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あの人は今なにしてるあの笑顔 テレビに映る秋のロンドン白鳥に語りかけても返事なくハイドパークを散歩した朝作:成風下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。にほんブログ村
2021.09.30
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わしは子供のころから寝坊助での、学校時代はいつも遅刻ばかりで朝礼にも出たことがない。それで小学校の頃は「遅刻の伸ちゃん」と呼ばれていたもんじゃ。また社会人になっても遅刻ぐせは治らず、ある日人事課長に「これ以上遅刻を重ねると、首になるかもしれないぞ!」と脅されたが、それでも一向に遅刻癖は治らなかった。 まあこんなことは自慢することではなく、恥の上塗りに過ぎないのじゃが、どうしても治らないので開き直ってしまったのじゃろう。だがそのうち年を取れば、世間の年寄と同じく次第に早起きになるのだろうと高をくくっていた…。 ところがところが、いざ定年を過ぎても寝坊癖は治らず、緊張感が無くなった分だけサラリーマン時代よりさらに寝坊助になってしまったのじゃ。また最近は朝寝坊だけではなく、昼も夜も四六時中眠くてしょうがないのは歳のせいかの…。「寝るより楽はなかりけり」とはよく言ったものじゃ。とにかく何もする気がせず、眠るのが人生最大の楽しみになってしもうたわい。はは「眠り姫」をもじって「眠り爺」かの。 そんなある日、枕もとで古女房が「もう10時過ぎですよ、いい加減起きてください!」と怒鳴っているのが聞こえた。いつも朝は9時頃起きているのじゃが、10時ではすぐに午前が終わってしまうではないか。わしはあわてて起きようとしたのだが、なかなか起き上がることができない。と言うより体中が金縛りにあって動けないのだ。 ところがよく見渡すと、わしは天井に張り付いて、いつまでも寝床から起き上がれない「わし自身」を見下ろしているではないか。では寝床でいつまでも眠っているわしは、一体誰なのだろうか。またなぜわしは天井に張り付いているのだろうか…。いろいろな疑問が沸騰してきたのだが、とりあえずわしは真下に見えるわしを見守ることにした。 そのうち女房がおろおろし始めて、どこかに電話をしているではないか。そして暫くすると救急隊員が寝室に入ってきて、いきなり眠り続けているわしの胸をはだけて人工呼吸を始めるのじゃ。そのあともいろいろバタバタが続いて、担架に乗せられ救急車で病院まで運ばれた。さらにまたいくつものバタバタが続くうちに、病院のベッドに寝かされたわしの周りには、妻・長男夫婦・長女夫婦・次女夫婦、それに4人の孫たちまでが集まって泣いているではないか。 その間わしは、ずっと空中に浮かんで眠り続けているわし自身を見守り続けていた。やがて病院のベッドで寝ているわしは、お棺に移され、数日後に霊柩車で火葬場まで運ばれた。そしてわしの入っているお棺は、火葬炉に押し込まれてしまった。「ドーン!」と重々しい音を立てて、重厚な鉄の扉が閉められる。さらに点火!…。 この頃になって、やっとわしは自分が死んでいることを理解したのじゃった。すると肉体の消失と同時に、周りの景色が一変したのである。あたり一面が真っ暗闇になったかと思うと、その暗闇の正面が映画のスクリーンのようになって、なんとわしの生まれた時から死ぬまでの映像が、もの凄いスピードで映されているではないか。 ところで「もの凄いスピード」と言っても、それはわしの錯覚なのかもしれない。実にこと細かく余すところなくわしの一生が再現されているので、現世の時間で言えば80年以上かかっているはずである。ところがここでは不思議だが、ほんの一瞬で再現されているように感じられるのだ、と言ったほうが分かりやすいだろうか。 そのあとわしは宙を舞いながら、海のように大きな川を渡り始めているではないか…。もしかするとこれが俗にいう「三途の川」なのだろうか。 