、こういった分野では、もともとオープンではないお国柄だからかな。それだけに、「しらみつぶし」はご法度なのだ。 といった流れから、「しらみ豆腐」を食べに行く。 一膳めしAという老舗の逸品。ここの手作り豆腐は硬くて、お皿の上に長々と置いておいても水がにじみ出ない。この豆腐に入っているのが、「しらみ」のように見えるゴマなのだ。しらみを潰すようにしてチビチビ食べると、チビチビ飲む酒に絶妙にマッチする。 で、僕は「しらみ豆腐」という呼称を、この店以外でお目にかかったことがない。ほかの地方でも、「しらみ豆腐」が存在するのかどうか、今後しらみつぶしに当たってみたい。
2007.06.12
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そばの花は、朝早く咲き始めるという。久しぶりに太陽が顔を出したので、近所の畑にそばの花を見に行こう。 そばの花は地味だけど、目ざとく咲き始めた花の頃合を見計らって、虫たちがどよめきだした。ミツバチなんかも寄って来て、せっせと受粉作業を進めている。 よーくできた自然の法則を、誰に頼ることなく遂行しているのだ。虫ってのは、何だか農業をしているようで面白い。「他給自足」の僕は、実に見習うところが多い。 この畑の持ち主のおばあちゃんは、作物の種をバーッと蒔いて、長々ほったらかしにする。そばの花が落ちて実がついてもそのまま。小鳥がやってきて散々食べつくした後に、ようやく収穫するのだ。 で、昨年の実績を振り返ると、そばの次はヒマワリだった。この時も映画の1シーンみたいに咲き誇るまでは良かったけど、種を小鳥が散々食べつくした後のヒマワリ畑は、まるで焼け野原のようだった。で、息子さんと思われる初老の男性が、トラクターみたいな作業車でかき回しておしまい。実にへんてこりんな農作業に精を出している。 でも、もしかしたら、このおばあちゃんは虫とか鳥のために作物を栽培しているのかもしれないな。だとしたら、「自給他足」の達人だぞ。
2007.06.11
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前日の夕方から降り続いた雨は、夜半過ぎにピークを迎えたものの、小鳥が川面を飛んだり、さえずることができるまでに落ち着いた。心配していた増水も、不思議なくらいなかった。それでも、ラジオの天気予報は、あまり縁起の良くない報せをかすれ声で放っている。 ●隊長「ウジウジしていても仕方ない。自分はこれから釣りに行くので、調理場担当のS隊員は景気の良い食事を作るように」▲S隊員「隊長、自分はハンゴウを持参しましたので、飯を炊きます。また、多少カロリーが高い肉料理として、冷やしチャーシュー、豚トロのタマネギ炒め叙々苑風、鳥胸肉のトマトピューレ・ガーリック煮なぞ、いかがでしょう?」■B隊員「自分は、七輪でアジとキンメダイの干物を焼くであります」●隊長「よろしい。皆の前向きな姿勢が、この雨雲を振り払ってくれるだろう。これぞ、『男の雨天キャンプ』なのだ」■B隊員「隊長、女性有志のT隊員が、我々の安否確認がてら差し入れを持参したとのことです」●隊長「よろしい。おお、缶ビールも持参とはなかなかの心配りだ。ご褒美に、T隊員もいっしょに食べていきなさい。あっ、そうそう。S隊員に釣りを教えてもらいなさい。きっと釣れないだろうけど」▲S隊員「隊長、大変です。T隊員がミミズでアユを釣っちゃいました!」◆T隊員「やったー!」■B隊員「アユって普通は友釣りですよね。大雨で正気を失ったのでしょうか?」●隊長「アユはコケを食べるので香りがいいが、このアユはきっとミミズの香りがするぞ。嫌な予感だ。雨でも降らなければいいが...」◆T隊員「あらっ?雨が強くなってきたので私は帰るであります!」■B隊員「隊長、満腹になりましたが、雨が強くて外出できません。できれば、再度テントの中で昼寝をしたいのですが...」●隊長「よろしい。我輩も本を読んだりお絵かきをしたが、ちょっと眠くなってきたところだ。それではテントに出撃!」■B隊員「隊長、大雨の中での昼寝もいいものでありますね」▲S隊員「寝ているうちに、この雨も止むかもしれませんね」●隊長「うむ。もはや増水の心配はなかろう。昨夜の睡眠不足を取り戻すべく、全員就寝!」......●隊長「S隊員は、増水でテントが流される夢を2度と見ないように!」
