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5月12日(水)に行われた、Jリーグ第21節「鹿島アントラーズ対名古屋グランパス」の話である。得点は2対0で、鹿島アントラーズの完封勝ち。しかも、Jリーグ史上2度目の「被シュート0」の完全試合。相手にシュートを1本も打たせなかったのである。DAZNでダイジェストを見ても、ほとんどが鹿島の攻めているシーンばかり。今年の鹿島の前半におけるベストゲームだったといえよう。ボール支配率は互角だったにもかかわらず、名古屋は攻めることができなかった。ボールを持ってもすぐに囲まれて、効果的なパスを出すことができない。苦し紛れのパスは鹿島に回収され、名古屋のディフェンスはラインをあげることができなかった。鹿島の選手は、誰一人休まずサボらず、プレスをかけ続けた。その中でも出色の働きをしたのは、トップ下で使われた小泉慶だった。前々回このコラムで取り上げた小泉進次郎は、中身空っぽの張りぼて大臣だったが、同じ小泉でもこちらは中身ぎっしり、無尽蔵のエネルギーで最高のパフォーマンスを繰り広げた。今年のJリーグのスケジュールはコロナの影響、ACLの変則スケジュールなどで、タイトなものとなり、週2試合の連戦が続いている。それでも週末はリーグ戦、平日はルヴァンカップという具合に分かれていたが、今回はACLの関係で水曜なのにリーグ戦(第21節を前倒し)となった。4月17日から指揮を受け継いだ相馬監督は、過密密偵をにらんでルヴァンカップ戦は、キーパーも含めてほとんどのポジションの選手をターンオーバーして使ってた。控えとは言えど鹿島の選手は能力型が高く、ルヴァンカップは予選首位通過でいい結果を残していた。しかし、今回はリーグ戦である。前節(5月9日)のFC東京戦は快勝しているので、サッカーのセオリーから言えばメンバーは変えない。しかし、今後も連戦が続くことも考えると、けがの心配もあり無理はさせられない。どうするのかと思ったら、前節から6名を変えた。連続出場は沖、町田、犬飼、常本、土居。キーパーとDF3人、そして急造トップの土居。鹿島は現在CFのエべラウドと染野が離脱中、上田のみベンチにいるが、怪我上がりで無理はさせられない。ということで、本来トップ下の土居を前節からトップに起用しているている。驚いたのはトップ下(OH)の人選である。なんと鹿島入団以来ほぼRSBだった小泉が、いきなりトップ下という奇策であった。トップ下は小学校以来と、本人も驚いたという。ふたを開けるとこの起用が面白いように奏功した。前半は裏に抜け出したり、間で受けようとしてたりトップ下の動きをしてたが、先制点が取れた時点からプレスに専念する決心をしたようで、激しくボールを追い始めた。ボールのいくところいつも小泉がいるという、何人小泉がいるんだ状態が生まれる。右サイドでボールを追ったかと思うと左サイドにも出現し、ボールめがけてプレスをかけまくり、自陣近くも猛然と襲い掛かってピンチを防ぐ。名古屋の選手は小泉に追われると、苦し紛れのミスパスを連発、鹿島の選手の足元にボールがやって来る。このまま走って走って90分。小泉の走行距離は13.4キロ。ちなみに2位の鹿島のディエゴピトゥカ(DH)と名古屋の稲垣(DH)が12.4キロ、これでも多い。走行距離が多いのはDHとかSBで、普通トップ下と言われるOHは走らない。しかも、スプリント回数が41回。これも2位は鹿島の常本(SB)と名古屋の前田(FW)で25回。どちらも2位を引き離しての断トツの走りだった。バルセロナのメッシを見ればわかるように、OHは走らないでスペースでボールを待つことが多い。しかし、小泉は走る走る、ボールのいくところどこへでも走る。今後、小泉がどのように使われるかは監督次第だが、この試合に関しては、まったく新しい選手起用であった。小泉慶のコメント「自分があそこで、例えば太郎とか聖真君とかヤスさんとか、そこのポジションでやっていますけど、僕がそれをやるというのは厳しいなと思ったし、でも監督が求めているのはそこじゃないと思っていました」「あそこの位置で何ができるのかっていうよりかは、やっぱりきついことだったり、後ろに戻ってチームを助けるとかそういうのに徹しようとは思っていました」「僕は本当に鹿島が勝つために、きついときにどれだけ助けるっていう部分だったり、攻撃でも守備でもアグレッシブにプレーできればいいなとは思います」『スポーツ報知』の採点&寸評で、MOM(マン・オブ・ザ・マッチ)はバースデイゴールした犬飼でも、ディフェンスを切り崩してゴールした杉岡でもなく、選んだのは小泉だ。MF小泉慶【7・5】独壇場。走行距離13・5キロ、スプリント41回のトップ下なんて聞いたことがない。NYタイムズに取り上げられ、情熱大陸に特集され、紅白歌合戦の審査員席に座れるレベル。MOMまさに絶賛だ。小泉慶が鹿島アントラーズに加入したのは2019年の7月、シーズン途中だった。