ここで「川を渡らず引き返しても良いぞ!」という天の声が聞こえたのだが、もう引き返してもわしが戻る肉体はない。だから天の声は無視して、思い切り川を飛び越えてしまった。 川を渡るとその先には高い門が三つそびえている。なぜかわしにはそれらが「天界」「霊界」「地獄」へ続く門だということが理解出来ているのだ。たぶん天界とは天国のことだろう、それなら誰でもその門をくぐるはず。ところが自分の意志とは反して、わしの足は「地獄門」のほうへ向かっていた。 地獄は生前に悪人だった者だけが入る場所のはず。わしはそれほど悪人ではないはずじゃが、これは一体どうしたことだろうか。もしかすると寝坊助で遅刻(地獄)の常習犯だったからからだろうか。「遅刻の伸ちゃん」と呼ばれていたしなあ。「ちこく」も「ぢごく」も発音が似ているしねぇ…。 なあんてね!それでは、おあとがよろしいようで。(^-^;作:河村道玄下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。にほんブログ村
2021.09.27
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花は咲けども 散る花もあり この世都々逸 笑って暮らそ ともに唄おう7・7・7・5、 どどいつ しゃんしゃん どどいつ どいどい 立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は 百合の花 この都々逸は別嬪さんのことですが、 立てばパチンコ 座れば麻雀 歩く姿はボウリング こちらはさすらいのギャンブラー、昭和の風景でございますねえ、、 では、コロナ作、愚作、ご披露いたしまする。 かわいそうだね 不織布マスク 口臭地獄 逃げ場なし どこに隠れた バカ殿様は テレビの向こう 志村けん 忍びの者も コロナでころり 影の軍団 千葉翁 田舎暮らしで 足腰悪く わたしゃ万年 自粛です ワクチン打てど 効くか効かぬは 時の運です 菅 義偉 野暮な説教 するんじゃないよが コロナ終われば マスク無し 自粛の穴から出られません、、、作:朽木一空下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。にほんブログ村
2021.09.24
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ひんやりと心をつかむ朝の風、聞かなくなった蝉の鳴き声冬物をひっぱり出してみたもののなかなかしまえぬ扇風機かなコロナ禍も欠かさず父母の墓参りいつしか孫と来る日願いて作:五林寺隆下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。にほんブログ村
2021.09.21
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~恋に焦がれて 鳴く蝉よりも 鳴かぬ蛍が 身を焦がす ~ なんとも、洒落た情歌でございますな、 7・7・7・5の4句 26文字を三味線の音に合わせて唄うのが都々逸なんですな。 草津よいとこ 一度はおいで お湯の中にも花が咲く、 これも、 7・7・7・5で調子がいいですな。てなことで、手前も 都都逸に挑戦いたします。 名付けて、 都都逸倶楽部『濁流』でございます。高校生の文芸クラブの『清流』のなれの果てで、随分汚れちまいましたねえ、、 では、力作、愚作、青作、ご披露いたしまする。 赤い夕陽の 校舎の陰で なにをむずむず 高校生 本読まぬのに 図書館通い そんな日もある 夏休み 恋文くるか 郵便ポスト 胸キュンさせて 高校生 誰が書いたか 偽ラブレター 本気にされて 戸惑って 負けず嫌いの 韮山の技 鈴木骨折れ 柔道部 お粗末でございました、、、作:朽木一空下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。にほんブログ村
