第1話の「無明逆流れ」を山口貴由が漫画化した『シグルイ』が有名で、その人気があって2005年に徳間文庫が新装版を出しています。管理人が読んだのもこの新装版です。
「駿河城御前試合」南條範夫・著
徳間文庫
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この作品に関する基本的な知識とネタバレ。
世にいう寛永御前試合(徳川家光の御前試合)というのは後世の創作ですが、じつはこの試合に関しては、寛永6年(1629年)の駿府城主徳川大納言忠長が行った11番の御前試合が元ネタなのです。という設定で、史実のように語られる「創作」がこの作品です。実際にこういう試合があったかは不明です。徳川忠長はそうとうヤバイ人だったので、あるいはあったかもしれない。
南條範夫は「残酷もの」で知られる作家ですが、この作品も豪快に残酷です。
人がバタバタ死ぬ作品が嫌いな人は読まない方が良いです。主要な登場人物はほぼ死にます。
真剣で行われる11番の勝負を、「グラップラー刃牙」のように全試合完全中継します。
管理人的には大好きな内容です。
余談ですが、時代小説を読むときに気を付けるべき点として「現代の常識や倫理観を持ち込まない」というのがあります。この作品は江戸時代が舞台なので、ゴリゴリの封建制度の中でのお話です。近代的自我などはまだ芽も出ていないし、人の命はやたらと軽く扱われます。羨ましいのは「自力救済」が一部に認められている点ですね。お上に届け出すれば「仇討ち」とか「決闘」とか、OKです。昔はよかったなあ。
ここに書かれた11試合はいずれも面白いのですが、管理人的にお気に入りのキャラクターを挙げておきましょう。
「被虐の受太刀」の座波間左衛門(ざなみ かんざえもん)
君は完璧で究極のドM。手におえない変態野郎。この作品で唯一「幸せ」に死んだヤツ。よかったね。
「破幻の秘太刀」の笹島志摩介
美形な顔立ちに、数々の秘剣を体得している凄いヤツ。実はこの秘剣を会得するためのルーチンがあって、惚れた女を使い捨てにするとスランプを脱出できて秘儀が会得できる、というもの。
なんじゃそれは。ざっくり20人ぐらいの女を使い捨てています。中には自害した人もいます。
こういうクズなキャラは嫌いじゃない。むしろ好きかも。
きわめつけは、試合前夜の事件。
かつて使い捨てにした女の妹が「仇討ち」にやって来ます。
助っ人ひとりを伴って屋敷に夜討をかけるが、返り討ちに遭う。助っ人は斬られ、妹は志摩介に犯されたうえに殺される。
志摩介は死体が転がる部屋で朝までぐっすり眠り、朝は井戸で体を洗い、清々しい気持ちで試合に臨む。
絵に描いたような悪役ぶりで、いっそ爽やかさすら感じられます。
彼がどうなるのかは読んでお確かめください。
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