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2024年6月刊LUNA文庫著者:にしのムラサキさん『息は詰まるし一緒にいても詰まらない。お願いだからもう別れてくれ』十年付き合った彼に振られ、傷心旅行で訪れた京都のとあるバーで、美玲は二股をかけられ、いきりたっている女性とその女性を冷たく見つめるスーツ姿の男性の修羅場に居合わせてしまう。見るともなく眺めていた美玲だったが、女性が男性にかけようとしたカクテルが、彼が避けたことですぐ横にいた美玲にかかってしまう。潔癖気味な美玲には、他人が口をつけた液体を被っていることが我慢できない。一刻も早くシャワーを…と焦る美玲に、男性が謝罪しながらジャケットをかけてきた。ーーいや、他人のジャケット、普通に無理。と、ひっぺがして突き返すが、そうは思いつつ違和感があった。この人の香りだろう。香水とはまた違う、ここちよい匂いに飲み込まれそうになる美玲だったが……!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 川上美玲=10年付き合った恋人にフラれ傷心していた。 樫原彰人=救命救急医。出張先で美玲と出会い惚れこむ。 山添英斗=新人救命医で美玲の元カレ。 櫻田愛菜=病院の総合受付係。英斗の浮気相手。 北山=美玲達の勤め先のベテラン看護師。総合病院で検査機器の洗浄の仕事をしている美玲は、職業柄かなりの潔癖症。加えて生真面目な性格をしているからか、高校時代から10年付き合っていた英斗に「お前といると息が詰まる」とフラれてしまった。その横には勤め先の病院でも可愛いともてはやされている新人受付嬢の櫻田愛菜が。人の彼氏を横取りしておきながら「身の程を知った方がいいですよ」と勝ち誇った愛菜の言葉は想像以上に美玲の心を傷つけ、こんなんじゃいけないと色々整理をつけるために一人で旅行をすることに。行先は京都。一人気ままに観光してホテルから少し離れてはいるが、ネットで見ていずれ行ってみたいと思っていたバーへ。つまみとカクテルを堪能していた美玲だったが、隣席のカップルの痴話げんかに巻き込まれ、女の飲んでいたカクテルを頭からかぶってしまうという被害に遭った。潔癖症の彼女にとって他人が口を付けた飲み物を被るなんて以ての外、内心死にそうなくらいパニくっていた美玲に、カップルの男の方が慌てて弁償しますのでと謝り倒して来た。そんなことよりシャワーを浴びさせてくれとイラつく彼女と男の押し問答は、押しの強さで男の勝ち。バーの近くのホテルに部屋を取っていると言うのでそこでシャワーを借りることに。結局服も弁償してもらうことにもなって恐縮していると、彼は樫原彰人と名乗り、改めて謝罪された。そして喧嘩になった経緯を聞くとセフレに結婚を迫られ、元々恋人じゃないだろと答えたらキレられたというのもだった。男性は忙し過ぎると性欲が増すと言うのは聞いたことがある。樫原もそのタイプで、適当に遊び相手を見つけて発散しているのだとか。医師だと言うから多忙なのも判る。とはいえ、不特定多数の異性とそういう関係を持つのは良くない、樫原さんには誠実さが足りないです。と思わず説教していた。いくらなんでも失礼だったかなと反応を伺うと、唖然としつつも樫原は何だか嬉しそう。従姉妹だという女性に調達してもらった服がブランド物で申し訳なくなったが、お礼を言って帰ろうとすると明日のモーニングに付き合ってくれと頼まれた。これもお詫びとか言ってくるのでもう充分ですのでと断ると、どうしてもと縋らんばかり。見かねた従姉妹からも付き合ってやって欲しいと言われ、そこまで言うならと頷けばモーニングの後は観光に付き合う約束までさせられてしまった。一方、樫原は彼女に運命を感じていた。あの説教も他の人間から言われれば余計なお世話だけれど、彼女の言葉は何故か妙に腑に落ちてその通りだと思った。確かに自分は誠実ではない。彼女の恋人になりたい、それも結婚を前提に付き合いたい。その後はもう妄想全開で将来や子供の数まで想像している樫原はすっかり美玲にメロメロだったのだ。翌日、一日一緒に過ごした結果、彼の人となりを信用した彼女は結婚を考えていた恋人に浮気された挙句フラれたこと。つまらない女だと罵られたことを話し、堅苦しくつまらない自分変えたいと願い、私を抱いて欲しいと頼んだ。彼にしてみれば願っても無い申し出だが、どうやら元カレに不感症だとも言われていたらしい。よくよく状況を聞くに元カレが自分本位な上に色々おざなりなタイプでそれを棚に上げて責められていたようだ。案の定、美玲は不感症ではなかったし、樫原にとっては幸せな一夜だったが、翌朝目覚めると彼女の姿はなく、美玲という名前しか判らない樫原は途方に暮れたのだった。しかし、それから暫く経ったある日。東京の総合病院に転院して来た樫原は院内で美玲とバッタリ。人探しの番組に本気で応募しようとまで思いつめていた彼は、本当にこれぞ運命だと歓喜した。美玲のフルネームも判ったし、同じ病院に勤めているのだからいくらでもチャンスはある。その日から樫原からの猛烈なアタックに戸惑う美玲だったが、付き合ってくれないと京都での夜のことを喧伝すると言われ渋々了承。でも、そんな卑怯なことを言う割にデートでは子供のようにはしゃぐ彼に随分癒された。そんな樫原も、院内きっての情報通・ベテラン看護師の北山から美玲の元カレと間女・愛菜の情報を仕入れていた。まさか、新人救命医の山添が美玲の元カレだったとは。元々モテない医学生が可愛い女の子に粉を掛けられ浮気に走り、尽くしてくれた美玲を棄てたという経緯らしいが、愛菜という女は相当の性悪らしい。計算高く、他人の物を欲しがる性分で同性からは最も嫌われるタイプ。美玲から奪ったはいいが、早々に飽きてきているようで今度は樫原に目を付けモーションを掛けて来ているので鬱陶しくてしょうがない。セフレとも全員関係を切ったし、今は美玲一筋の自分が靡くはずがないのだが、誤解されるのは避けたい。北山から色々リークを受けつつ、様子を伺っていると山添が美玲にコンタクトを取って来て・・・。本命を作らなかった男が、真面目な女性に惚れこみ猛アタックするというお話。まぁタイトル通りの内容となってます。どの面下げて復縁を迫る元カレを拒絶する美玲は、自分の言持ちが樫原に傾いていることに気付くも、愛菜の企みにより、疑心暗鬼に。樫原を信じてまた手酷い裏切りをされたら立ち直れない。それでも美玲には真摯で誠実な樫原を信じたい。中々樫原と離れない美玲に業を煮やした愛菜は彼女のコーヒーに一服盛るという暴挙に。でもそれは思いの外効果があって美玲が丸一日意識不明になるほど。ずっと付き添っていた樫原はこれはおかしいと検査した結果、盛られていたのは糖尿病の薬。元カレのことなどで睡眠不足で食欲も無かった彼女は極度の低血糖状態になって倒れたのでした。しかし、処方箋が無いと貰えないこの薬から足が付き、山添が用意し愛菜に渡していたことが発覚。悪質すぎると警察に通報案件となり、二人は罪に問われます。北山のネットワークで愛菜には本命の彼氏がいることも判るんですが、ホント、どうしようもない女だな。糖尿病の薬は健常者が飲んだら本当に危険なので、一歩間違えば死んでたのを思えばもっと重い処罰でもいいかも。けど、身の程、身の程と美玲を下に見ていた愛菜にあなたの方こそ身の程なんてないでしょ、と言い返された様が痛快。ほんとそれな。この騒動後、美玲の方から樫原に求婚。二人の交際が病院中に知れ渡るも愛菜とくっつくより全然いいと思いの他周囲からも祝福されて物語は幕。どんなだけ嫌われてるんだ、愛菜ちゃん(^_^;)美玲に惚れてからの樫原の言動と必死さが微笑ましかったのと、北山さんのネットワークが凄い。評価:★★★★★
2024.08.08
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2024年5月刊LUNA文庫著者:東万里央さんホテルフェリオのブライダルプランナーに転職して三年。岡本翼はこの一年ブライダル部で、断トツの成果を上げていた。しかし、二十七歳になったものの、最初で最後の彼氏と別れたのは三年前。今や完全な社畜、カラカラの干物女に。元彼のーー昇太との破局は翼の中で癒えない傷となり、以来、恋愛とは縁遠くベッドでの独り寝がすっかり身についてしまった。そんなある日、昼休憩に入ったカフェで、翼はホテルフェリオのオーナー兼支配人である永沢連に声を掛けられる。会話に花が咲き、いつしか話題は仕事の話から恋愛に。聞けば、連も彼女と別れて三年が経ち、以来恋愛はご無沙汰とのこと。望めばいくらでも手に入るだろうにと不思議に思い、どんなタイプが好きなのか問いかけると、連は好きになったらその子がタイプなのだと言う。けれど、その意見に同意した翼に、連は嬉しそうな笑顔で付き合ってみないかと提案してきて……!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 岡本翼=トップ成績のブライダルプランナー。 永沢連=大手ホテルチェーン会長の三男で支配人。 伊藤昇太=翼の元カレ。 緑川愛=昇太の婚約者の社長令嬢。失恋を機に前職とは全く畑違いのブライダルプランナーとして働く翼は、よほど性に合っていたのか3年程でブライダル部の稼ぎ頭となっていた。今日も500万のプランが決まって上司もホクホク。オーナー兼支配人の永沢からもお褒めの言葉をいただいた。職業病か、つい街中のカップルを見ると彼らに似合うプランを考えたり、選びがちなコースを予想したりしてしまったりもするが、それだけこの仕事が好きだし楽しいからだ。翌日、ブライダル部に訪れたのは緑川愛というお嬢様風の女性。しかし、一緒にやって来た婚約者の男性を見て翼は目を見開いた。後輩社員にあっさり乗り換え、翼に仕事のミスを押し付けて退職に追い込んだ元カレ・伊藤昇太。彼は知らないフリを決め込んでいたので、翼も飽く迄ビジネスで対応。どうやら、この結婚自体、主導権を握っているのは新婦側の様で、昇太は横で頷いているだけ。招待客も多いとのことでかなり高額になりそうだった。それにしてもあれから3年経っているとはいえ、あんなに惚れこんでいた後輩・松本杏奈とは破局したんだろうか。何だかモヤモヤしてしまって行きつけのバーでヤケ酒をしていると、同じく常連らしい永沢もやって来て翼の愚痴を聞いてくれた。彼が聞き上手なのと酒の勢いで、今日来たカップルの片方が元カレだったこと。そいつに二股をかけられた挙句、間女の仕事のミスを擦り付けられて退職に追い込まれたことを語った。しかも、元カレとは同棲までしていて家賃も生活費も払わないクソヤローで、そんな男に惚れて文句も言わずに付き従ってた自分が今になると恥ずかしいとも。おかげであれから恋とは無縁で、と言うと永沢も多忙なのもあって数年恋愛はご無沙汰だと言う。好きになった人がタイプだと話す彼に自分も同じ考えだと答えると、なら俺と恋愛をしようと誘われ、酔いの勢いもあって二人は一線を越えてしまった。翌朝、正気に戻るとやってしまった感が半端なかったが、そんな彼女に永沢が提案して来たの暫く契約上の恋人となり、心の折り合いがついてこのままでも良いと思うなら正式に付き合おうと。上手く言いくるめられている気はしたけれど、翼も同意して永沢との仮初の恋が始まった。その後、緑川さんが正式にこのホテルでの挙式を決めてくれたので、引き出物含めて1千万以上の契約になった。聞けば、彼女は大手商社のご令嬢らしい。それでこの招待客数かと納得。数か月が経ったある日のこと、翼のデスク宛てに昇太からの電話が。婚約者に従うばかりの彼が元カノには横柄な態度をとる当たり、変わってないなと内心でため息を吐き、飽くまでビジネス的な対応をしていると昇太は逆ギレ。後日、永沢宛にクレームを入れて来たと聞き、心底呆れた。永沢が言うには昇太は浮気をするつもりで翼にコンタクトを取って来たんだろうと。結婚前に羽目を外す者は実際少なくなく、先日も浮気が原因で一件直前でキャンセルになっていた。翼としても誘いに乗るつもりはない、しつこく言ってくるなら永沢が対応してくれると言うので任せることにした。だが、馬鹿にされたと憤慨した昇太に帰宅時に待ち伏せされ、もみ合いになった際、殴られそうになったところを間一髪で永沢に救われた。昇太は逃げ帰って行ったが、あと数日で挙式なのに本当に大丈夫だろうか。しかし、悪い予感は的中。かつての上司に再会した翼は、松本杏奈が昇太に手酷くフラれて復讐するべく式をぶっ潰そうと画策しているようだと聞いて・・・。100歩譲って心変わりするのはしょうがないにしても、上手く別れなさいよ。昇太はそれが壊滅的に下手で、翼みたいに自分から消えてくれる人ばかりじゃないんだから。松本杏奈は金持ちの女に鞍替えされて捨てられたことが納得いかずに式をぶっ潰すべくホテルに突入。この辺はホテルの警備ガバガバやんけ、と思わないでもなかったものの、確保されていたら話が進まないので仕方なし。杏奈は愛のウェディングドレスに墨汁をぶっかけようとするも、翼が立ち塞がってドレスは無事。杏奈は警察に引き渡され、式も最後まで続行した後、翼と永沢は愛の本心を知るのでした。愛はとっくに昇太のこれまでの素行を知っており、杏奈には後に慰謝料を払うつもりでいたこと、会社を継ぐのは自分で夫に好き勝手させないし、これから矯正していくことを誓ってその場を去るのでした。恐妻に捕まり、お先真っ暗な元カレ。女遊びも出来なくなったのでこんなザマァもアリか。翼と永沢はこの騒動後、正式に交際を始めて物語は幕。短いお話ですが、起承転結がしっかりしてて面白かったです。評価:★★★★☆
2024.07.06
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2024年6月刊LUNA文庫著者:清水苺さん絹川運輸株式会社の社長令嬢として生まれたはずの凛。だが、母を亡くし父が不倫関係にあった女性を後妻に迎え入れてからというもの、継母や腹違いの弟からは小間使いとしてこき使われるように。家から出ることも禁じられ、ろくな食事もとらせてもらえない。いつしか抵抗することを諦めた凛は、家族に隷従する日々を送っていた。そんなある日、凛は父と継母におぞましい計画の実行役を言い渡される。大手ファッション通販会社ノクターンとの業務提携を得るために、遊び人の副社長に体で取り入れというのだ。つまり美人局だ。パーティ当日。副社長の高野は一瞥して、凛を教養のないみすぼらしい女とこき下ろす。返す言葉もなく悲しみに暮れていると、声をかけてきたのはなんとノクターンの社長、月山誠二。誠二……? もしかして、この人は……。「大人になったら、結婚しよう」そんなありふれた幼いころの約束を信じるほど、凛は子どもではなかったが、思い出の彼と同じ名前に心が揺れる。そしてその誠二は、凛にこう言うのだった。「絹川を裏切ろう」 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 絹川凛=継母に疎まれ、使用人以下の扱いを受けていた社長令嬢。 月山誠二=ファッション通販会社社長。 15年前の約束を果たしに凛の前に現れた。 高野清隆=誠二の共同経営者。 絹川美優=凛の継母。大手運送会社社長の長女として産まれながら、家族に虐げられている凛。特に13年前に後妻としてやって来た美優は母の存命中も父が愛人として囲っていたと聞く。美優は先妻に対して思う所があるのかとことんまで凛を嫌い、挙句の果てには家政婦扱いし日中には会社の雑用にまで駆り出す始末。顔も見たくないなら追い出せばいいのにそれをせず、死ぬまでタダ働きをさせると常々口にしていた。異母弟の仁也はお坊ちゃま扱いし、先妻の子は虐げる。昔のドラマによくある構成ではあるが、長年こんな扱いを受けていると心も疲弊してくるもので。どんどん陰鬱な表情になっていく彼女を美優と仁也は嘲笑う。そんな凛を慰めてくれたのは15年前に交わした約束。近所に住んでいた4歳上の誠二から「凄い社長になってきっと迎えに来るから僕と結婚しよう」という、今思えば子供同士の他愛ない口約束だが、最近やけに思い出すのは何故だろう。ある日、応接室に呼び出された凛は、父と美優から今夜のパーティーに参加して大手ファッション通販会社・ノクターンの副社長・高野清隆に取り入り、うちと業務提携してもらえるよう取り付けて来いと命じられた。早い話が身体で篭絡してこいと言いたいようだが、何故私が。美優は忌々し気に腐っても社長の娘だからよ、と言い捨て、失敗したらどうなるか、と嫌がる凛に言い含め、多少の出費はは仕方ないばりに美容院とネイルの予約をし、ドレス等パーティー用の一式を用意。自分に色仕掛けなど無理過ぎると絶望感を味わう凛に、美優と仁也は意地悪く笑っていたが、如何にもモテそうな人に気に入られる方法が思い浮かばない。勇気を出して会場で高野にアタックしたものの、けんもほろろに追い返されてしまって茫然。一人佇む彼女に声をかけて来たのは眼鏡をかけた優しそうな青年。彼は月山誠二と名乗り、高野の共同経営者で社長だという。そして、高野は女癖は悪いので上手く関係を持てたとしても100万程度の金でなかったことにされると聞き、成功しても業務提携は無理だと悟り愕然とした。それにしても、この人、誠二って。もしやあの時の?だが、記憶の彼とは名字が違う。ただの偶然かと思いきや、きっと絹川達は高野でなくとも僕を落とせれば問題ないと思っているはず。それを利用して逃げようと月山から提案され驚いた。しかし、何故かこの人ならという安心感があって頷いた凛に、月山は盗聴器の類を仕掛けられてないか彼女の持ち物を調べた。案の定ドレスに付いている。それを棄てると外に出た彼は渡されていたスマホとバックも道中で処分し、何も食べていない凛に食事をさせ尾行を振り切るためにあちこち連れまわした。最後に辿り着いたのは月山のマンションで、そこで漸く彼が誠二くんだと種明かしされた。名字が違うのも誠二の両親が離婚したからだそうで、実はあの後にも彼は凛を救い出そうと何度も屋敷に会いに来てくれていたらしい。だが門前払いされ続け無理矢理忍び込んだら通報までされたと話す誠二は、ならば凛の父親より大手の会社社長になろうと決意。そして、高野と共に今の会社を起ち上げたのだそうだ。遅くなって本当にごめんと謝罪され、涙が止まらず感謝する凛は改めてプロポーズされ、彼を受け入れたのだった。翌朝、絹川家を探っていた高野と合流。美優から娘想いの母を装ったメールが誠二の元に来ていたが、本性はすっかりバレているので、業務提携などとんでもないと憤っていた。高野への色仕掛けも実は二人の作戦らしく、絹川が食いつくようなネタを敢えて流し、凛を送り込んで来るよう仕掛けたのだと言う。いやな思いをさせたと謝られたがこうしてあの屋敷から出られただけでありがたい。向こうは凛を返せと言ってくるだろうし、無理矢理取り返しに来る可能性がある。一人の時は絶対に誠二のマンションから出ないと約束させられ、一先ず体調が心配だと病院で検査を受けた。当座に必要な着替えと日用品を買い込み、誠二の甲斐甲斐しい世話を受けていた凛は3か月もするとすっかり元気になり体重も少し増えよく笑うようになった。これまで絹川側が何のアクションを起こさないのは気になるものの、高野の姉が遊びに来た際、外で働く喜びについて話してからというもの、働きたくてしかたない。誠二に話すとうちの会社なら目も届くからと許され、事務員として働くことになった。だが、親切な先輩社員に昼食に誘われ、社外に出た凛は絹川の手の者に攫われてしまい・・・。凛が目を覚ますと絹川家の敷地内にある蔵の中。そこには美優と仁也がいて、もうあなたたちの言いなりにならないという彼女に殴る蹴るの暴行を加え、凛を餌に、絹川有利の業務提携を結ばせようと目論んでいました。が、強くなると決意した凛は自力で蔵を脱出。屋敷に乗り込んで来た誠二と高野に対しのらりくらりと話をはぐらかせていた絹川は、彼らに絹川運輸がブラック企業だという証拠を見せられ内心で焦りまくり。企業のイメージダウンはこのご時世非常に拙い。それでも頑なに凛を返そうとしないので、誠二たちは家探しを決行。蔵があったはずと不法侵入した記憶を頼りに向かうと、そこには仁也にドロップキックをかます凛の姿が。これは姉弟喧嘩ですからとお返しとばかりに弟に先ほど殴られた分をお返ししている彼女の姿に呆気にとられつつも、拉致監禁に暴行とはどういうことかと美優に詰め寄れば、勝手に妻子がしたことだと絹川は知らんぷり。夫の態度に美優がキレ、揉めている中、凛は父に絶縁宣言をすると誠二たちと屋敷を出て行くのでした。最後の展開はこれってコメディ?と思う程、色々ぶっ飛んたてヒロインの変わりようが何ともw こんなクズ供に従ってたと思うと吹っ切れたんだろうなぁ。そして凛が父にも虐げられてたのは母が浮気の果てに彼女を産んでいたからという衝撃の事実が。とはいえ、美優と仁也からも見捨てられてたくらいだし、あの性格じゃ前妻さんも嫌気さしてたんじゃとは思います。マジで人としてどうなのって奴だったわ、凛の父親は。親と縁を切り、熟考の末、喫茶店で働くことに決めた凛。誠二の妻になり念願のダンスをする二人の様子が描かれて物語は〆作者プロフィールを読むに主にラノベを書いてらっしゃる方なのかな?正直、このページ数で3回も長いラブシーン入れる必要あるのかと思ったのと、ちょくちょく変わった物言いがあったのが少し気になりました。お話自体は概ね〇評価:★★★★☆