2021.09.18
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いつの間にか 70余年も 生きてしまった 体力が落ち いろいろな病に 冒されている でも… 心の中を覗くと 少年の頃と 何も変わらない 変わったのは 身体の大きさと 頭の中だけかな 未来(あした)より 過去(むかし)ばかり 詰まっているから 作:五林寺隆下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。にほんブログ村
2021.09.15
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親友の 韮山清之助君から電話があり、浅海君が気に入りそうな幽霊市があるのでいかないかと誘われた。僕が死にたい死にたいと嘯いていて家に閉じこもっていたので、家から引っ張り出して気分転換させようとの見え見えの友情ではあったが、誘ってくれなければ、家から外に出るきっかけがつかめなった僕なので、少しは感謝していたのだ。 韮山清之助君は高校生の時から、忍者やタイムマシンなどに凝っていて、ラーメン巡りをしながら、関東一円の骨董市をめぐってはお宝を探すのを趣味にしていた。蚤の市、古市、骨董市、お宝市、ぼろ市、ござれ市、青空市、はて、どんな市が待っているのか、重い腰を上げたのだった。 「どんなお宝があるかもしれないので一応、10万円くらいは用意してきた方がいいよ」 中央線に乗って、拝島で五日市線に乗り換え、武蔵五日市という駅で降りた。その日は十五日だった、五の日に市が立ったから、五日市というのだそうだ。だが、もう、夕闇が迫る頃である。こんな黄昏時に市がたつのだろうか? 韮山清之助君はもう、俗世から離れ、自分の世界に身を置いていて、僕のことなど忘れて、ずんずん足を進めていった。秋川渓谷沿いにひっそり建つ古社に足を踏み入れる。平安時代から続く古寺で阿伎留神社という。 辺りはすっかり、薄暗くなっていた。こんな黄昏時に市が立つんだろうか? 天満宮と書かれた赤い幟が揺れていた。神社の裏手の空き地に九人の骨董屋、古物商、古道具屋やらしき人が、地面に蓆を敷き、その上に、昭和の時代の骨董品や古い家具、道具などを並べていた。 ビー玉、お手玉,めんこ、ベーゴマ、セルロイドのキューピー人形、ゼンマイ仕掛けのおもちゃ、抱っこちゃん、ミルク飲み人形、レコード、ペンタックスやニコンのカメラ、野球盤、昭和初期の映画ポスター、古い家具やちゃぶ台、椅子、炬燵、皿に茶碗、本、など、どの商品からも懐かしい匂いがした。 「この市は、幽霊市とも死霊市とも、亡者市とも言われてるんだ。昭和の時代に死んだ人から譲ってもらったものを並べている市だ。お宝があるよ、浅海君、、」 僕は神社の広場に並べらえた骨董品などを眺めながらふらついていたが、ふと、関口電機商会と板切れの看板に書かれた骨董屋に引き付けられた。 そこの主人、なにやら、ぶつぶつ言いながら、下を向いて、棒で地面に”絶望””無常””自死”などと、書いては消していた。心が病んでいるような暗い眼をした老君だった。 その、老君の前には、扇風機やラヂオ、角型ランプ、アイロン、白黒テレビ、ラジカセ、どの家電にも謂れ因縁が閉じ込められているようなレトロ感満載であった。昭和の時代、僕が小学生の頃にどこかの家にあったような懐かしさだった。 その中の、古びた木製キャビネットに釦の様なつまみがついたラヂオに僕は魅入られてしまった。其のラヂオは僕が小学生の時に家に置いてあったラヂオと同じ形をしていた。僕は、じいっと其のラヂオを見つめて、少年の頃を思い出していた。 「お客さん、あの頃流行ったテレビやラヂオの主題歌が聴けるラヂオよ、少年ジェット、月光仮面、快傑ハリマオ、とんま天狗、赤胴鈴之助、笛吹童子、快傑黒頭巾、鞍馬天狗、銭形平次、チロリン村、少年探偵団、一丁目一番地、バス通り裏、若者たち、お笑い三人組、ウルトラマン、ザ。