この年の鹿島は大岩剛監督時代で、前年はACL優勝という輝かしい歴史を持つ。ところがRSBは、内田、伊東が故障気味で、左右両方できる安西が海外移籍、DHの永木がコンバートされて急場をしのいでいる状態だった。そこに柏レイソルから小泉が呼び寄せられた。連れてきたのは現在ヘッドコーチをしている熊谷浩二、当時はスカウト部長。熊谷も僕好みの渋い選手で、無尽蔵の働きをするDHだった。自分と同じ匂いのする小泉の才能を見抜いたのだろう。柏ではベンチにも入れなかったのだが、実際に鹿島でのプレーを見て驚いた。実に真面目に、上下動を厭わず90分平然と続ける。体はそんなに大きくはないが、体感は強そうで対人は負けない。こんな選手がベンチ外だったとは、柏はどんだけ選手層が厚いのかと驚いたが、単にチームカラーが合わなかっただけかもしれない。鹿島のレジェンドSB奈良橋との対談で、鹿島向きだと評されている。奈良橋いわく「自分が言うのもなんだけど、顔が鹿島向き」ということなのだが。鹿島アントラーズの背番号『2』は、わずか3人しかいない。そのレジェンドは、ジョルジーニョ、奈良橋、内田。2018年に鹿島に復帰した内田篤人は昨年引退した。その引退会見で引退理由を次のように語った。「練習中もけがをしないように少し抑えながら、ゲームでも少し抑えながらというのが続いていた。たとえば永木、小泉慶、土居くんとかが100%やるなかで、その隣に立つのは失礼だなと思うようになった。鹿島の選手としてけじめをつけないといけないと感じました」鹿島の選手は、練習からバチバチやり合うというのは有名だ。その中でもこの3人はすごかったということだろう。そこに移籍2年目の小泉の名が入っていた。名指しされた小泉は次のように感想を述べた。「チームのミーティングで、篤人さんが自分の名前を出してくれました。経験のある選手から名前を出されるのはうれしく思いましたけど、あの人自身も100%でやっていたし、僕もなかなかベンチに入れなくて、一緒にトレーニングする機会も多かったので、すごく励まされるというか、常にプラスになる言葉を僕に言ってくれていましたし、頑張れました。だからこそ淋しいし、そんなことは言ってられないんですけど。本当に、そういう人の思いも背負って今後、サッカーをやっていかなければいけないと思います」真面目ごちごちの人柄がにじみ出ている。相馬監督に代わって、RSBは大卒ルーキーの常本がほぼ固定されて使われ、試合を重ねるごとに能力を開花させつづけている。ザーゴ監督が使っていた広瀬も控えている。本来のポジションであるボランチ(DH)は、レオシルバ、三竿、永木がいる上に、ディエゴ・ピトカがブラジルから加わり渋滞している。トップ下も才能ある選手がそろっているから、特別な事情がなければ難しいのが現状である。鹿島にいる限り、激しいポジション争いは続くだろう。しかし、小泉慶はこれからの鹿島に必要な選手である。どんな時、どんなポジションでも彼はやってくれるだろう。鹿島のサポーターは、みんなそれが判ってるから、信じてるから。
2021年05月21日
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小林エリコさんの自叙伝小説『生きながら十代に葬られる』を読んでいて、ある記述からふらっと思考が横道にずれていった。小林エリコさんの著書はこれが3冊目(コミックを含めると5、6冊になる)。1冊目の『この地獄を生きるのだ』に衝撃を受け、友人にも紹介した愛玩書である。ざっと内容を紹介すると、小林エリコさんはブラック会社で極貧生活に陥り、精神を病み自殺未遂を起こし、精神病院に入院することになる。精神病院というワードから、この書を知ることとなったと思う。精神病院を退院し、生活保護生活から脱出し、平常の生活を取り戻すまでの話である。精神病患者側からの告発に近い内容で、改めて”精神病”とは何なのかを問う。本文についてもっと紹介したいのだが、今日のテーマは違うところにある。『生きながら十代に葬られる』は、『この地獄を生きるのだ』に描かれるOL時代より前の時代、十代のころのエピソードが描かれている。いじめを受け、周囲から孤立し、苦悩を重ねる中学時代。その中に、「ジャニスの歌」という章があり、父親の影響からジャニス・ジョップリンが好きだったという記述があった。 ジャニスの衝撃をなんといえばうまく伝えられるのだろう。とにかく、私の知っている世界には存在しない歌手だった。私が知っている女性歌手というのは、きれいな声で恋の歌を歌うような人しかいなかったのである。それなのに、ジャニスは顔を歪め、苦悶の表情を浮かべながら、「人生は辛い、苦しい」ということを必死に歌っているのだ。酒とタバコのやりすぎで喉は嗄れて、ガラガラのハスキーボイスだった。女は常に美しさを求められる。綺麗な長い髪、スラリとした体型。加えておおきな目やピンク色の頬。しかし、ジャニスはそのどれも持っていなかった。