2024.06.21
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2024年2月刊LUNA文庫著者:マドウマドカさん両親亡きあと没落し、今では一人で花屋を営む元伯爵令嬢のアルマローゼ。ある日、隣国からの音楽留学生クロードと出会った瞬間に恋に落ちた。二人はクロードの国の家族からの返信すら待てずに、教会で式を挙げて神の前で愛を誓い合い、身も心もかたく結ばれる。ほどなく、クロードはトラブルを片づけるためにと、アルマローゼのもとに戻ることを約束して、ひとり祖国に帰っていった。だが、妊娠したアルマローゼがそれを知らせようにも、クロードからの返事はない。やがて愛らしい男の子を授かっても、音信不通は続き、待てど暮らせどクロードが帰ってくることは、ついぞなかった。それから四年。三歳になった息子のロザリオと二人で暮らすアルマローゼは、クロードによく似た旅行者に出会う。 トビアスと名乗ったその青年は、偶然にもクロードの兄であった。そしてトビアスの口から、衝撃的な事実が語られ……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 アルマローゼ=元伯爵令嬢。 里帰りしたまま帰らない夫を息子と二人で待ち続けている。 クロード=ヴァイオリン専攻の留学生でアルマローゼの夫 トビアス=ノルネリア国の王子。クロードの義兄。 ロザリオ=クロードとアルマローゼの息子。 モナ=アルマローゼの元級友。 ヴィクトー=問題行動が多い商家の次男。事故で両親を早くに亡くしたアルマローゼは、とある理由により伯爵位を国王に返還し、平民として生きることを選んだ。そのせいで親代わりの祖母には晩年苦労を掛けることになってしまったけれど、王の温情で屋敷にそのまま暮らすことを許され、税金の免除をして貰えたおかげでなんとかやっていけている。祖母亡き今は庭に咲く大量の薔薇を切り売りして生活費を稼ぐ日々。高位貴族ながら平民となった彼女は、元級友である令嬢たちにしてみれば何かと気になる存在なのだろう。屋敷近くの露店で薔薇を売るアルマローゼの元を訪れては一々マウントを取って来る。その中でも特にモナはアルマローゼに一方ならぬ執着を見せ、時折見せる異常な言動に恐怖を感じることがままあった。そんなモナから、最近ノルネリア国から留学生がやって来たと耳にし、それもかなりのハンサムらしく級友たちも燥いでいた。その噂の留学生と出会ったのは翌日のこと。彼はクロードと名乗り、ヴァイオリン専攻の音大生だと言う。祖母の友人・ソフィアと知り合った縁で、足がおぼつかなくなった自分の代わりにアルマローゼの様子を見て来てほしいと頼まれたのだそうだ。彼は興味も無いのに店を訪れ、商売の邪魔をしていたモナたちの言動を窘め、逆に祖母自慢の薔薇たちを褒め、少々高めの鉢植えを購入してくれた。以降も何かと理由を付けては彼女の元を訪れ、時には差し入れをくれたり見事な演奏で客引きをして売り上げに貢献してくれたりもした。そんな二人がお互い惹かれ合うようになった頃、モナの暴露により、アルマローゼが平民になった理由をクロードに知られてしまった。ポートリエ伯爵夫妻が事故死したのは彼女が13歳の時のこと。祖母と二人残されたアルマローゼに商家の次男・ヴィクトーがしつこく求婚して来て断ると逆ギレした挙句、難癖を付けられて裁判沙汰に発展。貴族位が欲しいだけなのが丸判りだったため、苦渋の決断で爵位を返上した。この騒動はアルマローゼとポートリエ家の醜聞として広まり、国王が温情を掛けてくれたのもそういう経緯からであった。話を聞いていたクロードはそれはヴィクトーが恥知らずなだけで彼女は被害者だろうと慰め、今度からは自分が君を守ると求婚。クロードは少々厄介な実家だとかで、後に色々言われるかもしれないがと、結婚すると報告の手紙を送り、数日後、懇意にしている教会で二人はささやかながら式を挙げた。しかし、モナは密かに憧れて執着していたアルマローゼが素性の知れない男と結婚したのが許せなかった。モナの部屋には彼女に纏わるものが数多くコレクションされている。アルマローゼが泣く泣く売ったドレスも買取店に出向いて購入した。憎いクロードのことで何か知る術はないかと彼の下宿先まで出向き、宛先の人物は自分の屋敷に居を変えたと嘘を吐き郵便屋からクロード宛の郵便物を手に入れた。ノルネリア語なので読めないけど、今後の彼宛の郵便は全て自分の屋敷に転送するよう金を握らせるとモナはほくそ笑んだ。不正で入手したこの手紙にクロードの人生を左右することが書かれていることも知らずに。モナのやらかしに気付かず、ポートリエ邸で仲睦まじく暮らしていた二人。薔薇の販売だけでは頭打ちになると、クロードが提案したローズヒップを使ったお茶の販売が予想以上に当たり、教会のシスターたちにも協力を仰ぐと生産量も増えて、利益も上げて来ている。しかし、さすがに連絡が付かない事に不審がられ、内容証明がクロードの通う音楽学校宛に届いた。担任から渡された封書を読んである決意を固めた彼は、暫くの間帰国し、正式な手続きをしたらまたここに戻って来ると言い残し、当座の生活費として大事なバイオリンを売って作った金をアルマローゼに渡すとノルネリアへと旅立った。その直後、体調を崩した彼女は自分が妊娠していることを知った。一人で過ごすのは不安もあるが、ソフィアやシスターたちの励ましで何とか乗り切り、数か月後、彼女は長男・ロザリオを産んだ。あれから3年、彼は未だに帰ってこない。疲労回復に効果があるとしてローズヒップティーは好調に売り上げを重ね、クローディアスという名の店を商店街に出すことが出来た。ロザリオは3歳になり、息子と共に店に出ているとヴィクトーが現れ、自分の愛人になれと迫って来た。当然、突っぱねたが酔っているのかしつこく絡まれていたら、見かねた主人に命じられて来たと言う従僕に助けられた。自警団長のパロウも現れ、きつく釘をさしておくからと連れられて行くヴィクトーに恐怖を覚えていると改めて助けに入ってくれた従僕に礼を言った。すると、近くに止まっている馬車の中に主人らしき人物がちらりと見えて、その姿に釘付けとなった。クロード? 従僕に主人の名を尋ねると彼はトビアスという名らしい。後日、偶然にも街中でトビアスに遭遇したが、そっくりだけど雰囲気や仕草が違うので別人なのだろう。だが、夫を待ち続け、その名がクロードと聞き、彼は顔色を変えると衝撃の事実をアルマローゼに語り・・・。クロードは自分の義弟であり、トビアスを庇い3年ほど前に亡くなったと聞き、アルマローゼは愕然。しかも、トビアスはノルネリアの王子というからびっくり。クロードはトビアスの父の弟の子で、両親が事故死して以来彼の家の養子となっていました。複雑な家系と言っていたのはそういうわけかと彼女も内心で納得。そしてノルネリアは現在、王位継承で揉めているそうでクロードの死もその騒動に巻き込まれたから。義弟が自分のせいで死に、胸を痛めたトビアスは国を離れ療養がてら、アルマローゼと甥にも会いにこの国にやって来たのでした。モナに後押しされ平民になっても美人のアルマローゼをものにしようと躍起になるヴィクトーに恐怖を感じていた頃、トビアスからクロードの血を引くロザリオには王位継承権があるとノルネリアに来ることを薦められます。しかし、クロードの死を思うと息子を巻き込みたくない。そんな最中、業を煮やし強硬手段に出たヴィクトーはトビアスとパロウによっても教唆したモナ共々御用となり、ここで初めて家宅捜査されたモナの部屋にあったクロードの宛の手紙が見つかることに。これがちゃんと本人に届いていれば諸々状況も変わっていたはず。そしてアルマローゼを助けるために怪我をしたトビアスはその衝撃で実は義兄の死により記憶障害を起こしていたクロードであることを思い出し、本来の自分を取り戻すのでした。まぁ、これはチャプター名で記憶云々書かれていたこともあってそうだろうなとは思ってました。さすがにヒーローが妻子を残して死ぬ展開はねぇ。クロードは全てを思い出し、義父が王位に就いている間は妻子と共にこの国に留まることを決め、14年後、再会後に生まれた娘含め、ノルネリアに王位を継ぐべく帰国したところで幕。タイトル通りにシークレットベビーものではあるんですが、今回はちゃんと結婚してたのに、ヒーローの記憶障害やらヒロインに執着する元級友の横やりのせいで不運が重なったという展開でした。このレーベルにしては若干ですがページ数も多くモヤモヤ度も高めだった気がします。とにかく、あの元級友の異常さが薄気味悪くて色々とドン引き(^_^;)評価:★★★★☆
2024.06.09
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2023年7月刊LUNA文庫著者:ちろりんさんBLゲーム『耽溺の檻』の世界に転生したことを知ったシャーロット。天使のように可憐な義弟のノアは『耽溺の檻』の主人公だった。美しいノアのハーレム形成を夢見ていたシャーロットは、ヤンデレたちから彼を守るためノアに剣を習わせることに。そのおかげでノアはしなやかな筋肉がつき、毅然としたミステリアスな雰囲気をまとう男性へと成長した。…だが、ノアの様子がおかしい。「これで心置きなく僕に抱かれることができるね」ーー別荘に連れて来られ、ノアにそう囁かれたシャーロット。ヤンデレ製造機のはずのノアは、気づけばシャーロットに対してヤンデレになっていたのだった……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 シャーロット=前世の記憶を持つ侯爵令嬢。 ノア=BLゲーム「耽溺の檻」の主人公。シャーロットが前世の記憶を思い出したのは11歳になったある日のこと。母親の再婚相手、メルクリス侯爵の連れ子・ノアを紹介された時、彼の姿と名前でここが前世の自分がプレイしていたBLゲーム「耽溺の檻」の世界だと気付き、ショックを受けた。いずれノアは無自覚ながら魔性の男として大勢の者をヤンデレ化させ愛される。しかし、彼が愛してやまない姉・シャーロットの生死により、受けルートか攻めルートに分岐。バッドエンドにさえ入らなければ受けルートはまぁまぁ幸せな結末を迎えられる。だが、せっかくなら自分の目で見たいのは攻略キャラ全員を落とすスーパー攻め様モードのノア。王子すら手懐けてこの国を裏から牛耳り攻略キャラ全てを従えるハーレムエンド。その彼の姿を是非間近で見たい。シャーロットが生き残れば受け、不幸にも亡くなってしまえば攻めルート。スーパー攻め様モードを見たければ、彼女は何としても生き残りつつもノアを攻めキャラに育てなければならない。1歳下の彼の子供時代は天使のように可愛らしくて大人しい性格だった。当然ながら受けルートはこのまま成長した彼が攻略キャラ達の毒牙に罹りつつも逆にノアの魅力で篭絡していくというお話が展開する。ぶっちゃけ、これも悪くない。攻めルートに進めたいのはまぁ好みの問題だ。そんな邪な姉の本音に気付かず、ノアは彼女を慕い、シャーロットに言われるがまま勉強に励んで己を鍛えた。7年後、必死な根回しのおかげでノアを攻めキャラに育て上げ、自分が殺される運命の日も何とか乗り切ったシャーロット。婚約者のゲイリーも攻略対象の一人なので、ハーレムエンドを見るために近いうちに婚約解消を持ち掛けよう。でないと、来年にはゲイリーと結婚しないといけなくなる。そう思っていた矢先、ノアに誘われて侯爵家所有の別荘までやって来た彼女は、到着早々睡魔に襲われ昏倒。目覚めると黄色い花を散らしたベットの上。見るとお香のようなものまで焚かれていて、花の香と相俟って嗅いでいると何だか体が熱くなってきた。ベットの側に立っていたノアはそんな彼女を見下ろし、漸く姉さんを自分の物に出来ると恍惚とした表情を浮かべている。その顔はずっと望んでいたスーパー攻め様モードの時の。彼の説明によれば、このお香と花には催淫効果があるらしい。いや、あなたがこういう手段に出るのは攻略対象でしょ、それ以前にBLゲームの主人公が女に走るのはおかしいからっ。この状態のノアに私たちは姉弟じゃないのと、尤もらしいことを言って説得しようと試みたが、そもそも血は繋がってないので法律上なんら問題は無く、世間体が悪いだけで結婚もできる。元々、義姉のことが大好きな設定なのに、その彼女が生存したまま攻めルートに入ってしまった。おかげで男に走る理由が無い。拠って義姉を何としても落として添い遂げようとしているのだろう。予想外のことにシャーロットは焦り、説得を続けたがノアは聞く耳持たず、彼女を篭絡しようと流石のテクニックで仕掛けて来る。初日は何とかキス止まりで済んだが、数日もしないうちに一線を越えそうでヤバイ。頼みの綱だった両親は姉弟水入らずで休暇を過ごしたいと上手くノアが言いくるめたと言っていたので帰宅予定日を越えない限りここには来ないだろう。自力での脱出はお香と花のせいで体がだるいし、足首には枷が嵌められているので外に出るのは不可能。この詰んでる状況では、諦めて彼を受け入れるしかないのか。実際、嫌いどころかノアは現状一番好きな人だ。だが、大事な弟という枠をはみ出してはいけないと理性がストップがかかる。それにしても彼は何であんなに上手いんだろう。まさか、モテるのを良いことにあちこち手を出して遊んでるとか?そう思い込んだ彼女は何故か胸が痛んで・・・。ゲームの世界に転生、というよくあるパターンではありますが、それがBLゲームだったので、ヒロインは自分が恋愛対象になるはずがないと高を括っていました。ハーレムエンドが見たいからと、自らの手で矯正を施したせいで姉大好きな弟は、彼女が結婚してしまう前にと行動に移ります。何だかんだとシャーロットもノアを憎からず思っていたので、歯止めをかけていた理性も崩壊寸前。しかし、勝手な妄想でノアが他にも手を出しているのではと思い込み、嫉妬心に気付いた彼女は漸く、自分も異性として彼を愛していることに気付いて、ノアを受け入れます。実際、ノア自身は彼女一筋で遊んでなどおらず単に主人公補正のテクニックだったと後に判明。恋人同士になった二人でしたが、シャーロットには婚約者がいる。まぁ、いずれ婚約解消するつもりだったけどノアと結婚するからという理由は相手の家が抗議してきそうだな。当たり障りのない言い訳を考えていると、なんとゲイリーの方から破談にして欲しいと申し出が。なんでも、彼は浮気した挙句相手を妊娠させてしまったらしい。責任を取ってそちらと結婚することになったと話すゲイリーに驚いていると、ほくそ笑むノアの様子が気になった。あの花とお香は随分効いたようだってまさか?ノアのしでかしに気付いたシャーロットはその用意周到ぶりにドン引き。娘の破談に頭を抱える両親にしれっと自分が彼女と結婚するから問題ないと報告するノアに父は体裁が悪すぎると猛反対したものの、息子の人脈の広さのおかげで事業も上手く行っている手前、機嫌を損ねる訳にはいかず、渋々二人の結婚を認めるのでした。シャーロットはハーレムにはしなくとも陰でこの国を操る裏ボスになっていた彼に改めて惚れ直したところで幕。ヤンデレ化すると言う他の攻略対象が登場しないのであんまりヤンデレ感は無かった気もしますが、割とタイトル通りのお話だったと思います。評価:★★★★☆
2024.06.08
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2023年11月刊LUNA文庫著者:瑞希ちこさん「アラン・アングラードは、ロズリーヌ・ベルジュに婚約破棄を言い渡す! 並びに、ひとりの令嬢を執拗にいじめ続けた罰として、お前を国外追放に処す!」ロズリーヌは、ずいぶん前からこうなることをわかっていた。ここは前世で読んだ小説の世界で、自分はその小説で“悪役令嬢”として登場するキャラクターだと把握していたからだ。ヒロインのジャネットが第二王子のアランとさまざまな困難を乗り越えて結ばれる物語。ロズリーヌはふたりの恋路を邪魔し、読者からのヘイトを買って、物語を盛り上げるためだけに存在していた。結果、ロズリーヌは悪行を重ねた罰として国外追放を言い渡されバッドエンドーー。最初こそ運命に抗おうとしたロズリーヌだったが、シナリオ強制力のせいで強制的に悪役を演じ続けなくてはならなかった。そんな辛い日々がやっと終わる。ロズリーヌは待ち望んだ婚約破棄と国外追放を言い渡され、解放感でいっぱいだった。ここからは第二の人生の始まりだと。しかし、そんなロズリーヌを待っていたのは、婚約者として王宮に迎え入れたいというアースベル国のリオネル王太子からの手紙でーー!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 ロズリーヌ=婚約者の第二王子に婚約破棄された公爵令嬢。 リオネル=アースベル王国王太子。 アラン=ラグニカ王国第二王子。ロズリーヌの元婚約者。 ジャネット=アランの浮気相手の伯爵令嬢。学園の卒業式で婚約者である第二王子・アランから婚約破棄を告げられた挙句、国外追放を言い渡されたロズリーヌ。彼の隣には伯爵令嬢のジャネットが寄り添っていた。ここが前世で読んでいた恋愛小説「my only prince」の世界だと気付いたの1年ほど前のこと。しかも過労死した自分が悪役令嬢のロズリーヌに転生していたとは。正直、婚約破棄はともかく国外追放は避けたい。ならば、悪役らしい行動をしなければ回避できるのでは?と思っていた。しかし、勝手に筋書きを変えられぬようにか因果律が働いて、ロズリーヌが直接手を下さずとも彼女の取り巻きの令嬢達により実行に移されてしまう。先回りをしようが取り巻き連中に注意しようが状況は変わらない。結局、抵抗しても無駄だと判ってジャネットへの嫌がらせの主犯格としてその罪を潔く認めることにした。物語のヒーロー&ヒロインがハッピーエンドになるためには悪役令嬢は去るべきなのだ。しかし、これからどうしよう。厳格な父母は王家からの知らせで娘に激怒しているはずだ。恐る恐る帰宅すると、予想に反して両親は大喜びでロズリーヌを出迎えた。アランからの婚約破棄に国外追放処分のどこに喜ぶ要素があるのかと思えば、大国・アースベルの王太子より求婚の申し込みが来ているとのこと。リオネル王子とそんな仲なら早く言ってくれれば、と父は満面の笑み。いや、こんな人知らないんだけどとは言えず内心で首をひねった。でも、リオネル王子に全く面識が無いので今後の人生がどう転ぶからわからないけれど、両親に勘当同然で追い出された挙句、国外に放り出されるよりは大国の王太子に嫁いだ方が断然良い。大急ぎで輿入れの支度をしていた数日の間に、流石に体裁を気にしてか国王から国外追放の件は却下されていたのはありがたいことだった。それから暫く経ってアースベル王国にやって来たロズリーヌを迎えたのは、結婚相手であるリオネル王子で長旅を労ってくれた。それにしても元の性格なのか初対面の割に随分気安い態度。思わずどこかでお会いしましたっけ?と尋ねると、クラスメイトのリオンだよと言われて驚愕。リオンってあの一番後ろの席にいた瓶底眼鏡の??素顔はこんなキラキラの美形だったのも意外だが、彼は正体を隠してラグニカ王国に留学していたのだそうだ。そこでロズリーヌを見初めたと言うが、婚約解消と同時なんて求婚のタイミングが好すぎる。思わず訝しんだが、のっけからの彼の溺愛ぶりにすっかり骨抜きにされるとどうでもいいように思えた。それから一か月後、二人の婚約が正式に発表され、大々的なパーティーを開くという。リオネルの話ではラグニカからは代表でアランが来ると聞き気が重い。当日やって来たアランと新たな婚約者になったジャネットは出迎えたロズリーヌたちを明らかな敵意を込めて見て来て・・・。恋愛小説のヒーローとヒロインだっていうのにこの性格の悪さがもうね。ジャネットはロズリーヌが取り巻き達を諫めていたことも知っていたものの敢えてそれは証言せず、邪魔者を追いやるべくあることないことアランに吹き込んでいました。アランも可愛げないロズリーヌよりジャネットが良いと婚約破棄に踏み切ります。でも、国外追放は普通にやり過ぎよね。自分達が悪く言われないようにするためにせよ、人一人の人生なんだと思ってるんだか。邪魔者を追い払いしめしめと思いきや、大国の王太子がロズリーヌに求婚。慌てて国王は国外追放を撤回してしまい彼らの目論見はパァ。王位を継げない王子とその婚約者より、未来の王妃になるロズリーヌの方が立場が上になり、ぐぬぬとなっていました。それを見てほくそ笑むリオネルは、留学中に側近に命じて彼らのことを探らせていたため婚約破棄するという情報を得ていたのでああもタイミングよく求婚の申し込みが出来たのでした。ページ数も少ないので、元婚約者たちに陥れられたヒロインがヒーローの根回しのおかげで知らぬ間にそいつらにザマァして終わり。そんなシンプルな内容でした。その割にラブシーンは3回と多目。ぶっちゃけ、これがなかったら50ページくらいで終わっちゃうストーリーではなかろうか。短めのTL小説が読みたい方には良いのかも。評価:★★★★☆
