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November 15, 2022
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エピソード16

 週末のクラブはにぎわっていた。美月は今日もカウンターに座って、水割りを楽しんでいる。若い女性客が2人、そっとカウンターに歩み寄り、美月に声を掛けた。

「あの、美月さんはどんな女性がタイプなんですか?」

 瞳をキラキラさせてためらいがちに尋ねる彼女に、くるりと振り向くと、サラサラの淡い金髪が後ろに流れ、ブルーグレイの瞳が露わになって、営業スマイルが炸裂する。

「控えめな子が好きかな。それと、下品な子と押しの強い子は苦手なんだよね」
「あ…すみません。厚かましく声を掛けて…」

 声を掛けた彼女は、あからさまにしゅんと肩を落とした。そんな女性客を純粋にかわいいと感じていた。

「君たちの事じゃないよ。いつもお店に来てくれてありがとう。ねえ、この子たちに合うカクテルをごちそうして。」

 美月が目配せすると、バーテンダーが愛らしい色合いのカクテルを手早く作って、彼女たちの席に届けた。


 これは、いわゆる営業だ。下品な客、押しつけがましい客は必要ないと、暗に宣言して、まとわりつく客を席に座らせる。本人たちは気をよくして、口コミを広げてくれるのだ。 彼女たちの後に続こうとする他の客は、近寄れなくなる。

 遠巻きに美月を眺める客たちをしり目に、今日も美月は水割りの氷が解けていく様を眺めていた。

「美月、帰ったぞ!」
「仁! ここは君の家じゃないし、僕は君の奥さんでもないんだけど」
「いいじゃねーか。日本が俺の家なんだから」

 がははと笑う奥平に、美月は小さくため息をついた。さっき下品な客や押し付けがましい客が嫌だとけん制したばかりなのに。これでは示しがつかない。

「ねえ、仁。久しぶりに涼さんに会いに行こうよ」
「お、いいね!そう言えば、あの立てこもられ事件から、ゆっくり話せてないんだよ」

 二人は、さっそく店を出た。

 いつものショットバーを覗いたが、藤森の姿はなかった。

「おかしいなぁ。久々これを使おうか」



「どうした?」
「涼さん、今どこ? こっちは仁が帰ってきたから一緒に飲もうかと思って」
「悪いけど、今日は遠慮しておくよ。」

 美月はその言葉の向こう側で女性の声が聞こえてはっとした。

「そ、そう。じゃあまた」



「おい、どうしたんだ? 涼はなんて?」
「ああ、今日はやめておくって」
「なんだ、また論文書いてるのか?」
「いや、そうじゃないみたい…」

 美月の戸惑った様子にピンときた奥平は、ふっと笑い出した。

「そうか、さては涼にも彼女ができたのか」

 瞠目する美月を楽しそうに眺めながら、奥平が爆弾を投入する。

「そうそう。俺も、籍を入れることにしたんだ。」
「は?どういうこと?」

 焦る美月に、奥平は妙に余裕な様子だ。

「ん、女の子の後を追いかけるのが、邪魔くさくなったんだよ。それと、あの人質事件の時、意識を失くす直前に冴子が気絶させられるのが見えて、体中から血の気が引いたんだ。聡明で気が利くけど、気が強くて偉そうで、何があってもどんとそこに居座っていると思っていた。それなのに、あっけなく倒れていく姿を見て、たまらなくなったんだ」
「ねえ仁。冴子さんって、6つ年上の本田先輩の、お姉さんだよねぇ」
「ああ、そうだ。俺の事務所にいる冴子だ。」

 何かが理解できない。納得できないというか、受け入れがたいと体中の細胞が訴えている。しばらく目を泳がせていた美月は、そっとその視線を奥平に戻した。

「それで、冴子さんはOKしたの?」
「ん?それがな。意外なことにあいつ、こんなこと言うんだ。やっと気が付いたの?ほんとに世話が焼けるわね、だと」

 はぁ~っと大きなため息をついて、美月は手のひらで顔を覆った。

「僕には理解できないよ。ああ、だけど、おめでとう、だよね」
「ああ、ありがとう。次は涼からの報告待ちだな。美月、先に飯にしようぜ」

 さっさと歩き出した奥平の後を追いながら、ふと街中を眺めると、そのカップルの多さにはっとする。そうか、もうすぐクリスマスなのか。キリスト教徒でもなんでもない日本人が、好んで楽しむこのイベントは、恋人たちにとっても盛り上がれる行事だ。美月は根拠のない焦燥感に襲われていた。

つづく





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最終更新日  November 15, 2022 11:03:46 PM
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