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「あーちゃん、ちょっとだけ、悲しい話をしてもいい?」彼女はいつになく、真面目な、しおらしい様子でそう言った。また宇宙人の本買ったとかじゃないよなあ、なんて思いながら、いいよ、と何気ない風を装って聞く。基本、明るい子だから、こんな風に低体温モードで来られると、調子が狂う。というか、こういうのをレ イプ眼とかいうやつではないかと、想ったり―――する。「―――実はね、幼いころに書いた意味不明な漫画が見つかったの」「う、うん」しかし、幼いころに書いたものは大抵、意味不明である。まず、五歳以前ともなると、日本語自体が、もう、どうか怪しい。そのくせ、在りし日の自分とかいうものは、無自覚で、楽しそうに自信満々に書いていて、非常に中原中也である。しかも、そういうのに限って、大層ジジババ様に愛されるらしく、何かというと、そんな話題を振ってきたりする。「でもあるよねえ、そういうの・・・・・・」まあ、厚顔無恥、照れとか恥ずかしさ振り切って、マッハーだGO!GO!GO!っていうようなこの子だって、恥ずかしいことあるよなあ、と思って親身になって―――聞こうとした・・・、わたしが、まず馬鹿だった。というか、甘い。「押入れにあってさ、どうも、小学生の時みたいのなんだ。それで、どうやらタクシー運転手の視点からスタートするの」ん? 小学生? 五歳児とかじゃなくて?でも、小学生のあなたにしてはマトモ―――んん、咽喉がいがらっぽいな、こほん・・・。「それで、タクシーに犬が乗って来たの。いや! 多分犬だと思うの。顔がもう、グジャアってしてるけど、画力の問題だと思うけど、―――タクシー運転手も、ひどいけど、まだ人型ではあるし、車も、まあ、まだかろうじて長方形の棺桶みたいなのに、タイヤを装備って感じでまだいいよ。でも犬は荒い、もう、すさまじく粗い―――」真面目に喋っているのか次第に判別がつかなく―――なってくる。面白いのだ。面白い子が、真面目に喋っても、やっぱり面白いのだと気付かされる・・。「ね、かろうじて、犬だと思うの、(絵も見ていないのに何を言えと?)あの耳は羊でも馬でもうさぎでもない、あれは犬、間違いなくドッグ、その人!」わたしは小学生で仮に漫画を描いても、いやどう見繕っても、タクシーの運転手を思いつかないし、まず、犬が客という設定を思いつかない。というか、急にはげしく喋るな、吹き出しそうになるじゃない!なん―――て、思いながらも、それは多分、負けだ、勝ち負けではないけど、やっぱり、負け、だ。「で、でもまあ、画力は仕方ないんじゃない?」「―――フウ・・問題は、画力じゃないの」なんで溜息をつかれなきゃいけないのかわからないが、悩み多き思春期の彼女に幸あれ!でも、もしかしたら、それは犬じゃなくて幽霊なのかも知れない。(我ながら、ナイスアイディア―――素晴らしいフォロー、)そう思うと、少しはそれがホラー漫画のような気がしてくる。「うん」と、安心したのがいけなかったわけではあるまい、いつも予想の斜め上をはるかに通り越してゆく―――。「その犬の客がね、とても大事そうに石を抱えているの。ちなみにこの石が何なのか、最初から最後までわからないの」哲学の石などというような大層なものではあるまい―――。賢者の石?石じゃなくてバックとかじゃ?けれど、彼女が犬の耳を判別したのなら、それは確かに石なのだ。確かに意味深だ。しかしそもそも犬が客の時点で、特殊な状況が発生している。石の一つや二つ、それは持つだろう。よくはわからないけど、持つだろう。「でも小学生の頃だもん、そういうこともあるよ」「フウ―――もちろんそうだと思う」さっきから何で溜息をつかれなきゃいけないのかわからないが、でもどうやら本当に落ち込んでいるらしいなと思った。「それで?」「それで―――運転手は、おいおいシヴォルザイクよ、金を持っているのか、とか言うの」「知り合いなの?」「わかんない、種族名のようにも思えるし、名前のようにも思える」でも最低ここでホラー路線は、ファンタジー路線へ進んだような気がする。つまり二足歩行する犬が登場するファンタジー。だって幽霊に向かってシヴォルザイクよ、ということは有り得ない。「それでその犬が、ちゃんと持っていると財布を見せてくるの。いっておくけどタクシードライバー、俺は元プロ野球選手だと言うの」わたしは実のところ、内心、ちょっとウケた。不謹慎だけど―――仕方ないじゃない!だって、ホラーかと気を回して、いやこれはファンタジーだと考え、そして、プロ野球選手という単語が、スパコーンと弾丸ライナーでホームランみたいな感じで、おもむろ唐突にやってきたわけだから―――ねえ・・・ねっ。それに、彼女の話はいつものように次第に変なところへ、ありえないところへ、持っていこうとしている。「それで、車は走るの、全然走ってないの、ぶるるるる、って擬音だけが大きくエキサイト文字しながら、書かれていて、そこから、最近どうだいとか、あのちんこはどうなったとか、終いには、バナナはうまく剥けるようになったかいというの・・」わたしは次第に、真面目な顔をするのが厳しくなってきた。いや小学生だから多少露骨なシモネタもあるけど、ちんことか、バナナはうまく剥けるとか、やめりょ! もう、やめりょ! 「それで、いまは肛門科の医者だって言うの。(すみません、もう言っている意味が・・)それで最後のページがやってくる、アナルSEX!」「―――う、うっ、うん」わたしは思い切り、頬の肉を噛み、太腿に爪をブッ刺した。でも俯いても、眼をきつく結んでも口の震えはおさまらない。耐えろわたし! 耐えるんだわたし!「―――泣きそう! ねえ、あーちゃん、なにそれ、全然おもしろくない」 、、「そこ?」
2021年04月30日

俺は強盗、だから釣りをする。精神の安定をはかなければならない職業だからだ。アナログディスクなものだ、心ってやつはよ。肛門科医が女じゃなきゃ嫌ってようなもんだよ、まったくさ。昔の迷信で、ビール工場に女性が入ると腐るってのがある。あと、雷ね、イギリス紳士や淑女がビールが酸っぱくなるって、本当に言ってるかどうかは知らないけどね。強盗の仲間には、詐欺や、脅迫、まあ、ヤクザ界隈も多い。宗教勧誘にはまって、どうして戦争するんですか、とか言ってる奴もいる。宗教活動する奴はエロい奴が多いよ、もう百パーセントそう決まってんだ。ゴルフをしたり、自宅農園づくりと様々だ。タヌキがたぬきそば食べるようなもの、上野動物園の獣医の実験。ある仲間は、趣味で美人局したり、盗聴したりする。強盗というのはよお、大変なんだよ。外国人ビジネスマンが嫌いな、ナマコ、納豆、おでんを、並べられるようなもんだよな、ジツサイ。そういえばこの前、一人暮らしの若い女の家へ、強盗に入ったら箪笥にバイブが入ってたな。その時、ガチャッってドアが開いちまった。不覚、どうも仕事じゃなくフレッシュ休暇か。俺はしかしその時、蛇に向かって蛙が体当たりしていく、ユーチューブの映像を思い出したね。朝顔の葉が互い違いにくっついているようなもんだよな、なんだろうな、この緊張感ゾクゾクするぜ。いまがどうかは知らないが、七割四分一厘だってよ。何だと思う? 電話をかけて相手に繋がる率だよ。かくて、バイブを持ったオレとよお、美人じゃないけど蔭ありそうな女との対面よ。ぶいいん、俺はバイブを動かした。女、ビクッとした。蝉の鳴き声の順番みたいなもんよ、問答無用の展開。俺はどうしてか、キウイのことを考えたね。キウイ、それは何か俺を卑猥な天狗の仮面にする。ニイニイゼミ、アブラゼミ、ミンミン、それから秋の季語のツクツクボウシとヒグラシってね。そうさ、俺は言ってやった、股間を、オッキしながらね、マイケルジャクソンの、あの歌みたいにね。日本語だとこう聞こえる、でもファンから苦情、オッキオッキ!お嬢さん、これは何ですかな。もう強盗が、違う犯罪をしでかす始末。一光年が九兆四千六百五億キロメートル。ああ、アンドロメダまで二百万光年のエロス。パトカーに轢かれたら、何故か国が賠償金を出すような展開。吉原で遊ぶ優雅な手続き。ぶいいん、静まった部屋で、女が言った。通販で買った、そう言った。使いこまれているじゃないか、悪い?女は俺を見て、どうも早合点した。木からプラスチックが出来るようなもんだよな、マジで。わたしが会社の横領をしているのに気付いたのね。俺はすかさず、バイブを顔面に押し付ける。ふへへ、お嬢さん、蝶の交尾って知っていますか、あれはね、生涯一度しかしないんだ、一種の失神状態なんだ。ぶいいん、と鳴っているバイブ、もう表情は姦通罪喰らった北原白秋だよ。隣の家の人妻を妊娠させて童謡書いてる、すばらしい文化人だよ。腰を押し付けながら、オッキオッキ。オットセイもビックリな夜の芸だよ。ぶいいん、俺はパイオツを握ってやったね。小ぶりだったが弾力がある。お嬢さん、ぶいいん、お嬢さん、ぶいいん、―――まあ、強盗ってのは大変だよ。もうね、放っておくと、妄想癖になってしまう、お医者さんが言う、アンタは本当のところ、強盗じゃないんだよ、薬のんで安静にしなくちゃいけないよってね。竜宮城行って三年が三〇〇年だね、アインシュタインの特殊相対性理論。こいつ、多分刑事なんだ。そして、隣に若い女がいる。医者が言う、これ、アンタの奥さんだよ、ああそれもわからないのか。馬鹿言うな、俺はそう言った。そう言うと、シクシク、若い女が泣く。俺は病室に閉じ込められそうになったから、抜け出して、いま、釣りをしている。まったく変な奴等だよ、俺を捕まえようとしないんだからな。東京の麻生から六本木みたいなもんよ、世界中の大使館様が、夜の巡航ミサイルするのさ。
2021年04月30日

、、 、、そらに、くいがあったらいいな、 、、 、、 、、とおもった、ことが、ある。、、、、 、、とうめいな、ゆか。、、 、、 そこを、のぼっていけたらいいな、と。 *、、、、 、、そうぞうする、がわ、から、、、、、 、、そうぞうする、がわ、へ。、、 、、、、くい、は、とりのえ、になって。、、 、、、、そら、は、おりがみ、になった。 *、、、、、、、そらとぶさかな、も、、、、、、、、、そらとぶせんかん、も。、、、、、、、そらとぶかたな、に。、、、、、、、そらとぶばなな、に。 *、、 、、、、、、、 、、そらは、ぶつりほうそくに、さからって、 、、 、、おちたりもする、いどのように、あなのように。、、 、、 、、、、そらは、なにもないくうかんではなく、、、、、 、、 、、、、かくじつに、ひとの、くうかんになった。 * 、、 、、、、 、、、、 、、、でも、とりの、けんめいな、ばさばさ、というはおと。、、、、 、、、 、、、、、ひこうきの、ぐおお、という、ひこうおん。、、 、、それを、わすれてはいけない。、、わすれてはいけない、き、がするのだ。 *、、 、、ちいさな、なぜ、がある。、、 、、 、、、、、、ちいさな、なぜ、は、いきるあかしだ。、、 、、そらには、なにも、ない。、、 、、、 、、 、、、なにもない、ところ、を、とりはとんだのだ。
2021年04月30日

いま―――
2021年04月29日

2021年04月29日

水平線の向こうにくっきりと寄りつどった、あの向こうに、漸層の最下底の謐けさがある。どこか遠い別の世界で花咲いているアイデンティティを、片羽根を斜めに拡げていた蝶のようにして、刃物を思わせる冷たさで、咽喉に触れる、夜の果ての旅、鮮やかさを増して―――暗く硬く冷たくなる・・・・・・。ああ、殉教者は不在・・・・・・不在・・・。―――雨と落雷。濡れた頬と合羽。誰も知らない国、きらめきと、さよならで、波は高い。意味の途切れる境界線、流転の海、衛星からの通信、静寂の大饗宴、波が高いから砂鉄の臭いも消えてゆ―――く。琺瑯の涙に水銀の滴り。誇大妄想狂に被害妄想の人類は惨めで卑しくてヘブンリィ、僕の心はさらに重い。刻まれた大団円もない、延長線上の円環のシステムもない、へリオトロオプじゃないよ対岸のビルディング、エゴン・シイレみたいだ、テクノロジイが何日も何十日も、何百日も何千日も、音信不通。撞着、飛躍、そして上っ面撫でた密やかな影や、黴。静かに傾いていきやがるんだ、運命? それは忘れ去られた、遠い昔の記号・・・。安逸の領ずる水晶球とてもう流す謂われもない。おもむろに横たわる腐敗の森で白痴に澱む。その細胞の移動、伸張、褶曲の果てに何を夢見よう。君には硝子を。僕には風船を。君にはアイスクリイムを。僕には地獄を。「―――丘に上がろう」ここは工場から見える、せせくぐまった、海。おびただしい形態発生の運動が飢餓のレヴェルに達してる。幾多の年月が夏の樹の薫りにしていっ―――た。怒張する血管、そりかえってむしろなめらかに嘯く終局点。中華料理屋へ何故入っていくんだ。テレビが何だって言うんだ。女が何だって言うんだ、傷口のような断崖を覗き込めよ、形のない壁のしみを羨めよ、消え入るようにかすかな呼吸して、吐息して、紙屑の波だけが白い。骨ばり歪んだあの銀色の部屋の真夜中の澄み切った狂気、雪にも呪詛にも似た亡霊の詞華集―――。水に小石が流され、風に葉は飛ばされていった、頭上高くへ、宙へ、まだ網膜の中に燦然として見える残酷な嘲笑。宇宙への迷走にも似たサクリファイス、病める脆さなら竪琴のように謳え、黒い巨大な網にかかったスケエプゴオト、後ろ向きな解像度、劣等感曝け出しすぎの惑星と非連続なヴェイルとスロウモウション、底無しの闃かな淵へ―――淵へ・・。ひとつの諧調に達する様々な観念、信号機の先で停まってるサイドランプ見てるんだ、「匣、よろしい」「嬰児、よろしい」その華麗なる手管、ああ、その夜のみだらな狼藉、それにも増して胸に迫りくる圧倒的な情感で、夜の陥穽、禁断の実の味わいと遠い銃声と、悪夢。何処かで折り畳まれた風光と有機的な生命の叫びが、絵に描いた餅みたいなクライマックスへ向かう、すさまじいほどの交歓、ぎらぎらの最先端! 「僕が求めた世界、僕が求めた言葉、僕が求めた自由・・・」「嘘だ―――僕が求めていたのは、小さな愛だけ・・・」部屋の底に脱ぎ捨てられた僕の服・・僕自身の抜け殻―――。何を喰っても満たされない、詐欺師のような冷蔵庫、金はあっても仲間はいても夢はあっても太陽からは遠い、眠れねえ、欺きながら究め、擦り減りながら身振りや演技を続ける、何だってんだ、非人間ども、機械人類ども、ペテン師ども―――。「満たされねえからさらに書く、書いても書いても満たされぬ、満たされねえから魂を脂にしちまって燃やす―――さ。燃やせるよまだ君の命の針が止まらない限り」「まだ書く、記録として残っていなくとも構わない、もっと全体重を押し付ける、もっとぐいぐい迫ってみせる、限界まで、もっとも深くまで―――自分さえいない、いつかの桜の花が咲いていたあの夜まで・・」不自由さを厭わぬ精神、自縄自縛をも恐れぬ精神、不撓不屈の精神、この祝祭や儀式を止められぬ―――よ、道路は多彩なるアラベスク、揺曳する飛沫の帷、この恍惚や熱狂はもう錆びない、樹脂が流れて固まった自殺志願者、革命者、真実を知りたい共犯者・・。その繊細な交易路があふれる廻しのみの壺になる、拡大されることのない現実の自分を直視せよ、矛盾なくこの運動を体現している形相を理解せよ―――理解せよ・・・。「頭の中に残った履歴効果で現実の世界は変わってゆく・・・」「何故、真実を見ようとしない、何において忠実であるべきかを考えようとしない・・・」「誰かじゃない―――僕だ・・・」「そいつじゃない―――僕だ・・・」肉体に鞭うちながら身を粉にして働いて、人のため世のためと真っ正面に太陽を据えながら、まだろくすっぽシャンともスンともしていやがらねえ、てめえの歌・・。てめえの中に眠っていやがる刹那の暗示と変性意識―――。ボックス型の公衆電話。流行りじゃないひと昔前の自動販売機。そこに処女性も喪失も多孔質も抽象さえも見当たらない。あるとすれば―――僕の詩的生成をなぞる、断片的で中心的な知覚。そこに欺瞞や隠蔽や分断や排除が見える、豚の盛り場。工場群―――それがうすら寒い街路樹や、百数十メエトル向こうにあった公園を余計に寒くさせる。人々からとうに至福の表情は失われているように、水の泡、地団太、けどここからだぜ、僕からはみ出した絵の具で懈怠が拡がってゆ―――く。黄色い水飴みたいに、唾みたいに、乙女の羞恥の紅顔みたいに―――。屈従的な魂よ、こんなもんじゃねえ―――星のようなお飾りじゃねえ、撃ち抜いてみせるさ、空をひきおろしざまに爆発する複雑な綾の反映よ・・。影法師をえがきだす青い遥かな遐く―――の、空・・。混乱して、でも必死にそれを抑えつけようとしている、フリイクライマア。どうせそいつもあいつも空っぽの未来の後方へ、ぶっ飛んでゆくっていうだけならブルウバァド、未来も末期の人間だ、自由経済の進展? 都市の流動性?知らねえよ、明日のことなんて、言葉は暴力、人間は信用できない、あらゆる形を生みだす回想記、寝たり起きたり病んだり壊れたりの半世紀、一秒も考えたくない―――考えたくないんだ・・。いまは誰のことも考えたくない―――。これが最後の台詞―――感覚が折り重なり、名に触れる・・触れる―――。これが最後の歌―――渦を巻き、流動する、自らの形、言葉の確かな一つの意味・・。これが最後のメロディ、これがきっと最後の―――言葉・・・。身体をすりぬけて無意味なものだと―――全部、全部、そう、気付いてしまったあとでも、足掻いて、もがいて、それでもまだ、生きなくちゃいけない人間を残して、僕等人間を起こして―――舞踏る身体・・揺れる光・・・・・・・。
2021年04月28日

2021年04月28日
かもちゃんが、言った。そこには、魚屋のおじさんと、市長さんがいた。片耳折れて、ぽむぽむする、白い、いずうさも、いた。「近頃は、ビールと合うのは何だろうと考える日々ダロ。ビール哲学ダロ」・・・・・・ビール哲学、と魚屋のおじさんが後頭部を掻いた。まいったねこりゃ、という感じ。市長さんも少しはにかんだ。そうですかそうですかそうきましたか、みたいな感じ。「しかしこの前、偶然にも、かもちゃんのベスト一位が決まりましたダロ、さあ料理の時間ですダロ、用意するのは豆腐ダロ、業務スーパーの安いのでいいダロ」・・・・・・業務スーパー、と、いずうさが無表情に繰り返した。眠っているようにも喋る、あるいは、白昼夢でも見ているようにも喋る。確かにあすこは豆腐が安いと聞いておりんす、と何故かキャラを作りながら言った。説明台詞だった。「この豆腐にあじのりをかけて、豆苗をかけて、サーッと醤油をかけるダロ、口の中に少し青臭くて苦い豆苗と、あじのりがベストマッチし、そこに豆腐の淡白な味わいと、それを引き立てている醤油。もうニクいよニクソンだよグレイシーだよファンタスティックフェスティバル、この四重層、この最高の日本の心、豪快で上品、優雅、その西表島でヤシガニを見つけたようなアマゾン的展開、このかもめスペシャルが、美味しいダロ」かもちゃんは、自分が世紀の大発見をしたかのように言う。他愛もない日常の中でそのようなことはまず訪れないのに、さながら埋もれていたストラディバリウスの名器感―――。この鳥は自信満々に言ってのける。あと、時折何言ってるかわからない。でも、かもめスペシャルと言うと、鳥たちがばさばさばさばさ、と騒ぎ始めた。信者たちはいつも、ビックマウスの鳥の、一皮むけた感に酔い痴れる。癖になる身上。「小さく豆腐を切って、一口サイズにするとベストですダロ、あと、もしその気ならチーズをまぶせば洋風になりますダロ」―――缶ビールが置かれていた。存在を主張する、カーッとくるやつ、ほろ苦い黄色い液体、パンチのある泡。のど越し。コク。何はなくとも、まずビール、それが答えであり、それがすべて。しかしそう言われてみて、魚屋のおじさんは、何か味わいのある器にのせているな、と思った。ふっと、匂いが強いカツオに・・・、大根おろし、ねぎ、わけぎ、みつば、みょうが、しょうが、青じその葉、レモン、ゆずのみじん切りという―――。九種類の薬味を思い出す。あれがべらぼうに美味しい。自分で釣ったならことさらいやさらに美味しい。市長さんは野草の天麩羅を思い出していた。天麩羅にすると野草のたぐいはもはや何でも美味しい。つゆをつけるのもいいし、そのまま大人の味するのもいい。いずうさは、―――てえと、あれか、と時代劇の調子で言う、タイミングを窺っていた。すべては間である。そうでなければ滑ってしまう。いずうさは、その状況を待つ。眠るようにも待つ、白昼夢を見るようにも待つ、妖精3号に耳をいじられながら待つ。そして一口サイズと言いながら、まったく一口サイズではないかもめスペシャルが置かれていた。見ていると、かもちゃんは嘴で皿を持ち上げて、フライパンの要領で宙に浮かべて、かもめスペシャルを呑み込んだ。―――春、四月が終わろうとしている・・・・・・。
2021年04月27日