2024.05.14
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2023年5月刊LUNA文庫著者:小山内慧夢さん王城の厨房はいつでも戦争だ。料理長のアシスタントとして働いているフィオーナには毎朝スープをある人物のもとへ持っていく役目があった。ある人物とは、ワガママで、しかも女好きという噂もある王弟殿下・レンブラントである。彼のワガママに振り回されて憤るフィオーナだったが、毎朝のことなのにどうしても彼の部屋の雰囲気と、掠れた声に慣れることができずにいた。いつも心がざわついて逃げ出したくなるのだ。そんなある日の朝、彼の目の下に著しいクマがあることに気が付いたフィオーナは、関わり合いになりたくないと思いながらも、つい声を掛けてしまい…… ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 フィオーナ=王宮の厨房に勤める料理人。レンブラント=女好きの遊人という噂のある王子。ヘンドリック=クルレード王国国王。レンブラントの兄。いつか自分の店を持ちたい。夢を叶えるために給料が良い王宮の厨房で働いている料理人のフィオーナ。尊敬する叔父がこの厨房で料理長を務めており、彼女の腕を見込んで声を掛けてもらえたのはラッキーだった。主に叔父のアシスタントとして毎日戦場のように忙しくて慌ただしい日々を過ごしている。だが、そんな忙しない本業の合間に、フィオーナはとあるやんごとなき方からの要望で専用の朝食(スープ)作りと配膳を任されていた。手違いでフィオーナが作った賄いのスープが王弟・レンブラントに提供されてしまい、その味を大層気に入ったとご指名が入ったからだ。料理人故に高貴な方に料理を絶賛してもらえるのは嬉しいが、朝食の準備に追われる同僚達を横目にレンブラント用のスープ作りをしていると申し訳なくなる。おまけに殿下はフィオーナのスープを飲んでから就寝とという昼夜逆転生活をしているので差し出がましいと思いつつ、夜遊びもほどほどになさっては、とつい声を掛けてしまった。あとで不敬だと苦情が来たらどうしよう。そんなある日、方向音痴気味のフィオーナが広い王宮内で迷っていると、奥まった場所でなにやら側近と深刻な会話をしているレンブラントを見かけた。立ち聞きする気は更々なかったものの、漏れ聞こえた会話内容は彼の兄である国王・ヘンドリックのこと。現王は優秀ではあるがそれ故に少々唯我独尊であった。おかげで古参の貴族からは良く思われていないらしい。そこで、ヘンドリックを退位させレンブラントを王位にと声高にいう者も少なくないようで、大ごとにならぬよう彼直々に動いているということだった。側近はおかげで夜遊びと勘違いされてるんですよね、と軽口をたたいていたが、フィオーナはあの日噂を鵜呑みにしてほどほどになどと判ったようなことを言ってしまったことを後悔。政治のことはよく判らないが、ヘンドリックは賢王として国民からの人気も高いし、悪天候が続き作物の収穫量が減った際には減税とし、貴族に緊縮令を出した。貴族からの反発はこの緊縮令のせいのようだが、レンブラントがこれ以上無理をしないよう祈るばかりだった。この一件で彼への印象がガラリと変わり、以降レンブラントに会う度に意識してしまうフィオーナ。不眠だと言う彼の為にハーブティーやアロマオイルを用意し、請われるままオイルマッサージ迄施してしまった。そんなある日、レンブラントから突然キスされてビックリ。遊び人でないのは判っているが、これは一体どういう意図で?きっとお礼のつもりとかかもしれない。そう思い込む彼女の様子に、全く自分の想いが通じていないと項垂れるレンブラント。彼は諸々の面倒事が片付いたら臣籍降下するつもりでいたのだが、条件が結婚ということで難儀していた。そこに好みの味を作る女性が現れ、いざ会ってみると性格も良い。以来、何かとアプローチしていたのに例の噂のせいか全く相手にされなかった。しかし、誤解が解けたのか意識してくれるようになったのは嬉しい。これを機に一気に距離を縮めようと考えていた。だが、ある夜、宿舎に帰宅途中のフィオーナは3人の男たちに脅され、三日後の晩餐会の食事に毒薬を混ぜるよう命じられた。先ず料理人の矜持として食事に毒を盛るなんてとんでもない。応じるつもりはないが、指示を実行しないとフィオーナの身内に手を掛けると言われては。悩んだ彼女は追い詰められた末に高熱で倒れてしまい・・・。王弟と料理人の両片想いカップルの恋は貴族の謀略に巻き込まれて前途多難、的なお話です。フィオーナが熱で倒れたと耳にし、看病にやって来たレンブラントは、熱に浮かされた彼女を上手く誘導し、フィオーナが命じられた兄と自分の暗殺計画を聞き出して手を打ちます。バレてるとも知らずに首謀者である内務大臣・ノリントン公爵は死んだふりをした王と王弟の姿に高笑い。べらべらと計画の全容を語ってくれるというサービスぶりを見せた後、死んでませんけど?と起き上がったヘンドリックに唖然。国王と王弟の暗殺未遂で御用となるのでした。後は芋づる式にノリントンの一派は捕縛されて一件落着。レンブラントは自らの想いを告げ、二人は結ばれます。後に宣言通りにレンブラントは臣籍降下し、フィオーナとも無事結婚に至ったというのが、数年後のエピソードで語られていました。物語的には謀略もありつつも展開自体はシンプルで読み易かったです。フィオーナの作るスープやデザートが美味しそうで読んでてお腹が好きました。レンブラントは胃袋を掴まれ更に彼女の外見がドストライクだったので必死にアピールするもなかなか気づいてもらえず。まぁ噂のせいもいあったんでしょうけど王子様ですからねぇ。臣籍降下したとはいえ、身分違いでどうこう言われてそうだけど、多分暗殺事件での功績が認められたのかな。評価:★★★★☆
2024.04.26
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2023年4月刊LUNA文庫著者:白柳いちかさん母を病で失ったバレ伯爵家の長女、エミリエンヌは伯爵家で孤立していた。冷たい家族に余所余所しい使用人、そして遠い異国の地にいる婚約者。いっそ修道院へ入ろうかと考えていたところに、婚約者であるベルナールの帰国を知る。近いうちに会いに行くとのメッセージを受けとったエミリエンヌ。だが、彼に一目惚れした異母妹から婚約者の座を譲るよう迫られ、もう期待したくないと父に判断を委ねてしまう。一方、バレ家でエミリエンヌを孤立させようとする義母に怪しまれないよう、義務的な婚約者を演じていたベルナールは、ようやく妻として迎え入れられると楽しみにしていた。しかし、そんな中もたらされたのは婚約の破談とエミリエンヌが修道院へ入るとの噂で……? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 エミリエンヌ=伯爵家の長女。継母に嫌われ蔑ろにされていた。 ベルナール=侯爵家の跡取りでエミリエンヌの婚約者。 ソランジュ=エミリエンヌの異母妹。 ナタリー=エミリエンヌの継母。 バレ伯爵=エミリエンヌの父。王宮で事務次官を務めるバレ伯爵の長女・エミリエンヌは、屋敷で孤立していた。継母が彼女を疎み、徹底的に家族と関わらせなかったせいだ。エミリエンヌの実母は彼女が4歳の時に病死し、父は妻によく似た娘を大叔母に預け遠ざけた。だが、女性は爵位を継げない事がネックとなり親族たちに押し切られ渋々再婚。それが今の伯爵夫人・ナタリーである。夫人は後に娘のソランジュと待望の男児・オーバンを産んだ。元々、跡継ぎを設けるのが目的の再婚、息子が産まれると父は仕事に没頭。屋敷にはほとんど帰ってこなかった。その頃になってエミリエンヌも大叔母の屋敷から戻されたものの、優しかった古参の使用人達は皆解雇されており、見知らぬ者ばかり。継母は実の子であるソランジュとオーバンだけを可愛がってエミリエンヌは無視されていた。それでもさすがに世間体を考えてか社交界デビューはさせてもらえたが、介添人は不要とナタリーに一喝されて以来舞踏会などの社交活動の参加も出来ず、おかげでドレスも普段着だけで充分だろうと予算も大幅に削減されている。幸い、彼女には幼い頃に婚約を交わした侯爵家の嫡男・ベルナールがいるので、あくせく舞踏会に出てお相手を探す必要はないのだが、実のところ、夫人が実の子だけを可愛がり、先妻の子を蔑ろにしているというのは社交界に知れ渡っていた。なので、唯一継母に許されている孤児院への奉仕活動で顔を合わせる同じ支援者の貴婦人たちからの探りが凄くてエミリエンヌも内心で苦笑い。彼女達は亡き母とも親しかったらしく、きっと心配してくれているからだろう。そんな会話の中、外交官を務めるジェラン侯爵一家が先日帰国したと耳にし、長らく会えていないベルナールを思い出した。でも婚約者とは言え彼は、年に一度義務的に手紙と贈り物を届けて来る程度で、実はもう私に興味が無いのかもしれない。だが、その日帰宅すると彼から手紙が。近日中に挨拶に来ると言う。早速返事を書こうとしているとソランジュがやって来て、ベルナールに一目惚れしたから婚約者を変わってほしいととんでもないことを言いだした。継母が甘やかすので随分な我儘娘に育った異母妹にため息が出たが、さすがに家同士で決めたことを自分の一存では決められないと却下した。それでもしつこく食い下がってくるので、父が許可するなら良いとまだ煩い妹を追い出した。まぁ、いくら家族に興味の無い父でも許可はしないだろう。でも、万が一の可能性もある。ついさっきもし許してくれたら?という底意地悪そうな妹の笑みに、その時は修道院にでも行くからと返答してしまったのはやり過ぎだったか。一方、バレ伯爵家に潜り込ませていた使用人からの報告で、エミリエンヌの異母妹の我儘とその詳細を聞いたベルナールは激怒していた。ナタリーが後妻になってからというもの伯爵家はめちゃくちゃだったが、ここまで愚かとは。この件についてはソランジュの独断とはいえ、どう甘やかせばあんな考えに至るのか。父に付いて家族で隣国で暮らしていたベルナールは愛しい婚約者にせっせと手紙やプレゼントを贈っていた。大叔母の家に預けられていた時は返事も早々に貰っていたけれど、彼女が伯爵家に戻ってからは待てど暮らせど返事が来ない。まさかと思って諜報活動に長けた者を使用人としてバレ家に潜伏させたら、エミリエンヌと親しくしていた友人からの手紙や招待状の類は全て彼女の目に触れる前に処分されていた。当然、ベルナールの手紙も。ショックだったが彼女はもっと憔悴していただろう。届かない手紙に心変わりを疑ったかもしれない。そこで、誕生日などの大事な日には侯爵家から使者を立て直接手渡すようにした。任期が終り、漸く帰国できたと思えばバカ女のせいで婚約解消されそうな勢いではないか。その日、王家主催の舞踏会に参加を許されたエミリエンヌはベルナールと再会。彼女の為の馬車さえ用意されておらず、一人ぽつんと迎えを待つ彼女の姿にベルナールは作戦を決行。自分の馬車で送るからとエミリエンヌを半ば無理矢理乗せ、眠りを誘う香で彼女を眠らせると屋敷の離れに閉じ込め・・・。その頃、伯爵家ではエミリエンヌが帰ってこないと大騒ぎ。知らせが行って久しぶりに帰宅した伯爵は執事からの報告で、ナタリーによる娘への仕打ちに唖然。そもそも、目的地に送り届けたら馬車は一度屋敷に帰らせ、頃合いを見て迎えにやっていたと言うから誘拐などの危険性を考えれば有り得ない。まして保護者替わりの介添人も不要として舞踏会にもほとんど参加させなかったと聞いて大激怒。止めにソランジュの我儘の件といい、何もかも自分が娘を一人きりにさせてしまったせいだと伯爵は自分を責めます。まぁ、実際その通りなんですけど(^_^;)でも元々優秀な人なので決断も早かった。ナタリーを糾弾し本人もそれを認めるとこれまでの振る舞いの罰として田舎の領地での謹慎を命じます。離縁はしないけど今後は伯爵家と家族には関わらせないと宣言。ソランジュの希望も勿論却下。それ以前にベルナールがエミリエンヌに惚れてるのに向こうが承知するはずないわけで。次女の我儘放題な性格も矯正が必要と後継のオーバン共々、王族の教育係も務めあげた大叔母の元に預けるなど、何だやればできるじゃんお父さんって感じ。監禁状態のエミリエンヌの方はガッツリとベルナールの想いを教え込まされたのと彼の母から聞いた母の遺志を聞いて我慢するのを辞めるのでした。その後、再会した父からの謝罪も受けて、後に二人は結婚。舅と同じく外交官となったベルナールと共に隣国で暮らしている様子が描かれて終わっています。継母に虐げられていたヒロインですが、世間体を気にしてか使用人扱いしてたとかではありませんでした。が、じわじわ孤独に追い込むってのは正直性格悪いなぁと。とはいえ、これは継母を愛さなかったお父さんのせいでもあって娘への扱いを知った父は猛省したものの、何か20年近く放っておかれた側としては今更って感じだし複雑よね。婚約者も状況判ってたならっもう少し何かできたような気も。評価:★★★★☆
2024.04.10
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2017年12月刊LUNA文庫著者:栢野すばるさん悪魔と同じ赤い目、同じ銀色の髪で生まれたマリリは、氷海の部族の長である父から忌み嫌われ疎まれながら育ってきた。銀海の大国に和平を申し入れた父は、その証として成長した末娘のマリリを人質としてアイレンベルクの王・アルスタッドに献納。しかし、マリリが武芸をたしなむことを知って、アルスタッドはにわかに関心を寄せ、マリリを寵姫として迎え入れたのだった。初夜。刺客ではないかと身体のすみずみまでアルスタッドに調べられる。耐え難い羞恥と恐ろしさにマリリはパニックを起こしてしまう。王に屈辱を与えてはいないだろうか? おそるおそる顔を上げるマリリに、アルスタッドは優しい声をかけ、毎夜マリリの元に通ってくるようになる……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 アリリ=蛮族の長の末姫。貢物としてアルスタッドに献上された。アルスタッド=大国・アイレンベルクの王。珍しい容姿に産まれたアリリは族長の娘でありながら虐げられて生きて来た。気に掛けてくれるのは実母と乳母のみで、父がアリリに関心を向けることは無かった。そんなある日、長らく大国アイレンベルクの脅威に怯えていた族長はついに属国になることを決意。従属の証としてアリリを貢物として差し出したのだった。今までいないもの扱いしていた癖に、厄介払いできる良いチャンスとでも思ったのだろう。実父ながらその日和見ぶりには腹が立ったが、アリリの銀髪と赤い目はアイレンベルクでは美しいと褒めたたえられた挙句、丁重にもてなされてビックリ。とはいえ、別段要求したわけでもないのに是非にと押し付けられたアリリをアルスタッドは疑っていた。閨では一番無防備になることから暗殺者には女も多い。試しに剣を向けてみたが、彼女は全く動じない。アリリの故郷ではごく稀に驚異的な身体能力を持つ者が産まれると言う。現に彼女は生活の為に狩りをしていて素手で狼を倒すほどの腕前だった。並の人間ではまずアリリに勝てない。一目で彼女の実力を見抜いたものの、だからこそ暗殺の命を受けているかもしれないと押し倒したら彼女が羞恥心からパニくり過呼吸に。閨教育もされていない事が判っておかげでアリリの疑いは晴れた。翌日、彼女が貢ぎ物になった経緯を聞くと単に厄介払いされたのだと聞いて他人事ながら頭にきたが、美人で細身ながら殺しても死なないような強さは気に入った。恥ずかしがり屋な性格というギャップも良い。アルスタッドはアリリの部屋に足繁く通い、後に彼女を寵姫としたのだった。王が蛮族の姫にご執心と言う噂は城内に広まり、自分たちの評価も上がるからとアリリ付きの侍女たちは大喜び。でも、そんな彼女の存在を良く思わない者もいて根も葉もない悪評を流されたりもした。とはいえ、王国の言葉を勉強中のアリリには意味が分からず全くダメージを与えていなかった。だが、悪口が効果ないと判ると頭上から植木鉢が落ちて来たり、ガラス片を投げつけられたりと大怪我しかねない嫌がらせが続き・・・。タイトル通りの内容です。不遇ヒロインに当てはまるんでしょうけど、それがとてつもなく強かったら?このワンセンテンスがプラスされただけで斜め上方向に面白い。アリリに植木鉢落とそうが、ガラス片を投げようが先ず当たらず、逆に彼女は側仕えの侍女たちに当たらないか心配する始末。他に被害が出ない様、犯人探しに乗り出すアリリだったけど、誤解も解けて彼女を溺愛するアルスタッドは心配でハラハラしっぱなし。終盤見事に犯人は御用されるものの、いやはや喧嘩売った相手が悪かったねぇ。読んでてこいつ終わったなって思いましたもん。この事件後、アリリは妃として迎えられ子宝にも恵まれましたって〆でした。ラストに王妃は暗殺者に数回狙われるも物ともしなかったって武勇伝がパンチ効いてて良いwアリリの父の身勝手さにはムカッとしたけれど、厄介払いしてくれたおかげで生涯の伴侶にも会えて幸せになれたのでそこはグッジョブ。100ページちょっとの短いお話ですが意外な展開もあって面白かったです。評価:★★★★★発行年数もそこそこ前なれどイラストが若干レトロ風ですね
2023.11.19
