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2024年3月刊角川ビーンズ文庫著者:佐倉紫さん天才と呼ばれ、18歳で首席聖女となったミーティアに左遷命令!一人で中央神殿を支える負担からの解放に喜びの笑顔で旅立ったミーティアは、左遷先で【女神の加護】を放棄して戦う騎士リオネルと出会う。二人は共感し距離を縮めるが、ミーティアは力と共に与えられた【女神の神託】を打ち明けられずにいて……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物ミーティア=自他共に認める天才聖女。首席にまで登り詰めたがボランゾンに煙た がられ地方の神殿に飛ばされた。 リオネル=王国騎士で魔物退治専門部隊の隊長。ボランゾン=首席聖職者。ミーティアを地方に左遷した。18歳の若さで首席聖女となったミーティアは規格外の力の持ち主。癒しの力は勿論、結界まで他の聖女と比べても突出している上、努力も怠らない。周囲からも尊敬され頼れる存在であった。今日も運び込まれる大勢の騎士達を治療していた彼女は寝る間もないほどの忙しさにうんざりしていた。近年、地方に魔物の襲撃が増え、騎士達がその対処に当たっているせいとは承知しているものの、本来なら結界の役割を果たしている【杭】が正常に機能しているならば魔物の侵入など有り得ない事なのだ。毎日のお勤めに加えて、ひっきりなしに治癒の力を使っていたらこちらの身が持たない。だから常々【杭】の視察に行きべきだと上層部に進言していると言うのに。そんなある日、ミーティアは突如首席聖女の称号を剥奪され地方の神殿への左遷を命じられた。筆頭聖職者・ボランゾンの宣言に神殿は騒然。誰がどう見ても彼女ほどの力を持つ者はおらず、彼が上げ連ねた称号剥奪の理由は完全に言いがかりだったから。当然、ミーティアも異議を申し立てたが決定は覆らない。正直、ここ数年のボランゾンの言動や取り決めには辟易していたし、人一倍仕事をしていた自分にこの仕打ちはあり得ない。地方に行けと言うならそこで好きにやらせてもらおう。この国で国王以上の地位を持つボランゾンを散々言い負かし、首席聖女の重責から逃れることができたとミーティアは意気揚々と中央神殿から去ったのだった。しかし、派遣先の地方第五神殿に彼女は辿り着けなかった。というのも、あふれ出た瘴気によって周辺に住む者たちは皆避難しており、馬も怖がって進もうとしない。魔物まで現れて危機に陥ったミーティアを救ったのはリオネルと名乗る騎士と彼が率いる魔物退治専門部隊の面々。彼らの話によれば目指していた第五神殿は魔物の襲撃で焼失していて、行っても無駄だと言う。その後、治癒を施し、結界や護符の力を有難がられた彼女はリオネルたちと行動を共にすることに。この近辺に【杭】の一つがあるはず。だが、いざ現地に赴くとそうそう破損するはずの無い【杭】が真っ二つにへし折られて中に入っていた【神樹】の樹皮が散らばっていた。本来なら定期的に聖女の祈りを捧げなければいけないものだとしても効力を失うだけならともかく、こんな壊れ方をするのはおかしい。一先ず、護符を大量に作成し簡易的な護りを施したが、その次の【杭】も同様に壊されている。ただ事ではないとリオネルと連名で国王宛に調査依頼を出したが、護符が効いているうちに【杭】を修復しないと大変なことになる。運搬用に飼育された魔物・魔鳩が頻繁に隣国デュランディクスを行き来しているのも気になる。そう思っていた矢先、身を寄せていた地方第四神殿にて、傷付いた魔鳩を保護したリオネルたちはその足に括り付けられていた手紙を発見。そこにはミーティアの帰還を請う文章が綴られていて・・・。今回のヒロイン、その口調と実力の高さから完全無欠っぽい印象だったんですが、そこはそれこの作家さんなので不遇な境遇も加味されてました。10歳の時に継母に虐待され殺されかかった彼女は女神によって救われ、その際に神託を受け、聖女の力に目覚めます。神殿に預けられてからのミーティアは努力を重ね筆頭聖女にまで登り詰めたものの、神樹と杭の扱いについて進言し続けていたら左遷の憂き目に。そこでヒーロー・リオネルと出会い、次第に惹かれていく二人。そしてリオネルにも辛い過去があり、魔物退治専門部隊に入った経緯が読んでるともうなんかもう胸が痛い。シチュエーション的に某〇撃の〇人の1シーンを思い起こしちゃってねぇ。ミーティアの強すぎる力の所以も後に判明し、終盤は騒動の元凶とも対峙。あんな小物は「救国の聖女」に適うわけがないって感じで大勝利を収めて終わっています。魔鳩のポーちゃんが可愛かった。評価:★★★★★
2024.03.10
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2023年12月刊ビーンズ文庫著者:綾束乙さん推し活中の事故で転生した公爵令嬢エリシア。黒髪黒目のせいで「邪悪の娘」と蔑まれる日々--だけど聖女とバレずに推し活に励めるなら問題なし! 憧れの王太子レイシェルト様を推す資金稼ぎに、変装してこっそり祓いの力を使って街で働き中。ところが謎の美青年レイに出会った後から、なぜかレイシェルト様と急接近!? 陰から見守るだけで満足なのに推しが甘すぎて死にそうです! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用 登場人物 エリシア=公爵家の長女ながら黒髪黒瞳のせいで「邪悪の娘」と家族から疎ま れている。前世の記憶があり元は現代の日本人だった。レイシェルト=王太子。清廉潔白な性格で皆に慕われている。 ジェイス=伯爵家の子息で町人街の警護隊長を務めている。 セレイア=エリシアの妹。聖女の力を持つ。 マルゲ=エリシア付きの侍女。出来の良い兄と比べられ母に疎まれていた細瀬絵里。ある日彼女は外出先で機嫌の悪い母と遭遇。唯一の癒しだった推し活を咎められた上に応援グッズを詰め込んだカバンを捨てられそうになり、弾みで川に転落した挙句命を落とした。わずか17歳で幕を閉じた絵里の人生だったが、気付くと彼女は異世界の公爵家の長女に転生していた。前世では母と折り合いが悪く何かと抑圧されていたけれど、今度こそ幸せにと思いきや、エリシアと名付けられた今世もなかなかのハードモード。聖女が産まれると予言されていたサランレッド公爵家。夫人はそれはそれは喜び期待していた。が、いざ産まれてみると女児ではあったが黒髪黒目のなんとも不吉な子で半狂乱に。聖女ではなく「邪悪の娘」が産まれるなんてと夫人はエリシアを嫌い、産まれたばかりの我が子を抱くことも無く遠ざけた。2年後、夫人は金髪碧眼の第二子を出産。神殿の鑑定の結果、その子は聖女の力を持つことが証明され、両親はセレイヤと名付けた次女を溺愛、それこそ自分たちの子はこの子だけとでも言うように。一方、エリシアは邸の敷地内にある小さな離れで育ち、身の回りの世話係は専属侍女のマルゲのみ。15歳になり、妹のついでに2年遅れで社交界デビューしたものの、公の場では貴族達からの視線が痛いこの国の建国神話に登場する悪役・邪神ディアブルガが黒髪黒目だったそうで、黒は不吉の色とされており稀に産まれるエリシアの様な子は差別の対象だった。親でさえいない者扱いしているのだから、そりゃこうなるよね。針の筵状態な場ではあったものの、何とか無事終にわり帰ろうとした彼女は、王太子・レイシェルトと遭遇。その見目麗しさと前世の推し様そっくりの美声に衝撃を受けた。そして何より彼はエリシアを嫌悪の目で見ることもなく気遣いの言葉までかけてくれた。この人こそ、今世での私の推し様っ。家族に疎まれ、何の楽しみの無い人生を送るのかと思っていたエリシアは、こうして唯一の生き甲斐を見つけたのだった。あの出会いから2年、マルゲに呆れられながらも推し活に励むエリシアは、そのための資金調達のために顔を隠し特技を生かしたバイトに精を出していた。産まれて早々に遠ざけられて育ったので、家族は彼女が聖女の力を持っていたのに気付かなかった。おかげで聖女のお務めはしなくて済む。巷では封じられている邪神から滲み出る黒い靄が人間に取りつき心身を蝕んでいるらしい。体に不調も出るので、悩み相談と称して礼金を貰いそれを浄化しているのだ。割と繁盛していて、これでまたレイシェルト様が運営している救護院にも寄付できるし、画家に依頼した彼のデッサン画も買えると言うもの。今日もそこそこ稼げたと、マルゲに怒られる前に帰らねばと思ったら、フード姿の一人の青年が診て欲しいと言う。悩みを聞くに、色々功績を挙げているものの、称賛されるのは自分の身分のせいではというもの。