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日本に住んでいると,「不倫をしたら慰謝料を支払う」というのは当然のことのように考えているが,これは比較法的にはちょっと珍しいようである。日本の学者にもけっこう反対説を唱えている人がいるようだ。では,外国で不倫をした場合,日本の裁判所は慰謝料を支払う義務はあるのかという点について,一つの裁判例が出たのでちょっと見ていきたい。【送料無料】 国際私法 有斐閣アルマ / 神前禎 【全集・双書】事案はおおよそこんな感じ(東京高裁R1.9.25判例タイムズ1470号75頁)原告女性は,夫である被告男性の海外赴任に同行する形で,平成25年にニューヨークへ引っ越したのだ。ところが,その年のうちに夫である被告男性は,同僚である被告女性とニューヨークで不倫を始めてしまった。このニューヨークで婚姻関係が破たんしている。最終的に関係者は全員日本に帰ってきており,被告らは日本でも不倫を継続したのである。この問題について,日本の裁判所で原告女性が被告らに慰謝料を請求したのがこの事案になる。何よりも大事なのが,準拠法を,つまり裁判所が日本法かニューヨーク法のどちらで裁判をするかという問題である。日本法でやれば原告女性は勝訴できるが,ニューヨーク法でやれば原告女性は敗訴する。ニューヨーク法では不貞があったとしても,慰謝料を請求することができないからだ。ちなみに,原審である横浜地裁H30.10.30は準拠法をニューヨーク法にして請求を棄却した。原典が第一法規で読めなかったが,日本に帰国後の不貞は,もう婚姻関係が破たんからと原告の請求を棄却しているようだ。無情だが,なんとも理論的にはスッキリしているとは思う。ところが,これを覆し,慰謝料請求を認めたのが東京高裁である。考え方の順序として,この事案は不倫,つまり不法行為だから準拠法は法例17条により,不法行為の結果発生の土地の法が準拠法になる。日本とニューヨークの両方で不倫をしているわけであるが,結果発生の土地が複数あるとき,「最も重大な結果が発生した土地」を結果発生地とする判断をした。そのうえで,ニューヨークでの生活は3年くらいの短いものであるとか,被告らの不貞はニューヨークから日本まで切れ目無く行われていたとか,日本での不貞はこれからも継続するとか言って,準拠法を日本にした。・・・結論は分からないでもないが,理由付けがいまいちよくわからない。不貞がはじまった土地こそが重大な土地だとするのが自然のように思う。また,ニューヨークで婚姻関係が破たんしたとまでいえるし,日本での不貞はあくまで惰性というか,もともとあったのが続いているだけだ。確かに,被告男性は不貞後に悪意の遺棄があったとかで,やってることはけっこうひどい。判例タイムズの解説を読んでいても,類似の裁判例がないようだから比較のしようがないが,結論ありきで準拠法を日本法にしているような気がする。なお,この東京高裁でもカバーできない問題はけっこう残っていると思う。たとえば,この事案で被告らがニューヨークに定住すればダメだろう。また,海外で現地女性と不貞をするというのであると,これは完全無欠に慰謝料請求ができないことになる。とはいえ,もともと日本のように不倫をした場合に慰謝料を支払う義務が発生する,という国の法が珍しいのであって,慰謝料請求ができないという結論は国際的にはおかしいことではないかもしれない。なので,海外でワンナイトの不倫をすれば,かなりの事案で慰謝料を請求できないという事案はありえるのだろう。一方で,日本国内で外国人と不倫をするのはまずい,そういうことになる。ただ,海外での不貞が民事上,不法行為になるかどうかという話と,離婚原因となるかどうかは別の問題だろう。どこの国だろうと,不貞はさすがに離婚事由だろうから。ケース別 離婚協議・調停 条項作成マニュアル【電子書籍】[ 宇田川濱江 ]
2020.04.28
