精神科医の市川光洋医師の著書に「外来森田療法」がある。
これによると、特徴的な事は、治療期間を十回に区切られていることである。
週に1回の通院として、 2ヶ月で8回、 3ヶ月で12回、キリのいいところで十回にしておられる。
平均治療日数は90日である。もちろん薬物療法も併用しておられる。
そしてその十回を、前期、中期、後期に分けて治療を時間的に構造化し、絶対臥褥、作業と講話、そして退院に相当するものを埋め込んでおられる。
1回ずつの面接にそれぞれ意味を持たせて濃縮した治療を行う。
高良興生院の治療に型があったように、外来でも標準的な形を持った森田療法を実施する。
これを外来標準型森田療法と呼んでおられる。
治療前期は、外来森田療法の適用者かどうかを見極めることから始める。
適用者の場合、治療回数が10回であることを最初に伝える。
そして、次回までに自分の症状と回避行動について、具体的に書いてくるように指示をする。
また、神経症の成り立ちや特徴を理解してもらうために「森田療法のすすめ」という高良武久先生の著書を読んでくるように指示をする。
次に実践課題に取り組んでもらう。それを行動記録として作成し、次回の面談時に提出してもらう。そして実践課題の実行と不安の検討を行う。
治療中期では、自発的な実践課題を設定してもらい、実践課題の幅を広げていく。
そして症状と行動以外への森田療法的対話を始めていく。
現在の適用不安。症状以外の生活上の不安。生活史、家族関係、対人関係のパターン。
完全主義、先取り不安などの性格特徴。平等感、客観性、人間性の事実。関わる事と愛情などである。
治療後期では、治療は10回で終結する旨をお互いに確認をして行く。
治療終了前の不安の出現と本人の対応を吟味していく。
治療前と治療後の変化について3つの視点から話し合う。症状の変化、行動の変化、心境の変化である。
患者さんからフォローアップの希望があれば、 1ヶ月から3ヶ月後に再面接を設定し、治療終結とされている。
(外来森田療法 神経症の短期集中治療 市川光洋 白揚社 118ページより引用)
この本を読んで、私の感じたこと書いてみたい。
生活の発見会の集談会には、神経症のために日常生活が後退し、止まったままの人が来会されることがある。神経症で蟻地獄に陥ってしまっている人である。
そういう場合は、我々が積極的に対応するよりも、生活の発見会の協力医を紹介する方がよいと思う。慈恵医科大学第3病院などの入院森田療法施設。
あるいは、外来森田療法に熱心に取り組んでおられるクリニックを紹介する。
集談会に参加しておられる先輩は、日本全国どこに森田療法に熱心なお医者さんがおられるかよく知っている。我々の主な役目は、それらの病院への橋渡しである。
我々の行っている森田理論の集団学習は、神経症的な苦しみや悩みを抱えながらも、なんとか日常生活や仕事がこなせている人が対象である。ここでは生きづらさを抱えた人が、、仲間同士助け合いながら、森田理論の学習によって今後の神経質性格の活かし方、生き方の指針を見つけていく場である。
医療としては手が付けられない部分の活動を行っているのである。
この部分は精神科医の専門分野とはいいがたい。
生き方や人生観を精神科医や臨床心理士に求めるのは間違っていると思う。
精神科医や臨床心理士の仕事はそういうところにはない。
むしろ生活の発見会で森田を学習して、生活に応用している人の中にこそお手本がある。
ここを間違えて深入りしてもお互いのためにならないと思う。
身近に森田理論を生活に応用している人を見ることによって、次第に影響を受けて、人生観の確立に結びついていくのである。餅屋は餅屋で自分の役割をそれぞれに果たすことが重要であると思う。それ以上のことに手をつける事は、結局は一害あって一利なしであると思う。
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