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2018年11月刊LUNA文庫著者:深森ゆうかさん幼いころに引き取られたブライトン家でひどい扱いを受けていたリオナを嫁として迎え入れたシオンは、その1年後には第二王子に随行して、北の砦に赴任してしまった。 数年で終わるはずの任務は長引き、ようやく6年ぶりに戻ってきたシオンの前に現れたのは、6年前のやせっぽちな少女からは想像もできないほど美しい乙女だった。 リオナの将来を考え、養子縁組を結び直して父親がわりになってもよい、と考えていたはずのシオンは、すっかりリオナの虜に。度が過ぎるほどの溺愛っぷりに、母のみならず使用人たちまであきれる始末。 そんなラブラブな折、女遊びの派手な第二王太子ヴィクトルから舞踏会の招待状が届く。嫌な予感しかないシオンは、招待状を無視しつづけるのだが……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 リオナ=幼少期に引き取られた伯爵家で使用人扱いされていた少女。 12歳の時にシオンの元に嫁いだ。 シオン=男爵家当主。 ヴィクトルの補佐として北の砦に6年間単身赴任していた。ヴィクトル=クレイテス王国第二王子。不遇ヒロイン+歳の差婚ものですが、結構コメディ寄りかも。婚外子だったせいで義母たちから虐げられ使用人扱いされて育ったリオナは、12歳になったある日、異母兄・トビアスの友人であるシオンに嫁いだ。家族からの虐めで痩せ細り、今にも死にそうだと焦ったトビアスがシオンに相談し、多額の結納金を払うことで成立したものだった。シオンのクリフォード男爵家で暮らし始めたリオナは、姑のアマンダにも可愛がられ、本来の自分と健康を取り戻し、健やかに成長していったのだが、結婚して1年も経たない頃、シオンが任務によって第二王子・ヴィクトルの補佐として北の砦に赴くことが決まり、以降二人は離れ離れに。あれから6年。漸く任期が終わり、王都にシオンが帰って来た。19歳になってすっかり大人になったリオナを見て驚きつつも、年齢のせいで手を出せなかったあの時とは違う。罪悪感もあって葛藤しつつもやっと本当の夫婦になれた二人。アマンダに馬鹿夫婦と内心呆れられるほどのバカップルぶりを周囲に見せつけていた。しかし、そんな夫婦に思わぬ危機が。顔が良いせいで恋多き男、赴任中の砦でも何かと女性関係のトラブルが多かったヴィクトルが舞踏会でリオナを見初め、自らの妻にすべく猛烈なアタックを始め・・・。このヒロイン・リオナは実は大層な美人で、実家で虐められてたのも恐らく妬みからではないかとシオンも思っていました。性格も良く美しい自慢の妻、ヴィクトルに合わせるのは嫌だなーと招待も断り続けていたものの、流石にこれ以上は拙いと渋々出掛けたら予想通りの展開。いくら王子相手でも妻を譲れと言われて素直に渡せるわけはなく。運良く現れた王太子のおかげでその場は助かったが、その様子を見ていたリオナの実家の面々が、あいつは使えると判断。彼女をヴィクトルに献上しようと、娘は誘拐同然で連れて行かれたとでっち上げの訴えを起こされ、シオンはピンチに。枢機卿迄まきこみ、更に騒ぎに乗じて恋に狂ったヴィクトルがリオナを誘拐。結局、騒動を収めるために弟の悪行に堪忍袋の緒が切れた王太子が動いて事なきを得、ヴィクトルとリオナの実家は処罰されます。最期は大団円って感じの〆でした。セリフや、キャラが面白いので実際に読んでもらった方が楽しめるかと。取り敢えずこんな風なお話ですよってことで。それはそうと、あのクソ家族の中で唯一まともそうな異母兄が王子と伝手が出来そうと判った瞬間手のひら返しで、シオンと離婚させるために嘘の訴え起こしてた辺り、まぁ、やっぱりあの母親と親子だなと。この人の唯一で最大の善行はシオンにリオナを嫁がせたことです。評価:★★★★★第二王子がイイ具合に気持ち悪い。
2023.06.30
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2022年9月刊LUNA文庫著者:長野雪さん祖父の遺してくれた下町の古道具屋「アベリナ」を一人で切り盛りするジリア。彼女に店を売る気がないと知るや否や「結婚は考えられない」と告げてきた婚約者と別れたジリアは、今後のお店の経営に少し頭を悩ませながらも、大好きな古道具の世界に没頭する日々を送っていた。そんなある日、外套をまといフードを目深に被った怪しい客が店を訪れ、懐中時計の修理をジリアに依頼する。その後も頻繁に店に来るようになった美貌の男・イリアスに「フードの貴人」という渾名をつけたジリアは、いつの間にか彼の来店を楽しみにするようになるのだった。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 ジリア=古道具屋「アベリナ」の店主。祖父から受け継いだ店と品物をこよ なく愛するアンティーク馬鹿。 イリアス=宰相・クラスニフ侯爵の次男。懐中時計の修理依頼を切欠にジリア と出会い、好意を抱く。 デニス=ジリアの元婚約者。意見の相違でジリアと別れた。エリザベータ=自称イリアスの婚約者。ジリアを目の敵にする。 エゴル=イリアスの同僚で友人。人気TLコミック「授か離婚」の原作者さんですね。ジリアは古道具屋「アベリア」を営む女主人。女一人での商いは聊か物騒ではあるが、一緒に店を経営するはずだったデニスとはつい最近婚約解消したばかり。かと言って赤字すれすれの現状では人も雇えない。そもそも、商品の売り上げだけでは到底やって行けず、アンティーク商品の修理賃が主な収入源となっている。両親やデニスからは、こんな儲からない店なんて早々に畳んで土地家屋含め売り払った方が良いと再三説得されたが、ここは大好きな祖父のこだわりの店。そして何より、ジリアはアンティークが好きだった。デニスと別れたのも、この店の存続について揉めたから。そんなある日、懐中時計の修理を依頼しに一人の青年が店を訪れた。何やらフードを被った怪しげな姿ではあったが、立ち居振る舞いは上品だし、持ち込まれた品はかなりのレア物。おそらく、貴族の子息であろう。彼は、イリアス・クラスニアと名乗り、どうやら、父の懐中時計を勝手に持ち出してうっかり落としてしまったらしい。幸いにも、故障はしておらず、油を刺す程度で済んだのだが、彼はジリアの博識ぶりと、アンティーク品に向ける愛情に興味を持ったようだ。その日から、彼は足繁くアベリアを訪れ、何かしら購入して行ってくれる上得意客となって行ったのだった。イリアスはあの日以来、ジリアに心奪われていた。女慣れしている同僚・エゴルに色々アドバイスを受け、彼女に贈り物攻撃をしているのだけれど、丁重にお断りされていて、一向に仲は進展しない。だが、漸く理想の人に出会えたのだ、縁談も何件か持ち込まれてはいるが全て断った。どちらにしろイリアスは、俗に言う貴族のご令嬢が苦手だったので。しかし、この彼の行いが、ジリアを思わぬトラブルに巻き込むことに。ある日、ジリアは見るからに怪しい男たちに店を占拠された挙句、無理矢理媚薬を飲まされ貞操の危機に陥ります。間一髪いつものように店を訪れたイリアスとその護衛騎士によって事なきを得るも、媚薬の効果を冷ますために、ジリアの頼みでイリアスと一線を越えます。この事件を機にイリアスからの告白を受け、交際を始めた二人。お付き合いはそれなりに順調だったが、ジリアはイリアスとの仲が深まるほど、彼との身分差に不安を覚え、悩み始めるように。嫌な予感は的中。店にエリザベータと名乗る貴族の令嬢が現れ、自分はイリアスの婚約者だと名乗り・・・。前述の通り、イリアスは縁談全て断ってるので、当然令嬢は婚約者なんかじゃありません。このお嬢様がかなりの勘違いな人で、ならず者にジリアを襲わせたのも彼女でした。まあこの辺は事のあらましみたいな感じで判明するんですけど、それにしたって婚約者だと言いふらして外堀埋めた挙句、想い人の恋人を襲わせるとか性格悪いにも程がある。結局、エリザベータはそれなりの報いを受けることとなり、イリアスはジリアと一緒になるために、家名を捨て平民として生きることを選びます。ラストでは、アベリアを夫婦二人で切り盛りしてる様子が描かれてお終い。結構、作中で起きたトラブルや元婚約者のダメ男ぶり等は結構端折ってるので興味がある方は読んでみてください。お話自体は凄くシンプルなので、読み易いです。評価:★★★★☆
2022.11.26
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2019年12月刊LUNA文庫著者:葛城阿高さん「貴女はとても評判が悪い。義妹のシンデレラに嫉妬して彼女を虐げているという噂があるが、本当か?」初対面の資産家エリクから不躾な質問をぶつけられた私ーーペトラ。ここは童話「シンデレラ」の世界。私はシンデレラの義姉であり転生者。優しい義姉でいたつもりが、ニートまっしぐらな干物女のシンデレラを清く正しく更生させていく過程で、いつしか私は「意地悪な義姉」と囁かれるようになっていた。エリクの誤解はすぐに解けたものの、なぜか彼は私に興味を持ち始める。そしてある事件をきっかけに、私を自邸へと招く。「すぐに帰すと言ったのは嘘だ。俺には貴女しかいない、結婚してくれ!」ほんの少し前までは、汚いものでも見るような目で私を見ていたはずのエリク。それが今では熱い眼差しを向けてくる。おまけに、断りきれなかった私を彼はベッドに押し倒し、既成事実を作ろうとする始末! 脇役として平穏な余生を送るはずの私が、主役になる日が来るなんてーー? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 ペトラ=シンデレラの次姉。グータラでだらしない義妹に姉と二人で令嬢 としての作法を叩きこんだ。 エリク=宝石商。ペトラに求婚する。 シンデレラ=自他共に認める干物女。第二王子に見初められ妃に迎えられた。 ディティエ=ルドブルグ王国第二王子。重度のブラコン。アレクサンドラ=シンデレラの長姉。 トビ=シンデレラに魔法をかけた魔法使い。誰もが知っている童話「シンデレラ」その意地悪な義姉が主役のお話です。アレクサンドラとペトラには前世の記憶がある。不幸な死を迎えた二人は、寄りにも寄ってあの有名な「シンデレラ」の意地悪な義姉に転生してしまったのだ。お互い、縁もゆかりもない二人は現代日本人であることが判った時は驚いたものだが、それ故にこの話の結末を思うと自分達に待っているのは破滅だ。後にシンデレラと呼ばれる末妹のエルは幼いころから美少女ではあったが、グータラでだらしなく生活力が皆無の娘であった。ただでさえ無能な義父のせいで借金塗れの家なのに、一生引き籠りのニートの面倒見るなんて本来の自分達の結末と同じくらい悲惨だ。ペトラたちは母にも協力を仰ぎ心を鬼にしてエルを厳しく教育した。それこそ将来王子妃になってもやって行けるようにと。彼女が持っていたドレスを全部売り払ったのは生活費を賄う為。そもそも自分達の物もその前に売り払っている。だが、傍から見ると彼女達の行いは美しい妹を虐げる意地悪な継母と義姉たちに見えたらしい。とは言え、世間がどう言おうと関係ない。これは愛しい妹と自分たちの将来の為なのだから。涙ぐましい努力を重ね、魔法使いともコンタクトを取り、無事妹は第二王子・ディティエに見初められ、妃に迎えられたのだった。あれから数か月。ペトラは前世では企業コンサルタントをしていたことがあり、その知識を生かして義父の残した借金は何かと完済することが出来た。贅沢さえしなければ、母は自分たちが家を出てもなんとか暮らしていけるだろう。アレクサンドラは次は自分の番と積極的に舞踏会に出席してはお相手探しに大忙しにしていたが、ペトラは姉離れできないシンデレラにしょっちゅう王宮に呼び出されてはアレコレ相談を受けていた。結婚願望の無いペトラは細々と貯めていた貯金を持って外国に移住でもしようかと思っていたのに、いつになったら出て行けるのやら。流石にいい加減にしろと諫めたら、号泣されて結局ペトラが折れる羽目に。おまけにやたらと舞踏会に出てくれと頼まれて、ドレス代に金がかかるのは堪える。今日も、シンデレラたっての頼みで舞踏会に参加したのだが、悪名高い意地悪な王子妃の義姉その2に声を掛けて来る猛者はいない。アレクサンドラも婚活に苦労しているし、妹の為の努力も湾曲して見られると厄介なものだ。そんな彼女にも出会いが。エリクと言う宝石商の青年は、最初は悪評を鵜呑みにしていたのか随分と剣のある態度だったが、物おじせず、頭の良さがうかがえるペトラの言動に興味を持ちます。そして、コルベール家の借金を完済した彼女に商才があることを評価し、自らの商会を手伝って欲しいと言う。その間にも、この国の状況をどう思うか、各地の税収の改善法などの意見を求められ、思う居つく限りの考えを出して見た所、エリクは随分と彼女を買ってくれたらしく、初対面時が嘘のように態度が軟化。そのうち賢人会にまで呼び出されて意見を言う羽目に。王子妃に寄生するブスとまで揶揄されながらも、賢人会でも見事にその才覚を披露したペトラに期待以上と評価したエリクはその日彼女に求婚。その押しの強さに前世でも喪女だった彼女はあれよあれよという間に純潔を奪われ、結婚の誓約書にまでサインをさせられてしまいます。流石にこれは拙いと、その後エリクを避けまくった彼女は、後に彼にお仕置きを受け、そんなやりとりが続くうち、ペトラもエリクとの将来を考える様に。そんな折、二人の仲をよく思わないとある人物の策略でトラブルが相次ぎ・・・。犯人については、その人物のモノローグによって割とすぐ判ります。それによってエリクの正体も。まあそうだろうなと思ってたんですけど、最後の最後でエリクの妻になることをペトラが拒否し、関係が拗れてじれじれしました。でもまあ、そうそう決心がつかないのも判る。シンデレラが割とちゃっかりしてたり、長姉のアレクサンドラが魔法使いとイイ仲になってたりと予想外な展開も面白かった。設定が変わったのも姉二人が現代人の転生者だったのが大きいとは言え、幸せを掴んだのは結局ペトラの才能と為人って言うのが良いですね。犯人の杜撰な計画とかツッコミどころもあるにはあるんですが、総じていいお話でした。amazonのレビューが高いのも頷ける。評価:★★★★★
2022.10.18
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2021年7月刊LUNA文庫著者:幸村真桜さん藤間春希は総合商社で営業事務として働く29歳。そんな春希と同期入社の早瀬絢人は完璧に仕事をこなすエリートモテ男。何かと春希にかまう早瀬の行動のせいで、二人は半ば社内公認カップルのようになってしまっている。そのせいで女子社員から意地悪をされることもあったが早瀬の隣にいることは心地よく離れようと思ったことは一度もない。でも、付き合っているわけでもない。ある日、早瀬の家でいつも通り二人で宅飲みをして、完璧な早瀬を見ていたら「本当、早瀬って理想の旦那様かも」と思わず一言ポロリと口から出てしまい…!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 藤間春希=総合商社の営業事務主任。同期入社の早瀬とは親友以上の関係。 早瀬絢人=花形部署である経営企画部の係長で自他共に認めるモテ男。 長らく春希に片思いをしていた。 上田和樹=春希の元カレ。とんでもない浮気男で後にフラれる。 奈津子=春希と早瀬の同期入社の友人。 加藤=早瀬の後輩社員。あらすじからして明るい内容かと思いきや、根底にあるテーマ自体は結構重めなお話です。春希は入社7年目の会社員。運良く主任にまで昇進して仕事にやりがいも感じている。そんな彼女には社内一のモテ男・早瀬絢人という親友がいるのだが、彼の人目も憚らない春希へのベタベタした態度に、周りはすっか二人を公認りカップル扱いをしていた。おかげで早瀬に気の有る女子社員達からは妬まれ、些細な嫌がらせもされたりしているのだけれど、それも気にならない程、彼との付き合いは楽しいし、ホッとする。今日は花金。無事に定時上がりできた二人は、定番のコースである早瀬の自宅で宅飲みの予定だ。大体週一で彼の家に押しかけ、泊りがけで飲み明かす。毎度風呂を借り、室内着まで置かせてもらっているのだが、それでも早瀬に恋人が出来たらこんな交流も出来なくなってしまう。何となく寂しくなって、せっせとつまみを作る早瀬に、自分にとって理想の彼氏で結婚するなら早瀬みたいな人が良いと言ってしまった。思わず口をついて出た言葉に、早瀬の答えは「じゃあ俺と結婚してくれ」予想外の反応に面食らっていると、早瀬から春希が今付き合っている彼氏のことを聞かれた。交際して3か月、その間に5回も浮気をした最低野郎とは口もききたくなくて自然消滅を狙っている。読書好きで大人しそうな人だと思っていたらとんだ食わせ物だった。状況を話してため息をつくと心底早瀬からは呆れられたのだが、それもそのはず、彼にはこの7年間の恋愛遍歴全てを知られていたからだ。しかも、どいつもこいつも春希が選ぶのはクズばかり。浮気男にヒモ、借金男など揃い踏み。早瀬の目の前で浮気男の上田には電話で別れを告げ、縁を切ったものの、当の早瀬はどういうつもりで自分に求婚したのだろう。それ以前に本気?でも確かに、早瀬とは気が合うし読書好き、掃除や料理も完ぺきにこなす彼ならばこの上ない相手である。早瀬に彼女が出来たらきっと寂しい以上の想いを味わうことになるのは自分でも判っている。返事に困っていると、彼から7年も好きだったのだと言われてさらに驚いた。彼なりに色々気遣ってくれていたのかと思うと申し訳ない。もう気持ちは打ち明けたことだしこれからはガンガン攻めて行くと燃えている彼にを妙に意識してしまう。きっと自分も早瀬が好きなのだ。だが、どうしても一歩踏み出せないのは春希の生い立ちに原因の一旦があった。春希は母親に女手一つに育てられたのだが、母はストレスが高じると娘に当たるような人だった。その後、母は再婚したものの、義父は春希に悪戯するようになり、母は知ってか知らずか娘の味方は決してしなかった。異父弟が産まれ益々居場所がなくなり、高校卒業と同時に家族とは縁を切って一人暮らしを始め、奨学金で大学を卒業。運よく今の会社に就職できた。母が言うには春希の実の父は彼女を妊娠中に浮気したらしい。それが何故か娘のせいにされ、義父は娘に悪戯。いつしか春希は男性に対して懐疑的な見方をするように。とは言え、幸せな家庭への強い憧れもあり結婚願望自体はあった。それで何人かと交際して見たのだけれど、クズ男ばかり引っかかっていつも大抵数か月で破局している。以前、酔ったはずみで春希から生い立ちを聞いた早瀬は、胸を痛め、彼女を怯えさせない様涙ぐましい努力を続けていたのだった。7年もかかったのは彼氏さえ入れなかった彼女のテリトリーに入るまでに苦労したからだ。取り敢えず意識させるところまでは成功。これから徐々に慣れさせていけばいい。デートを重ね、毎日SNSでやり取りし、春希の心はは完全に早瀬に落ちていたのだが、彼が結婚前提で考えているのを思うと、嬉しいと思う反面、自分の様な女が良い妻、良い母になれるのかと悩み始めます。そんな最中、フラれたことに納得が行かなかったのか、ある日春希は元カレの上田に襲われて・・・。当然、間一髪のところを早瀬に救われ春希は助かり、この出来事が漸く自分の気持ちを打ち明ける切欠になるのです。それでもまだ将来の不安はあるけれど、その後交際は順調に続き、懸念していた早瀬の家族にも歓迎され二人は結婚。ラストには長女を育てながら第二子を妊娠中の春希と、相変わらず嫁大好きな早瀬の様子が描かれて終わり。上田に襲われるシーンは本当に間一髪で、早瀬が間に合わなかったらどうしようとばかりに読んでてハラハラしました。クズ男のくせに勘違いも甚だしい奴だったわ、あの元カレ。相当に早瀬が脅してたからもう手出しはしてこないと思うけど、こんなハプニングが無ければ春希の決心も付かなかったと思うとそれだけ根深い傷だったんですよね。そう思うと切ない。元カレも最低ですが、春希の実家の連中も大概なんで、一生縁切ったままの方がお互いの為だと思います。正直言えば男を見る目が無いのは母親譲りなのでは(^_^;)そして、彼女を支える早瀬が本当にイイ男。この人もスパダリです。肉親の愛情には恵まれずとも、早瀬家の面々が良い人達だったのは何より。評価:★★★★★重い過去を持つヒロインとそれを愛し癒すスパダリヒーロー。素晴らしい。
2022.10.17