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知る人ぞ知る・・・という感じだった『ライドンキング』だったのに,最近はかなり売れてきているようで,書店でも平積みされていることが多い。ファンとしては嬉しい限りである。僕はキン肉マンネタならいくらでも拾えるんだけど,プロレスネタになると他の人の感想を見たり,ニコニコ静画のコメントで気がついたりもするので,ファンが増えるのは良いことである。ライドンキング(4)【電子書籍】[ 馬場康誌 ]今回のあらすじだけど,ケンタウロスの村での戦いは前の3巻で終わったので,4巻からはまた新しい話が始まっていく。前も書いたけれど,ライドンキングの主人公であるプルチノフはもともと作者の前作,『ゴロセウム』の敵キャラ,プーチノフがモデルになっていて,そんな敵キャラが異世界に行く巻末オマケ漫画が元になっている。そんなオマケ漫画でもケンタウロスとの交流で終わっていたので,ある意味でこの4巻からは未知の世界になるといっても過言ではない・・・。ゴロセウム(6)【電子書籍】[ 馬場康誌 ](別次元のプルチノフことプーチノフ。合わせて読むと面白いよ)さて,そんで4巻だけどかなりの部分がこの異世界の説明にも使われる。なんかこの世界には魔族という,なんかすごい強いのがいるそうなのだ。戦争になったりするとまずいというので,プルチノフが魔族と話し合いに行くことになった。表向きはともかく,真の理由は魔境にいるという,巨大でより恐ろしい魔獣に騎乗したいからでしょうね・・・。そのため,プルチノフは自分の作ったプルチノフ村の未来のため,またさらなる騎乗欲のおもむくまま旅立つのだった。とりあえず,気になったところを3つほど。1つは,この異世界って,もしかして北海道ではないのか,という話。地図を見てみると,ムローラだとかボクスだとかいう地名が見られる。ムローラは室蘭で,ボクスは函館,オームスは大間町だろうか。地形もなんとなく北海道から東北っぽい。そういえば,前作,『ゴロセウム』も舞台は北海道だった。『ゴロセウム』だとラスボスはロシアの大統領,プーチノフだったが,北海道はロシアと地理的に近いからね。ある意味で,プルチノフとも縁があるのかもしれない。(4巻88頁。どことなく北海道)2つめがプルチノフのさらなるパワーアップについて。まずは魔族化というの。この漫画の世界観だと,魔族というのは生まれついてのものではなくて,転魂の儀式によって生まれ変わるものだとか。じゃあ,プルチノフだって魔族化すればさらに強くなれるんじゃないのか・・・?いやそれより個人的に気になるのはプルチノフの知力面でのパワーアップだ。獣神ランダーライガー山田・・・じゃなくて獣王ヤマドゥアから亡き妻の記憶を呼び覚ましてもらったプルチノフだけど,過去の記憶を自由に引っ張ってこられるようになったっぽい。これでプルチノフは元の世界の農業知識を駆使してプルチノフ村の食糧問題を解決するのだ。(4巻60頁。ノート取らなくても授業完璧やんけ!)これって結構すごくないですか? 司法試験とか楽勝で合格できるやんけ!以前の日記で,「なんでももらえるのに,安易に力を求めないでささやかな力をもらったのがいいね」と言ったけれど,これも超弩級にチートである。3つめ,最後にパロディの話。皇帝魔熊がゴマすりクソベアー呼ばわりされていたりだとか,キャルマーの「たのしそー」と,けものフレンズのネタなんかもはいっていてこれも笑えるのだけど,僕はやはりキン肉マンネタを言いたい。海底ダンジョンの門番である牛頭人の戦士とタッグマッチで戦うのだが・・・。この美しいカーフブランティングで1人!(4巻134頁。いった! いった! プルチノフがいったー!)もう1人をブレーンバスターでKOするのだ!(4巻138頁。ハリケーンミキサーをとめてからのブルキリング)この戦闘スタイルは,まさしくテリーマンですね。テリーマンはザ・摩雲天だとかキング・ザ・100トン,マックスラジアルみたいな巨漢と戦ったため,「巨漢(ジャイアント)ハンター」の異名があるのです。特に摩雲天だとかマックスラジアルをKOしたブレーンバスターは熱かった・・・。なお,タッグマッチだったはずなのに,気がつけば普通にプルチノフが1人で無双して終わった。できるなら,パーティ入りしたヨシュアスあたりが成長してタッグを組んだりできんものかと思う。・1巻感想・2巻感想・3巻感想ライドンキング(4)【電子書籍】[ 馬場康誌 ]
2020.04.27
