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2021年8月刊マーマレード文庫著者:あさぎ千代春さん輸入菓子会社に勤める美都は、社長の高虎から突然「お前と結婚する」と迫られて!?美都の祖父が作るアップルパイのレシピ提供の条件として、政略結婚を勝手に決められていたのだ。訳がわからないまま、不愛想アンドロイドと噂される冷徹で強引な高虎と同居することになったが、自宅での彼は極甘に豹変。既成事実を作ろうと甘い毒牙を向けてきて…!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 岡村美都=輸入菓子メーカーに勤める会社員。 旗江高虎=美都の勤め先の社長。 柴田光輝=美都の元カレ。 旗江万里=高虎の異父弟。輸入菓子会社の庶務課に勤める美都は、ある日突然社長室に呼び出され戦々恐々としていた。役職に就いているわけでもない平社員の自分に旗江社長が直々に話があるなんて。気付かないうちに何かやらかしてたんだろうか。おっかなびっくりで入室すると、突然手を引かれ熱烈なキスをされて美都はビックリ。パニくって思わずフルスイングで平手打ちをかますと、殴られた本人は婚約者に対してその態度はないだろと苦笑い。私がいつ社長と婚約したんですか、付き合ってすらいないでしょと詰め寄れば、君の家族には了承を取ったと悪びれない旗江の様子に意味が分からず唖然。どういうことかと尋ねれば、祖父母が営む洋菓子店「OKAMURA」の名物アップルパイを今度この会社で取り扱うことになったらしい。輸入物だけでなく今後は日本全国の名物菓子も販売して行く、という話自体は営業部にいる友人からも聞いていた。祖父の作るアップルパイは本当に美味しくてファンも多い。それだけを買いに地方からも客が訪れる程だ。旗江の説得に祖父は彼を気に入って意気投合。門外不出のはずのレシピも快く提供してくれたそうだ。でもそれと婚約者云々っていう話にどうつながるんだ?不思議がっていると、よりにもよって祖父が、あんたが独身ならうちの孫娘もついでに貰ってやってくれと頼まれたのだそうだ。理由を知って美都は憤慨。大事な孫をレシピのおまけにするなっ。20年前に両親を相次いで亡くした彼女を父方の祖父母が引き取り、大事に育ててくれた。二人には感謝してもしきれない。それにしたって本人に断りもなく勝手に人生の一大事を決めてしまうなんて。しかも、問題なのは旗江がこの結婚にかなり乗り気なことだ。ここで押し倒して早々に既成事実を作ろうとするくらいには。そんな彼を、私には初耳でしたので、と何とか説得すれば渋々引き下がってくれたが、その代わりにと渡されたのはマンションのものらしい電子キー。就業後は俺の部屋で待っててと、マンションの住所と地図が後にメールで送られて来た。まぁ、会社でする話でもないしゆっくり話そうってことかな。一応、休憩時間中に祖父に連絡すれば概ね旗江の言った通りだった。祖母も喜んでいたし外堀を埋められているようで眩暈がした。いざ、マンションに着けば生活感の無さ過ぎる部屋。食事はほぼコンビニ弁当と耳にしたことがあるけれど、全く料理をしないようで冷蔵庫にはミネラルウォーターとビールのみ。他人事ながら旗江の健康状態が気になって、頼まれもしていないのに夕食まで作ってしまった。わざわざスーパーにまで行って何してるんだか。丁度良いタイミングで帰宅した彼はテーブルに並べられた家庭料理に目を丸くしており、美味いと絶賛してくれた。待ってる間ヒマだったんでと苦しい言い訳をしていた美都は、食事を終えた旗江からこれから一緒に暮らそうと言われ絶句した。おばあさんたちからもくれぐれもよろしくと言われていると悪魔の微笑み。ここまで来たらもう観念するしかないのか。そこで美都は合意を得ずに、無理矢理性的接触はしないことを条件に同居に同意。それに、完璧に見えて実は生活能力ゼロの彼を放っておけなかった。あれ以来、キスもしてこないし約束を守ってくれている旗江に安堵しつつ、夜中目覚めると抱き枕のように抱きしめられててビックリすること数回。お人好しな美都は手間は変わらないからと食事の支度を引き受け、弁当まで作って手渡すと彼は感動していた。仕草やマナーなどを見るに育ちが良さそうだけど、お母さんが家事をしない系の人だったのかも。そんな最中、東京支社に美都の元カレの柴田が出向先の神戸から帰って来た。彼とは大学時代に3年程交際していたが、柴田の浮気が発覚して破局した。3歳年上の彼は外資系の銀行に勤めていたがトラブルがあったとかで退職。中途採用で全く系統の違うこの会社に入社して来た時は驚いたものだ。浮気しておいてまだ美都に未練がある風なのが癪に障りつい冷たい対応をしてしまうけれど、相変わらず底抜けに明るい奴でうんざり。この頃になると旗江を意識している自覚があった美都は馴れ馴れしい柴田の態度に冷や冷やしていた。しかし、後日柴田から破局の原因となった浮気疑惑の真相を聞いた。彼が当時ストーカー被害に遭ってたなんて知る由も無かった。上司の娘が犯人だったそうで揉めた結果、銀行を辞める判断をしたらしい。復縁を迫られたが、今の自分は旗江と結婚して家族になりたいと思っている。素直にもう好きな人が居るんだと申し出を断った美都はある決意を固めていた。旗江は美都が元カレとよりを戻したいのではと勘違いしていたが、彼女がきっぱり否定。結婚も真剣に考えたいと思うという美都の言葉を受け、正式に交際することになった二人。何もかも順風満帆に進んでいる、そう思っていた。だが、バイトが病欠してしまい土日に店のヘルプを頼まれた美都は、自分を尋ねて来たスーツ姿の男性から旗江と別れるよう手切れ金を渡され・・・。実は旗江はとある大企業の跡取りでした。が、父親と折り合いが悪く家を飛び出し、全く関係ない洋菓子を扱う会社を起ち上げ成功を収めます。彼は常々「お菓子の王様になる」と公言しており、面接の際、彼のこの言葉に美都も感銘を受けていました。店に現れたスーツの男性は旗江の父親の秘書。息子には然るべき家の娘と結婚させるから、という彼の父親の意向に従うつもりはなく、やり取りを見ていた祖父が追い出します。当然、手切れ金は突っ返したものの、折り合いが悪いとは言え病に倒れた父を見舞いもしない旗江につい美都は意見してしまいます。後悔しないよう、お互い納得がいくまで話し合うべきだと。家族なんだからと言う美都にお前に何が判ると旗江はブチキレ。意見の相違で二人は喧嘩になるも、彼を一人にしておけないと結局マンションに戻って来た美都。そこに現れたのは旗江に雰囲気が似ているランドセル姿の少年。歳の離れた異父弟だと関係を明かした少年は万里と名乗り、現状の旗江家で起こっている騒動を明かします。会長である父親が倒れて入院したのは聞いていた。だが、ここにきて気弱になったのか旗江を家に呼び戻そうとしているそう。家なら自分が継ぐ、兄は自由に生きて欲しい。万里は異母兄を慕い、家庭的な雰囲気の美都のことも兄の嫁として歓迎。この弟君、小学生とは思えない程聡い子で、しり込みしていた美都のことも後押ししてくれます。もう一度話し合った二人は彼の父に会うことを決め、入院している病院へ。真摯な言葉で高虎さんのことは任せて安心して欲しいと伝える美都に、漸く義父は息子が自由に生きることを認めるのでした。その後、旗江の口から昔荒れていた時代のこと、その時食べたあのアップルパイの味と店番をしていた可愛い女の子の思い出が語られ、二人のファーストコンタクトが大分昔だったと知る美都。おませな彼女がカッコイイ旗江に「お菓子の王子様になって私と結婚して」とプロポーズをしていました。お菓子の王様になるってそんな意味合いだったのね。それを実現した彼を微笑ましく思うのでした。おまけの番外編は柴田目線の美都と旗江のお話。全編通して明るくコメディ調ではありましたが、旗江の抱える闇が露見したあたりで暗雲が。美都の明るさと万里くんの登場で盛り返しが早くて良かった。温度差に風邪ひきそうだったもん(^_^;)評価:★★★★★
2024.09.11
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2024年8月刊マーマレード文庫著者:若菜モモさん一人息子の陽向を訳あって秘密で産み育ててきた涼香は、子供を産んでから“あやかし”の姿が視えるようになり、彼らから身を隠すように生きてきた。ある日、あやかしに襲われる涼香を救ったのは、美麗な陰陽師であり陽向の父親でもある尊成だった。子供の存在を知った尊成は涼香と陽向を家に迎え入れるが、転生の記憶を持つ彼には前世から待ち続ける想い人がいるという。一方、涼香はあやかしから「鬼姫」と呼ばれることに困惑。尊成の前世とも関わりがあるようで!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 山本涼香=弁当屋で働きながら一人息子を育てるシングルマザー。黒河内尊成=表向きは大手不動産会社のCEOで裏では陰陽師の棟梁を務める。 陽向の父親。 羅鬼=涼香を付け狙う鬼のあやかし。長らく封印されていた。 山本陽向=涼香と尊成の息子。高校3年生の時に事故で両親を亡くし、一人残された涼香が地元の商店街にある弁当屋で働き出してから3年経つ。常連客からの好意で福引券を譲られた彼女は見事に特賞を当て、宿泊プラン付きの京都への旅行券を当てた。休暇を貰って二泊三日の旅に出掛けた涼香は、そこでミステリアスな雰囲気の美青年と遭遇。時間としてはごく短い邂逅だったけれど、何故かその青年のことが気になって仕方ない。翌日、道に迷って人気のない路地に出てしまった彼女は、美しいけれど恐ろしいと言う印象の男に襲われた。その際、怪しげな液体を飲まされた涼香は動けなくなり、間一髪のところを昨日の青年によって助けられた。逃げた男の頭には角が生えていた。まさか鬼?しかし、そんなことより先程飲まされた液体のせいか、体が熱くて仕方ない。青年は媚薬を飲まされたか、と渋い顔。幽世聖の媚薬は抜けるまで地獄の苦しみを味わう、彼は涼香を救うため彼女に請われるまま、その身体を抱いたのだった。翌朝目覚めた彼女は自らに起こった出来事を思い返して茫然。でも、あんなに苦しかったのに今はスッキリしている。横で寝ている青年を起こさぬよう身支度を整えると世話になった礼と感謝を綴った手紙を置いてその場を去った。東京に戻り、普段と変わらない生活をして2ヶ月ほど経った頃、急な吐き気に襲われ早引けした。最初は胃炎かと思ったがもしかしてと産婦人科を受診。やはり妊娠していた。心当たりならある。父親はあの恩人の青年だ。しかし、天涯孤独だった彼女にとってこの子は新しい家族だ。産むことを決めた涼香は弁当屋の社長夫婦のサポートを受け、後に長男・陽向を出産。陽向は成長が早く手間もかからない子だった。1歳にもならないのに既に片言で言葉を話し、伝い歩きまでし始めたので社長夫婦も驚いていた。そして、涼香にもある変化が。陽向といるときは大丈夫なのだけど保育園に預けていたり離れた時には街中に潜むあやかしの姿が見えるのだ。あの鬼に襲われるまではそんな存在信じもしなかったろう。だが今なら判る。人間に紛れている彼らは大抵は無害だが悪さをする者もいる。大抵は見えているぞ、と視線を向ければすごすごと逃げて行くのに、今日のあやかしはいつもと違った。凄い力で腕を掴まれ「羅鬼様の元へ連れて行く」と言われ恐怖を覚えた。そこを助けてくれたのは20代後半に見えるスーツ姿の女性。そして女性の援護をするよう現れたのはあの青年ではないか。彼の放つ気であやかしは消え、二人は1年半ぶりの再会を果たしたのだった。陽向を見て、自分と同じ霊力を持つとして彼・黒河内尊成は自らの子だとすぐに判ったようだ。なら尚更羅鬼に狙われている涼香を放っておけないと黒河内邸に連れ帰った。彼の家は代々陰陽師の家系で、尊成は現当主だと言う。先程助けてくれた女性も分家の者だそうで、今後、涼香たちの護衛に付くと聞かされその情報量多さに頭はパニック。そもそもどうして羅鬼なんてのに狙われるのか。尊成の話では千年ほど前に彼の先祖が羅鬼を封じたそうなのだが2年ほど前にその封印が解けてしまったらしい。そう、まさしく涼香が京都で襲われた頃だ。彼女を狙う理由はまだ不明だが、その頃から若い女性の連続殺人事件が起こっている。力を貯めるために定期的に女を襲っているのだろう。この屋敷には結界があるから安全だとして暫く厄介になることに。だが、居候して数日経った頃、尊成からプロポーズされた涼香はビックリ。理由を尋ねれば、陽向は俺の子だからだと言い、親子はともにいるべきの言葉に内心がっかり。それでもその通りだとは思う。陽向の為にも父親は居た方が良い。モヤモヤとするもの抱えながらその頃から彼女は夢を見始めた。着物を着た見知らぬ女性と尊成によく似た狩衣姿の青年。二人はどう見ても恋人同士で仲睦まじいい会話を交わしている。何故か、涼香の意識は女性とシンクロしており彼女は混乱。夢は毎夜見る訳でなく、内容が繋がっているわけでもない。それでも、会話で判ることは二人はロミオとジュリエットのように決して結ばれぬ関係だと言うこと。こんなに好きなのに私は鬼族であなたは人間の陰陽師。許されぬ恋に涙する女性の気持ちがダイレクトに伝わって来て胸が痛い。もしかしてこれは前世の夢なのだろうか。この頃になると力が戻りつつあるのか、羅鬼からのコンタクトがあって彼女に決断を迫って来た。お前が俺の元に来るなら女を襲うのは止めてやると。悩んだ涼香はある決意を固めて、羅鬼の住処へと一人で出向き・・・。転生+シークレットベビー+陰陽師という色々な要素てんこ盛りの今作。ぶっちやけ、好みが別れそう。好きな人には刺さるけど、って感じのテイストです。ヒロインとヒーローは前世で恋人同士でしたが、前述の通り敵対する者同士で、周囲から反対される仲。ヒロインの前世である鬼姫・伽耶は元々羅鬼の許嫁だったものの、人間と事を荒立てたくないと言う彼女の父を羅鬼が殺害。人間界を蹂躙すべく準備を進めていましたそれを尊成の前世・周防に阻止され封じられていたと言う筋書き。伽耶はその際、周防を助けようと羅鬼に一矢報いるも反撃を食らって亡くなってしまいます。周防は嘆き悲しみ、彼女と再び会える日を何度も転生して待ち続けるも、鬼との恋を咎められ罰として伽耶に遭っても判らぬよう、陰陽守に呪いを掛けられた彼は千年後に涼香と出会います。心優しい彼女に心惹かれプロポーズしたのものの、あの言い方じゃ色々誤解されるよ、と思ったり。強キャラ感出してた割に、羅鬼があっさり負けたのはページ数の都合かな。陽向の護衛を務めていた狛犬兄弟(表紙のわんこたちです)風雅と雷雅が癒しでした。評価:★★★★☆
2024.08.24
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2021年9月刊マーマレード文庫著者:木登さん箱入り娘の東子は、大企業の御曹司・一成との政略結婚を渋々受け入れる。顔を合わせずに入籍が済み、そのまま愛のない結婚生活を過ごす…はずだったのに、いざ対面した彼は、溢れる色気と過保護な溺愛で翻弄してきて!? さらに「君のすべてを俺のものにする」と独占欲を加速させる一成。初めての恋心や悦びを教え込まれ、東子は甘く開花していき…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 御堂東子=大手外食企業の令嬢。業務提携の縁で一成と政略結婚した。 御堂一成=テーマパーク開発事業会社の御曹司で副社長。父が社長を務める会社で働く東子は、ある日社長室に呼び出され、テーマパーク開発事業で有名なディヴェルティメントアトラクションズの副社長・御堂一成との結婚を言い渡された。一人娘の彼女は、いずれ然るべき時に婿を取り、自分か夫が会社を継ぐものと思っていた。勿論、それに見合うだけの努力もして来たつもりだ。だが、父の様子を見るにこれはもう決定事項なのだろう。一応尋ねてみれば肯定したので内心で東子はガッカリ。元々、一成の父親と東子の父は高校時代からの親友で今も凄く仲が良い。少し前にディヴェルティメントアトラクションズとの業務提携も決まったばかり。先日も御堂と飲むと出掛けて帰宅すると頗る機嫌が良かった。察するにその時に結婚話が出たのだろう。それにしたって前々からそんな話があったのならそれとなく本人にも打診しといて欲しかった。社長の娘に生まれた以上政略結婚だからと文句を言うつもりもない。ただ、突然すぎる。しかも、夫となる一成氏は、業務提携のきっかけとなった新しいテーマパークのことで多忙らしく、顔合わせの時間も取れないと言う。数日後、速達で記入済みの婚姻届けが届いた時は、腹も立ったし呆れたがどうせ結婚するのだし、と指示通り、自分の名前を記入後、一人で役所に届けに行った。こうして、顔も見たことのない夫と入籍を済ませた東子は御堂姓になったのだった。一成と会ったのはそれから暫く経った頃。テーマパークのオープン日の発表会に招かれた東子は、そこで結婚も発表すると言われてビックリ。会場に着くとスーツ姿の美形が。クォーターと聞いているがとにかくカッコイイ。会見に関しては場慣れしてそうな一成に任せ、何とか終えると、漸く彼と会話が出来た。食べ物の好き嫌いとか聞きたいことは山ほどある。だって、これからこの人と暮らすんだから。一応、この突然の結婚と延々お相手に会えない事に対して、文句を言わない代わりに仕事を続けたいと条件を出し、許可を貰っている。正式に公表されたので明日からは御堂東子として出社するから、明日は質問攻めだろうと思うと気が重い。一成との新居は駅近の高層マンション。同居が始まったものの、彼は相変わらず忙しく、ほとんど顔を合わせない。なにせ、生活サイクルが合わないのだ。一成からも無理に合わせなくてもいいし、君も働いているのだからと家事も気にしなくていいとハウスキーパーまで頼んでくれた。確かにテーマパークに出店予定のレストランや、フードコーナーのメニュー開発で東子もてんやわんやだけれど一成より早く帰宅できる分、ちゃんと休めているし食事の支度くらいできる。政略結婚とはいえ、家族なのだから仲良くやっていきたいし、正直、あんなに仕事している彼が心配だった。悶々としていると案の定無理がたたって秘書の鈴木に無理矢理帰宅させられたと一成が珍しく20時頃に帰って来た。見るとかなりやつれている。過労に眼精疲労で酷い頭痛があるようだ。これは薬を飲ませて早々に寝かせないと、胃に優しいうどんを作って出すと一成は完食。薬を飲んだら大分楽になったようだ。フード開発部にいるため、料理は作るのも食べるのも好きなんです。と言うと、彼は鈴木にも言われたし、週に何度か20時には帰宅するようにすると約束してくれた。以降、週に何度か一成にしては早く帰宅で来た日は二人で食卓を囲み、時には彼のなじみの店に連れて行ってもらった。一成のお薦めの店のメニューはテーマパークのレストランの参考にもなると感謝し、いくつか出した案も採用されて東子は大喜び。単純かもしれないが、彼女は一成に心惹かれ始めていた。出来ればもっと一緒にいたいし、もっといろいろ知りたいとも思う。しかし、モテ男の弊害か、悪気はないのかもしれないけれど、東子と過去の恋人とを比べる節があるが如何ともしがたい。大分仲良くなったのが嬉しかったのに、いきなり高価なプレゼントを連続で贈られ、もう要らないと突っぱねれば女の子は大抵喜んだのにと不満顔。流石に腹に据えかねて、怒りを爆発させてふて寝した東子が翌日、実家に帰るとメールした時は、慌てて迎えに来ていた彼を見て驚いたものだ。単に、まだ残っている私物を実家まで取りに行っただけなのに。東子が過去の女と比べられて激怒していたのを彼なりに危機感を抱いたのかもしれない。どうやら、昨夜のことを友人でもある鈴木に相談したら全面的にお前が悪い、と怒られ、仕事と顔しか取り柄が無いと散々な言いようだったらしい。本人も反省しているようなので仲直りに応じたが、元カノと比べるのだけはやめてほしいと頼むと一成も気を付けると約束してくれた。一方、一成は多忙ながら東子と結婚できたことで内心浮かれていた。実は彼はとあるイベントで彼女を見かけ一目惚れしていたのだった。東子が父の親友の娘と知った時は運命だと思ったし、彼女の父から娘と結婚する気はあるかと聞かれて二つ返事で了承した。なのに、時間が取れず会えたのは入籍してから大分経った頃。元有名女優と大企業の社長の娘ということで親の七光りやコネのおかげ、と実力を否定され続けた東子の悩みは一成も覚えがあるもので痛いほどその気持ちが判った。自分も忙しいだろうに健康を考えたメニューで労ってくれる彼女に更に惚れ直した一成だったが、同期だと言う彼女の同僚・岡田槇の存在が気になってしょうがない。実は恋愛下手なのは自覚している彼は思わず四宮フーズに彼女を迎えに行き、噂の岡田を見に行ってしまった。わざと目の前でいちゃついて牽制もしてみたが案の定、嫉妬丸出しの表情。あいつは東子に惚れている。そう確信した一成だったが、ある日、社用車の中で会話する東子と岡田の姿を目撃してしまい・・・。両片想いの政略結婚夫婦のお話です。この日、一成の牽制で闘志を煽られた岡田は東子に告白。でもあっさり彼女に夫のことを愛しているからとフラれていました。潔く諦め、明日からは普通の同僚に戻ると言われホッとした彼女。しかし、そこに一成が怒り心頭の表情で現れ修羅場に。誤解されるようなことはしてないのに聞く耳持たずの彼に、どうしてか真実を話すのを躊躇う東子は夜の町へ。彼女が心配で追いかけて来た一成から結婚に至った経緯を語ったことで、その気持ちを知った東子は自分の想いも語ります。おかげで漸く両想いになった二人は、その後に起きたトラブルも見事に乗り越え、無事にオープンの日を迎えるのでした。年代は違うけど、一成が着手していたテーマパークはおそらくディ〇ニー〇ンドがモデルなのかな? となると規模も凄そうなので、準備期間やら本当に多忙だったんだろうな。結婚式はオープン後にと決めていたのも判る。このプロジェクトも一成の過去に関わることで、その理由なんかも語られて入るんですが長くなるので敢えて割愛してますので、興味がある方は読んでみてください。仲睦まじい二人ですが特に妻にベタ惚れの一成は、本編ラストに判った東子の妊娠に大喜び。おまけの番外編は後日談ではなく、夫婦の危機の際も色々尽力してくれた一成の秘書・鈴木さんの意外な一面を描いたエピソードでした。評価:★★★★★
2024.08.13