2007.06.10
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ここは、軽井沢に近いとある集落のはずれ。一面に広がる田畑の中央を、切り立った崖に囲まれた森から発した川が横切っている。その川岸に、突然テントが張られた。●隊長「よーし、全員集合したか?えへん。本日ここに集結したのは、ほかでもない。生ぬるい日常生活を脱して、男の勇気を示すためにサバイバルなキャンプを決行する。あえて設備の行き届かない場をキャンプ地に選んだのは、そのためであーる」▲S隊員「はいっ。自分は死ぬ覚悟で頑張る所存であります」■B隊員「それでは早速、隊長殿の好きな日本酒で、『男の勇気に乾杯』といきましょう!」●隊長「ところで、先ほどから雨が降ったり止んだりしているが、本日の天気予報はどうなっているか?B隊員?」■B隊員「上空に寒気が流れ込んでいるため、雨や雷雨になる確率が高いようであります。宵にかけては大雨になる可能性もあるそうであります」●隊長「なーに。天気予報ごときに男の将来を左右されてどうする?さあ、辺りも暗くなってきた。さっそく夕食の準備に取りかかれ!」▲S隊員「これはB隊員が持参した七輪であります。これでサザエを焼いてみました」●隊長「うーん、このほろ苦さがいいな。男の料理らしいぞ。貴様らも遠慮せずに酒を飲め!」■B隊員「いやあ、隊長。キャンプの夜はいいですな。自分は久しぶりのキャンプでありますから」●隊長「あれ、そうなのか?B隊員は山登りもするのに、あんまりキャンプはしないのだな。S隊員は?」▲S隊員「私も久しぶりであります。しかも、雨の日は初めてであります」●隊長「ということは、我々ほとんど初心者ではないか!まあいい、宴だ宴だ!」■B隊員「、そろそろ消灯時間にしたいと存じます。ささ、テントの中へ」●隊長「滝の音と雨の音が、だんだん激しくなっている気もするが、何とかなるだろう。万が一の事態に備え、ラジオをつけておくように。では消灯!」......▲S隊員「B隊員、自分は今とんでもない夢を見たのであります!」●隊長「な、何だ?」▲S隊員「川が増水して、テントの目前にまで近寄っている夢であります!」●隊長「ばか者!川岸からここまで充分な距離があるではないか!寝ろ!」......▲S隊員「た、隊長殿!また夢を見たのであります。今度は、タープやテントが流される夢でした!」■B隊員「ばか者!何でそんなに現実的な夢を見るんだ!隊長殿を見ろ、ぐっすり寝ているではないか!」●隊長「いやいや、私もなかなか寝付けないのだ。今、ラジオで流れたニュースでは、関東方面で釣り人が雨で増水した川に流されたらしい」▲S隊員「我々は生きて明日を迎えることができるでしょうか?」 ラジオからは、大雨や雷雨の注意を呼びかける声が聞こえてくる。だがしかし、隊長の枕元に置いたラジオの放送は、滝の音とテントに打ち付ける雨の音にかき消され、隊員の耳には届かない。隊長は、「S隊員の夢は正夢になるかも…」と思いながらも、「もう少し酒を飲んで、酔っ払った状態でないと眠れないな」と思った。(つづく)
2007.06.09