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2022年9月刊LUNA文庫著者:にしのムラサキさん一度はアイドルを目指したこともあった古賀千早。夢は叶わなかったが、女優・福間亜里沙のマネージャーとして充実した日々を送っている。ニューヨークでの仕事を終えた千早たちに、空港で声をかけてきたのは亜里沙の幼馴染の黒崎旭だった。帰りの機内で、旭からバーに誘われた千早は、話し続けるうちに彼に惹かれていく。しかし、旭から電話番号を渡された際、千早はこれまでのトラウマを思い出してしまう。亜里沙に近づくため、脇役でしかない千早を利用しようとしてきた男たち。旭もそんな男なのかとガッカリした千早だったが、彼の誘いを断りきれず後日食事をすることに。そして約束の日、待ち合わせに現れた旭は予想外の言葉を口にした。「会うのが二回目でこんなことを言うのも変なのは分かってる。けれど、君が好きだ」ーー。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 古賀千早=元アイドル志望の芸能マネージャー。過去に手酷い裏切りに合ってから男性不信の 気がある。 黒崎旭=有名総合商社の海外事業部課長。亜里沙の幼馴染で出張帰りのフライトで出会った 千早に好意を抱き、交際を申し込む。福間亜里沙=人気女優。お嬢様育ちで扱い難い性格だが千早を気に入り長く傍に置いている。 小森=千早の元カレのプロモーター。千早が男性不信になる切欠を作った人物。千早の子供の頃からの夢はアイドルになること。だが、狭き門に阻まれ早々に夢破れた。しかし夢は捨てきれずせめて裏方でも芸能の仕事に就きたいと努力の結果、大手芸能事務所に採用され、現在は人気女優・福間亜里沙のマネージャーを担当している。今回はNYから急遽呼び戻されてビジネスクラスしか席が取れず、亜里沙は文句たらたらだったが、そこで黒崎旭と言う青年と出会った。彼は亜里沙の幼馴染で高校まで一緒だったらしい。今は商社勤めのようでたまたま同じ飛行機に乗り合わせたとのこと。再会を喜ぶ亜里沙だったが、疲労と千早のマッサージで眠ってしまっていた。旭に誘われ、ビジネスクラスのバーに誘われた千早は楽しいひと時を過ごしたのだが、彼に連絡先入りの名刺を渡され、ガッカリ。彼もまた亜里沙目当てとは、ちょっとでも良い人だと思っていた自分がバカらしい。そんな千早の内心を知ってか知らずか、旭は彼女を食事に誘った。美味しい牡蠣料理を出す店があるんだとにこやかに言われて、牡蠣に目が無い千早はつい承諾してしまったのだった。食事は本当に美味しく、聞き上手の彼との会話は弾んだ。旭は千早の人柄を気に入り、交際を申し込んで来たものの、男性不信気味の千早は返答に困った。元々彼は亜里沙の友人でしかも幼馴染なのだ。わざわざ千早を抱きこまずともいくらでも接近のチャンスはある。彼は今までの連中とは違う。そう思いたいが過去に元カレの小森に騙され心無い言葉を浴びせられて以来いつまでも引き摺っている自分に嫌気がさす。旭は困っている彼女の返事を急かさず、好きでいるだけなら許してほしいと告げた。亜里沙は所謂演技バカで、恋愛には興味が無い。浮いた噂一つ無いのでマネージャーとしてはその点は大分楽なのだが、亜里沙とお近づきになりたいという輩は山ほどいる。だが、いくら粉を掛けても亜里沙は無関心で、将を射んとする者はまず馬を射よばりに目を付けられたのが千早であった。口利きを頼む程度ならまだ可愛げがあるものの、小森は千早に甘い言葉をささやいて恋人になった途端、亜里沙の個人情報を知りたがった。守秘義務もあるしさすがに断ると態度は一変。お前なんか亜里沙のマネージャーってくらいしか価値の無いモブ女のくせにと罵倒し去って行った。思い出すだけで腹正しいが、千早にとって小森は初めての人だっただけにダメージは大きく、暫く落ち込んだものだ。以降も小森ほどではないがその手のアプローチの多い事。男性不信になるのも無理からぬことだろう。だが、旭は千早が不快に思うことは一切せず、ペンギンが好きだと聞けば有名な水族館へ連れて行き、さり気なくだけれどアプローチも欠かさない。段々絆されていく自覚はあって、温泉に誘われた際はつい同じ部屋で泊まると答えてしまった。亜里沙の話題もほとんど出さないし、何せ紳士的で小森のクソヤローとは違う。その日一線を越えた二人は正式に交際することになった。付き合いは順調だったが、ある日監督から旭が亜里沙と昔交際していたと聞いて千早は大ショック。しかも、彼は一回ドラマにも出演したことがあると言う。凄い演技力だったと聞かされ、思わず今も演技しているとしたらとしょうもない疑惑が沸き起こり、不安に苛まれるように。嫌な予感は的中するもので、旭と亜里沙が結婚間近とのスクープ記事が出て・・・。これは完全な誤解で、この記事自体小森が腹いせでリークした物でした。旭は度々亜里沙に千早のことで相談しており、たまたまそこに遭遇した小森に千早を馬鹿にされ喧嘩になりかけたのが原因。亜里沙も可愛がってる千早を傷つけた小森への仕返しを目論んでいて、旭と二人復讐を決行。小森がまぁ、性格がクソだけならともかく犯罪にも手を染めていたため、二人の暴露にて今までの悪事が露見。大物監督を巻き込んでの一大スキャンダルへと発展します。現実の芸能界でもリークによってアレコレバラされて干されちゃった芸能人も多いですが、ホント、悪いことはできないですね。終盤は結構胸糞展開なんですけど、だからこそ颯爽と現れる旭のカッコよさが際立つ。発売日から1週間経っていない事もあり、中盤以降の展開は詳しく書きません。旭の演技力の真相など130ページ弱の短いお話なので、興味がある方は読んでみてください。評価:★★★★☆エッチシーンはもう少し少な目でも良かった気があと、やっぱり芸能界って怖い
2022.10.05
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2020年4月刊LUNA文庫著者:クレインさんーー目に映るのは、さんざめく色の洪水。人の感情の色が見える特異体質を持って生まれたフレッツェン伯爵家の令嬢・ナターリアは、その特異体質のせいで家に引きこもりがち。人が多い場所へ行くと、沢山の感情の色が混ざり合って酔ってしまうのだ。このままではいけないと、弟に連れてこられたのは大貴族ビュッセル公爵家が催した舞踏会。そこにいたのは、おぞましい醜悪などどめ色を纏った人物。なんとその人物はアルムガルド王国の第二王子・ルートヴィヒ殿下。そんな彼がナターリアに近づいてきて…!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 ナターリア=特異な能力のせいで引き籠りになった伯爵令嬢。適齢期になり、社交の場に慣れる ために参加した舞踏会でルートヴィヒと衝撃的な出会いをする。ルートヴィヒ=アルムガルド王国の第二王子。初対面時に自分に嘔吐したナターリアを何故か気に 入り王子妃に迎える ハインリヒ=ルートヴィヒの異母兄で王太子。 ビュッセル=公爵。ルートヴィヒの母方の叔父。 王妃=ハインリヒの実母。元は国王の愛妾だったが前王妃が急死し王妃になった。 ユリアン=ナターリアの弟。人の感情の色が見えると言う特異な力を持つナターリアはそのせいで長らく引き籠りだった。何故なら大勢の人間が集まる社交の場は、彼女には色の洪水に酔ってしまうからだ。ナターリアの生家であるフレッツェン伯爵家には稀にその能力を持つ者が産まれると言う。父にははその苦労が判るのか、無理はするなと気遣ってくれたが、それも彼女が適齢期になるまでの話だった。さすがに娘が行き遅れるのは困ると。短時間で構わないから舞踏会にも出席して徐々に慣れていくようにと命じられたものの、案の定会場にいる人々の感情の色が混ざり合う様は気持ち悪く早々にギブアップしてしまった。やっぱり無理。修道院ですら大勢人がいて根を上げそうだし、このまま一生伯爵家に置いてもらえないだろうかと、両親が聞いたら目を剝きそうなことを呟いていたら何だか周囲が騒がしい。どうやら王太子と第二王子が来たとかで、ご令嬢達の歓喜の色が凄まじい。王太子は何とも穏やかな色で、評判がいいのも頷ける。だが、一緒にいた第二王子が目を疑う程の禍々しい色に覆われていて、吐き気が更に酷くなっていく。しかも、蒼白な彼女に気付きその第二王子・ルートヴィヒが近づいてきた。意識が遠くなり倒れそうになったナターリアを危うく支えてくれたルートヴィヒだったが、こともあろうに彼のピカピカの礼服に彼女は盛大に嘔吐してしまったのだった。翌日、伯爵家はお通夜状態であった。事もあろうに公爵家主催の舞踏会で第二王子にゲロをぶちまけるなど。不敬罪でどれほどの罪が課せられるのやら。そんなフレッツェン家に先触れがありルートヴィヒがやって来るという。まさか本人直々に沙汰を言い渡しに?だが、ルートヴィヒの要件は予想外のもので、何とナターリアを妻に貰い受けたいのだと。一目惚れなんだと爽やかに言ってのける彼は何度見ても赤と黒い靄に覆い尽くされている。出来れば断りたいけど、昨夜のことは不問にしてくれるようだし王族からの求婚を断るなど以ての外。かくして二人の婚約は決まった。それから目まぐるしく日々は過ぎ、ナターリアはルートヴィヒに嫁いだ。初夜の際、彼女のルートヴィヒに対する態度で不信感を持たれていた事、彼の目論見を周囲に知らされる前に結婚と言う名目で傍に置くのが目的だったと判明。どうやらルートヴィヒは王太子になるつもりらしいのだが、彼女が自らの能力を明かしたことで誤解が解け、彼の態度にも変化が。少なくとも彼女に向けられる疑念の様なものは消えたようだ。その代わり、ナターリアの怯える様がルートヴィヒのドS心に刺さったらしく、二人は以降王宮でも評判の仲睦まじい夫婦となって行った。嫁いできてから早一ヶ月。ルートヴィヒは王妃と王太子を母を殺した者たちと恨んでいると教えてくれた。国王に関しては一方的に嫌われているとかで、言われてみればとナターリアも思い返せば国王は結婚式にも出席していなかったように思う。息子の晴れの日に欠席とか普通はあり得ないのだが。代わりに王妃と王太子はにこやかで喜んでいるのは彼らの色を見ればわかる。ルートヴィヒは決めつけているけれど、人の感情の色が見えるナターリアだからこそ王妃たちは無実だと判る。彼らを追い落とすなどやめて欲しいと説得はしてみたが、いくら愛しい妻の頼みでも積もり積もった恨みの念はそう簡単には消えない。どうやらルートヴィヒの叔父・ビュッセル公爵がアレコレ吹き込んでいたらしい。これはどう考えてもその叔父が元凶なのでは。ナターリアの必死の頼みもあって、当時の事件を調べ始めたルートヴィヒは、ある矛盾点に気付き改めて叔父の話を聞くことに。同席したナターリアは人格者と名高い公爵がかつてのルートヴィヒ以上の禍々しい復讐心の色に覆われているのを目にして・・・。結局、ルートヴィヒの母親は暗殺で間違いなく、仕組んだのは国王でした。王はルートヴィヒの母の不貞を疑い、産まれた彼も疎んじ遠ざけていたのだけど、正真正銘王の子です。前王妃と公爵は血の繋がりの無い姉弟で、公爵は義姉に懸想し無理矢理関係を持っていました。その後、国王に嫁いだものの不貞を疑われて後に暗殺されてしまったという。公爵はその後謀反を起こして国王を殺害。自らも服毒自殺と諸悪の根源二人が一気に消えてびっくり。とは言え、国王がクズ過ぎなので、生きてたら遺恨残りまくりだったろうから。現王妃が良い人なだけに、裏でアレコレと言われて気の毒だったけど誤解が解けて何より。あのクズが親の割に王太子が良い人なのは偏に母親の育て方が良かったんでしょう。ルートヴィヒは王位に未練が無く、後に臣籍降下しビュッセル公爵家の家名を変えて継ぐことになってお終い。途中色々あるんですが、細かい所は渇愛しています。ヒーローとヒロインがお互い段々好きになっていく過程とか、王家の事情など気になる方は短いお話なので読んでみてください。(先の王妃と現王妃の名前の記載が無くややこしいため、実際に読んだ方が分かり易いかも)ヒロインの設定と大筋が面白いので、文庫本くらいのボリュームで読みたい内容でした。評価:★★★★★
2022.09.29
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2020年1月刊LUNA文庫著者:群田景さん才覚のない父のおかげですっかり没落貴族になり果てたフィネッティ伯爵家。長女のフィオリーナは弟のためになんとか学費を稼ごうと必死だった。そこに突然降ってきたのがアニエッラ王女付き侍女採用の通知。身に覚えがないものの、その給金につられ、いそいそと王宮に出向いていったのだった。しかし待ち受けていたのは、侍女仲間による嫌がらせのみならず、麗しい第二王子エルネストからの熱心なお誘い!? フィオリーナはあの手この手で逃げ回るものの、策士でもあるエルネストによって彼の自室に監禁されてしまう。なぜ私のような冴えない容姿の没落伯爵家の女を求めるのか、の問いに、エルネストの答えは思いもよらぬものだったーー眉目秀麗な王子と給金大事な没落伯爵令嬢の恋の駆け引きの行方は? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 フィオリーナ=地方領主・ストラーニ伯爵の長女。父の代で家が没落したことも あり、金に煩い。高給取りと言う侍女に選ばれ王宮に上がる。 エルネスト=第二王子。文武両道で顔も良い女性人気の高い人物だが、侍女に なったフィオリーナに付き纏い、嫌がられている アニエッラ=第一王女。愛らしい外見ながらかなりの毒舌家。兄が執心してい るフィオリーナに興味を持つ。 デメトリア=王女付きの侍女を務める侯爵令嬢。王子妃の座を狙っており、エ ルネストに気に入られているフィオリーナに数々の嫌がらせをす る。kindleの本棚を減らそうシリーズ。初恋の人である生活苦のヒロインに金をチラつかせ、何とか手に入れようとするヒーロー。お互いへの想いに温度差あるカップルのお話です。ほんの十数年前までは羽振りの良かったストラーニ伯爵ことフィネッティ家。だが、現当主であるフィオリーナの父には才覚が無かった。投資に失敗し、金目のものは全て売り払い借金だけは逃れたものの、領地経営で入って来る金額は、家族4人の生活費とギリギリまで減らした使用人たちへの給料を払ったら毎度カツカツだ。フィオリーナの案で、内職紛いのことで小銭を稼ぎ、塵積でも何とか食べることには困っていないが、長男・ジャンルカをそろそろ然るべき学校へ行かせねば。没落したとはいえ、未来の領主。ある程度の学が無ければ領地経営もままならない。だが、今でさえギリギリの生活だというのに、入学金や授業料をどこから捻出すればいいのやら。やはり、自分が外に働きに出るか。とは言え、女一人の稼ぎでは限界がある。頭を悩ませていた彼女の元に、王宮からの手紙が。またいつもの舞踏会の招待状か。ドレスどころか王都に出向く旅費が捻出できず、毎回欠席の返事を出しているというのに。内心ムカつきながら、中身を見てみると入っていたのは見慣れた招待状などではなく、「王宮侍女採用のお知らせ」であった。まさか、父か母が応募してたのかしら。特に疑問にも思わず、添えられていた規約等を読み進めると最後の方に書かれていた給金の額に驚愕。侍女ってこんなに高級取りなの!?しかも、フィオリーナが採用されたのは第一王女・アニエッラのお世話係というもの。侍女と言いつつ、乳母の様な役割らしい。それでこの金額。王族相手なので多少は気を遣いそうだが、何とも美味しい仕事ではないか。おまけに、王都へ向かう旅費やら粗相のない程度の衣服を揃えるための支度金迄貰える。4年も働けば、弟の卒業までの学費も心配ない。一も二も無く飛びついたフィオリーナは、貰った支度金で身なりを整え、王都へ向かったのだった。だが、現実は甘くない。侍女にはなれたものの、王宮へ上がって一か月経っても肝心の王女様とは一度も目通りできぬまま。どうも、王女付きの筆頭侍女である侯爵令嬢・デメトリアのお眼鏡に叶わなかったようで、卑しい没落貴族に姫様は会わせられないとシャットダウンされているようだ。やらされる仕事と言えば、メイドたちに混じっての掃除と洗濯。本来は貴族令嬢である侍女には回ってこない仕事なのだが、これもデメトリアの嫌がらせであろう。実家でも散々やって来たことなので全く苦ではないが、そんな彼女の扱いに文句たらたらなのが、第二王子・エルネストであった。彼は初日からやたらと馴れ馴れしく、暇を見つけては彼女をティータイムに誘い、得意だというチェス勝負を挑んだ。そして、毎度フィオリーナに負けている。祖父譲りか頭の良い彼女もチェスが得意で、昔、家がまだ裕福だった際に初めてエルネストに会ったんだっけ。その時も勝負をして彼を打ち負かして泣かせてしまったという苦い思い出もあった。エルネストは、そんな昔ばなしを楽しそうにしているが、今もほとんどフィオリーナに勝てていないし悔しくないのだろうか。おまけに、彼女が嫌がらせをされれているのにも当然気づいているらしく、デメトリア達に聞こえよがしに僕は知っているぞとばかりにチクっとやっていた。更に彼は、フィオリーナが初恋の人なんだと熱く迫り、彼女はほとほと困っている。王族と関係を結んだ侍女は解雇される決まりがある。ので、大抵は恋仲になったら一線を越える前に退職し、婚約者なり公式愛妾になるのが常。エルネストに絆されつつあったフィオリーナもこれだけ情熱的に迫られて悪い気はしないが、退職=無職になるのは避けたい。まだ弟の入学金ですら貯まっていないいないのにっ。せめて、あと4年我慢してくれないだろうか。恐る恐る言ってみたらエルネストに早々に侍女を退職させられた挙句、彼の部屋に監禁状態にされ・・・。そんなある日、今まで全く会えなかった王女・アニエッラが彼女の元を訪れ、エルネストが如何に初恋の人に執着しているかを教えられます。大して美人でもない自分のどこにそんなに惚れこむ要素があるのか。その夜、意を決して尋ねたフィオリーナにエルネストが語ったのは、今の王家では想像できないお家騒動と、それが切欠で荒んでいた幼い彼のこと。あの初めてのチェス勝負の後、フィオリーナが掛けた言葉にエルネストは救われ、以降ずっと彼女に執着し続けていたらしい。その後、二人は一線を越え、フィオリーナは公式愛妾に。えっ、ヒロインが愛妾になって終わりなの?と思いきや、それは、金金と必死になる彼女の為でした。何故なら公式愛妾には多額の褒賞が出るから。ある程度の期間愛妾のお役目を務めあげお金を貯めた後、正式にエルネストの婚約者になってお終い。一応、細々と他に嫌がらせされたり、中盤のフィオリーナがエルネストとの関係に踏み切るまである程度日数経ってますが、その辺は敢えて記載していません。短いお話なので、気になる方は読んでみてください。ページ数の割に内容は纏まってたし、二人の温度差が面白いお話だったんですが愛妾にしちゃうのはちょっと(^_^;)褒賞が出ると聞いて引き受けちゃうヒロインも夢が無いというか(苦笑)彼のことは好きだけど、お金が要るの。綺麗ごとだけではどうにもできない事情があって、ヒーローもそれを汲んだってことなんでしょうけどね。ヒロインのポリシーが最後まで一貫してたのは良いと思います。ヒーローは策士って言うほどではないかな、根回しはしてたけど悉く裏目に出てたし。ただの執念深い人って印象。評価:★★★★☆結局金かと思いきや?なラストでした。
2022.09.20