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2024年7月刊マーマレード文庫著者:真彩-mahya-さん妖や神が見える能力の持ち主・紗那は、幼い頃に出会った初恋相手・狗神の花嫁候補になるも、その座を従妹に奪われてしまう。狗神に一目会うことさえ叶わず落胆する彼女の前に、最高位の狼神である威月が現れて!?「もう二度と離さぬ。覚悟せよ」-実は、紗那がずっと想っていたのは彼だった。花嫁として威月の寵愛を受け、幸せな日々を過ごしていたが、紗那は自らが前世で威月と恋仲だった巫女の生まれ変わりだと知る。彼が本当に愛しているのは、前世の想い人…!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 吉岡紗那=古の巫女の力を持つ学生。叔母と従妹に虐げられていた。 威月=最高位の狼神。紗那を妻に迎える。 吉岡穂香=紗那の従妹。何かと紗那を敵視している。 喬牙=紗那たちの住む地を治める狗神。百数十年前のこと、相次ぐ戦争と大災害で崩壊しかけたこの国を救った八百万の神々。神々は人にも見える姿て現れ、人々を再生に導き信仰心を強めた。それから月日は流れ、現在も神と人は密接に関係し続けている。神々に仕える者、花嫁になる者を育成する特別な学校「神精学園」に通う吉岡紗那は、その優秀さからこの一帯を治める狗神・喬牙の花嫁に推薦された。この日の為に努力し続けていたと言っても過言ではない彼女は、今、天にも昇る気持ちであった。幼い頃、道に迷った紗那を助け、眷属を二人も彼女に付けてくれた狗神。名前は聞けなかったけれど、この近辺にいる狗神は喬牙様しかいない。彼にはもう2人妻がいるそうだが神々は一夫多妻がほとんどだと聞く。自分一人の夫ではないことが残念だけれど、傍に居られるだけでも良しとしなければ。数少ない友人である小春も自分のことのように喜んでくれていたが、現時点ではまだ推薦枠に入っただけ。通知を貰った時は紗那も内心で小躍りしていたので、決定になるまではぬか喜びにならぬよう気を引き締めることにした。でも、嬉しい知らせを貰った直後だからこそ家に帰りたくない気持ちが大きくなっていく。紗那は事故で両親を亡くしており、母方の叔母宅に厄介になっていた。が、どうやら母と叔母は折り合いが悪かったらしい。紗那名義の遺産管理を任されたので渋々引き取ったせいか昔から当たりが強く、家政婦代わりにこき使われる毎日。従妹の穂香まで叔母に加わり意地悪をしてくるため家は気が休まらないけれど、あの神が付けてくれた眷属の夜と麦だけが癒しだった。帰宅すると花嫁に推薦されたと報せが来たのか、穂香の機嫌がすこぶる悪い。透視能力を持つ彼女はずっと紗那より優れていると思い込んでいたから尚更だろう。叔母と二人どうしてあんたみたいに冴えない子が、とネチネチ言われ、喜んでいた気持ちも萎えて来る。しかし、叔母たちの反応からしてどうにも嫌な予感がする。翌日、担当者に呼び出された紗那は推薦が取り消され、花嫁が穂香に変わったと告げられ茫然。理由を尋ねると叔母から姪が小遣い稼ぎで詐欺紛いの霊感商法をしているとタレコミがあったらしい。ご丁寧に偽のサイトまで作ってあってその周到さに呆れた。一応釈明はしたが、そもそも世話になってるんだからと吉岡家での扱いを報告していなかったのが裏目に出た。いい養い親を演じる叔母にすっかり担当者は騙され、もう決まったことだからと紗那を追い出した。もうあの方に会えない。小春は叔母たちのやり様に激怒していたが証拠を残しているとも思えないので泣き寝入りするしかない。打ちひしがれる紗那を他所に穂香の輿入れの日がやって来て、せめて一目だけでもと思ったが叔母に追い出され途方に暮れていると式場の警護を任されたのか喬牙の眷属に襲われかけた。間一髪のところを救ってくれたのはあの日会った神。今、式場にいるんじゃ?と不思議に思うと神は威月と名乗り、紗那を迎えに来たのだと告げた。何と威月は狗神ではなく、その最高位に当たる狼神なのだと言う。本当ならあの出会いの日に連れて行きたかったが、幼い紗那には神世の空気に耐えられない。彼女には巫女の血が流れており、その成長を待っていたのだと。てっきり威月にはもう会えないと思っていただけに迎えに来てくれて本当に嬉しかった。威月は夜と麦を守りとして就けていたものの、この地は喬牙の治める地。結界に入るのはマナー違反で律儀に彼は守っていたから夜達に様子を聞くことも出来なかった。だが婚礼に招待され漸く結界内に入れたのでこれまでのことを夜達から報告を受け、今回の叔母と穂香の企みは彼を激怒させていた。そうして威月に連れられ、夜と麦共々狼神の社にやって来た紗那は驚くほどのもてなしを受けた。ずっと独り身だったと言う神が漸く嫁を連れて来たと眷属たちは大喜び。一先ず、式を挙げる次の満月迄この地に慣れるための生活をしていた紗那は、母の形見だけ取りに行きたいと威月に願った。彼の同伴で十日ぶりに吉岡家へ着くと勝手に私物が処分され、母の形見の指輪もネコババされていた。幸い威月の能力で隠し場所が見抜かれ無事に紗那の元に戻ったが、浅ましいと威月に睨まれると相手が神だと言うのに叔母は紗那とその母親への恨み言を吐露。優秀な姉をいつも妬んでいた叔母はそれを紗那で憂さ晴らししていたのだ。薄々勘付いてはいたけれど面と向かって言われるとやはりキツイ。それでも世話になった恩もあるからと罰を与えると言う威月を必死に止め、もう二度と関わらないと叔母一家に絶縁を宣言。そんな中、穂香だけはまだ彼女に対して蟠りを残していた。その後、無事に威月の妻になった紗那。巫女の力の覚醒訓練も並行して行われ、この特別な地に来たのと神籍に入ったことで徐々に力を増して行った。それから暫く経ったある日、陳情により威月は鳥神の治める地へ。気になってつい紗那もこっそりついて行くと、鳥神の地は祟り神によって荒らされて酷い状況だった。しかし、勝手についてきたこと、そして威月には忘れられない女性がいることが判り大喧嘩に。昭子という龍神に仕える巫女と威月は恋仲だった。紗那は昭子の生まれ変わりなのだと言われ、どうしようもなく怒りが湧いた。まさか彼は昭子の身代わりで自分を妻にしたのでは?と疑心暗鬼になり・・・。この夫婦喧嘩中の最悪なタイミングに紗那が自分より格上になったことが許せない穂香が喬牙を唆してある策を講じます。叔母たちにも協力させ実は紗那の父方の祖母が見つかったと大ウソをついて、どうか見舞いに行ってやって欲しいと彼女に訴え人の好い紗那は罠にかかります。でも、喬牙が欲をかいたことで穂香の目論見はおじゃんになり、命の危機に晒されたところ、黒たちからの報せを受け慌てて飛んできた威月によって救われることに。喬牙の方も入手した呪具の影響下にあったことが判り、根源主からキツイ罰を受け、狼神の妻を虐げ誘拐迄したとして吉岡家も相応の報いを受けます。この報いも威月の言う所「ぬるい」そうですが、甘いと言われようとも人を恨めない妻の意向を汲む形に。昭子のことも結局彼女も自分の一部だと紗那が納得したこと、威月もまた紗那だから妻に迎えたのだという言葉を信じ、彼の傍に居ることを決め、後に彼との子・三柱の狼神を産んで物語は幕。叔母と穂香の執念深さにはビックリでしたが、テンプレなザマァ要員だったと思います。こういう輩が物語を動かす一因になる訳ですしね。表紙の子供達はラストに生まれた子達かな。物語的にスターツ出版文庫の和風シンデレラストーリーとかがお好きな方には刺さる内容かと。評価:★★★★★
2024.07.29
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2024年7月刊マーマレード文庫著者:田崎くるみさん大企業の秘書で真面目すぎる愛実は、素直になれないのが悩み。でもバーで会った男性・優馬には自然と心を許し、そのまま一夜を過ごしてしまう。ところが、彼はライバル会社の御曹司と判明!その上、ワンナイトを秘密にする交換条件は、彼の偽婚約者になることでー「たっぷり愛してやるから」嘘の関係なのに、あまりに甘く囁く彼に翻弄され…! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 如月愛実=大手食品メーカーの副社長秘書。 堅物で融通の利かない性格から周囲に誤解されがち。 風祭優馬=愛実の勤め先の競合会社の御曹司。 桜葉海斗=愛実の上司で副社長。汐里という恋人がいる。業界最大手のサクラバ食品の御曹司で副社長の桜葉海斗の秘書を務める愛実は、真面目過ぎる故に色々誤解されている。地位も財産もある海斗に近づく女性達を毎回理詰めで追い返すものだから、恨まれもするし時には平手をお見舞いしてくる令嬢までいるので、その度に海斗からは謝罪される始末。自分でももう少しうまく立ち回れないものかとも思うが、これがなかなか難しい。そんなある日、父が亡くなって以来福島の実家で一人暮らしをしている母が倒れ、パーキンソン病だと診断されたと付き添ってくれたらしいお隣さんから連絡が。海斗の薦めもあって急ぎ実家に戻ると、出迎えてくれた母は身体を動かすのも言葉もどこかぎこちない。典型的な症状に一人にはしておけないと心配もあってついキツイ口調で話してしまった。こんな言い方したいわけじゃないのに。娘の性格を理解はしていても進行性の病を患ってしまった不安もあるのだろう、母から心配しなくても訪問ケアマネジャーにも頼んでいるから大丈夫だからと早々に追い出されてしまった。2時間以上かけてやって来て1時間もしないうちにとんぼ返りする羽目になって茫然としたが、実家のお隣さんを尋ね礼を言うと、近所のよしみでちょくちょく様子見をしてくれると言うので自分も週末には帰るようにするのでとお願いした。東京に戻り、何となく一人でいたくなくて久しぶりにバーを訪れた愛実は、そこで以前海斗に付き纏っていた令嬢とバッタリ。例に漏れず愛実に言い負かされて引き下がった令嬢は現在婚約者がいるらしい。それでも当時の屈辱は忘れまいと一人で飲みに来ていた彼女を嘲笑った。令嬢は一言言ってやりたいだけだったのかもしれないが、今夜はとにかくそれが応えた。とことん飲もうとウィスキーを頼むと、やり取りを聞いていたという青年が、ヤケ酒しかけていた愛実を止めた。青年は聞き上手で聞かれるまま、自分の融通の利かない性格のこと、大病を患う母まで怒らせてしまったこと、こんな調子だから恋愛も未経験なんです、と語った。思わず涙を流し、人を好きになる気持ちくらい知っておきたかったと溢す愛実に、彼は君を放っておけないし自分が濃いと言う者を教えてあげたいと言う。優しい言葉に思わず縋ってしまった愛実は、この行きずりの青年と一夜を共にしてしまったのだった。翌朝目覚めた彼女は正気に戻って茫然。やり棄てられたわけでもなく隣には青年がまだ眠っていて、起きたらどう対処していいか判らず、ホテルの代金として数万と昨夜の礼を書いたメモを置いて立ち去った。出勤すると海斗に母のことを気遣われたが、口喧嘩になったことは伏せ訪問ケアマネジャーが来ること、自分も毎週帰るようにするのでと報告。だが、新プロジェクトの詰めと重なり、中々里帰りは厳しく、毎週帰ると言いつつも結局1ヶ月近く帰れていない。その頃、来客用の茶菓子を買いに外出していた愛実は、揉めている男女に遭遇。聞き覚えのある声に思わず視線を向けるとあの青年ではないか。彼も気付いたようで愛実の隣に行くと一芝居付き合って欲しいと、恋人のフリを頼まれた。訳が分からないまま相槌を打っていると女の方は怒って立ち去り胸を撫で下ろした。彼は優馬と名乗り、しつこく付き纏われて困ってたんだと言うと、約束があるんでと車に乗り込み茫然としている彼女を残してその場を去って行った。だが、社に戻り副社長室の来客にお茶を出しに行くと、そこにいたのはつい先ほど見た顔が。今日は競合他社・風祭フーズの専務が来社予定のはず。知らぬ風を装い名刺交換すると専務取締役・風祭優馬とある。冷や汗を掻きながら秘書室で待機していると、帰り際の彼に話があると言われ、渋々従うことに。あの夜のことは本当にお互い身の上を知らなかったことだから誤解しないで欲しいと前置かれ、知らぬ仲でもないし愛実に頼みがあると言う。先程のように女性によく付き纏われるらしい彼は非常に迷惑していた、だが中にはあまり無碍にも出来ない令嬢もいる。だが、自分には婚約者がいるいえば彼女達も諦めるだろうと。その婚約者のフリを愛実に頼みたいと言われてビックリ。どうして私が、それもライバル会社の専務とと反論すれば、彼と海斗は古い付き合いで友人関係だそう。その縁で知り合ったと言えば皆も納得すると押し切られ、断るならあの夜のことを海斗にバラすぞと脅しめいた言葉まで。そこまで言われると流石に断るわけにもいかず、なし崩しに婚約者役を引き受けた愛実。それじゃ早速、今夜食事に行こうと誘われ、顔は撮らないからとその様子をSNSに投稿。恋人とディナーに来ている的な投稿をして数日、あれほどしつこかった女性陣は誰一人突撃して来なかったと彼はホクホク。そりゃ結構なことでとゲンナリしつつ、今週末は漸く実家に帰れそうなので、優馬の誘いを断ると彼も付いてくると言う。きっとお母さんも彼氏を連れて来れば喜ぶと言いくるめられてそれもそうかと実家に行くと、優馬の言葉通り母は大層喜び、彼が症状の進行を遅らせるリハビリをした方が良いと薦めると素直に受け入れていた。色男って凄いなと思いつつ、素直に感謝を述べると俺の親にもいずれ会って欲しいと頼まれ、頷いた。海斗主導のプロジェクトもいよいよ大詰め。その兼ね合いで福島に留まることになった愛実は、彼がそこで一人の女性と懇意にしていることを苦々しく感じていた。思わずいつもの調子で諦めるよう理詰めで説得すると後に彼女・汐里は、海斗の亡き兄の妻(こちらも故人)の妹でその息子を女手一つで育てていたと知った。しかも、理学療法士で愛実の母の担当者だった。後日汐里に平謝りして許してもらったが、彼女も愛実を海斗の恋人と勘違いしていたらしい。お互い誤解していただけと判り以降は親しくさせてもらっているが、この後汐里たちがサクラ食品の後継者争いに巻き込まれるという事件が。海斗が身体を張って二人は何とか無事に済んだが、落ち込む愛実を励まし支えたのは優馬であった。この頃にはただ君に一目惚れしたから関係を持ったし、フリなんていう遠回しな事をしていたと優馬から白状され、二人は正式に恋人関係に。だが、そんな二人の仲を快く思わない者たちもいて・・・。今作は「ふたりで姉の子どもを育てたら、怜悧な御曹司から迸る愛を思い知らされました」のスピンオフで、そちらにも登場していた海斗の堅物秘書・愛実がヒロインを務めています。後に和解したとはいえ、最初はいけ好かない人に見えたあのキツイ秘書さん、中身は何とも不器用で可愛い人でした。そんな彼女がライバル会社の御曹司と出会って、婚約者のフリを頼まれ、最終的には結婚にまで至るという内容なれど、立場上反対する者も出て来る。サクラバ食品はお家騒動のおかげで株価は下がり、不買運動なんかも起きて窮地に陥りますが、そこに手を差し伸べたのは優馬と風祭フーズ。彼が提案したコラボフーズはサクラ食品の起死回生に一役買うことに。娘を優馬と結婚させたい副社長とは愛実の件で悶着起きるも、結局背中を押してくれた彼の父のおかげで、副社長の勇み足は牽制され、二人の仲は認められます。サクラバ食品も福島を起点にした事業も成功し、海斗は汐里を妻に迎え、後に愛実も優馬と結婚。お互いライバル会社に籍を置きながらも仲睦まじい二人の様子が描かれて本編は幕。おまけの番外編は後日談で結婚2年目、長男・龍也も産まれた3人家族の日常の一コマでした。スピンオフではありますが、前作を読んでいなくとも問題はありません。ただ、既読の方が色々ニヤリとできるシーンも多いので、出来たら是非前作も。評価:★★★★★
2024.07.18
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2024年6月刊マーマレード文庫著者:伊月ジュイさん実家を救うために御曹司・綾世と結婚を決めた梓は、彼にある契約を持ちかけられる。それは、跡継ぎを産めば離婚していいというもので!?仕事一筋の梓はその話を受け入れるがー「このまま、俺のものになって」待っていたのは、愛されていると錯覚するほど、蕩かされる毎日だった…!さらに、あることで独占欲を煽られた綾世の激情は加速しー。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 斉城梓=一級建築士。実家を救うために綾世と政略結婚をした。 仙國綾世=旧財閥の御曹司で大手不動産会社の次期社長。叶野由里亜=綾世の高校時代の友人の姉。 仙國祐世=綾世の5歳年上の兄。大手ハウスメーカーに勤める一級建築士の梓は、男運の悪るさから仕事に生きると宣言していた。そんなある日、彼女の元に切羽詰まった父から連絡が。梓の実家は地元ではそこそこ名の知れた建築会社を営んでいるのだが、父によれば経営難らしい。驚く彼女にこのままではライバル企業に吸収された挙句、家族が路頭に迷う。だが、資金援助してくれるらしい旧財閥の企業があるという、そこで梓にその御曹司との縁談を受けて欲しいと泣きつかれ渋々引き受けることに。昔から女は働く必要はないなどと男尊女卑傾向の父には反発心を抱いていたのだが、実家の危機となれば仕方ない。貰った釣書を何の気なしに見て見たら芸能人顔負けのルックスに経歴も凄いという、とんでもないハイスペ男でビックリ。しかも3歳も年下。別にこんな縁談に応じなくても引く手あまたまんじゃなかろうか。彼は大手不動産会社の次期社長なだけあって相当多忙らしく、両家交えての顔合わせは難しいそうで、1ヶ月ほど経ってから当人達だけで食事を兼ねて会うことになった。しかし、こういう時に限ってトラブル続出。梓が指定のレストランに到着したのは約束の時間を1時間半も過ぎた頃。これはもうお断りされるかと思いきや、怒るどころか仕事に打ち込む姿勢が気に入ったというお相手・仙國綾世。そもそも彼も仕事一辺倒な生活なのだそうだ。その点、梓のような女性なら理解もあるだろうと。それにあくまでも政略結婚。望むのは跡継ぎくらいなのでと話す綾世は、務めを果たしてくれるなら家庭に入らず仕事を続けるのも構わない。跡継ぎを産んでくれた後ならば離婚にも応じるという。だからすぐにでも入籍しましょうと続いた時は面食らったが、梓にしてみればまたとない相手ではないか。仙國家で暮らすことにはなるが現在義母と義父は海外出張中で、暮らすのは綾世と梓、それと屋敷を切り盛りする使用人たち。家事をする必要もなく、残業しようが文句も言われない。それに彼の女性の仕事に関しての理解度が特に刺さって、梓の方もこの結婚に同意。翌日には入籍を果たすと日を見て梓は仙國邸に引っ越したのだった。結婚して暫く経ち、妊活に励んではいるもののなかなか授からない。綾世の方も気にしなくて良いとは言ってくれているが、もしかして自分がもう若くないからか、と余計な考えをしてしまう。自分の身体に問題があるのかも、と健診にいきたいと言い出す梓を彼が慌てて引き留め、気晴らしに食事と買い物に連れ出してくれた。ビックリするほど色々買ってもらったけれど、素直に好意に甘えることにし、義父の行きつけだと言うフランス料理店へ。そこで梓は綾瀬の友人の姉・由里亜に遭遇。明らかに綾瀬に気がある素振りで、梓に敵意丸出しの視線を向けられたが、彼が由里亜に対して迷惑そうな素振りをしていたことで気にしないことにした。このデートの日以降、二人の関係が微妙に変化。由里亜の妹・亜紀は故人で、実は綾世の恋人だったのではという疑いを持ち始めた梓は自分が嫉妬していることに気付いた。気持ちを自覚した彼女は例え子供を産んでも離婚はしたくないと考えるように。そんな最中、由里亜から叶野家のセカンドハウスの設計を依頼された梓。会社では旧姓を名乗っているので偶然かと思いきや、どうもおかしい。個人的に話をしたいとランチに誘われ、機嫌よく話していたと思えば仙國家の妻なんてプレッシャーも凄いだろうから離婚した方が身のためよ、と言われ内心でため息が出た。この時は曖昧に濁して会話を終わらせ別れたが、あの様子では諦めていないだろう。一方、綾世の方は、最初に離婚したいなら受け入れると言ったことを後悔していた。実は、あの顔合わせの時から彼女とならと思って決めた結婚だったので、人となりを知った今はできたら一生添い遂げたいと思っている。できるだけ離婚を先延ばしさせようとこっそり避妊していたものの、なんと梓が妊娠。子供が産まれたら離婚を切り出されそうで妊娠報告された時は喜びよりも恐怖の方が勝ってしまった。微妙な反応を不審に思われていなければいいが。そんなある日、出来の良い弟との差に絶望し、出奔していた綾世の兄・祐世が帰って来た。すっかりガラが悪くなり、梓にキスしようとした兄を家から叩き出した数日後、孫に甘い祖父に泣きついたのか兄が仙國不動産に入社。早々に開発事業部長に任命され・・・。恋愛下手な二人が結婚してから愛を育んで幸せになるお話です。お互い離婚したくないと思っていた中、それぞれの前に障害となる者が立ち塞がり、トラブル発生。離婚を迫る由里亜に今度はきっぱりと別れません、と宣言した梓に、設計したセカンドハウスについてクレームを入れてきて社内は大混乱。なまじ大企業のお嬢様なので梓が責任を問われる形に。落ち込む彼女の様子に気付いた綾世に、最初は口を閉ざしていた梓は亜紀との関係を問います。すると亜紀は男だと返され、聞いちゃいけない事だったのかと気を回していた彼女はガックリ。素直にずっと嫉妬をしていたこと、綾世のことが好きで一生一緒にいたいと告げると、彼も同じ気持ちだったと言い、離婚の危機は去るのでした。由里亜が悪いとは言わずとも叶野家のセカンドハウスの件でトラブったと告白する梓の話を聞いてすぐに由里亜の嫌がらせと気付いた綾世は彼女に電話して釘を刺します。結局、彼個人ではなく仙國家の跡取りと結婚したいだけの彼女は綾世の怒りを買ったと知り、謝罪するとクレームを取り消します。無能な兄・祐世は案の定、身の程知らずな地位を持て余して会社にかなりの損失を与えたことで、父親の怒りを買ってクビに。逆恨みして梓を拉致すると言う暴挙に出るもスマホアプリの通報兼録音機能のおかげで綾世と警察が間に合い事なきを得るのでした。この兄貴もホント、馬鹿だなぁ。家族、特に弟に一泡食わせようと目論んだら前科者になっちゃって。血が繋がってるからこそのコンプレックスもあったんでしょうけど、先ずありもしない才能を当てにしてる時点でたかが知れてるってもんでしょう。由里亜もそうだけど、なんか浅はかなライバル二人でした。騒動後、責任を取って辞任した父に代わり綾世が社長に就任。梓はそんな彼を支えて、暫く経ち長女の乃愛を出産。使用人が大勢いる仙國家では気を遣うだろうと、前々から計画してた梓設計の夢の家が完成して物語は幕。ダメ男ホイホイだった梓の過去とか、彼女の父の真意、縁談の真相など作中では色々あるのですが長くなるのでこの辺りは敢えて割愛しています。サクサクと展開も早いですし読者には両想いと判ってる分、モヤり部分も少な目。割と読み易い内容だと思います。評価:★★★★★
2024.07.11
