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後期の見どころも前期同様、肉筆画の数々であると思う。特に鈴木春信の肉筆画「二代目瀬川菊之丞図」は、一見の価値あり。滅多に春信の肉筆画は見ることができないのだ。昔、江戸の誘惑展でお目にかかったきり。この細長さは柱絵だろうか。着物の柄のきめ細やかさを描くテクニックは、他の浮世絵師に負けているが、やはり、肉筆画ならではの絵の具の美しさ。何といっても、春信の作品というだけで、もう幸せな気持ちになる。そして、お気に入りの一枚。北斎の娘応為の描いた「吉原格子先の図」。光と闇が幻想的な味わいをもたらすこの作品。いつ見ても素晴らしい。この絵の中では、格子の外の客たちは、実体のない「虚」の世界、つまり闇である。それに対して格子の内側、居並ぶ遊女たちの世界だけが光り輝く「実」の世界だ。しかし、現実には、客は「実」の世界から、一時の夢を買う吉原という「虚」の世界へやってくるのである。この虚実の反転が一枚の絵に封じ込められているのだ。水野蘆朝の「向島桜下二美人の図」もよい。ちょっと素人っぽい顔の描き方。この絵師が実は旗本であったとはじめて知った。勝川春章の「子猫に美人図」は、さすがに肉筆画の大家だけある。その着物の柄の細やかさにうっとりとする。版画では、歌麿の「五人美人愛敬鏡」のシリーズが5枚揃って展示されていた。定信の統制を免れるために遊女の名前を絵の組み合わせで示したもの。もう少し色味が残っていてくれれば素晴らしかったろう。ともかく、後期も十分に満足できる展覧会だった。
2010年02月12日
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昨年末、MIHO MUSEUMで見た、このエジプトの神像が忘れられない。「骨は銀、肉体は金、髪はまことのラピスラズリ」とエジプトの神話にうたわれた神像である。ホルス神とのことである。シルバーに輝く身体の美しさは、ただ驚くばかり。夜な夜な、目前にこの神が現れ、うなされてしまう。もう一度見たい。
2010年02月10日
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前期の明治吉原細見記のコーナーがそっくり入れ替わり、絶筆の「街角」やデフォルメされた独特の女性像など、最晩年の絵が展示されていた。このコーナーでは、あのの取りつかれたような瞽女の強烈な赤色は赤色は影をひそめて、シックな色遣いの作品に変っている。私が、斎藤真一の絵に惹きつけられるのは、決して心地よいモチーフではないのだが、そこに塗り込められた人間の情念、哀愁といったものが、心を揺さぶるからである。ずいぶんと昔のこと、天童の斎藤真一心の美術館に出かけて、私は、はじめてこの画家の作品に出会った。その直前に、「めでためでたの若松さまよ」という花笠音頭で有名な若松寺に立ち寄り、むかさり絵馬を見て強い衝撃を受け、フラフラとしているところに、斎藤真一の瞽女たちの絵に追い打ちをかけられた。むかさり絵馬は、若くして亡くなり結婚できなかった子どものために、親が結婚式の光景を絵馬にして奉納したものだ。孤独、悲哀、哀愁・・・そんな言葉がぴったりと当てはまるのが斎藤真一の作品である。
2010年02月06日
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