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2021年10月刊LUNA文庫著者:江原里奈さん婚約破棄したばかりの美女は男性たちと愉快に談笑していた…。彼女の名はアネット。コンラート伯爵家の令嬢だ。教養も兼ね備えたアネットに求婚者は絶えないが、彼女の自由な振る舞いに冷ややかな視線を向ける者も。そんなアネットには密かに誓っていることがあったーー。それは大事な友人であるソフィアよりも先に結婚して幸せにならない、ということ。アネットはわざと周囲から批判されるよう振る舞い、ソフィアを引き立たせようとするも上手くいかない。とある晩、ソフィアの魅力が分からない男ばかりと、独りつぶやいていると、アルブレヒトという美しい男性に声を掛けられる。手の甲へキスされた瞬間、今まで抱いたことのない感情に気づくアネット。この出会いの後、アネットは王妃の侍女として宮廷に出仕するよう命じられる。宮廷に赴くとそこにはアルブレヒトの姿が! 混乱するアネットだが、彼が次期国王であると知らされる。さらに突然キスまでされてしまい…。次期国王アルブレヒトは相当な遊び人と噂されていたのだが……!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 アネット=コンラート伯爵家の一人娘。 ルドルフ=ヴォンデンブルグの新国王。女遊びの激しい人物と噂されており、 早々に母后の侍女になったアネットに手を出した。 ソフィア=アネットの親友でクルムバッハ侯爵令嬢。 ハンス=近衛兵。ソフィアに想いを寄せている。 ローラ=アネットの先輩侍女。親友の事が大好き過ぎるヒロインのお話。アネットは南部地方の領主・コンラート伯爵の一人娘。美しく聡明な彼女は男性に絶大な人気を誇っている。おかげで同性には嫌われがちなのだが、アネットが婚約者と婚約破棄したことから、貴婦人たちからは悪口の嵐。そんな状況に父は嘆いていたけれど、当の本人はしてやったりと喜んでいた。アネットには姉の様に慕っているソフィアと言う親友がいる。ソフィアは慈善事業に精を出す心優しい令嬢で、息子を持つ親たちにはすこぶる評判が良い。でも、年頃の青年のウケはイマイチだった。容姿だって悪くないのに、3年も前に妹の方が先に嫁いでしまったソフィアは年齢的に嫁き遅れになりかかっている。みんな本当に見る目が無い。アネットは自分なんかに群がる男たちに辟易としながら、ソフィアの為にある作戦を実行した。この田舎の南部地方に隣り合う二つの領地。その領主の娘はどちらもまだ独身だ。アネットの評判が地に落ちれば、自ずとソフィアを見る目が変わるかもしれない。彼女は先ず、大して面白みのない婚約者と婚約破棄し父の誕生日を祝う夜会では真っ赤で露出度の高いドレスを着て、何人もの男性とダンスを踊った。案の定いい具合に貴婦人たちは眉をひそめてひそひそやっている。浅はかな考えながら、これでソフィアにも良縁があれば良い。そんな彼女の元に王宮から、アネットを王妃付きの侍女に迎えたいと打診があった。折しも、女好きと評判の王太子が近々譲位されて即位するらしい。悪女の評判を高めるためにも王太子に色目を使い、お手付きになるのも手かもしれない。どうせ、一人娘の自分は将来は適当な相手を婿に迎えるのだ。国王のお手付きともなれば箔も付く。そして、王宮に上がったその日。早々に王太子ルドルフと対面したが、かなりの美青年で成程これは確かにモテるであろう。彼は随分アネットを気に入ったようで、すぐに手を出して来た。随分手が早いと呆れもしたが、自分の様な田舎娘を母親付きの侍女に推したのは彼らしい。どうやら、王宮に染まっていない人物を傍に置きたかったからとのことだが、どうにも本心が見えない。先輩侍女のローラからはうんざりするほど、ルドルフの悪評を聞いた。あれからなし崩しに関係が続いているけれど、噂ほど酷い人間には思えない。ましてや、そこら中に愛人がいて隠し子迄いると言うのはさすがに眉唾物だ。唯一の直系男子が後に揉めることを承知でそんなことをするだろうか。やがて戴冠式を迎え、新国王となったルドルフ。そんな彼と親し気に話す美人が気になり、噂好きのローラに尋ねるとバレル男爵夫人と言う、ルドルフの元恋人だそうだ。夫人と言うことはまさか不倫してたの?身体だけの関係と割り切っていたつもりなのに、なぜか胸がモヤモヤする。しかも、もう別れたみたいなのに二人は随分親し気で、乗馬デートまでしている。舞踏会では夫人の夫迄いるのに、3人で和気藹々としたムード。男爵は二人の仲を知らないのか。どうにも腹が立ってソフィアに出す手紙は名前は伏せても、ルドルフの愚痴ばかり。当然、アネットの想い人の事だろうとソフィアからは励ましの返事が届いて、多少は浮上したけれど、最近は公務で忙しいのか、彼とはほとんど会えていない。何だか虚しくなって、休暇を取った彼女は里帰り。屋敷にもいたくないのでソフィアの元に身を寄せていたアネットは、親友が精を出す慈善事業に興味を持つように。何となく自分が本来したい事が見えて来たアネットの元に、王都で反乱が起きたと知らせが届き・・・。正直、この主役CPはお互いどこに惚れたのか意味不明で、終盤まで全く共感できませんでした。二人とも顔はすこぶる良いから、やはり外見でしょうか。それに、国王への言葉遣いとは思えないほどヒロインの言葉遣いが酷い。敬語で無くても良いと許してもいないのに、伯爵の娘が国王にずっとタメ口って(^_^;)結局、ストーリー自体、この後無事反乱は鎮圧されて、ヒーローがヒロインを迎えに来て、後に結婚。二人で未に残る貧困問題に取り組んでいくんだろうなって感じでお終い。ヒーローの女好きだの愛人が、ってのも反乱を企てた彼の叔父の仕業でしたってオチ。故に男爵夫人と恋仲だったと言うのも嘘。まあ、恐らくそういうことだろうと予想は付いたものの、だからこそ、速攻でヒロインに手を出したのが解せない。ヒロインもあそこまで親友に肩入れすることないと思うけど。評価:★★★★個人的に合いませんでした。
2022.08.20
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2021年2月刊LUNA文庫著者:佐木ささめさんよりにもよって、クリスマスイブに火事だなんて! 残業後、帰路についた櫛川海鈴は、自室が燃えている現場を目の当たりにする。出火原因はシェアハウスで同居中の大河原櫻子による火の不始末だった。櫻子は会員制リゾートホテルグループの創業家出身で、社長の孫娘。火事で住む家を失くした海鈴の前に現れたのは櫻子の兄で、存在するだけで罪であるとも言える超美形の大河原望だった。望は海鈴に妹の不始末を心から詫び、「うちにご案内します。どうかゆっくり休んでください」と提案する。クリスマスイブだからホテルに空室もない。こうして海鈴は大河原家の豪邸に望と櫻子と一緒に住むことになる。さらに実家で無理やり結婚させられそうな海鈴の恋人役まで買って出てくれることになり…… ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 櫛川海鈴=ホテル向けの食品卸会社に勤める会社員。後輩で友人の櫻子とシェ アハウスで同居していたが、櫻子の失火により住処を失う。 大河原望=リゾートホテルグループ会社の御曹司で櫻子の兄。 海鈴を気に入り好意的に接する。 大河原櫻子=海鈴の後輩。海鈴を慕い、シェアハウスで同居していた。登場人物は割と少な目。ほぼ、上記の3人でストーリーが展開。終盤にヒロインの母親が出て来て、長年の悩みも一応の解決するって感じの内容です。ここ2年ばかり彼氏がいない海鈴は、予定も無いのでクリスマスイブもしっかり残業。せめてケーキでも食べるかと帰路に就くと、自宅が燃えていた。幸いにも同居人である櫻子も無事で再会できたけど、どうやらこの火事は櫻子の失火によるものらしい。生粋のお嬢様育ちの櫻子は料理が全くできない。なのに、たまに作りたがる。だが、やることなすこととにかく危なっかしく、その度に調理器具をダメにしていた。以降、火や油を使う時は必ず海鈴がいる時だけだと厳しく言い含めたのに、何の気まぐれかクリスマスだからと海鈴にステーキを焼いてあげようと思ったらしい。その際、大量に入れた油に引火し、瞬く間に台所は火に包まれ、今現在家屋全体が盛大に燃えている。元々、この家は一人暮らしがしてみたいとの櫻子の我儘を叶えるために、彼女の祖父が買い与えた新築の一軒家だ。孫娘の一人暮らし発言に渋っていた彼女の祖父は、海鈴と同居するならばと許してくれた。当然ながら、それは大河原家が勝手に決めたことで、海鈴は事後承諾であったが。おかげで、大河原家の人々にはあまり良い印象が無い。櫻子に関しては少々我儘だけど、これだけ慕われていれば悪い気はしないし、可愛い妹分だ。いきなりの同居に憤りはしたものの、駅近なのに家賃は1万、水道光熱費は折半となれば相当美味しい条件だ。大河原家からは週3で家政婦さんが来てくれるので、別段彼女の世話は必要ない。社会勉強として同じ会社に勤めることになった櫻子を遅刻しないよう少々面倒を見るくらいだ。とは言え、ここに来てまさかのやらかしが火事とは。連絡を受けて、櫻子の兄が飛んできたけれど、警察からの説明に天を仰いでいた。何にせよ無事で何よりと妹を慰めている姿を横目に、海鈴の方は全焼した重要書類の手続きに泊まる場所の確保と、やることは山積み。正直、櫻子のことまで気が回らない。だが、クリスマスなのでビジネスホテルはどこも全滅。カプセルホテルならと思えばそこも満室、この寒空で何処に行けば・・・。事情があって実家とは疎遠とまでは行かないが元旦程度にしか帰りたくない。思い悩んでいると、櫻子が家に来ればいいと誘って来た。両親は長く海外で暮らしているし、祖父母は別宅住まい。今は望一人で住んでるそうで部屋は余っていると言う。望からも是非にと言われたので、好意に甘えることにした。彼らの家は高級住宅街の中でも一際大きく豪華な邸宅だった。4階建てでエレベーター付き。リゾートホテルグループ会社社長ともなれば桁違いの金持ちに違いない。圧倒されていると、望から今回の件で焼失した海鈴の持ち物全て弁償してくれるそうだ。大したものは持っていなかったが、服や靴等は身につけている物しかないので、休日なこともあり明日にでも買いに行こうと言ってくれたのはありがたい。それに、今後の住まいが決まるまではここにいて良いとも言われたがさすがにそこまではと断ったものの、兄妹揃ってぜひそうしてくれと懇願されたら断れない。それに何だか、一々望の距離感が近い気がする。察するに、櫻子が彼にやたらと海鈴の話をして褒めちぎっていたようだ。おかげで好意的に見られているらしいが、如何にも女性にモテそうなイケメンだから傍に寄られると落ち着かない。期間は不明だが、櫻子もいるとは言え、彼と一つ屋根の下で暫く暮らすことになるのか。トラブルはあったが、せっかくのクリスマスなのだからせめて軽く飲もうと提案され、沈んだ気持ちを払拭しようと軽食をつまみながら、海鈴も話が弾んだ。だが、その際、櫻子が海鈴の家庭の事情を望に話してしまい、彼女は慌てた。何故ならそれは今日初めてあった人に聞かせる内容でもないから。海鈴の実家は、地方だが大地主で不動産業も営む名士だ。当然彼女も櫻子に負けず劣らずのお嬢様である。でも一人娘なのでいずれは婿を取って家を継がなければならないのだが、とある事情により、母は海鈴の結婚相手は従弟に決めてしまった。しかし、従弟は海鈴より5歳も下で、その上彼女がいるらしい。いくらなんでも彼が気の毒過ぎるし、高3の時に両親の事情を知ってからと言うもの、元旦に帰省する度に度に結婚に関して母と大喧嘩しては早々に東京に戻って来るのを繰り返している。海鈴も今年で25歳。さすがに今度帰ったら更に煩いだろうと思うと気が重い。出来れば喧嘩もしたくないのだが。事情を聞いて望も金持ちならではの結婚問題に同情していた。そんな兄の反応を見て、櫻子はじゃあお兄ちゃんに恋人役をしてもらえばいいと提案。驚く海鈴を他所に望は何故か乗り気で自分で良ければ協力するとのこと。確かに彼の様なイケメンで大金持ちの御曹司なら、世間一般の親ならば大喜びだろう。だが、母の拘る事情は飽く迄「櫛川家の血筋」であった。だからこそ、従弟と結婚させたいわけで。恋人のフリをしてもらっても母が諦めるとは考え難い。取り敢えず、抑止力にはなるかもと申し出をありがたく受けることにしたのだが、彼が乗り気なのが気になる。相当気にしていたから妹の不始末の詫びのつもりかもしれない。一応、本気にはなるまいと一線を引くつもりだったが、櫻子が旅行で不在になり、酔ったはずみで二人は深い関係に。飽く迄フリで芝居のはずでは、と思いつつ彼は恋人の様な態度で接してくる。戸惑いながらも、元旦に里帰りした海鈴は案の定母親と大喧嘩。彼氏がいるなら会わせろと煩い母を振り切り東京に帰って来たけれど、この分では上京して乗り込んできそうだ。ならば、この家に呼べばいいと望は平然としていたが、非の打ちどころのない彼でも母には譲れない事情があるのだ。意を決して打ち明けたのは海鈴の出生の秘密で・・・。海鈴は櫛川家当主である父の実子ではなく、母が以前付き合っていた恋人との子でした。父は不妊体質で子が出来ず、検査で発覚する前は跡継ぎを望む煩い親戚連中のせいで2度の離婚をしていました。その後、幼馴染であった海鈴の母と再会。妊娠したことで恋人に捨てられ途方に暮れていた母を妻に迎えたのだった。後に産まれた海鈴は実子として籍に入れたのです。父は娘を可愛がり、大事に育ててくれたけれど、母はいつ親戚にバレるかと気が気でなく櫛川の血筋に拘り娘と従兄弟との結婚に拘っていた。正直、母親の気持ちもわからないでもないですが、大好きな父の実の子じゃないと知らされた海鈴が気の毒過ぎる。結局母親が乗り込んで来るも、望が海鈴を本気で愛してる事、一人娘で跡取りの彼女の為に婿養子になってもいいと決心を告げ、海鈴が長年抱えていた想いを語ると漸く母も折れます。ただのフリじゃなかったのかと思っていたら思いもかけずに愛されていたと知り、大河原の家は櫻子が継ぐことになりそう、って感じで終わり。ヒロイン用の着替えに出掛けたセレブ兄妹のダイナミックな買い物とか、途中一応二人の仲について思い悩んだり、もするんですがその辺は端折ってます。気になる方は読んでみてください。そもそもヒロインもあれだけヒーローと寝てたくせに、フリだと思ってたってのは鈍いにも程が(^_^;)この手の跡取り問題と言うか、血筋に関しては本当大変そう。旧家ほどそういうのありそうですし難しい問題ですね。ヒーローの潔さも好感持てますが、お嬢様が良いキャラしてました。評価:★★★★☆
2022.08.19
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2020年11月刊LUNA文庫著者:ちろりんさん伯爵家の長女・クロエ・ブラウエルは義母と折り合いが悪く、婚約者のエミール・コーレインともうまくいっていない。そんな中、招待された仮面舞踏会で義妹のベアトリスがエミールとキスをしているところを目撃してしまう。ベンチに座り泣かないように堪えていると、真っ白な仮面を被った誰とも知れない男性がクロエにハンカチを渡し、去って行った…。数日後、ベアトリスにエミールを奪われる形で婚約破棄を言い渡されたクロエ。そしてクロエの新たな婚約者は『ビュルシンクの悪魔』と名高いフリードリヒ・ビュルシンクだと告げられ…!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 クロエ=義妹に婚約者を横取りされ、新たな結婚相手として何かと悪名の高 い伯爵・フリードリヒに嫁いだ。フリードリヒ=クロエの夫。「ビュルシンクの悪魔」と呼ばれ恐れられていた先代 と瓜二つの外見ながら、実際は大人しく人見知りの青年。 ベアトリス=クロエの義妹。義姉の婚約者を横取りし婚約破棄に追い込んだ。 エミール=クロエの元婚約者。問題行動が多く酒乱気味なことから生真面目で 口煩いクロエを疎んでいた。 ノーランド=ビュルシンク家の家令。自分に辛く当たる継母、妻に気兼ねしてか自分を庇ってもくれない父。義妹のベアトリスはクロエを慕ってくれていたが、ブラウエル伯爵家に自分の居場所はない。だから、家を出れるならばこの政略結婚も悪くない。そう思っていたが、婚約者・エミールは伯爵家の跡取りにしては少々言動に問題があった。クロエも自分が口煩い性格なのは承知しているが、自分の将来の為につい彼にお小言を言ってしまうのは致し方ない。そんなある日、両家を揺るがす事件が。とある夜会に参加した際、エミールとベアトリスがキスをしている場面に遭遇してしまったのだ。間の悪いことに父も目撃してしまいエミールに対して激怒。父にしてみればエミールは娘二人を弄んだろくでなしと言う心境だろう。エミールの実家・コーレイン伯爵家との協議の結果、婚約破棄が決定。ベアトリスがコーレイン家に嫁ぐと言う。継母が会わせてくれないので義妹の本心は不明だが、クロエは婚約者と言うより逃げ場を失ってしまったことに愕然とした。もう少しでこの家を出て行けるはずだったのに。口煩いクロエと離れられてほくそ笑んでいたエミールに猛烈に腹が立ち、思い切りビンタを食らわせてやったが次の縁談相手を探すことから始めるとなるとこの家を出て行けるのはいつになるやら。だがそんなのは杞憂で義娘と折り合いの悪い継母が新しい縁談を持ってきた。どうやら継母の方もクロエを追い出したくてしょうがない様だ。継母肝入りの結婚相手はフリードリヒ・ビュルシンク伯爵。もしかしてあの「ビュルシンクの悪魔」?ビュルシンク家は国境に広大な領地を構える武に秀でた一族で、先代当主は気性が荒く、悪魔のような男だと悪評轟く男だったと言う。とは言え、その先代も6年ほど前に亡くなり、今は一人息子であるフリードリヒが後を継いでいる。だが、噂によればその息子も父にそっくりだと聞く。空恐ろしいが、先方は是非にと言っているそうでこちらから打診した以上クロエは断れない。結婚か修道院行きか。どちらかと言えば多少は自由があるはずの結婚だろう。それに王都から遠く離れたビュルシンク領に行けば、気まずい家族とも早々顔を合わせずに済む。数日かけてやって来たビュルシンク邸では、使用人たちに歓迎されてクロエは戸惑っていた。家令のノーランドを始め、涙まで流して喜んでいるのを見るに、余程フリードリヒは慕われているらしい。でも着いて早々に結婚式を挙げると聞いて驚愕。迎えに出なかった彼は教会で待っていると言う。慌ただしく準備して初めて見た夫は何とも大きい青年だった。しかも顔が怖い。挙式は滞りなく終わり、問題の初夜なのだろうが、寝室に入って来た彼の様子がおかしい。何故か、持っていた紙に書かれているらしい文面を読んでの挨拶をして来て驚いていると、そういえばノーランドから困ったことがあればこれを読んでくださいと手渡された手紙があった。これは恐らく今のような状況に読むべきのもののはず。読むと内容はまさしくそのこと。フリードリヒは重度の人見知りだそうで、慣れるまでは筆談での会話を進めてみては、とのアドバイス。夫婦で筆談?! でも耳は聞こえているのだし、クロエは普通に話せばいいのか。フリードリヒの方が筆談で返事をしてくると言うことね。彼は、一見巨躯と強面のせいで損しているが、大人しく穏やかな人柄なのは既に分かっている。一先ずお互いを知ることから始め、徐々に仲良くなっていこう。クロエは屋敷で暮らすうちに、フリードリヒの為人に惹かれ、彼もまたクロエを好ましく思っていました。そのうち、クロエはフリードリヒの壮絶な過去を聞き胸を痛めます。彼があんなに人見知りなのも、先代による虐待に近い扱いのせいでした。ノーランドも随分と骨を折ってくれてたようだけど、先代が亡くなって6年経っても彼はまだ傷付いている。そして、そんな彼を愛しく思っている事に気付いた彼女は想いを打ち明け、式から数か月、漸く二人は本当の初夜を迎えるのでした。クロエと身も心も結ばれてから、フリードリヒは避けては通れない社交の場に出るための訓練を始めます。徐々にだけれど、使用人たちとも不通に会話ができるように。そして、クロエが嫁いできてから1年近く経ったある日、王妃主催の夜会の招待状が届いた。出来ればもう少し特訓をしてからにしたかったけど、王家主催の催しで欠席は出来ない。特訓の成果を見せるべきと、諸々準備を整え、王都にあるビュルシンク家所有のタウンハウスへやって来たクロエ達。国中の貴族が集まる夜会。実家の連中とエミールと久しぶりに顔を合わせるとなると、少々気が重い。ついに、夜会当日。フリードリヒは最初遠巻きにされていたものの、特訓が生かされ貴族たちと会話も弾んでいた。その様子を微笑ましく見ていたクロエは、突然エミールにバルコニーへ連れ込まれ、助けを請われ・・・。エミールとベアトリス、邪魔者がいなくなってさぞ楽しくやっているかと思いきや、二人の婚約自体おじゃんになりそうだと言う。どうやら、あのキスについてもベアトリスは無理矢理迫られたと証言しており、婚約などしたくないと駄々をこね、以降進展が無いらしい。エミールは何故かベアトリスを怖がっていて、クロエを縒りを戻したいと迫って来たが、自分には愛しい夫がいる。もめているとフリードリヒが現れエミールに激怒。彼の迫力にビビっていたエミールだったがベアトリスが現れさらに顔色を変えた。義妹はクロエを見ると顔を輝かせ再会を喜んだ。そしてあの婚約破棄騒動に関しての真相を語ります。この辺の真相に関しては興味がある方は是非実際読んで確かめてください。そういうことだったのね、と。正直、この義妹のおかげでクロエはフリードリヒと結婚できたのだから結果オーライ。二人はこの先も仲良くやって行くんだろうなって感じのラストでした。エミールは序盤からいけ好かない男だったので、ホント縁が切れて良かった。ベアトリス、グッジョブ。イラストを見るに、フリードリヒはそこまで強面ではないですね。評価:★★★★☆夫婦のやり取りが可愛い。