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2021年7月刊マーマレード文庫著者:西篠六花さん箱入り娘の朱音に突然舞い込んだお見合い話。父の会社のためと決意するが、結婚前に一度だけでも好きなことをやりたいと、一人夜の街へ。そこで危ないところを助けてくれた秋哉に強烈に惹かれ、一夜をともにしてしまう。連絡先もかわさず別れた二人は、見合いの席でまさかの再会。彼は見合い相手の弟だった。秋哉は、自分を選べと熱く迫ってきて…!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 三上朱音=箱入り育ちの社長令嬢。 一生に一度の羽目を外した夜に秋哉と知り合う。 藤崎秋哉=総合商社社長の次男。 藤崎孝弘=秋哉の異母兄で朱音の婚約者。設備会社の二代目社長の一人娘・朱音は、過保護で過干渉な両親に逆らうことなく従順に生きていた。そんな彼女の唯一の我儘は就職する事。当然ながら反対されたが、根気よく説得を続けると目の届く父の会社ならと渋々ながら許しを得た。特別扱いされたのでは意味が無いと社長の娘であることを隠し、三上メンテナンスの受付業務に着いてから3年が経つ。そんなある日、社長室に呼び出された彼女は、父から親会社である藤崎コーポレーションの跡取り息子との結婚を命じられた。先方の家族とは近々顔合わせを予定していると話す父を遮り、本人の意思も聞かず事後承諾で勝手に結婚相手を決められていたことに朱音は異を唱えた。が、箱入りで育てた娘に恋人がいないことなど判っているし、お相手は大企業の御曹司。こういう時の為に金を掛けて育てて来たのだからと言って憚らない。娘の幸せよりも藤崎家との姻戚関係を築く方が父には重要なのだ。帰宅後、母ともこの縁談について話したが概ね父と同意見で話にならない。兄の克基も然り。確かに両親は常々、お前は然るべき家に嫁がせると言っていた。それでも、お相手については少しは本人の希望を聞いてくれる思っていただけにショックは大きい。これって私の考えが異質なの?どちらにせよ、父の態度からしてこの結婚はもう決定事項らしい。どうにもできないのなら、今までできなかったことをしてみるのも良いかもしれない。朱音は、この1回だけと決めてその日、夜遊びに繰り出したのだった。先ずはお洒落なバー。店内で知り合った青年から口当たりの良いカクテルを薦められ、4杯も飲んだら相当酔いが回り、これはヤバイと思っていたら、別の青年に5杯目を止められた。彼は待ち合わせをしていた風を装うとカウンター席からテーブル席に移動し、朱音に水を飲ませると危ない所だったと告げた。どうやらあの青年が隙をついてグラスに薬を仕込んでいたらしい。デートドラッグというもので飲み干していたらホテルに連れ込まれやり棄てされていたと聞き、一気に酔いが醒めた。近年増えている性犯罪の常とう手段というのは流石に彼女も耳にしたことがある。まさか自分がターゲットにされていたとは。やはり一人で遊びに来たのは早計だったか。青年は秋哉とだけ名乗り、夜遊びがしたかったという朱音を笑わず、その後も数店舗付き合ってくれた。そんな彼と離れ難く、つい引き留めてしまった朱音は、秋哉に誘われるままホテルへ。夜遊びとは言ってもここまで経験するつもりではなかったけれど後悔は無い。目を覚ますと彼の姿は既に無く、おかげで一夜の夢として胸に秘めておくことができる。そう思っていた。それから1ヶ月ほど経った頃、両家の顔合わせが行われた。既に結婚することが決まっているせいか、どちらも家族総出での対面となったのだが、朱音の視線はお相手の孝弘ではなく、斜め後ろにいる眼鏡をかけた青年に釘付け。どうして彼がこんなところに。他人の空似かと思いきや、名乗った名前も藤崎秋哉だし紛れもない本人だ。まさか彼が結婚相手の弟だったなんて。向こうも朱音に気付いたようで何だか居た堪れない。孝弘は優し気な雰囲気で誠実そうな青年という印象、兄弟の割にあまり似てないんだなとぼんやり考えながら顔合わせは終わり。互いの人となりを知るためにも暫くは交際期間を設けてはどうかと藤崎社長からの提案によって決まり、帰りの車の中でくれぐれも孝弘の機嫌を損ねないよう両親から言い含められ頷いた。一方、秋哉は再会した朱音の態度に内心で憤っていた。あの夜、どうしても帰らねばならず、連絡先を書いた名刺を置いて来たのに一切連絡はなく、彼女にとって遊びの一環なのだと思い知らされた。なのに、何の因果か朱音は兄の結婚相手として現れた。愛人の子である自分に分け隔てなく接してくれた藤崎家の面々には恩義がある。孝弘の妻になる人が夜遊びの末、男と簡単に寝るような女だなんて以ての外だ。丁度、三上メンテナンスには財務管理の仕事で暫く出向する。ついでに彼女の人となりを調べてみるか。自分も当事者でありながら、朱音にだけ不実を問うような真似をしようとしていることに秋哉自身全く気付いていなかった。数日後、三上メンテナンスの財務部で勤務を始めた秋哉は、早々に朱音にきつく当たり彼女を責め立てた。兄との婚約を辞退しろと詰め寄る彼に、今藤崎コーポレーションとの縁を切る訳にはいかないと聞き入れない。孝弘には誠実に接するつもりだと話す姿に一層イラついたが、彼女は社長の娘だと公表しておらず、受付業務を軽視している総務部の女性社員達の嫌がらせのような掃除仕事まで嫌がらずにこなしている姿を見て驚いていた。融通が利かない所もあるが生真面目で頑張り屋、ほんの数日ではあるものの、朱音は出会った時の印象そのままの人だった。自分は思い違いをしていたのかもしれない。よくよく思えば自分に彼女を攻める資格なんてない。そして朱音に心惹かれていることも。なら、せめて連絡をくれなかった理由だけ聞いてみよう。そう決意した秋哉は、仕事終わりに朱音をカフェに呼び出すと今までの非礼を真摯に詫びた。そして、彼女の話で連絡先を書いた名刺を目にしていない事を知った。枕元に置いていたので寝返りでも打った際、床にでも落ちたのだろう。そりゃ、連絡しようもないわけだ。色々腑に落ちて、改めて勝手に誤解して酷いことを言ったと詫びた秋哉は、初めて会った時から君が好きだったこと、兄ではなく自分と結婚してくれないかと告げた。かくいう朱音も、孝弘ではなく秋哉はが相手ならどんなにいいだろうと考えていた。しかし、自分は孝弘の婚約者。相手が兄から弟になるだけで藤崎家に娘が嫁ぐことに変わりはないとして両親は煩く言わないかもしれない。しかし、藤崎家の方は複雑だろう。秋哉の申し出に二つ返事で頷きたいが、この話はせめて孝弘との婚約が解消してからにしたいと保留にして欲しいと頼んだ。秋哉は一先ず兄に頼んでみるというので、その日は別れたが、色々タガが外れたのか、その日から彼による猛アプローチが始まった。いや、これ拙いからとなんとか彼を往なしていたある日、父から秋哉に鞍替えするつもりなのかと問い詰められた朱音は無理矢理退職させられた挙句、結納の日まで屋敷に閉じ込められてしまった。昨夜、秋哉からまさかの事態に難航しそうだと連絡を貰っていたので嫌な予感がしていたのだ。彼の話では孝弘は出来の良い異母弟を心底嫌っており、嫌がらせとして朱音との婚約破棄は絶対にしないと言っているらしい。父が激怒していたのは孝弘からの密告のせいであろう。打つ手なしかと思われたが、秋哉は諦めておらず、兼ねてより調査していた資料を基にある手段に打って出ようとしていた・・・。略奪婚ものです。結婚相手との顔合わせ前に出会い、関係を持ってしまった二人。忘れられない人は夫となる人の異母弟。紆余曲折の末、想いを通わせるようになったものの、抑えが効かず朱音に会いたがる秋哉の態度が後半からいきなり甘くなるのでそのギャップがw婚約者の孝弘はとんでもない食わせもので、朱音のことも弟への嫌がらせに使えると婚約破棄の要請に応じず三上家に秋哉とのことをチクったり裏で暗躍。最初は本当にいい人風だったので、この変貌には驚きました。しかし、秋哉は本当にデキる人なので、兄の裏の顔というか、朱音の父と兄を巻き込んで多額の横領をしていた証拠を掴み、彼らを脅します。朱音との結婚を認めてくれるなら、藤崎社長に黙っててやると言われ、二つ返事で承諾した彼らは一生弱みを握られる羽目になっていい気味。でも、そのまま不問にするつもりはないと数年後には兄を引き摺り下ろし、自分が後継者になると不敵に笑う秋哉との結婚が決まった朱音のやり取りが描かれてEND誤解していたとはいえ、中盤までのヒーローの態度が少々鼻につきましたが、ヒロインに惚れていると自覚してからはハイスペックぶりを発揮し頼れる男に。そんな男に惚れられるヒロインの性格が好感持てました。評価:★★★★★
2024.06.15
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2024年5月刊マーマレード文庫著者:西篠六花さん未来を見通す千里眼を持つ絢音は、親戚に利用され軟禁状態の生活を強いられていた。逃げ出した先で、御曹司の哉に保護されることに。ある事件の調査を頼まれた絢音は彼の力になろうと健気に頑張るが、哉は何よりも彼女の身を案じ、過保護に愛を注いできて…!今まで能力しか求められなかった絢音は、彼に与えられる初めての激情に揺さぶられー。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 渡瀬絢音=特殊能力「千里眼」を持つ女性。 親代わりの伯父一家の元で軟禁生活を強いられていた。 日坂哉=総合商社の御曹司。とある偶然から絢音と知り合う。 天堂祐成=絢音の従兄。 倉成詠美=日坂邸で知り合って以来、絢音と交流している令嬢。対象者の手を取ることでその者の未来を見通す「千里眼の巫女」10歳の時に両親を亡くし、母方の実家である天堂家に引き取られた絢音は不思議な力を持っていた。千里眼と呼ばれるこの力は未来だけでなく現在や過去のことも言い当てることができる。母は至って平凡な人だったが、絢音を引き取ってくれた祖母・御影も同じ力を有しており、彼女からは力のオンオフの仕方も教わった。常に全開にしていては心が疲れてしまうからと。そんな御影も、絢音が天堂家にやって来た1年後に病気で他界。以降は伯父一家が家を取り仕切るようになると、祖母がしていた仕事を絢音が引き継ぐよう強要してきたのだ。伯父は祖母の存命中から「千里眼の巫女」を旗頭にして宗教法人「磴会」を設立。未来を見てもらえるという触れ込みで政治家や大物芸能人等富裕層を顧客に荒稼ぎをしていた。絢音は伯父たちに大切にされ、豪華な食事や衣服を提供されたけれど、逃亡や誘拐を恐れてか碌に学校にも行かせてもらえずほとんど自由は無かった。それでも流石にストレスで能力が衰えるかもしれないという懸念があったのか、月に2度、従兄の祐成と一緒の時だけ外出が許されるように。この家に引き取られて10年が過ぎた。絢音は成人し、亡き両親の死亡保険含め約数千万の遺産が彼女の意思で使えるようになったと先日顧問弁護士の岡田から知らされた。岡田は息子一家に思うう所があったのか生前の御影が絢音に付けてくれた。彼は遺産のことだけでなく、伯父一家にいいように搾取され続けている絢音にこれは人権侵害に当たると諭すと、彼女に決断を促した。当の本人も虐待と思ったことは無いものの、監禁同然の生活には嫌気がさしていた。岡田が力になると言ってくれたので、次の外出時に決行すると決めた。この日はどうしても祐成が付き添えない事を千里眼で見て知っていたので、家政婦を伴い出掛けた先で逃げ出した。しかし、右も左も判らず人ごみで男性にぶつかった絢音はその拍子に転倒、頼みの綱のスマホを落とし破損してしまった。付き添い無しで外出したことのない絢音が困り果て茫然としていると、先ほどぶつかった男性が責任を感じてか謝罪して来た。足を怪我していた彼女を手当てし、スマホも弁償させてほしいという青年は日坂哉と名乗った。渡された名刺には、絢音も聞いたことがある総合商社の名前とその肩書に驚いたが、彼に懇願され素直に申し出を受けることにした。手当の最中に哉から電話を借りて、祐成にもう戻らないからと別れの挨拶をすると、当然ながら納得がいかないらしい彼と言い合いに。一方的に通話を切ると、人権侵害やら監禁、搾取というワードが耳に入った哉がどういう状況なのか尋ねられた。好奇心ではなく絢音を気遣う様子の彼にこれまでの事情と自らの力のことを話すと、さすがに千里眼については俄かには信じられない様だった。だが、実際に力を見せると、彼は少し考えこんで彼女にある提案をしてきた。衣食住など当座の面倒は見るので、俺の妹・優佳を死に追いやった人間と原因を突き止めて欲しい、と。優佳は明るく人当たりも良く品行方正で美しい、家族に愛される子だった。そんな妹が半年前に自死。司法解剖の結果妊娠していたことが判り、彼らは悲しみに暮れた。優佳が交際していた男性の素性も判らず真相は闇の中。きっと藁にも縋る気持ちで絢音に依頼したのだろう。必死さが伺える彼の心情も判るし、力になることを約束した。それに、ATMの使い方すら判らない自分にとって哉のサポートはありがたい。セキュリティが万全だと言う日坂邸で世話になると聞いた時は気が引けたけれど、彼の両親も良い人達で娘の死の真相を知ることより、絢音の身の上に同情してくれた。親切なこの人達の力になりたい。故人の千里眼行使は初めてだったが、日坂家の客室で暮らし始めて数日経った頃、朧気ではあったが優佳の遺品でのサイコメトリーでデートに行ったらしい施設やレストランが見えて来て哉と一つ一つその足取りを探った。だがやはり今一つ決め手が無い。焦る絢音は偶然街中で顧客の接待帰りらしい祐成と再会。悶着になりかけたが哉の仲裁でその場は祐成が引く形で別れた。帰宅後、祐成はどうやって彼女を連れ戻すか思案し、以前、絢音の千里眼によって首が繋がった反グレ組織のリーダーに依頼。彼らには岡田の事務所と日坂家の顧問弁護士・水守に警告という名の嫌がらせと、チャンスがあれば絢音を浚うよう頼んだが、相手が大手企業のCEO一家となると分が悪い。一方、その頃、哉からの告白で交際することになった絢音は、彼の母・千佐子の友人の娘である詠美とも仲良くなりプライベートも充実していた。優佳の件も早く彼らを安心させてあげたいと、彼女が遺体で発見されたという納戸に来ると意識を集中させた。そこには死を決意した様子の優佳の姿が見えて、紛失したと思われていた彼女のスマホの行方が分かった。しかしやはり見つけたスマホは充電切れ。電源が入れば頻繁に連絡を取り合っていたであろう交際相手が誰か判るはず。だが、先日から詠美の様子がおかしい。やけに絢音を束縛し、度を越したメールの数に恐怖を覚え、少し遠慮して欲しいと告げると態度が急変。哉と結婚するのは私で、早々にそこから出て行けと絢音を詰り・・・。不思議な力を持ったヒロイン・絢音と、不審な死を遂げた妹の死の真相を探るヒーロー・哉が出会い、恋に落ちるお話。絢音を奪い返すべく、従兄の祐成が反グレ組織と手を組むも、お坊ちゃまにそいつらを操る手腕は無く呆気なく手のひら返しをされてしまいます。何かと距離感のおかしい友人・詠美の心変わりと嘘によって日坂邸を飛び出した絢音は反グレ達に捕まりピンチに。その際、彼女を棄てて保身に走った祐成がしっかり幻滅されてたのには笑いましたが、おかげで間一髪で警察を伴い現れた哉の株が上がることw祐成は拉致の教唆をしたとして逮捕され、岡田の告発によって磴会も解散を余儀なくされるのでした。まぁ、問題ありまくりのエセ宗教法人だったから当然の結果ですね。詠美の方は虚言により大事になったとして厳重抗議され、親からの薦めでカウンセリングを受けることが決まり、スマホの復活でついに優佳が死を選んだ理由も判明。予想はついてたけど案の定交際相手はクズ野郎でした。複数人の女と多重交際した挙句、妊娠した優佳を棄てたそいつは有名議員の息子で、結局は同じような被害に遭った女性から告発され破滅します。人生舐めてるからだよ。祐成は執行猶予がついたものの、見事に落ちぶれて哉との対比が如実に(^_^;)もう使うことのなかった千里眼がふいに見せた絢音の未来が幸せそのもので何だかほっこりしました。いい人に出会えて本当に良かったねぇ。評価:★★★★★ちょっと経路の違うTLでしたが面白かったです。詠美のサイコパスっぷりが怖い
2024.05.29
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2024年4月刊マーマレード文庫著者:葉嶋ナノハさん家の廃業をきっかけに、父の勧めで幼馴染みの御曹司・響介と結婚することになった笑麻。おぼろげにしか覚えていない彼に再会すると、「夫婦間の愛情に期待するな」と突き放されてしまう…。跡継ぎ目的の結婚と割り切ろうと決める笑麻だが、夫婦生活が始まると、響介は予想外の甘さで迫ってきて!?義務だけの関係なのに、笑麻は彼の帯びる熱に翻弄されー。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 花菱笑麻=父の営む印刷会社の廃業を機に持ち込まれた縁談により、幼馴染の響 介と結婚した。 花菱響介=大手不動産会社の御曹司で笑麻の夫。 向坂=笑麻の先輩社員。響介の妻の座を狙っている。家業である印刷会社で働く笑麻は、ある日父から廃業する事を告げられた。昨今の不況の煽りを受けて経営難ではあったけど、やはり持ちこたえられなかったか。長年勤めてくれていた社員達に申し訳ないと思うばかり。しかも実はかなりの借金があるそうで工場と土地家屋は既に担保に入っており、来月には立ち退かなくてはいけないと聞いてさすがに絶句していると父から恋人はいるのかと尋ねられた。いないと即答すると、笑麻に縁談が来ていると言う。実は今回の件、父は大学時代の友人・花菱氏に相談していたようで、再就職先を見つけるまでは暫く面倒を見てもらえることになっているのだそう。その友人は父に大恩があるからと言うが、花菱さんとやらは相当の金持ちらしい。しかも、笑麻の身の振り方を心配する父に花菱氏は是非息子の嫁にと結婚を持ち掛けて来たのだとか。徐に響介君を覚えているかと問われ、確か前の家のお隣さんの子だったはずと答えるとあんなに仲良かったのにと呆れられたものの、なんとお相手がその人だと言われてビックリ。しかも、つい聞き流していたけれど花菱ってあの大手不動産会社の?今の響介の写真を渡され見てみたが、随分なイケメンだ。自分などが嫁に行かずとも相手に不自由して無さそうなのに。なんでも、仕事一筋で女っ気がない息子を心配しての縁談なのだとか。正直言えば、幼馴染とはいえあまり記憶に無い人なので少々気が引けるけど、父の面倒を見てもらうからには恩を返さなければ。実は彼は私の初恋の人だったの、と嘘を吐き縁談に応じたのだった。顔合わせ当日、花菱家の面々と再会した笑麻。しかし、実際に会ってもぼんやりとした印象しか思い出せない。響介の両親は大企業の社長とその夫人とは思えないくらい明るく気さくな人達で、笑麻を救世主だとばかりに歓迎してくれた。とはいえ、当の本人は始終無表情。定番の二人の時間を設けられたものの話が進まない。一応は彼の方もこの結婚自体に異議はないよう。だが、俺に夫婦間の愛情を期待するなと釘を刺されてしまった。響介にしてみれば契約結婚みたいなものと捉えているのかもしれない。ずばりと言われて少し傷ついたものの、自分の方も恩返しで決めたようなものと割り切りることにした。しかし、結婚するからには親達に孫を見せてあげたいのでそういう行為は拒否しないで欲しいとだけ告げ、彼からも承諾を取ることに成功。その後、暫く経って二人は入籍。響介との生活が始まった。この頃から何となくだが、子供の頃の彼のことを徐々に思い出して来た。当時の彼は早生まれのせいか同級生の中でも小さかったけど優しく頭のいい子で、一つ下の笑麻ともよく遊んでくれていたっけ。愛情を望むなとか言ってた割にはよく笑う上に料理も美味いと褒め完食。惜しむらくは彼が出張やらであまり子作りに励めないことくらいか。そんなある日、響介に外に働きに出たいと言ってみた。暇だからではなく、今まで家業の手伝いしかしていないので世間を知りたいのと自分でも稼ぎたいからだと告げると、ならばうちで働けばいいと花菱不動産の入社を薦められた。常々働き方改革をしているホワイト企業だそうで、途中入社でもやって行けるのではと。そう聞いて早速入社試験を受け無事社員となった笑麻。先輩たちも皆優しいし、雰囲気の良い職場に俄然やる気が出た。響介も直帰で早く帰れる日は家事を率先して行ってくれるのでありがたいばかり。先輩たちには名字から彼の妻だとすぐにバレてしまったが、家での様子を聞かれるくらいで優しくてよく笑うと話すと職場でのギャップに驚いていた。確かに、職場でたまに垣間見れる彼は無駄口は叩かないし仏頂面だった。立場上仕方ないのかもしれないけれど、少しは愛想よくすればいいのに。それから二ヶ月ほど経って、響介からの歩み寄りもあってデートに出掛けたり誕生日も祝って貰ったりと二人の関係も変化し始めた頃、営業部に配属された彼女に対して先輩社員の向坂が嫌味を連発。終いには難癖をつけるようになり・・・。お互いが初恋の人同士の夫婦が互いの気持ちに気付き仲を深めていくというお話です。笑麻の方は当初記憶がおぼろげでつい父に建前で初恋の人だと話してたものの、後にそれが事実だったと気付きます。そして響介の方は子供の頃、いじめっ子に食って掛かり撃退してくれた笑麻をずっと想っていました。が年齢を重ね大人になると金目当ての女たちに痛い目に合わされすっかり女嫌いに。そんな時にこの結婚の話が出て、今まで音沙汰なかった彼女がOKしたと聞いて幻滅。それであの顔合わせでの態度になったと響介目線のモノローグで語られます。でもいざ夫婦となると明るくポジティブシンキングな笑麻は子供の頃と何ら変わっておらず、仕事でキリキリしてた彼の心も癒し、本来の自分を思い起こさせてくれたと再び彼女に惚れて行くのでした。そして、彼女の方も当時の片りんを見せ始めた響介に惹かれ始め、彼を狙う向坂とも戦う決意をします。ポジティブなだけでなく天然な笑麻の性格に向坂も苦戦している様が可笑しく、結果やり過ぎて響介と上司に気付かれて地方に左遷という羽目に。ホント、天然は決して馬鹿じゃなくて予想も付かない言動するから太刀打ちできないんですよね。おっとりしてるから余計に。邪魔者も消え、笑麻からのアドバイスで職場での態度も少し改め始めた響介。彼の評判も変わって来た頃、笑麻の妊娠が発覚。父も再び印刷業ができることが決まり、万事が上手くいって大団円で幕。恋のライバルも出てきましたが、もう結婚してる男にしつこく付き纏う行為がなぁ。しかもその妻に嫌がらせまでするとか。コンプラ違反で上司に大目玉を食らい左遷されたのは相応の罰かと。クビにされなかったのは商社の社長令嬢だかららしいけど、こういうコネ入社の人の勘違い行動は物語ではテンプレですね。評価:★★★★★天然ゆえかヒロインの考え方が面白くて前向きなのが良いです。
2024.04.24
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2024年3月刊マーマレード文庫著者:一ノ瀬千景さん兄の会社が経営の危機に陥った理子の前に、昔ある事情で別れた御曹司・深雪が現れる。彼の提案は、会社の提携と引き換えに自分と結婚することで…!昔と違い強引な深雪に戸惑いつつも、熱情を隠さない彼に激しく求められる理子。「君は未来永劫、俺のものだよ」-やがて深雪の子どもを授かった彼女は、加速する十年ごしの独占愛にからめとられてー。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 山根理子=兄の会社を助けるために元カレとのビジネス婚に応じた。 天沢深雪=理子の元カレで巨大グループの御曹司。 山根喜一=理子の兄。ITベンチャー会社の若手社長。兄が起ち上げたITベンチャー会社で働く理子は、この度動画配信サービスを手掛けるに当たり、いきなり提携先が手を引いて来たと聞いて頭を悩ませていた。今さら言われてもこちらは最後の詰めに入る所でかなりの額を投じているため、止めたら巨額の赤字を抱えることになる。急いで、あちこちに提携してもらえないかと連絡していると大手総合エンターテインメント企業・リルージュがぜひ話を聞きたいとコンタクトを取って来た。渡りに船とはこのことと社員達は沸いているが、リルージュの親企業が天沢グループでさえなければ貴一も理子も手放しで喜んだであろう。いや、きっとこれは偶然。彼はアメリカにいるはず。そう思い込んで兄と共に担当者に会いに行った理子は一番顔を合わせたくない男・天沢深雪と再会したのだった。有名映画監督と舞台女優の間に生まれた理子は、母のファンだという天沢夫人の好意により家庭教師を引き受けてくれた深雪と知り合った。ハンサムで頭の良い彼は学校でも人気者で、理子は随分妬まれた。それでもすぐに彼に心惹かれていた手前、理子の方から交際を申し込み1年程交際していた仲だ。中学卒業までの期間だったからかキスすらしていない清い関係で、深雪のアメリカ留学を機に別れた。本当なら別れたくなかったし、たかだか4年程度待っているつもりだったけれど、深雪の父の女性秘書から身の程知らずだの悪し様に言われた挙句、この交際を天沢家は認めていないと告げられて、別れた方が彼の為だと思い身を引いたというのが真実だ。別れを告げた際、深雪は随分ショックだったようだし、きっと今もいい印象を持たれていないだろう。これは提携も無しかも。と思いきや、リルージュ側は大層乗り気で、援助は惜しまないという。当然、貴一も上手くいくとは思わず驚いていたが、深雪はビジネスに私情は持ち込まないというスタンスを貫いていたため、杞憂だと判ってホッとした。だが、喜びも束の間、話を詰めたいとリルージュに呼び出された理子は、深雪からビジネス婚を申し込まれた。断れば提携は無しだと。これは復讐だと語る彼はやはりあの別れ話に納得してなかったらしく、恨まれていたらしい。当時の彼は理子に真剣に惚れていたということにもなるが、私だって好きで別れたわけじゃ。とはいえ、リルージュの提携が無くなれば兄の会社は倒産だ、信じて付いて来てくれた社員達も職を失うことになる。それに理子は深雪に未練もあった。何故ならあれ以来10年も経つのに、彼以外の男性に全くときめかないのだから。ビジネス婚と言いつつ、表向きは再会して思いが再燃したと周囲には話し、深雪の希望で早々に彼の住むレジデンスで同居し始めた二人。深雪は理子を溺愛し、多忙なくせに時間を捻出してあちこち出掛けて随分嬉しそう。まさか復讐というからにはその気にさせておいて後でこっぴどく捨てる気とか?そう身構えてしまったものの、彼の態度は芝居には見えない。はっきりさせたくて、深雪の本心を尋ねると彼の方こそずっと忘れられなかったと言い、あんな別れ方をしても理子が好きだと告げた。しかも帰国したらプロポーズするつもりだったと。え、でもご両親に交際を反対されてたんでしょ?と重ねて聞けば、何のこと、と怪訝そうな顔をされ、当時女性秘書に深雪と別れろと詰め寄られたこと、それが深雪の両親の意向だと聞いて嫌な女を演じて別れを切り出したことをバラすと、深雪もその秘書に思い当たったそうだ。縁故採用されてからというもの天沢一族の独身男性にすり寄り、父からも弁えろと秘書の方こそ叱責されていたらしい。当然深雪にもモーションを掛けて来たので理子がいるからと断ったからその腹いせだったのだろうと。後に秘書は自主退職したそうだがこんなつまらないことで離れ離れになっていたのかと思うとやりきれない。誤解も解けて再び一からやり直すことを決めたのだった。いよいよ、天沢の両親との顔合わせの日。数日前から体調を崩していた璃子は、深雪に心配される程顔色も悪かった。少しだけ言葉を交わしただけで、どうにも我慢できなくなり理子は倒れて緊急搬送されてしまった。間の悪いことに、この後すぐに深雪は海外出張が入っており、貴一に世話を頼んで出かけて行った。検査の結果、理子の妊娠が発覚。悪阻のせいと判ってからは早く彼に告げたくて帰国を指折り数えて待っていた。しかし、ネットニュースに深雪と梨園のお嬢様との結婚が報じられていて・・・。お互い初恋同士の復縁話です。誤解もあってこの結婚も前途多難だと思いきや、後に二人の仲を妬んだ者による策略で別れる羽目になったと判り、以降は幸せな日々を送っていました。そんな中、いきなり現れた梨園のお嬢様がライバルとして登場。まぁこれはお嬢様が直前に別のお相手から婚約破棄されたことで、その人以上の婚約者を仕立てようと深雪をターゲットにしたという、これまた迷惑話。それなら協力して欲しいとか一言あってもよさそうなのに、理子に彼と別れろと脅して来たり、色々ぶっ飛んだ人でした。歩道橋で言い合いになって転げ落ちそうになった理子を身を挺して助けようとしたのは見直したけど、そこはそれタイミングよく現れたのは深雪で理子もお腹の子も無事でした。こちらの騒動も真相が判り、お嬢様には厳重注意で手を打ったものの、彼女はあの時居合わせた貴一に惚れてしまったようで、それからというもの付き纏われているという、あの兄にもロマンスは芽生えるのかって感じの小話も。それから数か月後、安定期に入った頃に深雪と理子は結婚して本編は完。おまけの後日談は第一子・千華が一歳になり沖縄へ家族旅行に行くエピソードでした。封入SSペーパーは、10年前の深雪と理子のデート話。ヒーローとヒロインの誤解が割と早く解けてラブラブだったおかげでモヤモヤ度はかなり少な目だったのは良いですね。評価:★★★★☆