ヒットパレード、シャボンダマホリデー、壊れかけのラジオで昭和の少年の歌しか聴けないが、いいのかい?」 僕はその昭和の時代のレトロな木製キャビネットに収まっている真空管ラヂオが欲しくなっていたのだ。そのラヂオの奥に秘められているだろう、懐かしい空気感が堪らなく欲しくなったのだった。 「いくらですか?」老君は黙って地面に12万円と棒っ切れで書いた。 「うんんんん、、」 僕は唸った、ラヂオの性能ではなく形に惚れたのだ、それにしては高すぎないか? 「安くなりませんか?」 老君は12の上に棒を引いて10に直した。僕は落とし穴にはまったような詐欺にあっているような気もしたが、韮山清之助君が側で笑いながら 「なっ、面白いだろう?買っちゃいなよ、死にたい気分が変われば安いもんだよ」と、肩を叩くので買うことにした。 家に帰ってラヂオのスイッチボタンを廻してみる。ガーガー、ージージー 、ガーガー、ージージー 電波が捕らえられないのか、さっぱり音が聴こえない。 「騙されたか?」 昔父がやっていたように、ぼんぼんと、ラヂオの頭を叩いてみた。すると、 真っ赤な太陽 燃えている、 果てない南の 大空に とどき渡る 雄たけびは 正しい者に味方する ハリマオ ハリマオ 僕らのハリマオ 突然、少々甲高い昭和の声がモノラルラヂオから聴こえてきたのだ。 僕の心は一気に少年時代にタイムスリップした。そして、少し元気が出てきた。ラヂオから次々に昭和の少年が聴いていた曲が流れてきた。優しいかあさんとうさん、兄ちゃんに弟、近所の遊び仲間の顔が浮かび、僕の部屋中に、野っ原や、めんこで遊んでいた路地の臭いが漂っていた。 それから、僕は何日もラヂオの前に座り、昭和の少年の唄を聴いていた。逃げていたわけじゃない、僕の心が休まるささやかな贅沢だった。ラヂオを聴いている時には、死にたいなんて気持ちはどこかに行っちまっていた。 本当の幸せ教えてよ、こわれかけのラヂオ君、、作:朽木一空下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。にほんブログ村
2021.09.12
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夕暮れの林の中に染み渡るカナカナカナと悲哀をこめて近づくとバッと飛び立ち驚かす死んだふりする油蝉かな蝉の声高まり終わり静まりて森の中にも夕立の降る作:五林寺隆※下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。にほんブログ村
2021.09.09
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力道山のプロレス中継を西武新宿駅前の街頭テレビで見てた頃の苦い思い出だ。西新宿の裏手、通称小便横丁(今は想い出横丁と呼ぶらしい)にある、五人座れば満席のカウンターだけの大衆飲み屋”菊乃屋”でのことだ。 その店の女給、春ちゃんは美人じゃなくて、やや太り気味、色気もないが気さくで、明るくて、会話上手、話題も豊富なので、常連の親父がかまう看板娘としては丁度いい。 その春ちゃんに、どういう理由(わけ)か、自分が気に入られたのだ。誰に対しても好いているようにみせる酒場の女給の手管かもしれないのだが、貧相な風貌の自分は今まで女という生き物から好意を寄せられたことは皆無だったので、顔や態度にはださないものの、甘美な果物に蟻が吸い寄せられるように、三日に一度はその大衆飲み屋の”菊乃屋”に通うようになったのだった。 つまみはおでんに、お新香、煮物が中心で、千円もあれば、飲んで釣りの来る店だった。赤提灯がぶら下がる小便横丁の路地にはギターの弾き語りがくることもあった。北島二郎とか五本ひろしとか前川しよきとかいう流しはプロ顔負けの歌の上手さだった。 給料日前、自分の懐が淋しいのを見抜いたのか、春ちゃんは「今日は300円でいいわよ、さっきの男(ひと)柏木町で乾物屋やってる、助平な社長さんなの、あたしのお尻触ったから、500円余計に請求しちゃったからさ、」 あっけらかんとそんなことも口にした。