* * 原寸大の手描き図面やイメージの源泉となったスケッチ・・・みたいに、 瞳の中を覗き込む―――負債、負性・・・負の感情・・・・・・。 * * * * * * ―――生のうねりの襞の奥深くにある、影や澱み、 病の前兆・・・知性や思慮のその内側にある、 得体の知れない、狂おしいようなエネルギー・・・ * 病気とは表面を覆っていたものから、 何かが飛びだしてくる状態・・・・・・。 “何故それが起こるのか?”を突き詰めることはできない、 それは不透明なおびただしいもののひしめきの中にある。 僕はいつも「済んだ」と思う――― 失うもの、漂うもの、もつれるもの、みな、「済んだ」と思う・・。 ―――だから彼の話を聞いた時、 本当の原因に眼を向けなければ何度も同じことが起こる、と思った。 * ―――彼は前後の体験の核になるとは到底思われない、 夢の話をした・・・・・・。 * * * * * * ―――夜の神社で、赤い火の玉を見たことがある、 白刃を顔の傍で翳されているような気配も、知ってる、 、、 、、、、、、、、、、、、、 「ねえ、本当に君は気付いていないの?」
2021年04月27日

「ガチャ―――が、」 (ガチャといっても、パズドラとかモンストとかFGOとかグラブルとか ドラガリとか白猫とかアズレンとかゆゆゆいとか崩壊3rdのことではない) 「したいなあ・・・」と ガチャガチャガチャ... <アメリカのスーパーマーケットには商品説明をするPOP>がまったくないのに、 <日本のスーパーマーケットには多種多彩のPOP>があるようなものだ。 * * ―――聖水といっても、黄金水のことではない、 * 硬貨を入れレバーを回すとカプセル入りの玩具が出てくる。 グイ...ガチャ...ギギギ...ストン... 「 * * * 、、、、、、、 ⇒ 自由すぎる女神を揃えよう! * 、、、、、、、、、、、、、、、 通行人の甲高い笑い声が聞こえる。 「・・・・・・」 目ぼしいガシャポンを見つけて立ち止まった瞬間から、 瞑想のさなかの深い穏やかな呼吸・・ 僕は人知れず、 財布の硬貨入れの百円玉をある分だけ、 音を立てないようにしながら取り出し、 かえでさんに硬貨をそっと差し出す。 * * フンガフンガフンガフンガフンガ...... フガガーガー... フフーンガフー... フンガフンガフンガフンガフンガ... フガアアア... フフンガー... アヒルタチ...ムカウ... ビールノミズウミヲサガシテ... アサヒスウウゥパアアァァドラアァーイヲサガシテ... コノヨノカンロ...スイモアマイモ...カンロ... セイシュンナンテナイ...アイナンテアリャシナイ... ソレデモオフロニウカンダ... タイリョウセイサンナンダ...ボクモキミモ... ショウヒサレテ...サクシュサレテ...ソレデモマダムカウ... フンガフンガフンガフンガフンガ...... フガガーガー... フフーンガフー... フンガフンガフンガフンガフンガ... フガアアア... フフンガー... ガンダーラ?... ララララーラーガ...... ガンダーラ?... ノーノー...ララララーガ.... * 「よかったら使って―――こんなことしか、彼氏らしいことできないけど」 「上田さん、ありがとうございます」 「でもかえでさん・・・」 「はい?」 「すみません、ちょっといまから暴言するんで、カメラ止めてもらっても―――」 「フフ、止めますよ―――時間も・・・葉の落ちそうな植木鉢も、 様々な想念という名の顔のない生き物の群れも・・」 「このような時は、きっと、僕も情けない男なんだ、 鬼が島に増援要請されます、それは―――安全保障なんだ、 いや、証明不可能なんだ、平行ならざる二直線は必ず交わる」 「はぁ?」 「ニューヨークにある、途中で終わっているように見える、 黒の非常階段っていうのかな―――誠実で優しく尽くす非モテ男性なんだ、 エクストリムスポーツ、新感覚のVR到来」 「ちょっと言い方がカッコいいですけど―――それで?」 「僕は男女平等であるべきだと言いながら、宗教やマルチ商法の勧誘です、 今日は見てもらいたい壺がある、大丈夫、掛け軸もあります、そういうことじゃない、 そうレディーファースト―――女性には優しくと言ってしまう紳士ステルスだけど、 いまは確実に違う、いまは確実に、貢いでいるステルス―――」 「・・・・・・ふむ」 、、、、、、、、、、、 、、、、、、、 「音もなく降り続いている、ジョジョの擬音」 「フフ、すみません、病気ですよ・・・」 「ほかには―――」 「フフ、ほかには、ですか?」 「これは二両編成、入れ子状なんだ、モラハラや、束縛型とは違うけど、 いま、アイドルにお金を貢ぐ心理のように一途になりすぎて沼になる、 正しい順序で開けないと燃える引き出し・・そうだ、そうなんですよ、 あなたはまだそのことに気付いていないんだ、 これはね、周回遅れの奴が先頭集団と競ってる感じなんです、 気が付くと、無印良品になる、ユニクロになる、じぶんの服が―――」 「・・・・・・上田さんって時々変なことを言いますね、でもあえて言いますが――― 上田さんがそこなら、私はここ、その上ですよ」 、、、 「ですね」 「フフ、いま、かりそめの契約を唱えてしまうところでした、 灼熱の業火が我が身を焦がす―――」 「でも、コイルが磁場を移動したとき、電流がコイルに流れます・・ 結合と解除―――、そして暗黙の取り決め・・」 「そして包帯の巻かれていた左腕の邪龍が、 炎殺するわけですね―――」 、、、 、、、、、、、 「ですね、あとかたもなく」 「・・・・・・フフ、続けてください」 「なにか、宇宙人が出てきて地底人が出てきたような具合ですが、 それでも―――続けても?」 「いいですよ」 「そう、ブレーキがかからないままトロッコは進みます、 僕も時間に体力にお金のすべてを捧げるような、 見返りのない愛について考えます、勇敢な恋の歌、シーソーゲーム、 桜井和寿ゲス不倫、そして導き出される・・・」 、、、、、、、、、、 「せんてんすすぷりんぐ・・」 「なるほど、自由とは眩しいものだったんですね」 「フフ・・・途中からモラル崩壊しているような気もしますが」 「大丈夫、百年後は全部未定、仮題は全部グッドモーニングです、 前に友達が言っていました、エロ本と一心同体となるには食べるしかない、 まさに最終必殺技―――ヴァカじゃない、ヴァカじゃないんです、 グッド―モーニングようこそ世界、この一瞬!」 「フフ、いつも百年後のこと考えてるんですか?」 「でも、大切なことなんです」 「芸能人みて我がふり直せ?」 、、、、、、、、、、、、、、、、 「でもそのようなものは存在しません」 「上田さんってはかどるなあ・・・・・・」 「そうして僕は赤子の手をひねられます、真実の愛は苦難の連続です、 優しさ、真心、いつも肩すかし、いや善悪、本音と建て前、 仕事とプライヴェート、いつも、三島由紀夫がポージングしてる」 「フフ、それも病気ですよ」 「でも、豊田真由子に言い知れない悲しみを感じます」 「個人の闇に等しい最適な動線のシミュレーション」 「すみません―――ガチャしてください」 「・・・・・・上田さんがはしゃいでいるの、久しぶりに見ましたよ」 * * ツ チ ノ コ の 剥 製 と か、 誰 だ か わ か ら な い 野 球 選 手 の サ イ ン が 飾 っ て あ っ た ら 、 ノ ー ベ ル 賞 も の だ よ 、 ゼ ツ タ イ ! * 「十夏の感染力、十夏の引っ掻き傷・・・」 「欲情の乱れが唯一の綻び――― (吸いついてくる―――水母、 吸いついてく―――る・・蛭、 吸い付いてくる唇、 吸いついてくる意味のない記号・・ 「違うよ、最初からここには何も無い・・」 ―――繰り返す、 世界の君の耳にだけ聞こえる雨の音のように・・ * * ―――その件の駄菓子屋の記号は、いつも事態を冷静に判断するために、 多少のゆとりを持っている、その心理の動きは矛盾のあるものに、 必然的な動きをする。それがまあ、大仰なのであるが、 軽く首を左右に振り、身体を揺すり、右手に間接がなくなったように掌裏をかえし、 急かされて掛け金を掛けるような瞬きをした―――その合鍵のような一齣。 「あらら、これは外国人さんかい」 と、とぼけた感じ。 時計の針が動き続けているような印象を与え、 人工的にねじくれている感じを与える。 蜜柑箱が輝いている、下半身は動かない。 耳を澄ませば水滴の音さえ聞こえ、魚の図案が浮かぶ。 、、、 「アロハ」 * * マスクを着けている、かえでさん。 一つかみの雪を宙に巻く。 「おばあ様、日本人ですよ」 * (*1 とは言いつつ、梅干しやポップコーンやあじのりなど、 非常にどうするか迷うものが存在する) (*2 菓子パン系、たとえば洋菓子系などをどうするかという 問題もある) * ダイレクトに水音が響い―――て。 ぞく、と鳥肌を立てる。 せり上がる尿道。 目が合って。弱いところを知りつくして。 何度も何度も…角度を変えられて。 トランクスから跳ね踊る若い肉茎に触れる指先に、 微妙に震える、何十もの快楽。何百何千もの手管。 宇宙や天地、愛、生命、永遠・・・。 、、 ―――ふう・・。 * ☛ ザトウクジラのバブルネット・フィーディング * かえでさんと僕は見繕った末に、お婆ちゃんのところへ持っていく。 『キャベツ太郎』に『うまい棒』に『ベビースターラーメン』 ―――基本だ。 子供たちは間接的な知識で、おぼろげな記憶とおおよその地図で、 腑に落ちない、違和感の、 全然損失がないわけじゃない今日の破廉恥な感触の、 深くくびれた入り江を探している・・。 している・・・・・・。 ・・・・・・・している、個人的な貸し借り、揉め事、多少の懸念もなくはない、 法律、刑事問題、でも何か付け足したい・・・。 薄い半透明なひとひらの色紙みたいな顔して・・・。 発光して、電燈の光に油じみた生き物がブランコ乗りする。 する のだ―――。 (足の甲を這って、くぼみへと滑る蟻が見えないか?) (見えないか?) ない―――か・・・・・・。 というか、本当にそんなものいたの―――か・・・・・・・。 女性というのは駄菓子好きを公言せず、 コソコソ一人で買って楽しんでいるという。 彼女は西のはずれの嵐の夜・・。 マッチ箱をつぶしたようなスタイルのよさだったけど、 モザイクのように見える人間の顔や―――表情、皺の動き・・・。 逆光のせいかな―――せいだろうな・・・。 穴の中へ引きずり込んで、まだよくわからない火・・。 を、放つ―――放つ・・・・・。 狼狽と期待の間で、ずれかけているブラジャー。 膝のへんまで下ろしたいスカート。 ―――アルマイトの鍍金もそろそろ剥がれそうだ。 キリコの絵の中の情景のように続く。 焦点調節式、判断めぐらすゆとりはまだあるかい。 で、何? カタラズニイテモ...カジハ...フレルモノ... 、、、、、、、、、、、、、、、 そしてコップ酒に烏賊のあたりめ。 、、、、、、、、、、 、、、、、、、、、、、、 天国も地獄もいらない、縄梯子を固定する気もない。 、、、、、、、、、 、、、、、 、、、、、、 、、、、、、、、、 ただ手を離せばいい、上達の気配、前向きな気配、明るく頽廃的な気配・・。 ―――コロンブスの卵だ・・・ (知らないのかい、虐殺者の卵さ、) 童心に戻りたいけれど、手が汚れるし、 場合によってはなんだかちょっと情けなく見える。 でもぐずぐずしちゃいけないよ、けだるげな影がすぐ落ちた、 蔭から落ちるのは涙さ―――逆光の効果を確かめよう。 クレヨンみたいで、乳色にけむろうとするもの。 狭い咽喉元の隙間を流れる、鉄錆の味。 ああ、転んだ時の味だ―――味・・砂が湿気を呼ぶ。 靄が晴れて、星が見たい。 知らない道も人も、ややこしく交差しながら・・。 食用ガエルの卵、ダチョウの卵、 ―――大人になっても、まだまだ、社会人の卵・・ 僕の背中には給油口があって、 拳銃みたいなセルフのノズルを差しこまれる。 百円玉に群がる家畜。心臓の鼓動を撮影した記念写真。 これは穴の在り処だ・・・脱出の意欲さえなくした連中だ・・。 「エヘヘ、大漁っつ・・・大量っつ・・・・・・」 でもね、お嬢さん、男性を優しい気持ちにさせる、 こう―――なにか、特別な使命へと急がせる、素顔こそが、 ―――表象じゃないってこと、意味ってこと、湧き立つ力ってこと、 君の本当の魅力なんじゃないの? 光や感光乳剤を用いて印画紙を直接させて制作する、 ヴォルフガング・ティルマンス? って―――言えば・・・。 って―――言えば・・・。 人間そりゃ色々だよ、だけどもさ―――急角度の影、異様な緊迫、 ストレスフル、ロマンチックな風景、恋に社会にフォルクローレ、 ね、でも、それが沢山あるお菓子を選ばせているんじゃないの? 本当は君、何か選びたくて仕方ないんじゃないの。 キャットフードカルカンのキャッチコピーの猫まっしぐら。 その時、ふっと、シャーロック・ホームズが、 百四十種類の煙草の灰を見分けることができるという話が、 あったことを思い出す・・・・・・。 、、、、、、 、、、、、、、 さすがコナンドイル、失われた世界・・。 アーサー、アーサー・・・・。 (なんだこいつ、七面鳥みたいに鳴いてら!) それはたとえば、エロ本みたいなものじゃないだろうか。 大学生になってエロ本なんて恥ずかしい。 そういうことではないだろうか。 (欲求不満なの?) シイ・ワズ・ラブ・・・・・・。 シイ・ワズ・ラブ・・・・・・。 憐れなセールスマンなら、憐れな心理学者なら、 理解を拒み続け―――る。 けどね、自分が何処の誰かなんて、わからないまま、さ。 蜻蛉は自分の体重分の餌を三十分で食べることができる。 それがどうした? (わからないままさ・・・・・・・) じわじわと滲み始めた汗さえ、砂の気配じゃないの、 耳垢とか、孤独のなにかじゃないの、蠅だよ、よりつきゃしないよ、 ――口の中の味、血の味、鉄分、ヘモグロビンの味・・。 人間って、自然なの、それで片道切符なの、嫌だよ、嫌だよ・・。 〔SWITCHスウイッチボタン〕が見える。押す。 何かの微細な起動音がして、 〔透過ディスプレイ〕が浮かぶ―――よ。 ―――【接続しました】という声が聞こえるよ。 ―――【同期しますか?】 (九、八、七、六・・・・・・) そして、声が聞こえる。 《ご主人様、本当のあなたをお求めですか?》 、、、、 、、、 、、、、、 駄菓子屋? ここは、落花生畑さ・・。 紙袋をかむった猫になってる・・・。 岩に貼り付いた牡蠣になっている。 音程が狂っていく。 次第に奥に曲がりこみ、狭い一本の道に達する・・。 『コリス 超・怖い話ガム』『タラタラしてんじゃねーよ』 『フルーツ糸引き飴』 『いちごソフト』『フルタハイエイトチョコレート』 というところで落ち着いた。 結構な量にはなってるけれど、これでも千円いくだろうか? (宮澤賢治のように三ツ矢サイダーを買おう、) 世界の休日を祝うにはいささかスケールが小さすぎるけれど、茫然自失さ、 賽の河原さ、見つけたかった―――見つけたかった・・・。 貧乳のことじゃないけど、小さいは正義だ! 公然と抑圧する感覚、 つつましやかな恥の感覚 ―――は、ない。 そこにはナルシシズムがあり、 麻薬があり、分裂する、病。 ―――が、ある。 ―――ある・・・。 * 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、 ドラゴンクエストシリーズのシステムメッセージ―――。 、、、、、、、、、、、、、、 うえださんはこんらんしている。 * * * 「それにしても、すっかり垢抜けましたね」 「上田さんも夜坂さんもこんにちは」 しかし、人柄の良さは全然変わっていない。 ちなみにこの格好は垢抜けたわけじゃなくて、 単純に、もっとも遠い格好をしてみようというコンセプトらしい。 提案者は藤堂先輩。違う人生を味わうならやはり格好から、と。 「それと、瀬川教授も・・・・・・・」 聞いた限りでは普通にお詣りしていたら藤堂先輩と、 はじけた格好をした中年風の男性を見つけて、 もしや、と思って話し掛けたものらしい。 一枚一枚慎重に剥がそうとかいう心掛けもなかったのだろう。 自家発電。幾つもの棒をつなぎあわせてあみだくじにして、 その最後に針金を曲げたものや、釣り針をくっつける。 引っ掛かったのは、質屋の梁を行き来する鼠? * 頭の中のシロアリに気をつけなければいけない、と僕は思った。 昆虫に寄生するハリガネムシのように、僕は次第に麻痺していく。 前歯が何本か抜けた老人がひゅうひゅうと息を洩らす様相。 ―――人は常に見られている。見られていない世界は存在しない。 現代社会に張り巡らされる検閲や、見る見られるの関係性・・。 、、、、 、、、、、、、 他人の眼、他人からの自分・・・。 ・・・・・・何を信じてるの? 僕はインターネットに触れながら、 ある時、祖国を失ってしまったような非現実的な力を感じたことがある。 (鏡の中で自分をうつしだしたとき、 どちらかが本物で、どちらかが偽物という問いのように・・・。) 、、、、、、、、、、 どちらも本物だったら・・・? けれど、根底的な聖人の溜息のようなところ。 (性欲があれば借用書と貫通と線香立てはワンセットだ、) その時も、今もあった。それは文明のある歯車の働きだ。 気息音のあとの破裂音―――。 (白い鴉はいない―――本当かい?) 縄跳びも、デッドボールの瞬間も、 スパゲティーを茹でる光景さえも、すべて、静止してしまう。 無意識の選択と許可。 ゼラチンの底に閉じ込められているみたいだ、時限爆弾、目覚まし時計、 メビウスの輪、靴の中に溜まった汗。 世界に充満する視線における、観者の位置。 思想と名付けるには形のなさすぎる、琥珀色の時間。 重力が違う、濃密な闇の感覚が襲う・・・・。 * * * * ―――怪しい物音はしなかったか、不吉な予感はないか、 何かにのぞかれている気がしないか? * (残酷は地響きのように迫る沈黙の花弁、 虎の毛皮を剥き、象の牙を折り、肉は大鋸屑のようにした。 そして乾いたごみのような生き物を、他界の月影に置く。 砥ぎたての包丁のような嘴が網膜を切り裂くこともない、 畑だ...神だ、トタン屋根を叩くつまらない雨のリズムだ、 水銀を飲んだ在りし日の迷信のようにいま、 狂える軌跡を描いて寸のつまった迷路が見えてくる、 冬の婚礼―――ああ細やかな白い蠅のようなコールタール、 でも誰も街を知らない、そこに天敵がいることも知らない・・) 清潔...だ....ダ... 青に朱をふくめた夜の言葉―――。 * * けものじみた熱狂と紅潮をつれて腐った水面に顔を出す。 菫色の静脈さ、隣の国の中国では、弟子の尼僧が、 中国仏教協会会長をセクハラ告発。 ―――不意に映写機が途切れる・・ (なんて見世物小屋だろう、) 立場を利用した洗脳、筋書き通りに運ぶ権力、 舌打ち、咳払い、ののしる声、悲鳴、重い物が倒れる音・・、 二律背反、追従笑い、げっぷ、ヒステリーの爆発、 昂奮、生物が凍りつく気配、 繰り返される砂との闘い・・・。 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、 僕は旧陸軍射撃場演習場跡のような淋しさ―――。 われわれの国でも高野山真言宗のあるお方が、 お布施を運用失敗し六.八億円の損失。 (何の躊躇もない、蛇が蛙を呑み込む、牙が突き刺さる、 痛いだろう―――そして干乾びた狐が生まれた) 突起と窪み、数字や図形の記録。 (刻まれ、皮を剥かれ、すっからかんだ、空っぽだ、) タイの僧侶なんかだとスケールが違って、 薬物摂取や飲酒、ギャンブル、買春・・・・・・。 (霊柩車に負けないような偽装だね、) こんなことがまかり通るのかと思うほど、 欲望ではちきれそうになっている、故障。 、、、、、、、、、、、、、 さらにプライベートジェット。 駄目押しだ。これっきりだ、でも、開いた口がふさがらない。 神社でこんな話はさすがに聞いたことが―――ない・・。 高いIQが、三十五ヤード走や、 片足で立ってバランスをとる能力と強く結びついている、という文章みたいに。 * ジグソーパズルはもう完成しているのに、 僕一人だけがまだそれを見ていないというような状態・・・。 、、、、、、、、、、、、、、、、 ―――でも思春期の少年のような傷つき方をしている自分に気付く。 喩えはありえないほど悪いけれど、 マリファナを―――こういう時にキメたいぜ、という感じだった。 * * * 「そういえば・・・・・・」 超マニアックな解釈をするのは、藤堂先輩。 「 ちなみにメモを取り、ボイスレコーダーまわすのは、かえでさん。 僕も時折、携帯のカメラでアシストしている。 声が残響エフェクトの尾を引きながら消えてい――く・・。 、、、、、、、、、、 、、、 絶対に取材にきている―――と思う・・。 * * 、、 、、、、、、、、、 ねえ、ここからが本番だよ。 * * * そのまま藤堂先輩が身を乗り出して行こうとしたので、 その勇み足を制止する。 それは業務上過失致死に等しい。 (自動応答プログラムの故障、シネマの溶暗の揺らぐ画面・・ 否応なしに見る者の視線は吸い込まれていく。 それは運命が持つ決定論的な力) 細くしなやかな杖で暗闇をさぐっている盲人。 せめて懐中電灯がいる。 (幼い頃からの恐怖の象徴「砂男」のイメージを、 老弁護士コッペリウスに投影し、 つきまとうそのイメージに自滅する大学生ナタナエルの物語) 「すまん、でも覗こうとしただけだよ」 大発見に興奮して先走った風に見えたけれど、さすがの藤堂先輩である。 でもその一瞬、何かの妖気にとらわれたようにも見えたのだ。 吸い込まれ―――る・・・・。 (光の切れ端はメモリーに触れる、まるで恐ろしいコンクリート・ミキサーの中・・・) 「それだったらいいんです」 僕はボルヘスの入れ子構造の感覚について考えていた。 あるいは迷宮というものは、すなわちそのようなものだ、と・・・。 床がトランポリンになったり、トレッドミルに変化することはないが、 (マップ上のあらゆる設置物に物理演算が組み込まれている、世界・・。) それは自分の尾をくわえて円環状になる蛇や、 自分の足を食べる蛸や、ばりぼりと自分の夫を食べる雌の蟷螂を想像させる。 深い井戸の底で闇の奥を眺めているような連想をする。 怪物的なものを連想する異界がほんの少し・・・・・・・身を乗り出せば見えてくる。 おいで、と見えない手で誘っている―――。 だんだんと青くぼやけ、朦朧として消えていった。沈黙がつづいた。 それは子供の頃、近くに怖い犬が散歩をしている時に息を殺して、 身を隠すことを教えた、あの本能を思いださせる。 (認知症を扱う療養所のような都会で、政治のニュースが流れ、 流行の文字が―――流れ・・恐怖の笛は鳴らされる・・・) その、かたちのある忘却の中へ、深く深くのめりこんで行く。 それは厚い暗闇だった。 物の形を見るのに光を必要とするものはその世界にはなかった。 心身制御による呼吸をして神経を休め、 たくましすぎる想像力を懸命に抑えつける。 ―――ルネッサンスの波に押されて貝という舞台とともに登場した、 ヴィーナスのうろんげな表情を思い出す。 (ボッティチェリ、) それは映画館の観客のようだな、と思う。 まず暗闇のなかにいれられ、 防音した壁のなかで光も音も奪われる。 一人ずつ座席に固定され蘚苔類のようにされたあと、 (角度Aと角度Bと二点間の距離xと目の高さhによる世界・・。) 一方に顔を向けるような視線誘導のつくりを無意識的に強制された上で、 スクリーンから大量のメッセージが、 地下から湧いて出た沼みたいに流し込まれる。 ・・・・・・椅子の背がバネ仕掛けでうしろへそるように、 文雲さんは腕組みしながら考えている風で、 かえでさんは逆に少し前かがみになりながら、 メモ帳にさらさらとメモをとっていた。 企業どうしが持ち合った株や銀行の保有株が、 証券会社によって誘導されて高値となるみたいに―――。 「ネタになりますか?」 「いただきですね」 何処かに罠が仕掛けられているんじゃないか、というような眼つきの瀬川教授。 ヒエロニムス・ボスの『手品師』みたいに、 カップと玉に目を奪われた客の財布を、左端の男が狙っている・・・。 魂の真の闇、釣鐘の中にも似た暗闇・・。 (スクリーンのなかで耳を切り落としたり眼球をくりぬいたりするシーン、) 線路と転覆器による機能的な鉄の延長部分・・。 岩盤には三葉虫やウミユリなどの化石でもあるかも知れない。 僕はそれを海老のグラタンみたいだと思う。 それに、蝙蝠や蛇もいるかも知れない。 (ちなみに、注連縄や鏡餅の起源ルーツは『蛇』である・・) ―――諸星大二郎の『暗黒神話』が頭をよぎる・・。 オディロン・ルドンの『笑う蜘蛛』を想像した。 (過剰な恐怖を抑制するための脳内ブレーキメカニズム。 アーモンド型の小脳扁桃というニューロン群に送られる。 前面側に対向するように設置された偏光板・・・・・・・。) 僕はクロアチアにあるルキナ・ヤマ洞窟群のトロヤマ洞窟で撮影された、 透明なカタツムリを想像する。地下九八〇メートルあたりに生息しているため、 太陽が届かず、また視覚は必要ない。 (チェックメイトする。狭い咽喉につきあげてくる、恐怖の声・・。) 僕はふと内側から風が流れているのを感じた。風の特殊な通り道。 油のように耳に忍び込んでくる闇の粒子が、 静止した空間の中に不思議な図形を描き出す。 水が流れているのかもしれない、ひんやりとしている。 (ランボーにおける空想の海・・・、) もしかしたら地下河川系が発達しているのかもしれない、 と僕が言うと、瀬川教授が肯いた。 まあしかし火山帯に直結して熱泉を吹きかけられるみたいなことはなさそうだ。 「もしかしたら、水の中を歩くことになるかもしれないね」 「そうですね、そういうことも十分ありえますね」 パーテーションの奥の面談スペースから、 複数人の騒がしい声が漏れているみたいな真剣な議論・・・・・。 (見えてくるものがあるから、統計学や心理学もある、) 鍾乳洞から動物の骨が出てくるのは珍しくないという話のように―――。 もしかしたらそこに、姥捨て山の一つの変化形があるかもしれない。 そのようなことを、干上がった魚になるまで十分ほど話した。 ルネ・デカルトが斜視の女性が好きだったというような構図にはなった。 マッシュルームの栽培を想起させる。フランスのパリの郊外の鍾乳洞。 口と咽喉とが灼けるような感じで、全身の力がぬけていくのがはっきりとわかった。 これは炭素からダイヤモンドを製造するようなもので、人間業ではない。 自然や真実から比喩を借りて使えるほど、 自然と真実とに近く生きているのは野蛮人だけのように。 (液晶偏光板用保護フィルムの淡いきらめきのような心の中へ・・・) 腕組みしている文雲さんに、どうでしょう、心あたりはありませんか、 と聞いてみる。 これはどうも、人間の手ではないような気がするんですが、と言った。 みんなの視線が文雲さんに注がれた。 天から落ちた大鳥の一枚の羽根のようにふわりと僕等の前で揺れた。 これまで聞いたことのないような低く、そして世界中に聞こえるような声。 繊維質のダーツ盤の真ん中に突き刺さる。 「いや、私はこんなところは知らない。でも、弟子が作ったのかもしれない」 ということは、文雲さんの弟子は、こんなことができたのだろう。 (ボッティチェリの『神秘の降誕』に見られる天使と悪魔) 先程からあまり積極的に発言はしなかったが、 やはり文雲さんにはそんな風に見えていたのだろう。 大当たりを引いたカード。しかし、自然の洞窟をもとにして、 人工的に拡張されたものであるという可能性も捨てきれない。 、、、、、、、、、、、、、、、、 ホワイパースライドなる修正テープ。 「しかしこうして作ったということは、いざという時の抜け道なのだろう。 もしかしたら、私が知らない呪術を完成させたのかもしれない」 その必要が現実にあるとして、 それならその必要はどこから生じているのであろうか。 理性によって人工的に整理された世界があり、 徹底して混沌とした途方もない不条理の支配する、 絶対的に孤独な世界というのがある。 バッハの危うい完璧さのような・・・。 (宗教のシステム、精神のシステム、人の心の弱さのシステム。 それが―――。罪というものだ・・・。) 想像を絶する迷宮があるかもしれないし、大からくりがあるかもしれない。 「もしかしたら木乃伊のようなものでもあるんじゃないですか?」 言葉もなにやら意味不明になってきた。 「とりあえず、大切な物だろう、木乃伊というか即身仏の可能性もある。 またこうやって見つかった以上、 私が考えるところ、隕石付近にも探せば同じようなトンネルがあるだろう」 ここから隕石の場所までは遠い。 倒れた樹も、自然に老い朽ちたような隕石のポイント。 ピーピー・ドーン島には、二つの石灰岩質の島が元々あり、 その間が砂州で繋がった構造となっているみたいなものだ。 隕石とこの神社までのルートともなると、相当長大で、 最低でも数キロはある。この見積もりだって聞いた限りだし、 それだって地下へもぐるのと、地上を歩くのとでは随分違うはずだ。 もちろん二つの位置から探し求める場所があるという文雲さんの仮定が正しいなら、 必ずしもその数キロであるとは限らない。 もしかしたらもっと長いという可能性もあるし、逆にもっと短いこともありうる。 たとえば少し下るだけで僕等の目当てのものは見つかり、 (もちろん複数あるという可能性も、ある) 下まで降りきると地下水脈があって、 別段、何も見るものがないということだって在り得る。 高い天井から無数の鍾乳石がたれさがり、 床面には石筍が立ちならんでいるようなところもあるかも知れないし、 文雲さんの弟子ということなら仏像だって掘っているかもしれない。 (これはかなり貴重な仏像である。 イギリスのロンドンにある蝋人形だらけのマダムタッソー館・・。 アーサー王、アトランティス、セイレーン、ムー大陸に黄金伝説・・。 ―――貴重というなら、鉱物学的に貴重な石もあるかも知れない) 僕は無人の椅子の脚を眺めているような気がした。 それについてはどれだけ考えてみても結論は出ない。 電気が多数の枝線へ配給されているがごとく。 アグテレク・カルストとスロバキア・カルストの洞窟群・・・。 地図がないし、どういう場所があり、 どういう答えが正しいのかも正直わからない。 おそらく発見されたことのない場所である。 思考のリズムは不均一だ。まるで精神攻撃でも受けているような気がする。 しかも見通しが悪く、歩きにくいということならば、 すぐ行って戻ることができない、と冷静に思った。 それだけは今の僕等における真実だ。漆黒の闇に重ねられたまばゆい白さ。 その通路の暗がりに半魚人とか、地底人が息をひそめているような想像をした。 (昔のロシアの貴族が埋葬後に意識を取り戻した場合に、 ベルを鳴らして助けを求められるような棺を考案したみたいに・・・) これまで見聞きしたことのない未知の小惑星の地表。 澎湃として湧き起こってくる秘密の心臓の音。 誰かがこうして扉を開ける日を待っていたのだろうか? もう何も語らなくなっても、その何かが息づいている。 (ファインダーでフォーカス・ロックして、 ナビゲーション・システムが起動して行き先の候補を、いくつか同時的に作り出す) その何かが生命の躍動をしている。 (遠い呼び声が、自分のひそかに隠れている感情を見つける瞬間・・・) それは、何かに見つめられているような眼なのかも知れない。 時間に対するまともな感覚がなくなってしま―――う。 自然、視線は低く落ち、気がつくと僕は自分の靴の先だけを見つめている。 * *
2021年04月26日

