人形の国(by弐瓶勉)


「人形の国」は弐瓶勉の作品で、2017年から 2021年にかけて『月刊少年シリウス』で連載され、全9巻で完結しています。
管理人は弐瓶勉の大ファン、というわけではないのですが、わりと昔から読んでいます。
作風はかなり個性的で、基本的にSF、トッピングでラブコメやギャグを少々、絵柄はメビウスや大友克洋、宮崎駿などを取り込んだ、アクのある感じです。デビュー作の「BLAME!」の頃に比べて最近は絵が「白い」雰囲気ですが、個人的には余分な線が省略されて読みやすいと思います。
人工構造物が複雑に積層化された世界や、その中で徘徊する自動機械(生物的な進化を遂げている)を延々と描き続けている人です。「風の谷のナウシカ」の世界を構成する菌類や蟲たちが、「機械」に置換された世界だと思っていただければ分かりやすいでしょう。

「人形の国」は、遠未来でのAPOSIMZ(アポシムズ)と呼ばれる人工天体を舞台に繰り広げられる復讐と戦いの物語です。
アポシズムは直径が12万kmという設定です。ざっくり地球の10倍、土星ぐらいのサイズです。でかいね。
「アポシムズには超構造体殻に覆われた地底空間が存在し、50世紀前に地底との戦争に敗れた地表人はアポシムズでの正当な居住権を失ったまま、危険な自動機械が徘徊し、人間が機械化してしまう感染病(人形病)さえ蔓延する極寒の地表に捨て置かれた。白菱の梁のエスローは地底からの使者タイターニアと出会い、正規人形へと生まれ変わった。そして、故郷を滅ぼした上に今なお周辺民族を脅かし続けるリベドア帝国の皇帝スオウニチコを打倒するために旅立つ・・・。」
・・・という世界観なのですが、如何でしょうか。ご理解いただけましたでしょうか?
お話の骨格は「風の谷のナウシカ」に似ています。序盤は特にそうです。
それに加えて、「変身ヒーローもの」のテイストが混ざっています。
弐瓶勉が初めて「少年誌」で連載をするにあたり、変身とかバトルなど、キャッチ—な要素を盛り込んだのかなと思われます。
ただし、変身(「正規人形」と呼称される外殻を纏った形態)するためには、「コード」と呼ばれる装置を使い、転換に成功して「正規人形」になる必要があります。適合確率は1万分の1ぐらい。大半は失敗して死にます。
正規人形化すると、基本的に「人」ではなくなるので、食事や睡眠は不要になります。
通常時は人間形態で、戦闘時には「鎧化(がいか)」して個別の特殊能力を発揮します。
なかなか間口の狭いマンガですが、熱心なファンがいるのも事実です。

この作品は全9巻で完結していますが、後半かなり端折っています。
9巻後半の108頁から109頁にかけてなどはその顕著な例で、見開いた右頁でふたつの陣営が鎧化して睨み合っており、左頁に移るとその「壮絶な戦い」が終わっていて、ほぼ全員が死亡しています。すごい省略だ。
また、最終話では、主人公と皇帝の戦いに決着がつきますが、主人公に何も語らせないまま幕が引かれるので、読者的には「置いて行かれた」感が強いです。
少年マンガらしく、主人公がもう少し熱血で饒舌な奴だったら違う印象になったかと思いますが、弐瓶勉らしい「寡黙な主人公」の物語にふさわしい終わり方ではあります。

2022年05月01日

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銀河大計画別館の管理人。 「銀河大計画」は、1993年から細々とやっている同人誌です。 ゆうすけが書いたネタや没ネタなどを、別館で細々と掲載します。どうぞよろしく。 アイコン卵酒秋刀魚さん。
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