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信州・小布施は、小さいけれども元気のある町だ。栗菓子とか北斎とかで有名だけれど、僕はこの「豚まん」が好きである。高速道のサービスエリアで売っていて、通りかかる時の楽しみになっている。 釣りに出かける際、肉まんをコンビニで買い求めることが多い僕は、白い世界に包まれたジャンキーな味わいが「さあ、今日も頑張れ!」と励ましてくれるようで、好きなのだ。 ずっと以前は、冬の定番だった肉まんも、最近では夏でも売っているコンビニがある。季節感は薄らいだけど、僕にとってはありがたいピンボケで、汗をかきかき肉まんを頬張る楽しみが増えている。 ところで、「豚まん」と「肉まん」って、どこが違うのかが未だにわからない。肉質の問題か、はたまた調理法の違いか…。どちらの呼称も、親しみがわくことには違いない。「豚」でも「肉」でも、僕は迷わず大好きだ。人に関しては別だけど。
2007.06.08
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梅雨の語源はいくつかあるけど、梅が実る時期と重なるから-という説もあるらしい。日本の季節を言葉で彩る心意気がいい。で、この時期になると、なぜかアッサリしたものが食べたくなる。Iちゃんの店に行く。 この時期のイワシは「入梅イワシ」と言って、脂が乗って最高に美味い。そのイワシで梅肉を巻いて揚げてある。「梅肉」と「入梅イワシ」は漢字が共通するだけでなく、味の相性もバッチリだ。季節の味の彩りが、食欲と酒欲をそそる。 結局、この味が引き金になって酒を浴び、目が覚めたら午前8時。いつもと違う天井が僕を見下ろしていた。トボトボと家路につくなり、知り合いと遭遇。朝だというのに「お疲れー」のあいさつを受ける。
2007.06.07
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梅雨が近づくと、僕は茶香炉に火を灯すことが多くなる。ジメジメした空気が和らぐし、消臭効果もあるらしい。それ以上に、何とも言えないお茶の香りが、気分を落ち着かせてくれるのだ。 緑茶や煎茶など、茶香炉に乗せる茶の種類はこれといって決まっていない。もともとこんな趣味はなかったが、香炉に乗せるお茶の種類を替えているうちに何となく面白くなってきたのだ。 日本茶は香ばしさの中に清々しさがある。コーヒーや紅茶は、和の世界にミスマッチする香りが楽しい。まだ試してはいないけど、タバコの葉でもいけるかもしれないし、大麻系の葉っぱなんかも違った意味で脳に香るかもしれない。 ともあれ、二日酔いで半日記憶が薄らいでいた今日は、ウーロン茶を炊く。疲れた肝臓にやすらぎを与えようとしたのだが、こともあろうに最近飲んでいなかった「ウーロンハイ」を思い出し、肝臓が活性化する。茶香炉も万能ではない。やすらぎの逆効果もあることを体感するに至る。
2007.06.06
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バーで飲む時間帯はできるだけ早い方がいい-と思っている。開店直後は、2次会でなだれ込む酔っ払いグループもいないし、バーテンダーと自分の空間を作ることができるからだ。辺りがようやく薄暗くなった午後7時過ぎ、Kさんのバーに1人座る。 ハウス栽培の桃が市場に出回っているので、Kさんはベリーニを作ってくれた。桃とスパークリングワインのカクテルだ。ベリーニという名前は、ルネサンス期のイタリア人画家で、ジョヴァンニ・ベリーニから来ている。作者は、カクテルの世界にもルネサンスを求めたのだろうか。繊細な甘みとかすかな苦味の向こうに、ルネサンスの息吹さえ感じられる。んー、大人の世界だ。 なんて飲んでいる時に、クリーニング屋の若旦那K君が「どーも、どーも」とか言いながら店に入ってきた。この段階で、大人の空間は確保できない。早々に切り上げようとすると、「かっちゃんさん、焼き鳥屋なんかどうっすか?」と誘われる。なんか嫌な予感。きっと1軒で終わるはずがない。 案の定、焼き鳥屋→居酒屋→スナック→スナックのハシゴ。途中、地元消防団に入っているK君の携帯電話が鳴る。火事らしい。「でも俺、酔っ払っていて無理っすよ。飲酒運転はやばいっすから。適当に消してください」と出動を辞退したK君は、火事のことなんか気にもかけずに飲み続けている。こんなヤツを火事場に行かせてはならない。火に油、じゃなくてアルコールを注ぐようなものだ。 軟禁状態は午前2時まで続いた。無人の小屋が全焼し、ちょうど鎮火した時間だった。消防団のルネサンス期幕開けを告げていた。
