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弁護士を含めた法曹関係者は,文書作成のことを「起案」という。そこにはなんとなくのカッコ良さがただよう・・・ような気がする。僕が「起案」という言葉を初めて使ったのは司法試験に合格し,司法修習が始まった頃だ。「起案」という言葉を口にするだけで,法律家になったような気分になったものだ。ところが,この「起案」はたちまち嫌な言葉ランキング上位にランクインする。つらいからだ。きついからだ。苦しいからだ。そんなこんなで『起案添削教室』を読んだので感想を書いていこう。弁護士はこう表現する 裁判官はここを見る 起案添削教室 [ 柴崎哲夫 ]内容的には牧田弁護士が,弁護士の感性から本文を執筆し,各章の終わりに柴崎裁判官がコラム的な解説を挟むという形式。いくら弁護士の目から見て良い起案でも,裁判官の目から見てどうかな,という多角的な視点から起案というものを学ぶことができる。そんな本書の目次は以下の通り。第1編 基礎知識編 1章 なぜ文章作成術が必要なのか 2章 文章作成の約束事 3章 メールの文章術第2編 実践編 1章 裁判外の書面(内容証明や関係者宛て手紙の起案) 2章 裁判上の書面(訴状,答弁書,仮処分申立書の起案)どうだろう。極めて実践的であることが分かる。第1編,2編を通して素晴らしいのは,まずはいったんダメな例を示した上,良い例を示してくれるところ。社会に出るとよく「正解はない」という問題にぶち当たるのだが,起案もまさにそうだろう思う。人によって好みもあるだろ。ただ,不正解というのは往々にしてあるものだ。また,司法試験の勉強中につくづく思ったけれど,成績優秀者の論文というのはあまり役に立たないのだ。特に何の感想も出てこない。ところが,ダメな論文のダメな点を,どうしてダメなのか,そしてどうしたら良くなるかをやるというのは,ずいぶん勉強になった記憶がある。結局,正解がない問題にも不正解というものは確実に存在するわけだから,不正解の事案を知っておくことこそが上達するための方法になるのかもしれない。そんな本書の見どころといえば,弁護士と裁判官の目線からの説明があるところ。この柴崎裁判官は決してイエスマンではないので,たまに牧田弁護士の書いている本文に否定的な見解を示したりもする。たとえば,牧田弁護士は「1文を短くするように」と言うが,柴崎裁判官は公文書に限定してだが,「文章を短めにすればわかりやすさの点は相当クリアできると思われるが,格調の高さを維持しにくくなってしまう傾向があることもまた,否定できないのではないか」とちょっとした反対意見を唱える。こういったところ,起案における画一的な正解のなさ,立場の違いが見えていて面白い。具体的な文章術について色々な点で活用できるものが多いのだが,2つほど見ていく。1つは,「接続助詞の’が’」は使わないというところ。接続助詞の「が」は否定の「しかし」の代用しても使われるが,そうではなく「一度謝罪に伺いたいのですが,ご都合はいかがでしょうか」のように「留保・抑制」を表す場面でも使う。曖昧で,使い勝手がよいために多用すると,論理の流れが曖昧になるから,いっそ使うな,というのだ。なかなか,面白い指摘だと思う。2つは,余計なことを書くな,という点。結局,何が大事か把握し,何を書いて何を書かないかの判断が大事だよ,という話である。なお,本書は学習のためにもいいが,牧田弁護士の文章は堅苦しくないし,ときおり読者の興味を引く話題を入れてみたりと,読み物としても面白い。特に架空の事案についてはけっこう凝っていて,交通事故の当事者が「松田日乃」と「豊田昴」だったり,離婚事件の当事者が「白馬応治」と「白馬雪子」だったりする。牧田弁護士の遊び心が見えてきて,ときおり笑いながら読んでしまった。弁護士はこう表現する 裁判官はここを見る 起案添削教室 [ 柴崎哲夫 ]
2020.02.26
