名古屋の南区生涯学習センターで講演(会場は別)。僕の単発の公開講演の後、フロイト、ユングの講義を別の先生がされると聞いている。順序としては僕だったらアドラーを最後に持ってくると思うが主催者の考えがあるのだろう。思ったほどに人が集まらなかったことが残念だったようで(僕も同じ思いである)また次の機会があるかもしれない。 今、毎週(飛ぶ週もあるが)弁天町で三月の初めまでしている連続講義と同様、聴講者の性別、年齢、その他バックグラウンドはずいぶん違っていて、学校の保護者向けの講演会のように育児、教育の話に終始してアドラー心理学の基礎的な話をするわけにもいかないのでむずかしい。質疑応答も含めて二時間というのではいよいよむずかしい。途中に休憩を入れた方がいいかと問われ、ノンストップで、と答えた。聴かれる方もハードだったかもしれない。質疑応答は四人の方が。僕が講演を補う形で説明を長々とするので四人の質問しか受けられなくて残念。楽屋(があった)に講演の後、八人の方が。いつまでも話は尽きなかったが会場の関係で追われるように出ていくことになった。 帰り、宇多田ヒカルの"COLORS"を買った。講演の最初に僕の紹介の後、僕の本から引用して紹介された話。「…アドラーは私に教えてくれました。世界は信じがたいほどシンプルだ、と」。これはリディア・ジッハーの話なので僕のことではないのだがいいそびれてしまった。世界はシンプルなのに複雑な(そして神経症的な、とアドラーはいうのだが)意味づけをして、結果、世界がシンプルに見えなくなっている。 宇多田は"Simple and Clean"という曲の中でこう書いている(この曲の由来など何も知らないが、"Deep River"の中の「光」と似ている。後記:「光」の英語ヴァージョンっだった)。"I don’t think life is quite that simple."人生はそんなにシンプルだとは思わない、と。別のところで、たぶんとてもシンプルなものもあるのだろうけど、ともいっているのだが。 夜、寝られず深見じゅんの『悪女(わる)』を三巻まで。徹底的にまわりの悪女たちにいびられるが、麻里鈴(まりりん)はめげることがない。不幸を耐えているというふうでもない。粗削りだが優れた感性を持った彼女が今後どう育っていくか、思わず読みふけってしまった。 よしもとばななの『はごろも』読了。いつもながら神秘的な話でおもしろいといえばおもしろいのだが、いかにもありそうな話の展開ならいいのだが、いかにもありえないので少しがっかり。宇多田ではないがlife is not that simpleといいたくなった。