自分は春ちゃんの肉付きのよいが尻っぺたが好きだった。「暗田さん、趣味はなんなの?」「趣味なんて言えるほどのものは何もないけど、まあ、本を読むぐらいかな、この頃は葛西善藏に嵌まってる、」 知らない小説家だろうと、見くびっていたら、春ちゃん目をまん丸くして、 「えっ、本当ですか?、私も葛西善藏、好きなんです。どの小説の題名も意味深んで、それだけもう痺れちゃうのよ、わたしは、小説の書けない小説家を書いた”放浪”が一番好きだけど、ねえ、暗田さんはどの作品が好きなの?」 「”悲しき父”かな、”悪魔”かな、”贋物さげて”かな、いや、”奇病患者”もいいな、」 「どの作品もあなたの名前みたいに、暗い題の私小説よね、”蠢(うごめく)”なんか、自分がいじめられてるみたいに書いて、いつも自分が被害者気取りなのよね、、」 自分と春ちゃんは他に客がいなくなると、二人で葛西善藏の話をした。 二人とも葛西善藏の文学というより 暗い谷の方へ引き摺られなければ生きていけない、あやふやで危なげな生き様に惹かれてしまうのだった。「私たち似てるの? どうして、だらしなく、堕落していく作家にに惹かれてしまうのかしら、故郷の弘前に奥さん残してほかの女の人と同棲して、子供まで産まして、やりたい放題で酒に溺れ、迷惑のかけっぱなしの恥知らずなのに、、、あんな男、目の前にいたらぶんなぐってやりたいのにね、、」「そういう春ちゃんには葛西善藏は近づかないと思うがな、善藏は飲みたくて酒を飲んでるんじゃないんだ、」「じゃあ,暗田さんはどうなの?、、、 毎日飲みに来てもいいけど、葛西善藏みたいにぐしゃぐしゃに酒に溺れちゃだめよ、破滅型になっちゃだめよ、弱者の振りしないでね、暗い顔もしないで、、」「あんたたち、小便横丁の店に似合わない話をしてるわね、」 会話に入ってこれない女将は不機嫌な顔して、煙草をふかしていたが、不意に、「春ちゃん。私今日は上がるわね、後はお願いね、、」 自分と春ちゃんは飽きずに葛西善藏の話をしていて、気が付けば、時計は午前一時を廻っていて、小便横丁の提灯もほとんど消えていた。「あら、もうこんな時間、電車もうないわよ、今日は泊っていきなさいよ、朝まで葛西善藏語りましょう」 店の二階の六畳の部屋の煎餅布団に寝ころんで、茶碗酒を手に、破滅型作家の葛西善藏について窓の外が明るくなるまで話しこんでいた。「北津軽郡五所川原、弘前の松森町、行ってみたいわね、寒い所かしら、、」「雪の舞う中で津軽じょんがら聞くのは凍れそうだな」 明け方、自分の息子は多分そうなるだろうとの勝手な思い込みで、むくむくと盛り上がり、あっさり、春ちゃんの股の間に滑り込んでしまった。春ちゃんは眼尻に涙を溜めて、染みのついた天井を眺めていた。自分は汚れた灰色の闇を抱えたまま始発電車で家に帰った。 それから、自分は、罪の意識もあったのだと思う、気まずくなって、なかなか”菊乃屋”の店に入れなかった。小便横丁にまでは足を運ぶのだが”菊乃屋”の暖簾を潜る度量はなく、ごみ出しをしている春ちゃんを路地の角から眺めても声はかけられなかった。 優柔不断な自分は、西武新宿の駅前の街頭テレビの前で、なんとなく力道山のプロレス中継を見ては、不機嫌な顔をして帰路に着く日が続いた。うじうじ、怖じ怖じ、苦悶して十日目、清水の舞台から飛び降りつ心境で、 「えいっ、春ちゃんに軽蔑されたら、死んじまえばいいじゃないか、、」 目を瞑って半分やけくそ、小便横丁の”菊乃屋”の暖簾を潜った。 「いらっしゃい、」 いつもの女将の声、でも、春ちゃんの姿が見えなかった。狭い店隠れる場所などありゃしない。 「春ちゃん、突然津軽へ旅に出るからと言って、店辞めちゃったのよ、暗い顔してたから、あたし、死にやしないかと心配なの、、あの子、ああ見えても、結構繊細だったのよ。それにねえ、お店の看板娘だし、私みたいなお婆ちゃんじゃ、お客も寄り付いてくれないわ、困ゃったああ、、暗田さんとなにがあったのっ?、、、」 女将は恨めし気に自分の方を見ていた。