高位貴族出身の騎士かと思い、手を見れば努力の跡とすぐ判る剣によるタコがあちこちにあった。ちゃんとみんな分かってますよ、と青年も靄に侵されかかってたので浄化してやると、彼は感動していた。それにしてもこの声。お礼に銀貨もくれて送るとまで言われ丁重に辞退したが、殿下がこんなところにいるわけがない。しかし、後日、レイシェルトを見るために参加した舞踏会にて起こったトラブルを切欠に、王妃とレイシェルト、その弟・ティアルトのお茶会に招待されたエリシア。当日は王太子自ら屋敷に迎えに現れて公爵家は騒然。彼はエリシアの扱いが良くない事を察したようで、家族に釘を刺していた。やはり清廉潔白な方だと推し様の尊さに内心打ち震えていた彼女だったが、いざお茶会ではレイシェルトはエリシアに随分と甲斐甲斐しく、愛しくて仕方ないと言う態度。それを王妃が微笑ましく見ていて、この好待遇ぶりが解せない。本人は気付いていなかったが、あのまじない師がエリシアだと彼にはしっかりバレていて・・・。不遇ヒロインが王太子に見初められるというシンデレラストーリーです。それにプラスして転生、聖女、と人気ジャンルてんこ盛りな今作。公爵家の面々に腹が立ちますが、ラスト間際でエリシアも聖女と知れてしまったのとレイシェルトの恋人になったので手のひら返しそうな予感。読み終わってなんか色々解決してないなと思ったら、どうやらシリーズものっぽいですね。そりゃそうか、多分エリシアが伝説級の聖女なので、後に邪神復活みたいな大事件が起こるはず。レイシェルトがエリシアに惚れたのは、身分コンプレックスを拗らせていたのを、彼女のアドバイスで昇華できたからなんですが、初対面時にも好感を抱いていたからでした。可愛いからね、エリシア。ジェイスにも惚れられてたし、続編にはまた当て馬キャラが出て来そうな予感。評価:★★★★☆最近の女性向けラノベの傾向かコメディっぽいタイトルながら割とシリアスな内容でした。
2023.12.14
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2023年6月刊ビーンズ文庫著者:佐崎咲さん伯爵令嬢・ジゼルは突然の王命で、冷酷と噂の公爵・クアンツに嫁がされる。ところが彼女を出迎えたのは、言葉を話す子犬ーーえ、クアンツ様!?呪いで夜だけ犬になってしまうらしく、噂も人避けのための演技。「(かわいいから)人前では笑わないで」って、その本性はただのツンデレです!?かわいすぎる公爵様との新婚生活、呪いを解くため協力し、最高のものにしてみせる! ↑楽天ブックスより、内容紹介文引用登場人物 ジゼル=貧乏貴族の娘。王命にてクァンツとの結婚を命じられる。 クァンツ=王位継承権2位の公爵。 ノアンナ=ジゼルの友人の侯爵令嬢。 マリア=ノアンナの妹。非の打ちどころのない姉に対抗心を持つ。 サーヤ=黒魔女。クァンツに、ある呪いをかける。痩せた領地のせいで実入りが少なく、凡そ伯爵令嬢らしからぬ貧乏生活を強いられているジゼル。しかし、おかげで体力精神共に鍛えられた。とはいえ、友人・ノアンナの名誉を守るために王太子に意見してしまったのは拙かったか。彼女は自分のせいでジゼルにお咎めが行ったらどうしようと心配していたが、その予感は的中。翌日、王宮に呼び出されたジゼルは国王から、甥であるシークランド公爵・クァンツに嫁ぐよう命じられたのだった。貧乏故に社交界とは縁のないジゼルでも、クァンツの噂は耳にしている。人嫌いで滅多に公の場に現れず、縁談も悉く断っていると言う。もし仮に結婚するならばと妥協して彼が提示している条件もとにかく厳しいし、端から妻を迎える気は無いのだろう。そんな相手と自分が結婚とは。しかしながら王命に逆らうのは論外、その足で公爵邸へ向かったジゼルだったが、出迎えたのはモフモフの小型犬。言葉まで話すその犬は、語る内容からしてどうやらクァンツその人らしい。よくよく事情を聞くに、彼は以前魔女に惚れられ、ある呪いを掛けられたのだそうだ。それは、結婚すると犬になってしまうというもの。信じ難い話だが、当の魔女も現れてご丁寧に呪いの解呪法も教えてくれた。彼を真に愛する者からの口づけを受ければ呪いは解ける。そこで命令とはいえ、妻となったジゼルが協力することになり・・・。コメディ寄りのお話ですが、ヒーロー・クァンツが結構チョロくて、ジゼルに落ちるのも早かったw犬の姿になるのは夜のみと判ったものの、魔法で無理矢理変化させられ続けるのは体にも良くない。できれば早い事呪いを解かないと、と奮闘する二人。しかし、真に愛してるって誰が判断するの? 当のジゼルは疑問に思いながらも、クァンツの為人を知るうちに心惹かれて行きます。でも、本人達の知らぬ間に王位継承権に纏わる争いに二人は巻き込まれて行き、な感じで物語は進行。内容自体は面白いんですが、全てが片付き、いざ種明かしってことで語られた国王たちの思惑が少々回りくどくて分かり難かったのが惜しい。勿論、ジゼルの思いがけない言動のせいで色々予定と狂ったってのもあるんでしょうけども。呪いの解呪や、魔女との決着の流れは良かったと思います。評価:★★★★☆
2023.06.16
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2023年6月刊ビーンズ文庫著者:まえばる藤乃さん戦争で両親を失って、敵対する侯爵家へ形だけの「白い結婚」で嫁いだクロエ。虜囚同然の五年を終えた彼女を迎えたのは、氷に閉ざされた辺境の主・セオドアだった。幼い頃に慕った「初恋のお兄さま」そのままの優しさに、ぼろぼろのクロエの心は救われていく。そんな時、離縁したはずの侯爵家の手が迫り!?「あの時、駆け出して君を攫いたかった」叶わなかった運命を再び手繰り寄せるためにーー再会シンデレラ・ロマンス! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 クロエ=とある理由で、敵対する侯爵家の嫡男と5年間の契約で「白い結婚」を した侯爵令嬢。セオドア=辺境伯家当主でクロエの元婚約者。 ノエル=クロエの兄で宮廷魔術師。ディエゴ=クロエの夫。こちらも発売日から日が浅いのでざっくりと。マクルージュ侯爵家の長女・クロエの幸せな生活は、9歳の時に起きた戦争により終わりを告げた。先ず、国境を守る辺境伯領にいる婚約者・セオドアと連絡が取れなくなり、戦争は膠着状態に。2年後、侯爵家では当主夫妻が相次いで亡くなった。兄・ノエルが爵位を継いだものの、この国には兵役ならぬ魔術師役なるものがあり、魔術の才があるものは5年間宮廷に詰め、魔術師として働かなければならない。マクルージュ家は代々優秀な魔術師の家系で、当然ノエルには魔術師役が課せられたのだった。しかも、一人残されるクロエは次代の魔術師を産むための駒として、他の魔術師家門の元へ嫁に出す案が上層部で出ており、ノエルは妹を守るべくとある計画を実行した。それは、マクルージュ家と敵対するストレリッィ家の長男・ディエゴとクロエの婚姻。だが、飽く迄も「白い結婚」であり、形だけの契約妻としての輿入れだった。対価としてマクルージュ家の財産全てを譲るからと。一先ず結婚させてしまえば上層部も手を出せない。その後間もなく、クロエはマクルージュ家の家令・サイモンを連れ、ひっそりとストレリッィ家に嫁いだ。それから5年。前ストレリッィ家当主夫妻の介護や、領地管理などすべての面倒事を引き受けていたクロエは漸く無事、契約期間を終えた。ディエゴには愛人がおり、その間に娘も設けていて、クロエのことは放ったらかし。だが、たまに帰宅すれば暴言や文句ばかりだったし、既に鬼籍に入っている前当主夫妻には相当虐められた。働きづめで慢性的に体調が悪く痩せ細ってしまったが、これでこの家と縁が切れると思うと気持ちも軽やかだ。ノエルが迎えに来てくれて、漸く兄と暮らせると思いきや、彼はクロエにヘイエルダールへ行けと言う。そこはクロエの元婚約者・セオドアが治める地だった。今更自分が世話になっても良いのだろうか。しかし、ノエルの薦めで彼女はサイモン共々、かの地へと向かうことに。ヘイエルダールでは、久しぶりにセオドアと再会。昔から親交のあったマクルージュ家の娘と言うことで領地民達にも歓迎されたクロエは、セオドアの屋敷で過ごすうちに健康と本来の自分を取り戻して行った。それから数か月、セオドアが養子にした子供たちとも打ち解け、穏やかに暮らしていたクロエだったが、その裏でセオドアとノエル、サイモンたちは、ストレリッィ家の前当主が企んだ陰謀を暴くべく奔走していた。それは、マクルージュ家を追い込み、没落の原因となったことで・・・。不遇ヒロインが、元婚約者のヒーローと幸せになる話です。元夫の侯爵家の面々がとにかく酷い。元々不仲でお互い敵認識してた間柄だったのもあるんでしょうが、元当主はそこまでする?って感じで、ヒーロー達でなくともヒロインのことを思うとやりきれない。よく5年も我慢したよ。あのお兄ちゃんも、そんな家に財産まで譲らずともとは思いましたが、実はこれには仕掛けがあって、頭が悪い元夫はそれに気づかず破産の憂き目に。でもそれはヒロインと離婚しなければ回避できると、どの面下げてか彼女を連れ戻しに来るんですけど誰が返すかボケっ(ヒーローたちの心の声)ってことで、彼らに散々これまでのことを糾弾され追詰められていた様は痛快でした。結構なザマァぶり。元夫の愛人も根は悪い人じゃなかったし、ヒロインのモノローグのおかげで大分印象が変わったかも。最期は大団円だったけど、この国の規律みたいなものがどうにも馬鹿らしく、そのおかげでヒロイン達は追い込まれちゃったのを思うと、元は小国だったらしいヒーローの領地独自の法律が今後のヒロインの身の振り方の助けになって良かった。評価:★★★★★セオドアの一途ぶりがイイ。