2024.04.01
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2024年3月刊マーマレード文庫著者:若菜モモさん大企業で秘書として働く寿々は、経営難に陥った家業の立て直しに頭を脳ませていた。そんな時、ひそかに憧れていた上司で次期CEOの優心から、高額な報酬と引き換えに二年間の契約婚を持ちかけられてそれを受け入れる。さっそく入籍をしたふたりだけど、優心が事故で記憶の一部を失い、恋愛結婚だと誤解した彼から予想外の甘々な溺愛が始まって…!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 加々美寿々=優心の第二秘書。 会社を辞めて経営難の家業を手伝うか悩んでいる。 高嶺優心=半導体企業の御曹司で専務取締役。 風間瞳=寿々と同期入社の秘書。 大企業の秘書課で働く寿々は今後の身の振り方に頭を悩ませていた。この会社で働いて5年、とある事情で恋愛とは無縁のため、今後もバリバリ働くつもりだったのだが、実家の自動車整備工場の古参事務員が退職してしまい、事務作業が苦手な兄が戻って来てくれないかと泣きついてきたのだ。親族経営なので給料もパート代程度しか出ないだろうし、兄も妻帯者で子供は3人もいるから実家には住めない。となると安アパートに越して以降は貧乏生活か。それでも母が亡くなり男手一つで育ててくれた父を助けたいという気持ちはある。決心しかねていると再び兄から連絡が。現在、実家は近所に出来た大手整備工場に対抗するため住居と工場のリニューアル工事を予定していたのだが、何とか融資の話を取り付けた銀行から今になってやっぱり希望には添えないと言って来たらしい。早速工事を始めるべく建築会社になけなしの1千万をすでに払い、取り壊し作業ももうすぐ始まるのでキャンセルも出来ず、父と兄はほとほと困っていた。そして寿々に社内融資を頼めないだろうかという内容だった。必要な金額はあと4千万。返済し終えるまで当然退職出来ないので実家を手伝うという話は無くなったけれど、それ以前に高々5年勤務の社員の申請が通るのか、書類を出した時は冷や汗ものだった。だが、案の定そこまでの金額は出せないとのお達し。密かに憧れていた高嶺専務に申し訳なさそうに言われて穴にでも入りたい気分だ。すると彼は融資が必要になった事情をもう一度訪ねて確認を取ると、彼女にある提案を持ち掛けてきた。個人的に金を用意するので、俺と契約結婚してほしいと言われた時は腰を抜かすかと思ったが、彼は至って真面目だった。優心の話では、35にもなって女の影も無いことを両親から心配され、最近やたらと縁談を持ち込まれ困っているのだそうだ。だが今は大きな案件がいくつかあるので結婚なんてしている余裕はなく、取り敢えずは2年程猶予が欲しい。そのための期限付き契約婚がしたいということだった。戸籍に×がつくので相応の報酬として4千万を払うと言うのだから、さすがは大金持ち。だが、お互いウィンウィンではないかと問われれば確かに。背に腹は代えられずその申し出を受け入れた寿々。でも果てしなく本心は複雑だ。憧れの人と愛の無い契約結婚なんて。そもそも過去に事故に遭い、右太ももに大きい傷痕のある自分にそんな価値なんてないのに。金の出どころは伏せて飽く迄社内融資が受けられたと父たちに話すと、ホッとしたのか二人に泣くほど感謝されてこれで良かったのだと思い直した。その後すぐ、父たちに優心との結婚を報告し、彼の両親にも挨拶に行くと漸く息子が結婚する気になったてくれたとこちらからも感謝されてしまった。どうやら、このまま一生独身なのではと心配していたからこその縁談攻撃だったらしい。しかも常々どこぞのお嬢様だと噂されてた秘書課の同期・風間瞳が候補の筆頭だったというから驚きだ。それにしても、ここまで互いの両親に喜ばれると罪悪感が半端ない。報酬もいつのまにやら4千万でなく1億になっていて、流石に固辞したが押し切られて結局受け取ることになってしまった。もう後には引けないのだ。それから暫く経って二人は職場にも結婚を報告。自分が妻になれると思い込み、周囲に勝ち誇っていた風間から寿々はあからさまな態度で恨まれたが、嫌味を言われても余裕の態度で交わしていた。形だけとは言え、この会社の後継の妻になるのだから堂々としていなければ。その後、式は大口案件終了後に落ち着いたらという体にして入籍だけ済ませ、寿々は義両親の希望で高嶺邸で同居すべく引っ越したのだった。しかし、入籍した翌日、社用車が事故に遭い、優心が救急車で搬送されたとの連絡が。慌てて病院に向かうと右肩を脱臼した上、頭を強打したようでMRIを受けているとのこと。幸い、脳に異状は無かったが、頭を打ったショックで優心は記憶障害を起こしていた。ここ1年ほどの記憶が抜け落ちているらしく、当然契約婚のことも忘れていて、寿々が妻だと聞いて激しく動揺。でも翌日からは寿々に甘えるようになって彼女の方はどう接して良いやら。契約にも肉体関係の有無については詳しく記載されていなかったが、義両親に怪しまれない様同衾はしていた。寿々も足を見られたくなくて、気が変わって求められたらどうしようと戦々恐々だったのだ。でも、今の彼は契約のことなど記憶に無い状態。きっと恋愛結婚だと思ってるだろうし、自発的に思い出すまで混乱させてはいけないので周囲からは知識を入れないようにと医師から注意されている手前、こちらから事情を話すこともできないではないか。かくして契約婚のはずが夫に溺愛される新婚の妻を演じることになってしまい・・・。この数日後、舅からの提案で療養と新婚旅行を兼ねて二人はスペインへ。優心は元々寿々に好意を持っていたようで、現地で乗っていたタクシーが事故に遭いかけたことで記憶を取り戻します。でも、甲斐甲斐しく自分の世話を焼く彼女には打ち明けられず、足の傷についても偶然に知った後だったので初夜もクリア。楽しい休暇を過ごしていました。しかし、いざ帰国すると寿々は風間から彼と別れろと脅されます。もしや契約婚だと気付かれた?でも風間の目論見は優心にしっかりバレていて、勝手に彼のPCにアクセスしたり脅迫の罪に問われ相応の罰を受けるのでした。あ、その時は記憶が戻ったことも打ち明けてます。いやあ、何ていうか筆頭候補だっただけで縁談にすらなってないんだから、風間さんがここまでする意味が分からない(^_^;)。どういう事情とか関係なく、結婚しちゃった時点で私なら興味薄れるけどなぁ。まぁ、寿々に負けたのが悔しかったんでしょうね。女の妬みの恐ろしさよ。この騒動が解決し、二人は勿論契約婚ではなく本物の夫婦になり、後に式を挙げて終わっています。この手のお話は大抵ヒーローの方がヒロインにベタ惚れなので、割とセオリー通りな展開だったかなと。おまけの封入ペーパーの小話は、夫婦の第一子・葵ちゃんの出産エピソードでした。というか、こういうのは本編に入れてよ~。評価:★★★★★
2024.03.25
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2024年3月刊マーマレード文庫著者:砂川雨路さん年上で警察官僚の蒼梧と、お見合い結婚をした愛生。しかし新婚早々、彼の海外赴任が決定。事情が重なり、愛生は二年間、息子をひとり育てながら夫の帰りを待つことに。一途に蒼梧を想っていた彼女だが、ある理由で自分たちは不要だと感じて離婚を宣言し…!ところが帰国した蒼梧に離婚を拒まれ、昼夜を問わず彼に激愛を刻み付けられてー。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 巴愛生=両親の薦めで蒼梧と見合いし結婚するが、新婚時に彼が海外転勤になり 2年近く離れ離れとなってしまう。 巴蒼梧=愛生の夫で警視正。歳の離れた妻を溺愛している。 巴伊織=蒼梧の帰国前に生まれた二人の息子。法務省のエリートを両親に持つ愛生は、大学を卒業してからというもの結婚を急かされていた。二人とも先日目出度く定年退職を迎え、元気なうちに孫の相手をしたいとのことだが、男女交際の経験の無い愛生としては相手もいないしそんなこと言われても困ってしまう。だが、母が40過ぎに生まれた子のせいか、随分と可愛がってもらった。親孝行したい気持ちもあって、見合いをしてみない?と話す母の言葉につい頷いたのだった。そして迎えたお見合い当日。両親の同期の息子さんだという巴蒼梧さんはとてもカッコイイ人で内心ではドキドキ。年齢は33歳というから一回り近くも歳上なのか。職業は警察官で階級は警視。さすがに両親のお眼鏡に叶うだけあってエリート官僚であった。個人的には真面目そうな所に好感を持ったが、問題は蒼梧の気持ちだ。元々無口なのか二人きりにされても会話が続かなくて居た堪れない気持ちに。これはお断りされるかもと思いきや、翌日先方から是非お付き合いしたいと返事が来て心底驚いた。でも、改めて会った彼の言葉に愛生は聊かガッカリ。丁度いいご縁だったからってもう少し言いようがあるではないか。流石に拙いと思ったのかすぐさま謝罪の上訂正されたが、自分も親孝行の一環で決めた感があるので彼を責められない。その後二人は結婚を前提に交際を始め、あの見合いの日から3ヶ月後に家族だけの式を挙げて入籍。義両親は故郷の熊本で暮らすと言うので空き家になる義実家で暮らすことになった。新年度を迎え蒼梧は警視正へと昇進。しかし、それと同時期に海外転勤が決まった。出向先はアルゼンチンの日本大使館。警護対策官として2年間就任するらしい。本来は別の者が行くはずだったが病気になりピンチヒッターとのこと。2年で済んだのはそのおかげではあるが転勤を告げられた少し後に愛生の妊娠が発覚。蒼梧は大層喜んでくれたが彼女の体調を気遣い日本に残ることを薦めた。現地は治安も良くない上に、妊婦でも日本ほどのケアは望めないからと。だが不安から離れ難くて愛生は絶対について行くと言って聞かず、蒼梧も渋々承諾。そんな折、愛生が妊娠悪阻で入院の上、退院した途端に切迫流産になり絶対安静となってしまった。更に母に胃がんが見つかり手術するという。状況からして愛生が付いて行くことは不可能になり、蒼梧だけ単身赴任することに。毎日SNSで連絡するし、休暇も取って帰国すると言うので、母のこと含め一人頑張っていた愛生だったが、現地の情勢悪化により彼の帰国は悉く叶わなくなっていた。結局、出産に間に合わせて一時帰国する話も無くなり、愛生は予定より1週間早く長男・伊織を産んだのだった。幸い、その頃には母も退院していて義両親も駆けつけてくれたから一人ではなかったけれど、蒼梧が悪いわけではないのに無性に腹が立った。おまけに大使館の同僚らしい女性職員に言い寄られているようで、その女・ミランダから宣戦布告なのか意味深な写真まで送られて来て育児疲れもあってイラついていた愛生の怒りはMAX状態。すぐさま言い訳のメールが来たが、冷たく一言だけ返信してやった。親友の芙美に愚痴を聞いてもらい、別れるかもと思わず溢してしまった際に、在学中モーションを掛けて来ていた同期の中泉に聞かれてしまい、以降何かと誘われるのも腹が立つ。それから暫く経って漸く蒼梧が帰国。1歳を過ぎた伊織は最初彼に懐かずハラハラしたが、夜にはすっかり懐いてホッとした。とは言え、ミランダのことは本当に浮気ではなくとも蟠りはある。しかも、彼を追って日本に来ているというのだ。彼女に呼び出されて言い合いになるも、親友にはああ言ったが離婚する気など無かったこと気付き、蒼梧の登場でミランダの独り相撲だったことも判明し、二人は仲直り。元々、蒼梧は離婚したくないとも言っていたし、不在だった間を埋めるように家族に尽くす彼にとっくに絆されていたから。また仲睦まじく暮らし始めた愛生たち。二人目の子どもを望んでいた頃、待望の妊娠が発覚し、蒼梧も今度こそは出産に立ち会うと張り切っている。後に女の子だと判ったことも拍車を掛けているようだ。そんな折、彼が転勤を悉く断っていると耳にし・・・。お見合いで出会い、スピード婚した歳の差夫婦が困難にぶち当たりながらも協力して乗り越えていくという内容です。あまりお互いのことを知らぬまま結婚したのに、新婚早々に夫は海外に転勤。一緒に付いて行くはずが妊娠発覚して悪阻の酷さと切迫流産、おまけに母の病気が発覚。泣く泣く2年も離れ離れになったあげく、現地の情勢悪化で夫は帰国できず。まだ23歳の新米ママには辛いよねぇ。帰国してからは無口無愛想な夫が反省したのか妻と息子を溺愛。こんな人だったっけと戸惑いつつも、愛生は再構築を選び、以降はまた仲良し夫婦に。大学の同級生からのしつこいアプローチも撃退し、第二子である長女・紬も無事産まれます。蒼梧が転勤を断りまくってたのは当然あの2年のせいで、そりゃもう断りたいよね。海外転勤はもうほぼ無いようですが、地方転勤はしょっちゅうあるらしく官僚も大変だなぁと。でも、家族のためとはいえ断り続けるのは周りからの反感を買う、と愛生は諭し、彼も思い直します。本編後の番外編では5年くらい経っていて、伊織の学校の都合で単身赴任となった蒼梧の話が描かれていました。6周年記念の封入ペーパーのSSは、まだ不倫疑惑があった頃のギクシャクしていた頃のエピソード。面白かったけど、なんでこの時期の話にしたんだろw評価:★★★★★モヤモヤ度も少なく文句なしに良いお話でした。
2024.03.20
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2024年3月刊マーマレード文庫著者:田崎くるみさん親代わりだった姉を亡くした汐里は、その息子・翼とふたり暮らし。ある日、彼女は翼との外出中に容姿端麗な男性に出会う。それは姉の駆け落ち相手の弟・海斗で、大企業の副社長だった…! 翼を奪われるかもと身構える彼女だが、なんと海斗と一緒に翼を育てることに…!? 過保護な彼に「俺にだけは甘えて」と蕩かされ、やがて愛を教え込まれていき―。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 天瀬汐里=理学療法士。姉の忘れ形見である甥を女手一つで育てている。 桜葉海斗=大手食品会社の御曹司。汐里の姉の夫・聡の弟。 天瀬翼=汐里の甥。 如月愛実=海斗の秘書。両親の離婚後、母は蒸発。以来姉妹二人で生きて来た香織と汐里。歳の離れた姉の香織は働いて汐里を大学にまで行かせてくれた。そんな姉は勤め先の御曹司・桜葉聡と恋仲になったのだが、二人の結婚は聡の両親が大反対。説得は無理と諦め二人はシンガポールに移り住んだ。聡が現地で起業し、業績も好調。近況を知らせる手紙では姉は幸せそうだった。だが、それも束の間、羽振りが良いように思われたのか聡は強盗に襲われて死亡。妊娠していた香織は桜葉家に彼の死亡だけを伝えると子供を取り上げられない様ひっそりと帰国。福島の整骨院の事務として働き出した。東京の病院で理学療法士をしていた汐里は姉を気遣い、しょっちゅう様子見に福島を訪れ、甥っ子・翼の誕生も見届けることが出来た。しかし、何の不幸か香織は事故に巻き込まれて去年あっけなく亡くなり、頼る者も無いまま汐里が翼を引き取り育てていた。ある日、翼に強請られ地元のテーマパークにやって来た汐里は、一人の青年に呼び止められた。青年が桜葉海斗と名乗ると、名字ですぐに聡の家族だと判った。聞けば弟だという。たまたま仕事でこのテーマパークに訪れた所、汐里を香織だと間違えて声を掛けて来たようだ。それに一緒に連れていた翼が義兄にそっくりなことから二人の子だと勘付かれてしまった。姉が必死に隠していたのに、と汐里は焦ったが、彼の話によれば両親はあの時に結婚を反対したことをとても後悔しているとのこと。孫がいたと知ったらどんなに喜ぶか。海斗に一先ずこれまでのことを聞かせてほしいと頼まれ、その日の夜、場所を改めて現状を話して聞かせると、彼は心底残念がっていた。まさか香織まで亡くなっていたとは、と。そして、聡に息子がいたと知らせると両親は泣いて喜び、是非合わせて欲しいと懇願しているらしい。正直、あの時結婚を許してもらえていれば二人はシンガポールに行くことも無かったし、聡も犯罪に巻き込まれず今も家族三人で暮らしていただろう。だが、翼にとっては彼らも肉親、汐里の蟠りで会わせないのは違うと思う。翼に聞けば祖父母に会いたいと言うので、後日東京に出向いて会うことに。海斗の父は大手食品メーカーの社長のため多忙で、顔合わせが叶ったのはそれから一か月後のこと。汐里たちは歓迎され、改めて桜葉の両親からこれまでのことの謝罪をうけた。彼らはこれからは汐里共々翼のために全面的にバックアップしてくれるつもりのようで、今まで放ったらかしだった分も含めて頼ってほしいという。翼も短時間ですっかり懐き、さすがにワンオペでの育児に限界を感じていた汐里は、自身のことはともかく翼の今後についてはその申し出をありがたく受けることにした。そして、あのテーマパークでの取引の都合で福島に滞在が決まっていた海斗が近所に暮らし、保育園の送り迎え含め手伝って貰えることに。かくして、子育てに海斗が加わることになったのだが、汐里は海斗を意識してしまってドギマギ。一方、海斗の方も汐里に好感を持ち始めていた。そんな二人の様子を見て、海斗の秘書の如月が汐里に財産目当てなら、と釘を刺したことで彼と距離を置き始めた汐里。理由が判らず、急に余所余所しくなってしまった彼女の態度に戸惑っていると、翼から発破をかけられる始末。最初は汐里を取るなばりに牽制されてたのに、漸く認めてくれたのは嬉しいけれど、当人にそっぽ向けられているのでは。だが、如月の母が汐里の病院で世話になっていると判り、誤解していたと詫びられた事から汐里もまた海斗に笑顔を見せてくれるようになって一安心。後はどう想いを伝えるか。そんな最中、会社内で勃発していた後継者争いに翼が巻き込まれて誘拐されてしまい・・・。これは聡さんが優秀過ぎたせいで、彼を推していた専務が後継者が海斗になったのを納得していなかった故の事件でした。いや、でも後継を決めるのは社長なんだからさあ。どれだけ専務が聡さんを買ってたとして、幼い子供を浚って怖い目に合わせて良い理由にはならないですよね。幸い、すぐに翼は救出されたものの、名の知れた大企業の身内となるとこの手の被害に遭う確率がグンと上がる。桜葉の両親の薦めもあってセキュリティのしっかりしている桜葉邸で暮らすことを提案された汐里は翼だけを頼み、自分は東京の病院でまたバリバリ働くことを決意。一緒に暮らしたら今以上に海斗を好きになってしまうと言う懸念事項から頑なに同居を拒む汐里だったものの、逃がさないとばかりに海斗から先制してプロポーズされた汐里は、素直になっていいのだとそれを承諾。最終的に二人は結婚して終わっています。6周年記念で封入されていた番外編が読めるペーパーは、結婚して半年後の二人の様子が描かれていました。評価:★★★★☆読む人によって評価が分かれそうなお話でした。
2024.03.15
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2024年2月刊マーマレード文庫著者:木登さん唯一の家族である父を失った万里花は、幼なじみで海上自衛官の東助を前に、揺れる感情のまま長年の恋心も溢れ出てしまう。すると彼は予想外の激情を返してきて…!とある事情から、あれは一夜の慰めだと悟った彼女は、身ごもった双子を一人育てると決意。しかし再会した東助に子どもごと過保護に甘やかされ、万里花は一途な愛を刻まれていきー。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 栗澤万里花=父と二人暮らしの事務員。 幼馴染の東助に長年恋心を抱いていた。 久留見東助=万里花の3歳年上の幼馴染で海上自衛官幹部。栗澤凪沙&潮音=二卵性の双子の姉弟。万里花が女手一つで育てている。作家の父に連れられて行った子ども劇団にて万里花は東助と出会った。正直第一印象は最悪だったが、面倒見の良い彼は何かと万里花の世話を焼き、やがて超人見知りの彼女はすっかり絆されてしまった。だが、小学生の時に思い切って告白してみたが見事にスルー。お互い子供だったのもあるのだろうが、東助にしてみれば万里花はそういう対象ではないらしい。判り易くフラれたと言うのにあれから20年経っても彼女は東助に未だ片想いをしていた。29歳になった東助は俳優の道には進まず自衛官になった。何でも災害支援活動をしている自衛官の姿をテレビで見て以来憧れたそうで、今は海上自衛官の幹部だと言う。任務によっては一ヶ月以上会えない期間があるものの、彼は帰還すると万里花を食事に誘い、子供の頃のように世話を焼いた。相変わらず過保護な彼に呆れつつも、東助が好きな気持ちは変わらない。そんなある日、万里花の父が急逝。ここ最近随分痩せたと気にしてはいたのだが、どうやら余命宣告されていたらしい。それでもまだ猶予はあったようなのだが、急に容体が悪化したのか劇団の稽古場で倒れてそのまま。父は、一人残される娘の為に保険金含め、かなりの金額を残してくれたけれど寂しさとショックで万里花は暫く茫然としていた。東助は休暇中を取り、彼女に付き添っていたが万里花に請われ、二人は一線を越えてしまった。その翌日には彼は基地へと帰り、万里花は二人の関係が変わってしまったことを自覚。順序が逆になったもののまた自分から告白すれば良い。東助はこれから数か月ほど任務に入るらしく、時間によってはSNSでも連絡が取れなくなるが、彼が帰ってきたら想いを伝えよう。父のいない家に一人で暮らすのは寂しいが、またいつもの日常に戻って1ヶ月ほど経った頃、自宅前に見知らぬ女性が。女性は万里花をじろじろ見ると何故か勝ち誇り、自分は東助の婚約者だと告げた。話を聞くに女性は自衛隊のお偉いさんの娘だそうで、父親の紹介で交際に至ったのだと言う。見せられたスマホには女性と写る東助の姿。万里花は衝撃を受け、女性が帰った後に東助に事実確認のメッセージを送ってみたが一向に既読にならない。なら彼の両親に話を聞こうと久留見家に出向くと、彼の母は東助がついに結婚する意志を固めたみたいでと大層喜んでいた。まさか、彼は父を亡くした自分を慰めるために抱いたんだろうか。ここ最近体調が悪く嫌な考えばかり浮かんでしまう。あまりにも吐き気が収まらないので診察を受けると妊娠していると医師から告げられ、東助の迷惑にならない様、マンションを引き払い万里花は姿を消した。そんなことになっているとは露知らず、東助は任務で万里花に連絡できない事に内心そわそわ。漸く帰れることになりスマホを見ると彼女から、あなたの婚約者が会いに来たとメッセージが来ていて心当たりのない東助はパニックに。慌てて万里花に電話をすると何度かけても通じない。埒が明かないと急ぎ帰ればマンションには別人が住んでいて、母親から彼女が急に引っ越したと聞き目の前は真っ白。母は万里花と結婚するって言ってたくせに、婚約者とかどういうことかと問い詰められたが本当に身に覚えが無い。心当たりを探してみたが彼女は見つからず、友人たちの協力を仰ぐと、まず婚約者についての経緯が判明。なんと、艦長の娘が将来有望な海上自衛官の何人かに目を付けては近付き、恋人がいようものなら婚約者のフリをして別れさせると言う行為を繰り返していたとのこと。そういえば艦長に頼まれ、娘と写真を撮ったことがあった。事情を知らずにそれを見せられれば誤解するだろう。実際、彼女のせいで別れた者たちもいるようで、このことについては彼なりの方法で落とし前を付けさせた。問題は万里花の行方だ。任務があるので探しにも行けず、興信所に依頼もしたが綺麗さっぱり痕跡を消されて途中までの足取りしかつかめなかった。あれから3年が経ち、万里花は栃木で男女の双子を育てていた。マンションの管理人の女性が世話好きでしかも元保育士と言うことで随分と世話になった。忙しい毎日であっという間に時が過ぎ、子供たちも2歳。車で父の墓参りも行けるだろうかと、思い切って故郷に戻った万里花は墓地近くのコンビニで熱中症で体調を崩し座り込んでいた東助の母と再会。介抱してくれた礼をしたいと久留見家に招かれた万里花は、母親から連絡を受けたのか急ぎ帰宅した東助とも再会し・・・。シークレットベビーものです。一線を越えた時、東助がちゃんと気持ちを万里花に伝えていればもう少し誤解が解けるのも早かったんじゃないかと思います。いやほんと、両親に万里花と結婚すると報告する前にまず本人に告白しなきゃ。そんなわけで恋人ですらないので、当の本人は婚約者と名乗る迷惑女に易々とだまされてしまったのでした。ってか、この艦長の娘マジでなんなの。結局脈無しと判断したのか早々に東助はターゲットから外し、ちゃっかり別の自衛官にすり寄り本物の婚約者になってたと言う。しかもそっちも略奪婚だって話だからなぁ。でも、流石に罰も当たり、東助の目論見により相応の報いを受けます。正直言えば訴えられてもしょうがない案件ですもんね。事態の顛末を東助から聞き、誤解も解けたのだが、人見知りの万里花に似た潮音が東助を怖がり懐かない為、時間を掛けて様子を見てから入籍することに。その後、とある事件をきっかけに潮音も東助に懐き始め、仲も深まって無事家族になって終わっています。絶対に会えるとは判ってたものの、あの艦長の娘がはた迷惑すぎて二人が再会した後も何か納得いかなくてモヤってました(^_^;)おまけの番外編は中学生になった潮音目線の家族の話でした。評価:★★★★★