髪の毛はパーマなのか、くせ毛なのかワサワサとして、手入れしていない長毛犬のようだし、太ってこそいないが、顔はどちらかといえば美しくない。それは、化粧をしていないせいもあるかもしれない。女の顔など、ほとんどが化粧でごまかされている。ジャニスはあるインタビューでこう答えている。「私は化粧もしないし、ブラジャーもしない。嘘をつきたくないから」 成人しているジャニスがはっきりこう答えるのを聞いて、私もジャニスのように嘘のない人間になるのだと心に誓った。私にとって正直であるということはこの世で一番美しいことだったからだ。ジャニス・ジョップリンは1943~70年、27歳の若さで亡くなっている。名前や曲は知っているけど、僕の年代(1956年生まれ)では過去の人で、一回り上の世代にファンが多いと思う。小林エリコさんは1977年生まれなので、お父さんはその年代だと推測される。そして、今回のテーマである『ジャニスを聴きながら(1975年)』は、僕もよく聞いた曲で、作者である荒木一郎は1944年生まれ、まさにジャニス世代と言える。ようやく本題に入るが、小林エリコさんの小説から、僕は『ジャニスを聴きながら』に発想が飛び、無性にこの曲が聞きたくなった、というところから始まる(何が?)。荒木一郎は、今は当たり前のように存在する、”シンガーソングライター”の走りのミュージシャン(俳優)で、デビュー曲の『空に星があるように』は1966年。僕の中では、同時期に登場した『君といつまでも』の加山雄三とシンガーソングライターの草分け的存在として双璧をなしていた。加山は1937年生まれなので、もう少し大人だったが、小学生の僕には区別もつかず、二人ともヒーロー的な存在だった。二人とも好きだったのは確かだが、健全な加山雄三より、ややアウトローな荒木一郎の方が心情的に憧れるところがあった。そしてこの『ジャニスを聴きながら』の不健全な危険な雰囲気は、青春期の反体制的精神を醸成していくのであった。という話はまた今度にして、今回の本当のテーマはこの歌の冒頭の詞の部分の話だ。♪街はコカ・コーラ 故郷は売られていた~と歌われているが、僕は、この歌を口ずさむときは、♪街はロードレース 故郷は売られていた~と歌っていた。それで混乱した。コカ・コーラのバージョンも知っていたけど、なぜロードレース?この謎に引っかかった。いろいろサイトを見てみると、歌詞にツーバージョンあるということまではわかった。コカ・コーラの商標が使えなかったのか、紅白に出たとき変えさせられたのか(山口百恵の『プレイバックパートⅡ』の「真っ赤なポルシェ」が「真っ赤な車」に変えさせられたように)。経緯はわからないが、とにかく僕は何故かロードレース派だった。それでさらにYouTubeを検索して、謎が解けた。『ジャニスを聴きながら』は後に、あおい輝彦によってカバーされていたのだ。あおい輝彦は、現在芸能シーンを牛耳る「ジャニーズ事務所」の原点となるその名も「ジャニーズ」のスター。ジャニーズは4人組ユニットで、歌って踊って芝居をする、すでに現在のジャニーズグループの姿を形成していた。あおい輝彦はメンバーの一人であり、トップの人気を持ったスターで、後に俳優としても数々の実績を持つ(例えば『犬神家の一族』の犬神佐清)。そして、あおい輝彦バージョンこそが、ロードレースだったのだ。なんと、僕の歌っていた『ジャニスを聴きながら』はあおい輝彦バージョンだった。調べてみるとあおい輝彦バージョンは1977年発売、僕はもう21歳。不思議だが、そんな年齢でアップデートした歌詞が定着していたなんて。この時期に、僕はあおい輝彦バージョンの『ジャニスを聴きながら』を歌っていたということになる。ここで僕の推理は飛躍した。僕も好きだったが、その時付き合っていた彼女があおい輝彦を好きで、そこで『ジャニスを聴きながら』があおい輝彦バージョンに上書きされてしまったのだろう。とすると、その彼女はあの娘だ。そうだったかもしれない。あの時期の記憶が、失恋という負の経験で、まるっと消失していたようだ。失恋の痛みが、楽しかったはずの二人の思い出も封じ込めた。そういうことならあり得る。それなのに何故か歌だけは脳裏に残っていた。改めて考えると、この歌に込められた不条理が、実体験によって深く刻まれているような気がする。最期にジャニス・ジョップリンの代表曲を余談ながら、『ジャニスを聴きながら』のジャニスを、ジャニス・イアンだと思っている人もいるかと思う。ジャニス・イアンは僕も大好きで、青春時代におけるインパクトも大きかった。しかし、ジャニス・イアンのデビューは1975年『17歳のころ』なので、ジョップリンの方が時期的にあっている。ということで、僕の大好きなジャニス・イアンも載せておきます。どうせなら、大好きなドラマ『岸辺のアルバム』に乗せたものを載せました。
2021年05月14日
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