2023.06.12
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2023年5月刊ビーンズ文庫著者:shiryuさん家族に虐げられ、身代わりに魔物がはびこる辺境へと送られたルアーナ。無駄死になんて絶対嫌!と隠していた光魔法の使い手として自分を売り込み、やがて聖女として認められるように。「俺が必ず、守ってやる」辺境伯子息・ジークハルトのツンデレな優しさに、人の温かさを思い出して…。そんな時、かつての家族と再会してしまい!?私の「家族」は辺境伯家だけです!捨てられ令嬢が本当の幸せを掴む、下剋上ストーリー! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 ルアーナ=伯爵家の婚外子だったことから家族に疎まれ、厄介払いで危険な辺 境伯領へ魔導士として派遣された。ジークハルト=辺境伯家の跡取り。 クロヴィス=ディンケル辺境伯家の当主。 アイル=辺境伯夫人。魔導に長けたアルタミラ伯爵家の娘として産まれながら、婚外子だったことから家族に疎まれ虐げられて育ったルアーナは、15歳になったある日、両親の命令で魔導士として辺境伯領への派遣を命じられた。かの地では現在魔物が蔓延っており、ディンケル辺境伯率いる騎士や魔導士達がその侵攻を防いでいるのだそうだ。それに伴い、王命にて各家から援軍としてそれぞれ優秀な魔導士を派遣することとなったのだが、当然可愛い我が子を危険な地へ送るなどしたくない。そこで、彼らの身代わりとしてルアーナを差し出すことにしたのだった。両親にしてみれば、厄介者の処理も出来て一石二鳥との考えなのだろうが、当のルアーナにしてみれば思惑通りに早死にするなんてまっぴら。地水火風の四属性が主なこの世界で、珍しい光魔法が使える彼女は、辺境伯に自らを売り込むことに成功。訓練を積めば生き残る確率も高くなるし、光魔法は魔物にかなりの効果があった。やがてルアーナは「聖女」と呼ばれるように。月日が経ち、辺境伯の息子であるジークとも、喧嘩友達から段々良い雰囲気になり始めた頃、ルアーナはクロヴィスからある頼みごとをされた。それは魔物による毒<魔毒>を受けたことにより、昏睡状態のままの辺境伯夫人・アイルを光魔法で治療して欲しいのだと・・・。居場所の無かった少女が、辺境の地で自らの存在意義と新しい家族を得ると言うお話です。ジャンル的には不遇ヒロイン+聖女ものかな。おそらく、ジークとくっついてハッピーエンドになるんだろうと思いますが、ルアーナの実家が今後何かやらかしそうではあります。そもそも、厄介払いで追い出したくせに、多大な功績を挙げて褒賞を貰うとなったら手のひら返すって、まず人としてどうなのよ。ルアーナの受けていた仕打ちの仕返しで、クロヴィス達が裏で暗躍し、伯爵家を追い詰めていたりするのを見るに、ルアーナはディンケル家の面々に愛されてる。ホント、この手のお話は大抵赤の他人たちの方が優しいよね。目覚めたアイルさんも結構ぶっ飛んだ人で、何が何でも息子とルアーナを結婚させるべく画策。そう気を揉まなくとも、ルアーナが自覚したらトントン拍子に上手く行きそうですが。続編もあるそうなので、恋の顛末等は次回へ持ち越しの模様。コミカライズ化も決定。評価:★★★★★
2023.05.25
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2023年4月刊ビーンズ文庫著者:神楽棗さん前世で書いた小説に転生し公爵令嬢となったレリア。冷たく無表情な義弟ルディウスをいじめて殺される未来を回避するため彼を可愛がると決意。しかしどんなに努力しても無関心で全く変化がなくーーと思いきや「一人の男として俺を好きになって欲しい」ってそんな無愛想で一体いつから!?しかしレリアにはルディウスの手を取れない事情があり……。クールだけど実は可愛い義弟が世話焼きな元悪役姉を重溺愛するラブコメ! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 レリア=公爵家の長女。 前世は現代人で自身が書いた小説の世界に転生した。 ルディウス=レリアの義弟で王宮騎士。小説では王太子のライバルキャラ。シルヴィード=王太子。小説のヒーロー。 マリエット=小説のヒロイン。自分が書いた恋愛小説の脇役に転生した鈴彩。よりにもよってヒーローのライバルキャラ・ルディウスの義姉で、物語の終盤に彼に惨殺されると言う役回り。だが、幸いにもこの事実に気付いたのは二人が初め出会った時のこと。親同士の再婚で姉弟という関係になったレリアは、ルディウスを苛め抜き、彼をヤンデレキャラへと歪ませてしまう。それが後の自身の破滅に繋がるのだけれど、何のことはない、そのフラグをへし折ってしまえばいいのだ。幸いなことに、ここは自分が創作した世界。今後の展開含め全て熟知している。所謂意地悪な義姉にはならずに、ルディウスを構い優しく接する。そうすれば彼は真っ当に育つはず。実のところ、この両親の再婚もかなりの裏事情があり、レリアがルディウスを虐めたのもそこに一因があったのだが、生き残るためには筋書きを変えるのは止む無し。努力の甲斐あって、ルディウスとの仲もまずまず。騎士となり、その給料でドレスを仕立ててくれたのには心底驚いた。揃って出席した舞踏会ではやたらと周囲を牽制していた上、レリアを気に入った風な王太子を露骨に嫌がっている。そもそも自分がそんな対象になっているとは考えもつかないレリアは、ルディウスからの露骨な求愛行動に全く気付いていなかった。ルディウスは本来のヒロイン・マリエットにすら無関心で、逆に彼女に惚れられる始末。実は思い込みが激しくウザキャラだったマリエットがルディウスに付き纏っていた頃、レリアたちの周囲ではトラブルが多発。そんな最中、ルディウスの実母である前公爵夫人と、レリアの実父の伯爵の死亡事故が何者かの策略ではないかとの疑惑が急浮上し・・・。終始コメディ調ではあるんですが、裏ではとある陰謀が動いていたりとシリアス展開も。内容としてはタイトル通りのお話です。血の繋がりのない義弟に溺愛され守られるヒロイン。このヒーロー、なんとしてもヒロインと結婚すべく、その方法を模索。とにかくヒロインさえいればいいと、非常な決断を下すのですが、そこに至るまでの終盤のミステリ風な展開も面白かったです。本来のヒロインであるはずのマリエットも色々やらかしてザマァされてたし、読んでてかなり痛い子だと思ってただけに、ちょっとスッキリ。割とよくある悪役令嬢ものであるものの、オーソドックスだからこそ面白い。評価:★★★★★楽天でナンバリング付いてたので続編あるんですかね。
2023.05.01
