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もちろん、株価変動に関わる全ての情報が瞬時に共有されることはありません。事前にその情報を持っている人に優位性が生まれる訳です。これはランダムウォーク理論の大家であるマルキールも述べています。(※実際にはマルキールは効率的市場論者の異端児ですが)ただし、『この点については与えられた情報に対する本質的価値の算出についての困難さが問題点として挙げられる』とマルキールは主張しています。『長期の予想成長率と他社よりも成長するかどうかについて推し量るのは非常に困難であるが故、他人より優れたパフォーマンスを得ることは難しい』、と。つまり、【それが優れた情報であるかどうか】と、【その情報をもとに優れたパフォーマンスを得られるかどうか】は全く別問題であり、【それら2つに因果関係がある可能性はあるが実際には殆ど,或いは全く関連性がみられない】、という主張です。これは概ね同意します。株価変動を全く気にすることなく優れた情報で優れたパフォーマンスを上げ続ける事ができる投資家は極めて稀でしょう。そのような投資家が存在するのかどうかすら分かりません。株価上昇を決める要素は何でしょうか。大きな要因は、将来の利益成長であることは間違いありません。(将来利益成長しない企業が株価上昇するためには注目を集めるサプライスが必要になます)将来の利益成長を推し量る事の困難さについては、どのような分析を行うファンダメンタル投資家であっても理解しているでしょう。市場のコンセンサスと大きく食い違う時に株価が大きく変動するのであれば、その変動に大いに関係のある情報を収集できるかどうかがカギになります。しかしその株価変動に大いに関係のある情報を持っていたとしても、その情報を活かせるような投資行動を取れるかどうかは別問題であるため、ただ情報を持っていただけでは他人より優れたパフォーマンスを得続ける事が困難です。何よりも、その情報が株価に与えるインパクトは市況に大きく影響を受けてしまいます。結局、その情報がどれだけ優れた情報で、今後の株価にどこまでの影響があるかどうかは誰にも分からないのです。分かっていればもちろん誰にでも有効活用できるでしょうが。そして何より、その情報により既に株価は変動しているかもしれない。株価に織り込んでいるかどうか、またどの程度織り込んでいるかどうかは誰にも分からないので、その情報をもとにした投資はどうしても疑心暗鬼になってしまう。結局のところ、株価変動に影響を与えると思われるような情報によって長期的に市場平均より高いパフォーマンスを得続ける事は極めて困難だと僕は思います。
2016.06.27
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さて、ここまでを前提として、ランダムウォーク理論の話に戻りましょう。もうすぐこの話は終わります。ランダムウォーク理論というのはどういうものでしょうか?狭義の理論では、テクニカル分析は役に立たない、というものです。広義の理論では、ファンダメンタル分析もテクニカル分析と同様に役に立たない、というものです。テクニカル分析やファンダメンタル分析を元にした、あらゆる売買が無意味なものであり、それに基づいて継続的に利益を上げ続けることのできる投資家は居ない、というものです。広義の理論は市場が非常に効率的であるという意見に収束されるため、効率的市場理論とも言われます。少なくても、人間が自分のやり方で運用するのであれば、それらの長期的な運用結果のほとんどが市場平均を上回らない。何故なのでしょうか?効率的市場理論ではそれは分からない、といいます。理由は分からないが、現実的には殆どが市場平均を上回ることがない。これを実証する様々なデータがあります。ほとんどが市場平均を上回ることがないということは、残りのほんの一握りが莫大なリターンを上げている事になります。しかし、ランダムウォーク理論の支持者は「それらのほんの一握りも、ほとんど全てがその後市場平均を下回る」と主張します。極々一部の例外があるが、そのような稀有な存在を抜かせば、「全ての手法が市場平均を上回り続ける事はない」。短期的には市場平均を上回る事もある。