* 「それで打ち明け話というのは?」 「これからかえちんと上田さんが仲良くやっていくうえで、 つまりオレとも仲良くするわけだろう?」 「もちろんそうだよ―――というか、 もう僕にとっては友達みたいなものだよ」 * 、、、、、、、、、 年下の男の子の後輩、というのは言わなかった。 「・・・・・・」 「・・・・・・」 「上田さんは尊敬できる学校の先生みたいだもんな」 ―――そう言った。 「でさ、オレ、実は子供の頃、 誘拐されたことがあるんだよね」 * * 「(そうそう、古代の石碑の文句のようにあるよね――― ゆ・う・か・い・・・・・・・) 「(頁の端に小さな書体で脚注を添えるみたいにあるよね、 なんだっけ、その、ユウカイ?)」 「(文章に余白を設ける、そこにはフェイスブック、 グーグル、ツイッターが出現する―――妖怪、は、違うか)」 、、、、、、、、、、 ―――いきなりすぎる急展開。 * 「誘拐って・・・」 「まあ簡単に言ったら、オレは母親が二人いるんだよね、 育ての親と、本当の母親―――と。まあ、正確には三人だな、 恵は再婚した外国人女性との子供だから」 * ちなみに誘拐の検挙率は約九五パーセントといわれている。 ただ、前述したように、これは誘拐の場合だけである。 しかし、日本の多くの誘拐は単独犯や二人などが多く、 (というのが何の安心になるのかはわからないが、) 政治性を帯びたゲリラや職業的な誘拐グループではない。 * 「子供の頃に誘拐されたって、小学生とか?」 「いや、赤ん坊の時とか―――に?」 、、、 とかに、って・・・・・・ * 『カミヤ・モブリー -私の母は誘拐犯-』 という実話を基にしたという映画があるけれど、 いくらか育ての母親を美化しすぎていて、 生みの母親に遠慮がないような気もしないではない。 それはたとえば『しあわせの隠れ場所』とかいう、 これまた実話を基にした映画なんだけれど、 (実話とはいいつつも、ノンフィクションではない、) ―――ここに出てくるマイケル・オアー選手がいうには、 事実と違うところがあるのだとか。 まあ、感動した人に是非とも言いたい、 盛りまくりなのだとか。 ―――だから僕はこの手の実話を強調した、 感動押し売り系は苦手だ。 仮に六十億人が泣いたとしても、僕は泣かない。 でも重要なのはやはり、 『十八年間も本当の親と思って暮らしていたという心情』だろう。 思い出に耽る―――沈みがちにやさしげになる。 警察に拘置されたウィリアム容疑者―――。 (既にDNA鑑定後で、誘拐犯だとわかっている状態で、) と、再会したモブリーさんは、 「愛してるよ、ママ」と、涙ながらに話しかけた。 それはいい。すごくいい、と思う。 だから気になるのだ。 実の母親が何かちょっと嫌な人みたいに見えるのが―――。 * * 、、、、、、、、、、、、、、、、、、 映画の切り貼りの技術は時間を超越する。 (「好感度」「規則度」「活動度」「親和度」「インパクト度」) (ズームアップとズームバック,左パンと右パン,ティルトアップとティルトダウン) ・・・・・・でも、その御都合主義的な解釈が実話というのなら、 それがある種の感情的な昂ぶりを持たせようとする演出すらも、 たんなる映画的、映像的な在り方というのなら僕は正直とても怖い。 それは感情操作である。 それは確かにとても些細なことなのかも知れない。 それが様々な映画のジャンルを生みだした感情操作である。 あれがよくてこれがいけないでは通らないだろう。 ―――でも僕はその一瞬たまらなく怖かったのだ。 * 、、、、、、、、、、、、、、、、 世の中には平気で嘘をつく人がいる。 、、、 、、、、、、、、、、 およそ、自分の利益のためなら、 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、 他者の利益を損なってもいいと考えるような人が―――。 >嘘をつくことが悪だとは述べていない。嘘も方便という。 時には必要な優しい嘘もある。 >でも邪悪な人はいる。虚言癖の人はいる。 そして僕等は多分その人が簡単に悪魔だと見破れない。 ―――鳥は僕等の良心であり、僕等の信頼のことだ。 誰あろう、僕は偉大なる発明家、エジソンを考えていた。 彼は実のところ、発明をまったくしていない・・・。 、、、、、 知っていた? * * 「えーと―――大変だったね・・・・・・」 心拍数が、一三〇から一四〇になったみたいだと思う。 脳の酸素容量が減ったような気がする。 言葉はこんな時に、 感覚的神経記号で、情報処理装置の機械語みたいだな、と思う。 声が掠れ、眼がキョドる。 「いや、オレはずっと自分の母親だと信じてたし、 好きだったから、楽しかったよ」 何十メートルか先に赤信号が見えるみたいで―――。 もう何を言っていいのかちょっとよくわからない。 * * * 「小さな家だったよ、母親と二人暮らしでさ、お金なんて全然ない、 貧乏なアパートでさ、給食費とか払えないこともあったな。 まあ、先生が心配して来てくれて、 いついつまでに支払えますか、みたいな話になったけどさ」 * ―――でも貧乏というからには、 二〇〇万~三〇〇万ぐらいだろうか。 * ―――母と娘の二人暮らし。 * 「でも元々あんまり身体が強くなかったと思うんだ、 風邪を引くだけで二日三日休まなくちゃいけなかったし。 そんな具合だから、会社にもちゃんと行けない、 給料だって雀の涙だよ。オレも当時は、 小学生でも働けるバイトないかなと思っていたよ。 まあないから、せめて給食費だけでも払えるようにと思って、 甲虫つかまえたり、 老人ホームでアルバイトないかって聞いたりして、 アメリカザリガニの駆除とか、犬の散歩とかしてたな。 まあ月に三万から五万ぐらいになった。 まあ、中学一年生からは新聞配達したよ。 おやっちゃんに夕方だけじゃなくて朝もやりたい、 もっと働かせろ、と言ったけど、やっぱり無理だった。 そんな法律あったんだ」 * * * 「母さんのことが好きだったし、 母さんもオレのことが好きだったと思う。 でも、十四の時かな、急性肺炎で亡くなってさ。 遺族年金とか、保険金とかもう何もない、 それでも母さんが勤めてた会社は退職金がなかったんだけど、 慰労金という名目でいくらかお金入ったり、 新聞のおやっちゃんに取っとけって結構な額もらったりしたなあ。 それで火葬して、墓に入れられた。 病院代の支払いも、学校の支払いもあったけど、 でもお金の心配とかなんとかよりも―――あの時は本当に、 心の支えがなくなって、困ったなあ。 でも母さんを墓に入れて、すぐかな、遺言書がうちに届いたんだ。 そこには手紙も入っててさ、オレが誘拐されたこととか、 本当の父親と母親がいるとか、 まあその母親もいま何処にいるんだかわからないんだけど、 それから、その家がどこにあるかとか書かれてた。 母さん、自分が病気になって死ぬ段になって、 全部洗いざらい白状したくなったんだと思う。 でも直接はどうしてもオレに言えなかったみたいなんだな。 母さん、病院にいる時、ずっと淋しそうな顔していてさ、 時々、ごめんよ、とか、言うんだ。 オレは病院代のことを言ってるんだろうと思ってたから、 まあ、中学卒業したら新聞配達の正社員にしてもらう話なんかもあってさ、 あんまり心配すんなよって言ってたんだ。 でも、その理由がわかった時は―――すげー、ショックだったよ、 さすがのオレも、一晩中ずっと泣いたよ」 * ちょっと、ほろりときてしまい、目線を逸らした。 僕も母親を亡くしているし、 みゆのこともあってそんな風に取り乱したりはできなかったけど、 その気持ちは痛いほどよくわかる。 、、、、、 ましてやそんな打ち明け話なんかされたら、 、、、、、、、、、、、、 僕だってそんな状態になる。 >僕はエリちゃんの目尻に涙が光ったのを僕は見逃さなかった。 >下唇を軽く噛みしめたのも―――。 思いだすのが辛いこともちゃんと話すっていうのが、 友達なんだなあ・・・。 * * ●エリちゃんの家の噴水 家政婦さん「あら」 かもちゃん「ばしゃばしゃばしゃ」 家政婦さん「大きな鳥ねえ」 かもちゃん「ばしゃばしゃばしゃ」 家政婦さん「エサあげようかしら」 かもちゃん「ぴたっ」 家政婦さん「あら、言葉がわかるのかしら、 こっちを見てる、クチバシをカチカチして、 にゃーにゃー言ってるわ」 かもちゃん「ばしゃばしゃばしゃ」 家政婦さん「エサあげようかしら」 かもちゃん「甘いお菓子がいいダロ」 いずうさ 「くっきー」 家政婦さん「あらあら」 * (たとえば、養子縁組を偽装する、) (闇医者や、親戚とか知り合いの医者に偽装してもらう、) ―――でもそこにもやっぱり人の手がある、 特殊な論理が強くなればなるほど、抜け道は増える。 イカサマとはそういうもの―――だ。 それは、ほんのちょっとした引っ掛かりだ。 本当にそんなにうまくいくものだろうか、という人生経験が顔を出す。 本当に頭のいい人が考えてもヒューマンミスは存在するのだ、 予想外の動きをするものがある、 そして、想像していたものの中ですらカオス理論めく―――ヒト・・・。 、、、、、、 、、、、、、、、、、、、 エリちゃんは、騙しやすい女の子だと思う。 ―――父親、今何処にいるかわからない母親なら何か知っているかも知れない。 真相は知られるはずもないのであるが、そんなことを深く疑えば、 いくら疑ったって際限がない喩えようもない焔――― 真実の中にさえ鉄条網や有刺鉄線というものはあるものだから・・・・・・。 、、、、、、、、、、、、 立入禁止の立札の向こう側―――。 * * * エリちゃんは少し興奮気味に話す。 * 「とはいってもさ、いやそんな家行けるかって思ったよ。 新聞配達で生計を立てる、なんだとこんちくしょう、 オレを誘拐した? だったらオレの全人生の責任、 母さんが取るべきだ。オレは母さんが好きだった、 母さんがいなくなったからって助けを求めろってそんなの嫌だよ。 ここへだって―――来るつもりはなかったんだ」 「・・・・・・・」 (そうだよね、エリちゃんの性格上、有り得ないよね。 だって君は、お金なんかじゃ絶対に動かない。 アーダルベルト・シュティフターの水晶のような魅惑。 仮に路頭に迷って二進も三進も行かなくなったら、おら、腹かっさばいてやらあ、 みたいな豪胆なのが、エリちゃんなのである。ましてや新聞配達だってしていて、 中学卒業したら正社員みたいなのが決まってたのなら殊更である。) 「・・・・・・・」(それに、本当に家族思いだったのがわかる。 彼女の胸の中にあるのはきっと―――育ての母親への愛情だ。 彼女だって揺らいだのだ―――泣き喚くぐらいには、きっと。 でも譲れなかったのだ―――彼女は今現在のその貧乏な生活を、 本当の自分と定義した。違う人生なんか存在しない、そう思った。 それを馬鹿だということもできる。 デカルトが数学で頻出するXを最初に使った、未知数を表す記号だが、 そもそもそれは印刷屋がXという活字を持っていたからだという。 馬鹿みたいな話はたくさんある。 でも、僕はそんな彼女が組み入れた論理を読み取った) 憎しみへと届かない愛情の屈折―――。 「でもじゃあどうして?」 「遺言書にはもう一通あって、それが、この家に送られてたんだよね。 だから、本当の家族が、高級車に乗って来て迎えに来た。 そこには、祖母と外国人の奥さんとオヤジと恵がいたよ」 「・・・・・・そっか」 「オレは本当は、帰りたくないって言いたかったんだ。 母さんだけが、オレの母親だって、誘拐犯とかじゃないって、 そう言いたかったんだ。お茶もなかったけど、水も出さなかったよ。 腕組みして、てめえら誰だという態度でいたよ」 「うん」 「でも、みんな、泣くんだ。見も知らぬ人達が、 生きててよかったって泣くんだ。恵も、お姉ちゃん、 これから仲良くしてねって言うんだ。ちょっと震えた手でさ、 手紙なんかを差し出してきてさ、これから仲良くしてくださいって、 書いてあるんだ。それを見た時に、もうさ、何も言えなくなってさ、 ここに、来ることになってたよ」 * 一番の有効打は、『駆け引きの材料としてのお金』でも、 『泣き落とし』ではなく、その『恵ちゃんの手紙』 エリちゃんだって、塩を撒きたかっただろう。 帰りやがれ、なめんな、と言いたかっただろう。 でも心優しい彼女は、恵ちゃんの手紙を見た時に、 相手のことを思って、手が離せなくなってしまったんだろう。 たとえ腹違いであっても、こんな小さな子が自分のことを姉と呼ぶ。 家族のいなくなったエリちゃんにとって、その小さな手は―――。 ・・・・・・いま、守るべきものに思えたんじゃないだろうか。 * 、、、、、、、、、、、 家族サービスとしての姉―――。 * ●エリちゃんの家の森 たぬき 「やはり新しい合体技が必要だ、何しろ五六八個も、 技を作りながら、その九割以上を忘れている」 あらいぐま 「ハンバーガーが必要だ、 みんな本当は一番肝心なことを忘れている、 今日もオレの尻尾は素敵さ。でも、狸の尻尾もいい、 レッサーパンダの尻尾もいい、全部素敵さ、 でも心の中じゃ、ハンバーガーが必要だと思ってる」 レッサーパンダ 「眠たい・・・・・・」 たぬき 「ビュッとして、バッとして、ズチャッとして、 そこからガッとして、ドゥルッとくる。そこで、俺は、 ロケットはすでに成層圏のあたりに、と言う。 あらいぐまは、絶景かな、と言う。 かすかな白光の尾を残して、暗澹たる宇宙に飛び去る、で、 俺を振るい落とすんだ。 そしてレッサーパンダが・・・・・・」 あらいぐま 「ハンバーガー食べたいなあ。統計学的には、 すべてのタヌキやあらいぐまやレッサーパンダに、 ハンバーガーが配られているはずなのだ。 統計学的にはテレビや車や家もあるはずなのだ。 十年前はみんな、アナコンダやライオンと戦うことを夢見、 五年前はみんな、旅に疲れて、そして―――、 一年前にはみんな、大道芸人になっていた」 レッサーパンダ 「スウスウ...」 たぬき 「レッパン、寝てるのか?」 レッサーパンダ 「・・・・・・まさか、寝ているわけがない、幽体離脱してたのさ、 普通じゃない、みんなが真面目にやっている時に、 眠っているなんてそんな奴いるわけない、マジメーだ! 昨日おっかさんと話した、どうですか、先祖霊が、 神様が、フム、いやいや近頃普通じゃない、そうですか、 ―――スウスウ・・・」 あらいぐま 「まさかまさか、そのよーなまさか! そうだぞ、アセンションしていたのだ。あの夏は、 素晴らしかった。君はよく、アセンションしていた、 あの時、君はよく空海とゲルニカとモーパッサンが、 蟹し合っていると言っては、アセンションしていた」 たぬき 「まさかまさかまさか! 君は授業中に真面目に黒板の文字をうつしていた。 ひょいと覗き見ると、ジャスコと書いてあった。 それからイズミヤと書いてあった。 これは何だいと聞いたら、シッ...ヤツラニキカレル...って、 あの頃から、君はアセンションしていた」 レッサーパンダ 「アウオーン!」 うさぎ1号 「いやいや見事な芸でした、何かいろいろなことをしながら、 野生に帰っていく―――見事な芸でした。 ところであの芸をしませんか? いやいや、また今度、 また明日、みんな忙しい、気が付くと永遠に、 その明日は先延ばしにされてゆく。友達に言う、 あの麦藁帽子何処へ行ったでしょうね、 友達は答える、名前かきわすれたのか?」 うさぎ2号 「いやいや本当に、お見事でした。よくわからなかったな、 でもそこがよかった。すごくいい! ウィー! さっき、うさぎの女の子に、花壇で摘んだ花をあげたんだ。 そうしたら、全然嬉しくないって顔するんだ。 なんでだよ、いや、なんでだよ、 すごくいい、そこがいい!」 うさぎ3号 「イヤハヤイヤハヤ、 近頃じゃ釘だと思ってハンマーを打っていたら、 それが実はネジだなんていうことがあった。 でもひょっとすると、これは第十三次元では、 第二十五次元では、釘なのかもしれない。 それを確かめるために今日も打つ、 昨日の僕を超えるために。 アチョー..タンタンタンタン..ワーッチャッチャ!」 レッサーパンダ 「アウオーン!」 * 「シリアスな顔を、 3分続けられるか勝負してる・・・・・・」 * 「でも、それは限界だった。正直、オレはオヤジや、外国人の母親を、 あ、クレアさんって言うんだけどさ、いまは仲いいけど、当時は、 やっぱり他人としか思えなかった。恵も、な。 もちろん、自分の意地とか見栄とか遠慮とか色々ある。 でもそれだけじゃない、やっぱりオレは―――」 「そうだね」 「高校の話とかもあったんだけどさ、断ったよ。 正直、オレは中学校を卒業したら仕事するつもりだったしさ。 この家も出ようと思ってたんだ。 まあ、病院代とか払ってもらったし、 母さんの死後の手続きもやってもらった手前あるし、 実際、母さんの悪口も言わなかったから、 お返しはしようと思ってたけど、それを家族ごっこでは返せない、 そう思った。学校へも行かず何もしないっていうのは、 やっぱり性分じゃないからさ。けど、そうしたら、 オレの実の祖母っていうのかな、お婆ちゃんが、まあ、 理由はよくわからないんだけど、ハーブづくりを教えてくれてさ―――」 * よくわからない、というのが、非常にエリちゃんらしいけど・・・。 そこはちゃんと聞いておこうよ、と思った。 でも思うに、孫に植物と触れ合わせたかったんじゃないだろうか・・・。 * 「オレも結構楽しいなって思って、 色々しらべたり育てたりしてたらさ、お婆ちゃんが口きいてくれて、 庭にハーブ工場だよ。最初は農場で、 次はビニールハウスとかの建設が始まってさ。 いまのそれは二年前ぐらいだな」 もう話が途中からわけのわからないことになっている。 だって祖母が口きいただけで、 何故ハーブ工場をつくろうみたいな話になるのだ。 確実に、何段階か端折っている。そのうえ、超乱暴な説明。 農場で、ビニールハウス、そして二年前に今のハイテク設備が導入。 でも、エリちゃんの大雑把すぎる認識や説明の中では、 そうなのだろう。ダイナミック―――。 「・・・・・・実はさ、十四の頃だよ、かえちんと会ったのも。 ハーブづくりは楽しかったし―――まあ、なんてんだろうな、 オヤジとは全然うまくいかなくてさ、 クレアさんとは超仲良かったけどな、 へへ、ヘーイ、とか、毎日声をもらってた、女カウボーイ、 ズダダン、ヘイ、なんて銃捌きだ!」 、、、、、、 、、 意味がわからないけど、女カウボーイ、いい、と思う。 「祖母とか、恵ともすごく仲がよかったと思う。 でもオヤジにはちょっと無理だったな、感じることはできても、 中々口では説明しにくいことってあるだろ、 それが娘への愛情表現っていうか、いびつだし、全然違うんだけど、 穴を埋めながらまた穴を開けるっていうのかな、そんな十四の頃だよ」 一瞬―――もしかしたら、 みゆと馬が合ったのってそういうのもあるのかなあ、と思った。 人間関係を形成するのは、負の側面の救済、というのもあるから。 「十四かあ・・・・・・」 * * 「嫌いって言えたら楽だけど、嫌いって言えるほど、 オレには何もないんだよ。時々息苦しくなってさ、 母さんの墓参りしてたら、そこに、かえちんが現れたんだ。 オレ、最初、かえちんが幽霊かと思ってさ、 ちょっとビビったんだけどさ、なんか、 かえちんも墓参りしていてさ、何となく、一緒に、 まったく喋らずに一時間ほど過ごしたんだ」 ああなんか、すごく、かえでさんっぽいし、エリちゃんっぽい。 脛に傷持つ女の子同士の孤独な場面。 ―――シュールレアリスム、不条理劇。 でもそこに不思議な慰めがある、そんな感じだ。 * (かえでさんからみたら。全然違うだろうし、 第三者から見たら最初から、仲良しさんに見えたかも・・) * 「・・・・・・十五の時かな」 一年が流れている、と僕は思った。 もっとお互い興味を持とうよ、と思うが、 学校で知り合ったわけでもないなら、 一年どころか数年流れていても不思議ではない。 縁があるっていうのは、本当にそういうことだろう。 「オレ、かえちんにさ、お前が幽霊だったら、 オレもそこに連れてって欲しいと言ったんだ。 オレは別に死神でも、悪魔でも構わないと思っていた。 そうしたら、手招きする。ついてこいってことらしい」 僕はかえでさんが面白がっていただろうというのを想像して、 笑いそうになる。時々ついているか、確認したかも知れない。 それは猫なしでは原稿を書かなかったモーパッサン的だと思う。 、、、、、、 、、、、 このヤンキー、面白いな、と。 「そうしたらさ、何処連れてったと思う? かえちんの、家だよ」 僕は笑ってしまった。 チンチン言う下世話だけど勇敢な父上と、 かえでさんに似ている母上という――― ・・・・・・天国。 お父上と酒を酌み交わしながら、チンチン論を聞きたいなあ、 と思ったりした。馬鹿だけど、何のタメにもならないけど、 それでも男って、いやもしかしたら人間って、 そんなに完璧じゃないと思うから。 ナマケモノは陸上哺乳類の中でもっとも悠ったり動く。 〇・一〇九から〇・一五八キロのスピード。 でもこの生き物は水中に浮くことができるし、 確かに動きは素早くはないけど、馬鹿ではない。 この生き物は筋肉の構造上、体温を上げるために日光浴するし、 その筋肉は一日樹に掴まっていられるほど持久力がある。 たとえば、素早く動くことは相手にいち早く場所を特定されることでもある、 熱帯にはかすかな動きすら見逃さないオウギワシがいる。 「かえちんのお父さんとかお母さんってすごくいい人でさ、 その、かえちんって友達もいなかったら、 すごく喜んで、出迎えてくれるんだ」 「オレは、なんかさ、子供の頃思い出してさ、 この家いいなあ、と思って。 かえちんの母さん、飯すっごく美味くてさ、 ああ、上田さんは別格だけど」 でも、かえでさんのお母上が料理が上手、というのは初めて聞いた。 僕も今夜、かえでさんのお母上と料理の話をしたいなあ、と思った。 「それに風呂もなんか大きくなくてさ―――」 それはまあ、こんな家のお風呂は大きいだろう。 (特大冷凍ハンバーガーの通販と同じである、かくありけりよ) 後で聞いたら温泉が湧きだしているらしくて、大浴場風らしい。 ―――獅子の口に、大理石。 きっと、エリちゃんはそういうものにまったく馴染めなかったのだろう。 まあ、今でもそうなのかもしれない―――。 「よそよそしくなくて、あったかくて、遠慮がいらなくて、 パジャマ着てさ、かえちんの隣でおやすみタイムさ。 楽しいことってあっという間に時間が過ぎる。気がついたらこうだよ。 その夜かな、かえちんの素顔を見たのも」 「ああ、月が照ってたんだね」 「かえちん、めちゃくちゃ美人で、そこもなんか、気に入ったよ。 本当はすごくハートがあったかくて、個性的で、面白くて、 やさしいのに―――なんて言うんだろうな、オレみたいに、 色んなことに悩んでた。でも、かえちんは、戦ってたよ。 まあただ、ひどい悪夢を見たのも、その時が初めてだった」 * * 「・・・・・・二人ともわかりながら、雰囲気に任せたんですね」 「でも、むしろ、オレは眼が醒めた時に、 かえちんの力になってやろうと思ったよ。 でもまあ、朝、眼が醒めたら二人に泣きながら、 抱きしめられたのにはちょっと驚いたなあ。 怖かったでしょとか、本当にごめんねとか、 いや、まあ、そんなの二人のせいじゃないってわかってたから、 オレはむしろ、恥ずかしかったな。 世の中には、こんな種類の地獄もあるんだなって」 * イミテーションのガラス細工が本物のダイヤモンドより、 美しく見えてしまうことがあるように、 どこか芝居じみている現実の笑顔。 ブラックホールの近辺に位置する物体には、 地球上の物体よりずっとゆっくり時間が経過するみたいな緩速・・。 世界はちょっと早すぎるのだ。 もしかしたら、すごく、いや、ありえないぐらいに。 そこへ、何気ない風に挿入される、言葉。 * * 「祖母も入院してたから―――」 * * 「なんか、二人とも仲が良くて、本当にいいね」 「妬けるだろ?」と、楽しそうにエリちゃんが言った。 * 舌を出して笑った、 ピストルのバネの手ざわり。そのなんとも言えない顔に、 どれどれどんな具合ですかねと、風が遊んで、前髪を揺らす。 足元の床が奇妙に傾斜しているように水平の意識が坂道する。 「この竹とこの東屋、 お祖母ちゃんの思い出の場所なんだ」 * * *
2021年04月19日

