2017年7月17日21:30に米国景気指標「NY連銀製造業景気指数」が発表されます。今回発表は2017年7月分の集計結果です。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事投稿時点の値です。
本指標の特徴は以下の通りです。
- 反応程度はやや小さく、反応方向はやや素直です。
- 追撃は早期参加・短期利確に適しており、発表から1分経過後の追撃には適していません。
- 本指標の市場予想は高めに発表されがちです。
- 直後1分足は発表結果が市場予想を上回るか下回るかに素直に反応しがちなものの、直後11分足は発表結果が前回結果を上回るか下回るかに反応しがち、という特徴があります。
調査・分析結果は以下の通りです。
- 本指標には妙な特徴があります。
すなわち、市場予想が前回結果より高かったことが80%にも上がります。その結果、発表結果が市場予想予想を下回ったことが63%となっています。本指標は市場予想が高めに予想されがちです。 - 直前1分足跳幅が8pips以上となったとき、直後1分足は20pips以上の跳幅となる可能性が高い、と思われます。
- 直後1分足と直後11分足との方向一致率は79%です。そして、この79%の方向一致時だけを取り上げて直後1分足と直後11分足とを比較すると、跳値同士で反応が伸びたことは78%です。また、この78%のときの直後11分足跳幅平均と直後1分足終値平均の差は10pips以上が見込めます。
つまり、本指標発表後、反応方向を確認したら早期参加して、直後1分足終値以降に利確した方が良さそうです。あるいは、初期反応で1回利確し、指標発表直後1分間の押し目で再追撃をし、直後11分足跳幅を狙って、直後1分足終値がついて暫くしてから再利確、という展開が望ましいようです。 - なぜなら、直後1分足と直後11分足を終値同士を比べると、両者方向一致時こそ反応が伸びる確率が70%あるものの、方向一致せずに反転した場合も含めると、直後1分足終値がついた時点で直後11分足終値が伸びる確率は55%しかありません。
つまり、前述の早期参加は、直後1分足終値がついてから早期に利確しないと、せっかくの含益を失う可能性が約45%にも達します。 - また、実態差異と直後1分足・直後11分足の方向一致率は各60%・70%となっていることに注意が必要です。
これは、本指標が発表から時間が経つに従って、前回結果に対する良し悪しに反応の理由が変化します。市場予想を上回るものの前回結果を下回ったり、その逆だったりしたときは、反応方向が反転する確率が高いということです。
以上の調査・分析結果に基づき、以下のシナリオで取引に臨みます
- (1) 直前1分足は陰線と見込みます。
- (2) 直後1分足は陰線と見込み、指標発表前にポジションを取得します。
但し、直前1分足跳幅が8pipsを超えるようならば、取引は中止します。 - (3) 追撃は、反応方向確認次第実施し、早期利確します。
発表から1分以内なら再追撃ポジションを取り、直後1分足終値がついたら利確のタイミングを探します。
そして、発表結果が市場予想を下回った場合にのみ、再々度の追撃も可とします。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「?T.調査・分析」に記しています。
?T.調査・分析
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
【1. 指標概要】
NY連銀管轄のNY州製造業約200社の経営者の景況感と現状を指数化した指標です。
具体的内容は、仕入価格・販売価格・新規受注・出荷・入荷遅延・在庫水準・受注残・雇用者数・週平均就業時間などの11項目を、1ヶ月前と比較した現状と6ヶ月後の期待を、「良い」「同じ」「悪い」から選択して指数化したものです。
数値は0を分岐点に景気改善(+)・悪化(−)と読みます。
製造業景気指数は、NY連銀製造業景気指数→Phil連銀製造業景気指数→リッチモンド連銀製造業景気指数→シカゴ購買部協会景気指数→ISM製造業景気指数があります。ISM製造業景気指数の先行指標がPhil連銀製造業景気指数で、Phil連銀製造業景気指数の先行指標がNY連銀製造業景気指数、という話があります。
本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。下図は発表結果と市場予想をプロットしています。そして、発表結果は後に修正値が発表されても、このグラフでは修正していません。
グラフを一見すると、「市場予想後追い型」に見えなくもありません。確認しておきましょう。
市場予想後追い型とは、発表結果が上昇基調ならば市場予想がそれを下回り、発表結果が下降基調なら市場予想がそれを上回り、あたかも市場予想が発表結果を追いかけているように見える指標のことです。こうした指標でもし、事後差異(発表結果ー市場予想)の入れ替わりが少ないことを確認できれば、発表結果が市場予想を上回りがちか下回りがちかを事前に予想できます。
確認した結果、調査期間において事後差異のプラス・マイナスが入れ替わったことは29回中14回(48%)です。一見すると、市場予想後追い型のグラフにも見えますが、意外に発表結果と市場予想の大小関係の入れ替わり頻度が高いことがわかりました。
本指標は、現在、市場予想後追い型ではありません。
(2-2. 過去反応)
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
まず、直前10-1分足は、過去平均跳幅が7pips、過去平均値幅が5pipsです。
跳幅が平均の2倍にあたる14pips以上だったことは過去3回あります。この3回の直後1分足跳幅の平均は11pipsで、これは直後1分足の過去全平均14pipsに達していません。よって、直前10-1分足が通常よりも大きく反応したとしても、指標発表直後の大きな反応を示唆している訳ではありません。
次に、直前1分足は、過去平均跳幅が4pips、過去平均値幅が3pipsです。