2007.06.05
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私は、北欧スエーデン生まれのケトル、日本では「やかん」と呼び捨てにされています。なんだか「おかん」みたいな響きだけど、私はそこまで人生疲れていません。怪しい人たちに引っ張られて、はるばる日本まで売られて来ました。 いっしょに訪日した仲間は、みな容姿が良かったのでしょう。ご主人様に見初められ、次々と買われていきました。ところが、私は顔色が悪いのか、はたまた銀色の裸体が鼻につくのか、今日まで売れ残ってしまいました。お店の方々も私には目もくれず、身にまとっているものときたらホコリだけです。 この店に来たばかりの頃は、2000円以上の値打ちがあった私ですが、お店のセール期間中のオマケとして、980円と走り書きされた黄色い値札がつきました。いわゆる、叩き売りの道具です。こんな哀しい人生があって良いものでしょうか。それに、陳列棚の隅に放り出された私を、誰が見つけてくれるというのでしょう。 …あら?誰かが私をじっと見つめているようです。どうせ、冷やかしでしょう。「おいネエちゃん、そこで何してる?」なんてからかって、私を買おうともせず通り過ぎて行くに決まって…あっ、手が伸びてきました。 あなたお名前は?『かっちゃん』さん?男前ねぇ!何々?アウトドアで熱燗を飲むのが好きだって?私、こんな容姿だけど、容量は0.9Lあるのよ。日本酒でいうと5合の熱燗がつけられる器量良しなの。普通、私を熱燗用に買う人はいないけれど…。えっ!私を買ってくださるのですか?ああ神様、ついに私にも幸福が訪れてくれました! …これから私の新しい人生が始まります。かっちゃんさんが私の値段に目がくらんだことはわかっていますけど、そんなことどうでもいいの。ご主人様が喜ぶ美味しい熱燗を、一生懸命につくって差し上げますわ。例え、ご主人様がアルコール中毒になろうとも。
2007.06.04
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後輩S君が、EPIガスの「REVO」を買った。釣り場やキャンプで使えるコンパクトなストーブ。ストーブと言っても石油ストーブとは違う。簡単な料理やコーヒーなんかを飲むには便利な、携帯型コンロだ。「釣りやキャンプの際に役立つから」と、強引に勧めた。買った晩、彼は枕元に置いて寝たそうである。 で、さっそく試しに使ってみようということになった。とりあえず、お湯を沸かしてコーヒーを飲むことにする。ドリップコーヒーでいいだろう。最高出力が4200Kcalもあるので、お湯なんかあっという間に沸くぞ。 「あっ、しまった!ヤカンを忘れましたわ」 「えーっ、おまえ、どうやって沸かすんだよ!」 仕方がない。ステンレスのカップに水を入れて、直接熱することにする。 このカップは、中が空洞になっている。なので熱効率が悪い。ストーブは「ゴー」とうなりながら燃え盛っているのに、カップの中の水は一向に温度が上がらない。いつの間にか、取っ手のプラスティックの部分がふにゃふにゃに変形していく。 結局、ほぼ水出しコーヒーとして飲むことにする。4200Kcalの熱は、プラスティックのこげた匂いをかもし出すには充分な熱量であることを確認。無言の空間を作り出す水出しコーヒーの味は、ことのほか苦かった。
2007.06.03