2022.08.09
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2021年12月刊天海社LUNA文庫著者:東万里央さん男爵家の元令嬢だったクリームヒルトは、ライニンゲン公爵家にメイドとして仕えている。彼女には誰もが認める料理の才能があった。晩餐会の料理の手伝いでクリームヒルトは今宵も大忙しだ。ようやく休憩できると思っていると、ライニンゲン公爵家の嫡男であるオスカー坊ちゃまが泣いていることに気付く。聞けば意地の悪いアルフレートに体型のことで悪口を言われたのだという。オスカーは美しい金色の髪、琥珀色の瞳、整った顔立ちをしていたが、体型だけぽっちゃり気味だったのだ。この一件をきっかけに、クリームヒルトはオスカーのダイエットをサポートすることに。だがダイエットも順調に進んでいた矢先、クリームヒルトはオスカーの元を去ることになってしまう……。ーーそれから時は経ち、王都の人気レストラン「黒猫軒」の料理人としてクリームヒルトは今日も忙しく働いていた。そしてある日、金色の髪の美しい青年が店に通ってくれていることに気付くのだが…… ↑楽天ブックスより、あらすじ引用。登場人物 クリームヒルト=ヒロイン。元は男爵令嬢だったが父の死によって家は没落。 発育の良さに目を付けられ、親ほど年の違う貴族連中からの求 愛から逃げるため、身分を隠しメイドとして働いていた。 オスカー=ヒーロー。ゼーン王国ライニンゲン公爵家当主の孫。 幼少期に患った病の後遺症で太ってしまい、親戚からバカにさ れていたが、クリームヒルトの協力によってダイエットに成功 。本来の美少年ぶりを取り戻した。 ライニンゲン=公爵家当主でオスカーの祖父。早くに両親(息子夫婦)を失く したオスカーを不憫に思いつつ、次期当主として厳しく育てて いた。オスカーが間違いを犯す前にとクリームヒルトを解雇し て邸から追い出した。 アルフレート=ライニンゲン公爵の親戚の一人で、オスカーの次に公爵家の継 承権がある人物。そのせいかオスカーを敵視し、執拗に彼を虐 めていた。読んでるとお腹が空く話です。もとい、没落貴族の娘と次期公爵との恋物語。男爵令嬢のクリームヒルトは父の死により、家が没落したことで母を支えてひっそり暮らしていた。そのうち母も亡くなり独りになると彼女を妾や後妻にしたいとの申し出がわんさか。何故なら彼女は14歳ながら美しく、巨乳であった。スケベ親父たちは後ろ盾のないクリームヒルトを囲うチャンスと目の色変えており、身の危険を感じた彼女はカバン一つを持って故郷を後にした。その際、探し出されるのを懸念してブルクハウス男爵家の名は捨て偽名を名乗り、庶民として貴族の屋敷でメイドとして働き始めた。それから二年後、何でも手際のよいクリームヒルトは現在ゼーン王国の筆頭公爵ライニンゲン家のメイドをしている。料理好きなこともあり、忙しい厨房を手伝っていたら興味を持って料理長にも認められるほどになった彼女は晩餐会の夜、休憩に入る際、一人物陰で泣いている少年に気が付いた。よくよく見ると彼は当主の孫・オスカーではないか。失礼とは思いながら泣いていた理由を聞くと、親戚のアルフレートに手酷く虐められたらしい。オスカーは幼少時に病を患い、後遺症もあって体がむくんで太ってしまったのだが、アルフレートはそんな彼を白豚と罵ったそうだ。他人事ながら腹を立てたクリームヒルトは、悔しいとさめざめと泣くオスカーのダイエットに協力することに。確かに後遺症も原因だが、オスカーは運動全般が苦手で碌に歩かないのも痩せない原因だろう。脂肪燃焼しやすいメニューと軽い運動を毎日続ければ自ずと痩せるはず。クリームヒルトの思惑通り、3か月ほどするとオスカーは豚からポッチャリくらいまでの体型になって来た。急激なダイエットは体にも良くないと敢えて時間をかけた甲斐もあって半年もすると見事な痩身となり、本来の美少年ぶりを取り戻した彼にクリームヒルトもご満悦だった。だが、そんな二人の仲を公爵は懸念していた。多少の火遊びも許そうとは思ったが、数年後子供が出来たなどと報告されても面倒とそんな気配すらない二人だったのに、公爵はクリームヒルトを解雇。屋敷から早々に追い出してしまいます。彼女も突然のことに驚くも、もしや身元詐称がバレたのかもと、オスカーとも挨拶できないことに心を痛めつつ新たな職を探すことに。それから8年もの月日が流れ、クリームヒルトは人気のレストラン「黒猫亭」の料理人の一人として腕を振るっていました。これも、女だてらにと差別せず、雇ってくれた主人兼料理長のおかげ、せめて仕事ぶりで恩返ししようと日々頑張っていた頃、店に度々現れる金髪の青年が何故か気になる。身なりは普通だけど所作が一々美しい。しかもよく彼から熱い視線を向けられているような。同僚のウエイトレスからはきっとあなたに気があるのよ、と気軽に言われたが胸のせいで狒々おやじにしか需要が無いと思い込んでいた彼女はイマイチピンと来ない。生きていくだけで精一杯で恋など無縁だったから、適齢期など当の昔に過ぎてしまった。25歳ともなると年齢を告げるだけで対象外にされる。彼もいざ自分の歳を知れば足も遠のくであろう。ある日、彼に話しかけられたのだが、名を名乗ってもいないのに彼女をクリームヒルトと呼んだ彼はオスカーと名乗った。当然、あのオスカーの成長した姿で、彼は自由に動けるようになった年齢からクリームヒルトを探し続け、漸くこの店で彼女を見つけたのでした。以降足繁く通っていたのに全く気付く気配が無い。なので意を決して声を掛けたものの、どうやら記憶のオスカーと結びつかないようで無反応。以来、厨房だけでなく配膳もしている彼女をわざわざ指名していた彼は、自分がそれほど様変わりしていたことを失念していた。別れた間際は痩せていたものの、今では190センチ近い長身に軍で鍛えた細マッチョ体型。あのオスカーだとは夢にも思っていないのだろう。そんなある日、黒猫亭のある通り一帯が不慮の事故により大火事に見舞われて消失。クリームヒルトは職を失ってしまったのだが、それより気落ちする料理長が心配だった。店の再建にも金が要る。そこそこ繁盛していたので料理長は金を貯めていたのだが、店の地下に置いておいたことが災いして全部焼けてしまったらしい。こうなれば自分が身売りしてでもと金を工面する方法を考えていたクリームヒルトはならば自分と結婚してくれとオスカーがプロポーズして来て・・・。驚く彼女にオスカーはあの公爵家のオスカーだと正体を明かし、改めて求婚。結婚してくれるならあの通り一帯の復興資金を出す、と言われ一も二も無く飛びついた彼女だったけれど、勿論金目当てだけではなく、自分も内心彼に心惹かれていたからでした。あのおぼっちゃまがこんな立派にとしみじみ思ったのも当然、彼は現在軍人で、22歳の若さで少佐にまで登り詰めたのだそうだ。将来は公爵家当主にもなる彼に自分が妻などととは不安であったが、彼は捜索の際、クリームヒルトの身柄を徹底的に調べたらしい。男爵令嬢で立派な貴族なのだから心配ないとは言われたが、後日公爵に会った彼は結婚を反対されたらしい。やはりそうなったか、予想はついていたけれど、このままでは籍も入れられない。彼は最終的には跡継ぎから降りてでも結婚すると覚悟を決めていたが、そうなるとあのろくでなしのアルフレートが次期公爵になる。それはさすがにいただけない。そんな折、公爵が倒れたとの知らせが。オスカーはクリームヒルトを伴い屋敷に帰ると、成程具合が悪そうだ。彼女はオスカーの侍女を装い、公爵の世話を買って出るがどうやら毎度出される食事に、少量のヒ素が盛られていたのが発覚。当主殺害を目論む者がいることを突き止めます。まあこれはあのアルフレートと彼に抱き込まれた主治医の仕業なんですけど、この一件を解決したことで二人の結婚が認められます。公爵の胃袋も掴んでしまったクリームヒルトでしたが、おかげで見事に玉の輿。建て直された黒猫亭で週三回だけ働く許可をもらい生き生きと料理を作る彼女の様子が描かれてお終い。150ページくらいの内容なんですけど、情報量が結構あって長文に(^_^;)ヒロインが料理人のため、数々の料理が登場するので読んでてもうお腹が空いてw加えて巨乳の美人となれば、モテないわけがない。年齢のおかげで今まで結婚には至らなかったのはヒーローにとってラッキーでしたね。すっかり男前になったヒーローは名乗っても気付いてもらえなかったのには気の毒だったけど、婚約してからは想いも通じてラブラブ。公爵も根は悪い人ではなかったのが幸いして、最終的にはヒロインは気に入られて結婚も許された。とは言え、あんなぼんくらに公爵家継がせるより、出来の良い孫に継がせたいのが本音だったのも追い風になったみたいで。未来の公爵夫人ながら、以降も料理人を続けるってラストも良い〆だったと思います。評価:★★★★☆苦労の多かったヒロインが報われると言うお話はやっぱり良いですね。
2022.07.23
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2017年7月刊天海社LUNA文庫著者:若菜モモさん新社長のセクハラ、パワハラで四年間社長秘書として勤めてきた会社を辞めた里紗。失業して一ヶ月経つが、なかなか就職先が見つからない。そんなある日、都内のホテルで開かれたクラス会に出席した里紗は、帰り際にロビーで在職中から憧れていた取引先の社長・水嶌と再会する。旧友たちの小さな見栄の張り合いに巻き込まれた里沙は、水嶌が恋人であるかのように振る舞ってしまう。しかし水嶌はそれに便乗するかのように里沙をバーに誘い出し、そして……。嘘から始まった恋の行方は? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 根本里紗=ヒロイン。元老舗レザー会社の社長秘書だったが、新社長のセクハラ に耐えかねて辞職。 プライドが高く少々見栄っ張りな性格が災いして、密かに憧れていた 大手バッグメーカーの社長・水嶌と身体の関係になる。 水嶌貴之=ヒーロー。大手バッグメーカーの社長兼デザイナー。 里紗とは以前商談で出会った。セレブの恋人がいると嘘をついた里紗 に頼まれ、一芝居に付き合ったが、見返りに彼女と一夜を共にし、以 降逢瀬を重ねる。吉崎慎太郎=里紗が勤めていたレザー会社の新社長。父の急逝によりイタリア留学 から呼び戻された。 女癖が悪く里紗にしつこくセクハラを繰り返していた。 富永博美=里紗の高校時代からの親友。既に結婚して一児の母だが、度々会って 話を聞いている。里紗が見栄を張った原因を作った人物。 寺川安奈=里紗の同級生。美人の里紗に対して一方的にライバル心を持っていた 。エリート社員との婚約を自慢し、里紗に喧嘩を売ったものの、水嶌 を見て態度を変える。少し前の作品ですが、コミカライズもされているようですね。120ページほどの短いお話です。んが、ヒーローとヒロイン、どっちにも共感できないかも(^_^;)ページ数の兼ね合いもあるんでしょうけど、ヒーローはヒロインのどこに惚れたのかさっぱり。そんな素振りが全く無かっただけに動機が薄いと言うか。老舗レザーメーカーの社長秘書を務めていたヒロイン・里紗。だが、尊敬していた社長が急逝してしまい、代わりに社長職に就いたのは留学と言う名目で30近くまでイタリアで贅沢三昧に暮らしていたボンクラ息子。働いた経験すらない彼に社長業など務まるはずもなく、古参の社員が会社を支えているようなものだった。そんな状況を知ってか知らずか、慎太郎は勉強するでもなく里紗にセクハラとパワハラ三昧の日々。先代社長の為にもと我慢をしていたが、大手取引先のバッグメーカー「mizusima」の水嶌社長との商談で、散々恥をかかされた挙句、無理矢理襲われそうになった里紗はついにキレた。慎太郎を張り飛ばして辞職したのはいいけれど、その後の職探しは難航。出来れば前職を生かして秘書希望だが、これがどうして中々採用してもらえない。20社近く面接したと言うのに全て不合格とは。大手企業の中途採用はかくも厳しい。これはグレードを落とすなり、秘書以外の業務も視野に入れるべきか。無職になってそろそろ一ヶ月、就職先の悩みは尽きないが高校のクラス会に参加した里紗は親友の博美と飲み愚痴を聞いてもらっていた。そんな二人に話しかけて来たのは何かと里紗を一方的にライバル視している寺川。彼女は近々大手商社のエリート社員との結婚が決まったらしい。わざわざ里紗に自慢しに来たのか、博美共々うんざりしていたが、里紗は最近はどうなのだと聞かれて思わず言葉に詰まる。結婚どころか相手もいないし、目下失業中だ。正直に話すには見栄とプライドが邪魔して答えあぐねていると、憤慨した博美が里紗に彼氏がいないわけがない、飛び切りのセレブでカッコイイお相手がいるのよと捲し立てられて茫然。庇ってくれたのはありがたいが、博美は相当酔っている。とびきりのセレブでカッコイイか、あの水嶌社長みたいな人の事を言うのだろうと思いを馳せつつ、寺川はならご自慢な彼氏に是非とも会いたいと言う。当然ながらそんな存在はおらず、どう乗り切ろうと考えていると、なんと水嶌とバッタリ。どうやらこのホテルで商談があったようで、その帰りに出くわしたみたいだ。咄嗟に、彼の腕を取り話を合わせてくれと頼む博美と里紗。状況が判らないまま話を合わせてくれた水嶌は、あろうことか女性憧れの自社バッグを里紗を通せば割引きで売るとまで告げた。寺川は「mizusima」のバッグを安く買えると大喜びだったが、里紗は内心で大汗を掻いていた。これで何事もなく終わるはずだったのに、あの寺川の事これ幸いと高いバッグの割引を強請って里紗に連絡してくることだろう。一先ず、迎えに来た彼氏を装ってもらいそのまま会場を後にした里紗は何故か水嶌に同ホテルの彼が止まっている部屋に連れ込まれて、なし崩しに関係を持ってしまいます。彼のシャワー中、ノック音に気付いてドアスコープから覗くと若い女性。まさか水嶌の彼女か。恋人がいるのに自分を引っ張り込むとはと怒りが沸いて、シャワーから戻った水嶌を責めると弁解もせず悪びれない態度。お互い同意でのことなのだからと言う彼に腹を立て、さっさと自宅へ戻った里紗は、水嶌も慎太郎と同じだと悶々とした夜を過ごした。翌朝、水嶌の言葉を博美も真に受けて割引してくれるならバッグが欲しいと電話して来た。だが、昨夜大喧嘩して別れたのにさすがにその頼みはし難い。理由は伏せてあの後喧嘩してそのまま帰ってきてしまったと告げると博美は納得してくれたものの,図々しい寺川はそうもいかなかった。友人分と二つ欲しいバッグがあるとの頼みにため息が出る。博美は咄嗟のフリを頼んでたことも知ってるから納得もしてくれたが、寺川は水嶌直々に割り引くと言われてる手前同じ理由では引かないのは目に見えてる。素直にあれは見栄での芝居だったと謝るのもアリだが、なぜだか寺川に打ち明けるのもプライドが邪魔をする。気は進まないが、水嶌に謝る方が若干気が楽だと意を決して電話して会うことに。再会した彼にバッグのことを改めて頼むと、もともと自分が言い出したことだからかその件は承諾してくれた。しかも、高々3つなら金はいらないと言う。そこまでしてもらう義理は無いと言い募る里紗に、それならバックの代金分自分に抱かれろと告げられ・・・。親友はともかく、あのライバルの子の図々しさには呆れますが、もっと理解できないのはヒロイン。余計な見栄とプライドのせいでセフレみたいな関係になるのだけど、憧れてた人なだけに虚しくなるとか言われても全く同情できない。モノローグで男性に免疫が無いと言ってた上に、あの夜まで処女っぽい感じだったのにその割に、だし、前述の通りヒーローがヒロインにハマった理由もイマイチ分かり難いんですよねぇ。散々体の相性が良い的なこと言ってたから、明け透けに言うと顔と身体か。おかげで、ラストのプロポーズも、初めて会った時から惹かれてたみたいなこと言ってても微妙に冷めた目で読んでしまった。因みに、あのホテルの部屋を訪れた女性もただの部屋間違いだったようで、彼はフリーだったことも判明します。とは言え、あの時責めたヒロインにかなり辛辣なこと言ってたのを思うと、結構性格悪いよねこの人。コミカライズされるほどなので、ストーリー自体は悪くないんですが色々と惜しいお話。評価:★★★★キャラに好感持てないので★3つ半と迷いましたが、ストーリー加点で★4つで。
2022.07.18
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2022年1月刊天海社・LUNA文庫著者:小山内彗夢さんデビュタントの日。美しい侯爵令嬢エフェリーネ・ベイレフェルトは意識を失いかけ朦朧とする中で、前世の記憶を思い出していた。男性達の好奇の眼差し、自分の下着画像の拡散、SNS騒動の発端となったある男性から向けられる好意…そして求婚。前世の出来事が影響して、エフェリーネは同年代の男性を前にすると、気分が悪くなり意識を失ってしまうのだった。社交界を離れ静かに暮らすことに決めたエフェリーネだったが、ひとりの求婚者が訪ねてくる。エフェリーネに異様な執着を見せるその男は絵が得意だという。男が描いた絵を見せられたエフェリーネはたちまち気絶。何とそこにはエフェリーネの前世『濱野美紀』の下着姿が描かれていたのだ。エフェリーネはこの件のせいで屋敷に籠るようになるが、男子禁制のお茶会に参加することに。令嬢ばかりで安心していると、何やら男性の声が! またあのしつこい求婚者が乗り込んできたと思ったエフェリーネは意識を失いかける。ところがその声の主はエフェリーネの美しさに惚れ込んだユストゥス王子だった。そして驚いたことに、エフェリーネは王子に抱き上げられると何とも言えぬ心地よさを感じるのだ。一方、倒れてしまったエフェリーネを見て責任を感じたユストゥス王子は、エフェリーネを妻にすると宣言するのだがーー!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 エフェリーネ=ヒロイン。ベイレフェルト侯爵の一人娘。 極度の男性恐怖症で、デビュタントの日に自分の前世と恐怖症に なった原因を思い出した。 ユストゥス=ヒーロー。王太子。言い寄る令嬢達に全く興味を占めさないこと から、付いた渾名は皮肉も込めて「面食い王子」 エフォリーネに一目惚れして妃にと望む。 濱野美紀=エフェリーネの前世で現代日本人。普通のOLだったが、通勤電車 内で起きたトラブルによって下着が大胆に露出。その写真がSNS で拡散されたことで騒動になり、精神を疲弊した挙句事故死した ケイシー=ドーソン子爵の子息。エフェリーネに求婚して断られた後も彼女 に付き纏い、ユストゥスを敵視する。 美紀の恥ずかしい写真を模写した絵画を描いていた。 長谷=ケイシーの前世。満員電車にて自分の持っていた荷物のせいで美 紀に恥をかかせたことを悔やみ、責任を取って彼女を妻にすると しつこく付き纏っていた。ベイレフェルト=エフェリーネの父。溺愛している娘の将来を案じていたが、ユス トゥスから結婚の打診をされて思い悩む。「昨今のシンデレラは靴を落とさない」の作者さんですね。キャラ同士の掛け合いのテンポが良い。所謂転生ものです。前世で不可抗力とは言え大恥をかかされた挙句、SNSでその写真を拡散されてしまったヒロイン。おかげで異性からの好奇な視線が堪らなく怖くなり、しかも、原因を作った当事者からは責任を取るから結婚しようと迫られる始末。何かと厳しい上司も暫し休暇を取って温泉にでも行ってこいと言ってくれたその夜、件の男性の付き纏いから逃げようとした彼女は命を落とします。デビュタントの日、ヒロインは前世を思い出して大層ショックを受けました。元々、父以外の男性が苦手ではあったけれど、この強烈な過去は彼女を更に男性恐怖症へと追い込むことに。侍医にも心の病と診断され、父にも嘆かれたが異性の視線に晒されるだけで気を失っているようでは、結婚などどう考えても無理。将来は田舎に籠って一人静かに暮らそう。だが、そう簡単には終わらず、とある子爵の子息から求婚されたヒロイン。絵が趣味らしく、かなりの腕前なのだとその写しを見せられた彼女は、それがあの拡散された自分の姿を模写したものだと気付き卒倒。速攻で申し出は断ったものの、自分がこの世界に転生したのだからもしや彼も転生しており、それがその子息だとしたら・・・・この一件でヒロインの引き籠りは一層酷くなり、社交界ではデビュタントも辞退するなんて余程の醜面に違いないとまことしやかに囁かれるように。それどころか、ヒロインは大層な美少女でした。娘が醜いなんて聞き捨てならん、と激怒したのは当然彼女の父である侯爵。丁度、そのやり取りを耳に挟んだ王太子は、ならば噂のその娘を見てみたいと希望し、男子禁制のお茶会を開いて、離れた場所から令嬢の顔を見ようということになった。果たして件の令嬢を見た王太子は一目で彼女に心奪われ、王太子妃にと望みます。結婚の打診をしたが、侯爵はどうにも気乗りしない様子。誰もが羨む未来の王妃と言う座を喜ばないとは、益々興味をひかれた彼は、ヒロインとの面会を希望。また倒れるのでは、と周囲の心配を他所に何故かヒロインは王太子に嫌悪感どころか安心感を覚えて・・・。要は王太子も転生者で、ヒロインの前世の上司だったと言うオチ。全部を覚えているわけじゃないけれど、その頃から彼女に惹かれていたんでしょうね。それであの一目惚れか、と真相が判ると成程ーと。ヒロインの方は上司に気があったのかは謎ですが、安心感やらあっさり彼の事だけは受け入れてる辺り、憎からず思ってたんでしょう。問題は勘違いストーカー男だけど、こういう話の通じない輩が一番怖い気がする。男性全てが怖いのではなく、このストーカーへの嫌悪感が、変な作用をしていたみたいで原因が判明して以降は恐怖症も克服。ラストは王太子と正式に婚約してお終い。評価:★★★★ストーリー自体は面白いです。