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2023年2月刊ビーンズ文庫著者:陽炎氷柱さん妹に婚約者を寝取られた伯爵令嬢アマリアは、ヤケで参加したパーティーで酔い知らない男性に婚約破棄したいと愚痴をこぼした。翌朝彼が公爵イルヴィスだと知るが、彼はなぜか婚約破棄に協力してくれる。無事に婚約破棄を達成ーーって、え? 私と婚約したい!?「こんなにも貴女に夢中なのに。嫌ですか?」嫌じゃないから困っているんです!甘い言葉で口説きつづける一途で隙のない公爵に溺愛されっぱなしの人生逆転ラブ! ↑楽天ブックスより、内容紹介文引用登場人物 アマリア=ローズベリー伯爵家の長女。イルヴィス=ランベルト公爵。アマリアに手を貸す。 オリビア=アマリアの妹。ウィリアム=ウスター侯爵の三男でアマリアの婚約者。TL小説ではなくラノベです。伯爵家の長女・アマリアは最近理不尽な目に合ったことから、精神的に疲れ果てていた。本来なら婚約者同伴で参加するはずのパーティーに一人で参加したのも、気分転換と憂さ晴らしのため。とはいえ、ワインを何杯飲んでも一向にモヤモヤは収まらない。そんな彼女に酔い覚ましの果実水を手渡し、話し相手になってくれた青年がいた。彼はイルヴィス・ランベルトと名乗り、聞き上手な彼に、先日起こった自らの不運話を語って聞かせた。ウスター侯爵家の三男・ウィリアムと婚約して10年。両家共にそろそろ結婚をと日取りを考える段階になってアマリアの妹・オリビアがウィリアムにちょっかいを出し、深い関係になってしまった。何かとアマリアに嫌がらせをする性悪な妹ではあったが、まさか姉の婚約者を寝取るとは。当然、騒動にはなったが、伯爵家はウスター家と縁を切るのは論外と、この件は不問とし、婚約は継続すると言う。だが、アマリアにしてみれば冗談ではない。先ずウィリアムの人間性が最早信用できないのに、こんな男と結婚して家を継ぐなんて真っ平。なのに、両親はどうあっても婚約破棄に応じないので、ストレスでどうにかなりそうだ。家の恥をつい見知らぬ青年に話してしまったが、おかげで幾分スッキリした。ヤケ酒の理由を最後まで聞き終わったイルヴィスは何を思ったのか、この婚約を破棄すべく力を貸すと申し出た。彼にしてみれば何の得も無いのに、好意は嬉しいけれどそこまで迷惑をかけるわけには、とアマリアは渋ったものの、ウィリアム達を懲らしめ婚約破棄に持ち込むことはイルヴィスにも益があるらしい。そこまで仰るならばと、アマリアは彼の申し出を受け入れるのだった。翌朝、酷い二日酔いで絶不調だったアマリアは、早々にイルヴィス発案の作戦が展開していることを知った。それ以前に、彼が公爵だったことに驚いたが、その身分は大いに役に立った。理不尽な理由でアマリアを雁字搦めにする両親も、友人としてアマリアの婚約者の不義について言及すると答えに窮していたほど。当のオリビアは美青年のイルヴィスに早速媚びていたが、姉の物を欲しがる癖は健在のようだ。ウィリアムの件で厳しく両親に怒られたと言うのに反省の色も見せないとは。イルヴィスは伯爵家の実情をその目で見て、アマリアの置かれている立場を理解したようで、二人きりになった時に彼女に作戦の概要を説明。先ずは自分たちが友人以上の関係であるのをほのめかし、ウィリアムを煽って怒らせ婚約破棄に持ち込むというシンプルなものだ。後日、相手が単純な為、あっさり思惑通りに婚約破棄にはなったが、それを待っていたかのようにイルヴィスがアマリアに求婚。公爵夫人になってほしいと申し込んで来た。だが、それを見てオリビアが妬み、イルヴィスを姉から奪おうとウィリアムを焚き付けたことから、アマリアに危機が迫り・・・。お話そのものはよくあるパターンではありますが、婚約者に裏切られ毒親と妹に翻弄され続けていたヒロインが開き直って精神的に強くなっていく様が痛快でした。勿論、そういう心境になれたのもヒーローの支えがあったればこそ。婚約者も堅実なヒロインに一途にいれば、あんな結末にはならなかったろうに、ホント浮気はダメ、絶対。ヒロインの妹は本当に考えなしな単純な子なだけにヒーローの思惑に見事に嵌り、芋づる式に毒親もかなりの罰を受けることに。これ、ヒロインが前妻の子とか言うならまだ、不仲なのも判るんですけど正真正銘血が繋がってるのが怖い。よくヒロインもまともに育ったな。この家族、碌な人間じゃないと思っていたけど、犯罪にも手を染めていたし処刑されなかっただけマシと思わなければ。全てが片付き、ヒーローとヒロインは正式に婚約して終わり。終盤の騒動やヒーローの隠された事情や思惑など、気になる方は読んでみてください。元はカクヨミで掲載されていたお話だそうで、書籍化に伴い大幅な加筆訂正と書下ろしの短編も収録されています。評価:★★★★☆ザマァ系がお好きな方はハマるかと。
2023.03.04
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2022年12月刊角川ビーンズ文庫著者:しっぽタヌキさん異世界転移した疲労困憊会社員・透。目の前には最強ドラゴンと対峙する騎士!しかし透が偶然手をかざすとドラゴンはデフォルメ姿に!?「なるほど。私は魔物をペット化できる」助けた騎士団長ザイラードに『救国の聖女』と歓迎されるが、別の聖女が現れ、偽聖女騒動に!?ザイラードには「あなたが笑うと、うれしいんだ」と微笑まれ、ペットにした魔物たちには懐かれ……穏やかハッピーライフを目指していたはずなのに!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 葉野透=異世界転移して来た会社員。 魔物を小型化させる能力を持つ。 ザイラード=王国第七騎士団長。透が異世界にやって来て初めて出会った人物。エルグリーグ=ギルアナ王国第一王子。 聖女=透と同じく異世界転移でやって来た女子高生。異世界転移+聖女モノです。こちらもつい先日発売の本なのでざっくり目に。嫌味な上司のお小言で疲労MAXだった会社員の葉野透。帰宅途中だった彼女は突然異世界へ転移してしまった。鬱蒼とした森の中で、戸惑う透の目に映ったのはファンタジー映画で見たようなことがあるドラゴン。思わず興味本位に手を伸ばすと大きなドラゴンは瞬く間にトカゲサイズに変化。驚いいたのは透だけではなく、ドラゴンと命がけの対峙をしていた騎士・ザイラードもだった。国境近くのこの森でドラゴンと遭遇し、身を挺して追い払おうとしていたらしい。突然現れた妙な服装の女が狂暴なドラゴンを無害化。彼女はきっと伝説の「救国の聖女」に違いない。ザイラードは救われた礼を述べ、賓客として透を王宮へ連れて行くと言う。聖女として丁重に扱われるべき人だからと。しかし、当の透は事情が呑み込めず内心かなり焦っていた。まさか自分が手を差し伸べただけであんなに大きかったドラゴンがミニマムサイズとなり、おまけに随分と懐かれている。しかも、自分が「聖女」?とは言え、ドラゴンと言い見るからに騎士の形をしたザイラードからしてここは異世界なのは間違いない。現状頼れるのはこのザイラードだけなのだ。この世界の通貨も持っておらず、暮らす家も無いのなら、素直にお世話になった方がいいだろう。だが、案内された詰所には、ドラゴン出現の報せで王宮から魔法騎士団が転移魔法で到着しており、指揮を執る第一王子・エルグリーグとセーラー服の少女が。エルグリーグは少女こそが「聖女」であり、ドラゴンを消したのも彼女だと絶賛。状況を知るザイラードは透こそが「聖女」であると、対立。何だか妙なことになってしまった。その時、ドラゴンがこの地に降り立ったのが刺激になったのか、シルバー・フェンリルまで森に出現。少女は力を示すチャンスとばかりに祈ったが効果はゼロ。結局、透の例のスキルでシルバー・フェンリルまで小型化。ポメラニアンサイズになったそれにまたしても懐かれる羽目に。若さと外見だけの少女ではなく、透が「聖女」だと周りに者たちも納得したものの、王子だけは認めず、少女を「聖女」として王宮に連れ帰ることになった。透は騎士団で厄介になることを望み、2匹の魔物を従えての異世界生活が始まったのだった。共に暮らすうちに透とザイラードとの仲も深まり、彼女は更にアイスフェニックスまで手中に収めます。そうしているうちに、少女の正体が露見。幸い悪意ある存在ではなかったが、魔女に騙されたとエルグリーグは透が「聖女」に呪いをかけたに違いないとあらぬ疑いをかけ・・・。この王子が結構な勘違いヤローで、騒動の元なんですが、最後の報いを思うと憎み切れないキャラでした。行動力はあるのに実力が伴わず、内心コンプレックスだらけ。優秀な身内がいるだけに功を焦る気持ちも判る。それと、ヒロインがかなりポジティブなので、いきなりの異世界転移にも即対応。最強の魔物たちに好かれ、巨大な力も手に入れ恋人までGETとか、元の世界にいた時より幸せだから、未練も無いと言う。彼女達を転移させた「神様」らしき人も気になるし、どうも続編があるっぽい?楽天ではナンバリングが付いてるんですよねぇ。人によっては好き嫌い分れそうな文体でですけど、お話そのものはとても面白いです。そして、かなりコメディ寄りでもあります。評価:★★★★★
2022.12.14
