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2016.05.29
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カテゴリ: 映画/アニメ
【横山光輝「三国志」第六巻】
20160529

「龍は小さくも大きくもなり、小さくなれば沼に隠れもするが、いったん大きくなれば雲を呼び、霧を吐き、天空を駆け巡る。龍は天下の英雄にもたとえられよう」

人は皆、自分のルーツに興味を持つ。
「自分とは何ぞや?」と内観した際、いやでも両親の家系をひもときたくなるものだ。
たとえ未婚の母から生まれた子であっても、母一人だけの力でこの世に生を受けたわけではない。
必ず父という存在がある。
己が何者であるかを知るのはなりゆきではなく、意志なのだ。

第六巻では、天下随一の武勇を誇った呂布も最期を遂げる。
アニメでは、はらはらと降りしきる雪原の中、仁王立ちとなり一身に矢を受ける弁慶の如く絶命するシーンで終わっているが、史実はかなり無様な最期だったようだ。
劉備に罰を軽くするよう口添えを頼んだり、曹操には涙を流して命乞いをしたという記録がある。
呂布ともあろう人物には、似つかわしくない小心者ぶりだ。


話を戻そう。
劉備はもともとしがない草履やむしろ売りで、日々の糧にも困るほどだった。
ところが母親がそのルーツを明かすことで、がぜん自分という存在が明確になるのだ。
劉備は中山靖王の末裔、孝景皇帝の遠孫にあたる劉雄の孫、劉弘の子だという。
三国志第六巻においても、劉備が献帝に拝謁した際、そのルーツを問われ、劉備は堂々と答えている。
献帝はすぐさま皇室系図で確認をし、劉備が天子の叔父の世代にあたることが判明する。
劉備にとってのルーツとは、アイデンティティそのものであり、己を知るための再確認でもあるのだ。

さて、あらすじはこうだ。
徐州の呂布のもとにいて、画策を続けていた陳珪、陳登父子の助力により、曹操と劉備は呂布を討つことに成功する。
都へ凱旋した曹操は、劉備を献帝に会わせ、手柄の報告をさせる。
天子は劉備の姓に興味を持ち、そのルーツを問うと、劉備が帝の叔父の世代にあたることがわかった。

一方、曹操は虎視眈々と天下を取る機会を狙っていた。
ある時、曹操は天子を招いて狩猟を楽しんだ。
その際、劉備、関羽、張飛も随行した。
天子の前を大きな鹿が駆け出すのを見つけ、天子は張り切って弓を引くのだが、矢は当たらない。
3本ほど射かけても、1本も当たらない。

曹操は遠慮もせずに天子の弓矢を借りると、ものの見事に鹿に命中した。
遠方で猟場を取り巻いていた文武の百官らは、金色に輝く矢が鹿に当たったのを見て、てっきり天子の射た矢であると勘違いしてしまい、大絶賛。
そこで曹操はすかさず天子の前に立ちふさがり、鹿を射たのは自分であると豪語するのだった。
あまりの無礼さゆえ、関羽が思わず刀に手をかけるのだが、だれよりも惨めな思いに打ちひしがれるのは天子であった。
天子は曹操に対し、ある一つの決断を下すのだった。

さて三国志第六巻では、次の4話から成っている。

第21話 月夜の同士討ち
第22話 呂布雪原に散る
第23話 放たれた虎
第24話 張飛の兵法

見どころはやはり、劉備と曹操が訣別するプロセスだろう。
これまでは、何かと曹操の才覚に一目置いて、一歩引いたところに立ち位置を決めていた劉備だったが、度重なる曹操の帝に対する非礼に、ついに反旗を翻すのだ。
結果、帝の忠臣をはじめとする血判状に、劉備の名も連ねることとなる。

三国志では、曹操が国家の逆賊として徹底的に悪役を引き受けているが、実際はなかなかの風流人なのである。
梅の林に席を設けて酒を酌み交わしたり、詩を吟じたりする様は、曹操にはあっても、劉備にはまず見られないからだ。
英雄たちの個性の違いを楽しむのも一興。
三国志はロマンであふれているのだ。

【発売】2003年 【監督】奥田誠治ほか 【声の出演】中村大樹、松本保典


※ご参考
横山光輝「三国志」の第一巻は
20160425
コチラ

第二巻は
20160501
コチラ

第三巻は
20160508
コチラ

第四巻は
20160515
コチラ

第五巻は
20160522
コチラ



20130124aisatsu





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最終更新日  2016.05.29 06:57:53
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