2022.06.29
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2022年4月刊天海社・LUNA文庫著者:桃城猫緒さん未来の皇太子妃ーーひいては皇后ーーとして生まれてきた、レンバッハ家の一人娘アメリア。幼いころに母を亡くした淋しさと厳しい皇后教育に耐え、凛とした美貌と品格とを兼ね備えいつ嫁いでもおかしくないまでに成長したある日。アメリアの運命は、突如として父コンラートの『娘』を名乗る少女ジャンヌによって暗転。かつての父親の恋人の娘であるジャンヌを父は溺愛、婚約者のマルクス皇太子までもがジャンヌに恋をし、アメリアは父からもマルクスからも邪険にされ、やがてはレンバッハ侯爵家の血を引かない不義の子であるとでっち上げられて斬首され、短い生命を終えたのだった。……が、気がつくと礼拝堂でアメリアの面影もない、姿形の異なる別人物に生まれ変わっていた。自らをシュピカと名づけたアメリアは、住み込みで働きはじめた酒場で看板娘となって、新しい人生を歩んでいた。そんなある日、店にかつてアメリアの護衛騎士だったヴィルマー・フォン・トロストが現れる。飲んだくれ、すっかり面変わりしてしまったヴィルマー。こっそり彼の後をつけていったシュピカが目にしたのは、墓前でアメリアに詫びるヴィルマーの姿だった…… ↑楽天ブックスより、あらすじ引用 登場人物 シュピカ=ヒロイン。前世は謂われない罪で処刑された侯爵令嬢。 あまりにも不幸に人生を終えたことで、神から新たな身体を与えられ 生き直すことになった。ヴィルマー=ヒーロー。レンバッハ侯爵家の護衛騎士。 主人であり、恋い慕っていた令嬢アメリアが無実の罪で処刑されてか ら以降、荒んだ日々を送っていた。 アメリア=シュピカの前世。レンバッハ侯爵令嬢。 皇太子の婚約者だったが、侯爵の実の娘ではないと虚偽の訴えにより 皇家を謀った罪に問われて処刑された。 ジャンヌ=アメリアの異母姉。侯爵と平民女性との婚外子で、実母が亡くなり父 を頼って侯爵家を訪れる。侯爵の策略で処刑になったアメリアに代わ って皇太子の婚約者になったが、その立場を利用して後先考えずに国 庫金で遊興に浸り贅沢な生活をし続けた。 マルクス=グランエルン帝国の皇太子→皇帝。アメリアの元婚約者。 享楽的な性格であり、真面目で優秀なアメリアを厭んでいた。 ジャンヌを溺愛し皇位を継いでからは悪政を敷いた。コンラート=アメリアとジャンヌの父。レンバッハ侯爵。 平民だった恋人との結婚が叶わず、その後政略結婚した妻と娘のアメ リアを心底嫌っていた。ジャンヌ可愛さにアメリアを夫人の不義の子 だとでっちあげ処刑に追い込む。 デニス=ミヒャエル皇帝の従兄弟。謀反を恐れた先々代皇帝により長らく幽閉 され存在は秘匿されていた。クーデターの末、マルクスに代わって皇 位に着く。転生ものです。100ページちょっとの短めのお話なれど、その割に情報量が結構多いのでざっくりと書きます。無実の罪で処刑された侯爵令嬢アメリアは敬虔な信徒だったことから、神によって新たな身体を与えられ生き直すチャンスを得ます。転生と言いつつ赤ちゃんからではなく、姿形は違えど年齢は大体生前と同世代の女性に生まれ変わった彼女はシュピカと名乗り、町の酒場で看板娘として楽しく暮らしていました。前世の自分は皇后になるべく厳しい勉強の日々の上、父からも疎まれていた。自由なんてものも無かったあのころと比べ何の柵もない今のシュピカはなんて生きやすいのだろう。お金を貯めていつかは色々な国を旅してみるのもいいかもしれない。そんなある日、酒場にてアメリアの護衛騎士だったヴィルマーと出会ったシュピカ。自分が知る彼は騎士らしくいつもピシっとしていたと言うのに、今のヴィルマーは見る影もなく酒浸りで荒んでいた。気になって後を追うと、共同墓地に埋葬されているらしいアメリアを悼み、許しを請う彼の姿。ジャンヌが現れて以降、居場所を失くしたアメリアを何かと気にかけてくれていたのはヴィルマーだけだったし、最後まで彼女は無実だと周囲に訴えてもくれていた。アメリアが処刑されて半年、彼はずっと後悔の念に苛まれているのだ。姿形が変わり、アメリアと全く似ていない自分だけれど、そんなヴィルマーを放って置けずシュピカは彼を励まし、彼もまた段々と以前の自分を取り戻していきます。でも、ヴィルマーに結婚の話が出ていると聞いて、シュピカはアメリアだった頃、密かに彼に恋していた気持ちを思い出し、自分は生まれ変わったアメリアだと告げます。最初は半信半疑だったけど、彼女しか知り得ないことを次々と言われ、ヴィルマーは漸く信じ彼女の復活と再会を心から喜び、想いを伝えあった二人は結ばれ恋人同士に。それから数か月経って、名君と言われた皇帝ミヒャエルが病で崩御。皇太子のマルクスが皇位を継ぎ、ジャンヌとの結婚も公表されたのだが、長らく臥せっていた皇帝の目が無いのをいいことに、この二人が贅沢三昧を繰り返していたことで国庫は圧迫されて税金は上がるばかり。そんなマルクスが正式に皇位を継いだことで、国民の不満は爆発寸前。いつ暴動が起きてもおかしくない状況だった。そこでシュピカは騎士の誓いで侯爵家を離れられないヴィルマーを自由にするためと、マルクスを退位に追い込むべく、ミヒャエルから聞かされていた皇家の極秘事項を利用してクーデターを目論み・・・。シュピカの計画は秘匿されているものの継承権を持つ人物、先々代の皇帝の甥・デニスの存在を明らかにし、彼を次の皇帝に擁立すると言うもの。アメリアの件で侯爵とマルクス、ジャンヌに恨みを持つヴィルマーにレジスタンスに交渉へ行かせ、意気投合した彼らは計画を実行。マルクスの横暴さに意見して王宮から追いやられていた貴族たちの協力もあってクーデーターは成功し、マルクスは退位へと追い込まれてデニスが新しく皇帝位を継ぐことに。国庫金を私的に使い込み、悪政を敷いたマルクスとジャンヌは公開処刑となり、彼らを逃がそうとした侯爵も爵位剥奪の末、同等に裁かれた。シュピカとヴィルマーはデニスに感謝され褒賞を貰って後顧の憂いなく帝国から旅立って終わり。途中色々あるんですが、ちゃんとざまぁ展開もあってよかった。最初、アメリアが気の毒過ぎて読んでて悔し泣きしたくらい。(流行りの韓国マンガの復讐ものくらい酷いんで)クソ親父にその娘、クソな婚約者のせいで不幸に人生を終えてしまった前世だったけど、ミヒャエル皇帝には可愛がられていたおかげで重要な情報も知っていて彼らを追い込むことも出来た。デニスは幽閉から救い出されただけでなく帝位にも就くきっかけを作った二人に感謝し、かなりの地位を用意したものの、彼らは辞退。侯爵家がお取潰しで無くなったのでヴィルマーは自由。シュピカの夢だった諸国漫遊の旅に出ると言う清々しい終わり方でした。評価:★★★★★ストーリーもキャラも文句なし。多分、次の個人的ランキングでも上位に来そう。
2022.06.20
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2022年2月刊天海社・LUNA文庫著者:桜庭えみりさん貴族が通う王立学園への入学日。学園に向かう馬車の中で、子爵令嬢のロゼリアは深いため息をつくーー。左右で色の異なる瞳を持つロゼリアはこれまで、悪魔に魅入られた令嬢として周囲から厭われ続けてきたのだった。学園生活でも当然、嫌悪の視線が待っていることだろう。ロゼリアは憂鬱で仕方なかった。そして彼女にはもうひとつ悩みが……。それはロゼリアを嫌う婚約者のフレッドと顔を合わせなければならぬこと。案の定、学園で会った途端、フレッドはロゼリアが大切にしている髪飾りを投げ捨ててしまう。悲しむロゼリアだったが、澄んだアイスブルーの瞳の美しい令嬢・アイリスが髪飾りを届けてくれる。自分へ嫌悪の眼差しを向ける同窓生と違い、いつも優しく接してくれるアイリスから街へ出かけようと誘われたロゼリア。待ちに待った約束の日ーー。なんとロゼリアを迎えに来たのは、アイリスと同じアイスブルーの瞳を持つ黒髪の美しい男性、国王の信頼も厚いリヴィングストン侯爵家の嫡男・リアムで……!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 ロゼリア=ヒロイン。エインズワース子爵令嬢。 この国では忌み嫌われるオッドアイのせいで、両親からも疎まれて育 った。王立学園に入学してからも同級生達から遠巻きにされていたが 幼少期の友人・アイリスと再会し交流を重ねるうちに徐々に本来の自 分を取り戻す。 リアム=ヒーロー。リヴィングストン侯爵家の跡取り。 アイリスの代わりにロゼリアとデートをし、以降なにかと接触を図る アイリス=リアムの親戚でロゼリアの友人。 トップの成績で入学し、その美貌も相俟ってたちまち学園の人気者に なった。幼い頃、静養していた地でロゼリアとオスカーに出会い、帰 郷の際にロゼリアに再会を約束して自分の髪飾りを贈った。 オスカー=ロゼリアの兄で王立学園の教師。 両親とは違って妹を溺愛しており、彼女のためにとリアムからとある 計画の協力を頼まれた。 フレッド=マクファーレン伯爵の子息でロゼリアの婚約者。 困窮している伯爵家が子爵家から金銭援助をしてもらいながらも、ロ ゼリアを蔑ろにし散々彼女を悪し様に罵っていた。かなりの女好きで 早速アイリスに目を付け付き纏っている。最低な婚約者から初恋の人を救うべく、ヒーローが立てた作戦とは、なお話です。読んでてまぁそういうオチかなと思ってたら、やっぱりそうだったのねって展開でした。ヒーローの涙ぐましい努力には脱帽。リアムは幼い頃病弱で、魔よけの意味を込めて女児として育てられ、静養していた地でロゼリアとオスカーに出会います。特にロゼリアとは親しくなり、都に帰らねばならなくなった時、自分が身に着けていた髪飾りを彼女に贈り再会を約束。それから10年以上経ち、ロゼリアは王立学園に入学しますが、この色違いの目のせいで遠巻きに見る同級生たちの態度はやはり堪える。しかも、彼女の婚約者であるフレッドは顔を見るなりロゼリアを罵り、女遊びも隠そうともしない。貰い手の無いお前と結婚してやるんだからと、彼女の家からかなりの金銭援助を受けながらも乱暴な言動でロゼリアを傷つけるフレッド。娘を厭う両親は厄介払いとばかりに、彼の態度も知ってか知らずか婚約が決まってからは干渉せずであった。そんな妹を何とかしてやりたいとオスカーも考えていた所、リアム・リヴィングストンと名乗る人物からある計画を持ちかけられたのです。あの最低男とロゼリアの婚約を無しにしたい、と。昔取った杵柄で自分が女装して学園に潜り込み、アイリスとしてロゼリアと接し裏でフレッドを誘惑する。気があるふりをしてその気にさせて彼女と婚約破棄せざるを得ない状況を作ると言うもの。結果、フレッドは策に嵌り、アイリスの偽装誘拐をやらかすのだけど、当然悪事に導いたのはリアム。フレッドの最低な為人も学園中に知れ渡り、自らロゼリアとの婚約破棄を宣言したことから晴れて彼女はフリーに。リアムは、これを待ってたとばかりにロゼリアに正体を明かして新たな婚約者になって欲しいと告白。何故だかアイリスにドキドキする私はおかしいかしらと思っていたロゼリアも、正体がリアムと知って驚きつつも申し出を受けてお終い。ロゼリアもリアムのお膳立てばかりでなく、自ら変わっていく努力を重ねて行ったわけですが、あのクズ男と縁が切れたのは良かった。もう見るからにこいつとの結婚は不幸一直線だったもんね。元々リアムはロゼリアが15歳になったら婚約の打診をするつもりだったのに、一足先にフレッドの家が子爵家へ援助してくれと泣きついたので厄介者の娘を押し付けるチャンスと早々にフレッドを婚約者に据えたのでした。僅差で出遅れたリアムの苦肉の策がアイリスに再びなること。とは言え、イラストの青年が女装してたわけだけど、よくバレなかったもので。評価:★★★★ヒーローの努力は買います。そして、イラストが美麗でポイント高し。
2022.06.19
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2020年2月刊天海社・LUNA文庫著者:佐倉紫さんグレイスはガナイシュ帝国の南東に位置する小さな国、アリーフェン王国の王女。帝国の皇太子フェリクスに秘かに恋心を抱いている。皇帝の在位三十年を記念する舞踏会に出席したグレイスは、そこで媚薬を盛られて苦しむフェリクスと遭遇。なんとかしなければーーその一心から身を挺してフェリクスを救おうとする。翌朝、フェリクスから“責任を取るため”求婚すると言われ、傷つくグレイス。フェリクスを愛しているからこそ、責任を果たすための愛のない結婚をするなんてーー。皇太子妃となったグレイスに、小国の王女如きと周囲の目は冷たい。特に公爵家の令嬢ベラドナはグレイスがあらぬ嫌がらせをするとフェリクスに訴えて…… ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 グレイス=ヒロイン。小国・アリーフェン王国の王女。 初恋の人である帝国の皇太子・フェリクスが媚薬を盛られて難儀して いた所を文字通り体を張って助けたのをきっかけに求婚されて皇太子 妃になった。真面目な人なだから彼は責任を散るためだけに自分を妃 に迎えたに違いない、と思い込む。フェリクス=ヒーロー。ガイナシュ帝国の皇太子。 視察旅行の際、立ち寄ったアリーフェンにてグレイスを見初め、数年 に一度会いに行っていた。舞踏会にて媚薬入りの葡萄酒を飲まされた 所をグレイスに救われる。元々恋していたこともあって彼女を妃に迎 えた。 リバル=フェリクスの側近。媚薬混入事件と言い、グレイスに嫌がらせを続け るブレイブ公爵家の調査を命じられる。 ベラドラ=ブレイブ公爵令嬢。皇太子妃の座を狙い、葡萄酒に媚薬を仕込んでフ ェリクスと関係を持とうと画策したが失敗。彼がグレイスを妃に迎え たことが気に入らず、女官長に金を積んで皇太子妃の相談役に就いた 。その立場を利用して、何かとグレイスに嫌がらせを仕掛け、悪評を 拡散することで、彼女を追い出そうと目論んだ。 ブレイブ=ベラドラの父。娘を皇太子妃にするべく動いていたが、その計画は頓 挫。領地にある帝国所有の鉱山を自らの物にして私腹を肥やしていたお互い初恋同士、この結婚は幸福なはずなのに、ちょっとした誤解でヒロインは愛されている自信が持てず、なお話です。小国の王女・グレイスは、密かに帝国の皇太子であるフェリクスに影ながら想いを寄せていた。でも所詮自分は属国の姫。身分違いもいい所。きっと相応しい方が嫁ぐに違いない。そんなある日、帝国皇帝在位30年の祝いの舞踏会に招かれたグレイスは、休憩に入ったギャラリーにて何やら苦し気なフェリクスと遭遇。理由を尋ねると、どうやら飲み物に媚薬か興奮剤の類が混入されていたらしい。薬剤の成分が判らねば、その間もだえ苦しむことになる。数時間で見つかればまだマシだが、数日にも及んだら事だ。意を決した彼女は自らの部屋に彼を匿うと、自分の身体を使って欲しいと告げた。多分、欲望を満足させれば症状は落ち着くはず。フェリクスはグレイスの献身を無碍にも出来ず、二人は事に及んだが最後の理性の賜物か最後まではしなかった。翌朝、すっかり体調も戻ったフェリクスはグレイスに求婚。驚く彼女に責任を取りたいのだと言われ、聊か傷付くも、一線は超えていないのだから気に病むことはないのだし彼が気にすることはない。しかし、強く妃になってほしいと請われれば心は揺れる。それに、アリーフェンは帝国の属国。皇太子から望まれれば断るなど以ての外。かくして3カ月後、グレイスはフェリクスに嫁ぎ、皇太子妃となった。が、当然のことながら、グレイスが小国の姫と言うこともあって反対の声も少なくなかったと言う。それでも、浮いた噂一つ無い堅物と思われていた息子が妃に望む女性がいたと知って皇帝夫妻は大喜び。グレイスを歓迎した。皇帝たちが喜んでいるのに、野暮なことは言えない。反対派も鳴りを潜めたが、この結婚が気に入らずグレイスを披露宴前に追い出そうと画策する存在がいて・・・。輿入れ早々、嫌がらせを受けるグレイス。図られたなど思いもせず、自分が至らないせいだと落ち込む彼女にフェリクスも気付いており、彼女に判らないよう護衛を潜ませ、側近のリバルには何やらきな臭いブレイブ公爵とその娘・ベラドラの調査を命じます。そんな最中、グレイスの悪評が宮中を飛び回り、彼女の立場は悪くなるばかり。とにかく裏を取らねばと動いていたせいで忙しくしていたフェリクスとは中々会えず、寝室も共にしてくれない。思い悩んでいたグレイスは、皇妃主催のお茶会ではせめて上手く立ち回れるようしようと決意していた。だが、案の定ベルドラの策略でそこでも窮地に陥るグレイスでしたが、フェリクスに救われます。調査も終わって裏も取れたこともあり、後はそれを暴くだけ。媚薬混入事件と言い、皇太子妃への度重なる嫌がらせは軽い罪で済むはずもなく、帝国の鉱山で横領を働いていた公爵共々捕まって処罰を受けることに。皇妃に夫婦でよく話し合えと言われ、久しぶりに夫婦の時間を得た二人は互いの想いを打ち明け、結ばれてお終い。文字通り、ラブシーンで終わってました。120ページくらいのボリュームなので、物語自体は物凄くシンプル。ベラドラも、よくもまぁ皇太子妃に嫌がらせをし続けたもので。公爵令嬢とは言え、身の程をわきまえていないのか単に怖いものしらずなのか。取り巻きを脅してたり、余罪が多そうなだけに結構な罰を受けそうでスッキリ。父親も横領はいかんなぁ。娘の罪合わせて爵位剥奪とか普通に有り得そう。あと、フェリクスも求婚の際、責任云々言わずに元々好きだったと言っとけばグレイスも思い悩まなかったのにね。姑である皇妃がグレイスを相当気に入っている様子なのが良かった。評価:★★★★とにかく王道なストーリー展開です。
2022.06.11
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