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2004年07月14日
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 強い雨が降ったというのに、カウンセリングをしていたからか、仕事をしていたからか、ぼんやりしていたからか、全然気づかなかった。

『狭き門』のアリサとジェロームのすれ違いは、幸福の位置づけにあった。ジェロームは、魂は幸福以上に何を求めるのかというのに対して、アリサは「じつは、わたしたちは、幸福になるために生まれて来たのではない」という(p.146、山内義雄訳)。そして徳をこそ最上位に置き、ジェロームがアリサを愛することで幸福になるという愛すらも徳より上位にくることはない。アリサは日記の中でこう記す。「わたしにはときどき、悲しいかな、徳とはただ愛にたいする抵抗だというようにさえ思われてくる! あろうことか! あるがままの心の傾きを、あえて《徳》と呼ぼうというのだろうか!」(p.194)。この本を読んだのは高校生のことで、当時の日記にこの本についての記述があるかわからないのだが、たびたび僕が日記に引いていたカントなら、「あるがままの心の傾き」を傾向性(Neigung)といっただろう。放っておいても坂道を石が転がり落ちていくようなのは徳ではないというわけである。

 村上春樹の『ダンス・ダンス・ダンス』ではこんなふうにいわれている(講談社文庫、上、p.163)。
「どうしてそんなことをしたんだろう?」
「わからないね」
「でも、たぶんそれはどうしようもないことだったんだろうね。何か宿命のようなものさ。なんというか、うまい言葉が思いつかないけど……」
「傾向」と僕は言ってみた。

 しかし、と今の僕はいうだろう。愛にアリサがいうような「あるがままの心の傾き」を見ないのであれば、そんなものは愛といえるのかと。

 ジッドの『一粒の麦もし死なずば』は、ジッドの生い立ちの記であり、自分の欠点や悪癖をも公表しているが、それによって人が投げかける非難も承知の上で、この文章の存在理由は、真実以外にはない、贖罪のために書いている、とジッドはいう。訳者の堀口大学が「私は訳稿を進めながら、これを書きつづけるジッドの心中を察し、思わず目がしらを熱くすることが幾度もあった」と、あとがきで書いている。ジッドは『狭き門』におけるアリサに惹かれながらも、ジェロームに与していたのではないか、と考えた。まだ『一粒の麦もし死なずば』は読んでない。これも高校生の時に読んだようだ。一体、あの頃の僕と今が同じ僕なのかと思うこともある。





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最終更新日  2004年07月14日 22時50分32秒
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Re:あるがままの心の傾き(07/14)  
keiko さん
Ichiro様
 >アリサとジェロームのすれ違いは幸福の位置づけにあった。
アリサは神を崇拝するがゆえに、人間としてのジェロームのこころを理解していても受け入れることができなかったのでないでしょうか。神を絶対値と考えると心の傾きは無に等しいのではと思いました。
  (2004年07月15日 09時36分19秒)

Re[1]:あるがままの心の傾き(07/14)  
keikoさん
 ジェロームはこんなふうに日記に書いています。「最初あの人のわたくしにたいする愛の気持ちが、あの人を神のほうへと導いたのだとすれば、今あの人の妨げをなしているものも、またその愛の気持ちにほかならないのだ…彼こそは、わたくしを愛することよりももっとすぐれたことのために生まれてきた人ではございますまいか?」ジェロームなら、あなたを愛するよりすぐれたことはない、と断言するでしょうし、僕もきっとそうすると思います。 (2004年07月15日 15時09分56秒)

Re:あるがままの心の傾き(07/14)  
keiko さん
Ichiro様
 あるがままの他ならるあなたを愛するのですね。先生は純粋だなぁと思いました(笑)。
訳しながら「思わず目がしらを熱くすることが幾度もあった」と書かれている作家ジッドにどんな方だったのだろうと興味が湧きました。 (2004年07月15日 21時17分19秒)

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