箱根の関所
?
去って行く老人を呆然と見ていた新吾に、「 何ですかあの爺は
。日本一の葵新吾様が両手をつかれたり」と新吾の愛馬の手綱をとって 突然近づいて来た男が声をかけて来ます
。


「 貴公は
?
」と新吾が訝しげに聞くと、男は新吾の剣技を慕って後を追いかけて来た者、どうか門弟に加えてほしい、と 両手をつき頭を下げます
。それを見て、先ほどまでと違って表情も柔らかくなった新吾は、
新吾 「慕ってくださるのはうれしいが、自源流の剣技を求むなら、秩父の山へ
行って 真崎先生の門人になるがよい
」


そういう新吾に、流派がのぞみではなく、「 新吾先生をお慕いして参ったのです
」というのです。
新吾が「折角だが、私は 修行の道にあるもの
、とても人 を教える自信はない
。・・お諦めください」
そう言うと、愛馬に乗り走り去って行きます。男は、門人にしてもらうまでは傍を離れないと、追いかけて行くのです。








西丸派の刺客大賀陣蔵が新吾の後をつけています。その大賀陣蔵を隠密甲賀平八郎がつけています。
新吾は 愛馬を飛ばし
、しばらく駆けて行き、 馬から降り
鞍の調整をしていると、 あの男が
にこにこしながら近づいてきたのです。




新吾は驚きの表情で、「貴公は、先刻の」と言うと、「はい」と言い、近道をして待ち受けていたといいます。「 それにしても
」と言う新吾に、男が「足の早いのと、耳の早いのは、 六尺六平太の特徴
です
」と言うのを聞いていて、
新吾 「 六尺六平太
。 あっはっは
、 変った名前だ
」
新吾が馬に跨ると、六平太はしっかりと馬のくつわをとって歩き出します。新吾が「まだ門弟にするとはいってない、くつわを放せ」と言っても、六平太は「門弟にしていただくまでは、放しません」と。
新吾 「困った奴だ。 じゃあ
、 好きなようにしろ
。・・だが、そちが手を放したら
逃げ出すかもしれんぞ」




それに対し、六平太は、
六平太「逃げようとなさっても無駄です。拙者は馬に劣らぬ早い足を持っておりま
す。それに、どこへお逃げになろうと、一里先までの物音を聞き分けるこ
の耳を持っていますから」
新吾 「 一里先の物音
、 嘘をつけ
」
六平太か嘘ではないと新吾にいったとき、六平太の耳が動きます。笑っていた新吾も、 その様子に
、 何か気になったのでしょう
。見た方向に、何気なく通り過ぎる大賀陣蔵と甲賀新八郎の姿がありました。



六平太に「先生は 剣気に対しては敏感
ですが、声なき声に対しては、 私の耳に劣りますな
」と言われた新吾が「どういう意味だ」と言うと、六平太をお供にくわえてくれれば、この耳が厄除けになる、といっていたとき、またもや六平太の耳が動きます。
新吾 「どうした、 また何か
」


六平太「この方角なら、箱根の関所辺り」
新吾 「 箱根の関所
?
」
続きます
・
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