2024.03.04
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2023年10月刊マーマレード文庫著者:西篠六花さん高校時代に自分を捨てた元彼・律と10年越しに再会した渚。実家を継ぐという彼に、もう一度チャンスが欲しいと熱く迫られるが、甥の面倒を見ている渚は躊躇してしまう。しかしそんな渚に寄り添い、甥のことも慈しんでくれる彼に、ずっと抑えてきた気持ちも溢れ出し…。渚を忘れられなかったという彼に求められると、その熱愛はあまりにも激しくてー。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 狭山渚=学習塾の事務員。義父と協力しながら甥を育てている。 上倉律=老舗旅館の後継で渚の元カレ。 狭山悠=渚の血の繋がらない甥っ子。上倉仁美=律の2歳下の妹。渚とは幼馴染。狭山理香=渚の義姉で悠の母親。渚には11年経っても忘れられない人がいた。幼馴染の仁美の兄で、長年の片思いを経て彼からの告白で交際に至った律とはほんの3か月で破局に至った。というより、初めてを捧げた翌日から疎遠になって「ごめん」の一言で別れを告げられたのだ。事情を知っている仁美はこんなのやり捨てじゃないかと憤慨していたが、渚にはフラれた原因に心当たりもあった。実は律がバイト代でプレゼントしてくれたネックレスを失くしてしまい、申し訳なくて顔向けできずに会うのを避けていたので、初体験の後にその態度では彼も思う所があったのだろう。元々律は旅館を継ぐにあたり経営やら専門的に学びたいと東京の大学に進学するから、二人は遠距離恋愛になる予定であった。マメに連絡をくれると約束していたが、東京と北海道では遠すぎる。どのみち上手くいかなかったのかもしれない。でも、あのごめんの一言だけで着拒することはないだろう。そんなに自分の態度は頂けなかったのか、それとも仁美の言うように単にやることやったからポイ捨てされたんだろうか。後に仁美から聞いた話では律は地元で進学して欲しかった父親と対立し、進学費用などの援助も拒絶されたと言う。母親とは連絡を取っているらしいが、あれから一度も律が帰省することは無かった。渚もこの11年の間に色々あった。シングルマザーで看護師をしながら自分を育ててくれた母が再婚し、名字も変わった。義父には理香という連れ子もいたが受け入れてもらえずいつしか家に寄り憑かなくなった挙句、恋人と暮らすからと家を出て行った。その後、母がガンを患い亡くなって義父には実家で暮らしてもらい彼女はアパートで一人暮らしをしていた。が、半年ほど前に理香が突然帰って来て息子だと言う悠を置いて失踪。どうやらネグレクトされていたらしい甥を義父と協力して面倒を見ることになったのだった。学習塾の事務員をしている渚は就業後は保育園に悠を迎えに行き、おさんどんに掃除洗濯に奮闘。当初は娘の失踪によりワンオペで孫の世話をしていた義父を見ていられずつい泊まり込んで世話を焼いている。我ながらお人好しだと思うし仁美からもそこまでする必要あるのかと言われたが、性分なので仕方ない。そんなある日、渚を労う為に仁美から飲みに誘われた際、彼女から律が帰って来ると聞いて驚いた。どうやら旅館の経営が行き詰ってるようで冷戦状態だった父親が折れ息子に帰って来てほしいと頼んだらしい。大学を出て有名ホテルグループ会社に勤めていた彼は、どんな厳しい案でも文句を言わない事を条件に旅館の経営に携わるとのこと。実家は旅館の近所、下手すると道でバッタリ会う可能性もあるってことか、これは頭が痛い。嫌な予感は的中、悠のお迎え時に渚は律と再会。彼は何か言いかけていたが子連れだったせいで誤解しているようだ。これは好都合。しかし、彼女の子でない事は後日あっさりバレてしまい、問い詰められて思わず事情を話してしまった。まだ独身と聞いて律は何を思ったのか復縁を迫って来て、今更どの面下げてと渚は激怒。あんなフラれ方をしたせいであれ以降恋も出来ず一生独身かもと悩んでいたのに。だが、人見知りで大人しい悠が彼に懐いてしまい、律に会いたがるので子連れデートを重ねること数回。何だかんだ彼に未練があった渚は律の誘いを断り切れず、交際をOKしてしまった。しかし、仁美から律の元カノが旅館にやって来て東京に帰ろうと説得しているという話を聞いて・・・。読んでるうちにこの妹の言うこと一々誤解されるようなことばかり言っておかしくね?と思っていたら案の定。当時二人を破局に追い込んだのは仁美の企みによるものでした。おまけに兄との復縁を激しく反対し、渚が浮気をしているなど嘘も吹き込んでました。性格に難ありな彼女はお人好しで何かと好かれる渚を羨み、出来の良い兄のことも気に入らなかった。ちょっと引っ掻き回してやろうと彼女の家に泊まった時に例のネックレスを盗み、渚から突っ返されたと嘘を吐き律に渡したのでした。丁度その頃、渚の態度を不審に思っていた律はそれを信じてしまい、父との喧嘩で苦学生になるし帰省も出来ないのでそんな自分に縛ってはいけないと渚との別れを選びます。彼女の方の事情は前述の通りで仁美もやってくれたなーって感じ。事実を知って二人は激怒、流石に罪悪感があったのか仁美も猛省し町を出てなにかとトラブルの元になっていたこの性格を矯正するためにカウンセリングを受けるそう。何なのこの女とは感じたけど、実際いるよねこういうトラブルメーカーな人って。まぁ、律も渚も初めての恋だったせいで色々鵜呑みにしてたのが良くないけど、11年はやっぱり長かった。仁美もアレな人でしたが、それより渚の義姉がヤバイ。あれからまた帰って来て渚の金を盗んだりとやらかし、また出ていくという。でもあの人に悠を任せたら最近多い痛ましい事件になりかねないので、ホント母親に引き取られないで良かった。悠についての律の決断も良い。気になってた仁美のその後と悠の将来についてはあとがきにて少し語られています。評価:★★★★★最初、タイトルと表紙からシークレットベビーものかと思ってましたw
2024.02.26
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2024年2月刊マーマレード文庫著者:沖田弥子さん継母に虐げられてきた王女・セラフィナは、実母の故郷の皇国に養子が決まったその日、前世を思い出す。それは仕事一筋の恋愛未経験女子だったというもので、少し落胆してしまうが、皇国に着いたセラフィナは前世の記憶を持つ聖女として迎え入れられ…!その上、婚約者になった大公・オスカリウスは、前世の初恋の人にそっくりで…!?「氷の大公」と呼ばれる冷徹な彼の評判を忘れるほど、過保護に溺愛されるうち、セラフィナの身も心も甘く溶かされていきー。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 セラフィナ=小国の第一王女。継母から疎まれ虐げられていた。 アラサーのバリキャリだった前世の記憶を持つ。オスカリウス=極北の大国の騎士団長。セラフィナの結婚相手に選ばれる。 エドアルド=オスカリウスの従兄弟で、セラフィナを巡るライバル。 ダリラ=セラフィナの異母妹。母と同じく強欲な性格。小国・バランディン王国の第一王女・セラフィナは、王族として産まれながら平民以下の生活を強いられていた。生みの親である先の王妃・クリステチーナが流行り病で早逝し、後添えでやって来たのが強国レシアトの王女・イザベルだった。彼女はとにかく自分が一番でなければ気が済まず、そして強欲であった。質素を好み皆に慕われていたクリスチーナとは真逆な性格な上にセラフィナの存在も気に食わない。クリスチーナの遺品含め何もかもを取り上げて離宮という名のボロ屋敷に継子を追いやった。父王はレシアトに睨まれるのを恐れてか後妻による娘への虐めにも目を瞑りだんまりを決め込み、やがて生まれた第二王女のダリアも母に習って姉を虐げるように。そんな扱いを受けて15年近く経ったが、王族扱いされないのはともかく、碌に食事を貰えないのは堪える。おかげですっかり痩せ細ったセラフィナはこれまでの人生と、前世の記憶を思い返した。彼女はIT企業に勤める瀬良雪菜というOLで仕事に打ち込み過ぎて恋愛とは無縁の生活を送っていた。とは言え、気になる人はいるにはいて、あと少し勇気を出せば恋は叶ったのかもしれない。終業後、彼女は子犬を助けようとして車と衝突、27年の人生を終えたはずだったのだが、子犬に導かれて長いトンネルを抜けるとセラフィナに転生していたのだった。継母の壮絶な虐めのせいで婚期を逃している彼女は今年で27歳。今世でも恋愛未経験のまま人生を終えるんだろうか。絶望しかけていたセラフィナに転機が。クリスチーナの故郷であるアールクヴィスト皇国からセラフィナを養女に迎えたいと申し入れがあり、銀鉱山の譲渡と引き換えに受理された。皇国は代々女性が皇位を継ぐらしいのだが現女帝には子がおらず、親戚筋に当たるセラフィナに白羽の矢が当たったようだ。当然忌み子が次の女帝候補になるということでらイザベルとダリラは憤慨、最後まで反対していたが、二人の贅沢三昧のせいで国庫は火の車。いつも王妃の機嫌取りをしていた王も今度ばかりは取り合わず、銀鉱山に飛びついた。既に決定したこととしてセラフィナに相応の準備と装いをさせるよう命じたのだが、それを無視して継母と妹は隠し持っている宝石を出せと彼女に迫り、持たされたのは着古されたワンピース数着と言う有様。しかもイザベルは輿入れの際から自らの世話をさせていた侍女のクロード夫人を彼女の監視役として付け、皇国でもたっぷり虐めるよう言い含めた。皇国に着くとオスカリウスと名乗る青年が迎えに来ており、みすぼらしいワンピース姿のセラフィナに驚いていた。なのに侍女のクロード夫人は豪華な毛皮を纏っているので何とも奇妙な光景に眉をひそめた。そして彼を見てセラフィナもまた衝撃を受けた。前世で密かに想いを寄せていた勤め先の御曹司・月城にそっくり。さすがに女帝に謁見するのにその恰好は拙いとドレスに着替えさせられた彼女は、自分が次の女帝候補であることを聞かされた。クリスチーナには皇位を継ぐ資格となる痣と魔力が無く外国に嫁ぐ羽目になったが、セラフィナはそのどちらも兼ね備えていたことが判明。正式に女帝の養女になることが決まり、後継者教育を受けることに。だが、女帝になるにはもう一つ条件があるという。それは先に後継者をもうけること。女帝の言い分はまぁ判る。公務に多忙で婚期を逃し、何とか結婚したものの気付けば相手もいい歳で子が望めなかったとなれば、皇位を餌に急かされるのも仕方ない。努力してみるが前世から恋愛経験ゼロの身にはハードルが高い。しかし、至れり尽くせりというわけでもないが皇配(夫)候補はもう決まっているらしい。お相手として女帝の甥だというオスカリウスを紹介されてなんだか複雑な心境だ。それにしても見れば見る程彼は月城に似ている。それもそのはず、オスカリウスはあの日姿を消した雪菜を追ってこの世界にやって来た月城本人で・・・。セラフィナ自身は異世界転生なんですけど、オスカリウスの方は異世界転移という形でこの世界に現れたものの、髪や目の色はその影響か変化。しかも初めからそこにいたように名前や地位が備わっていたっていう少々ややこしい設定に。雪菜に長らく片思いしていた彼は、この世界でも彼女を守り、想いを育んでいきます。が、皇配候補にはもう一人エドアルドなる人物がおり、どうやら彼も元の世界の記憶持ちのよう。彼についてはすぐに見当が付いて、見境ない嫌な奴かと思えば潔くて案外いい奴でした。皇配については、ここでオスカリウスに正式に決まり、セラフィナも次の女帝になるべく、民たちにとって住みやすく安全な国を目指して奮闘。前世の知識を生かした保険制度の導入など、オスカリウスと協力して改革を進めていきます。色々難題にぶち当たりながらもなんとか地盤固めできたと思いきや、ダリラが皇国に押しかけて来て終盤に波乱が起こった時はしら~~~っと。いやなんかもう、ここまで来ると継母と異母妹は真正のアホだわ。国王含め、彼らの顛末は最悪なものとなります。あの勘違い女筆頭のクロード夫人も道連れにしてくれて何より。オスカリウスとエドアルドの転移については文面読んでも少々判り難いんですけど、あまり深く考えず好きな女を追っかけて別の人生歩むことになった男たちって認識で良いかと。てか、雪菜ちゃん非モテと言いつつモテてるじゃないのwあとテンプレ的な聖女要素は少な目なので、その辺りはほとんどおまけ設定ぽいです。評価:★★★★☆
2024.02.23
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2024年2月刊マーマレード文庫著者:有允ひろみさん和菓子屋の娘・紗英には、伝統芸能界の御曹司・駿之介という幼馴染がいる。姉の許婚の彼を推しとして陰ながら応援してきた紗英だったが、姉が結婚を断ったことで嫁入りが決まり…!名家の妻として努力する紗英に、駿之介もありったけの溺愛を注いでくる。ある疑惑が浮上するも、彼を信じ抜いた紗英はさらに激情を刻まれ、ついに赤ちゃんを授かりー。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 松蔵紗英=老舗和菓子屋の次女。 幼馴染である駿之介の大ファンで密かに推し活をしていた。松蔵駿之介=梨園の御曹司で紗英の夫。若手の期待の星と言われている。両親が営む老舗和菓子店で働く紗英は、幼馴染で初恋の人・駿之介の大ファン。歌舞伎界の若手期待の星と言われる彼の演技は素晴らしく、紗英は後援会にも入会し、クローゼットには駿之介専用のコーナーがあるほど。写真集だって見る用貸す用などと理由を付けて同じ本を4冊も買ってしまった。CAをしている姉には呆れられているけれど、推し活するくらいいいじゃないか。どうせ姉の鈴奈はそのうち駿之介と結婚するんだから。古くから松蔵家出入りの和菓子店をしている兼ね合いで、父同士も親友。家族ぐるみの付き合いの両家で同じ年頃の子がいればそりゃあ出るよね、っていう約束事。亡き駿之介の祖父が彼と鈴奈との結婚を決め、許嫁になったのは随分前だ。店の方は、父の弟子の公一に継がせ、紗英と結婚させるらしい。兄のように慕っている公一との結婚は嫌ではないし、彼と谷光堂を盛り立てていくのは吝かでない。そう思っていたのだが、後日、鈴奈からの発言で一大事に。なんと鈴奈は妊娠しており、相手は光一だと言うのだ。密かに交際していたという二人。となれば必然的に駿之介との結婚は無くなる。約束を反故にしてしまい長年の付き合いもこれで終わりかと両親は頭を抱えた。しかし、たまたま遊びに来ていた駿之介が実は自分も紗英と交際していたのだと発言。それで丸く収まってしまったのだ。当初の予定とは違ってしまったものの、紗英が嫁げば両家の縁は続く。店は鈴奈と公一が継げばいい。胸を撫で下ろす父を横目に、寄りにも寄ってなんて嘘を吐くんだと紗英は内心パニックに。梨園の妻なんて果たして自分に務まるんだろうか。でも、駿之介と結婚できるのは嬉しい。相手が変わったことに関して、何か言われるかと思いきや松蔵家の面々も最初は驚いていたものの、紗英ちゃんならと歓迎された。私なんかに務まるでしょうかと不安がる彼女に、義母と義祖母は確かにこの世界では妻もマネージャーのような仕事をしなければならないし、多くの仕来りも憶えねばならない。それでも昔より大分楽になったとのこと。サポートするからと励まされ何とか決心できた。そうこうしているうちにあっという間に日々は過ぎ、駿之介と紗英は入籍。式も挙げて実家近くのレジデンスに住み始めた二人。しかし、本当に自分と結婚して良かったんだろうか。すると彼は、もう10年も前から君が好きだったと告白。元々鈴奈とは友人以上の感情は無かったらしい。とはいえ、さすがに公一と出来ているとは思わなかったそうだが。駿之介の本心を知って、私もあなたが初恋でずっと好きだったと想いを伝えた紗英。両想いだったことが判り蜜月生活が始まった。厳しい稽古に打ち込む彼を応援しつつ、紗英も梨園の妻として奮闘。周囲からの男の子を産めというプレッシャーも想像以上にキツイが、それ以上にゴシップのせいで一般人の認識では歌舞伎役者は女遊びは当たり前と思われてるのが悲しい。真面目な人も多い反面、華やかな世界なだけに誘いが多いのも現実。ご贔屓さんからの伝手で誘ってくる人もいるようで、駿之介も断るのが大変だと言っていた。でも絶対に浮気はしないと宣言してくれたので、そこは信用している。そうこうしているうちに紗英の妊娠が発覚。両家の面々も大喜びだったが、やはり望まれているのは男の子。無事に生まれてくれればどちらでも、と彼は言っているので気にしないよう努めた、そんなある日、紗英はマンション前で以前駿之介が密かに会っていた女性を見かけて・・・。この女性の存在が夫婦間に一波乱起こすんですけど、当然駿之介の愛人とかではありません。詰め寄る紗英に駿之介が語ったのは意外な事実で、何と女性は彼の祖父の娘でした。しかし、祖母には内緒の存在で認知もされていない。祖父が亡くなる際に駿之介に後を託したそうで、以降、彼が援助をしていたという。事情を聴いて誤解も解け、数か月後紗英は長男を出産。一臣と名付けられた息子はすくすくと育ち、紗英も母として梨園の妻として成長していく、っていう展開です。推し活をしていたということでファン目線からのアドバイスが功を奏したり、駿之介も知名度が上がって人気も急上昇。家庭では良き夫で良き父に。作中、歌舞伎の演目が多数出てきますが、判らなくても問題ありません。でもきっと知っていれば尚面白いと思います。浮気疑惑もあっさり無くなってたし、このお話もモヤモヤ度自体はかなり少な目だったのは良いですね。あと、公一さんの名前が2か所くらい正一さんになってたのが気になりました。プロットでは正一さんだったのかな(^_^;)評価:★★★★★
2024.02.16
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2024年1月刊マーマレード文庫著者:晴日青さん借金を肩代わりしてもらうのと引き換えに、幼馴染みの御曹司・柊と契約結婚をした穂香。契約の条件は、彼が会社の後継者になるため、後継ぎを産むことで!?子どもだけを望まれていると切なくなる穂香だったが、あるきっかけで柊の独占欲のタガが外れ…!「お前が愛していいのは俺だけだ」柊の激情をぶつけられ、穂香はその重すぎる愛を思い知りー。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 千堂穂香=ごく普通のOL。18年ぶりに再会した柊と契約結婚をした。 千堂柊=大企業の御曹司で穂香の夫。 千堂満=柊の異母兄。食品会社の事務員として働いていた穂香は、帰宅早々神妙な様子の父から多額の借金を背負ってしまったことを聞かされて茫然。どうやら人の好い父が知人の保証人となり、当の本人が雲隠れでもしたのだろう。泣いて謝る父を宥めていると来客が。仕立ての良いスーツを着た青年を見て、父はすぐさまその正体に気付いた様だ。柊君と呼ばれた彼は穂香が幼い頃、この家で一時期一緒に暮らしていた少年で、彼女の初恋の人であった。柊は母の親友の一人息子で、とある事情から仁和家で預かっていた。無愛想でちょっと気難しい子ではあったものの、穂香は彼を気に入り始終付き纏っていたのを覚えている。暫くすると少しは打ち解けたのか兄のように彼女の面倒を見てくれていたっけ。そんな柊も、5年経つと親もとへと帰り、以降会うことは無かった。再会を喜んでいると、借金取りが押しかけて来て返済を迫られたのだが、やり取りを聞いていた柊があっさり返済に応じて翌日すぐに入金するということでカタが付いた。闇金が請求して来た額は法外の利息が付いて1千万にもなっていたのに。これであの時の恩を返せた、と話す彼は現在有名ホテルグループの社長を務めているらしい。それであの取り立て屋たちも名刺を見てあっさり引き下がったわけか。柊の実家の凄さを初めて知ったが、いくら彼が恩返しのつもりでもそんな大金、何年かかるか判らないが帰さないわけにはいかない。思わずどんなことでも力になるとまで言う穂香を見て、なら俺と結婚してくれと頼まれた。彼には兄がおり、現在後継者争いの真っ最中なのだとか。そして後継の条件として結婚が入っているらしい。早くに子供が出来れば尚良し。さすがにそれはと焦る父に聞けないなら今すぐ金を返してくださいと言われ、穂香はその申し出を承諾。そもそも、どんなことでもと言った手前撤回するわけにもいかない。数日後、二人は早々に入籍すると柊の用意した一軒家で暮らし始めた。再会してからというもの色々あり過ぎて戸惑いもあったが、意外にも結婚生活自体は悪くないものだった。不満があるとすれば穂香の料理を碌に食べてくれない事と嫉妬深い性格だろうか。だが、二人で出かけた時に柊がストレスで味覚障害になっていたことを知った。そして、彼の背中に残る古傷。心配になって実家での暮らしを尋ねれば思い出したくないのか黙ってしまい知る術もない。どうにも気になって、以前偶然に出先で遭遇した柊の兄・満にコンタクトを取り、夫の過去を教えてもらえるよう頼んだ。満の話によれば、柊は妾腹なのだそうだ。母子は千堂家の屋敷の離れで囲われていたが、当然正妻は面白くない。数々の嫌がらせを繰り返し、息子に危機が及んではと母親は親友に彼を預けたのだと言う。だが、当主が病に倒れて柊は呼び戻され、兄共々正式に後継者教育を受けることになったのだと。背中の傷も兄弟喧嘩が不慮の事故に繋がったと聞いて、色々すれ違ってしまったのだなと思う。満は弟が単に復讐のために家の乗っ取りを考えているなら止めたいとも言っていた。でも、彼の本心は穂香ですら知らない。一先ず、柊と腹を割って話し合ってみると自宅に戻ると、満と会っていたのがバレて激怒した彼に閉じ込められてしまい・・・。愛が重いヒーローに執着されてしまったヒロインが、彼と共にどうすれば幸せになれるかを模索するというお話です。柊にとって仁和家での5年は宝物で、幸せの象徴が穂香でした。18年の間、彼は努力し続け社長業を任され、恩返しできると懐かしい家に行ってみれば修羅場真っ最中。幸い金で解決できたが彼女達は感謝しきりでどんなことでも力になると言って来た。つい欲が出て穂香を嫁にしたいと口に出て、尤もらしい理由を付けて結婚したは良いが、なかなか過去のことを話せなくて要らぬ誤解を抱かせてしまったと思い悩む柊。しかし、満さんが思ってたよりもいい人で、弟を救いたいし仲良くやっていきたいと思っていました。先ずは両親の真実を知るべきと千堂邸にいる二人に会うことを薦めます。実は当主は婿養子であり、結婚前から柊の母とは恋人同士だったこと、だが、正妻は不憫に思い屋敷の離れに彼女を住まわせ面倒を見ていた。しかし、柊が産まれると満の立場を思い正妻は追い詰められて豹変、彼らを迫害するように。これはなんともまぁ。昔は正妻が妾の世話もするとか当たり前だったようですが、昭和初期ならともかく30年くらい前のことだから平成の世ですからねぇ。一回認めたなら最後まで貫きなさいよ本妻さん。満が明かした本妻のしでかしは本当に陰湿で、そりゃ味覚障害起こすほどのストレスにもなりますわ。お母さんが仁和家に息子を避難させたのも本当に身の危険を感じたんだろうな。どちらを後継にしても角が立つ。なら両方後継にすればよいのではとの穂香の提案は目から鱗で、当主も大賛成。共同で経営させると言うことで発表し、本妻も口出しできない体制になっていくようです。柊は真実を知って憑き物が落ちたのか、兄にも歩み寄るようになるも、穂香への執着は留まるところを知らず。出来ていなかった式を挙げて本編は完。番外編は二人の新婚旅行の様子が描かれてました。前述の通り、この手の話では大抵悪者ポジの異母兄が本当にいい人で後継者問題も上手く纏まって良かったです。それから、柊が子供子供言ってた割に作中では出来てなかったのは意外。まぁ、産まれたら産まれたで穂香が子供にかかりきりになっちゃうからな(苦笑)評価:★★★★☆ちょっと予想外の展開だったように思います。