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2022年10月刊角川ビーンズ文庫著者:江東しろさん冷遇された末、夫ユリウスに「死んでみろ」と煽られ自害した元伯爵令嬢ナタリー。気づくとまだ幸せだった十年以上前に時が戻っていた。病と戦争で両親を失い、国を救った漆黒の騎士ユリウスに嫁がされるーーそんな人生はもう嫌! けれど未来を変えようとするたびに予想外の事件に巻き込まれ、なぜかいつもユリウスに助けられて!? 突然「君を守りたい」と言われても困ります……! WEB発大人気逆行転生ストーリー! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 ナタリー=ペディグリュー伯爵家の一人娘。癒しの魔法を使える。 両親亡き後、隣国の公爵に嫁ぎ、10年後に不幸な死を遂げたが死 に戻りを果たす。 ユリウス=ファングレー公爵家の当主でナタリーの夫。 とある事情から妻を遠ざけ続け最終的に死なせてしまう。 エドワード=フリックシュタイン王国の第二王子。 マルク=ユリウスの副官 ミーナ=ナタリー付きの侍女ファングレー公爵夫人 =ユリウスの母。今回はTL小説ではなくライトノベルです。前世では散々な目に合ったヒロインが、死に戻って人生をやり直すお話。戦争の褒賞として隣国の公爵に嫁いだナタリー。そこで待っていたのは地獄の日々。夫であるユリウスは妻を一切顧みず、姑からはモラハラに暴力。食事抜きなど日常茶飯事で、終いには姑の使い込みの罪迄彼女に擦り付けられた。息子を取り上げられ泣き暮らしていたナタリーは体調を崩し、ほぼ寝たきりだったのだが、ある日我慢の限界で夫に直談判。つい「死んだほうがマシ」と口走り、なら死んで見せろと渡された短刀で、ためらいなく彼女は自らの胸を刺して28年の人生に幕を閉じた。クソみたいな半生、よく我慢していたものだ。これで両親の元へ行けると思っていたナタリーは何故か目を覚まし、その場所に驚いた。何故なら忘れようにも忘れられない自分の生家だったのだから。しかも、鏡を見ると随分若い。17,8歳の頃だろうか。自分付きの侍女・ミーナに今は何年かと尋ねると、自分が死んだ10年前と判明。まさか、あの誰が見ても不幸だった結婚生活を神様が憐れんでくれたのだろうか。死に戻った理由は不明だが、この時点ならまだ両親は健在。もしかしたら、この後の展開を変えられるかもしれない。ナタリーは自らの幸せの為に力を尽くすことを決意するのでした。とは言え、時間があまりない。恐らくあと数か月もしないうちに母が病を患い亡くなり、悲しみに暮れる間もなく戦争が始まって父は戦死してしまうからだ。先ずは母の病を何とかしよう。この頃はまだ治療法が確立していなかったが、10年後を知っている自分にはそれを治療できる医者を知っている。彼に資金援助と薬草の支給をすればきっと母も。そうと決まればと早速行動に移したナタリーは、伯爵領の外れに住んでいた医師のフランツを尋ね薬の作成を依頼。資金も材料も提供してくれるとあってフランツは快諾してくれた。ギリギリになりそうだが母はきっと助かる。ナタリーはこの時、フランツを頼って秘密裏に運び込まれていたこの国の第二王子・エドワードを癒しの魔力で助けます。どうやら、毒を盛られていたようだが、そういえばこの王子の死も戦争の原因だったっけ。伯爵家の一族に発現するこの癒しの魔力は、自分や肉親には効果を発揮しないと言う一種の枷があった。母を救えなかったのはそういう理由もあったのだけれど、こうして王子を救えたことによって戦争は防げるかもしれない。エドワードにも随分感謝をされた。明るい兆しを感じながらの帰宅途中、盗賊に襲われたナタリーを救ったのは、かつての夫ユリウス。勿論、この時には初対面なのだけどやっぱり外見だけは本当にカッコイイ。複雑な心境ながら丁寧にお礼を述べたが、ユリウスは何か言いたげ。副官のマルクが屋敷まで送ってくれることになり、その場は別れたが、以降何故か事ある毎にユリウスと出くわすのは果たして偶然か。それに、当時とは比べようもないほど穏やかな彼の様子に違和感。因みに舞踏会で見た彼の母は相変わらず嫌な女だった。それからしばらく経って、フランツに依頼していた薬が完成。母の病は完治した。しかし、回避されるかと思っていた戦争は期待も虚しく勃発。エドワード暗殺を目論んだ宰相が敵国と手を組み宣戦布告をしたのだった。国境近いペディグリュー伯爵家領は真っ先に攻め込まれ、父が指揮を執ることになったのだが、このままではあの時と同じように戦死してしまう。何とか助けたいと戦地に入り込んだナタリーが見たのは、父を庇って刺されるユリウスの姿で・・・。回想と序盤を読んでると公爵家の面々の行いが胸糞なんですけど、一応これには理由がありました。ユリウスの家は代々当主が受け継ぐ力があり、そのおかげで無類の強さを誇っていたものの、その力が膨大過ぎて抑え込めなくなりやがて死に至るという厄介なものでした。彼はナタリーを好ましく思っていたのに、暴走に巻き込まんと彼女を遠ざけていたのです。ユリウスの母は夫の死に様を見て精神に異常をきたし性格が激変、パワハラやモラハラで使用人たちは多大なストレスを抱えていた頃、褒賞として嫁いで来たナタリーは彼らの格好のターゲットになっていたのでした。当然、彼女を遠ざけていたユリウスは母や使用人たちのの非道を知らず、助けてもやれなかった。加えて晩年のナタリーはユリウスの母から毒を盛られ続け死にかけていたのに、キレた彼女を煽って止めを刺したのは自分。その後判ったのは母による彼女への熾烈な虐めと擦り付けられた謂れのない使い込みの罪。彼は息子共々後悔し嘆き悲しんだ後、息子は自らの命を捧げ、ユリウスはこの膨大な魔力を使ってナタリーを生き返らせたと言うオチ。一連のユリウスの態度からして、これは絶対に覚えてるなと思ってたら案の定でした。これは後悔するよなぁ。一番悪いのは彼の母だけど、そもそもこの因果な力が発端なだけにやり切れませんよね。息子のリアムも母の人生のやり直しに賛同したのは、自らの態度に思う所あったようだし、不器用な家族ですよ本当に。その後諸々国家転覆を狙う宰相が色々仕掛けて来るも、ナタリーとユリウスが協力し合って撃破。一応の決着がつき、お互いの誤解が解けた所で終わっています。宰相がまだ捕縛されていないのと、エドワードからもナタリーは想いを寄せられていることもあって、続編が出そうな気がする。まぁ、どう転んでもユリウスと一緒になるんだろうなぁ。でないと母親の復活の為に死んだリアムも産まれてこれないし。評価:★★★★★死に戻りモノが好きな方は是非
2022.10.30
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2022年7月刊ビーンズ文庫著者:新山サホさん「魔法なんて使えなくても俺はユノが好きだよ」実家を勘当され王宮で侍女となったユノ。そこで仕えることになった王子はーかつて唯一の支えであった初恋の人・ディルクで!?さらに、ユノが王宮で起こった問題を解決し、聖女の力を持つことが判明!次第に自分の価値に向き合い始めたユノは、今度こそ彼に想いを伝えることができるのかー心優しい聖女と、素直になれない王子が描く、両片思いシンデレラストーリー! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 ユノ=魔法使いの名門一家に産まれながら魔力が無く母と妹に長らく虐げられていた。 14歳の時に屋敷から追い出され、王宮の下級侍女として働いている。ディルク=王国の第三王子。政敵の目から逃れるため4年前はユノの父の友人宅で暮らしていたこ とからユノとも親しくしていた。 キーラ=ユノの同僚の先輩侍女。ルーベン=大聖堂の司祭でディルクの友人。ユノの浄化能力にいち早く気付く。アーティ=新しくやって来た奥宮の庭師の青年。今回もラノベです。虐げられていた方がとんでもない力を持っていたという、ド定番なお話。ユノは魔法使いの名門・べリスター家の長女として産まれたが、魔法の才に恵まれなかった。父が存命のうちはそれでも分け隔てなく育てられたのだが、優しかった父が病死して以降、当主となった母はユノを罵倒し妹のシンディばかりを可愛がった。妹はユノとは違って魔法が使えたから。今日もべリスターの娘ならなんてことない初歩魔法すらできない事で散々嫌味を言われ、シンディからも馬鹿にされる始末。出来損ないと言われ続ければ否定したくとも段々とそう思い込むようになり、自信も無くす。そんな彼女の心の支えは父の友人・サスカル夫妻の家に預けられていたディルクとの交流だった。彼は落ち込むユノを励まし、魔力が無くとも君が好きだと言ってくれた。