[イメージはインターネット上に存在する電子三次元空間] 大丸心斎橋店にオープンした伊藤園の直営ショップ 「フォー グリーン リーブス イトウエン」で、 日本茶の新たな魅力を知るみたいに・・・・・ 「実はさ、上田さんには打ち明け話があって今日来てもらったんだ」 マッチを舌でシュッとするような、不良なあらいぐまが物申す。 「僕も聞きたいことがあるよ」 少し前のめりになる。真っ直ぐ僕を見てくる。 「じゃあ先にそっちから言ってくれよ」 「・・・・・・」 その時にはもう、 恵ちゃんや、かえでさんや、みゆはいなくなっていた。 恵ちゃんはみゆと一緒にアニメを観ると言うし・・・・・・・、 (はかどります・・・・・・) 、、、、、、、、、、、、 ―――言っていたのかもしれない。 「いくつか質問があるけど、みゆが、 ほら五人で寺院までいったあの日のあと、 病院でいきなり突拍子もないことを言い始めた。 あれ、エリちゃんのお父さんの仕業だよね?」 一瞬、眼を丸くされた。 警戒や嫌悪とは違って、やはり聞いてきたか、みたいな。 まあ、想像はしていたけど。 だって、学校辞めたいんならすぐしなくちゃ、とか言いそうだから。 (キャラ的に?) 何故か僕は、三行半とか、最後通牒という言葉を、 年老いた女の震え声さながら思い描く。 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、 高速度カメラが夢中で疾走する人体の腿の筋肉を捉える―――。 「そうだよ」 「―――みゆは、まだ学校を決めてないままいるけど・・・」 春休みはとうに終わっているのに、 みゆは僕の家と、エリちゃんの家を往復している。 「本人も一応は考えているんだ、通信制でも定時制でも私学でもね」 すんなりと伸びて、白いところにうす蒼い静脈の浮いている、手。 ゆびさき。螺旋、渦巻き、法螺貝、寝床の皺。 「その―――エリちゃんのお父さんは、 大学経営をしているんだよね、 付属高校もあるよね?」 「うん、みゆちゃんも何かあれは気付いてる顔をしてるって言ってた。 まあ、隠すつもりも全然ないんだけど、 オレに聞きたいことあるぞってな顔って」 女の勘というのは鋭い。 声は口にこもるもの、 音はとおくからきこえてくるもの・・・・・・。 >そんな時、豆ランプを思いだすのだろう。 >ロダンや、イブセンや、トルストイや、ゲーテの老年・・・・・・。 たとえば、文化財にとってベストな環境は温度二二℃、湿度五〇〜六〇%・・・・ ―――放心。 あの音の響きがよい、パチンと指を鳴らした。 「まあ、おめでとう上田さん、そうだよ、大学経営している、 付属高校もあるよ。正確には、会社も経営している。 まあ、巣鴨っちと親戚の時点で大体想像できたかもしれないな」 、、、、、、、 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、 それはたとえば、沙漠の真ん中にありそうなイメージのピラミッドが、 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、 実は首都のカイロから一番近いギザのピラミッドまで、 、、、、、、、、、、、 、、、、、、、、、、、、、、 タクシーで三〇分ぐらい、というようなものかもしれない。 「そうだね、そういうのもあった」 「それで聞きたいことは―――」 「その・・・・・・信頼できる人かな」 エリちゃんの顔色が少し変わった。 「なにぶん分かり易いヒトだから 全身の毛を逆立てる針鼠のような、気配。不穏。 怒らせたかな、不躾だったかなと思ったけど、そうではない。 ―――でもその一瞬、近寄った猫が、猛烈に逃げたことを思いだす。 「正直、オレにはよくわからない。 そのために、上田さんに来てもらったからな。 オレも、六年ほどの付き合いだからな」 フッ...ハハ... いや、よもや想像していないことを、 大理石の獅子像の大きな口のごとく、 こんなに堂々と言われると―――それは・・・それは。 、、、、、、 笑ってしまう。 (光が、空にも、地上にも、 しずがに流れながら次第に溢れてこようとしていた―――) 時間というのが青味がかった無宗教の前足のように思え、 言葉というのは、通りすがりの耳のような憐れな響きを知る。 「でも、みゆちゃんが言っていたよ、多分お兄ちゃんは、 きっと気にするだろうって―――これはそういうことなんだな」 * ☛ 連続コンボが決まった瞬間。 * * どうかしたのか上田さんですっかり酸欠状態。 もうどうしたらいいんだ僕は―――。 というか、天然すぎるよ。 * ☛ エリちゃんが面白い子だってずっと前から知ってるくせに。 * * ●恵の部屋 みゆ「あたし思うんだけどね」 恵 「うん」 みゆ「やっぱりアニメにも、アルマジロとか、 取り入れていくべきだと思うの」 恵 「・・・・・・う、うん」 みゆ「それにドキュメンタリーなんかでも、もっと、 アルマジロの生態について知っていくべきだと思うの」 恵 「・・・・・・う、うん」 みゆ「あたしは時々、夢の中で、オオアルマジロ見るよ」 恵 「そうなんだー」 みゆ「背中にのっていいって聞いたら、のっていいよお嬢さん、って、 言ってくれるの。うあー、うあー、とか思ってたら、 そこで眼が醒めちゃうんだ」 恵 「残念」 みゆ「でも、本当にオオアルマジロに乗っちゃいけないと思うんだー、 やっぱり、オオアルマジロさんだって、そこはやっぱり、 小さなアルマジロを、ほら、親亀と子亀みたいに、カンガルー的に? のせいたんじゃないかと思うんだー」 恵 「・・・・・・わんだふる」 * 、、、、、、、、、、、 アルマジロ道は奥が深い―――。 (バスガイドは観光地を巡りすぎると、写真を見ただけで、 そこがどこかわかってしまうという特殊能力を身に着ける) ―――そう思う、恵ちゃんなのだった・・・・・・。 * 「上田さんをガッカリさせたみたいですまないな。 ただ、あの日、三人で酒飲みながら、話をしたんだよ」 「悪巧みの?」 、、、、、、、、、、、、、、、、 竹の方から風鈴の音が聞こえている。 「でも、みゆちゃんにとっては、父親との決別のね。 アパートで上田さんに打ち明けて、優しく受け止めてもらえた。 きっと、決心したんだろうな」 「家についてパジャマに着替えたら、お兄ちゃんと暮らしたいなあと言って、 もう、学校や、再婚相手のこともそうだけど、 父親と関係を切りたいって、うさぎの耳に触って手を舐められながら」 * うさぎの耳に触って手を舐められながら・・・・・・。 うさぎの耳に触って手を舐められながら・・・・・・。 * * 「じゃあ、うちのオヤジに話聞いてみるかって、 二人で書庫へ行った」 それは映画興行的に成功した『フラッシュダンス』のヒロイン、 ジェニファー・ビールスの肝心のダンスシーンが別人だったという、 残念な事実みたいに―――。 残念なのは、四〇〇〇人の中から選ばれたヒロインが、 その後まったく鳴かず飛ばすだったのは、何故なんだろう? 「書庫あるんだね、この家」 *色味を見るためのカラーチャートのように、感情を心理学や、触覚や、デザインや、音楽の中で、記録・再生・編集ができるツールについて考えていた。いつも何かがそんな風に少しずつズレていく。―――本当に? * ●ハーブ工場内 かえで「ああ、上田さんが浮気をしている! エリちゃんと!」 かえで「やめて、わたしは真珠貝の白痴になってしまう、 カトリックの鉄の貞操体よりも、もっとルサンチマン! ああ、余白に書かれたサンフランシスコの喧噪めいた情事!」 かえで「そんなプライベートレッスン、ああ、リバティパスポートが、 わたしの髪を優雅な噴水した、衰弱の火花―――よ」 (うさぎが、それを偶然見ていた、顔はわからないが、 声だけを聞いていると、どうも、悦に入っている感じがする・・・) (うさぎは思った、この女、ど淫乱だな、と。 女豹だな、と。) かえで「そんな夜の踊り子をしたあとで―――」 かえで「・・・・・・ウーン、やっぱりもうちょっと、えっちい感じが欲しいな」 かえで「・・・・・・駄目よ、もう夜の濡れ場を九十九里浜したあとで」 (・・・・・・うさぎが、かえで氏の独り言を聞いていた。 そして思った、夜の濡れ場を九十九里浜したあとで) (・・・・・・「3Pは?」と言いかけて、それは阻まれた) (・・・・・・sleeping,sleeping、) (・・・・・・うさぎが、かえで氏の独り言を聞いていた。 そして思った、夜の濡れ場を九十九里浜したあとで) ―――かえで氏が、うさぎを見つけた。 うさぎは逃げなかった。 かえで「次の話の計画を立てていたの」 うさぎ「・・・・・・」 (・・・・・・ゆさぎは、すぐにそれが嘘だとわかった。 それでは夜の濡れ場を九十九里浜できない) (しかしゆさぎは、ひょいと抱き上げられ、 女性の胸の豊満な感覚を味わったので、それは、 本当だと思った。抒情性のある夜の濡れ場と九十九里浜) * わらわらわらわら―――うさぎがわくのはどうして? わらわらわらわら―――うさぎがわくのはどうして? * \(゜ロ\)(/ロ゜)/くじゅうくりはま \(゜ロ\)(/ロ゜)/くじゅうくりはま キリンジの代官山と並ぶ、 椎名林檎のエロワードセンス。 いきなりスカンジナビア半島! 夜のマルセイユで美女を抱いて死ねという卑猥さ! * 世の中というのはみんな完璧な答え、 もしくはそれに等しいものを求めている。 しかしながら、交渉するための受け答えをいくつか暗記して、 一生懸命棒読みするだけで沢山の人に印象を残すことができる。 追放する、矯正する―――あるいはもうその人を、 その人の個性として認めてしま―――う、「多様性」に着目しよう、 その予想外の化学反応こそが適切な時代感覚だ。 様々なフィールドでオープンイノベーションが始まっている・・・。 あなたは不完全だ、あなたは未熟だ、あなたは劣等感の塊だ。 それでもあなたは無数の自分を持っていながら、 ほんの一面しか見せていない。変えられなくても受け入れられる、 駄目でも経験できる―――いちいち難しい御託ならべてんじゃねえ、 ここは―――【世界】だ。 * 、、、、、、 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、 でも不思議と、日記だけは書くまいという気持ちが残った。 (かえでさんのエッセイ日記はいい、イラストがある。 自分だけど、フィクション性を取り入れている―――) 僕等はそれにガソリンをかけて景気よく燃やしちまいたいぜ、 もういっそ一枚ずつ破っちまいたいぜ、と思った。 それは、最高の悪魔祓いになる。 そうすればその気持ちはきっと、中庸、砂時計のくびれ。 だが、図書館の本をそんなことをできるわけもない。 ―――下らない本を燃やす条例の認可を待つ。 山岡士郎だって、こんな本食えたもんじゃないよ、と言ってしまう。 フハハ、だからお前は鼻からスパゲッティというのだ、と海原雄山だって言う。 やめろ、そんな口調変だ、というか、何の話だ。 「うん―――まあ、いつも夜になるとそこで、本を読んでるから」 そこに『部屋をまちがえた花嫁のようにてれているみゆ』と、 『地獄より最暗黒の邪悪を希う魔王サタンの奴隷どもたる、 黒魔術の秘密結社の儀式を偶然見つけても、 自分も実はそうなのだ、と無茶苦茶言いそうなエリちゃん』と。 向かうは魔王の城、悪魔の笛を鳴らせモーツアルト・・・! 「それで、まあかくかくしかじか、 ビールを開けながら、それじゃあ、こうしたらどうだろう、みたいなね」 「なるほどね」 「でオヤジが、まあ、 転校の手続きとかの具体的な話をしたあとでさ、 うちの私学の付属高校に入学とかどうだいと言ったんだ」 「そこのところ詳しく」 「いや、オレのところで働くこともわかってたから、 お金はいらないよ、と言ったんだ」 * ☛ 逆転無罪の瞬間。 * 「でも本当にすまないな」 エリちゃんが頭を下げて来たので、手を振った。 燕が掘り起こされた土の中にいるミミズを目聡く見つけ、 実に素早く啄むように、僕は手を振った。 礼儀正しく。 まるで急行通過駅の如き存在に。 クルクルと赤と青と白の三色がねじれるように回転している、 理髪店のサイン・ポールみたいだ。 僕は皇族のように無難な手の振り方を心得る。 たとえば映画を面白かった、つまらなかったと二分法する。 グレーゾーンは存在しない。 点数表示も本当はおかしなものだ。 みんな本当は知っているのだ、本来そこにはものすごく、 いやもうありえないほどたくさんの情報が詰まっている。 実の所、これは大真面目な話、多くの評論家は嘘吐きである。 評価の定まったものを選ぶからだ。 評価の定まっていないものの方が数が多いからである。 とても単純なトリックである、その人は何も知らない。 ―――蜂の巣に指を入れてみてごらん、 沸騰した鍋に手を突っ込んでごらん、 何故わかるの、何もあなたはわかっていないでしょ? 、、、、、、 ヤクザの論理。 「いや、エリちゃんがむしろそういう人だから、 妹のことを任せられるんだ。 本当にすごく感謝してるんだ。エリちゃんにはね」 エリちゃん以外には、正直あんまりいい印象を持っていないよ、 という裏返しなのだけれど、多分まったく伝わっていない。 「でも、僕は、大学三年生で、 本来なら就職活動だって視野に入れる時なんだ。 まあその前後に、僕も大学院の話とかね、 私学の悪い噂を結構聞いてね、 そういう―――の、まあ・・・・・・」 、、、、、、、 わからないよな、と思う。 (だって僕は一番肝心な話を省いている―――) 「まあ、悪いことはしていないと思うよ―――、 これで答えになるかわからないけど・・」 答えになるかといわれたら、全然答えにならないだろう。 エリちゃんは終始一貫して、 ユーモラスなタツノオトシゴみたいなものである。 でも力強く言う。だってそれしか言えないから。 ただ―――。 ただ・・・・・・。 「あいつが―――手首を切ろうとしたことは知ってる?」 、、、、、、、 、、、、、 ポイントはまあ、ここにある。 ―――僕はシスコンでも、過保護でもないと思う。 長い間ずっとそう・・・僕は、自分なりにみゆを守ってきただけだ。 * 「あなた」がいて「わたし」がいる。 「あなた」がいないのに「わたし」がいる。 それは何の前触れも何の前置きもなく、 ―――流れる。 (客観的な妥当点もない、それなら混ざり合わなければ、 もっと積極的に言葉を繰り出さなければ、) 、、、、、、、、、、 違法収集証拠排除法則。 第三者の心情を表現するには、神の視点がいる、 『更地』になる、『真っ新』になる―――しかし『逃げ/畏れ/怯え』 筋肉の動きは「0か1か」のディジタル・・ (それでも、)刹那の躊躇も微塵の遠慮もありはしない、 ―――ただ、深層心理の影、分身、鏡のようなもの、 ―――ただ、等しくあろうとする、呪縛。 * 「何となくは、聞いたよ」 僕は笑った。 そうだろう、きっと、何となくがちょうどいいと思う。 蝋のような緩慢さでしだいに沈下していく、 暗い感情なんかきっと知らない方がいい。 いや、きっと、わからないからいいのだ。 知りすぎないからいいのだ。 上手く人生を生きるコツは、きっとそういうことなんだと思う。 死んだ細胞が見える。ゆらめき進む燐の軌跡―――。 みんな、発端も終末も忘れて、ただ、 生きるという大真面目で悲しげな何かに操られながら・・・、 、、、、、、、 生きるのだから。 僕は静かに肯いた。 僕の結論は―――。 「エリちゃんにならみゆのことを任せられると思う。 他の誰にでもない、エリちゃんを信じることにする」 「大丈夫まかせてくれ」 早いよ、と思う。アニメや漫画みたいだ。 ―――安請け合い、とは思ってないけどね。 でもこの年下の女の子は、僕よりずっと懐が広い。 「・・・・・・」 いってらっしゃいと僕を見送ったあと、エリちゃんの家へ行く。 みゆは、学校から離れて暮らしてみて、 どんなことを考えていたのだろう。 (やったー、決めるまで大型連休だって? まさか) エリちゃんという逃げ場所があったわけだけれど、 どうするかも中々決められず―――いやもしかしたら、 僕が、そう言うのを待って、 人知れず悶々として過ごしていたのかも知れない。 ―――働くというのはちなみに、お金を稼ぐことではない。 会社と自分は同じ立ち位置であり、平等である。 また厳密に言うなら、働くというのは、 『知識やスキル、資格、人脈+行動特性や思考+仕事観、人生観』 のことである。 好き嫌いや、上司、収入、これらすべて明確に映像化して、 論理的に判断しなくてはいけない。 そこから一つだけわかる、とても長いのだ。 『夢、目標、志向』のことではない、 本来のことを説明しようと言葉にすれば、とても長いのだ。 、、、、、、、、、、、、、、、、、、 言葉に中々できないことってあるよなあ。 一か月も信天翁していたみゆが、 その実、何を考えていたかということには興味があった。 これはまあ、空を仰いで問いのように発している自分こそが、 信天翁だと気付くことでもある。 (超難易度の低い初級クエスト?) 一か月も妹が学校を決めないでぶらぶらしているなんて、 およそ、尋常では考えられない。 、、、、 、、、、、、、、、、、、、、、、、、 やっぱり、みゆは自分の人生を決めていたのだろう。 ―――それは、エリちゃんの家へ来なければ説明できない、 この一か月は牢獄のような日々でもなかったということだろうか、 あまりにも豪華な食事と、お弁当を用意されながら、 それでも働くことを知った―――妹・・・。 、、、、、、、、 アルマジロのため、とか茶化して言いそうな妹だけど・・・。 * 中国にこんな諺がある。 「一年の繁栄を願うなら、作物を植えなさい。 十年の繁栄を願うなら、木を植えなさい。 百年の繁栄を願うなら、人を育てなさい」 、、、、、、、、、 、、 、、、、、、、 とても重要なことだ、いま、それ必要だった? * 「みゆに―――もうこれ以上、不自由な想いをさせたくない、 卒業なんかしなくていい、中退していいよって、 言ってやるつもりだよ。少し厳しいことを言うかもしれないけど、 今後はもう、背中を押すつもりだよ」 父親には、そうなるとGW中にもう一度話をしなければならないな。 (さすがに電話で、というのはまずいと思ったし、) 面倒だけれど、筋は通さなくてはいけない。 親は親だから。 また、父親と修復不可能だとは思うけど、義理の母親含めて、 僕が縁を切れてしまわないようにサポートしないとな。 「みゆちゃんも喜ぶよ」 そう言うと、何だか急にエリちゃんは男前な顔をして、 さながら、やっぱり妹の恋人みたいに言うわけである。 「上田さんは、みゆちゃんの尊敬するお兄さんだもんな」 *
2021年04月13日
気が付くと帰宅するバスの最終便の時刻―――。バスに乗ると、バスは乗客で一杯だった。バスの床という得体の知れない不透明な闇。電燈がついていないのだ。切符を取り忘れたことに気付くが、いつもと場所が違う。老若男女。年齢も様々。バスがひと昔どころかふた昔前のもので、ちょっと古いなと思っていたのだ。でも、ご都合主義的な僕は、よく考えず、きっとバスが故障したのだ、もしかしたら事故かもしれない。それで急遽こんな古めかしいレトロなバスを、用意したのだろうと思った。それはまた、乗客が一杯なことにも説明がつく。辻褄は合う。おかしくないか、と言えば、おかしい。けれども、マンホールの蓋が開いていて、水道局に連絡する酔狂な、いや、慈善に満ちた人はどれぐらいいるだろう?世の中にはむしろ、誰かがその穴に落ちればいいのに、そうすれば面白いのにと思っている人さえいる始末だ。そうではないと言った人でさえ怪しいものだ。心の中でかくあるべしというのは所詮一面的な気分にすぎない。そんなことを信じている人がいればむしろ幸福な馬鹿である。賭けてもいい、平和や愛を謳う宗教人たちでさえ最後は金だ。説明がなかったのは、説明する必要がないと思ったからだろう、と更に思った。だって、夜の乗客は帰りたいだけだ。 *重ね移しになる。生の襞の見え難い領域の中で。何か忘れているような気がする。何か忘れているような気がする。 *バスの際後部座席に座って、発進した。ふと後ろを振り返った時―――。、、、 、、、、、、、、、、、、、、そこに、いつもの見慣れたバスが見えた。 *これには慌てた。間違ったらしいと気付いた。このバスは何処に行くかわからないぞ、と思った。 *焦りの中で身体と精神の間にズレが生じ、ひび割れが生まれ、それが裂け目というほかない亀裂となる。そしてそんな時に限って、当たり前のことを忘れる。では何故このバスはその時刻に停車していたのか?では何故このバスにはそんなに乗客が乗っていたのか? *どうも酒を飲んで酔っ払っていたのと、まさか同時刻にバスの停まる場所にそんなものが、停車しているとは夢にも思わなかった。いや、それは嘘だ。自分はその古めかしいバスで帰りたかったのだ。いつもと違う状況を好意的に受け入れたのは、心もとない生の歩み、誰のために生きているのだか曖昧模糊とした歩みの中で、もはやロボットのようになっている自分が、ちょっとこれぐらい、と思ったからなのだ。その見え難い領域に浸透する視力は、知性や思慮というものこそが、人生の意味をすべて吸い取ってしまうのだと語っていた。 *それに、バスの窓を何気なく見た時に、窓辺に自分の祖母に似た人がいたのだ。 *しかしこのままでは本当に帰れなくなってしまう。バスの運転手に声をかける。「すみません」「何ですか?」「どうもバスを乗り間違えてしまったようです」「―――乗り間違えた?」どうも、おかしなことを言ったのだろうか。「いいえ、あなたは、このバスに最初から乗る予定でしたよ」何言ってるんだ、この人―――。ふと、バスの窓から町の景色を見る。それが―――どうもちょっと、違う。この世のものとは思われない、景色。背筋が震える―――。ゾクッとする。毛穴が開く・・・。 *「あなたは知っていたはずですよ、このバスの乗客が誰か?」「・・・・・・・」「帰るならどうぞ構いません」「構いませんって、ここ、何処ですか」「大丈夫ですよ、ちゃんと帰れます。でもね、生きている意味なんてありますか、本当に、このまま降りていいんですか?」「・・・・・・」 *眼を瞑ると、意識が途切れた―――。ふたたび眼を開けると、自分は病院のベットの上に寝かされていた。海の底の魚のように砂に隠れているみたいだった。医者が来て、大分時間経って警察も来た。、、、、、、、、、、、、交差点で車に轢かれたのだ・・。 *それ以来あの変なバスは見ていない。でも時折、考える。あのバスは一体どちらへ向かって走っていたのだろうか、と。窓から見た景色はさしづめ煉獄とか、三途の河までの道とかなのだろうか。いや、どうだろう―――あれは全部、夢かもしれない。そんな時、あのバスの運転手の言葉がよぎる。どうしようもないぬかるみ、少しずつ溶けて行こうとする氷山、海岸に作られた砂の城・・・・・・。「大丈夫ですよ、ちゃんと帰れます。でもね、生きている意味なんてありますか、本当に、このまま降りていいんですか?」 *ほかの音が少しずつ、消えて―――いく。呼ばれなければいけないはずのものが、ひとつずつ奪い去られてゆく。それはたとえば外国のプラットフォームで、時間通りにやって来ない列車みたいなものなのだろう。 *重ね移しになる。生の襞の見え難い領域の中で。何か忘れているような気がする。何か忘れているような気がする。 *そうだ、あのバスは河川敷に放置されていたバスだ。 *―――それがどうした?―――そうかもしれない。―――そうかもしれない。しかし、僕は思う。生きている意味なんてありはしない。生きているだけで意味は生まれるのだ。働くから、考えるから、集中するのだ。何もしなければ、生きても死んでもそれこそ変わらない。だから僕は河川敷へ向かう。知りたいから、確認したいから。あのバスはまだ残っているかどうかに意味はない。何度も言うように、意味はない。けれども、無表情のバス運転手とは違う、それはとても重要な無能力の、非才の、愚か者の術である。何かが潜んでいるかもしれない、ああ、何かちょっとしたことがあるかもしれない。それは徒労だ、時間と経験は教えてくれる。でもそれが滞在許可証じゃないか、沈没する船でも、行き場所を失いそうな広告的表現の中でも、自分が出来る精一杯のことがある。世界五分前仮説のように、五分先の自分を信頼できるかどうか、である。 *バスは撤去されていたし、河川敷はすっかり整備されていた。風景も少し垢ぬけたような気がする。マンションのようなものも建設されている。僕は自分が小説の登場人物でもなったような気がした。傍観者で、その他大勢で、一言ぐらい台詞がある登場人物だ。あのバスの運転手もきっとそんな男なのだろうと思った。「世界は五分先を信じられるかどうかだ」呟いたあと、笑いながら、河川敷の土手に寝転がった。真剣に考えるな。余計なことを考えるな。どうせ何やったって、時間に身を委ねるよりほかにない。僕はもう一度、思いだそうとした。 *重ね移しになる。生の襞の見え難い領域の中で。何か忘れているような気がする。何か忘れているような気がする。―――唯一の希望を・・。
2021年04月12日