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世間様は天皇誕生日の振替休日ということで休みなのだが、キン肉マンは普通に更新されてた。 実はこのブログ、仕事の昼休みに書いてる関係上、休みの日の方が更新が遅れるのだ。仕方ないね。 さて、今週のキン肉マンだけど、ジャスティスマンが大活躍である。横綱相撲というのはこういうことを言うのか、と圧倒し続ける感じ。 個人的に爆笑したのは、サタンが長台詞を始めたところ。ここで、ジャスティスマンは台詞を最後まで聞かず、途中でハイキックをぶち込むのだ! 普通は最後まで喋らせてくれるだろう…。 (web版5〜6頁。人の話を聞かないマン!) そんなこんなで追い詰められたサタンはジャスティスマンの体を乗っ取ろうとするのだ。 僕なんかは、「あぁ、これで体を手に入れたサタンが今度こそ強敵になるんだな…」と思ったよ。ドラゴンボール で言えば、悟空がギニューに体をチェンジされるようなもの。 しかし、これをジャスティスマンは問題せず跳ね除ける。 その上でこの煽り。 (web版14頁。我は邪心のない正義マン!) やはり、ジャスティスマンはマイクパフォーマンスもできるんではないか! トドメに、天秤がジャスティスマン側に傾いた、つまりサタンよりジャスティスマンのが罪深かったという点について解説。 なんでも、サタンのようなクズを放置し続けていたことに「果てしない罪悪感」を抱いていたためだという…。 なんだよ、この「果てしない罪悪感」って。言い過ぎじゃないのか? (web版16頁、果てしなき罪悪感!) で、締めにジャスティスマンが必殺技、ジャッジメントペナルティを繰り出して今週は終わり。 このジャッジメントペナルティはまさしく必殺の技だけどこれを耐えられたら「二重処罰の禁止」とかいう謎ルールによりジャスティスマンは追撃が出来ない。そういう意味では、「まだ3週目だぞ? もう出しちゃっていいんですか?」みたいな気持ちになる。ま、今回に限り二重処罰だろうがなんだろうが、クズへの制裁ということで追撃してもいいのかも。 ところで、今日の更新日は休みだったので恋人と一緒に過ごしてた。全くキン肉マンを読んだことのない彼女に今週のキン肉マンを読ませてみたら、「えっ、何この人…? 全然人の話を聞かないじゃん。」とジャスティスマンの試合態度にドン引きしていた。 やっぱりジャスティスマンはやべーわ。人の話聞かないマンだわ。
2020.02.24
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僕が弁護士になったころは超高難度だったネットトラブル、発信者情報開示の法的手続だけど昨今はわりと普通の弁護士が普通にやる程度の事件になってきたように思う。 そんなおり、新刊で『インターネット権利侵害〜削除請求・発信者情報開示請求後の法的対応Q&A』が出た。ざっと読んでみたので感想を書いていく。 インターネット権利侵害 削除請求・発信者情報開示請求“後”の法的対応Q&A [ 深澤 諭史 ] まず、本書だけどメインとなるのはタイトルの後段にある「発信者情報開示請求後の法的対応」にある。 つまり、ネット上の名誉毀損なんかをしている者を突き止めた後、どういう対応をするべきか、という内容になっている。つまり、慰謝料などの金銭請求のやり方、相場などの解説ということになる。 そうすると、ターゲット層としては発信者情報開示をする能力があるということが、本書を読む上で最低限必要なスキルということになる。 かと思えば、「法的措置を取ります」と内容証明を送ってから提訴するまでの間隔はどうするべきか、初手でいくらくらいの請求をすべきか、と交渉術の範疇に含まれるような解説もあったりする。まあ、交渉をやる上では裁判例の傾向は知っておく必要があるので、これは丁寧に説明してもいいとは思うけど。この手の交渉術は本で読むというより、事件処理の経験うちに自然に覚えるのだろうが、活字になっていると思うところもある。 