しかし長期的に上回り続ける事は出来ない。長期的な運用成績の平均パフォーマンスが市場平均を大きく上回るのは不可能に近く、また少しでも市場平均を上回るだけでもかなりの『幸運』に恵まれないと不可能だろう。以上が、ランダムウォーク理論の概要です。[市場の非効率さを利用した鞘抜き投資]であるバリュー投資を用いている投資家の中には、ランダムウォーク理論を否定する投資家が多いです。しかし、かれらの多くはテクニカル分析を否定している以上、狭義のランダムウォーク理論支持者ということになります。ランダムウォーク理論にも色々あり、単純に一つの理論ではないという事に注意したいところです。ただし一般的にランダムウォーク理論というと、ファンダメンタル分析を含むあらゆる分析に基づいた行動が無駄であるという、広義の理論を指します。バリュー投資の生みの親であるグレアムは、晩年ランダムウォーク理論を否定しなくなっていました。『昔のように歪んだ市場ではなくなった今、それは確かに正しいかもしれない』。『私の意見は効率的市場論に近い』。手相占いは統計学を元にした占いです。少し前に流行った動物占いなんかも同じです。統計学を否定しても、統計でそのような結果となっているので仕方ないのです。生命線が長い人が長生きする。たぬきの男は大器晩成。何も科学的根拠はありません。もしかしたら、少しくらいは科学的根拠があるものも存在するかもしれませんが、多くの人を納得させることは出来ないでしょう。統計結果に文句を言っても仕方ないのです。統計の取り方に疑問を感じるものもありますが、ランダムウォーク理論の根拠になっている統計結果は否定の余地がほとんどありません。
2016.06.22
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徹底した財務諸表の分析を行うことで、過去の傾向に照らし合わせることで、社員への聞き込みを行うことで、八卦予想が当たる確率がもしかしたら1%位は上昇するかもしれません。ただ、それで劇的にパフォーマンスを向上させる事が如何に無理かは、それらを徹底的に行っているであろう投資家が過去に山ほどいたという事実で否定できます。もしかすると、必要以上の事をやることで、逆に八卦予想が当たる確率は2%減少するかもしれません。残念なことに、努力と八卦予想の的中率は比例しないのです。(学校の勉強とは違うのです)それでは努力しても意味がないのか?もちろん意味はあります。自分が納得のできる八卦予想の手法を貫くことで、明確なイメージを元に信念を持った行動ができ、八卦予想が当たった時または外れた時の対応を自信を持ってできるようになります。その効果の方が八卦予想が当たる確率の上昇それ自体よりも大きいです。もしかしたら、その効果はパフォーマンスを年3%近くも押し上げるかもしれません。多くの投資家が期待する効果には届きませんが、それでもパフォーマンスが3%向上する効果があるなら大したものです。八卦予想の的中率よりも重要になるのは胆力です。投資手法よりも投資哲学が重要です。低PERの方が良い、低PBRの方が良い、低PERかつ高ROAの方が良い。低PERよりも低PCFRの方が良い、そういったアノマリーを信じて小手先の手法ばかりいくら磨いたとしても、投資哲学が確りしていないと長期的な成果に結びつく事はありません。付け焼刃の知識から小手先の技術を磨いて楽をしようとしてもダメなのです。
2016.06.17
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株式投資は、確たる信念があった方が良い結果に結びつきます。信念を持って行動することで、周りのノイズに影響されること無く投資ができるからです。この信念を維持する為に、信頼性がないけれども、前述した[確たるイメージ]が役に立ちます。ただし、ここで注意しないといけない事があります。[信念をもって周りに影響されないで投資をすること]と、[一つの手法を貫く]のは全く違う、という事です。古今東西、機械的に同じ手法を取り続けたファンドは数多くあります。それらの多くは、短期的に市場平均を上回ることがあっても、長期的には市場平均を下回る結果となっています。何故でしょうか?それらのファンドが頑なに守った投資手法・銘柄選定が悪かったのでしょうか?