―――それは、僕の思想や葛藤であり、心身の表現、 人生の崩壊の過程・・・ * (「束の間の生の充実」) (「偉いなる人生の音楽」) * 喚ぶ 、拒 む―――。 * * ―――そして誰も名前を憶えていない、 僕も、君も、憶えていない、 (と思うから・・・・・・) (―――本当に何かが始まったのだろうか? (―――ただ、夜が繰り返されただけではないのか? * でも君を見ていた―――。 君の声を聞いていた・・・・・。 ああ反発し、交錯する。 ああ一般的な思考や視点が、押し寄せてくる。 ああ、他者の言葉や評価が、渦巻いてくる。 「しかしそれもまた、君なんだろうか?」 * * 名前のない街、名前のない人、 名前のない僕、名前のない君・・・・・・・。
2021年04月11日
これは実話だけど、近くにウォーキングロードがあって、よく歩く。周囲が自然の風景というには程遠いが、都会近郊では中々お目にかかれないのでよく利用する。近くには大型公園があり、樹木の量はそちらの方がずっと多く、そちらも歩きやすい。、、、、、、、どちらがいいかという問題よりも、単純に時間の計算である。歴史文化施設は木造の寺院ぐらいで、風情も糞もない。昼間は人がいるから、自然、夜になる。僕は人嫌いだからね。人嫌いというのは、夜になって出没する狸に愛を感じていたりする。ウォーキングロードは、周回するような仕組みになっていて、これが一キロぐらい、ゆっくり歩いても三、四十分。ちなみに十分歩くとおおよそ千歩というアバウトな考え方があるが、きつくもなく、しかし面倒くさい時にはパスしたい、ある種の妥協点のような感じ。その日は九時ぐらいだったと思う、住宅街に面した踏切を渡ってウォーキングロードに合流、そのまま坂を上って歩道橋が見え、遠くに高速道路や、商店街などへアクセスできるが、左周りに進んでゆく。その道で、レインコートを着た、髪の長い、不気味な印象のロングヘアーの女性がいた。昼間ならさほど気にならないが、夜になるとつい変なことを考えてしまう。僕は前髪で隠している女性を見ると、米津玄師だな、と思うことにしているが、それとレインコートの下が、やけに白っぽい服装だったこともあるだろう。ガチヤメテ貞子ファッション。口の悪い僕は怪談系キチガ〇のことを考えていた。ところで大坂もわりと怪奇スポットが多くて、僕は大体知ってる。基本的なことだけど、全部避けるために、知ってる。DQNじゃねえんだよ、お前どこ中だよ、ヤンキーネタじゃねえんだよ。そのような僕の、感情の深いところから生じる不気味、劣等感、急性ストレス反応。―――心拍数上昇、血圧上昇、呼吸数上昇、気管拡張。僕はゆっくりと通り過ぎる。自己情動調整―――思考停止。言葉がなくなる不思議。ゲーム実況者だったら致命的だね。数十メートル進む。そこにまたしても、人影がある。女性がいた。―――ゾクッとした。レインコートを着た女性である。ギャグみたいだけど米津玄師と貞子ファッションのあわせ技。怖い時って異様にその手のセンスが内側からこみあげてくる。で、やっぱり怖いから―――つい、まじまじと見てしまう。―――眼が髪の間から覗いた。僕はすぐ視線を逸らした。でも、やっぱりまた見る。頭を下げながら、見る。すると、服装がありえないぐらい濡れているのがわかる。雨降ってないから、服とレインコート張り付いているのは変。まあ、サウナスーツなんてこともあるから、汗を掻くために、ちょっとレインコート着てみましたけど何か、かな。夜だから街燈が等間隔であるけど、それがもう、この世のものならぬ感じを与えている。坂道を降りる、そして昇って公園部や休憩スペースのある場所を通過する。パンダとライオンに跨ることができる。ライオンはともかく、パンダっていつも胡坐かくように座って笹喰ってるイメージしかない。あれ、笹喰うのはコアラだっけ?森が近いから鴉がよくいる。餌を与えているせいか、猫もよくいる。そこに、やはり、レインコートを着た、髪の長い、不気味な印象のロングヘアーの女性・・・・・。、、、、、、、、、、、二度あることは三度ある。、、、、、、、、、、、三度あったら四度はある―――。ドッドッドッ......。気がつくと、全力疾走で駆け抜ける道。シュィーン!陸上部なんだな、きっと。でも君、俺の疾やさについてこれるかい?何言ってんだ、アンタは。でも風なんだよ、風!スプリンターなんだよな、きっと。大会が近い。どうみても二十代とか三十代に見えたけど、また、息切れてるようには全然見えなかったけど。ポーカーフェイス。もしかしたら三姉妹なのかもしれない、なるほどそうか、貞子三姉妹。しかし、その後は特に問題はなく、普通に帰れた。いっておくけれど、僕は全然怖かったわけじゃない。あくまでも、都会人のマナー&ポリシーとして、駆け抜けただけ。それを口にする時、ジャスティス!いやもう何言ってるかわからんよ、振り返らない道!でも、戦うことはできる。何かに立ち向かうことはできる。そしてマンションのドアの前で、ドアノブをがちゃがちゃしている女性がいた。それがまあ、僕の隣の家のドアノブだった。おいおいセニョリータ、そういう時は大家さんに電話するんだよ。でもそいつ、レインコートを着て、長髪で、前髪が隠れていて、ちょっとキチガ〇入った眼つきの、素敵なあの子。、、、、、、ヒューヒュー(意味不明)ドアの鍵をフーンフフン、とか鼻歌うたいながら開け、全力で閉める。プロテク動作。MAXで閉める、ガチャッ―――というか、ガッチャ。今世紀最高の無駄なオーバーテクノロジー。貞子四姉妹。よくあること、よくあること―――いや、ねえよ!、、、、、、、、、、、、、、、、、ちょっとアスパラガス食べすぎたかな―――。・・・・・・。・・・・・・・・・。(無理あるな?)(どうする?)(どうする?)なんかわからないけど本当スンマッセンシタ繰り返しながら、大人だけど、玄関の上がり框で土下座し、いきなり九字切り、ナムサンホーレンソー!ホンニャダバー!とりあえず盛り塩し、布団にくるまってガタガタ震えたふりをする。いや、全然怖くない、いわゆる楽しさにちょっと酔って武者ぶるいしているだけ。いや、あんまりうまくねえよ。でも、フッ―――と、頭上から、ポツン、と雫が落ちてくる。瞳孔散大、異常すぎる未来、今現在、過去。前に押し寄せて来た恐怖とは比べものにならない。ああ、これが超美少女で、あ、胸透けてる、ブラジャーつけてないなんてHだなあ、とかいう展開だったら、本当によかった。アナタニアエテヨカッタ...めっちゃ憑かれてる、めちゃくちゃヤバイことになってる。僕は、ニイィッ―――ツ、とお歯黒みたいな歯を覗かせ、素敵な笑顔を覗かせている、内気でプリティーな貞子―――を見た。ハローエブリワン、とか言いながら、「とりあえず俺、トイレ行くから―――もう帰れよ」と言ってみる想像をする。怯むかな、それとも怒るかな。「大人なめんなよ、人間なめんなよ、糞キチガイ幽霊が。ここからは一方通行なんだよ、人の家勝手に入ってきてんじゃねえぞ」とか、言う根性もなく、想っていたりする―――。・・・・・・。・・・・・・・・・・・・。(ぎゃてーぎゃてー、ほんじゃらば!)(謎の呪文・・・・・・)ああ、とりあえず明日、お祓いに行こうかな。五千円だっけ、五千円あったら焼肉食べれるな、と僕は考えているのだった。僕はぐいぐい、大人だけど、いい歳したおっさんだけど、目尻をこすった。なあ、貞子、オレ疲れてるんだよ、もう眠りたい―――んだ。わかるだろ?
2021年04月11日
外れた頭のネジという、事実とも幻想とも区別できない不明な次元がある。これはまあ、人間が金平糖みたいな脳味噌を、キャベツにしたくなったからだろう。途切れ途切れの夢の、浅いのか深いのかわからない、夢・・・。ああ夜、宗教的な気分に感傷的になっていないで、詐欺師や、無能、時にはトリックスターの気分で眠る、僕。僕は眼隠しをされた人物が、地下の通路を歩いているのを見ている。巨大な地下空間、戦時中につくられた防空壕からの長い長い抜け道を連想する、そして、部屋に入った。そこには、巨大な水槽があって、その中には死んだ魚を大量に埋め尽くす光景がある―――。状況にもよるが、こんなのが日常の光景だとしたら、精神異常の兆し、蜃気楼といえるかもしれない。でも、もしかしたらそこは―――「海」であるのかもしれない。「魚」も死んでいるけれど、実は生きているのかもしれない。楽園や理想の同時性にも似た瀝青いろのむなしさ。あるいは―――。化石のような無言の絶望・・・・・・。目隠しをされた人物が水の中に入る―――。入ると、溶けてしま―――う。その時の、非日常感覚の妖しい彩り。とても現実とは思えない空間の相。世界はあっという間に幽霊の巣である。そこには別の観点があり、別の声がある。が、幾重にも折り重なった深い濃霧である。それが見えない流線に従いながら、あるいは、ゲームの先送りをするように促す絡繰りであり、この和解のない誤差や亀裂を、知らず知らず体験していく装置でもある。それはまた物語を侵食し、その原理を解体させるあらゆる兆候に満ちている。溶けた彼のあとに水は球体になり、神殿のような場所に設置される。それは飽和した自意識の反復され閉鎖的になったありようでもあり、構築の重みを拒絶して魂を覗かせる裸の窓という風でもある。神の俯瞰する視点から、通俗的な人間の相対的な観点を透視図法で導くように、―――単純な事実から見逃せない真実を見つけるために。僕は狐に化かされたような気がしていた、しかしやがて光は遠くに見える、その光の場所には、整備されたコンクリート道路がある、その時の夜の闇の映像のなんという耽美的な美しさ―――だろう。身にまとった闇が水の戯れをしている。それは文明の阿鼻叫喚、地獄絵図の、心の使いものにならなくなった欠陥品。すりきれた夜の音だ。夜は窓からやってくる、人の姿をしていないで、そもそも何物にもなれないで、僕等を引き摺りこもうとしている、―――窓を開けないで、カーテンを閉めて、雨戸も閉めて、人も見ないで、誰とも話さないで、そしてどんなものだろう、精神が潰されてゆく音というものは・・・・。それは文明の呪詛だ、身動きできない窒息感覚だ。ごりごりと骨を削る音を聞こう、心臓を握りつぶす感触を味わおう、身体を切り裂いて腸を引き摺り出す感覚を味わおう、脳味噌がアンモナイトに似ていると想おう。ねえ、奇跡や救済と捉えることもできるだろう。人生を生きるキャラクターであるプレイヤーである誰にとっても、多面的で、分裂症的になる資質は必須かもしれないからだ。―――そういう問い掛けは可能だろう。人類は進化したといっているがこれは正確ではない、これは退化であるかもしれないからだ。だって確実に滅びやすくなっている、劣化している、そういう見方って、不老不死のコピーをし続けるくらげに見出せる。ねえ僕は思うんだ、ああいかれているね、ちょっと疲れすぎているかもしれないけど、聞いておくれ。恐怖の感情が天国や地獄を作った、死が神や哲学を作った、ねえ、そうだろう、でも全部多かれ少なかれ、ごみだよ、まがい物だよ、それは仮説だ、そのくせ真実のように語り続ける、誰も本当の言葉を持っていやしない、ねえ、誰も本当の言葉を持っていやしない、ねえ、聞いておくれ。心の奥に隠れている本当の悲鳴を聞かなければいけない、死ぬのが怖いんじゃない、そうだろう、そうさ、人と違うことをするのがただ怖いだけなのさ、本当の絶望って何なんだろう、ああ、死ぬほどの絶望とは何なんだろ―――う・・・・・・。途切れ途切れの夢の、浅いのか深いのかわからない、夢・・・。ああ夜、宗教的な気分に感傷的になっていないで、詐欺師や、無能、時にはトリックスターの気分で眠る、僕。ぼんやりしながら、呟くことがある、「生きてるってどういうことだと思う?」―――とらえがたい境地の中に入っていくような臨界的な動き、特異的な先鋭その複数の衝突の表現に見られる意識、正しいことなんか一つもないよ、誰もが本当の自分なんて知りもしないよ・・・、そもそも、不安定なバランスのシーソーにすぎないよ、自律神経失調のような眩暈を感じるよ、ああ、ぼんやり―――するよ、ぼんやりして―――怖さもなくて、でもきっと、この怖さのない感覚が―――真実なんだ・・・・・・。、、 、、、、、、 、、、、、、、、ああ―――悪夢に等しい、生きている意識だ・・・。
2021年04月10日
監視カメラに映る―――睨んでいる女の顔・・・・・・。警備室が一階の正面玄関脇にあり、各階のエレベーター前に監視カメラが付いている。会社の警備業務。警備室の集中モニターで監視するシステム。異常発生時、切り替え時のパネル操作をし、ZOOMで確認する。主な仕事の内容は、モニターの監視と定時の各階の見回り。ロッカーで警備服に着替え、椅子に座る。いつもと変わらない溶けた鉛のような退屈な画面。そこに、女が映っていた。深夜の作業に入って、欠伸がふわふわ出てきながら、それでも画面を見つめ、珈琲を飲んでいた頃だった。「何だ、これ・・・・・・」六階のエレベーターの監視カメラに映っている。同僚のCさんにも見てもらうと、本当だな、と言う。「でもさ、これ―――」「・・・・・・一応見てきます」「いやでも、これ―――」その存在は透明な粘着力で、僕の中にあるレコードのような深い溝を辷る。粘り、滞り、ねじれ、同じ表情、同じ声、同じ妄執、同じ動揺。警報は作動していない。どんな手品だろう、とその時は思った。暴漢などに対する対策、警報装置の作動後の速やかな警察への通報。けれども、このような場合のレクチャーは受けていなかった。「監視業務お願いします」自分は警棒を握りながら、階段で向かう。エレベーターで行ったら相手が逃げてしまうかもしれないからだ。翳りが多く、光の戯れの少ない、非常階段。特異な連続性と切断。六階まで足音を殺しながら、向かう。非常扉からエレベーター前へ。死に脅かされ、死と闘い、ほとんど死に脅かされるようにして消えていく人々のぎりぎりの時間。スウッ...ゴゴゴ.......スウッ...ゴゴゴ......ああ―――熱帯魚が泳いでいる水槽のポンプみたいな呼吸音が聞こえる。怖いけれど、しかし、暗い虚ろな空洞の中にも人間の心はあるのだろう。眩暈が―――した。 *眼を開けると、Cさんが心配そうに覗き込んでいた。「君は、多分憑依されたんだ。会社の中を夢遊病者のように歩いた」―――生の亀裂。「あるいは、眼をつけられたのかもしれない」―――得体の知れない言葉。「あと、監視カメラの映像で、奴が映ってる―――と思う、見るかい?」見るかと聞かれると尻込みするが、一度ぐらいちゃんと見ておくべきかもしれない。それは僕が六階に行ったあの時刻。熟れすぎた女の眼がいまにもどろどろに流れだしそうだ―――。両眼がおかしな方向を向いているのは―――。一度、眼球が飛び出たからなのかも知れない。媚薬の痺れにも似た薄暗い中での青白い燐光。女性用のスーツ姿なのはわかる。でも、それが有り得ないほど汚れている・・・・・・。、、、、、、、、生きた者ではない―――。 *よだれた感覚が残っていた。自転車に乗りアパートへ帰る時も、車も、通行客にも、何か見ている像を失ってしまったような気がする。それは生の義務や、欲望なのかもしれない。「疲れている―――」家に帰ると、その女が、玄関の前に立っていた。夜は、悲劇を喜劇にするように忍び足で這い寄っている。階段を降りながら、うつろにどよめく真っ黒な塊のような夜の街にいることを思いだす。カターン...カターン...カターン...カターン...非常階段。憂鬱で、救いがなくて、泣きそうなほど怖いのは、けして、幽霊なんかではない―――。 *「成仏したいなら神社へ行ってやる」「・・・・・・」「心残りがあるというのならそこまで連れて行ってやる」「・・・・・・・」 *スウッ...ゴゴゴ.......スウッ...ゴゴゴ......ああ、また眩暈がする―――。 *眼を開けると、Cさんが心配そうに覗き込んでいた。周囲を見回すと、警備室である。脳がヒリヒリする・・。まるで、体験を繰り返しているようだが―――微妙に違う・・。「ねえ、あの女の映った映像があったろ、主任と見てみたんだ、そうしたら全部消えていた。君と見た時には確かに見えたのにね、何でなんだろう―――」それは、と僕は考える。虚構めいた特権的な高さの中にある、意識的現前の中で共有される神の忘却にも似た現象・・・・。 *会話は続いている。「それでも、あの女さ、主任が言うには結構前からいるみたいだ」それが何なのだろう、と思った。僕は自分の偏執と思索に驚く。それはどんな原理にも辿り着かないし、どんな救済に達するわけでもな―――い。ただ繰返し目覚め、眠るだけだ。「・・・・・・」だって、やっぱり監視カメラで僕の方を見ている。ものすごい眼のアップをしている。いよいよ、魅せられている、ああいよいよ、湿ってくる。彼女の後ろには、宇宙の悲しみのような廊下がある。僕はその情報量に、麻酔をかけられた患者のようでいる。Cさん、あなたの後ろにいる。Cさん、僕をいま、俯瞰ろしている。「・・・・・・・・・」 *スウッ...ゴゴゴ.......スウッ...ゴゴゴ......ああ、また眩暈がする―――。 *眼を開けると、海岸が見えた。晒しぬかれた骨の白さのような雲が、灰色の泥土の中に見えた。ふと足元に棒で十字架が作られているのが見えた。ビー玉が転がっていた。それから、雑誌と潰れた弁当箱と吸いがらが見えた。ここは草叢だった。五〇メートルぐらいの距離がある高台から、その海岸の光景を見ていた。しかしそれが単なる事実ではなく、記憶や幻想や様々なモティーフによって、よじりあわせたはてに生まれてるある種の感覚だと奇妙に明示されていた。あの女は何だったのだろう、僕にはわからない。そもそもどうしてそんな所にいたのだかわからない。それは、会社付近にある駅からもっとも遠くへ行ける場所だった。日常であるような次元に形成される無数の選択肢があり、その選択肢にも様々な虚実が潜んでいる。時空の連続性はもはや断たれている―――。絶え間ない色彩の光や模様。波の打ち寄せる音。その陰惨な合唱。自然の垣間見せる交響曲・・。―――祈りのように立ちあがり、僕は名前の知らない町で、忘れていた記憶を探す・・・・・・。 *Cさんが首吊りをしたという話を、電話で辞めさせてほしいと言った時に、教えられた。
2021年04月10日