著者が重要なポイントとして繰り返し解説する、慰謝料の相場や発信者情報開示にかかった弁護士費用が請求できるかという点については、裁判例をいくつか紹介するということになっている。 個人的には裁判例をざっと一覧表にしてまとめて欲しいとは思うところ。ただ、著者も「交通事故みたく大量の事例が集まるわけでもなく、赤い本みたいな相場を作るのは難しい」というようなことを述べているので難しいとは思うのだけど。 なお、この手の研究は進んでないのでネット検索したときに上の方に出てくるのを「脅威度」と、発信者情報開示後の対応がまずくて対応をした弁護士とともに炎上することを「共同炎上」と造語を作ってみたりしている。 そのうち業界的に定着するかもしれないし、そうでないかもしれない。特に共同炎上は……特殊すぎて僕も例を1つしか知らない。 まとめに入るが、本書は最低限、発信者情報開示請求の手続きができる中級者以上向けということになるから、全くこの手の事案をしたことのない弁護士はあまり対象にしてないのだろう。そこは理解した上で読むべきだろう。 僕はたまに発信者情報開示から慰謝料請求をするのだが、年に数件くらいしかやらないので経験を積むことが難しく、またほとんどを訴訟外で終わらせてしまうから最新の裁判所の傾向を知れたことは役に立ったかなと。 一方で全くネット上の名誉毀損について扱ったことがないという方は、この本じゃなくて別の書籍を、オススメする。 200頁くらいと薄いので、とりあえず読んでみてもいいかも。 インターネット権利侵害 削除請求・発信者情報開示請求“後”の法的対応Q&A [ 深澤 諭史 ]
2020.02.19
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塩試合のプロ,ジャスティスマンとサタンの試合もいよいよ佳境である。試合が始まってからわずか2週くらいしかたっていない気もするが・・・。308話「揺るぎない正義!!」であるが,本当にジャスティスマン揺るがない。冒頭,サタンの必殺技,サタニックソウル・ブランディングで吐血してかるいダメージ描写はあったけれど,それでもたいしたダメージじゃないっぽい。ダメージが入っている描写があると,「あぁ,ジャスティスマンも生身なんだな」と思うものの,それでもタフすぎますね。今週でもジャスティスマンは淡々と攻め続け,サタンは狼狽しつづけるのだけど個人的に心に刺さったのが,互いに片足タックルをしているところ。まずはジャスティスマンが「ハワー!」とどことなく間が抜けた叫びとともに片足タックルをしかけると,サタンはダウンしてしまうわけだ。(9頁,ハワー!)一方で,サタンが片足タックルをしかけてもジャスティスマンは微動だにしない。この1コマだけを切り取ると,まるでサタンがジャスティスマンに頭を下げ,すがりついているようにすら見える。ジャスティスマン,圧倒的な貫禄である。(13頁,動かざること正義のごとし)体格だけを見ると,サタンはジャスティスマンより1まわりどころか2まわりは大きい。それでも,サタンはジャスティスマンを倒すことができない。この対比を見るにつけ,ジャスティスマンの強さが際立つ。そんで,ジャスティスマンの必殺技,「ジャッジメント・アヴァランチャー」がサタンに炸裂して今週はおしまい。ただ,気になる点が3つほどある。1つは,ジャスティスマンの天秤が,サタンではなくてジャスティスマンの方に傾いたということ。なんだか分からんが,罪深い方に傾くそうなので,ジャスティスマンに何か問題があるのかもしれない。2つは,サタンの身体にヒビが入ってきているところ。やはり,サタンのダサい体はオーバーボディなのではないか・・・。3つに,サタンが依り代を無視して実体化したところ。サタンの描写を見る限り,小物感があるし,なにより臆病だ。ザ・マンを倒すため自らの体を鍛えるのではなく,依り代を探すとか,勝てる試合しかしないようなやつだと思う。ヒビ割れた体の下から真の姿が・・・とかあるかもしれない。Twitterやら2ちゃんではロビンが依り代になっているのではないかとも言われてるが,そうだな,僕はキン肉タツノリが来ると予想しておこうか。マッスルスパークも火事場のクソ力も使えるんだし,かなりの強豪だろうて。