跳幅が平均の2倍にあたる8pips以上だったことは過去3回あります。この3回の直後1分足跳幅の平均は19pipsで、これは直後1分足の過去全平均14pipsの約1.4倍にあたります。よって、 直前1分足が通常よりも大きく反応したとき、指標発表直後の反応はやや大きくなる可能性があります 。
陰線が目立つので、後述する反応一致性分析で陰線率を確認しておきましょう。
そして、直後1分足は、過去平均跳幅が14pips、過去平均値幅が11pipsです。
過去平均の14pipsを超えたことは40%で、21pipsを超えたことは20%しかありません。よって、本指標は 大きく反応することが滅多にありません 。
直後11分足は、過去平均跳幅が21pips、過去平均値幅が15pipsです。
平均値を見る限り、直後11分足の跳幅は10pips以上、値幅平均は4pips以上、直後1分足終値平均を上回ています。単なる差でなく「以上」と記したのは、これら平均値が直後1分足と直後11分足が反転したことも含めた平均となっているためです。
ともあれ、 直後11分足跳幅平均と直後1分足終値平均の差が10pipsある以上、追撃時の利確は直後1分足終値がついてからの方が良さそうです 。
【3. 定型分析】
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は 「反応性分析」 をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は 「反応一致性分析」 をご参照願います。
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は 「指標一致性分析」 をご参照願います。
反応性分析の結果を下表に示します。
指標発表後の反応の大きさは、ほぼ安定しているようです。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は79%です(上図表記は77%となっていますが、79%です。誤記差替えができず、申し訳ありません)。そして、方向一致時だけを取り上げて直後1分足と直後11分足とを比較すると、跳値同士・終値同士で反応が伸びたことは各78%・70%です。つまり、本指標は 指標発表時点から見る限り、反応方向を確認したら早期参加しても、そのまま反応が伸びる確率が高い 、と言えます。
そして次に、直後1分足終値がついた時点で考えてみます。この時点では、既に反応が伸び続ける確率が55%しかありません。つまり、 前述の早期参加は早期利確しなければ含益を失う可能性も約45%にも達します 。
次に、反応一致性分析の結果を下図に示します。
直前1分足は陰線率が88% となっています。がしかし、過去平均の跳幅が4pipsしかありません。取引するなら欲張らないことです。
そして、反応性分析に挙げた直後1分足と直後11分足の方向一致率79%を除けば、あるローソク足と他のローソク足との方向一致率が30%以下もしくは70%以上になっているのは、直前1分足と直後11分足の方向一致率28%(不一致率72%)だけです。つまり、 直前1分足が陰線ならば、直後11分足は陽線となりがちです 。
最後に、指標一致性分析の結果を下図に示します。
本指標には妙な特徴があります。事前差異が80%もの高率でプラスとなっています。ところが、事後差異のプラス率は37%しかありません。つまり、 本指標では市場予想が高めに予想されがちです 。
そして、事後差異と直後1分足の方向一致率が72%で、 市場予想に対し発表結果の良し悪しにほぼ素直に反応します 。
がしかし、実態差異と直後1分足・直後11分足の方向一致率は各60%・70%となっています。これは、本指標が発表から時間が経つに従って、前回結果に対する良し悪しに反応の理由が変化します。 市場予想を上回るものの前回結果を下回ったり、その逆だったりしたときは、反応方向が反転する確率が高いということです 。
【4. シナリオ作成】
巻頭箇条書きのシナリオの項をご参照願います。
以上
2017年7月17日21:30発表
以下は2017年7月18日に追記しています。
?U. 結果・検証
【5. 発表結果】
(5-1. 指標結果)
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は前回・市場予想を下回り、反応は陰線でした。
(5-2. 取引結果)
記事を書いていたら、発表時間が過ぎていました。何のための分析だが…
【6. 分析検証】
(6-1. 分析検証)
取引はしなかったものの、事前調査分析内容を検証しておきます。
- 今回も市場予想は高めでした。
- 直後1分足と直後11分足とは逆方向でした。もし順張り追撃するなら、早期参加・早期利確が正解でした。
- 直後1分足と直後11分足とが反転しました。
但し、今回は前回・市場予想のいずれも下回っていたので、反転理由が事後差異から実態差異への変化ではありません。
(6-2. シナリオ検証)
事前準備していたシナリオで取引していたら、次のようになっていたでしょう。
- (1) 直前1分足は陽線で、1pipsの損切となっていたと思われます。
- (2) 直後1分足は陰線で、3-4pips程度の利確となっていたと思われます。
- (3) 追撃は、反応方向確認次第実施し早期利確していたら、1pips程度の利確となっていたと思われます。
発表から1分以内の再追撃であっても、時間が経ってからでは1-3pipsの損切となっていたと思われます。再々追撃を行っていたら、5pips程度の損切となっていたでしょう。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は 「1. FXは上達するのか」 をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上
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