ディルクは本気でユノとの結婚を考えてくれていたようで、家族から呼び戻されて王都に戻る際、一緒に来て欲しいのだと婚約指輪を贈ってくれた。だが、その指輪を母たちに見つかって取り上げられ、ディルクはきっと高位貴族の子息だろうからお前などとは身分違いだと責め立て、終いには彼の為にも断れと脅されて泣く泣くその求婚を断った。返事を聞いた彼はかなり傷付いていたようで、怒ってもいた。心にもないことを言わされたユノはディルクに嫌われてしまったのだった。それから半年後、ユノは母から勘当され屋敷から追い出された。恐らく母以上に姉を目障りに思っているシンディが何か言ったのだろう。ディルクに求婚された時も妹の妬みで台無しにされた。大事な跡取りの我儘に母も振り回されているのだ。働き口と住む場所を求めて、ユノは王都へ向かい、何とか王宮の奥宮に勤めることが出来た。一応は侍女と言う役回りだが、やらされるのは下働き全般。先輩のキーラはユノと仲良くしてくれて辛い仕事も多いものの、実家にいた頃よりは充実した日々を送れている。そんなある日、いつもは静まりかえっている奥宮が今日は騒がしい。草むしりをしながら聞いた同僚たちの話によれば、数年前に遠征に出ていた第三王子が帰還するらしい。成程、それで使用人総出で掃除をしているわけか。草むしりも然り。暫くして噂の王子様が現れ、見るとどう見てもあのディルクではないか。傍に居た司祭らしき服装の青年がディルクさまと呼んでいたし、彼に間違いない。母が高位貴族に違いないと言っていたが、まさか王子様とは。そんな人に求婚されて妹たちの脅しで断ってしまった自分はなんて失礼なことをしてしまったんだろう。そして、ディルクもまた、キーラにユノと呼ばれて走っていく彼女の姿を見て驚いていたのでした。その後、二人はすれ違いが続いたものの、ディルクが神殿から預かっている曰く付きの魔具の保管庫にて、ユノは浄化の力に目覚めます。古ぼけたアンティークドールと持ち主の願いを内に秘めたオルゴール等、力が発現したユノによって魔具たちは解放されて行くと、ディルクの友人で司祭のルーベンは彼女を聖女だと断言。魔具の持ち主たちがなまじ高位貴族達ばかりなのも功を奏し、その働きが認められ、やがてユノは正式に聖女の称号と爵位が授与されることが決まるのでした。ディルクとは再会が叶うも、当初は誤解もあってギクシャクした関係だったものの、ユノの態度から何か理由があってのことだったと思い当たりべリスター家の調査を始めます。そんな折、ユノが聖女の称号を受けると聞きつけたのか、母たちが彼女に取り入ろうと王宮までやって来て・・・。浄化能力を使える者は滅多に生まれず、子にも受け継がれない所謂突然変異の様な稀な力だった。べリスター家と言えばかつては名門だったが、父が亡くなって以来かなり斜陽だ。母たちも困窮しているのかもしれない。とは思うが母たちはユノに対してかなり高慢で、面倒見て当然とばかりにユノに寄生しようとしている。それを諫めたのはディルクだった。調査結果で判明したユノへの仕打ちを無視するわけにはいかない。勘当しているのならそんな権利も無いだろうと母たちを追い出します。その際、ユノが助けた魔具たちも力を貸していて、この二人には本当にムカっと来てただけにスッキリ。国王から正式に称号と爵位を授与され、誤解も解けた二人は多分結婚するんだろうなって感じで終わっています。爵位も貰って聖女の称号もあるから身分違い差の難関はクリアしてるし、お互い両想いだっただけに報われて良かった。ルーベンとキーアがケンカップルっぽくて、こっちもくっつきそうな雰囲気醸してたのと、ディルクの立場からお家騒動がありそうなんですよね。サスカル家にいたのも暗殺を恐れてのことらしいから。続刊があるなら、その辺を描いて行くのかな。終盤間際までディルクが誤解したままだったので結構じれじれ度は高め。ユノが本当に良い子なので、ディルクよ、お前が男を見せないでどうするよとヤキモキしてました。評価:★★★★★シンデレラストーリーがお好きな方におススメ。
2022.10.09
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2022年6月刊角川ビーンズ文庫著者:一分 咲さん家族に虐げられていたセレスティアはある日、この人生が五回目だと思い出す。死んだ理由はすべて「好きな人に裏切られたこと」。ループ五回分の強い聖女の力で、今度こそ平穏に生きる! ……はずが、一回目の人生で友人だった王弟・トラヴィスが護衛神官として現れーー「俺が一方的に想うだけならいいだろう」って好きになると死んじゃうんですが!?この溺愛に降参するのは命、それとも恋心? 最強聖女の大逆転劇! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 セレスティア=子爵令嬢。家族から虐げられ不遇な扱いを受けて育ったが、啓示の義にて神殿最 高位の聖女に選ばれる。 トラヴィス=神官の一人。国王の年の離れた弟で、長らく隣国に人質として送られていた。 セレスティアに好意を寄せる。 バージル=神官の一人でセレスティアの友人。身だしなみやファッションに煩い。クリスティーナ=セレスティアの異母妹。母親と二人で姉を虐げるだけに止まらず婚約者を横取り するなど目に余る行動が多い。 マーティン=伯爵家の子息。セレスティアの婚約者だったが、何度ループしても彼女を裏切る 行動を取る。こちらも購入だけしたまま積読になっていた本です。レーベルでお分かりでしょうが、TL小説ではなくラノベになります。聖女+時間回帰と言う内容なので情報量も多く、ざっくりと。セレスティアはスコールズ子爵家の長女として産まれた。実の母は体が弱く、彼女を産んですぐ亡くなり、父は喪も明けぬうちに乳飲み子を抱えた女性を後妻を迎えた。異母妹がセレスティアとはたった数日違いの差で産まれているのを思うに母が存命しているうちから、父は浮気をしていたのだろう。継母は先妻の子である彼女を嫌い、別館に追いやって乳母に育てさせた。父はセレスティアを気遣うそぶりを見せながらも、わざわざ後妻たちによる彼女への嫌がらせをやめさせることはなく我関せずを通していた。この国では15歳になると神殿に仕える者たちを選出する適正審査「啓示の義」を受ける義務がある。セレスティアと異母妹・クリスティーナも啓示を受ける準備をし、出掛ける間際、玄関ホールのシャンデリアが落下。幸い、二人とも無事であったが、セレスティアはあと1歩先に進んでいたら巻き込まれていた。驚きと怯えで震える彼女の脳裏に何故か走馬灯のように流れる自らの死に様。その数なんと4回。そういえばこれは5回目の人生だった。セレスティアは幾度も死を経験し、その都度啓示の義の朝に戻っていたのだ。啓示により、クリスティーナは巫女、セレスティアは聖女に選ばれるのは判っている。今度こそ天寿を全うしたい。思い返せば、毎度自分は好意を抱いている相手から手を下されている。だとしたら今回は恋をしなければ長生きできるのでは。これまでの経験上、好意を寄せた人物の為人は把握しているし、何せ自分を手にかけるような連中だ。100年の恋も冷めると言うもの。それと言うのも、彼女の死には大抵クリスティーナが関わっている。あることない事姉の悪評を世間に広め、今ではすっかりセレスティアは性悪女扱いだ。でも唯一、友人だったトラヴィスだけは噂に惑わされずに接してくれていたっけ。ループ5回目ともなると経験値や魔力も上乗せされるのか、セレスティアは聖女の中でも高位の存在とされ、神殿での暮らしも好待遇だった。見下していた姉が自分より立場が上になったことで、クリスティーナは悔しそうだったが、今となってはセレスティアはおいそれと近づけない存在だ。それに、トラヴィスが相棒になってくれたおかげで良い抑止力になっている。それでも当初は身の程知らずにも屋敷にいた頃の様に自分の株を上げるために刺繍を仕上げるよう命令して来たが、いい加減言いなりになるのは御免とセレスティアの意趣返しにより、異母妹は株を上げるどころか大恥をかいていた。おまけに、5倍増しになった聖女の力により、セレスティアの評判はうなぎのぼり。死亡フラグを悉くへし折り、ループ前は彼女を敵視していた神官たちも次々と味方につけ、実しやかに囁かれていた悪評を信じる者はいなくなっていた。友人として接していたトラヴィスが最近メチャメチャ気になって意識してしまっているのは困るが、それもこれも彼がセレスティアへの好意を隠そうともしないから。でも好きになってしまったら、彼も自分を殺そうとするのだろうか。そう思うとこの気持ちを認めてしまうのが怖い。