2020.02.17
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本編のアニメは終わってしまい,藤井聡太ブームも落ち着いてきたものの,りゅうおうのおしごとに新刊が出た。また感想などを書いていく。りゅうおうのおしごと!12【電子書籍】[ 白鳥 士郎 ]12巻は大きく2つの話を交差的に,同時並行で進めていくことになる。1つが,姉弟子である空銀子の三段リーグ編。2つが,主人公・九頭竜八一の帝位編。あとは箸休めみたいな感覚でロリ話なり,恋愛描写なりが入っていく。まず,順番を入れ替えて九頭竜八一の帝位挑戦編。架空のタイトルだけど,八一は帝位のタイトル保持者,於鬼頭曜(おきと・よう)に挑むのだ。この於鬼頭帝位は昨今のソフト将棋で研究している棋士である。経歴を見ると,初めてソフトに負けた棋士で,四段昇格の祝勝会に来なかった最初の棋士で,丸刈りにする盤外戦術なんかもしれくるから,誰かなとは思うけど,特定はできないかな。ここは,主役である八一がすさまじい才能を見せるという,いつもどおりの展開になる。次に,空銀子の三段リーグ編。この話が思いのほか長くて,だいたい10巻くらいからやっているから3巻分は使っているわけだ。将棋漫画は『五五の竜』だとかだとか『ものの歩』だとか色々あるものの,たいていはこの三段リーグを大きく扱う物が多い気がする。この三段リーグ編を突破して四段になるとプロ棋士になるわけだから,三段と四段の間には大きな壁があるわけだ。『月下の棋士』くらいだろか,この三段リーグをあまりやらなかったのは・・・。以前から指摘していたが,この『りゅうおうのおしごと』は負ける側,才能のない側に強い感情移入をさせられてしまう。誰もが必死ではあるのだけど,今回の三段リーグだと,年齢制限で今回で昇段できなければ後がない青年だとかもいる。このあたり,12巻のあとがきを読むと,著者の挫折体験がそうさせているのかもしれないと思う。弁護士になろうと思って法学部に入り,12年間勉強して,それでも弁護士になれなかったという。僕は弁護士をやっているので,このあたりの気持ちはなんとなく分かる。僕は逆で,作家になりたかったけど才能になりたかったから弁護士になるため勉強をしだけど,色々と考えさせられるところ。はっきり言って,主人公である八一の対局より,三段リーグのほうが圧倒的に盛り上がる。それを思わせるシーンではないが,於鬼頭がこんなことを言っている。「もし,あいつ(八一)の視点で書かれた物語なんてものがあったら,それはきっと・・・どんな壁でも努力で越えられるという,さぞ希望に満ち溢れたお話なんでしょうね。でも,書いている本人は気づいていないんだ。一番高い壁が自分自身だってことに。最高の喜劇ですよ。最高に残酷な」(「感想戦」より)まるで『りゅうおうのおしごと』を否定するかのような台詞ではないか。昨今は異世界転生ものでチートな,ずば抜けた才能を持つ主人公が増えたものの,八一はまさにそういうタイプの主人公だ。本人はもちろん血を吐くような努力をしているのだろうけれど,そんな努力なんてみんなしているのである。報われない努力というのはいくらでもあるわけだ。もしやすると,作者は八一のことを嫌い・・・・・・は言い過ぎとしても,ほかの「才能がない」とされている負けてしまったキャラたちほど好きではないのではないかとすら思えてくる。たとえば,今回三段リーグ編で活躍した鏡州飛馬や,女流を目指していたころの桂花は心理描写が深くて,まるで作者が自分を投影させているのではないか,と思えたものだ。そういえば,前巻から八一は幼なじみだった銀子と両思いになり,交際が始まるわけだが,銀子って「才能がない」ことになっているキャラなんですよね。たとえば,才能のあふれる雛鶴あいを選ばないあたり,作者の好みや嗜好があるのならと,色々考えてしまう。