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12月13日が昨年最後の受診日だったのだが、血液検査の結果が非常に悪かったようで、17日に入院の支度をして外来に来いという主治医からの宣旨が下った。入院期間を尋ねても、17日の検査結果次第で一週間になるか来年になるか分からないというので、私は困ってしまった。主治医は歯ブラシとタオルくらいで十分。寝巻もあるし、コンビニもあるから荷物はもたなくていいというのだが、女はそうはいかない。下着類はある程度必要だろうし、パソコンやスマホの他に電源用延長コードも要るだろう。化粧品は最小限でも洗面用具は必要だし、寝巻の上に羽織るローブだって必要だ。結局旅行用の小さいカートに詰め込んだのだが、情けないことに体調がイマイチなのでアタマが働かず集中力がなくて荷物をうまく纏められない。 確かに数か月前からいつになく倦怠感が強く、一日中寝ていることが多くなってはいた。食事はちゃんと食べていたつもりだが、久々に測ってみると体重が3キロ減っていた。料理もしていたつもりだが、考えてみると買い物に行っては一眠りし、一品作って力尽きていたから、まともな食生活でなかったのかもしれない。 今回は採血の結果白血球数が6万を超していたので、主治医がちょっと慌てたようだった。今までハイドレアという薬を7年間、薬数を加減しながら服用してきたのだが効果が薄く、半年ほど前にはインターフェロンを勧められたこともあったが、副作用に「自殺企図」という項目をみてしまっては、さすがに怖くなってお断りした矢先だった。 主治医からの指示で13日の夜から、一日二回20時、8時に「ジャカビ(ルキソリチニブリン酸塩)」という抗がん剤を17日まで服用した上で入院することになった。 入院など思いがけないことだったが仕方ない、覚悟を決めることにした。『こうなったらもう、今まで逃げ回っていた骨髄穿刺も潔く受けましょう、ジャカビもちゃんと飲みましょう』という心境になった。 ジャカビを服用して4日目、白血球数は4万に落ちたものの、脾臓が肥大していて本来は肋骨の中に納まっているのに、私の場合はへそのところまで巨大化しているという。道理で診察の度に転ぶな、事故に遭うな、角っこにぶつけないようにと注意されていて、私は「いいお返事」をしていたものの、実はあまり深刻に考えてはいなかった。 しかし考えてみれば息切れや動悸、ふらつきが頻繁に生じていたのは確かで、昨年正月明けにマンションの廊下を、ゴミを持って走って突然倒れ、まともに顔を打って傷だらけになったことがあったが、あれは貧血が原因だったかもしれない。 寝汗は少ないもののパジャマの襟もとが一晩でぐっしょり濡れては乾きを数回繰り返し、皮膚の痒みが激しく眠れないことも多かった。 ところがあら不思議。ジャカビが著効を奏して、上げ膳据え膳の入院中にそれらの症状がほとんど消失したのだ。からだのだるさと頭痛は相変わらずだが、服用して一週間後から発熱と発汗、それに皮膚掻痒が消失した時は本当に嬉しかった。食後に食器を下げに行くと息切れと動悸がするのだが、主治医によると脾臓が腫れているので、満腹になるまで食べないで一日4食に小分けせよという。 もともと胃腸は丈夫であり、しかもがんセンターのお食事はいつもアツアツでおいしく、病人のくせに毎回恥ずかしいほど完食してしまう。同室の患者さんたちとのおしゃべりも楽しく、しかも7階の女性の看護師さんたちはそれぞれに若くきれいで優しいひとばかり。おばあちゃんとはいえとても楽しく入院生活がおくれたというわけだ。退院前に輸血するかもしれないと言われたのだが、嬉しいことにこれもギリ!セーフだった。 ハイドレアは一日おきに1カプセル、2カプセルの服用だったが、薬剤師のくせに適当だったことを大いに反省し、一日おきに1カプセルを、ジャカビはタイマーをかけて8時と20時に正確かつ律儀に服薬している。 さて年内に無事自宅に戻ったのはいいのだが、今度はクルマに問題が生じていた。 実は13日に病院からの帰り、パネルにドアが開いているとの表示が出ていたので、途中で止めて全ドアを開け閉めしたのだが消えない。トランクは開けた記憶がないので確認しなかったのだが、これがいけなかった。その足でディーラーにまで行けばよかったのだが、病院帰りで早く横になりたくてつい家に帰ってしまったのもよくなかった。入院する前日、クルマを出そうとしたら、ドアが開かないではないか。カードキーについている小さなキーを挿して回したが、これでも開かない。家に戻ってリモートスターターを使ってみたのだがこれも利かない。入院時はクルマに乗ってくるなと言われていたし、仕方ない、入院してから保険屋とディーラーに相談しようと思い、暗い気持ちで入院したのだが、何とこれは故障ではなくバッテリー上りが原因であることが判明した。退院後にディーラーさんが来てくれてバッテリー・ジャンピングとかいう処置をした後引き取って2日ほどかけて充電してくれた。 昨年はいろいろなことのあった年で、夏にはマンションの友達と3人で函館まで二泊三日のドライブ旅行をしたのだが、その帰りに白老で高速を降りて食事した後クルマが故障してレッカーされるはめになってしまった。見知らぬ人に「いいクルマだね」と褒められた愛車ではあるが、すでに14年も経っている。故障してもおかしくない年齢だ。だから私の処置が悪かったのに、てっきり故障と思い込んでしまったのもよくなかった。 年を取ると考えにバイアスがかかってしまって、ちゃんとした判断ができなくなることを実感した一年だったが、とにかく自分の病気もクルマも、だましだましではあるけれど、動けるようになったことが何よりうれしい。
January 8, 2025
翌日もお二人はゆっくりと寝過ごして、御洗面やお食事をご一緒になさいます。高麗や唐土からの舶来品でご立派に飾り立てた六条院を見慣れた目には、二条院の女房たちはみすぼらしい身なりで数も少なく見えるのでした。中君はやわらかい練り絹の薄紫色の単衣の上に撫子襲の細長を着て、くつろいだご様子でいらっしゃいます。きらびやかに飾り立てた六の君のご装束に比べましても、盛りを過ぎたとはいえ中君は決して引けを取ることがなく、もの柔らかで風情がありますのも、宮が大切にしていらっしゃるからなのでございましょう。以前は丸々と可愛らしく肥えていらしたのですが、ご懐妊のために少しほっそりとして、ますます色白になられて上品でうつくしいのです。以前から、他の人より愛敬があって可愛らしいとお思いでしたから、『兄弟ならまだしも、他の男が近しく言い寄って、中君の声や気配に見慣れるなどしていれば、自然心惹かれることにもなるであろう』と、ひどく抜け目のない浮気心の御くせで、すぐお気付きになります。『証拠になるような文などあるかもしれない』と、中君の御厨子や小唐櫃などをさりげなく調べても、恋文ではなく、言葉少なく生真面目で平凡な文がそれとなく物に取り交ぜてありますので、『これは怪しい。文はこれだけではあるまい』と、お心が騒ぐのもお道理なのでした。『中納言の容姿も、心ある女であればきっと心動かされるであろうから、言い寄ったりしたら中君とて拒み通すことはできまい。二人は良い相手だから相愛になってもおかしくはない』と思いますと、侘しく腹立たしく妬ましくなるのでした。そんなお気持ちのまま、その日は二条院にずっとおいでになります。六条の君には、二度三度とお文を差し上げなさいますので、「たったニ、三日ですのに」「あちらではずいぶんとお文が積もったことでしょうね」と、皮肉を言う老女房たちもいるのでした。
January 6, 2025
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