後は彗星の落下事故と黒竜退治をやり過ごせば、18歳を乗り越えられる。トラヴィスを危険にさらしてしまったものの、彗星については無駄に強大になった聖女の力で何とか凌ぐことが出来た。一番の難関は黒竜退治なのだが、これには異世界から召喚された勇者二人が加わる。実はこの異世界人達は2回目のループの際、痴話喧嘩の末にセレスティアを死に追いやる者たちで・・・。戦々恐々としつつも、当時はあれほど好きだった召喚者リクに何の感慨もわかない。今思えば二股掛けた挙句にセレスティアを盾にして助かったクソ野郎じゃないか。様子のおかしい彼女から、ループを繰り返していることを打ち明けられたトラヴィスはセレスティアを守るため全力を尽くします。家族に恵まれず、好意を寄せる者たちから殺され続ければ恋など懲り懲りと思うのも仕方ないではないか。だが、黒竜と対峙した際、竜はセレスティアの膨大な力を察知し戦わない道を選んでくれた。しかもなぜ彼女がループし続けるのかも判明。友好の証に竜の鱗から作れる妙薬でループを終わらせることが出来ることになり、平穏を取り戻したセレスティアはトラヴィスとの未来を考えるように。途中アレコレとフラグ回避のイベントが起こったり、竜退治の時でもトラヴィスの想い人として命を狙われたりと王家のお家騒動に巻き込まれたりします。が、持ち前のパワーで跳ねのけて行くセレスティア。上手く行きすぎじゃない?と思わないでもないですが、こういう展開はやっぱり何だかんだと読んでてスッキリするので。評価:★★★★★聖女ものがお好きな方は是非。
2022.09.30
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2021年12月刊角川ビーンズ文庫著者:和泉杏花さん世界の救世主にはなれませんが、大切な人は助けるって、決めました。イルとの結婚式を控え、神様にもらったブックカフェでの引きこもり生活もどこかそわそわしているツキナ。そんな時隣国・ハガルで不穏な動きが! さらにそこには、異世界での初めての友達・ブランが関係していて!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 ツキナ(水森月奈)=ヒロイン。アラサーのごく普通の会社員だったが神様に選 ばれて救世主として異世界のオセル国へ転移させられた。 趣味と実益を兼ねたブックカフェを営み、婚約者であるイ ルと同棲中。この度漸く式の日取りが決まった。 イル(ソウェイル)=ヒーロー。オセル国騎士団長。 ツキナの婚約者で彼女が救世主であることを知っている。 度重なる事件によって国の状況が不安定なことから式が 延び延びになってしまい申し訳なく思っている。 神様=異世界のバランスを保つために定期的に人間を転移させて いる。ツキナを送る際、恩恵の他に三回だけ彼女の願いを 聞くと言う約束を交わした。様子見の為に人間の姿で度々 ツキナの店を訪れており、彼女と交際する前のイルに好き ならものにしろと発破をかけていた。 ベオーク=イルの幼馴染で騎士団の副団長。 王女ベルカの婚約者で、前回の騒動でツキナの正体を知っ た。今の所国王に話すつもりはないようだが、有事の際に は全てを打ち明けると告げている。 ヨウタ=救世主の青年。大魔法を発動しオセルを危機に陥れたこと で責任を問われたものの、後に意識操作されていたことが 判明。修行のためオセルの同盟国へ留学した。 ブラン=ツキナの店の常連で行商人。 本好きであり、ツキナと意気投合して親友となった。 正体はハガルの魔法使いによって作られた意志ある人形。 当初はツキナが救世主だと知っていて近付いたのだが・・シリーズ三作目で完結編になります。救世主による度重なる騒動によって延び延びになっていたツキナとイルの結婚式の日取りも漸く決まった。カフェも繁盛しているし、加えて今は式場の下見や披露宴の招待客選びにドレスの用意など、この世界に来た時に希望していたのんびりした日常とはいかなくなったけれど、やはりイルと正式な夫婦になれるのは嬉しい。とは言え、当初の懸念通り、騎士団長の結婚ともなるとかなり大掛かりになるのは避けられないようで、国王一家まで出席すると言う。ヨウタは事件後かなり落ち込んでいたようだが、留学先で元気にやっているらしい。式に合わせて一時帰国すると言うから益々当日が楽しみであった。そんな最中、軍事国家である隣国ハガルの動きがどうにも不穏らしく、イルを含めオセル国の上層部もピリピリしていた。城への出入りも制限されているのを見るに、召喚術で出現した魔獣と、あの日ヨウタに近付き意識操作した人物を警戒しての事だろう。彼の証言によればハガル人特有の容貌だったらしく、やはりかの国による陰謀なのだろうか。忙しいながら、ブランが貸してくれた魔法の教本で新たな魔法を習得していたツキナ。行商人のせいか、彼は博識だし本の趣味も合う今では大事な友人だ。是非、式にも出席して欲しいと声を掛けたものの、浮かない表情をしているブランが気になって・・・・。ブランはハガルが潜入させた人形で、オセル陥落のための下準備をしていたのですが、ツキナと交流するうちにこの国を亡ぼすのを躊躇います。(ヨウタの意識操作をしたのは、ブランの同タイプの人形でした)処分されるのを覚悟でツキナとイルに全てを白状し、侵攻に備えろと忠告。自分は遠隔操作で本国に残っている人形たちを自爆させハガルの上層部を壊滅させることに成功。それと引き換えに機能停止した彼を救うため、神様の三つの願いの一つを使い更に魔力を注いだツキナ。人形とは言え、さすがに一人分の命を蘇生させて魔力切れを起こした彼女は数日寝込むも、ハガルの脅威も無くなり、二人は無事に結婚式の日を迎えます。ブランがツキナに全てを白状した事や、その蘇生まで成し遂げたことで国王は薄々彼女の正体に気付いてるっぽいのだけど、これまで三度もこの国を救ってくれたツキナの願いを汲んでくれたようです。ベオークも結局最後までばらさなかったし。本編後の番外編は数年後のお話で、二人の娘のユキナが登場しています。ユキナの願い的に、彼女が主役の続編があるのかなって気が。評価:★★★★☆五、六巻くらいまで続くのかと思いきや、三巻で潔く完結。でも、読み切った感のある終わり方で良かったです。正に大団円。
2022.05.08
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2021年5月刊角川ビーンズ文庫著者:和泉杏花さん救世主である事を隠して、神様に貰ったブックカフェで趣味に全振りの引きこもり生活を送るツキナ。しかし、神様が新たに召喚した救世主・ヨウタはやる気に満ち溢れていて……。「今度こそ、ちゃんとあなたを、世界を救ってみせます!」張り切るヨウタの行動は、やがて恋人のイルとの穏やかなひと時だけでなく、オセルの国全体を巻き込み大騒動に!?堅実&安定がモットーの異世界ライフ第2弾、一難去ってまた一難! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 ツキナ(水森月奈)=ヒロイン。アラサーのごく普通の会社員だったが神様に救 世主に選ばれ、異世界に送られた。ブックカフェを営み、 現在婚約者であるイルと同棲中。 イル(ソウェイル)=ヒーロー。オセル国騎士団長。ツキナに負けず劣らずの読 書家でブックカフェ初の客だった。ツキナに求婚しOKを貰 ったものの、諸々の事情で式はお預け状態。 神様=異世界のバランスを保つため定期的に人間を転移させてい る。今回新たにオセル国へ救世主を送った。 ベオーク=イルの幼馴染で騎士団の副団長。 王女ベルカの婚約者。 ヨウタ=神様が前回の少女の代わりにオセルへ送った救世主。 使命感に燃えた青年。ツキナを姉の様に慕う。 ブラン=ブックカフェの常連客で行商人。 美人だが性別不明で大食漢。シリーズ二作目で、前作ラストから数か月後のお話です。キャラも増えました。ツキナのブックカフェにも常連客が増え、加えて彼女の作る保護魔法のアイテム・結界玉と回復薬が重宝され、定期的に騎士団に納品することとなり、忙しい日々を過ごしている。イルとは現在同棲中で彼の両親にも結婚の報告を済ませたものの、騎士団長の結婚式ともなると国の行事に匹敵するものになるらしい。以前の救世主の起こした事件の後始末もあって、現状は式の日取りすら決まっていない状態だった。そんなある日、オセル国に新たな救世主が現れ、城ではちょっとした騒ぎになっているようだ。イルの話では随分とやる気に満ち溢れ人好きのする青年とのことだが、以前の救世主がやらかした騒動が記憶に新しいこともあって、果たして彼が信用に足る人物か、国王始め現在見極めているところだと言う。