お春ちゃんの幻を探すようにカウンターの隅の古い映画のポスターに目をやる。ふと、葛西善藏の小説に出てくる鎌倉山ノ内の愛人、おせいを思い出した。コップの冷酒を一気に飲んで、自分は小便横丁を後にした。 以来、新宿西口のその路地に足を踏み入れることはなかった。西武新宿の駅前の街頭テレビの前には人だかりができていた。テレビの画面の中では力道山がフレッドブラッシーに空手チョップを見舞っていた。 「うおぉー、、」「強いぞ力道山!」 群衆は盛り上がり、歓喜の喚声が渦巻いていた。自分は人混みに圧されながら、深い寂寥感に支配されていて、力道山も虚ろに見えた。口が”春ちゃん”と動いた。眼尻からはしょっぱい液体が毀れていた。 作:朽木一空 葛西善藏 明治20年、青森県弘前松森町生まれ。「哀しき父」「湖畔日記」「悪魔」「贋物さげて」「父の葬式」「酔狂者の告白」「蠢く者」「放浪」「奇病患者」「不能者」「死児を産む」※下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。にほんブログ村
2021.09.06
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鞍馬天狗と言えば、即座にアラカンこと嵐寛寿郎だと答える人は80歳過ぎの老人であろう。その後も数々の俳優によって演じられた鞍馬天狗だが、いずれにせよ大佛次郎の小説の中だけの架空の人物だと思い込んでいた。 ところが鞍馬天狗のモデルとなった人物が存在していたのだと言う。彼の名は、幕末に活躍した美東町長登生まれの長州藩士「福原乙之進信冬」で、なんと長登の常福寺境内に彼の墓もあるらしい。 まあそんなことはどちらでも良いのだが、最近NHK時代劇シリーズで野村萬斎が演じた『鞍馬天狗』がなかなか面白く印象的であった。久し振りに観た鞍馬天狗だったが、現代でも納得できる創り方をしていたので、途中投げ出さずに全8話を飽きずに鑑賞することができた。 ところで鞍馬天狗は黒覆面で顔を隠した剣の達人なのだが、普段は倉田典膳という浪人として密やかに暮らしている。実はこの鞍馬天狗を観て、彼こそその後続々と生まれた「覆面ヒーロー」の元祖ではないかと考えた。つまり普段は別名で正体を隠し、事件があるとヒーローに変身して事件を解決する、というパターンが継承されているからである。 そこで具体的にその覆面(仮面)ヒーローと、変身前の別名をいくつか挙げてみたい。 まず時代劇では鞍馬天狗をはじめ、かなり古くなるが次のようなヒーローたちが活躍したものである。●鞍馬天狗/倉田典膳 ●快傑黒頭巾/山中源兵衛●紫頭巾 /狩田秀麿●白頭巾/八代道伯●夜の帝王/矢車剣之介●快傑ライオン丸/獅子丸 さらに現代劇では、米国作品も含めて数多くの仮面ヒーローが登場している。●月光仮面/祝十郎●七色仮面/蘭光太郎●快傑ハリマオ/谷豊●豹の眼・笹りんどう/旭杜夫●バットマン/ブルース・ウェイン●デアデビル/マット・マードック●スパイダーマン/ピーター・ベンジャミン・パーカー そしていまだに継承されているお馴染みの変身ものとしては、元祖の8マン(アニメ)以降に幾つもの作品が放映されているが、主だったものは次のとおりである。●8マン/東八郎●仮面ライダー/本郷猛●ウルトラマン/ハヤタ隊員●人造人間キカイダー/ジロー 最後に宇宙からやって来たヒーローものを挙げておきたい。●遊星王子/ワクさん●ナショナルキッド/旗竜作●スーパージャイアンツ/大賀一平●スーパーマン/クラーク・ケント(ケントのほうが仮面(メガネ)をつけている) まだまだいろいろあると思うけど、今日はとりあえずここらへんで締めくくっておこうか…。どうも古いものばかりが多くなってしまったね。作:五林寺隆※下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。にほんブログ村
2021.09.03
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