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何が違うというのか。
何一つ違わないのではないか。
どこで別れたというのか。
どこも別れていないのではないか。
ならば……
「んー? なあ、ヘレナどこ行ったか知らないか?」
「へ? さあ……そういえばいませんね」
「え、まさか、どっか行っちゃった?」
「おいおい、今のあいつ放っておくのはまずいだろ」
「たしかに。探しに行かないと……」
「誰がまずいって?」
「あ、あれ!? ヘレナ、どこいたの!?」
「別にどこにも行ってない。庭でぼうっとしていただけだ。勝手に人を行方不明にしないでほしいな」
「……静馬」
「あ、あれぇ?」
「まったく、愚かな奴らだ。落ち着きというものがまるでないと見受ける。常日頃平常心を維持できぬとは阿呆としか言い様が……」
「……あん?」
「む、どうした。何用か?」
「いや、用じゃないんですけど……」
「ならば何故なるか。その様な歯切れることのない話し方でこの我に口を開くとはいかなる狼藉……」
「へ、ヘレナ!? 何言ってんの!?」
「ん? 何って、何がだ?」
「……? お前さ、今の会話覚えてるか?」
「はぁ? なんだそれは。そんなの決まって……」
貴方にそれはふさわしくない。
「――ぐっ!?」
貴方がそれを持っていいわけがない。
だから、だから――
「な――んだ、これ……」
バタン
「ちょっ、ヘレナ!?」
「どうしたの!? しっかりして!」
「早く病院……いや、とにかく部屋へ運べ!」
「――こいつは……いったい……」
「――別にどこも異常ありませんけど」
「ああ、やっぱり?」
「なにがやっぱりだよ。なんでこんな奴呼ぶんだよ」
「いやだって、俺らが知ってる医者ってこいつぐらいだろ」
「今回はフォルトに同意ですね。私は病人や怪我人には興味はありますが、健常者なんか存在すら必要ないと思っている輩なもので」
「ねー、その変態なとこどうにかしてくれない?」
「まあそれは後にして、明らかに様子がおかしいのは事実なんですよ。異常なしなわけないでしょう」
「と言われてもね、検査した結果何も出ませんでした。となると、これは外科でも内科でもなく精神科の問題でしょう」
「……話せる?」
「起きはしましたけどね、それはあっちに聞いてください」
「――誰行く?」
「お前行けよ静馬。こういうの得意だろ」
「――やれやれ。久しくやってないってのによ」
つづく
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