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僕もそうだけど,男の子というは「ルフィとうずまきナルト,どっちが強い?」とか「ジョナサン・ジョースターと鬼舞辻無惨が戦ったら,どうなる?」いう話が好きだ。たとえば,古代ローマではライオン対トラの試合を見世物としていたそうな。勝率は,体が大きく,群れではなく単独で狩りをするトラの方が高かったそうだが,古代から人間はこういうことをしていた。こういう最強の動物は何か,をテーマにした格闘漫画,『真・異種格闘大戦』を読んだのでネタバレ感想を書いていく。真・異種格闘大戦【地上最強の生物は誰だ】 1巻【電子書籍】[ 相原コージ ]ざっとあらすじを説明すると,物語冒頭で強矢・鋼(ごうや・はがね)は格闘技のチャンピオンだけが出場できる大会に出場し,決勝戦でアレクサンダー・スターリン(たぶん,モデルはアレクサンダー・カレリン)に勝利し,人類最強となるのだ。最強となった鋼だが,次は人間だけではなく,アフリカで行われるライオンだとかトラの出場する地上最強の生物を決める格闘大会に出場することになる。ここまでが,だいたい2話目くらいの展開だった。この時点で僕は,「きっとこの漫画はヒト代表として大会に出場した鋼が,次々と猛獣と戦っていくんだろうなぁ・・・」と思ったが,早々にこの予想ははずれてしまう。主人公かと思われた鋼だが,一回戦でカバに負け,死亡してしまうのだ・・・。この後,物語は動物たちがトーナメントで最強を決めるということになる。ただ,普通に動物たちが戦うだけだと物語もなにもないので,普通にライオンだとかトラは互いに会話をしていたりする。また,ゴリラに至っては黒帯を身につけていて柔術を使ったりする。真・異種格闘大戦【地上最強の生物は誰だ】 3巻【電子書籍】[ 相原コージ ]人間不在の格闘大会なんて盛り上がるのか,と思ったものの,それでも全10巻,7年にもわたる連載をしているというのは驚かされる。ただ,どうしても物語性が必要なのか,随所に人間は登場している。例えば,選手として登場するイヌは元闘犬なのだが,飼主だった人間との絆があった。また,ゴリラは人間から教わった柔術を使う。そんな動物たちの中,もっとも深く描かれているのがシマウマのチェ・ゼブラである。たぶん,チェ・ゲバラから名前を借用したのだろうが,「草食動物が肉食動物に食われる世界は間違っている」と革命を志し,その革命のために格闘大会に出場していたりするし,「対戦相手の強さを取り込むため」に相手の肉を食べたりする。このゼブラは決勝戦でライオンと戦うほか,ヒクイドリ,ワニ,オオトカゲなんかと戦って勝ち上がっており,強さの箔づけがなされている。実質的な主役はこのシマウマ,チェ・ゼブラだろう。仲間たちとの交流だとか,過去の掘り下げがかなり描かれている。真・異種格闘大戦【地上最強の生物は誰だ】 2巻【電子書籍】[ 相原コージ ]最終的に,決勝戦はシマウマのチェ・ゼブラとライオンのキング・オブ・キングスの試合ということになる。(なお,トラは1回戦で敗退。)百獣の王,ライオンの強さはいちいち説明しなくていいだろう。本作でも,インドサイやアフリカ象を秒殺し,柔術使いのゴリラにも勝利している。特に柔術ゴリラ対ライオンの試合はかなり盛り上がり,ゴリラに柔術を教えた人間とゴリラの交流のほか,ネコ科の柔軟な体を持ち,必殺の牙と爪を持つライオンに対し,相手と密着しなければならない関節技は通じるのか,と非常に面白かった。さて,最終回だけど,激闘の末,ゼブラは試合中に立ったまま死亡してしまうものだ。しかし,何度倒れても立ち上がるゼブラに恐怖したライオンは恐怖でたてがみが真っ白になってしまうのだ。こうしてチェ・ゼブラは決勝戦で死んでしまったものの,彼の革命の心はシマウマの心に残り,シマウマは肉食獣と戦い,追い払えるだけの力を得て物語は完結する。感想として,著者の相原コージは梶原一騎のファンだったからか,随所に梶原漫画のリスペクトが見られる。たとえば,決勝戦,チェ・ゼブラに試合では勝ったものの,ライオンのたてがみが真っ白になったのは『あしたのジョー』のリスペクトだろう。早々に死んでしまったとはいえ,人間代表として大会に出た剛矢鋼もライバルの吾代力を殺してしまったという悲しい過去があったりする。僕みたいな,梶原漫画ファンは楽しめるだろう。(1巻44頁。構図がまんま力石の死に慟哭するジョーと同じ)我ながら,驚くのがこういう人間不在・・・とまではいかないが,ほぼ動物だけの漫画をよく読み続けられたものだと思う。