ところで,あとがきを読んでいると著者は挫折の体験として弁護士になれなかった経験を語りつつ,執筆したラノベにたいし,「流行の二番煎じ以下の物し書けず,作家として呼べるほどのものではありません」と言っている。これは少し悲しかった。この二番煎じ以下の作品というのは商業デビューした『らじかるエレメンツ』のことを言っているのか,2作目の『蒼海ガールズ』のことを言っているのか,もしやするとアニメ化までした3作目『のうりん』のことを言っているのか?僕はこの全ての作品を読んできたけれど,どれも味があって好きだった。司法試験の勉強の合間,息抜きに読んだ『蒼海ガールズ』に癒やされたものである。あの時期に読んだ小説なり漫画にはずいぶん助けられた。リンク張っておくから,せめて『蒼海ガールズ』くらいは各自買って読んで欲しい。蒼海ガールズ!【電子書籍】[ 白鳥 士郎 ]らじかるエレメンツ【電子書籍】[ 白鳥 士郎 ]りゅうおうのおしごと!12【電子書籍】[ 白鳥 士郎 ]
2020.02.15
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法律の専門書を読むのも大変なので,たまにはライトに新書でも読んでみようかと手に取ったのが『裁判官失格』である。色々と思うことがあるので,つらつらと感想など書いていきたい。裁判官失格 法と正義の間(はざま)で揺れ動く葛藤 (SB新書) [ 高橋 隆一 ]そもそも論だけど,この『裁判官失格』という本のタイトル。これはもしやすると,2012年に出た『検事失格』を意識しているのもしれない。この『検事失格』の方は不当な取り調べをしてしまった元検事の自伝という形になっており,かなりのベストセラーになったんじゃないかな。僕も読んだし,当時の弁護士会でちょっと話題になったから。ただ,本書はどうしても『検事失格』より多少はクオリティが下がるんじゃないかな・・・。ちょっと『検事失格』と比較しながら見ていこうか。まず,本書の目次を見てるとこうなっている。第1章 法廷はドラマに溢れている第2章 裁判官だって,最後まで迷っている第3章 1人でも受け入れてくれるなら説諭をする,たとえ裏切られても第4章 裁判官の胸の内第5章 裁判官こぼれ話一方で,『検事失格』はこうだ。検事失格【電子書籍】[ 市川 寛 ]第1章 検事への志第2章 「検事」への改造第3章 挫折第4章 束の間の復活第5章 大罪第6章 「暴言検事」の死第7章 償いどうだろうか。目次を眺めているだけで,1人の若者が検事になるという夢を持ち(第1章),検事になったものの激務のために挫折し(第2~3章),健康を取り戻すも(第4章),取調中に自白を強要する暴言をして問題になり退職する(第5~6章),といった流れがイメージできるだろう。そして,著者は7章で償いも果たし,法曹として立ち直るのだ。そのため,大きな1つのスジに沿って構成が立てられており,章の並びそれ自体に意味がある。これと比較すると,『裁判官失格』の方は単なる雑談をまとめたものになっており,別段に章の並びに意味はない。1章の次に3章を読んでもいいし,逆から読んでいってもいい。そもそも,『裁判官失格』の著者は普通に裁判官を勤め上げた後,公証人に再就職し,現在は弁護士もしているそうなので,普通に裁判官をしていたようだ。最終経歴が家庭裁判所の少年部部長裁判官で,所長までいってはいないようだけど。さて,内容に入っていこう。ただ,基本的に雑談を集めたもので特に大きなテーマみたいなものはない。民事も刑事も少年事件も,ごった煮のように集められている。色々あるけれど,たとえば「死刑にすべき事案だったけど,検察官が無期求刑だから無期懲役にした」(16頁以下)だとか,「自分が詐欺で実刑判決を下したXという男の一言がきっかけで,麻原彰晃がオウム真理教を作ったに違いない」(58頁)など,書いている。特にどうかな,と思ったのが「私自身はたとえ責任能力がなく罪に問うことはできなくても,精神病院に入院させて一生出さないなどの措置が必要なのではないかと思っています」(60頁),だとか遺産分割なんかについては「そもそも裁判所に来る時点で醜い」(136頁)とか見出しをいれている。そう感じるのは自由だし,たとえば酒の席なんかでそう口にしてもいいとは思う。ただ,書籍として出版しなくても良いではないか。国民の裁判官に対する信頼を損ねるのではないか,と思うところはある。楽天ブックス裁判官失格 法と正義の間(はざま)で揺れ動く葛藤 (SB新書) [ 高橋 隆一 ]