2024.02.01
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2024年1月刊マーマレード文庫著者:橘柚葉さんある事件に巻き込まれた心愛を助けたのは、クールな警視正だった。その警視正・誠司が初恋の幼馴染みと分かり動揺する心愛だが、息つく間もなく彼と護衛目的の契約結婚をすることに…!?「いい子だから、俺に愛されておけ」-偽装夫婦なのに、過保護な旦那様になった誠司に蕩かされていく心愛。彼に激愛を注がれ、ついに心愛は赤ちゃんを授かり…! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 西花心愛=ごく普通のOL。 親代わりだった祖母を亡くし天涯孤独の身の上となる。 愛住誠司=捜査二課を指揮する警視正。 海道=いくつもの会社や店を経営する実業家。小学生の時に相次いで両親を亡くし、祖母に育てられた心愛。しかし、その祖母も病気で亡くなって彼女は一人ぼっちになってしまった。暫くの間は泣き暮らしていた心愛だったが、何とか立ち直り故郷を離れ都会に出て働き始めた。そんなある日、取引先の社長・海道に声を掛けられた。こんな平社員を気遣ってくれる優しい人だが、さり気ないエスコートに戸惑うばかり。申し訳ないと思いながら居た堪れなくて早々に話を切り上げようと考えていたら、見知らぬ青年が彼氏のフリをしてくれたので離れる良い口実になった。それから数日が経ち、いつものように出社すると事務所内は大騒ぎ。小さな会社だけれどまさかこんなにあっさり倒産するなんて。どうやら長らく自転車操業だったらしい。社長に少々同情しつつ、心愛は途方に暮れた。引っ越しで結構貯金を使ってしまった上、都会は物価高。残りの貯金が底をつく前に早く再就職先を探さねば。が、流石は取引先。早々に倒産の連絡が行ったらしく心愛を心配して海道がやって来た。自分が面倒を見るから心配せずにうちに来ませんかと誘われたが、そこまで世話になる訳には行かない。きっぱりと断りその場は別れると、いつぞやの青年が現れてそのまま戻るのは危ないとカフェに誘われた。彼は海道がいかに危険な人物か語り、絶対に関わらない様釘を刺した。しかし、この人どこか見覚えが。青年は愛住と名乗り、自らの正体を明かした。なんと彼は実家のお隣さんの息子・誠司ではないか。当時、しょっちゅう夫婦喧嘩していた両親のせいで自宅に居難かった彼をよく夕飯に招いて遊んでもらったっけ。今は母方の名字を名乗っているとのこと。道理ですぐピンと来なかったわけだ。あの頃から頭が良かったけど警察官になっただけでなく、キャリア組で警視正と言うから驚きだ。話は戻り、彼が言うには海道と関わると心愛は身内として認識され面倒事に巻き込まれること、暫く接触しないよう誠司の家で匿うと言われてそこまでするほどなのかとショックを受けた。早速彼の暮らすマンションに連れて来られ、海道が本気で心愛を気に入り自分の物にしたがっているのを説明。諦めてくれるよう自分と結婚しようと言われてどう返答すればいいやら。しかし、何だかんだと押し切られ契約結婚という形でならと承諾。後から聞いた話では海道は元極道だそうで、未だにその名は影響力があるらしい。本人はもうその気はないらしいのに、詐欺を主に活動している組が海道をトップに据えようと動いているのだそうだ。心愛が彼の女だと思われて巻き込まれる可能性があるので、結婚に関しては海道とは無関係だとあちらに知らしめる必要性があるからだと。情報量が多くて混乱したものの、誠司との暮らしは当時の楽しかった頃のことを思い出せて幸せだった。でも、祖母の命日でセンチメンタルになった心愛は誠司に迫り、一線を越えてしまった。同情心に付け込んだと彼女は猛省。なかったことにして欲しいと頼んだが、以来ギクシャクと微妙な空気になったのは申し訳ないと思う。しかし、あの日から一ヶ月ほど経ち体調不良となった心愛は自身が妊娠していることに気付き・・・。思い悩む彼女は、彼の元を去り独りで産み育てると覚悟するも、同じころ海道を狙う者たちが行動を開始。警視正の妻が極道の愛人という文面の記事を捏造しそのゲラを送り付けて、心愛を脅します。誠司の部屋を飛び出した彼女は海道に匿われはしたものの、なりふり構わなくなった組の人間たちによって追い詰められるのでした。そこに誠司が現れ、応援もやってきたことでこの一件は解決。海道さん、一連のやり取りで本当に心愛が好きなんだと判って、この人もヒーローその2感が。にしてもこんなに良い人なのにミスリードのせいか最初はストーカーっぽかったのが(^_^;)結局、海道さんはフラれちゃったけど個人的に誠司より好みのタイプです。この騒動後、主役CPは誤解が解けて元鞘に。最後には娘も産まれて本編は完。番外編は誠司目線の妻LOVEのお話でした。評価:★★★★☆
2024.01.28
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2022年3月刊マーマレード文庫著者:砂川雨路さん時は大正。楓は良家の娘でありながら、妾腹のため女中として扱われてきた。ところが突然、エリート陸軍大尉・雪禎との縁談が舞い込む。ただしその条件は、身分を偽り、正式な令嬢として嫁ぐことで!?秘密を抱えて始まった結婚生活だが、過保護に甘やかしてくれる雪禎に、愛しい想いが募る楓。罪悪感を覚えつつも、初めて知る極上の愛に溺れていき…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 縞田楓=実家の都合で妾腹という産まれを隠し、雪禎の元に嫁いだ。 岩津雪禎=楓の夫。帝国陸軍大尉で華族の家柄。柳橋で一番人気だったと言う芸妓の娘・楓は母の死後、実父である薬種問屋の縞田正二郎の屋敷に引き取られた。しかし、父は正妻との子供たちと同等の扱いをする気は更々なかったようで、その日から使用人として働くことに。小柄ながら力持ちで小器用な楓はちゃきちゃきと仕事をこなし、口煩い女中頭からも一目置かれる程。似たような生い立ちと境遇の異母姉・巻とも仲良くやっていた。それから数年経ち、正妻の子供たちは次々と結婚。長男は家業を継ぐとして、三女を嫁がせたら商売に役立つ駒は打ち止めとなり正二郎は焦った。それというのも、老舗という立場に胡坐をかいていたせいで流行りに乗り遅れ、現状かなり厳しい状態らしい。巻は嫌な予感があったのか、兼ねてから付き合っていた男と駆け落ちしてしまい、残った楓は母譲りの美貌から使えると思ったのだろう。ある日、父から華族・岩津子爵家の次男に嫁げと命じられて面食らっていた。しかも、血筋を貴ぶ華族の家に行くのだから死んでも妾腹であることは明かすなと無理難題押し付けられて戸惑うばかり。祝言迄の2カ月余りで付け焼刃で、上流階級のお嬢様が学ぶべきマナーや習い事を叩きこまれ、疲労困憊のまま当日を迎えた。初めて会った夫・雪禎は今年30歳で陸軍大尉というエリートだった。背も高くハンサムで思わず見惚れる程。そして優しく穏やかな人でもあった。疲労で初夜から爆睡した楓を責めるでもなく、何故か嫁いでひと月ほど経っても二人は清い関係のまま。岩津家の別邸で一人暮らしだったという雪禎の家で暮らし始めてから、嫁としてせめて家事くらいはと、女中仕事の経験を活かし掃除洗濯炊事に励む楓。だが、内心では全く手を出されないのは女中がお嬢様と偽っているとバレたから?と戦々恐々。通いの女中のスエからは奥様が働き者過ぎてやることが全く無くて困ると冗談交じりに言われ、少々やり過ぎたかと反省もした。これでは体が弱く碌に学校も行っていない深層のお嬢様には見えないではないか。かと言って漢字の類も読めないので暇ならと夫から読書を薦められて冷や汗が。父もどうせ叩き込むなら字も教えるよう家庭教師に頼んで欲しかった。それでも、絶対にお嬢様はこんなことをしないと自覚しながらも許可を得て庭に畑を作ったり、意外にも雪禎もノリノリで手伝ってくれたりと楽しい日々が続いた。しかし、読み書きできないのは致命的、意を決して教材を頼み文字の勉強をしている彼女を雪禎とスエは見守っていてこれはもう絶対にバレてるなと覚悟を決めた。でも、夫から切り出されるより早く岩津家の方にバレてしまったらしく、雪禎と二人本家に呼び出された。舅と義兄は相当憤慨していて正二郎も同じく呼び出されたのか、かなりの叱責を食らった。離縁しろと命じられたが雪禎は応じず、寧ろこんな理由で追い出す方が体裁が悪いだろうと尤もらしい理由を述べて聞く耳を持たなかった。どうやら、正二郎と同じく岩津家も昔ほどの勢いは無く、双方が援助してもらおうと考えての縁談だったようだ。華族と言う立場から一方的に正二郎を責めていた舅も当てが外れて内心では焦っているはずと、面白そうに笑う雪禎は長らく舅と義兄とは不仲なのだと語った。離縁するつもりはないし、手を出さなかったのはゆっくり関係を深めていくつもりだったからだとも告げられると、女中だと蔑まれていたわけではないと判りホッとした。スエやその息子で雪禎の乳兄弟・作典とも交流を深め、異母姉の巻とも再会した楓は、幸せな毎日を送っていた。そんなある日、家に一人の書生が訪ねて来て、楓にある人物と会って欲しいと頼んだ。聞けば相手は国立銀行の前頭取の鎧戸氏と聞いて雪禎も困惑。書生の話では、鎧戸氏は亡き母を贔屓にしていた上客だったらしく・・・。ここにきて、父とは別に母の過去を知る人物が登場。鎧戸氏は楓の母・まつ葉にそれはそれは入れ込んでいたが、母に選ばれたのは正二郎。氏は子供まで産んだ彼女に怒り、援助も止めてしまった。その後、まつ葉は病を患って早逝し、娘は縞田の家で女中扱いされていたと聞き大層心を痛めたのだとか。病気になったのも自分が援助を打ち切ったせいと嘆き、楓にも良ければ援助したいとの申し出に、もう自分は嫁いで幸せにやってるのでと辞退します。まぁ、これで義理は果たしたと楓は思っていましたが、何を思ったのか鎧戸氏は自分の後妻に迎えたいと話しているそうで、岩津家は大喜び。女中風情が次男の嫁に相応しくないからと離縁させる気満々の義兄の態度にどうも違和感を感じていた、彼女は素直になれない義兄の本心を知ります。その後、雪禎と義兄の間に争いが起きかけるも、鎧戸がバカなことを言ってしまったと後妻の話を撤回したことにより終了。この騒動によって、少しずつでも兄弟仲が改善して行くのかなと安心する楓と、そんな彼女を溺愛する雪禎。二人の仲睦まじい様子が描かれて本編は完。巻末のおまけは雪禎目線の楓とのお誕生日デートのお話でした。この作家さんにしては珍しくコメディっぽい内容なのと、モヤモヤ展開がほぼ無しなのは偏にヒロインの性格かな。前向きで心身共に頑丈なこの子は周囲を明るくし、仕事ぶりも優秀なので縞田の家は貴重な働き手を無くしてさぞ大変でしょうね。まあこの子はこんな所で燻ってていい子じゃないけど。それに、舅と正二郎、その妻を除くと悪意ある人はゼロと言っていいのも大きい。もうねよくある横恋慕展開とか読んでて本当に萎えるんですよ。物語の展開上、その手の存在も必要なのは判るんだけど、そういう面では安心して読めました。とは言っても歴史上この後戦争やら震災やらで色々な困難に巻き込まれそうなんだよなぁ。評価:★★★★★
2024.01.19
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2022年3月刊マーマレード文庫著者:真彩-mahya-さん豪雨災害で航空自衛隊に救助された亜美は、友達に誘われた航空祭で、助けてくれた自衛官・健心と運命的な再会を果たす。命の危険がある職業の人とは付き合わないと決めていたけれど、親友の息子を引き取り男手一つで育てている健心の誠実さと、彼の猛アプローチにときめきを隠せない亜美。さらに、迸るほどの愛を一身に受け、抗うことができなくて!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 水原亜美=こども園に勤める保育士。 豪雨災害で被災した時に秋月に救助された過去を持つ。 秋月健心=航空自衛隊の一等空尉。 親友の忘れ形見である悠心を引き取り育てている。 秋月悠心=両親が亡くなり剣心の養子になった二歳の男の子。こども園で働く亜美は、6年前故郷で豪雨災害で被災し消防士だった父を亡くした。亜美自身も押し寄せる洪水によって避難もままならない状況だったのだが、ベランダに必死にしがみ付いていた彼女は自衛隊によって救助され生き延びることが出来た。母も既に鬼籍に入っていたので、天涯孤独になった彼女は母方の叔母が親代わりをしてくれて、短大にも行かせてもらった。叔母一家には感謝してもしきれない。そして、父が職務中に亡くなったこともあり、亜美はそれ以来命の危険がある職業が苦手だ。親しくなった人が仕事が原因で亡くなったらと思うと、恋愛対象からは除外してしまう傾向にあるのも無理からぬことだった。そんなある日、短大時代の友人で同じく保育士の萌にどうしてもと誘われ、自衛隊基地で開催されるという航空祭に付き合わされた亜美は、迷子になっていた一人の男の子を保護した。職業柄放っておけず一先ず迷子の預かり場所にと思っていたが、すぐに父親らしい青年が現れ無事に引き渡すことができてホッとした。青年は秋月健心と名乗り、航空自衛隊員だという。道案内していたら、うっかり息子を見失ってしまったのだと亜美に平謝りしていた。しかし、彼女の顔を見て秋月は何かに気付いたようで自分と会ったことは無いか?と尋ねた。言われて見ればと、よくよく見るとあの時自分を救助してくれた自衛隊員ではないか。思いがけない偶然に盛り上がったが、この話には続きがあって亜美の父の遺体を掘り出してくれたのも彼らで、遺体安置場で父の遺体と対面し泣き崩れる亜美の姿を見てずっと気になっていたらしい。今は保育士をしていると聞いて胸を撫でおろしているのを見ると、良い人なんだろうなと思う。これも何かの縁だと食事に誘われたが連れがいるし、奥さんに悪いと辞退すると、なんと独身とのこと。この男の子は事情があって引き取り育てているそうだが、独身男性に子育てはさぞ苦労も多い事だろう。亜美が保育士と聞いてアドバイスしてもらいたいのだという。その言葉に命の恩人の頼みだしと快諾。連絡先を交換したのだが、後に彼が戦闘機のパイロットと聞いて少し後悔している。母親が手を貸してくれているとは言え、やはり子育てはかなり厳しいようで、色々切羽詰まっていたのだと話す秋月は、あの後すぐに連絡を入れて来た。複雑な心境ではあったが約束なので、子育ての相談に乗り好き嫌いについての対処法もアドバイスした。悠心を引き取った理由も、自分と似たような境遇の亜美には刺さり、正直避けたい職種の人だと判っていても、秋月の誘いを断れずにいた。そして、この再会に運命を感じたのか、彼から交際を申し込まれた亜美は、少し葛藤もしたけれどいまとなってはかなり絆されており、付き合いを承諾。しかも秋月の押しの強さに負けて同居まですることに。かといって緊急出動もあるからその間の悠心のことも気になっていたので、実際に面倒を見た方が気は楽。悠心も随分懐いてくれているし、子供の扱いも慣れているからと高を括っていたのだが、まだ籍も入れてないのに連れ子と暮らしているような状態は思っていたよりトレスだった。そんな状況下、秋月が任務で長期間留守することになり・・・。任務なのでいつ帰るとか何処に行くなどは守秘義務で話せないから、待てど暮らせど何の連絡もないので亜美はイライラと共に心配でしょうがない。あの日の父も救助活動に向かって結局帰ってこなかったという経験があるだけに不安になるのも当然で、仕方ないとは言え、これはキツイわと。ミリオタの萌から説明されて、連絡できないのは理解できても亜美はトラウマを刺激されまくりになっていました。結局、一か月後に彼は無事に帰って来たけれど、亜美の機嫌が悪くなっても当たり前。この辺のやり取りは読んでる方もそうなる。その後、相手が自衛隊員と聞いた叔母に結婚を反対されたり、亜美が土砂災害に巻き込まれたりと色々起こるものの、困難を経たおかげで二人の絆も深まって、秋月からプロポーズされて終わっています。被災して父も亡くしたヒロインが運命の出会いでトラウマを克服していくと言う、この作家さんでは珍しくテーマ自体はかなりシリアスな内容でした。そのせいか、コメディ部分はほとんど無くて、いつものようにヒロインによる独特な面白モノローグは鳴りを潜めてた印象です。実はこういうお話だと思っておらず、世間的にタイムリーだったことからかなり刺さるストーリーでした。評価:★★★★★
2024.01.09
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2023年12月刊マーマレード文庫著者:小日向江麻さんある日事故で記憶を失った礼乃。名前や年齢も忘れた彼女は、夫だという大手百貨店の専務・透哉に過保護に見舞われ、どう接すればいいか思い悩む。さらに自分たちには3歳の娘がいると知らされ…!戸惑うも、礼乃は娘に寂しい思いをさせまいと、母として愛情を注ぐと心に決める。そんな彼女と娘に寄り添う透哉は、礼乃の不安も熱情で蕩かしていきー。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 緑川礼乃=透哉との結婚4年目に事故に遭い、6年分の記憶を失くしてしまう。 緑川透哉=大手百貨店の後継で専務。礼乃と政略結婚した。 緑川礼佳=透哉と礼乃の娘。 緑川璃子=透哉の8歳下の妹。 国分瑛司=璃子の大学の同期で彼氏。緑川礼乃はある日、自損事故を起こし救急搬送された。目覚めた彼女は29年の人生すべての記憶を失くしており、ずっと付き添ってくれていた夫の透哉のことすら覚えていなかった。彼の話によれば2週間も意識不明だったらしい。その後医師の診察を受け、結果は逆行性健忘とのこと。検査結果にも異状は無いので心因性だと診断されたが、見舞いに訪れた両親のことすら覚えていないので礼乃は不安に駆られた。特に夫だと言う透哉への不信感はすさまじく、毎日見舞いに訪れる彼に悪いと思いつつも合うのを拒んでいた。しかし、拒否し続けるのも限界がある。記憶喪失が心因性なら怪我が治れば退院しなければならないのだから。当初は母の薦めで実家で静養しようと思ったのだが、ここは透哉が譲らず今まで通りの生活をした方が良い刺激になるだろうと夫婦が暮らしていたマンションに帰ることに。そして、急に会ったら驚くと思うからと退院前に聞いた話では二人の間には3歳になる娘がいるらしい。なんだかんだとうすぼんやりとではあったけど、23歳くらいまでの記憶は戻ってきており、その頃の透哉のことも思い出してはいた。大学の同期であった彼を礼乃は毛嫌いしており、透哉も負けじと憎まれ口ばかり。決して良好な関係ではなかったはず。その彼と自分が結婚し、娘まで産まれていたと言うのだから、内心では驚愕していた。母によれば結婚してからは随分と仲睦まじかったと言うし、記憶の無い6年の間、二人にどういう心境の変化があったのやら。自宅に着くと娘の礼佳が透哉の妹・璃子とその彼氏瑛司にお守りされて待っていて、母親の退院を喜んでいた。可愛い子だとは思うが、やっぱりこの子のこともまるで記憶に無い。今の自分は23歳のままなので余計に感慨が無いのかもしれないけれど、お腹を痛めて産んだ子を普通忘れるもの?しかし、礼乃を実の姉のように慕ってくれていた璃子のことは、何となくだが話しているうちに思い出して来た。今回のことで娘の面倒を率先して見てくれたらしく後日改めて礼をするとして、気を利かせた彼女達が帰ってしまうとと家族だけになって何とも気まずい。暫く静養となるので、遊びたがる礼佳を透哉が引き受け夕飯まで作ってくれてビックリ。大学時代は芋の皮むきすらできなかったのに。正直、一番仲が悪かった時しか思い出せていなかったのもあり、正直言えば今の礼乃にとって彼の印象は悪かった。つい、あの時のことをからかうと、礼乃が料理ができる男性と結婚したいと言ってたから一念発起して必死に学んだんだとサラリと言われて思わず赤面。もしかして、彼は憎まれ口をたたきながらも自分を想ってくれてたんだろうか。お互い大手百貨店の経営者を親に持ち、ライバル同士だったのも犬猿の仲になった原因かもしれないが、そういえば何かと突っかかってたのは礼乃の方であった。後に両家は共存の道を選び、経営統合した。そして、二人は政略結婚。その後は夫の秘書として働いていたらしい。娘も産まれて家族仲も良かったと後日璃子からも聞いたが、今イチピンと来ない。でもよくよく思えば大学時代は礼乃が意地を張っていただけだと判り、透哉の心情を知った今はドキドキして落ち着かない。しかし、礼佳の方は母親が別人になってしまったような認識らしく、懐いてくれない。透哉がいないと機嫌が悪く癇癪を起して母子は衝突となったが、泣きじゃくる娘を思わず抱きしめた際に漸く彼女は礼佳が産まれた日のことを思い出したのだった。この一件から礼佳も機嫌を直し、透哉との仲も徐々にだが元に戻りつつある。璃子が娘のお守りを引き受けてくれて彼とデートしてからは、記憶は全て取り戻せずとも透哉への想いは変わっていなかったと再認識。彼もゆっくり思い出して行けばいいと言っているし焦らず行こうと考えていた。だが、その頃から礼乃のスマホに怪しいメッセージが届くように。差出人は「XXX」内容は、彼女の不貞を責める文面で・・・。まさか、自分はこんなに幸せな家庭がありながら誰かと不倫していたの?6年分の記憶が無いだけに、そんなことしてないとも言い切れず、礼乃は追い詰められ窮地に。後にお相手が璃子の彼氏である瑛司だと判明し、璃子にもバレて大問題に発展します。しかし、透哉は礼乃の性格上、不倫なんて有り得ないとバッサリ。そしてあるものを証拠として提出したことで形勢は逆転します。まあ、結論を言うと、この騒動を引き起こしたのは瑛司でした。彼は逆玉を狙っていたものの女癖の悪さがバレて璃子が礼乃に相談。礼乃は興信所を使い瑛司の素行を調べどういうことか追及するはずだったが、切羽詰まった瑛司に運転中ハンズフリーでの電話で家族に害をなすと脅され、驚いた彼女は事故を起こしたということでした。こいつ、クズ過ぎる。璃子も薄々気付いてたから相談してたのもあり、興信所にもう一度報告書をコピーしてもらえると追い込むとあっさり白状。いつも思うんだけど逆玉狙うな一先ず身綺麗にしとけばいいのに、どうして女遊びを辞めないんでしょうね。一種の病気だな。今は結婚式前に婚約者の身上調査とかする場合も多いらしいし、バレないと思ってるのが片腹痛い。とはいえ、逆玉なんて他力本願な考えだからやらかすのか。おまけに、礼乃との不倫をでっちあげて全部彼女に押し付けようと目論んでたようだから、当然透哉たちからの怒りを買い、相応の報いを受けることに。この件で刺激されたのか礼乃は記憶を全て取り戻し、半年後には第二子を授かってハッピーエンドで終わっています。礼乃の記憶喪失中は誤解もあって読んでて結構モヤモヤしてましたが、終盤の瑛司のクズっぷりがそれを上回り、ヘイト部分を全て引き受けて行きました。その弊害か、明らかにスパダリなのにヒーローの透哉の影が今イチ薄かった印象です。評価:★★★★☆内容的にじれじれ度は高め。
2024.01.04