なぜ読み続けられたのかと言えば,それは物語がどう終わるのか,それが非常に気になったからである。たとえば,人間である剛矢鋼が決勝まで勝ち残って優勝する・・・,そんな漫画でも良かったとは思うのだ。これでも,各動物の特徴や,もし戦えばどうすればいい,などのうんちくを語ることはできたはずだ。しかし,本作はそうしなかった。人間である剛矢鋼は一回戦で早々に敗退することで野生動物の強さを強調した。実際,そうだろうとは思うのだ。人間の最大の武器は知恵にあり,これで戦えば最強の動物である。さらに素手でも人間が最強でありたい,というのはいささか強欲するぎる。そういう意味で,人間が早々に敗退したのは英断だったといえるだろう。ふと思い出したのが,吉川英治の小説『宮本武蔵』である。村で暴れまくっていた武蔵を,知略で拘束し,木に縛り付けた沢庵和尚の発言である。別に人間は虎より弱くてもいいのだ。なお,話の合間に動物に関するうんちくが語られるのだが,正確なのかどうか・・・。最近の漫画だと,『テラフォーマーズ』だとか『キリングバイツ』みたいな,動物だとか虫だののうんちくを語りながら動物の力を移植した改造人間たちが戦う漫画があるけれど,こういう漫画が好きな人なら楽しめるだろう。キリングバイツ(1)【電子書籍】[ 村田真哉 ]真・異種格闘大戦【地上最強の生物は誰だ】 10巻【電子書籍】[ 相原コージ ]
2020.04.23
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劇画王の名をほしいままにした梶原一騎であるが,逮捕された影響なのか,単に売れないからなのか,絶版になっている作品も多い。以前から興味があった『人間兇器』なのだが,コンビニコミックなどで復刻することもなく読めなかったのだが,電子で復刻していたので読むことができた。奥付をみると,作画の漫画家と連絡を取れないかなにかで出版できなかったらしいのだが,「著作権者不明」ということで文化庁に裁定の申請をし,それが認められたから出版できたようだ。他作,特に『カラテ地獄変牙』なんかと比較しながら感想など書いていこう。人間兇器1【電子書籍】[ 中野喜雄 ]『人間兇器』は空手をテーマにしている作品だが,本作について語る前に梶原一騎と極真空手について触れなければならない。梶原一騎のヒット作と言えば,『巨人の星』と『あしたのジョー』であり,この2つが双璧だとしても,極真空手の大山倍達を主役にした『空手バカ一代』もやはり大傑作だ。梶原一騎の台所事情を推察するに,映画だとかでかなりの収益を上げたのではないだろうか。【中古】少年コミック 空手バカ一代(6) / つのだじろうそんな『空手バカ一代』は1971年に連載を開始するわけだが,梶原一騎は『空手バカ一代』の焼き直しとしかいえないような作品をどんどん生産していくことになる。たとえば,1974年の『新ボディガード牙カラテ地獄変』だとか,1978年の『新カラテ地獄変』だとかである。この『人間兇器』は1979年に連載を始めるわけだが,正直言って『空手バカ一代』の焼き直しである『カラテ地獄変牙』のさらに焼き直しと言えるかもしれない。主人公の立ち位置が非常に似ているのだ。カラテ地獄変牙1【電子書籍】[ 中城健 ]ここで,『カラテ地獄変牙』との類似点を書き出してみると,おおよそ以下の通り。・主人公はぶち込まれた少年院でボスとして君臨する・主人公の師匠は大山倍達をモデルにした空手家・主人公は所属する空手道場の普及のため,海外へ渡航する・主人公は大山倍達をモデルにした空手家と対立し,愛憎半ばする関係を持つこのほか,『人間兇器』の主人公・美影義人は「人間はみんな兇器」。「強い兇器と弱い兇器があるだけだ」というニヒルなリアリスト思想を持っているのに対し,『カラテ地獄変牙』の主人公・牙直人は「人間の性は悪なり」というのを座右の銘にしており,どちらも殺伐とした思想を持っている。しかし,『人間兇器』の美影が『カラテ地獄変牙』の主人公,牙直人と明確に違う点がある。それは,牙直人ほど空手道に邁進しようとしないところだ。(1巻36頁。人間はみな兇器)象徴的なのが,少年院時代の話である。牙直人は少年院で火乃原奈美の空手に敗北すると,自分も空手を習得し,強くなろうとした。