森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2020.08.14
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森田先生は、海に棲む生物は3種類に分けることができると説明されている。

1、自分の目的のままに、自由に動き回ることができるもの。

2、イソギンチャクのように、常に岩に固着して、流れてくる餌を食物とし、安心立命の形で落ち着いている。もしこの動物を岩から取りはずして、波の中に投げ出すと、その動物は、不安心。不立命の状態で、落着かないような風である。

3、クラゲのような浮遊動物で、波のまにまに定めなく、流れ動いて、一生涯どこで生まれて、どこで死ぬという定まりはない。つまりこの種の動物はいまだかつて、固着した安心立命という体験もないと同時に、不安心・不立命という心持も、一切知らない。

このクラゲの方が本当の安心立命であって、イソギンチャクのように、当てにもならぬ食物を待って、下手な安心立命に固着しているよりも、よいかも知れない。
下手な主義や人生観に固着するよりも、人生はかえって安楽である。
ここで入院して、いわゆる「思想の矛盾」をさって、この白紙の状態になると、健康になり・能率は上がるようになります。
(森田全集第5巻 407ページより要旨引用)

周囲の変化や自分の置かれた境遇にペクトルを合わせて行動する方がよいといわれているのである。人間というのは一旦安心立命の状態に至ると、今度はそれを失わないように防衛するようになります。自己防衛というのは、注意や意識が外に向かうことなく、自己内省に向かいます。


本来の人間は目の前の問題点や課題に対して、果敢に改善や改良を目指して行動するように宿命づけられています。これを森田では「生の欲望の発揮」と言います。
それを放棄して、保身にばかりエネルギーを使うということになると、心身ともに後ろ向きで閉塞してしまいます。

断っておきますが、自己内省そのものは悪くはありません。
失敗すれば、自己内省し、その原因を解明しないと、また同じような失敗ばかりを繰り返すことになります。ここで注意したいのは、生の欲望が発揮されている場合に限って、自己内省力というのは効果を発揮できるということです。
ミスや失敗を次の成功のために活用できるのです。
生の欲望がないときの、自己内省力は自己嫌悪、自己否定に陥ってしまうのです。

次に、理想や完全・完璧な状態を心の中に強く思い描いてしまうと、それから外れるものは一切受け付けないという態度になってしまいます。
「かくあるべし」を生活信条として一歩も譲らないという生活態度です。
これは神経症を引き起こす大きな原因の一つとなります。
「かくあるべし」を身に着けている人は、変化対応はできなくなります。
変化を見つけると、どう対応しようかと考えるよりも、まずその動きに対して、是非善悪の価値判断をするようになります。

相手の意見を聞くことをしなくなります。
いったん判定したことを正当化するために、同志を募り徒党組むようになります。
正当化を強固にするために理論化を図ろうとします。
自分にとっても、他人にとっても葛藤や苦悩を引き寄せてしまうことになります。
変化対応を無視すると、大変大きな問題を抱えてしまうということです。





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Last updated  2024.06.02 23:56:41
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森田生涯 @ Re[3]:強情と盲従の弊害について(02/27) ststさんへ 今の生活は日中のほとんどが…
stst@ Re[2]:強情と盲従の弊害について(02/27) 森田生涯様、返信アドバイスをしていただ…
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