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信濃と越後の国境からお伝えします。 司会「さあ、いよいよ『第2回大物釣りセミナー』も佳境を迎えております。ここからは、実況中継でお送りいたします。今、川岸ではS君が竿を出しております。前回は大物の顔さえ見ることのできなかったS君が、セミナー最後の実習に挑んでおります。申し送れましたが、解説は講師を務めておられる、かっちゃんさんです。よろしくお願いします」 解説「よろしく、どーぞ」。 司会「さて、今日のS君の調子はどうですか?」 解説「けっこう気合が入っていますよ。というのも、今朝の集合時間は午前4時だったのですが、『かっちゃんさん、起きてますか!』と電話がかかってきたのが午前3時50分。寝坊常習犯の彼らしからぬ気合の入れようですよ」 司会「なるほど、それは珍しいことですね」 解説「はい。ただ、先ほど彼が見ている前で、僕が31cmと28cmの大ヤマメを釣っているので、プレッシャーがどれだけ圧し掛かっているかがポイントになりますね」 司会「そうですか。...おっと、S君が魚をかけました!」 解説「これは大きそうですねぇ。もしかしたら、もしかしたら...ですよ」 司会「S君が、カニ歩きしながら何か叫んでます!なになに?『切れる、切れる!』?」 解説「うーん。あの慌てようからして、きっと大物なんでしょう。糸が細いので、切れることが心配なんですね」 司会「それにしてもかっちゃんさん、S君はまだ『切れる、切れるぅ』と叫んでいます。魚釣りをして『切れる、切れる』と叫ぶ人間も珍しいですねぇ」 解説「脳の血管でなければ大丈夫。放っておいて様子を見ましょう」 司会「S君が、かっちゃんさんに助けを求めているようです。かっちゃんさんも色々と指示を出していますが、なかなか魚が寄ってきません」 解説「ここで魚が下流に走ったら終わりです。S君は落ち着いてやりとりしないといけません。ここが勝負どころです」 司会「おっと、ついに魚をキャッチしました。S君が中を覗きこんでいます。まるでハチミツをあさるクマのようですね。『やったー』という声が聞こえてきます」 司会「さっそくサイズを測りましょう。おおーっ、30cm超えていますね!尺ものです!」 解説「まあ、これはS君の実力というよりも、講師の実力とでもいいましょうかねぇ。それにしても、大物はヤマメじゃなくて、講師ですね!」 それでは、お日さまの周りに虹が出ている川岸より、失礼します。
2007.06.02
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子どもの頃、おじいちゃんの家に蚊帳があった。部屋に吊られた蚊帳が面白くて、なんだかキャンプをしているようでワクワクした。ところが、はしゃいでいるうちに蚊が入ってきて、朝になると体中刺されてしまうというカユイ想い出がある。 大人になってから、さすがに「おじいちゃん家の蚊帳で泊まりたい」とは言えなくなった僕は、蚊帳との付き合いが長年なくなっている。このままでは、死ぬまで蚊帳と遊べなくなる。 …といった理論武装で、年に数回、必ず行う衝動買いの一環としてスクリーンタープを買った。「テント+蚊帳」みたいな代物で、このメーカーでは居住スペースが1番広いらしい。4人程度だったら、余裕でくつろぎの場を与えてくれそうだぞ。スクリーンタープにはもれなくバッテリーランタンが付いてきた。僕にしては、なかなかお買い得な衝動買いだったな。 子どもの頃は、お酒も飲まなかったし、「くつろぎ」の味わいも知らなかった。来週末あたり、さっそく初おろしを兼ねて仲間とキャンプに行こう。子どもの頃のようにキャーキャー遊んでやろう。オネショ抜きで。
2007.06.01
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