一方で美影はどうしても実力で勝てないボスがいると,ボスの姉を陵辱し,その写真をネタにボスをタコ殴りにするのだ。牙も美影も少年院でボスとして君臨するものの,美影には「自分の肉体を鍛えて強くなる」という努力する姿勢をあまり感じない。のち,美影は自分より実力の勝る武術の達人,薫子に対し,自らの空手を鍛えるわけでもなく,肉体を陵辱することで支配した。このように,美影はなにかあると女性を陵辱することで支配する。それでいて,師匠の大元烈山への恐怖などから「股間の兇器」が肝心なときに役に立たない,女性を陵辱できないというシーンが何度も描かれてしまっており,精神的な弱さを感じさせる。同じ現実主義者でありながら,牙直人は空手にだけは絶対的な価値観を維持しており,問題解決について鍛えた空手を武器に立ち向かう。一方で,美影義人は空手も使うが,それ以外の手段をためらいなく使うという点で大きな差がある。そんなわけだから,美影義人については兇器の凄味というよりも,どことなく小悪投じみた印象を受けてしまい,牙直人ほど共感もできない。最終的に,美影義人は政治家の秘書になり,自らも国政に打って出ようとする。梶原漫画において「師匠との対立」というテーマはよく使われるものの,国政に出るという美影は空手の世界,格闘技の世界の盟主になろうとしていた師匠を超えていると言える。梶原一騎が描く空手漫画や格闘漫画の主役たちは,あくまで格闘技の世界のチャンピオンをめざしことはあっても,現実世界の権力を求めなかった。ただ,美影はほかの梶原漫画の多くの主人公たちと同様,破滅を迎えるのだ。また,師匠キャラにおいても『人間兇器』の大元烈山と『カラテ地獄変牙』の大東徹源とは大きく違う。どちらも空手の一流派の創始者であり,海外にも空手を普及させようとするという点で極真空手の大山倍達をモデルにしていることは間違いない。ところが,弟子に愛情を持っているか疑わしい『カラテ地獄変牙』の大東徹源に対し,『人間兇器』の大元烈山は明確に愛情を持っているように描かれている。基本的に,『カラテ地獄変牙』の大東徹源は弟子の牙直人を「空手普及のための鉄砲玉」と見ているような描写が多く,死の危険があるような危険な任務に送り込んだり,自らの手を汚すかわりに牙直人を使ったりする。一方で『人間兇器』の大元烈山は,弟子の美影義人がアメリカで不祥事を起こし,刑務所にぶち込まれることになると責任を取ってアメリカの道場をすべて撤退させたりする。また,刑務所で空手を指導するという名目で囚人となった美影義人を助手にし,刑務所内に限定されてはいるものの,一定の自由を与えたりもした。当初の僕は,てっきり大元烈山も大東徹源のような「空手魔王」だと思っていただけに,ちょっと衝撃を受けた。総評として,どうしても『人間兇器』は先行する『カラテ地獄変牙』と比べざるを得ず,先行作品の焼き直しとしか思えないような部分が多い。上述したように,梶原一騎が主人公や師匠キャラを少し変えているが,大枠が似通っているため,焼き直しの評価は免れないだろう。そして,焼き直しだとして,完成度は大きく下がると思う。困難を鍛え抜いた空手で乗り越える牙直人に対し,女性を陵辱するだとか現金の力で切り抜けようとする美影義人はどうしても魅力に欠けるのだ。もしかすると,脱スポ根を願い,また世間への鬱屈をためていた梶原一騎の心の変化が,美影義人という人物を生み出したのかもしれない。僕は,『カラテ地獄変牙』は何度か読み返しているが,『人間兇器』を読み返さないのではないかな,と思う。人間兇器23【電子書籍】[ 中野喜雄 ]
2020.04.21
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ついに10巻の大台に達した『はぐれアイドル地獄変』。本作の表紙はけっこうセクシーなのが多いのだが,今回は露出度かなり控えめなので,未成年もレジに持って行きやすい。はぐれアイドル地獄変 10【電子書籍】本編に入る前に,もう1つ雑談を。『はぐれアイドル地獄変』ですが,実写映画化が決定したそうです。一瞬,「AVになるの?」と思った僕は心が汚れているのかもしれない。下手にアニメ化をするよりも,実写の方が海空の魅力が伝わるのかもしれない。2020年秋公開予定というが,これは楽しみである。さて,本編だが2つの試合を見ていく。1つは,主人公である海空とマリア・ルイーザ・リベイラの試合の話である。