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April 30, 2022
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カテゴリ: REALIZE2
カタンっとドアが開く音がした。

「こんばんわ。」

 ヒカルが照れ臭そうに笑っていた。

「どうしたのですか、こんな夜更けに?」
「お昼寝しすぎて、眠れないのです。お隣座ってもいいですか?」

 ハワードはそそくさと立ち上がり、どうぞごゆっくりと席を譲った。すさんだ世界から逃げ出してきたような感覚で、ヒカルの顔をまともに見られない。

「私は、そろそろ休もうかと…。ヒカルもほどほどに。夜は冷えますよ」
「あ…。そうですね。分かりました」

 少し不安げな瞳がハワードの長い金髪の流れを見つめていた。その視線を感じながらも、ハワードは振り向けずにいた。



「おや、眠れないのですか?」

 ジークがベランダの人影に気が付いて声を掛けてきた。「ちょっとお待ちを」そう言って階下に下りて行ったジークはほどなく、トレイにカップを乗せて戻ってきた。

「ホットミルクです。緊張を和らげたり、眠りやすくしてくれますよ」
「ありがとうございます。昼間にお昼寝しすぎたのがダメだったみたいです」
「あはは。じゃあ、少しお話でもしましょうか? 例えば、アラン王太子殿下の子どもの頃の話とか」
「うわぁ、聞きたいです!」

 慣れた様子でジークがイスに腰かけると、嬉しそうにジークの向いに座った。

「アラン王子は小さいころから大変な美形でね。侍女たちが追い回していたんですよ。それはもう大変な騒ぎで、パーティなどがあると、必ず母から私に王子を守りなさいと指示がでるのです。ですから、よく二人で抜け出して、厨房や控室などに隠れて遊んでいました。」
「ふふふ。楽しそうですね」
「そうなんですよ。お腹がすくと見習い侍女だったフランソワがこっそり差し入れを持ってきてくれて、隠れて3人で食べたりしてたんですよ」
「わぁ、いいなぁ。私も混ざりたい」


 ジークはそっとヒカルを抱き上げると、ヒカルのために準備しておいた部屋に連れて行く。

「随分大きくなられましたね、王女様。お疲れがでましたかな」

 ジークはそんな風に呟きながらヒカルの部屋のドアを開けた。その後ろ姿を、水を飲みに出てきたハワードが見かけた。大きなジークの胸に抱かれ、すやすやと穏やかな寝息を立てるヒカルからは、先ほどすれ違ったときのような不安な空気は感じられない。
 ぼんやりと様子を見ていると、ベッドにヒカルを寝かせたジークが部屋から出てきてハワードと鉢合わせた。

「ハワード殿、どうかされましたか?」


 自分でもしどろもどろで歯がゆい。ハワードはなんとも居心地の悪い気分で台所へと行きかけた。

「あの方は、まだお若いのに周りが見え過ぎてしまうのです。どう動けば穏やかにおさまりが付くか、いつもどこかで考えてしまうのでしょう。」

 ジークはすれ違って後ろ向きのまま、誰に言うともなしにつぶやいた。ハワードは、つい振り返ってジークを見つめた。当のジークはゆっくりと振り返って笑みを浮かべた。

「ですが、ご自分の気持ちにはなかなか素直になれない部分も多いようです。この旅の間になにかいいきっかけがあれば良いのですが。では、おやすみなさい」

 そう言って通り過ぎていくこの屈強な騎士を、ハワードは茫然と見送っていた。

「私は、何をやっているんだ。」

 ほんの一瞬でもジークの行いに疑いを持った自分が恥ずかしかった。自分は逃げてばかりではないか。暗いキッチンで冷たい水を飲みながら先日の異世界日本でのことを思い出した。

アランが怪我をして見舞いに行く途中で、ばったり「紅」シリーズの監督に遭遇していた。

「ハワード?ハワードじゃないか!どうしていたんだ?」

心から心配してくれていた監督に、ただ頭を下げることしかできなかった。

「今からでも戻ってこないか? 俺はあのシリーズの続きがどうしても撮りたいんだ。おまえでなくちゃ、あの役は務まらない。」

それは俳優にとってどれほどの誉れだろう。それでも、ハワードは首を縦には振れなかった。俳優の世界からも逃げ、ヒカルからも逃げているのだ。

翌朝、領主の邸宅に戻って朝食をとっていると、ジョージが期待を込めた目で見つめながらヒカルに声を掛ける。

「王女様、うちの領土は暖かで過ごしやすいでしょう? どうです。うちには一人、婚期を逃しそうなのがいるのですが、一度考えてみてはもらえませんか?」
「おい、失礼なことを言わないでくれ。」

 ジークは慌てて止めに入るが、夫妻はちっとも気にしない。

「まぁ、ジークったら、こんな愛らしいお嫁さんなら、あなただって嬉しいでしょう?」
「王女様が困ってらっしゃるだろう。まったく、好き勝手なことを言わないでくれ」
「でも、父が結婚を決めたのですから、次はジークさんの番なんじゃないですか? 私みたいな子供ではなくて、ちゃんとしたいい人がいらっしゃるのではなくて?」

 ヒカルまで話に乗ってきた。ジークは途端に耳を赤くして、しどろもどろになった。

「はぁ、仕方がないな。まったく、ヒカル王女様はするどくて困ります。一応想い人はいる。それだけだ。」
「あら?ん? ん~、もしかして…」

 うすいとび色の瞳がくるりと動いてジークを捉える。その瞬間ジークの顔が真っ赤になった。

「や、えっと。王女様、あの。」
「ふふふ。善処します。あ、でも、チャンスがあれば、私が旅から帰るのを待たなくてもいいですからね。」
「あらあら。なんだか進展がありそうですわね。王女さまからのお知らせと息子からの知らせ、どっちが先に来るのかしら。今から楽しみですわ」

 食事が終わると、ジークは王城に戻り、ヒカルたちも昼前には次の目的地に出発することになった。ヒカルはハワードを誘って、砂浜に散歩に出かけた。昨夜のハワードの様子がおかしいと感じていたからだ。しかし、ハワードが家庭の事情を話すことはなかった。

「ハワードさん、何かあったの?元気がないみたいだけど」
「いえ、特には…」

 言葉が途切れてしまう。その穴を埋めるように、穏やかな波の音が続いていた。海を見つめていたヒカルは、視線をハワードに移してその言葉の続きを待った。

「王女様に聞いていただけるような物ではないのです。人間のドロドロした感情などに触れていただきたくはない」
「…そうですか」

 視線を落としたとび色の瞳に薄茶の巻き毛が揺れている。返事に困ったハワードは海原の向こうに目をやった。

「では、帰りましょうか。リッキー達も待っているでしょうし」
「はい…」

 それ以上、何も言わないヒカルに、ハワードの胸中は揺れていた。

つづく





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最終更新日  April 30, 2022 09:43:10 AM
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Re:REALIZE2 第1章 南の地で気づく心配事 4(04/30)  
ハワードは気遣いがあるのですね。

Re[1]:REALIZE2 第1章 南の地で気づく心配事 4(04/30)  
カフェしんた さん
千菊丸2151さんへ

そうなんです。いずれ知っていくべきことですよね。
ハワードの中にあるヒカルという存在と、リアルとの間にも誤差が生まれているのです。 (April 30, 2022 06:30:13 PM)

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