2020.02.08
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シェイクスピアの歴史劇はちょこちょこ読んでいたのだけれど,だいたいシェイクスピアの歴史劇というやつは薔薇戦争の前後を扱ったものが多い。 ただ,このあたりは日本人には馴染みがほとんどない。特に分からんのが,シェイクスピアが最高の名君として描くヘンリー五世像である。親不孝の放蕩息子が改心し名君になる,という扱いだ。日本でいえば暴れん坊将軍こと徳川吉宗あたりが近いのかな・・・。ただ,史実を見るとヘンリー五世が放蕩息子だったという話はないようで,なぜこんなことになっているのか,Wikipediaなんかを適当に読んでいてもよく分からん。そんなとき,書店で立ち読みしたのが石原孝哉著,『ヘンリー五世 万民に愛された王か,冷酷な侵略者か』である。サブタイトルも長いので,以下では「本書」で通すことにする。 ヘンリー五世 万人に愛された王か、冷酷な侵略者か (世界歴史叢書) [ 石原 孝哉 ] まず,本書の目次を見せてみるとこうだ。 第1章 少年時代と放蕩息子伝説 第2章 皇太子となったハル 第3章 皇太子ハルの放蕩の秘密 第4章 ヘンリー四世の死と嵐の船出 第5章 ローラド派の対立とフォールスタッフの誕生 第6章 フランス侵攻計画 第7章 サウサンプトン陰謀事件 第8章 百年戦争の再開 第9章 決戦アジンコート 第10章 ノルマンディーの占領 第11章 ヘンリー五世の死 第12章 ヘンリー五世像の変遷 冒頭から,ヘンリー五世の放蕩息子伝説を扱い,最後にヘンリー五世像の変遷でしめる。僕の知りたいこと,興味があるところを真っ正面から扱ってくれている。これは立ち読み即購入である。 なお,著者の経歴を見ると歴史学者というより英文学者だそうだから,焦点のあて方としては納得である。 そして,目次をざっと見て貰えば分かるんだけど,著者はヘンリー五世が即位するまでは「ハル王子」で通していて,並々ならぬこだわりを感じるところだ。 さて,僕の最大の疑問は「なぜ,シェイクスピアはヘンリー五世を放蕩息子として描いたのか?」というところだ。シェイクスピアも何の材料もなくそんな脚色をするはずがない。 経歴を見ても,少年時代は武術や勉強に打ち込んでいて,どちらかといえば優等生である。著者が指摘するように,せいぜい「怠惰な習慣」として楽器の演奏や作曲をしていた程度である。 この点,著者は第3章「皇太子ハルの放蕩の秘密」で放蕩息子伝説成立の経緯を説明している。この辺が本当に面白いところだろうか。 ヘンリー五世と父親との外交問題における対立問題という難しい話を,政治問題をすり抜けるため,聖書にもある「悔い改めた放蕩息子」という形でアレンジしたのだろうと指摘している。また,そもそも論としてシェイクスピア以前の劇作品の時点で,すでにヘンリー五世を放蕩息子として描く作品があったとか,この辺も興味深いところである。 それにしても,シェイクスピアを読んだ後に史実のヘンリー五世を見ると,確かに戦争では情け容赦のない描写が目立つ。 著者が指摘するように,シェイクスピアの描くようにユーモアがあったり,迷ったりと言った人間味というものはさほど強くないのかもしれない。というか,シェイクスピアの史劇を見ていても,放蕩息子だった第1部と比較すると,ヘンリー五世が改心した2部はそんな面白くない。 間違いをするから人間であり,話が面白くなるのかもしれない。 