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2018年08月26日
専門知識と能力でイノベーションを起こす?
プロフェッショナルの危機も
初期の コンティンジェンシー理論では、
「官僚制」対「革新」のような安直な対峙をさせていました。
しかし、例えば、まだ海のものとも山のものとも
つかないような新しいアイデアに対して、
カリスマ経営者が「よし、商品化しよう」
と一言言ってくれれば、
官僚制組織は一体となって効率的に動いて、
いっきに革新が進むのは明らかです。
そんな事例はいくらでもあります。
その場合には、むしろ官僚制のほうが、
新しいアイデアの実行にとっては
都合がいいわけです。
とはいえ、上意下達の権限構造で
管理される官僚制組織に対して、
専門知識と能力によって統制される
プロフェッショナルが存在すれば、
官僚制組織におけるイノベーションの障害を
変えてくれると期待されてきたのも事実です。
もともとプロフェッショナルとは
医者や弁護士のことを指していました。
アボット 氏は1981年の論文で、
プロ集団内で、
?@診断:問題の分類
?A推論:診断の理由付けと治療の方向性や範囲の設定
?B治療:問題解決のためのアクション
の中で、現場に近い?@?Bよりも遠い?Aにあたる人の
ステータスが高く、
より高いステータスを求める競争の結果、
プロフェッショナルがどんどん現場から
乖離していくと プロフェッショナルの危機を
唱えたくらいです。
この組織はどのような存在か
組織は多重アイデンティティ
そもそも組織は変わることができるのです。
自分たちらしさ、組織アイデンティティ自体も
変えられるのです。
従来は、個人のアイデンティティのイメージを
組織にもそのまま当てはめ、
組織アイデンティティも同様に、
?@1つの組織にはただ1つ、
?A他の組織と比べユニーク、
?B時を経ても変わらない、と
いう暗黙の基準を満たすものだと思われてきました。
ところが1985年に、
アルバート 氏と ウェッテン 氏の
画期的な論文が登場します。
この論文では、
組織アイデンティティは、
?@宣言されていれば、
1つでなくて複数存在してもいい、
?A他者と比較可能で自己分類できれば、
ユニークでなくてもいい、
?B連続的であれば、
時が経つにつれて変化してもいい、
とアイデンティティ概念を大幅に拡張したのです。
多数の人間からなる組織ですから。
例えば、2つのアイデンティティをもつ組織が、
一方から他方へと
アイデンティティに連続的に変化させて、、、
組織アイデンティティが
変化していくというわけなのです。
この考え方により、
組織アイデンティティに
関する実証的に研究が一気に
展開していくことになるのですが、
革新的すぎたのか、
この論文を引用する研究の多くが、
未だに 個人アイデンティティの
イメージから脱し切れていません。
変化に対応して競争優位を築く能力
いつまでももやもやしている動的能力概念
ティース 氏らの論文はなかなか出版されず、
原稿のまま引用されて有名になりました。
結局、1997年に出版された論文では、
環境変化に適応するために自らの資産の
新結合を生み出す能力を 動的能力と
呼んだと理解されています。
ただ動的能力そのものに関する明示的な
定義・議論はありませんでした。
それ以降、 資源ベース理論の研究者が大量に参入し、
とりあえず「変化(動的)」「競争優位」「能力」
というキーワードをいれて、「動的能力に関係している」
と書くことが広く行われるようになりました。
2011年になって、 ヘルファット 氏と ウィンター 氏は、
業務能力、動的能力に加えて、両者に共通する能力も
存在することが混乱の原因にだと考えます。
業務能力を除いた純粋な動的能力だけを考えることにし、
それが観察される例として、ウォルマート、
スターバックス、マリオットのチェーン展開や、
新しい油田・ガス田の開発を例として挙げたのです。
このように純粋な動的能力が企業成長に
必要な純粋な能力であるとすると、
その主要部分は、かつて ペンローズ 氏が
『 会社成長の理論 』で考えた
「規模の経済性とは異なる成長の経済性」をもたらす能力
と同じである可能性が高いと思われます。
競争ではせっかくのイノベーションが潰されることも
人が新しいことを拒絶するメカニズム
環境や周囲が大きく変わるとき、
人は 殻に閉じこもろうとします。
それを 自己概念や 自己アイデンティティを用いて
擁護することもできます。
例えば自動車ディーラーの経営者が
プロセス重視を宣言して、
いろいろな仕組みの導入を図ったとしても、
「結果がすべて」の営業の世界で
個人業績を上げてきた現場の営業スタッフにとっては
自己概念、自己アイデンティティを脅かすような
仕組みなので、結局は拒絶されて
うまくいかないことがあります。
放っておけば、どんなに良いイノベーションも
自然淘汰されて生き残れないことも多いのです。
ディマージオ 氏と パウエル 氏は1983年の論文で、
同型化のメカニズムとして
同型的組織の変化の源泉を挙げています。
同型化には、
?@ 競争的同型化と、
?A 制度的同型化の2つに大別されますが
?@では優れた形質で同型化が進まないこともあるのです。
経営者が?Aを 人為選択しないと、
良いイノベーションは生き残れないかもしれません。
植物の世界でも、例えば、
野生のバナナには種があるが
いま我々が食べているバナナには種がありません。
もし自然淘汰であれば種のないバナナは
すぐに途絶えたはずです。
ところが、突然変異でできた種無しバナナを
人間が根の脇から出てくる新芽を利用して
株分けして意図的に増やしていったのです。