ユメノナカデ...ウラナイシ...トハナシヲシテイタ... *ヒッタヒッタヒッタ....ガチャン.......スック.....ズイッ......パタン....... *「ヘヤ―――デ...ネテイルト......」「イツモ...ケハイガスル...」 *ユメノナカノウラナイシハ...タブン...モウヒトリノボクノジブンデ...モウヒトリノボクノジブンハ......ソノナゾヲトキアカシタガッテイル..... *カレイドノナカデクラスヘビノヨウナセイ カツ...シズカナツキガノボル...オナカガヘル...アア...ウエニアガレナイ...コノママシヌノダトオモウ...コノママシヌノダトオモウ... *ヒッタヒッタヒッタ....ガチャン.......スック.....ズイッ......パタン....... *デモ...デモ...デモ....モシカシタラ......モシカシタラ...... *ソノヒ...ボクハ...ミチヲタズネラレタ...ショウジキ...カオ......モオボエテイナイ...イヤシナイ...ンダ....ミチヲオシエタ......ジョセイノフクノイロハオボエテイル...モノスゴイオトガシタ...アワテテカケヨッタ...タオレテイルジョセイ...ジョセイ......ジョセイノフクノイロハオボエテイル...... *アトデオモイアタッタ...ミチヲマチガエテオシエタコト....アリガトウ...デモミチヲマチガエテオシエタ... *ヒッタヒッタヒッタ....ガチャン.......スック.....ズイッ......パタン....... *「ワカッテイル...ユウレイデハナイカモシレナイコト...」「ダッテ...ナニカコワイメニアッテイルワケジャナイ...」「リセイデアルコト...ソノ...キョウキデアルコト...」「キエエエエエエエエエ...」「サケビタイコト...オソロシイコト......」「ジブンノセイダトオモウコト......」 *ウラナイシハコウイウ「オマエハクルッテイルヨ」「オマエハクルッテイルヨ」クルクルクルクル...トケイガマワル...ビュンビュンビュンマワル...カゼガフク...カゼデカラダガチギレル... *クルマニトビコンダオトコヲミタ......コウサテンデ...ナンノマエブレモナクトビコンダ...フラフラシテイタ.......メツキガオカシカッタ......オカシカッタ....オカシイ...ヨ......オカシ...オカシ......オカシイ....
2021年04月10日