過去の日記でも書いたけれど,このマリア・ルイーザ・リベイラの父親は容姿や経歴から見て,ヒクソン・グレイシーをモデルにしている。つまり,マリアは女版ヒクソン・グレイシーのような戦闘スタイルなわけだ。期待値は高まる,と言わなければならない。試合は,一進一退の末,海空が覚醒して勝利。格闘技で言う,無拍子というか,ああいうやつですかね。ところで,最近の高遠先生はTwitterで試合の解説をしてくれるのだけれど,このようなツイートを投稿しておられる。(高遠るい先生の2019年11月17日のツイートから引用)これまでの試合展開を見ても,「余力を残して勝ち上がっているマリアの方が,苦戦しながらの海空より格上かなぁ」,と思っていたが,実際にそうだったようだ。何度か言っているけれど,このマリアというキャラ,ベスト8で敗退というにはもったいない,もっと試合を見たいキャラであった。決勝であたっても全然不思議ではない。言うならば,『グラップラー刃牙』の最強トーナメント時点の烈海王くらいの魅力がですね。なお,作者もそう思っているのかどうなのか,今後も解説役なり,なんなりで再登場はありそうだ。2点目に,鯨岡ミカとルナ・カーンの試合。ミカさんは過去作の主人公とは言え,海空と同じく空手使い。強キャラ感を出しまくりのルナ・カーンには勝てないだろう・・・と予想していたが,普通にミカさんが勝ってしまった。しかも,結構エグい。ルナは右の鎖骨骨折,右肘と右膝脱臼骨折,肋を数本骨折,眼底骨折とかなりダメージを負っている。これは正直引いてしまう・・・。なお,ミカさんの空手観を説明するため,200×年に行われた他流試合の解説の話。これ,どうやら各方面に配慮したらしく,総合格闘技のA氏と合気道流派のB氏と紹介をしているが・・・,これはあれですね。探偵ファイルでやってたあの試合。流血沙汰の凄惨な試合になって,当時話題になったやつだ。(本書172頁。ややピンボケさせているが,B氏の胴着には・・・)配慮しているっぽく見えるけれど,当時を知るものならば瞬間的に特定できるだろう。また,仮に知らなかったとしても,B氏の胴着に色々書いてあるためちょっと検索すればでてきそうではある。さて,色々あったけれど,準決勝は海空とミカさんの空手対決になる。空手観の違い,というのがテーマにはなりそう。思えば,ミカさんは初登場の時点でヤクザに喉に貫手をぶち込んでたし(5巻),この大会でも一回戦で「腎臓に突き刺す」つもりで対戦相手の肋を折ったり,二回戦でも相手の喉に貫手をぶち込んでた(7巻)。『ミカるんX』の時代はこんな殺意の強い技を使っていたっけか・・・と思うがどんなもんだろうか,対戦相手をKOはしても破壊までしない海空と対照的に描いているっぽい。ついでに今後の予想もしておく。ミカさんには悪いが,海空が決勝に行くことはほぼ確定だろうとして,決勝戦の相手である。本誌の方では色々あるが,ロボ子がけっこう強い・・・。個人的には,今のタフもそうだが,機械に格闘技をさせてというのはあまり好きでもない。やはりここはマオマオに賭けよう。はぐれアイドル地獄変 10【電子書籍】
2020.04.20
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最近はどことなく展開の遅かったキン肉マンだが,コロナウイルスの影響もあって今週から1か月の休載に入った。 世間様は本当に大変なことになっており,自粛という名の営業禁止みたいな風潮になってる。キン肉星の大王でもあるキン肉マンならどうするだろう・・・。コロナにバックドロップ,不景気にキン肉バスターで解決してくれないものか。 それはさておき,313話『真実への十四階段』である。しょっぱなから思ったのだけど,「十四階段」って何なんだろう? 死刑囚が最後に登る絞首台は13階段だというけれど,14というのは何が由来かわからい。また,画像を見て数えてみたのですが,ザ・マンまで続く階段は根元がキン肉マンたちの体で隠れているとは言え,見えている部分だけを数えてみても明らかに20段以上ありますね・・・。 (web版2頁。ざっと20段以上はかる階段ですね・・・) また,別カットでも少し隠れている部分があるが,やはり20段以上はあるように見える。 ていうか,心から歓迎するなら椅子やお茶くらいだせよ。 (web版6頁。20段以上の階段を挟んでの会談。距離感を感じる) (※追記。コメントで「両脇のを数えたら14段ですよ」と指摘をいただきました。てっきり舞台は競技場か何かで、両脇のは観客席だと思ってましたが、ここを数えるんですね。読み込み深いです) で,ザ・マンのお話なのだが,次のシリーズは「天界の神」とやらが対戦相手になるっぽい。 その神々の中にも色々派閥はあるようだが,ブロッケンが言うところ,「超人を殺したくて仕方ないようなアブねーヤツ」がいて,それが「調和の神」だそうな。 (web版19頁。じゃあ何ですか? 外出自粛なのに1か月もキン肉マンの更新ないってことなのかよ?) なんでも,ザ・マンに匹敵する絶大な力を身につけているそうだけど・・・。冷静に考えれば,ザ・マンと同じくらいってことは,悪魔将軍で勝てるじゃないか。 だいたい,神の力が超人強度1億パワーだったはずだけど,キン肉マンの火事場のクソ力はそれに匹敵するんだし,まぁ,極端なインフレにはなりますまい。 そんなこんなで今週は終わり。 個人的にはモーツァルトを楽しむザ・マンだとかが見どころですね。ザ・マンの評価によると,完璧だとのこと。 最近のキン肉マンは試合,試合ばかり。みんなで牛丼を食べる話だとか,温泉に行く話だとか,超人たちのプライベートというか,ザ・マンが音楽鑑賞して普通に生活しているシーンはほっこりした。 ちょうど昨日は安倍総理が星野源の音楽に合わせて家でくつろぐ動画をアップして超バッシングを受けたのだが,モーツァルトなら怒られなかったかも・・・。 (web版313話,3頁目。強要深さをアピールするあやつマン) そんなこんなで,しばらく1月くらいキン肉マンの感想はお休みだ。 その間に法律の本でも読んだり,司馬遼太郎あたりでも読んでおこうか。
2020.04.13
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実に3週間ぶりのキン肉マンですが,皆様いかがお過ごしだったでしょうか。世間ではコロナウイルスだかなんだか,暗い話題が続いているけれど,今週の312話「開かれし天への歩道!!」の感想を書いていく。さて,今週のあらすじなのだけど,ジャスティスマンに導かれてキン肉マンたちがザ・マンに会うというところ。はっきり言って,ほぼ話は進んでいない。ただ,見どことは色々あった。2つほど見ていく。1つが敗れ去った始祖たちの死体の話。「聖なる完璧の山」に入った瞬間,ミラージュマンの死体が転がっているのである。超ホラーである。(web版312話,5頁目「こ・・・この死体は!」)そうなのに,ジャスティスマンは軽く手を触れた後,「さあ次に進もうか」である。シュールすぎて笑えてしまった。埋葬は無理でも,そのマントを体にかけてやるとか,色々できることはあるだろうと。(web版312話,6頁目。もっと他にやることはないんかい!)こんな感じで,「聖なる完璧の山」にはミラージュマンのほか,アビスマンの死体も転がっていた。さらに画面には出てこなかったけれど,ペインマンの死体も転がっているっぽい。始祖たちは墓守では「ふれることすらはばかれる尊い存在」だから埋葬できなかったと言うけれど,本当ですかね・・・。指事がないと動けないという,使い得ない人材感がただよってる。ただ,始祖たちの体って腐ったりしないんだね。普通なら腐敗してとんでもないことになっていると思うんだけど。2つめの見どころとして,再登場したザ・マンである。なんと,ザ・マンは牢屋の中にいて,レコードを聴いていたりするのだ。ザ・マンが牢屋の中にいる,これは想像するに悪魔将軍に負けてしまったことで色々会ったのだろうと思う。なら,レコードは余計じゃないかな・・・。牢屋の中で楽しんでいてもいいのだろうか。そのあたりは来週で教えてくれるだろう。話は変わるのだけど,キン肉マンの休載中,Twitterの世界では色々あった。『100日後に死ぬワニ』が流行ったりもしたけれど,「キン肉マンアニメ化」がトレンド入りしてたことを話さないわけにはいかない。てっきり,「えっ,マジ?」と思って見てみたのだけど,ゆでたまごの嶋田先生が呼びかけたことがきっかけで話題になっただけで,別にアニメ化が決まったというわけではなかった。なんだ,まだ決まったわけじゃないんだ。