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2023年12月刊マーマレード文庫著者:西篠六花さん令嬢の由乃は、実家の没落で会社勤めをすることに。上司となった隼人に厳しく指導されるが、誠実な彼にやがて惹かれていき…。ある事情から契約関係を提案した由乃は、隼人を手助けする代わりに彼から恋愛指南を受けることになる。ところがー「呆れるほど君に嵌まってる」クールな彼に予想外の溺愛で蕩かされると、隅々まで甘く暴かれて…! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 鷺沢由乃=元社長令嬢。父が贈賄罪で逮捕されたことから一家離散となり、とあ る縁から百貨店の外商として働くことになった。 久能隼人=老舗百貨店の御曹司で由乃の上司。 萩原陸斗=由乃の元婚約者。大手ゼネコン会社社長の一人娘・由乃は生粋のお嬢様。今年24歳の彼女は半年後には婚約者の萩原陸斗との結婚が控えていたのだが、そんな由乃の生活は父が贈賄罪で逮捕されてから生活は一変。有罪判決から数日後父は心臓発作で亡くなり、会社の金を私的流用していたことからその賠償として屋敷が差し押さえられたので、お嬢様育ちの母と二人途方に暮れた。母は伯父を頼り実家に帰ることになり、一緒に行こうと誘われたけれど、この件で婚約破棄されたのもあって自由に生きてみたい気持ちが湧き上がり、自立を決意。が、碌に家事も出来ないので屋敷の使用人を務めていた埜口が、暫くの間同居人として付いてくれることに。その間、みっちり家事や生活のあれこれを仕込んでくれるそうだ。そして、就職先は意外な所から声を掛けられた。父の存命中、鷺沢家が贔屓にしていた老舗百貨店の外商担当の友重から、きっと今までの生活が役に立つと思うからこの仕事をしてみないかと。確かに、今まで贅沢品に囲まれて育ったので多少の目利きはあると自負している。立ち居振る舞いも厳しく躾けられたし、就労経験の無い自分にもできる仕事はあるのだろうかと不安だった。熟考の末、友重の誘いに乗った由乃は然るべき入社試験を受けて合格。晴れて外商部で働くことに。教育係となった上司の久能は当初由乃のことを縁故採用で結婚までの腰掛で来たと思っていた。とげとげしくはないが明らかに他の者と態度が違うので嫌われてるのが判ると流石にムっと来て、由乃は彼に入社理由を説明した。すると、やはり誤解があったようですぐに非を認め謝罪をしてくれて以降は良好な関係を保てている。やはり嫌われているよりは全然良い。そして、この頃から由乃は久能が気になり始めていた。何せただ漠然に親の決めた人と結婚するものと思って生きて来たので恋愛経験はゼロ。ここに来て久能のようにハンサムで優秀な男性と仕事上とはいえ知り合ってしまったのだから。とはいえ、根は真面目なので仕事は必死にこなし、久能に褒められる回数も増えて来た。そんなある日、よく頑張っているからと久能から飲みに誘われた由乃は、後継者である彼が何故経営ではなく外商部にいるのかその理由を尋ねた。すると、ある絵画を探すためとのこと。彼の曽祖父は有名な画家で、無名時代に描いた新婚時の曾祖母の絵「芍薬と女」が不正に持ち出された挙句に売り払われ以降行方不明なのだそうだ。その絵を高齢でしかもガンを患う曾祖母が死ぬ前に一目でいいからもう一度見たいと切望しており、何とか探してやりたいという。外商なら富裕層の家にも入れるし、曾祖父の絵画なら誰しも目立つ場所に飾っているはず。だがまだ発見できず。久能からこういう絵だと写真を見せてもらうとどこかで見たような。そう溢すと久能は食いつき何処で?と聞かれるも思い出せない。でも、見たのはここ1年以内なのは確か。由乃は絵の捜索に協力すると申し出て、過去のスケジュール帳を参考にパーティー等で招かれた家の名前をリストアップ。案の定、全員久能百貨店のお得意様ではなく一先ず一軒一軒営業を掛けてみることに。糸口が見つかったと喜ぶ久能はお礼をしたいと由乃になにか欲しいものでもあれば、と尋ねられ思わず恋愛指南をして欲しいとお願いしてしまった。さすがに逡巡する彼に失敗したかと思ったが、せめてフリでも側にいたいと願う由乃は何とかOKを貰えて喜んだ。埜口にはそんな回りくどい事しなくても、交際を申し込んだ方が早かったのではと突っ込まれたが、テンパってたんだからしょうがない。久能はあれからデートや食事に誘ってくれたり、初めての経験に心躍ったが段々虚しくなってきた。せめて絵が見つかるよう最大限努力しなければ。一方、久能は由乃のスレていない純朴さや一生懸命な所に好感を覚え段々彼女に惹かれていた。由乃と離れ難くなり、ついに彼から正式に交際を申し込んだ。そんな最中、リストアップの中に一時期絵を持っていた人物がおり、惜しくも最近売却されていたものの現在の所有者は判った。由乃の記憶力に感謝したが、問題は持ち主が彼女の元婚約者であった萩原陸斗の父で久能は内心複雑。彼に恋愛感情は持ち合わせていなかったとは聞いているが、由乃は先ず陸斗の方にコンタクトを取って譲って彼の父に交渉できるようしてくれるつもりのようで嫌な予感がする。久能の懸念通り、陸斗は由乃に無理難題を吹っ掛けて来て・・・。この元婚約者、性格が悪くて由乃が婚約破棄から数か月で久能という恋人ができたのが気に入らず、絵を譲るのはお前が久能と別れ仕事を辞めること、自分の愛人になれと迫ります。当然、由乃は断るも、久能が自分に内緒で元カノから相談を受けていたのを誤解し、別れを決意。仕事も辞めるのでこれで譲歩してくれないかと陸斗に掛け合いますが彼は取り合わない。なら土下座しろよと言い出したので、こいつ腹立つわーーー。久能の方は、由乃の態度が気になり萩原邸へ乗り込み、土下座させられてる彼女を見て激怒。この一件は萩原氏にもバレ、由乃にした仕打ちで陸斗は相応の報いを受けました。まぁ、こんな奴に仕事任せたらいずれ大問題起こしそうだから出世コースを外されても仕方なし。絵の方は譲れないけど見せるのは構わないと言ってくれて無事曾祖母ちゃんの望みは叶えられたのでした。陸斗も父親に絵について頼まれてる事話してなかったらしいからホント、質が悪い。でそもそも最初から父親の方に凸っておけば(^_^;)騒動も解決し、久能の浮気疑惑も晴れ、二人は同棲。彼からのプロポーズされて終わっています。外商とか庶民にはあまり縁が無いので、へぇーと思うことが度々。あと、絵を探してる云々で絶対元婚約者が関わって来ると思ったw評価:★★★★☆
2023.12.27
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2023年11月刊マーマレード文庫著者:木登さん神様を崇める「婚姻の儀」で花嫁役を務めるため、田舎へ帰郷した環季。神社の社で一晩過ごすだけのはずが、生まれつきある足首の痣が痛み始め…!?いつの間にか気を失っていた彼女を出迎えたのは、百花繚乱の世界と麗しい青年・雷蔵だった。花嫁役は神の住まうこの地でもてなされ、元の世界に帰る頃には夢だと錯覚すると教えられた環季は、ひと時の逢瀬と知りながら、雷の神様である彼に次第に惹かれていく。ところがある時、雷蔵の花嫁は自分ではないと知らされ…!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 灰塚環季=儀式に参加するために帰郷したが、迎えに来た雷蔵によって「狭間」 に連れていかれた。生まれつき足首に竜胆の痣がある。 犬飼雷蔵=「狭間」のまとめ役を務める雷神。 レン=空から降って来た赤子。環季と雷蔵に育てられる。 隼斗=雷蔵の育ての親の風神。 たまき=隼斗の番だった人間の娘。100年に一度執り行われる「婚姻の儀」の花嫁役を務めるため、数年ぶりに帰郷した環季。過疎化が進み、すっかり寂れてしまったが、綿々と受け継がれているこの儀式のために皆張り切って準備していた。東京行きを薦めてくれたたった一人の身内の祖母も去年亡くなって、切なくもなるがしっかり役目を果たそうと思う。この「婚姻の儀」は社で独身女性が白無垢姿で一人待ち、迎えに来た神と仮の結婚をするというもの。とはいえ、儀式が始まった数百年前ならいざ知らず、神が迎えに来ることなどないので、花嫁役の娘が一人で夜明かしすれば完了だ。白無垢は動きにくいし徹夜をしなければならないけれど一人の間は自由にして良いそうなので聊か気は楽だった。しかし、順調に進んでいると思ったのも束の間、突然の嵐で社の一部は半壊。この格好では脱出も出来ず難を逃れた隅っこで蹲っていた環季の元に、光の珠が現れそこで彼女の意識はブラックアウト。目が覚めると一面の花畑で、ポメラニアンに似ているが角のある小さな獣と、見覚えのない青年がいた。彼は雷神で環季の相手だと言う。儀式の日取りもきちんと把握していたつもりだったが、何せ百年に一度のことなので忙しくてつい失念して迎えに行くのが遅くなったと苦笑する青年はまさか本当に神様?彼は犬飼雷蔵と名乗り、今いる場所はこの世とあの世の狭間だと教えてくれた。花嫁はこの狭間で一夜限りのもてなしを受け、その後丁重に送り返されるのだが、ここでの記憶は現世に戻ると失われるとのこと。歴代の花嫁たちがただ徹夜するだけの儀式と言っていたのもそういうわけか。では自分もそのように?と尋ねると、環季の場合、少々不運が重なって現世に送る際に必要な花がまだ咲いていない状況らしく再びそれが咲くまで帰ることはできないのだそうだ。なので、幾日か留まってもらうと告げられ、現在諸事情で無職の彼女は承諾。彼の屋敷で雷蔵の花嫁としてもてなされることに。滞在している間、妖やら神の従属など様々な者たちと出会い、交流をした環季。でもさすがに夜空から赤子が降って来るとは思わなかった。その子は雷蔵の見立てでは当初妖と思われていたが、成長して現れた特徴からどうやら神の子だと判った。赤子はレンと名付けられ、環季に懐いた。成長速度は人間とは違い、数日もすると3歳くらいの大きさになったので、大人の姿になるのも早いだろう。自分が狭間にいる間に成長し切ってくれれば良いのだけど、と思う環季はせめて手が離れるまで側にいてやりたかった。そんな日々が続き、レンを共に育てていたせいか彼女は雷蔵に心惹かれる様に。神には番となる存在がいるそうで、その者は体に特徴的な痣が浮かぶらしい。環季にも竜胆の花に似た痣が足首に有り、本来なら相手となる神が存在するはず。それが雷蔵ならどんなにいいか。しかし、彼の番なら浮かぶのは巴紋なのだとか。おまけに竜胆の紋の番の神に雷蔵は心当たりがあるようだった。少し前から夢に見る雷蔵と似た雰囲気を持つ青年。もしやその人が自分の番?そして、その頃から環季は身体を壊し寝たきりの生活が続いた。雷蔵は彼女の番である神・隼斗が昔禁忌を犯し眠り続けているせいではと思案。彼女が隼斗の番であった「たまき」の生まれ変わりなら彼も目覚めるはず。予想通り、番の気配から隼斗は目覚め、環季に執着。本来なら彼女は隼斗の神気で良くなるはずなのだが、一向に良くならない。彼女は「たまき」の転生ではないのか。隼斗からの束縛に恐怖を感じていた環季は、ふと自分の足首を見ると痣の形が巴紋に変わっていて・・・。要は環季の番は雷蔵ということなんですけど、じゃあ最初からあった竜胆の痣は?実は彼女は元々双子で、母親のお腹にいた時かなりの初期段階で片方の鼓動が止まり彼女に吸収されていたのでした。その子が「たまき」の生まれ変わりで、取り込んで産まれた環季にも竜胆の痣が出たからくりなんですが隼斗との因縁も色々複雑なので実際読んでもらった方が判り易いかも。この後当然環季の取り合いが始まり、互いに一歩も引かず双方深手を負うも、結局は「たまき」の魂の意を汲む形で隼斗の方が身を引き、禁忌を犯した代償で存在が消えます。結びつきの深い二人ならきっと転生できると言われており、本当にそうなってたから、良かったねぇと。一方、環季の方は雷蔵の番と判り、同じだけの寿命を授かり共に生きると決意。その頃にはレンも大きくなって恋したりで綺麗に終わった感もあったのだけど、エピローグで語られていたラストは希望がありつつちょっと切なさも含まれててじんわり。かなりファンタジー色が濃いながらちゃんとロマンス要素もあります。キャラも皆良いですし、あまりTL小説を読みなれない方にもおススメ。評価:★★★★★
2023.12.21
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2023年11月刊マーマレード文庫著者:若菜モモさん香港の空港でグランドスタッフとして働く心音は、ある日父の会社が経営難に陥っていると聞かされる。政略結婚をするしかないと揺れる彼女は、相手から無理やり関係を迫られるが、パイロットの斎穏寺に救われ難を逃れる。お礼も兼ねて斎穏寺に香港を案内するうち、急速に彼に惹かれていく心音。一夜限りの思い出に、斎穏寺に身を委ねるけれど…!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 清水心音=格安航空会社の社長令嬢。 経営難の会社の為に見合いをすることに。 斎穏寺新=大手航空会社の御曹司。自社でパイロットをしている。 星崎博史=心音の見合い相手。父が経営している格安航空会社の香港支社でGSとして働く心音。無理難題を言う客に内心辟易としながらも対応していた彼女は一人の青年に助け舟を出されて事なきを得た。が、青年が去り際にサラリと言った言葉は悔しいながらも的を得ていて、心音は憤慨。助けてくれたのは感謝するけど何かムカつく。その日、同じくGSをしている従姉妹と先輩を伴い憂さ晴らしをしていた心音は父からの電話とその内容に衝撃を受けた。なんと会社が経営難で二進も三進も行かない状況なのだと言う。不幸中の幸いか融資してくれる人物が現れたのだが、条件は心音とその人物の子息との結婚。家族を大事にしている父にとっては苦渋の決断なのは明らかで、倒産すれば社員にも迷惑がかかる。そう思うと責めることもできない。もしかしたら良い人かもしれないと彼女は見合いを承諾。そういえば数日前、従姉妹の付き合いで診てもらった良く当たると評判の占い師に、あなたはすぐに結婚すると言われたっけ。恋人もいないのにとその時は半信半疑だったが、結局当たってたってことか。そして見合い当日。釣書を見るにオタクっぽい人だなと思っていたら実際にオタクで年齢の割に言動がかなり痛々しい。人の趣味にとやかく言うつもりもないし偏見は無いもののこの性格に付き合うのは正直キツイ。結婚して上手くやっていけるとは到底思えなかった。父には申し訳ないが断りを入れてもらおう。早々に引き上げようとしたら星崎は豹変。ホテルの部屋に引っ張り込まれそうになった挙句会社がどうなってもいいのかと脅して来た。それでも必死に抵抗していると見かねた男性が助けてくれた。見るとあの親切だけど失礼なあの青年。星崎は彼から警察を呼ぶと脅されると逃げ去り、心音が素直に礼を言うと青年は落ち着くまで側にいてくれた。彼は斎穏寺新と名乗り、バーで数杯付き合いその場は別れた。父に事情を話すとさすがに相手に対して怒っていたのだが、貴重な融資先と言うことで断り切れなかったらしい。母から申し訳ないけどもう一度星崎に会ってくれと頼まれたものの、生理的嫌悪感もあって二度と顔を合わせたくない。返事を先延ばしにしていると心音は新と再会。彼からデートに誘われた。気分転換もしたかったのでOKし、楽しいひと時を過ごした彼女は、意に染まぬ結婚を考えたくなくて新を誘い一晩を共にした。その後、父が心労で体調を崩し、帰国することになった心音。しかし一か月後に妊娠が発覚。当然父親は新なのだけど、よりにもよって星崎と会う前日に判るなんて。でもどうしても産みたい気持ちが勝って、星崎に自分が妊娠していること、結婚は出来ないけど融資はしてもらえないかと無理を承知で頼むと星崎は激怒。土下座まで要求されて葛藤しているとその場に新が現れて・・・。もうこの見合い相手がキモいの一言。オタクなのは別にいいんですよ、問題はその性格の悪さ。心音にしてみれば新に出会ってと彼の子を妊娠してしまったのもあって星崎との結婚なんて考えられない。でも父が倒れ会社は倒産の危機。どうしようもなくなった彼女を救ったのは新でした。元々彼は心音に一目惚れしてて、告白のチャンスを伺っていたそう。最初にコンタクトを取った時はつい苦言を呈してしまったけれど、やっぱり印象通りの人だったとデートに誘ったと言う経緯。しかし、彼女の父の会社の危機を知った新は、父である総帥に相談。傘下企業に迎え入れることで倒産危機を救うと、心音と結婚したい旨を清水家に打診。星崎に身売りする必要は無くなったのでした。これもある意味政略結婚な体になったものの、お互い両想いの彼らはラブラブ。パイロットとして誇りを持っている彼の心情を知り、新を支えようと決意する心音だったけど、実は実家の航空会社を救うために新がパイロットを辞めること、経営に携わる約束をしたと知って落ち込みます。本来、社長業を継ぐはずだった専務の妻に恨み言まで言われて一人思い悩む彼女も、新の本音を聞いて思い直します。専務の妻も気持ちは判れど心音を恨むのはお門違いですよね。決断したのは新たなんだし、不満はそっちに言いなよと。そんな騒動もあったりしつつ、義実家との関係も良くて後に彼女は長女を出産。エピローグではさらに家族が増えて賑やかながら幸せそうな斎穏寺家の様子が描かれて終わっています。モヤモヤ度は少なめなので、あまりしんどい話は読みたくないな、な心境時におススメ。評価:★★★★☆
2023.11.28
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2019年2月刊マーマレード文庫著者:栢野すばるさん婚約破棄をきっかけに家を出て、海運会社で働く七倉綾。ある日、突然の人事異動により常務取締役の秘書に任命される。そこで常務として紹介されたのは、かつての婚約者・黒崎湊だった!幸せだった当時と変わらぬ優しさで接してくる湊に、綾は忘れようとしていた恋心が揺れ動く。お互いの言葉の誤解を解くことで、止まった二人の時間が再び動き出し…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 七倉綾=良家のお嬢様。行き違いから湊との婚約を破棄した。 黒崎湊=大企業の御曹司。綾の元婚約者。良家のお嬢様である綾には大好きな婚約者がいた。だが、政略結婚した兄が泥沼離婚をしたことと、最近、婚約者の態度に違和感を感じて、このまま結婚していいのかと不安に思ってしまった。婚約者に悪気はなく、仕事で疲れているだけかも、そう思ってはみたものの、あからさまに余所余所しくなってしまった彼に失望した綾は自分から婚約破棄を申し出たのだった。あちらも相当の家だったのでかなり揉めはしたが、これからは家を頼らず生きていくからと無理矢理我儘を通した。それから家を出て綾は就職。会社の寮に住みながら質素に暮らしていた。だが、それから数か月後、綾の働く会社が吸収合併されることになり、親会社が元婚約者の黒崎グループと知って驚愕。大規模な人事異動も行われて、英語が得意だからと綾は秘書課に配属されることに。彼女は常務の担当となったのだが、寄りにも寄ってその常務が元婚約者の湊だなんて。気不味い再会ではあったが公私混同せずに仕事をこなしていた二人。それでも、湊は綾に未練たらたらで、プライベートな時間になるとなんとか話をしたいと頼み込んで来た。まぁ、婚約破棄を切り出したのも突然だったし、彼にも納得いかないこともあったろうと、会うことを約束。彼は、綾との結婚を楽しみにしていたこと、そして余所余所しくしていた理由を語った。大企業の御曹司ともなると、婚約者とデートしてるだけでも浮ついてるだのふしだらだの、妙な言いがかりをつけられることも少なくないらしい。彼の従兄弟は恋愛結婚だったそうだが、当時もその手のクレームが多く、従兄弟の恋人もかなり参っていたのだと言う。湊の時もその時ほどではないものの、綾との月2回のディナーにすら文句を付けられていたことから、彼女に飛び火しないよう素っ気ない態度のふりをしていたんだとか。そういえば、綾の姉の陽子も才色兼備ながら心無い誹謗中傷されていて、悪質なものは父が手を打っていたと聞く。正直、そんな事情があったなら話してほしかったが、勝手に嫌われていると思い込んで距離を置こうとしていたのは自分だ。綾は当時兄の離婚の件と重なり疑心暗鬼になっていたことを打ち明けると湊とやり直すことを決めた。やっぱり、彼と結婚したいと両家に報告した時はさすがに厳しく怒られたが、末娘には甘い父が折れて黒崎家に頭を下げてくれたことで無事に認められることになった。後に聞いた話では、連絡手段を絶たれた湊が綾に会う為に、あの会社の常務になったのだと聞かされたら、呆れつつもやっぱり嬉しい。常務と秘書と言う関係上、大っぴらには出来ない仲ではあったものの、最初の婚約時代よりも言いたいことを言い合えて交際も順調。そんなある日、社内メールて綾を貶める内容のメールが配信され・・・。世の中本当にどうでもいいことに噛みつく人っているんだなってお話。いやさぁ、大企業のお坊ちゃんが婚約者とデートするのがそんなにいけない事?たるんでる言う前にお前のその性格直せだわ。まぁ、大抵が妬み嫉みって奴なんでしょうけども。このバカげた行為に晒されて破局仕掛けた主人公CPでしたが、湊が諦めなかったおかげで誤解も解けて復縁し最後は結婚。その前に、綾に降りかかった不運はとばっちりとしか言いようがないもので、何とも理不尽でした。この犯人は長らく綾のお姉さんを恨んでたってオチではあったんですけど、この辺りの経緯は割愛。興味がある方は読んでみてください。二人の復縁は割と早く成るんですが、その後の事件が結構モヤモヤ系で幸せCPを他所にじわじわ進行してたのが気持ち悪い。ので、ちょっと好き嫌い分かれる内容かも。その代わりか、後日談の番外編2本はコメディ寄りでした。評価:★★★★☆
2023.11.17
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2023年10月刊マーマレード文庫著者:有允ひろみさん密かに想いを寄せていた医師・壮一郎と結婚が叶った美優。幸せいっぱいのはずの彼女だが、実は夫婦になっても壮一郎と寝室は別のままで、縮まらない距離に不安を感じていた。ところが、実は美優への情欲を昂らせていた壮一郎は、ある日を境に、クールな彼からは想像できないほど溺甘な旦那様に豹変!?際限ない愛に蕩かされて、美優の妊娠も発覚しー。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 岩沢美優=医師とスピード婚をした保育士。 岩沢壮一郎=美優の夫。優秀な脳神経外科医で病院の跡取り。 滝田真子=美優の3歳年上の姉。憧れの医師・壮一郎と結婚した美優。イマイチ自分に自信のない彼女はスピード婚なこともあって壮一郎の真意が判らずにいた。だがそれは彼の方も同じでふとしたきっかけでお互いが遠慮していただけだと気付いてからは周囲が羨むほどのラブラブな夫婦に。子供好きな美優は彼との子ならすぐにも授かりたいと妊活に励んでいたものの、半年たっても一向に兆しが無くてガックリ。そんな彼女を、性格の悪い実姉の真子が嘲るものだから余計に落ち込んでしまう。真子は美人で出来が良いのもあって、母に偏愛されていた。次女の美優は放ったらかしで隣に住む祖母が彼女を育ててくれたようなものだった。母を独り占めしていた上に甘やかされたおかげで姉はすっかり我儘でキツイ性格になり、美優は良く虐められたものだった。おまけに妹の物を取り上げてはポイ捨てすると言う性悪ぶり。美優が合コンで知り合い交際間近だった男性に取り入り、横取りした挙句結婚までした時には呆れたものだが、それというのもその男性が高学歴高収入のエリートだったからだろう。そんな人、妹にはもったいない。まんまと美優から奪ってやったとほくそ笑んでいた真子だったが、それからさして時間が経たないうちに、妹は優秀な脳神経外科医の壮一郎と結婚してしまったのだ。しかも総合病院の跡取り。真子は性懲りもなく彼に狙いを定め、既婚者のくせに彼に纏わりついているらしい。だが、美優一筋の壮一郎は真子には目もくれず、それから暫く経って美優の妊娠が発覚すると、一層彼は妻を溺愛するように。そこには真子の入る隙も無く姉のイライラは募るばかり。そんなある日、美優の母が脳梗塞で倒れ・・・。あらすじからして、両想い同士なのにすれ違い夫婦が再構築する話なのかと思いきや、全然違いましたwもうね、スパダリな旦那さん・壮一郎の美優への愛は揺ぎ無く、浮気疑惑とかも全然出なかったので、モヤモヤ展開は一切無し。どちらかと言うとヒロイン・美優の家族のエピソードだったと思います。姉妹格差って本当に切ないですよね。美優のお母さんは別に彼女を嫌ってたわけじゃないのだけど、生い立ちとか産後鬱とかも重なって姑である美優の祖母に蟠りを持ってしまったのが原因だったようです。それにしたって、美優にしてみれば理不尽極まりない理由なんだけど、でもこの子には優しい祖父母がついていて、いい旦那さんにも出会えた。ポジティブな性格も相俟って、性悪な姉の嫌がらせも何のその。母は大病をきっかけに思い直したようで、美優に心から謝罪し和解に至ります。この物語の困ったちゃんの真子さんは、やることなすこととんでもないことをしでかしてましたが、この人もある意味母親の被害者だったので、終盤は何だか憎めない人に。別れて正解だと思うものの、言い様に利用されて真子の旦那さんが気の毒でならない。でも、母親も姉も改心して最終的には美優とも仲良くやっているようで何より。その他、保育園の事情とか、病院が抱える問題など、色々と考えさせられるお話でした。評価:★★★★★