* * そんなだから、やることをやってさっさと寝てしまおうと、と思う。 だが、寝つきが悪い。 これにも、色んなパターンがあるが、頭が冴えて眠れないというのではない。 何かが邪魔するような形で、うまく眠れない。 ザザザ―――、雨が降ってきた。集中豪雨だ こんな時に限って、眠れない理由が出てきたりする。 自然現象のトイレ、咽喉が渇いた、蒸し暑くて汗を掻いた・・・。 * 「渾沌」「病的宇宙」「心理学的領域」・・・。 * 「もしもし」と、電話に出る。 「・・・・・・・つ」 プツン、と電話は切れた。 間違い電話だろうか。 * * * * (夕凪の嬾のうい濤のように舐めていくもの・・・・) (素足の裏の何の変哲もないフローリングの床の冷感・・・・・・) 、、、、、、、、、 冷蔵庫の前に近寄る。 * 額にダアーっと、変な汗が―――出てくる・・・・・。 背中がやけに――――――冷たい・・・・・・。 なんだか、廃墟の民家にでも入り込んだような感じ・・・・・・だ・・・・・・。 ズズン...! 外が真っ白に光る、雷・・・。 でもすぐに―――すぐに・・・・・・戻る・・・・・・何もかも、数秒前・・・・・・に。 時計のチッチッ、という時刻を過ぎ去る音が聞こえている。 《聞 こ え る 》・・・・・・。 持続する現実の深みや厚みが揺らぐ。 次第に―――何かが起こってもおかしくない―――と・・・思う・・・・・・。 正常態と変更可能な怪異の反映。 ポタポタ―――と、水の滴りが聞こえる。 《聞こえる》・・・。 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、 日常は少しずつ異界へとずり落ちてゆこうとしている。 間延びした―――時間・・・・・。 蠅取り紙にくっついた都会のゴキブリ・・・・・・。 * * * 僕は電話の電源を切ろうとする、取りたくない、いやだ。 でも切れない、焦る、電源ボタンを長押し―――。 頭が沸騰する、針の穴に糸を通すような苛立ち、 音を小さくしようとする、でも、出来ない。音を消せばいい、気付く、 でも、出来ない、僕は気がつくと、 フローリングの床に携帯を投げ付けていた。 * * * チュンチュン、と雀の鳴き声がしていた。 雨は止んでいた。アア.......... アア......... 夜はもう終わって朝が始まっていた。 現実がうまく認識できないまま、そろり、と立ち上がった。 アア.......... アア......... 洗面所に入った。 悲鳴にならない声が上がった。 洗面所の鏡の中に、ハッキリと映っていた。アア.......... アア......... 僕の背中から、醜悪な笑い顔をした、 そう、チンパンジーのような、老人の顔が見えていた。 染みの浮き出た皺だらけの顔、落ちくぼんだ眼、 歯の抜けた口が見えた・・・・・・・。アア.......... アア......... それは僕が発見すると笑い声をあげた。 そして何の前触れもなく、消えた。 消えた―――。
2021年04月10日

(何言ってるの、何言ってるの・・ (何言ってるの、何言ってるの・・
2021年04月05日

「ねえ、あーちゃんのことをセニョリータって言っていい?」「―――呼ばないで」「わかった、百歩譲るよ、セニョリータ、ブリキの切り屑が気になるよね」「―――呼んでるよね、何も譲ってないよね、声色まで使って、ハイハイあなたは二枚目の声よ。でもねブリキの切り屑どっから出てきたの」「おいおいどうしたんだいセニョリータ、説明台詞ありがとう。髪に黒い蝶でもとまったのかい、それとも家の前に黒猫がいたのかい?」「ホラー設定やめて」「ハハ、セニョリータ、今日はお日様が目玉焼きにでもなっちまったのかい、わかるよ、夜はいきなり金平糖だったからね。俺達の心はそしてサンドウィッチさ、さしづめ明日はハーゲンダッツアイスクリームさ」「や・め・ろ」「ハハ、セニョリータ、照れてるんだね」「その答えに導くのがむしろすごいよ」「ハハ、セニョリータ、誰もいない海岸を歩こう、ああ、その眼はこう言っているね、誰とって?不安にさせたことは謝る、申し訳ない、でも仕方ないんだ、二十四時間一緒に傍にいるのはハーレクインだって、韓国ドラマだって、少女漫画だって無理さ。でもその眼を春の日の篝火にするよ、さあかぐわしい潮風に身をまかせながら、想像して御覧、夕方のキャフェやレストーランを!」「キャフェにレストーラン?」「そうさ、夜行列車の窓から見たろう、いつか来ようって言ったろう」「設定こまかいのね」「ハハ、セニョリータ、支配人がピアニストに、ビールを届ける時間さ、ジャズ・プレイヤーたちの夜は長い。恋人の夜はもっと濃密さ。プレアデスの星は遠く、ガレー船はさようならを決め込んだ」「ふん、結構いいじゃない」「ハハ、セニョリータ、ライラック色の星空を見よう、溶けた宇宙の命がしたたる真夜中、そこから眺められる、すべてに息をひそめていよう。忘れ果てた昔、俺は十二の君と約束したっけね、ああ―――覚えてるよ、一緒に貝殻を拾いたいって」「じゃあ、夜行ったら駄目なんじゃない」「ハハ、セニョリータ、そんなことを気にしていたのかい、恋人の夜は長い、朝まで色んなことをするのさ」「Hなことをしたら、許さない」「馬鹿だな、セニョリータ、十八禁じゃないんだよ、しりとりさ、そしてかぶとむしをとったりするのさ」「せ・り・ふ!」「でもね、クールな顎のラインに涙がこぼれるようなことをしないよ、あの灯台までね、そして手をつなごう、なんだったら、お姫様だっこしよう」「持てるの?」「ハハ、セニョリータ、俺をなめてもらっちゃ困るぜ、このどくどくと脈を打つ筋肉隆々のこの腕が見えないのかい」「見えないわよ、普通に」「ハハ、セニョリータ、警戒しているんだね」「警戒以前に拒絶してるわよ」「ハハ、セニョリータ、素直になっておくれ、そして、どうか、俺を困らせないでおくれ。俺の腕が折れようと、俺の腕がひしゃげてしまおうと、セニョリータを抱きかかえてみせるさ」「それ、なにげに失礼だよ」「違う、これは心意気なんだ。本当はそうじゃない、本当は小指だって持てる」「昔そういえば大きなトラック歯で引っ張ってた人いたなあ」「ハハ、今日のセニョリータはおセンチさんのようだね、これは間違いなく蜘蛛の巣病だね、間違いなく、かげろうのゆらめきだね。春の病だね、儚くて、素敵さ」「いいから普通に言え、恥ずかしくないの?」「ハハ、セニョリータ、死ぬほど恥ずかしいさ、うまくカモフラージュしているだけさ、心臓の鼓動が聞かれただけで、穏やかな時という蜜蜂の針でやられてしまう。世界に薔薇の花びらが振りまかれるように、その裏側にかぎりない沙漠の海があるようにね。でも、俺はね、そんなセニョリータに、ああ、君にだけ、俺の本当の気持ちを知ってほしいのさ」「馬鹿ってことを?」「ハハ、セニョリータはご機嫌斜めのようだね、そんなんじゃ白馬にまたがった朝日の景色さえ拝めない」「拝みたくないわよ、まず。白馬なんか大体どこで借りるのよ、真夜中に貸してくれないわよ」「ハハ、セニョリータ、女の子はいつでも夢見るものさ、そのためなら、百万ドルの夜景だろうが、ボクシングチャンピオンだろうが、世界征服だろうがね、やってみせる、男とは激しい雪崩のなかにいる」「それ以前に、世界征服のセンスはちょっと」「ハハ、セニョリータ、でもね、すぐに笑顔にしてみせる、だってそれがカフェオレの魔法だからね、夢見たあとに花がこぼれる、ペパーミント・シャワーを君にあげよう、それが酔いにかすんだ美しい女の眼をつれてくる。夏の呪文をかけるよ、夢の匂いさ、そして洪水のような夜の嵐。もう世界には俺とセニョリータしかいないよ、でも大丈夫、世界で俺と巡り合う運命だった」「嫌よ」
2021年04月04日

かもちゃんが『シェア畑』について、近所の人達を集めて話をするという。実は近所の農家のおじさんが、そろそろ歳だから『シェア畑』をするんだという話を聞いて、日頃お世話になっているので、任せるダロと言ったことが始まり。農家のおじさんは別にいいんだよと言ったけれど、かもちゃんに任せろダロと安請け合いする。大船に乗ったつもりで、 そらふねTOKIOの宙船でも歌っているダロと言った。その『シェア畑』の話をするという昼下りの日曜日にいってみたら、百数十余人を公園に集めていた。度肝を抜かれた。100均の『罰ゲームすごろく』状態。原宿のハロウィ-ンパーティかとも思われた。人が馥郁たる紗のスカーフのようにふくれあがっている。てっきり十数人の小規模なものぐらいかと思っていたのに、何がどうなったらこうなるのかと思う。、、、、、、、、、 、、、、、、、、、、 カラオケ館の外壁の、楽しそうな外国人たち?かもちゃんの影響力というのは大きい。猛毒のハブへの注意を促すために据えられた、『ハブに注意』看板を見るぐらい、大きい。、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、ちなみに沖縄でなければそうそうお目にかかれない。、、、、、、、、、、、、まあ見たい人がいればだが。[シェア畑に興味がある]うえに、[冷やかしは禁止]さらには[無料体験見学に参加する]という三段セットで銘うって、この数はちょっと面白い。普通は、もっと人が減ってしまうものなのに、と―――。ぼんやりと考える。イギリス、ウルトン郊外のノッティンガムで、こんな事件が起きた。ノッティンガムに住むマギルさんの家に空き巣が入った。この空き巣、金魚鉢を壊してしまったようで、帰宅した家族は、床に落ちて割れた金魚鉢があるのを見た。中にいた金魚はどうした? だが近くに金魚の気配はない。マギルさんたちは家の中を確認していったところ、金魚はなんと、水を張った台所に流し台の中で泳いでいた。空き巣は金目の物を盗み、金魚を助けた。褒められたことではないけれど、教訓がある。、、、、、、、、、、、、、、、、、譲れないことは守らなくてはいけない。かもちゃんはちょっと高い椅子の上に、ぴょこんとジャンプして乗り、マイクも使わず、よく通るきれいな声で話をした。早口の鳥だけれど、今日はいささかゆっくりに話しているので。余計に流れる舟のような印象がある。、、、、、、、、、、、、、、、、渋谷のセルリアンタワーのお守り屋。みんな、耳を傾けた。数匹の猫がにゃあにゃあいいながら、招き猫のポーズしていた。よく見るといずうさと、子ぎつねも混ざっていた。鳥たちは空から観察、やたら空に鳥が飛ぶ・・・。よく見るとプテラノドンも混ざっている―――はずだ。「二か月先だけど、入会金一〇〇〇〇円ほどで、駐車場も設置するし、二四時間覗きに行ける、水道設備に休憩所もある、シェア畑が出来るダロ。月あたり三平方メートルの二畝で、六四〇〇円。十平方メートルの四畝で九〇〇〇円ダロ。ちなみに友達との共同利用も可能ダロ。それ以上はかもちゃんにも―――わからないけど、まあ基本、野菜作りしたい人でも、月で一〇〇〇〇円におさめたいなと思うものダロ」基本的に何面白いことを言っているわけでもないのに、みんな笑った。多分、ちょっとした言葉のコントロールと緩急なのだと思う。でも心理学でいうところの値段の相場としてはそうだろう。「でも基本的に週一回行くだけダロ。難しいことはありませんダロ、ネットゲームでは後でお金を取るようなあざといことをしますダロ。もうあなた何もいりません!」何故ネットショッピング口調なのだろう。みんな笑った。、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、自然豊かなリンゴの名産地がビットコイン鉱山の街へと変貌した経緯。、、、、 、、、、、、、、、、、、、、、、、、アメリカ・ワシントン州にあるイーストワナッチー。「いやいや、かもちゃん―――あら奥様何か?」何故か、小ネタも入れてきた。「クワやスコップ、鎌や剪定バサミとか畑では農具が必要ダロ。ソレハソウデス―――けれど農家のおじさんが言うには、全部用意してくれるダロ。季節ごとの野菜の種子や苗、重たい肥料も畑に用意してくれるし、必要な資材も基本料金に含まれるダロ」「あら良心的!」「それに菜園アドバイザーも週四日でいるというし、定期的に実演付きの講習会もやるし、栽培テキストや豊富な栽培資料を配布し、掲示板にも掲示するダロ」「あらまあ安心ダロ!」、、、笑った。それはさておいても、かもちゃんの話を聞くだけで、大体多くの人はよくわかった。つまり、自分たちで出来るかなと考えなくていいということだ。、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、 、、、、、、フロリダ州立大学近くのアパートに住むブレイク・コリンズさん。、、、、、、、、、、、、、、ゴキブリが耳に卵を産み付ける。「まあ、年金のジジイやババアに無茶言っちゃ駄目ダロ」 、、、、―――口が悪い。「でも月六四〇〇円で手作りの美味しくて新鮮な真心こもった野菜が、食べられるダロ。食品偽装の時代もありました、また農業に興味を持つヒトがいるという話も聞きました。また汗を流す運動にもなるし、知り合いも増えるダロ。そういえば、週一回行けないという場合にも、代行サービスなどがあるし、そこはまあ、折角こうやって集まったのだから、みんなでよろしくよろしくするのもいいダロ」かもちゃんは、的確に多くの人の思っていることや考えていることを、クリアに表示にする。おしゃべり上手で世事に長けたかもちゃんは、ゆっくりと多くの人の心を掴んでゆく。『気合を入れて歯を磨くと余計に黄色くなる』ようなものかもしれない。そもそも見込み客だったし、かもちゃんの安心感もあって、申し込みをしてもいいかなと思う人が大半になっている。もちろん、お金を出す以上はみんなすぐには決められない。すぐに決められないといえば、イングランドのリンカンシャーに住むオリバー・パーセルという少年は、その発育の早さから、十四歳歳にして口髭が生えるようになった。彼は髭を剃らなかった。だって気が滅入るから。けれどそうすると学校側が、髭を剃らないと授業を受けさせないと言った。母親怒った―――どうして成長が人それぞれなのに、自分の息子だけが髭を剃らないといけないのか、と。その生徒自身に何の落ち度も無い要素が原因で、学校による差別的な扱いが行われるのは、親としては到底納得できない。、、、、、、、、、、、、、教訓はつまりこういうことだ、、、、、、、、、、常識を勘違いするな。米国は第三の原爆投下を計画していた。そしていまアメリカ人たちは原子爆弾の恐ろしさを忘れている。、、、、、、、 、、、、、、、、、ちょっと待って、いま何故そんな話が。―――ギラリ。動物が陸上に進出したシルル紀に、海で繁栄していた節足動物ミクソプテルスの復元モデルを、見るようなもの。―――視ることは恐ろしい、デイノスクスはティラノサウルス類もいた白亜紀後期のワニの仲間。、、、、、、、、、、、、、、、車のブラシで歯磨きしてやりたい。「年間で約一五から二〇種類の野菜づくりができるし、また、春から冬まで一年を通じて収穫を楽しめますダロ。まあ、種まきから収穫までの育てる喜び、達成感はなんとも言えないものダロ、それに今後家庭菜園をやろうかなと思っている人にとっても、いい体験だと思うダロ」かもちゃんが右の翼を上げた。話し終わったのかなと思ったら、最後に言った。二階の窓から、ジョン・レノンが顔を出すか、アポリネールの屋根裏部屋で鼠が顔を出すようなもの。、、 、、、、、何だ、その比喩は。「そしてかもちゃんに、野菜を持ってきてくださいダロ。トマトラーメン作りたいダロ。話を聞いてくれてありがとうダロ」農家のおじさんともども、みんな笑った。最終的にそれはそうだろう、とも思われた。桜の咲いている―――四月・・・・・・。
2021年04月04日

[幼稚な妄想の羅列] (理解する―――“了解”と『幻覚』の“罠”)証券取引に影響を与える「後悔」の感情 世界中を大混乱に陥れたリーマン・ショックも、サブプライムローン関連商品の購入が過熱した、 ハーディング現象の結果・・・・・・ (テキストの計量分析で隠れた要素を解析しよう、) (古代文字を―――未来言語を・・) パンク寸前の脳のバグ、 それでも情報処理能力は日進月歩、 寒波だ、熱波だ、火花だ、光り輝く点だ、 刺し傷だ、振動だ、破裂だ・・・。 (ノウソンシャカイノ...ジゾクセイ...カゾクノアリカタ...... vivi...bb... >めまぐるしく炸裂するchaosの中でsilhouetteするshadow 「わかんないんだ・・・わかんない」: 「資源問題、気候変動問題、政治の問題、 そういうことなら、わかる、考えればわかる、 調べればわかる、何を信用すべきかもわかる―――」 でも、一番大事なこと・・・・・・ >めまぐるしく炸裂するchaosの中でsilhouetteするshadow <見る>って――― <聞く>って――― どういうことなのミスタークレイジー? 「孤独が辛い」「愛が信じられない」 (語ることを止めた瞬間、屍になる) (海洋ぷらすっくごみをなくそう、) (意味を―――感覚をイノベーションしよう・・) 言わなくちゃ伝わらねえ、 賢いだけじゃ誰にも響きやしねえ! (始まりの街、交通機関としての車やバイクや自転車、 剣も盾も鎧も兜もない―――) 「でもSF的科学技術の未来・・・」 ・・・・・・Gameを、MUSICを作成する人工知能 (理解する―――“了解”と『幻覚』の“罠”) ノイズガ...マジッテイル... 「言葉に重みを感じられない」 文化の伝播と変容! 仏教美術のダイナミズム! [幼稚な妄想の羅列] 僕が間違ってるなら、僕に間違っていると言えばいい、 世界が間違っているなら、世界にそう言えばいい、 ―――『僕』が『君』が対等であるなら、 その延長線上に、【理想】があるなら・・・・・・。 (理解する―――“了解”と『幻覚』の“罠”)
2021年04月04日