また,面白かったのがシェイクスピアの歴史観である。 かの直木賞作家,佐藤賢一は著書『英仏百年戦争』で「イギリス人は,シェイクスピア作品の影響から,百年戦争でイギリスが勝ったと思い込んでいる」という「シェイクスピア症候群」というべき状態を指摘し,歴史のすり替えとしてきしていた。 この点について著者は,「百年戦争という概念自体が19世紀のものだ」とシェイクスピアを擁護している(本書290頁)。僕は佐藤賢一のファンでもあるが,シェイクスピアが歴史をすり替え,ねじ曲げたわけではないにせよ,結果的に英国民がシェイクスピアの影響で若干ズレた歴史観を持っているというのなら,シェイクスピアの功罪はともかくとしてやはり偉大なものだ,と思うのだ。 【送料無料】 ヘンリー五世 万人に愛された王か、冷酷な侵略者か 世界歴史叢書 / 石原孝哉 【全集・双書】
2020.02.04
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サタンの乱入に読者が困惑する中,ジャスティスマンさんが参戦した。僕も含め,この展開には狂喜乱舞しているように見えるが,そういえばこのジャスティスマンさんって,塩試合マンって呼ばれるくらいの方でしたよね・・・。盛り上がるのかな,と思いつつ,306話「依り代なき被告人!!の巻」の感想を書いていこう。 さっそく試合は始まったものの,サタンはジャスティスマンをメッタ打ちにしていく。 体格差は圧倒的だ。大人と子どもくらいの差はある。 肘打ち,膝蹴りに加え,ジャイアントスイングで鉄柱に頭を叩きつけたりする。 そこまでされても,ジャスティスマンさんは無表情である。この無表情がノーダメージのアピールなんだろうけれど。 で,サタンはもう早々に「サタニックソウル・ブランディング」って必殺技を出してしまう。形としてはテリーマンのカーフブランディング(子牛の焼き印押し)みたいな形だから,あえて言うなら「悪魔の焼き印押し」といったところか・・・。 (web版306話20頁。悪魔の焼き印押し!) ただ,これにもジャスティスマンさんはノーダメージのアピール。 ニッコリと微笑んで見せるわけだ。結構恐いね。本当にかっこいい。痺れてしまいそう。 (web版306話22頁。ニヤリとノーダメージのアピール) 思えば,ジャスティスマンはアシュラマンとテリーマンといった強豪超人を実力で圧倒していたわけなんだけど,それはなぜかといえば驚異的なタフネスにあったと思う。 アシュラバスターを受けても,テリーの猛攻を受けてもノーダメージ。それでいて,ジャスティスマン自身には特に派手な技がない。普通のプロレスをしているだけである。 だからこそ,ファンには塩試合マンと言われている訳なんだろう・・・。 ところで,僕は敵のノーダメージアピール演出には色々と思うところがあって批判的である。 最近だと,キン肉マン2世では時間超人サンダーなんかはマッスルミレミアムを食らってもノーダメージであったし,刃牙なんかではピクルは愚地克巳のマッハ突きを食らってもノーダメージだった。 これは正直萎えちゃうのである。手っ取り早い強さのアピールにはなるんだろうけれど,負けるときに謎のデバフを受けて唐突にダメージを受けることになるわけだし,最終的に主人公補正でダメージが入っているようにしか見えないのである。 だが,そんなノーダメージ演出だけど,味方だったら話は別だなぁ・・・。 安心感がすごい。負ける姿が想像できないどころか,どうやってダメージを与えればいいのかすら分からない。そういえば,この間の『衛府の七忍』で桃太郎卿なんかも似たような感じでノーダメージで通してたっけ・・・。 なんだかんだ,展開は本当に分からない。 必殺技まで見せちゃったサタンにはこれ以上というのがなかなかなさそうなのに対し,ジャスティスマンは底が一切見えない。案外と,ジャスティスマンが勝かもしれない。
2020.02.03
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