必ずしもそうとは言えません。大型株ファンド、小型株ファンド、成長重視ファンド、利回り重視ファンド、その他様々なファンドがあるからです。様々なファンドが、長期的には市場平均を下回っている結果となっています。ファンダメンタル分析・テクニカル分析に関わらず、今後の株価推移予測はイメージの上に成り立っています。イメージは八卦予想で、結果として間違う事が多いです。既に現在の株価が多くの人の八卦予想の上で成り立っているので、当然です。自分の八卦予想が当たるというのは、運が良かっただけの話です。八卦予想のイメージ通りにいかなかった場合、どう行動するかを決めておく必要があります。優れた成績をあげている投資家は、確たる信念のもとに行動しています。自分の行動の理屈の為に、このイメージをどれだけハッキリと捉え続ける事ができるか。それが重要になります。しかし、この信念通りに行動したところで、八卦予想はあくまで八卦予想なので、それほどパフォーマンスが向上するわけではありません。八卦予想が当たり続けたからといって、それは決して予想する能力に長けているという訳ではありません。その予想が時代の流れにあっていた、運が良かった、という事です。この事に多くの人は後になって気が付きます。もし貴方が株価推移を予想をする方法として特定の手法を続けていて、その手法が優れたパフォーマンスに結びついたとしても、それはその八卦予想の方法が優れていたという訳ではありません。信念を持ち、自分の八家予想を元に行動した貴方のやり方が時流に乗っただけです。時流に乗れるかどうかは八卦予想の信頼性とは別の話です。優れた投資成績のファンドが優れたファンドなのでしょうか?断じて違います。優れた投資成績のファンドは[その時に時流に乗っていたファンド]です。そのファンドが引き続き時流に乗り続ける事ができるかどうかは分かりません。投資成績の劣っているファンドがこれからも劣る投資成績となるかどうかも分かりません。逆に、時流は常に変わっていくので、その時に劣っているファンドの用いている手法がこれから優れていく可能性が高いとも言えます。しかし、劣っているファンドは顧客に解約されていきますので、その後長期的に継続して同じ手法を貫くことが難しいというのが実状です。手法を変えなければその内ファンド自体が消滅してしまうかもしれません。逆に、優れた投資成績のファンドは、その投資成績によって、自らの手法を変え難くなります。これが、多くのファンドが市場平均を上回り続ける事が出来ない理由です。この簡単なことを理解していないと、ファンドの選ぶ銘柄よりもお猿さんのダーツで選んだ銘柄の方がマシだという短絡的な考えに陥ります。
2016.06.12
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ただし、株価は常に適正価格という現状認識が同じでも、将来どうなるかの予測は違います。ランダムウォーク理論では、今後株価がどうなるかの予測はできないと言います。将来の適正価格である将来の株価は、現在の適正価格である現在の株価からランダムに動くのであって、それを見越した投資行動は不可能である。何故なら、株価は[将来の値動きの可能性]を完全に織り込んでいるからである。であるからこその、適正価格なのだ。ランダムウォーク理論では、そう主張します。この将来に対する予測が、僕は若干異なります。この『若干』というのは、ほとんど一緒だがほんの少し違う、という程度です。今までずっと、この違いをうまく表現することができませんでした。『株価は常に短期中期長期すべてを織り込んだ適正価格。でも明日の適正価格とは一致しない』この概念に、その若干の違いが含まれています。明日の適正価格を予測するのは、不可能です。当然、明後日の適正価格も、1年後の適正価格も、10年後の適正価格も予測は不可能です。何故なら、市場参加者全ての考えがどのように変わるかなど、全く分からないからです。しかし、当たるも八卦の適当予想ならできます。確たる根拠はありません。予想するには山のような前提が必要で、無限ともいえるような膨大な株価変動要素を無視します。この八卦予想、当たる可能性は全くありません。しかし、ランダムウォーク理論が主張するように[株価変動の予測は何の価値も無い]のでしょうか?