2021年04月04日

2021年04月04日

、、、、、、、、、、、、、、、、 クリスマスツリーのてっぺんにある、 、、、、、、、、、、、 ベツレヘムの星みたいだ―――。 * * 「ふふっ、何してるんですか、面白い顔をして?」 * * * * * と、そんなことを考えていたら―――。 「やっぱり、お越しになったんですのね」 「恵ちゃん、こんにちは」 、、、、、、、 よしてください。 「いえいえ、上田さん、このような華美な馬子にも衣装モンキーに、 挨拶などせずともよいのですよ。 ごめんあそばせ、エリちゃんはどこかしら?」 * 美しい女性に共通しているのはやたらと眼力が強く、 ゾクッとするような、 本当に生きているのかなと思わせるような一瞬の儚さを持っている。 まだ未成熟な少女ながら、 、、、、、、、 【柳眉を逆立てる】だな・・・・・・。 * 本気で無視して通り過ぎようとしたので、 もうカンカンになったらしい恵ちゃん。 (恵ちゃん、と呼んでいいのかわからないけど、) しかしつっかかってきているのは恵ちゃんの方で、 それを、かえでさんが楽しんで次のようになった、という感じだろうか。 嘲弄っている、遊んでいる―――二人の関係が見えてきた。 「(顔が全然似てないけど―――腹違いとか、かなあ・・)」 「(それとも、従妹なのかなあ・・・) まあ、静観しようと見守っていると、恵ちゃんは腕組みしながら、 「わたしを無視するなんて本当にいい度胸ですわね、 たねなしぶどう!」 、、、、、、、 たねなしぶどう? それは恵ちゃんにおけるかえでさんの綽名、 あるいは侮蔑的な表現なのかもしれない。 足立区四〇円ラーメン風インパクト。 * 僕は九州では「コシのないうどん」が好まれたり、 青森では「かたいリンゴ」の方が美味しいとされることを何故か想像する。 * * 「もう、お上品な言葉はどうしたんですの、よろしくってよ、 ごめんあそばせ、ありがたく存じます、ごきげんよう、 言葉を知らないんですのね、かわいい恵さんオホホ」 これにプンスカする、恵ちゃん。 さすがに―――感情が未発達な女の子に、 おそらく素直になれない女の子に・・・・・・、 (と、僕は読んだ。だって本当に嫌いなら、 そんなのいちいち言いに来る必要はない) 名前だって一番簡単な呼び名とは思えない。 たねなしぶどう、だって、言いにくい。 (テレビの子供番組を真似した挨拶の仕方であったり、 何かの偶然で遊びながら口にした言葉がそのままパターン化したもの、かな?) 、、、、 よしなよ、と。 静観もいいけど、自分の方から、何か口を切らねばいけないと思って、 暫くの間、言うべき言葉を頭の中で整理していたのだ。 「かえでさん、子供にそんな言い方をしたら駄目だよ」 と、大人として冷静に話し合おうとしたら、電光石火、 「誰が子供ですの! 庶民のくせに黙れなのですわ!」 (一瞬恵ちゃんの顔の皮膚が、 目のふちと耳との部分を残して白くなつたように感じられた。 本当なら、恵ちゃんもそんなことばっかりしてないで、 と、口を利くべきだろう。 が、ヘんに唇が歪んで来るばかりで・・・・・・) そして小声で、 「わたしが駄目なことをしたら、そんな風に叱ってください」 と言ってくる。 しかしすぐにギア全開、フルスロットル・・・。 「上田さん、立派なレディーに対して子供は失礼ですよ。 シ・ス・コ・ンですもの。エリちゃんの手作りのおにぎりで喜ぶ、 超変態なんですから。ああ、お姉様、 世界でこんなに美味しいものはほかにあるのかしら。 もうやめて恵ちゃん、痛すぎるから! ああ、おねえたま、一緒の布団じゃないと眠れませんことよ!」 「うるさいうるさい!」 「あら、どうしたんですの、オホホオホホ!」 * * * 、、、、、 なのかなあ・・・・・・。 * * 、、、、、、、、、、、、、、、、 クリスマスツリーのてっぺんにある、 、、、、、、、、、、、 ベツレヘムの星みたいだ―――。 * * * * そこへ、エリちゃんがやって来た。 世界の座標軸の原点たらんと欲するように、 まあ、結構大きな声を出していたので、 気付いてやってきたというのが正解かも知れない。 、、、、 ステディ。 * * ―――改めて、豪邸に広い芝生の庭。噴水が見えてくる。 容易に見通せない庭で、エリちゃんは何処から来たのだろう・・。 (ロンドンにあるジャスティン・ビーバーの超豪邸を考える) 車のタイヤを汚さないためかアスファルトまである。 「・・・・・・」 (現場の現状や地質、プラント・会社からの距離、 大型機械・車両の搬入が可能かどうか、量、季節、時期・工期、 タイミングなどの様々な要因によっては価格は変動するというけど、 それだけで結構な値段になるはずだ) ジーパンにTシャツ姿のエリちゃん・・・・・・・。 「かえちん、あんまり、うちの妹をいじらないでやってくれよ。 恵も、目上の人ににそんな言い方をしたら駄目じゃないか」 「だって―――くわぁえぇでぇさん、が、」 よっぽど、エリちゃんに懐いているのだな、と思う。 でもかえでさんは、狙い澄ましたように―――。 「むかで、ですけど、何か?」 僕やエリちゃんも笑ってしまった。 確かに、恵ちゃんはそんな言い方をしているように聞こえた・・・・・・。 恵ちゃんはそのせいで、余計プンスカ。 (恵ちゃんというのは、リアクションが本当に漫画的なのだ) もう、アポローである。 銀河系の彼方に、である。 相性抜群、ハブとマングースのような天敵ぶり・・・・・・・。 でも、エリちゃんが、楽しいのはわかるけど、と諌めるように言った。 「―――かえちん、今日は夜までに行くところもあるんだろ?」 、、、、、 、、、、 藤堂先輩と、文雲さん。 ―――それに、夜にはGWの予定を決める。 日本有数のアカウミガメの産卵地、と僕は思った。 日付・年表・キーワード。 流行や当時の世相が鮮明に反映された紙面や広告。 、、、、、、、、、 、、、 、、、、、、 社会情動的選択理論やピーク・エンドの法則。 ・・・・・・引き寄せの法則という名の原始的哲学。 エル・グレコの『受胎告知』 「・・・・・・そうね」 、、、 ちょっと名残惜しそうな響きのある、そうね、だった。 やっぱり、純粋に会話を楽しんでいる、というのが―――正解らしい・・・。 それはたとえば時刻表で妄想旅行を楽しめるという人もいれば、 (これが第一段階、) 貨物時刻表というディープすぎる世界も、 鉄道ファンの間では人気があるという話みたいなものだ・・・。 (これが第二段階、) でも『電車でGO!』というゲームの連想で、 たとえば世界各地の鉄道を眺めるという趣旨みたいなものだと説明すると、 人って存外、そういうのをよいものだと思うんじゃないかと推察する。 最終段階は何かって―――。 もちろん、自分で空想の線路を引き始めるか、 もはや使われていない線路を眺めにいくようなもの・・・。 「すまないな、上田さんも、どうか許してくれよな」 「お姉様が謝ることはありませんことよ!」 恵ちゃん、それは僕も同意見だ。 多分、謝るのはかえでさんだと思う。 (筋違いでなければ、だが) * 、、、 、、、、、、 ここで―――話が変わった。 * 「恵、実は上田さんは、みゆお姉ちゃんのお兄ちゃんだよ」 「みゆお姉ちゃんの、の?」 ジロジロ見てくる。 態度激変・・・庶民言われていた頃の僕はもういない。 何だか、ステレオタイプだけど、見世物パンダだな、と思う。 「・・・・・・料理が上手くて、頭がよくて、優しい? 二枚目の?」 かえでさんが、恵ちゃんの肩をパシッ! パシッ! 叩いた。 痛いですわよ、何するんですの! ううん―――ただ、恵ちゃんと、初めて仲良くなれる気がしてきただけ。 身体をしゃちこばらせながら―――。 課題を沢山のこしたまま始業式状態。 キッパリと、あまりに強い調子でかえでさんが言うので、 さしもの恵ちゃんも、 二の句が継げずにいるようだ。 そうして心の中で憎らしいと言い聞かせているのだろう。 大きな眼でかえでさんを見つめたまま、首だけを激しく左右に振った。 こわいですわ! こわいですわ! なかよくしよう! なかよくしよう! 「(いや、誰だ、それ)」 『銀河英雄伝』の“宇宙エレベーター”とかいう代物を想像してしまう。 ―――僕を話すかえでさん、僕を話すエリちゃん、僕を話す妹、 そして、いま僕を話す、恵ちゃん。 コップに氷を敷き詰めたその上からカルピスの原液と水を注いで、 マドラーでぐるぐると掻き混ぜるような気分が―――消えない・・・。 もう一度言いたい、 本当に、誰だ、それ。 * * * 「みゆちゃんは、恵と一緒にアニメを観るぐらい仲がいいんだ」 「少女漫画も貸し合う仲だし―――」 、、、 それに。 「ゲームもするし、ダンスも教える」 、、、 褒める・・・・・・。 * みゆ・アルマジロは、絶賛恵ちゃんに大人気。 あ、あっ、アルマジロ? アルマジロ叫んでいる女(妹だけど、)なんかみんな忘れてしまう。 あるまじろおおおお! * 「おいおい何叫んでいるんだ、こいつ。 * うさぎが出てきて言った。二足歩行を難なくこなしながら、 前脚を手のように、あげて―――叫んだ。 いたんだ、とか逝っちゃ駄目だよ。 邪魔だな、とか逝っちゃ駄目だよ。 鬱陶しいなとか面倒くさいな、とか―――そうか、お前も・・。 逝ってよし! 「ごーやちゃんぷるー!!!」 * * ネットにおける、「プライヴァシーの問題」「いわれのない誹謗中傷」 「いじめの温床」「匿名の、面識のない人による犯罪事件」 それはけして、対岸の火事ではない。 そういったことに巻き込まれるリスクについて、 みゆが、どのように考えたかは知らないけど。 アルバイト先で悪ふざけをしたバイトテロの末路よろしく、 本当に一生取り返しがつかないこともある。 (常識の範囲で考えればわかるとはいうけれど、 僕等の時代は、インターネットにスマートフォンなんだから、) 車で「人を轢き殺しますよ」なんていいますか? 包丁で「人を刺しますよ」なんんていいますか? 愚の骨頂、馬鹿、開いた口が塞がらぬ、嘘も方便。 嗚呼すばらしきかな―――社!会!常!識! (ケンポウショウドモハ...ナニイッテルカサッパリワカラン....) 、、 ――――――でも、 「危ないからと言うのは切れないハサミだ、 したいことを出来る限り応援した―――い。 大人になってゆく、人生を選んでゆく、 それが、今回のそれなんだろう・・・」 * 負けるなみゆ、諦めるなみゆ。 アルマジロスーツに身を包み、額に汗を流して働くのだ。 アルマジロと暮らす夢のため―――天下をとれ! * * 次回は「第二話、アルマジロに愛と餞と青春の旅立ち、 秘伝の奥義ダーアアアアッツ! ニイイィィト!」です。 乞うご期待。 * 、、、、、、 壊れてるのか。 * * * * 言葉は思考の上澄み。 思考の深化なくして、 遺伝子が流動する生物の連鎖は生まれない。 ......何が僕等をそうさせていて。 ......何が僕等を閉じ込めている。 * * 「・・・・・・」 エリちゃんのサバンナみたいに広い庭の東屋。 煉瓦が無様に露出していてみっともないし、 ペンキをうんと塗りたくる必要がある年代性を感じさせる東屋。 、、、 ちりん、と中途半端な、どこかかすれた音色をさせる鈴。 ようやく林が切れたところ、 夜だったらバイオハザードごっこができそうだな、と思う。 サアサアと頭の上で葉ずれの音がしているが、それは竹。 熟睡のあとの無感覚な頭の状熊を連想する。 こんな時は本当に何もしたくないのだ。 ただ、ブラブラと散歩するのだって下らない。ゲームや音楽や漫画も。 どうしていいか分らなくなってしかもいよいよ退屈でしかたがなくなる。 正とか善とかのかくあるべしが生まれて、 はじめて罪悪とか不正とかいうアトリビュートが生ずるように、 ―――よくわからない、は、貴重だ。 そして眼に飛び込んでくる、の、は―――。 思いがけずも白絹めく、やさしい光沢。 高さの加減からより多い光を受けている気がするし、 物の形がぼんやりと柔らかな輪郭で見える。 (竹取物語―――と、七夕を連想する・・・) 円形のテーブルにある耐熱性のグラスに、 、、、、 こぽこぽ、と舌が火傷しそうなほど熱い、 ハーブティーという名のことさらに澄んだ琥珀色の液体。 、、、 優しい。 遙かヨーロッパの田園から鐘の音が耳に響くごとく、 揮発成分のさわやかな香りが鼻の奥にのぼって―――くる。 意味もなく、呼吸を止めて、遠くを見る癖。 構図をイメージしたスケッチブックの中に、 鉛筆でうっすらとあたりをとり、鉛筆で形をとり、 色鉛筆で淡く色をつけ、鉛筆で濃い影をつくる。 ちょっと待たされている間にかえで画伯が、 絵を描いていた―――。 「・・・・・・・」 味覚に影響を与えるファクターの一つに嗅覚がある。 食品のにおいには鼻から吸って入るものと、 一度食品を口の中に入れて噛んだり飲み込んだりした後、 呼気とともに口の奥からこみあげてくるものの二種類あり、 その両方が味覚の強度に大きく関わっている。 僕はパトリック・ジュースキントという作家の書いた、 『香水』の話を思いだしてしまう。 香り成分のそれは、ちょっと嗅いだことがなかった。 けれど、何だろう、何処かで知っているような気もする。 懐かしくて―――奥深くて、うまく言えないけれど、いい香り・・。 淡いセロファンがめくれる・・・・・・。 かもちゃん曰く、様々な森の匂いがするらしい。 厳選に厳選を重ねて作った五十種類にも及ぶハーブティー。 ある素材なら根っこに抽出成分がある、 花とか葉っぱの方がいい場合もある、 ドライハーブにした方がいい場合もある。 これを何千回という、針の先を通すほどの万に一つの、 思想もなにもないただ荒々しい岩石の重畳する風景・・・・・・、 途方もない気の長い作業の末、 エリちゃんが太鼓判を捺す、ハーブティーが作られた。 手慣れたエリちゃんでさえ、十分以上の時間を要するというすさまじい。 興奮して、黙って、ぼんやりしながら、 ハーブティーを視守つているうちに、僕は自分の料理というものに、 少しも権威のないことを思わないわけにはいかなくなった。 無意識とも思える全否定。 穴だらけの無数の夢は目標のない銃弾、と―――。 ああ、顔中の皮膚が硬張って、 頬っぺたが妙に突っ張りでもするような不愉快な気持ち・・。 「・・・・・・」 覆水盆に返らず、というので、パキスタン人のこんな話がある。 彼は平均的な学生だったが、 とあるテストで、五〇五点中五〇四点獲得した。 しかし、彼は自分のスコアに満足しなかった。 僕が一点失うはずはない。 一度も間違えてないんだから、と言った。 再採点の申請をし、そしてその後、理事に呼び出された。 理事は言った。 申し訳ないが、五〇四点と入力したものはタイピングによる間違いで、 実際には四〇五点だった。 泣き笑いの表情とは違う、無表情、能面―――。 、、 、、、、、、、、、、、 てか、お前全然駄目じゃないか。 でもエリちゃんのそれは、 きちんと五〇五点中、五〇五点をもってくる。 、、 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、 さて、数字を追うだけの学問とは一体何なのだろう? 「・・・・・・」 黎明の鶏小屋の喧噪をしていたのも遠い昔、 歓談する周囲の声が一瞬静まったと思う間に、 森の中に蓋を開けた、小さな宝石箱。 犬に語りかけている、光や風や樹木や鳥それ自身でいる。 口をつけたかえでさん、恵ちゃんの順番で、僕も―――。 さながら、ストラディバリウスの重み、一億円の価値ある楽器の重み。 一口、飲んでみる。 イーロン・マスクが若い頃に、 一日一ドルで生活していたような顔をしていたのだろうか。 昆虫は口だけでなく足先でも味を感じることができるというし、 魚はひげでも味を感じることができるという。 なんかそんな話を聞く―――と、 人間というのが本当に優れているのかどうかわからなくなる。 眼の前には、みゆがいて、笑っている。 スイーツパラダイスのビュッフェ形式(バイキング形式と書いていたが)で、 三つ食べてもういいかな、 というのを思いだす。みゆはまだまだ食べられる。女の子の別腹制度。 それは霊力ある狐の尻尾が増えるように、 甘い物に出くわすと女の子のお腹が増えていきます。 改造手術に変身ポーズ、そしてタケシ・ホンゴウ。 カタルシス! カタルシス! なんだこいつ、不死身か? アルマジロか? ドラえもんなのか? すごいな。化物だな。もっと食べろ。大きくなれ。 ―――脳が一瞬、痺れるような気がする。 お兄ちゃんもどんどん食べないと。 お金払ってもらってアリガトーゴザイマス。 でも食べないと―――元を取らないと。 ほらこれ。ほらほら。のせるのせる。 方向指示表示灯。モジュラージャックへの接続端子。 、、、 やめろ。 「・・・・・・・・」 この飲み物の効力というものだろう―――か。 身体中が徐々にあたたまってゆく。 複雑な味だけれど、不味くない。 味覚に関してはかなり自信があったけど、わからない。 ミントとラベンダーとローズマリーはすぐわかるけど。 これを様々な森の匂いというかもちゃんの―――嗅覚。 それは僕に野菜ジュースを連想させ―――る。 普通五十種類も混ぜたら、変な味、苦いものになるんじゃないかと思うのに、 (逆にある味や、ある感じが消えて、ということもあるだろう、) たとえば歯磨き粉の味がするんじゃないかという、 ミントアイスの妄言のように、 鼻筋をつたう涙の、かゆいような感じを覚えた。 ―――人間の持つ感覚の中で、味覚は食物に含まれる化学物質を感知し、 身体にとって必要な栄養素なのか、それとも有害なのかを判断する・・、 舌の乳頭中の味蕾の先にある味覚受容体で受容した、 化学物質に含まれる甘味、塩味、苦味、酸味、うま味・・・・・・、 五つの基本味のシグナルが中枢神経を通って、 脳で知覚されることで人は『味』を感じ―――る。 でも料理をしていて奥深いと思うのは、 『味覚と生理的な感覚は不即不離の関係』ということだ。 たとえば―――竹の音・・眼に優しい緑、こういった要素も影響を与える。 もちろん、内臓感覚や咀嚼や嚥下といった運動感覚、 さらには文化や学習、嗜好なども影響する。 極端な話、味がどんなに美味しくても、 見た目が昆虫だったら、ということだ。 たとえば日本人の食文化が失われて久しいけれど、 里芋の煮っ転がし、ぶり大根が美味しいというのは、 僕等のDNAに刻まれていると思う。 、、、、 、、、、 爽やかで、優しくて―――なんだろう。 生き物の愛情みたいなものが、そこに現れているような気がする。 かえでさんが、『魔女の薬』という。 なるほど、魔女というのは本来そういうものだったからだろう。 森のお医者さん。薬草のエキスパート。 これは建設作業員として働くパレスチナ人の男性が、 フェイスブックに、「みんな、おはよう」という挨拶を、 アラビア語で投稿し、それが自動翻訳された際、あろうことか、 「奴らを攻撃しろ」と訳されてしまうようなもの。 アラビア語にすると、たったの一文字違い―――というけれど、 こんなことで逮捕されたらたまったものじゃない。 でも子供がマインクラフトをプレーしていて、 いつの間にか大量の請求が来ている。 初期購入費以外はかからないと思っていたのに、 完全にマーケットプレイス。素晴らしい追加コンテンツストア。 課金。リソースパック。アドオン。スキンパックを購入追加。 、、、、、、、、、、 たまったもんじゃない。 ゲームの世界は豚なのか? いやいや、魔女というのは―――あるいは、鬼というのは、 もしかしたら、『差別や迫害の記号』だったのかもしれない。 でも、僕等の時代の魔女は空を飛んで、可愛らしいステッキを振る。 ―――平和である、ちょっと豚がいるだけのことだ。 ハーブティーの効果は筋肉痛がなくなる、疲労感が減る、 神経の痛みがやわらぐ。お腹の調子がよくなる、という―――。 身体からいままで感じたことのない、汗が出てくる。 いままで感じたことのない軽やかな疲れが、ゆっくり拡がり始める。 恵ちゃん曰く、身体の悪いところや、調子の悪いところが、 そうやって表に出て来るらしい。 ただ、と、いつのまにか合流していた、いずうさちゃんが言った。 漲っている身体に女というのは交尾を求める。 いわばそれは、 フィットネス・フレキシブル・フレッシュ・メンタル・フェロモン。 性欲の増進はヘイワ・セカイ・ゼツタイにつながるだろう、と。 (ところどころ、言ってることおかしいのは別として、) 、、、 本当か? かもちゃんが、いずうさちゃんをUFOキャッチクレーンした。 何する、駄目ダロ、いやいや、ハテハテ。 一羽と一匹のハートウォーミング。 あるいは大きなお尻と耳折れうさぎ。 そして何処かへ行った。 その行方は杳として知れない。 ある朝の街で、コンクリ詰めになった死体が見つかった。 光化学スモッグの雨。小指のない変わり果てた姿。 ちなみに、いずうさちゃんとは特に関係ない。 じゃあ何でそんな描写をした。 でも人はこう呼ぶ。 、、、、、、、 ハードボイルド。 「・・・・・・・・・」 僕等は握力オバケ、体力馬鹿、登山部、ヤンキーと思っていたけれど、 (僕等? いやいや、僕―――だろう、) 、、 、、、、 いや、ただただ、色眼鏡つけていた自分を反省する。 人間の裏面にはこんなにも怪しからぬ程面白い、秘密の快楽がある。 身体がほぐれてゆき、背中や肩のあたりがとりたてて気持ちいい。 ハーブって薬草だというのは知っていたけど、 つまり、人間にとって効果があるものならそのすべてがハーブ。 今現在流通しているもの以外にもハーブというのは存在する。 もちろん、『合法ハーブ』なんて聞くと悪いイメージもあるけど、 エリちゃんのそれは、 この庭にある完全人工光型植物工場で作ったハーブ。 彼女はまた研究所を立ち上げていて、数百種類のハーブの研究をしている。 、、、、 、、、、 ただただ、感服する。 * * Do you want to look into people's hearts? (拡張現実感のための視点依存から関連情報抽出)(表面保護フィルムみたいだな、眼と鼻の先) Do you want to look into people's hearts? * * *
2021年04月03日
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