王子さまは、遠い星に残してきた薔薇と同じ薔薇がたくさんあるのを知って泣いてしまうのだが、見たところ同じような薔薇に向かっていう。君たちのために死ぬことはできない(On ne peut pas mourir pour vous)。あの薔薇のためには死ぬことができるという意味なので、なんとなく読み過ごすことができない。王子さまにとって、薔薇を大切にするということ(faire ma rose si importante)は、これくらいの覚悟があるということである。人類一般を愛することも、全人類のために死ぬこともきっとできないが、他ならぬあなたのためなら死ねるだろうか。でも、あなたのために(pour toi)などといわれたら、大いに迷惑がられるかもしれない…などなど。京都の植物園で見たバオバブの木のことも頭に浮かんだ。