僕は[株価変動の予測はほんの僅かに価値がある]と思います。株価変動の予測といっても、適正と思われる価格に今現在より近づくと、上がるのか下がるのか、方向性がどちらにいくのか、漠然としたイメージが頭に浮かぶ程度です。どの程度上がるのか下がるのかは全く分かりません。イメージできるのは方向だけです。いつその方向に向かうようになるのかは全く分かりません。想定しているより長い間かかって、その結果状況が全く変わって想定しているほどの変動がなくなるかもしれません。或いは、今の株価よりも上がる(または下がる)、ということは永久にないかもしれません。それでもこのほんの僅かな価値は、[膨大な時間を費やしてまで分析する価値]があるのでしょうか?答えはYESでもあり、NOでもあります。膨大な時間を費やして分析している多くの投資家が思っているほどの価値がない事は間違いありませんが、やらないよりはやった方が良いという事も間違いありません。そのイメージの信頼性は限りなくゼロで、ほぼ無価値ですが、それでも無価値ではありません。このイメージの価値は、むしろ株価が実際にその通り動くというよりは、[そのイメージを持って投資をすることができる]ことにあると僕は経験則から感じています。
2016.06.07
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さて、それではランダムウォーク理論でいう[適正価格である株価]は企業価値の変動に対して同じような変動をするのでしょうか?残念ながら、(多くのファンダメンタル投資家がどうしても納得しないとしても)その問いにはYESと答えざるを得ません。勿論、読者の皆様がご存知のように株価は1日で大きく変動する事が多く、短期的に2倍以上にも半分以下にもなります。企業価値は株価で決まるとすると、企業価値が実際に極めて短期間で2倍以上にも半分以下にもなっている事になります。当然、財務諸表を元に企業価値の分析をする「ファンダメンタル分析」を重要視する投資家には理解し難いのですが、しかし文句を言っていても仕方ありません。企業は常に株数に応じて株価で切り売りされています。時価総額が、企業の販売価格、ひいては企業価値なのです。企業価値とはどのように決まるのでしょう?それは、前回株価の構成要素として挙げた、全ての要素がお互いに影響しあって決まります。株価で企業価値が決まっているので、当たり前です。それはおかしい、と愛すべき読者様は言われるかもしれません。毎年安定した収益が見込まれるPER5倍のこの企業の価値が、倒産寸前のあの企業の価値よりも低いという事は有り得ない、と言われるかもしれません。PBRが0.5倍であるこの黒字企業の価値が、PBR10倍であるあの赤字企業の価値を下回っているという事は有り得ない、と言われるかもしれません。しかし、それでも僕は断言します。企業価値は時価総額です。株価に高い安いと文句を言っていても、仕方ないのです。株価の話ではなく企業価値の話だ、企業価値がその日のうちに2倍になったり半分になったりする訳ではない、と読者様は繰り返し言われるかもしれません。企業の本質的な価値は株価とは違う、TOB価格と大きく違うような株価は企業の本質的な価値を表していない、と。しかし、神の見えざる手(アダムスミスの言う「見えざる手」)に文句を言っていても仕方が無いのです。株価だけが企業価値を反映した適正価格で、あとは幾ら尤もらしい理屈をつけても、企業価値にはなりません。ここが肝の部分です。株価が企業価値を表しているのであって、企業価値が株価と乖離しているという事ではありません。現在まで、株価を算出できるような公式は見出されていません。企業価値の算出式など、幾らでも存在します。未だに計算式によって大きく価値が変わります。自分で株価と異なる企業価値を算出するような手法は例を欠きませんが、そのような株価と企業価値が違う前提の投資手法は『すべからく欺瞞』です。理論価格、などというような訳の分からない理屈は、オカルトの類です。これはランダムウォーク理論も同じ主張をしています。
2016.06.02
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