ちょっとがっかり・・・(参考ネットニュース)。僕自身,キン肉マンとの出会いは小学生の頃見た王位争奪戦である。アニメ化されればファンの裾野は広がるだろう。ただ,ちゃんとファンは見るんですかね・・・。俺も含めて古参のキン肉ファンは若くても30歳過ぎ。40歳過ぎが当たり前で,50代という方もいるかもしれない。そんな層がアニメを見るのだろうか・・・。俺は漫画は好きでよく読むけれど。アニメはあんま見ない。当時は高校生か大学生くらいのときやっていたキン肉マン2世もアニメは見ていなかった。そして,大問題として声優はどうするのだろう。僕はキン肉マンといえば神谷明さんのイメージが強すぎて,彼が声をあてていないと見る気はあんまりしないんだ。このあたりをなんとか頼みますよ・・・。
2020.04.06
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弁護士費用特約によって,簡裁では少額の物損事故の案件が増加したそうな。まぁ,そうだろうなぁと思う。ちょっとタイトルが「弁護士費用特約を活用した」とキャッチーだし,薄いので読んでみた。弁護士費用特約を活用した 物損交通事故の実務 [ 狩倉博之 ]まず,目次をおおざっぱに眺めるとこんな感じ。わりとそっけないので,括弧内は僕の補足である。第1章 総論 (LAC制度の解説など)第2章 物損事故解決のための基礎知識 (請求権者,車両損害,着衣やペットなどその他損害)第3章 物損事故解決の実務 (立証資料,示談書作成)タイトルに,「弁護士費用特約を活用した」とあるけれど,そのあたりの解説はさほどないかなぁ・・・。弁護士費用特約保険について色々な意見があるだろうが,これを使ってしまうと,弁護士は自分の取るべき報酬の金額を自分で決めるということができなくなる。わりと使うにしても,素直に着手金・成功報酬のやり方でやるか,事務作業の繁雑さを我慢してタイムチャージにするべきか,見極めがかなり大事になるのだ。なので,「弁護士費用特約を活用して,高額の報酬を得る裏技」みたいなのが掲載されているのかと思えば,あまりそんなことはない。そういう意味で想定していたのと違った。ただ,物件事故をどうやって解決するか,という点について特化して書かれているので,この点では良書というべきである。だいたい,交通事故系の実務本を買うと,物件事故についての解説の分量は少ないように思う。メインは人身事故になってしまうだろうから,それはそれで仕方がないのだろうけど。色々面白かった点はあるけれど,2つくらいに絞って感想を書こう。1つは,第2章の基礎知識編の「請求権者」のコーナーである。車というのはローンで購入することが多く,所有権留保の状態であることが多い。そんな所有権留保の状態で事故にあった場合,損害賠償請求をすることができるのは誰になるのか,という話である。本書によると,東京地裁交通部の運用だと,全損の場合は所有権留保者(売主)だが,例外もあるとか,分損なら買主でいい,など解説されている。普通の感覚だと,「車を運転していた人が請求権者なんじゃないの?」と考えてしまいがちなんだけど,親名義の車に乗っている状態で事故に遭うだとかあって,僕なんかもけっこう困った経験がある。もっと早い内に読んでおくべきだったね,と思う。2つに,車両損害以外の記述が手厚い,ということである。全塗装か部分塗装か,とか評価損なんてたいていの本にも書かれている。だが,本書はそれにとどまらず,車両が建物に突っ込んだ場合の建物損害,店舗が休業に追い込まれた際の休業損害,トラックの積荷損害などについて裁判例なんかを丁寧に紹介してくれているのが嬉しい。ペット損害なんか低額になるのが相場なのだけれど,競馬の競走馬が死亡した場合に逸失利益で780万円が認められている事案なんか興味深い。話が全然変わるんだけど,学生の頃読んでいた漫画で,1億だったか2億だったかの価値のある「競争馬の精子」を巡って殺し合いが起きるというのがあった気がする。人命よりも,馬の精子の方が価値があるという悲しい現実を思い知ったのだけど,あれば何だったか,いまいち思い出せない・・・。弁護士費用特約を活用した 物損交通事故の実務 [ 狩倉博之 ]
2020.04.02
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