ツキナもそのうち城への納品の際に会うこともあるだろう。ヨウタとの対面は思っていたより早く、その頃にはもう彼は打ち解けて騎士団員達とも随分仲良くやっているようで、一先ず安心したツキナ。自分も救世主と言うことはヨウタにも打ち明けるつもりは無く、飽く迄この国の人間であり騎士団長イルの婚約者として接するツキナは、彼からすれば故郷の姉の姿を思いこさせるそうだ。随分と懐かれてしまい、そんなヨウタの態度にはイルも軽く嫉妬するほどだった。ヨウタは元来頑張り屋で責任感の強い性格で、救世主としてオセルのためになるべく魔法の勉強に励み、率先して騎士団に付いて魔獣討伐にも参加していると聞いたが、どうも最近その頑張りが空回りしているとのことで、ついに仲良くしていた団員と悶着を起こしたらしい。ある日、ツキナが納品に城を訪れた時、その場にいるはずのない魔獣に襲われた所、ヨウタの魔法で事なきを得た。攻撃魔法はからっきしの彼女は鍛錬を積んだ故に咄嗟に対応できたヨウタに感謝したものの、城の中庭に魔獣が現れるなどあってはならないことである。ツキナを襲った魔獣は召喚で出現した物らしく、前の救世主が発動した大魔法が周辺諸国を刺激したのかもしれず、城は厳戒態勢となった。オセル国ほど平和な国は稀で、安心して行商に来れると最近店の常連になったブランも言っていたと言うのに、最近のこの国の状況に不安を覚えるツキナ。神様の話では救世主がいると言うだけで戦争回避にはなるとのことだけど、好戦的な大国・ハガルの様な国には敢えて転移させないと聞いた。碌な魔法修行もしていなかった少女ですら国一つ破壊し兼ねない威力の魔法を使えたのだ。それだけ凄まじい魔力を戦争に使われたら多くの国が亡ぶ。そんな中、自分の有り様とツキナへの想いに悩んでいたヨウタはとある人物から渡された古文書に記載された大魔法を発動してしまい・・・。この大魔法もツキナの魔法で相殺されることになるんですが、攻撃魔法は使えずとも彼女の防御魔法は相変わらずすごいことになってます。とは言え、ついにベオークにもツキナが救世主だとバレてしまい、飽く迄名乗り出ずにバランサーに徹する彼女に、ベオークも思う所はある模様。読んでて私もちょっとツキナは狡いかなぁと思いますもん。静かに暮らしていきたいと言うのも理解はできますが・・・。それにしても、二人続けて救世主がやらかすオセルは受難続きですよね(^_^;)ツキナがいなかったら最初のアレで滅んでた。新キャラ・ブランが少々怪しい行動をしているのですが、事の顛末は三巻に持ち越し。評価:★★★★☆この巻も面白かったけど、本の虫カップルの読書談義が少なかったのが残念。
2022.05.07
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2020年6月刊角川ビーンズ文庫著者:和泉杏花さん神様によって、救世主のひとりとして異世界の国・オセルに喚ばれてしまったOLのツキナ。冒険も戦いも、物語の中でならいいけれど現実では荷が重すぎる……世界を救うのは他の若い救世主達にお任せして、私はブックカフェでも開いて本の虫らしく趣味に生きます! 正体を隠し、森の奥で静かに暮らそうとするけれど、客として訪れた騎士団長・イルとの出会いで波乱が!?堅実&安定がモットーの異世界ライフ、始まります!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 ツキナ(水森月奈)=ヒロインでアラサー(33歳) 神に救世主として異世界のオセル国へ転移させられた会社 員。自他ともに認める本の虫で、趣味は料理。 町外れの森で念願のブックカフェを開店させた。 イル(ソウェイル)=ヒーロー。オセル国の騎士団長。 遠乗りの際たまたま見つけたツキナの店に立ち寄り、以降 常連になる。ツキナに負けず劣らずの本の虫。 神様=異世界のバランスを保つために定期的に人間を転移させて いる。ツキナから山ほど恩恵を搾り取られた。 ベオーク=イルの幼馴染で騎士団の副団長。 王女に惚れられ、婚約した。 オセルの救世主=高校生くらいの美少女。第二王子と恋仲に。 我儘な性格で城の使用人達と騎士団員達を困らせているだ けでなく、救世主としての役目を果たそうとしていない 第二王子=真面目な性格だったらしいが、救世主の少女に惚れてから は彼女の我儘に従っており、国王からも諫められている。コミカライズ版が大人気らしいので、内容を知ってらっしゃる方も多いと思います。こちらは原作の文庫版。女性向けのライトノベルで、ジャンルは異世界転移もの+恋愛。ヒロイン・ツキナが33歳ってことに当初は驚きましたが、それだけに思考が堅実で現実的。神様から異世界に転移して救世主になれと言われても正直迷惑以外の何ものでもない。でも、選ばれてしまった以上、その決定は覆らず従うしかなさそう。魔法が使えるようになるのは興味があるけれど、渋るツキナに神様が彼女が望む恩恵を与えると約束すると、ここぞとばかりに生活の保障と身の安全のための希望を上げ連ね、搾り取ります。しかも、できるだけ戦争などとは無縁の国を希望したことで、雪国ながら平和な国・オセルに転移させられることに。この国には既に一人救世主が転移しているらしく、ツキナは本来の役割であるバランサーに徹すると内心で決意します。アニメやラノベで流行っている異世界転移に救世主と言う役割とチート能力。若者たちは喜び、使命に燃える者が多い中、そんなのは元気で血気盛んな人達に任せたい。現実世界でも、将来はブックカフェを営みたいと夢見ていた彼女は、どうせならオセル国でその夢を叶えようと恩恵の一つで店舗兼自宅を手に入れ、悠々自適な生活を始めるのでした。ツキナが転移して二ヶ月ほど経って、本棚にも多数の本が揃えられた頃、ブックカフェに一人の青年が客として訪れます。彼は店にあった希少本に目を輝かせ、注文した食事も気に入ったらしく毎日のように店に訪れやがて同じ趣味を持つ者として友達になる二人。青年・イルと親交を重ねるうちに、ツキナは先に転移していた救世主の少女による問題行動を耳にします。国の周りには魔獣が出るとは言え、元々オセルは戦争とは無縁の平和な国なため、救世主が張り切る必要は無いのだが(そういう国への転移をツキナも望んだため)、それならば持ってる魔力を生かして回復魔法でも使えるようになってくれれば問題は無かった。だが、勉強嫌いと言う少女は魔法の修業を断固拒否して、挙句その我儘ぶりは城の空気を悪くさせるばかり。部下から何とかしてくれと請われてもどうしようもなく、イルもストレスがた溜まる一方だった。話を聞き、どうやら少女は自分とは違うベクトルで役目を放棄している人物だと理解したツキナ。彼女の店は彼にとって良い息抜きの場であり、毎日のように顔を合わせていた二人はやがて惹かれ合うように。だが、そんな何でもない日常の中、イルが魔獣討伐で重傷を負った。原因は救世主の少女に現を抜かしていた第二王子を庇っての事らしいが、幸いツキナが渡していたアイテムによってイルは命拾いをし、怪我が完治するまで回復魔法が得意なツキナの家で同居を始めた。この同居を機に、二人の関係は更に深まっていったものの、救世主の少女に対して騎士団を始め、城内の人間たちから不満が爆発しかけて・・・。ツキナとイルはいい具合に仲良くなっていき、友達以上恋人未満な関係になっていくんですが、救世主の少女がついにドエライことをしでかします。それをツキナの魔法で食い止めるも、イルに彼女も救世主だとバレる羽目に。少女は国一つ滅ぼしかけたことで神様に回収され、元の世界へと返された。その後、すべてを承知でイルはツキナにプロポーズして二人は婚約するのでした。で、一巻は終わり。イルはツキナが救世主であることを自分だけの秘密として誰にも話さず、一人の女性として彼女を愛するわけですが、いやー良い男です。モテないわけではないのでしょうが、女っ気が無かったのは騎士団の仕事で多忙だったのと重度の本の虫で余暇を全て読書に費やしていたからかと。そんな彼が同じ趣味を持つツキナと出会ったのだから、これぞ運命ってやつです。ツキナのオセルでの暮らし読んでて物凄く憧れます。お金や衣食住の心配もなく、読書し放題とは羨ましい。しかも恋人まで出来たんですもの。あー、でも羨ましい反面、アニメやゲームとおさらばってのは自分には耐えられないかもしれない(^_^;)評価:★★★★☆異世界スローライフものがお好きな方には超おススメです。
2022.05.06
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