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2010.08.17
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カテゴリ: 映画/ヒューマン

「腎臓の提供を?」
「(姉は)何ヶ月も腎不全なの」
「ドナーの同意が必要だ」
「でも私は親の保護下の未成年者よ」

小説に様々なジャンル、例えば恋愛小説だったり歴史小説だったりあるいは推理小説があるように、映画にも同様のジャンルがある。
しかしそんなことを言ったら「今さら何を」とヒンシュクをかってしまうかもしれない。

映画の世界は小説よりもっと具体的、かつ視覚的分野なので、泣かせるところは多いに泣かせ、一般的には愛と感動のドラマに仕立てなければならない。
そこでは、間違いなく即効性が求められているため、監督と脚本家と役者陣のプレッシャーたるや、並々ならぬものがあるだろう。

結核菌の特効薬が普及してからは、サナトリウムを舞台にした作品というのはほとんどなくなり、最近の傾向ではケータイ小説でも話題になったが、白血病で若い子が亡くなるという悲劇的ドラマが主流であろう。
だが、そこから一歩踏み込んだところで、臓器提供・臓器移植について扱った作品というのは、まだまだこれから開拓の余地があるに違いない。
本作「私の中のあなた」も、大筋では人の死を扱った作品であるが、単なるお涙ちょうだいドラマとは一線を画している。
“全ての臓器提供・臓器移植=(イコール)善”という図式が正しいか否かを問いかけているのだ。

ケイトは白血病に苦しむ少女。
その妹・アナは、姉を救済するため、いわば臓器を提供するドナーとしてこの世に生を受けた。
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母親であるサラは、なんとかケイトを助けたいがゆえに、遺伝子操作によって出産したのであった。
そのためアナは、姉のために臍帯血・輸血・骨髄移植などの提供を余儀なくされて来た。

ところがアナが11歳の時、腎臓移植を強いられることで、ついに両親を相手に訴訟を起こすのだった。

病気の娘に盲目の愛情を注ぐ母親役に扮するのは、キャメロン・ディアスである。
この女優さんの迫真の演技は、鬼気迫るものを感じた。

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家族の中に一人でも病気を抱えている者がいると、それが深刻な病気であればあるほど、まるで連鎖反応のように問題が重なっていく。
例えば本作では、アナは健康な体であるにもかかわらず、姉のためにそのドナーとして幼いころから注射や手術をして身体にメスを入れている。
アナの兄・ジェシーも、何らかの影響で失語症を抱えるはめになり、家族とは離れ、施設に入所していた。
一方、当事者であるケイトは、もう病気と闘うのを辞めて早く死にたいと思っている。

そんな様々な思惑が絡み合い、物語はより重厚なテーマへと深みを増していく。

脳死状態となった方が生前、そのように希望されていたとのこと。
リアルタイムで話題となっていることも踏まえて、本作「私の中のあなた」をあれこれ検討しながら観るのも有意義なことではなかろうか。
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2009年公開
【監督】ニック・カサヴェテス
【出演】キャメロン・ディアス、アビゲイル・ブレスリン、ソフィア・ヴァジリーヴァ

また見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。
See you next time !(^^)





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最終更新日  2010.08.17 08:21:20 コメントを書く


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