お霊参り2

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2022.12.18
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「ホンモノ」
沙智さんの実家はお寺である。
ある日、総代が父に 『あんたんとこはホンモノだなあ』 と唸ったのである。
『ホンモノって、何が?』 沙智さんの問いに
『お前さんとのこ寺はな、霊験あらたかなことでひそかに有名なんだ。公に謳ってこそないが
口伝えで広まっている』
難しい言葉ばかりだったが、除霊の類で評判らしいことは理解できた。
けれども不思議なことに、お祓いを頼んだり護摩を焚いてもらう参拝者はいなかった。
みな、沙智さんの両親と茶飲み話をして一時間ほどで帰っていく。それだけ。
『そもそも父は鈍い性格なんです。とてもじゃないけど総代の言う〈霊験〉があるようには見えない』

小学五年の秋だった。
その日も、夕暮れに呼び鈴が鳴った。
いつもの時刻、いつもの弱々しいチャイム。近所に住む、檀家の《草本のジイ》に違いない。
『はぁい』 沙智さんが玄関へ駆けだそうとした矢先、母が叫んだ。
『開けるんじゃない』 普段の柔和さが嘘のような、鋭く冷たい声だった。

呼び鈴が、もう一度鳴った。
沙智さんは戸惑っていた。居留守を使うにしても、家の灯は庭先まで漏れているのだ。
と、ふいにチャイムの音が止まった。
次の瞬間、玄関から聞いたことがない耳障りな音が響いた。
そして音は激しさを増していく。
なのに母は身じろぎもせず、父もやってくる気配がない。
『ねえ、あれって草本のジイじゃないの。怒っているんじゃないの』
居た堪れずに訊ねる。
母は眉も動かさず 『怒っているよ。だから構っちゃいけないの』
十分ほどが過ぎ、ようやく音は止んだ。待っていたかのように母が父の部屋へと走っていく。
まもなく父は袈裟と法衣、お経の折本を手にやってきた。檀家で葬儀の際の道具一式だ。
『今夜かな、明日かな』
『たぶん、まもなくだと思います』
慌ただしく支度を整えながら、父と母が会話を交わす。その最中、廊下の固定電話が鳴った。
草本のジイが急死した・・・・との知らせだった。
すでに袈裟をまとった父が、慌てるふうもなくジイの家に向かう。遠ざかる背中を呆然と見送る
沙智さんの肩に、母がそっと手を添えた。
『あのね、ウチの仕事はこの世に未練がある人をちゃんと送り出してあげることなの。だから
生前はどれだけつきあいがあっても、死んだあとは構ってはいけないの。さもないと、連れて行かれる』
あ、なるほど・・・・
お母さんがホンモノなんだ。
そのときようやく、総代の言葉に納得したという。





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Last updated  2022.12.18 17:46:28
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