2023.10.28
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2023年9月刊マーマレード文庫著者:篠原愛紀さん調香師の美月は、かつて一夜をともにした男性・大雅の子を秘密で産み育てていた。ある事情から、大雅は本気ではなかったのだと知り、彼の元を去ったものの、忘れられずにいたある日、なんと彼が取引先の副社長として姿を現し…!?「これ以上逃がさないから」-大雅に一途な激情をぶつけられ、子どもごと過保護に愛されると、美月の想いも溢れ出し…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 竹田美月=有名調香師の叔父の元、自身も調香師として働くシングルマザー。 櫻井大雅=大企業の御曹司で美月の息子の父親。シークレットベビーものです。自他共に認める匂いフェチ(主に香水)の美月は、散々だった就活に落ち込んでいたその日、運命的な出会いをした。調香師として名を馳せた大好きな叔父が限定50本で制作した香水をつけた青年・大雅に一目で惹かれた彼女は、傷心も相俟って彼と一夜を共にしてしまった。だが、リビングで電話している彼の会話を耳にした美月はその内容に打ちのめされた。羽目を外したいだの明日にはNYにとか、傍で聞いたら旅立つ前の火遊びをしていたとしか受け取れない。送っていくと言う彼の言葉を無視して、屋敷を飛び出した彼女は大雅と会うことは無かった。しかし、それから一ヶ月後、悉く不採用を食らって意気消沈していた美月にあろうことか妊娠発覚。後にも先にも該当者は大雅しかいない。何故か産む選択肢しかなく、正直に打ち明けた所、真面目で潔癖な母は大激怒。結果、家を出ることになった美月は叔父の家に身を寄せることに。そこで、叔父の指導を受けながら調香師の修業を始めた彼女は、それから暫くして長男の薫人を産んだ。あの日から2年。叔父の会社の社員として個人としても調香の仕事を受け始めていた美月に、ある大口の依頼が舞い込んだ。大手アロマエステサロンの創業記念パーティーにて来場者に配布する香水の調合を頼みたいと言う。叔父でなく自分に依頼が来たことに心底驚いたが、叔父からの後押しもあって、担当者と会うことに。副社長直々が携わると聞いて緊張したが、いざ本人に会ってビックリ。大雅が目の前にいる。彼は依頼の話を終えると、美月にずっと探していたと再会を喜んでいた。しかも、息子を産んだこともバレていて、何か誤解があったならそれを解きたいと言う。どちらにせよ、子供もいるのだし一度はちゃんと話すべきと、応じた美月は翌日、彼の会社と設備を見学しながら色々と事情を聴いた。電話の件は2年も前なこともあり内容は覚えていないらしいが、その必死さから少なくとも美月を遊びとは思っていないというのは本当の様だ。どちらにせよ、あの後も連絡手段を取り付けようとした矢先に美月が誤解して飛び出したのが離れ離れの原因だったので、もう一度新たに始めることを決めた二人。多忙ながら、日を空けずに美月たちに会いに来る大雅だったが、それを含めて美月の存在をよく思わない者もいて・・・。美月の叔父の大ファンだと言う大雅の従兄弟の滝は彼女の存在がとにかく気に入らず、顔を合わせる度に嫌味三昧、しかも仕事に役立つ資料も敢えて渡さないなどさすがに腹に据えかねて、美月も反撃。まぁ、子供っぽい嫉妬心からなんですけど、気持ちはわからんでもない。ので、美月の方も言うだけ言ってやったけどちゃんと飴を与えて懐柔の方向へ持って行ったのはお見事、と思いました。反感買い続けるのも仕事がやり難いですもんね。その間、断られたのに自分は大雅の婚約者になると思い込んでたお嬢様の登場とか、ちょっとした騒動を乗り越え、疎遠になっていた両親とも大雅の説得もあって和解。結婚も認められ、無事に入籍して本編は〆。後日談含め、その後の櫻井家のエピソードが3本収録されています。終盤、あの電話の内容を大雅が思い出すんですけど、美月とは全く関係ないことで、誤解も極まれりって感じでした。けどまぁ、電話の相手とか話の全容を把握してなきゃ自分とのことだと思うよね。彼女からすれば行きずりの関係みたいなもんだし。でも、元々、大雅も以前から叔父の家に通う美月を見知っており、心惹かれていたらしい。それがあの日、雨に濡れて意気消沈している彼女をほっとけなくて屋敷に招き入れた的なことが彼目線のエピソードで語られていて、ああそういうことだったのねと納得。あと、美月の叔父さんが良いキャラしててお気に入り。あの読み難いローマ字表記のせいで漢字名が最後まで判らず。石井業平さんでいいのかな?評価:★★★★☆
2023.10.02
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2023年8月刊マーマレード文庫著者:伊月ジュイさん両親の海外出張で、千紗は義兄の耀と二人で暮らすことに。実は耀は初恋相手。彼から過保護に甘やかされる日々が始まるも、自分が妹としか見られていないことに、千紗の切なさは募るばかり。ところが、ある出来事で耀の独占欲のたがが外れ…「ほかの男に譲るなんて、やっぱりできない」-初めて見る彼の愛欲に満ちた瞳に、千紗の想いも溢れ出し…! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 久峰千紗=男性に付き纏われやすい性格故に何度か危険な目に合っており、両親 の長期海外出張を機に義兄の耀と同居することに。 久峰耀=脳神経外科医で千紗の義兄。 礼善愛瑠=耀の勤め先の病院長の娘。義兄妹ものです。両親の再婚によって兄妹となった耀と千紗。元々、互いの家で家族ぐるみの付き合いだったことから、幼馴染でもあった二人は本当の兄妹の様に仲が良かった。だが、千紗にとって6歳年上の耀は兄と言うより初恋の人で、ハンサムな彼に恋人ができる度にモヤモヤとした気持ちを抱えていた。そして、年頃になった千紗は自分が「ストーカー引き寄せ体質」であることに気付く。やたらと異性に付き纏われ、トラブルになったことも数知れず。それは就職してからも変わらず、両親も心配して26歳になっても彼女は実家暮らしであった。だが、義父の会社が海外進出することになり、夫婦で暫く現地に赴くと言う。その間はこの広い家に千紗が一人きり。娘の厄介な性質を思うと一人暮らしは危険。そこで、コンシェルジュが在中していてセキュリティは万全な耀のマンションに同居することに。長年の片思いを悟られぬように、なるべく自然に振舞おうとする千紗だったが、実は耀の方も、千紗を女性として見ており・・・。両想いながら、義理とはいえ20年と言う兄妹としての関係のせいでお互い一歩を踏み出せず、みたいなお話です。耀目線のエピソードも書かれているので、二人の気持ちが判っている神目線の読者としては、あーもうじれったいっ、と思うことしばしば。法律上は問題ないにしても、口さがない人はいますしね。千紗が悩むのも判る。でも、そんな二人の想いなんて両親にはしっかりバレてて、母親から後押しされる始末。まあ確かに、私が母親の立場でも、どこの馬の骨とも知れない相手を連れて来られるより、気心知れた耀と一緒になってほしいと思うかも。そんな最中、手術で命を救われたからと耀にぞっこんの病院長令嬢の登場ですよ。グイグイ彼に迫るものの、やっぱり二人の間には入れず。このお嬢様、気遣いは出来るし根は悪い人じゃなかったんですけどねぇ。しかし、このお嬢様の登場もいい具合に彼らに決断を促したようで、終盤にはお互い思いを打ち明け合い恋人同士となり、最後はそれから暫く経って結婚した二人の様子が描かれていました。やはり義理でも兄妹ってことで苦手な方もいるかもしれませんが、ストーリー的には割と読み易い部類かと。評価:★★★★☆
2023.09.07
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2023年7月刊マーマレード文庫著者:真彩-mahya-さん余命宣告を受けた志麻は、旅先で極道の賢人と出会い、最後の思い出にと一夜をともにする。ところが帰国した志麻は、診断が誤りと聞かされ、さらに妊娠が発覚! 「俺の妻になれ」――戸惑う志麻は、追いかけてきた賢人から熱く激しく求められ…。極道である賢人との関係を周囲に反対されても、彼がぶつけてくる一途な情熱に、志麻も抗えなくなって…! ↑amazonより、あらすじ引用登場人物 広瀬志麻=ごく普通の会社員。 旅先のグァムで城田と運命的な出会いをした。 城田賢人=建築会社のCEOで極道の若頭。 広瀬麻美=志麻の父方の従姉妹。 川口=志麻の同僚。まだ発売日から1週間経っていないのでざっくりと。検査入院の結果、すい臓がんと告知され5年という余命宣告を受けてしまった志麻。さすがにショックでぼんやりすることも増えた彼女を、従姉妹の麻美が気晴らしに旅行に行かないかと誘ってくれた。麻美によると気分転換をすると症状が軽くなるんだとか。聊か眉唾ものな話だが、彼女なりに気を遣ってくれたのだろう。検討の末、近場で安く行けるグアムに行くことに。だが、出発間際になって麻美に急な仕事が入り、1日遅れての現地入りとなってしまった。1日とはいえ、外国に一人きりの志麻は不安で仕方ない。そんな彼女は格好のカモで、早速どこぞに連れ込まれそうになりピンチに。そこを助けてくれたのはE〇ILEにでもいそうな青年。彼は志麻が一人でいる事情を聞くと、その後の観光にまで付き合ってくれた。城田賢人と名乗った青年は建築会社のCEOというが、シャツから見え隠れする立派な彫り物を見るに表向きの仕事はということか。しかし、不思議と彼からは怖いと言う印象は無かった。おかげで麻美が不在でも楽しく過ごせたのだが、折に就け頭をよぎるのは病気のこと。5年なんてきっとあっという間だ。次第に意気消沈していく志麻から、余命宣告を受けたことを聞いた賢人は彼なりの方法で慰めてくれたのだった。一応、賢人の番号は登録してあるものの、あれから音沙汰がない。旅行は楽しかったけれど、いざ現実に戻ると2週間ほど経っても気力が沸かずミスを連発。さすがに上司からもお小言を食らっていた頃、同僚の川口から告白されて賢人のことを思い出して複雑な心境に。しかも、病院から連絡があり検査結果を取り違えていたと担当医たちが謝罪にやって来て志麻はガンでないことが判った。対応の杜撰さに腹も立ったが、取り敢えずガンでなかったのは何より。嬉しいことは続くもので、賢人とも再会。彼は志麻に交際を申し込んで来た。カタギではないこともあり、考える時間をくれたものの、その間に志麻の妊娠が発覚。父親は賢人で間違いなく、志麻の心はもう決まっていた。妊娠を告げると賢人は喜び、早々に籍を入れると決めたのだが、二人の結婚は思った以上に波紋を呼び・・・。賢人が反社と知られる前にも、志麻は会社でマタハラを受けたり、再婚して疎遠になっている父に彼と合わせるとニートの義兄の態度にブチ切れた賢人に恐怖し、結婚を反対されたり、トラブル連発。それでも麻美や、会社でもお昼仲間の女子社員とか賢人の正体を知ってもそんなの気にせず応援してくれる人達もいる。この辺りは詳しく書きませんが、正直、そんなに他人のことって気になるもの?終盤の一連のエピソードは読んでて何だかモヤモヤしました。特に、川口よ。志麻の義兄のクズニートもムカついたけど、人間性で最低だと思うのはこの同僚です。ちょっとでも志麻がこいつに靡いたりしなくて良かった。反対に一番カッコイイ性格だと思ったのは従姉妹の麻美ちゃんです。それにしても、検査結果の取り違えって怖いですね。賢人は相応の仕返しをと怒ってたのは当然で、志麻は慰謝料請求しても良いのでは。あの悩んでた数週間分のストレスは相当なものかと。評価:★★★★★
2023.07.13
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2022年8月刊マーマレード文庫著者:西篠六花さんバリスタとしてコーヒー店を営む七瀬は、交通事故で負った醜い傷のせいで恋愛を諦めていた。しかし店に通う公認会計士・拓人から熱く迫られ、頑なな心を溶かされて身体ごと甘く溺愛されるようになる。ところが彼との秘密の因縁を知り、別れを告げて姿を消すものの、諦めずに捜してくれた拓人と再会。彼の一途な深愛と独占欲に抗えなくなり…? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 小此木七瀬=コーヒー店を営むバリスタ。 桐谷拓人=公認会計士。七瀬の店の常連で彼女に交際を申し込む。コーヒー店を営む七瀬は、子供の頃に負った怪我の痕のせいで失恋をしてからというもの、恋愛から遠のいていた。しかし、そんな彼女にも気になる存在が。近所にある経営コンサルティング会社に勤める公認会計士の桐谷は、繁忙期以外は週に何度も通って来てくれる常連客で、初めての確定申告に頭を悩ませていた時アドバイスをしてくれた人物だった。端正な顔立ちで穏やかな話し方をする彼に好感を持つ七瀬だったが、数年前、信じていた恋人に手酷くフラれたことがトラウマとなり、桐谷からプライベートで誘われても一歩を踏み出せずにいた。先ずは友人から初めて互いを知ろうと食事やジムに誘われ、楽しい時間を過ごすうちに頑なだった七瀬も桐谷に心惹かれて行くように。彼の心が変わらないか、思い切って傷跡を見せた所、桐谷の気持ちは変わることなく、その後二人は正式に交際を始めたのだった。かつてないほどの幸せな時間に七瀬も内心浮かれていたのだが、ある時の会話にて彼女が両親を亡くして叔母の養女となり名字が変わったこと、そして七瀬の旧姓を聞いた桐谷は驚愕した。事故が起きたのは18年前。居眠り運転のトラックに追突された乗用車は炎上。そして被害者家族の名字。それはまさしく、桐谷の父が起こした事故で・・・。事故の加害者家族と被害者家族と言う、どうすることも出来ない壁が二人の間に立ち塞がり、ヒロインは究極の選択を迫られることに。当初、ヒーローは打ち明けると決心したものの、言い難くてズルズル引き摺った結果、妹に知られて交際を猛反対した挙句、ヒロインを逆恨みし数々の嫌がらせを仕掛けます。おかげでヒロインの店は窮地に立たされ、弁護士に相談した所、浮上した犯人はヒーローの妹。理由を聞いたら、あの事故以来、桐谷家も散々だったと言う恨み言。搾り取った賠償金で悠々とこんな店出して暮らしてるなんて、という理不尽な言い分。これには読んでて本当に腹が立ちました。いやいや、こっちは両親亡くなってヒロインは一生消えない傷跡背負って生きてるんやで。妹の言い分に、金より両親に生きててほしかったと言い切ったヒロインの心境は推して知るべし。それより彼女にとって深刻なのはヒーローが加害者家族だということを黙っていたと言うこと。諸々重なって混乱したヒロインは彼に別れを告げ、店も畳み姿を消してしまいます。もうこれどうなっちゃうの~って感じでしたが、最後は再会してハッピーエンドとなったのでホッとしました。ヒーローが諦めないでいてくれて良かった。結局ヒロインも忘れられずにいたことが大きいんでしょうけど、じれじれも極まれりなので、続きが気になってしょうがなく、あっという間に読み終えてしまった本です。評価:★★★★☆
2023.06.21
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2023年6月刊マーマレード文庫著者:藤谷郁さん転落事故に遭った元看護師の美桜は目覚めると、憧れの医師・良希に、1年前に彼と自分が結婚したと聞かされる。その間の記憶が無い美桜は、甘い日々を思い出させようとする彼に蕩かされるまま新婚生活をリスタートさせる。純真な美桜への愛欲を我慢できなくなった良希は、再度心が通じた新妻に熱情を注ぎ込むと、美桜の恥じらう姿にさらに煽られ…。 ↑amazonより、あらすじ引用登場人物 水元美桜=元看護師。事故により1年間の記憶を失くす。 水元良希=外科医で美桜の夫 吉村結花=美桜の親友の看護師。水元可南子=良希の弟・啓二の妻。発売から1週間ほどのタイトルなのと、ミステリ要素もあるので控えめに。2月の雪の日、美桜はお気に入りの散歩コースである公園の階段から転落して救急搬送された。目覚めると、憧れの外科医・水元良希が付き添っていてびっくりしたが、なんと自分は彼の妻だと言うのだ。結婚どころか交際していたという記憶すらない美桜は混乱するも、どうやら紛うことなき事実で、寄りにも寄って彼との交際から約1年間の記憶をすっぱり失くしていることが判明。部分的な逆行性健忘のようだが、頭を強打したせいかもしれないし、心因性の可能性もある。いきなり思い出すかもしれないので焦らない事。レントゲンも異常なしで一先ず経過観察で問題なしとして、退院となったのだった。二人が暮らす一軒家に戻った美桜は、未だに良希との結婚に半信半疑だったが、結婚式の様子を撮影した録画ディスクを見て漸く納得。それにしたって、どうして彼との思い出だけまるっと忘れてしまったのか。しかも、毎日嵌めていたと言う結婚指輪まで失くしてしまっている。転倒した際に外れてどこかへ落としたのか。不安ともどかしさで焦る彼女を宥め、優しく接する良希。心配してやって来た美桜の親友・結花と話したことで多少は気分も晴れたものの、義理の妹の可南子の訪れと話は一抹の不安を植え付けるのは充分だった。根は悪い子ではないだけに気にしないようにはしていたが、以降、美桜は悪夢に悩まされるように。それは、黒髪黒いコートの魔女のような女性に襲い掛かられるといった内容で・・・。妻を心配した良希がこの事故について調べ始めると、いくつか不審な点が判明し、事故ではなく事件の可能性が出てきます。美桜は誰かに突き落とされたのではと。その間、二人の仲を拗らせようとしたのかSNSで、謂れの無い誹謗中傷めいた書き込みがあったり、痛くもない腹を探られて良希もさすがに本気の措置を取るべく行動。結果、明らかになった真実と、ついに美桜の事件の容疑者が判明。まあ、推理小説ではないので読んでると該当者は割とすぐに判かると思います。何気に言動怪しかったもんな。なまじ、良希が男前なだけに、リップサービスめいたことを言っただけで、誤解されてしまうのはモテ男故の弊害か。妻一筋なのに、周囲には恋多き男みたいなこと言われて、この辺のエピソードは本当に気の毒でした。真犯人のも動機もストーカーのそれと変わらないもんなぁ。それでも、最後には改心してくれて良かった。所謂「記憶喪失もの」な、内容ですが、このジャンルがお好きな方はハマるかと。評価:★★★★☆
2023.06.14
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2023年6月刊マーマレード文庫著者:吉澤紗矢さん天界から降りた龍神が興したという清瀧(せいりゅう)帝国。龍神の末裔である皇帝には唯一の相手である“番”(つがい)がおらず、子をなすべく妃候補が集められた。候補の一人となった翠蓮(すいれん)は、思いがけず龍神皇帝・惺藍(せいらん)に見初められ…! 惺藍の寵愛を受ける翠蓮は、彼への想いを自覚しつつも、自分は彼の番ではない、と切なさを募らせていた。けれど、惺藍の愛欲はますます加速し、翠蓮は永遠に続くかのような熱情で抱かれ…。最愛の彼の子を身ごもったことを知った彼女は、ある決意をする…! ↑amazonより、あらすじ引用登場人物 翠蓮=侯玲国の公主の一人。 姉・珠蘭と共に惺藍の妃候補として清龍帝国へ送られた。 惺藍=清龍帝国の皇帝。 緋洛=惺藍の従兄。 珠蘭=翠蓮の腹違いの姉。発売して間もないので、ざっくりと。このレーベルさんでは珍しく中華風ファンタジーで、後宮+シークレットベビーな内容になってます。姉の珠蘭と共に皇帝の妃候補として清龍帝国へやって来た翠蓮。しかし、彼女はあくまでおまけ扱いみたいなもので、後宮入りしてからも与えられたのは長らく使われていなかったような寂しい宮。ある日、翠蓮は一人の美しい青年と運命的な出会いをした。彼は惺藍と名乗り、以降度々翠蓮の宮を訪れる様に。だが、やがて彼女が皇帝と初顔合わせが叶った際、惺藍が皇帝だと知り衝撃を受けた。今までの様に気楽に接してはいけないと距離を置こうとする翠蓮だったが、惺藍は変わらずの態度でいることを望み、彼女にある悩みを打ち明けたのだった。本来、龍神の血を引く皇帝は「番」となる女性を娶る。どうやら、本能的に相手と出会えばすぐ判るものらしい。そのため、妃になるのは平民の娘の場合もあるそうだ。しかし、惺藍は何者かに呪いを掛けられ、龍神の力も感覚も封じられている状態にあり、番を見つけることは困難。それで各国から妃候補を募ったそうなのだが、力が使えないことにより、彼を皇帝位から退かせようという動きがあるとのこと。おそらく犯人は惺藍の従兄の緋洛。見当はついていても、呪詛の媒体が巧妙に隠されているため、探索が困難であった。事情を聞いた翠蓮は、協力を買って出て、調査に乗り出した。共に行動するうちに惺藍と翠蓮はお互いの気持ちに気付き結ばれ、事件解決と共に、後宮は封じられ集められた姫たちも国元へ帰されることになった。驚くべきことに彼女の姉・珠蘭も緋洛に唆され片棒を担いでいたことが判り、清龍帝国で幽閉され、翠蓮は一人国へ呼び戻されてしまい・・・。先ず、惺藍の呪いを解くのに翠蓮が奔走していたので、そこに結構ページ数を食ってた印象。内容的にはTLっぽさはほとんどありません。翠蓮の冷遇っぷりに読んでて腹が立ちましたが、姉代わりの姫たちが皆彼女を可愛がり庇っていたのでそのやり取りにじんわり。惺藍が力を取り戻したので、彼は番を見つけるに違いないと一人思い込んで失意の末に里帰りしたものの、後に妊娠に気付きって感じの流れです。シークレットベビー部分は本当にクライマックス部分のみなので、その分ページ数的に解決も早かった。いやー、これ状況が状況だけに半分くらいから離れ離れになられるとキツイですもんね。作中では3年以上経ってたけど、早く見つけてくれて良かった。番に関しては、言わずもがな。ですよねー。ジャンル的にはスターツ出版文庫の不遇ヒロインものに近いかも。評価:★★★★☆ファンタジーものとしては良作。
2023.06.11
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2023年5月刊マーマレード文庫著者:田崎くるみさん恋人に裏切られ仕事も失った梅乃は、幼馴染みの京之介と偶然再会。実家が極道だった彼はなんと足を洗って社長になっていて!? 京之介に強く勧められて彼の会社に就職した梅乃は、熱烈&極甘なアプローチで迫られ…! 「絶対に好きにさせる自信があるから」――初恋の梅乃と一緒になるため生きてきた彼の、二十年分の溺愛に蕩かされ、堕ちていき…。 ↑amazonより、あらすじ引用登場人物 羽田梅乃=とある理由で再就職活動中、幼馴染の京之介と再会した。一堂京之介=アプリ会社の社長。元極道一家の若頭だった。 矢口保=京之介の秘書。 菊谷悠里=梅乃と京之介、共通の友人。マーマレード文庫5月刊です。発売してあまり日が経っていないので、ざっくりと。初めてできた恋人から手酷い裏切りを受けた梅乃は、失恋だけでなく職場にも居難くなって退職に追い込まれてしまった。再就職先を探していたある日、偶然にも幼馴染の一堂京之介と再会。彼は、梅乃が働き口を探しているのを知るや、自らが現在社長を務めるアプリ会社に誘った。幼馴染と言えど、高校生になる頃には一切音沙汰も無く、共通の友人である悠里から、実家の組を継ぐつもりのようだと聞いていたのだが、疑問に思って尋ねると数年前にカタギになったらしい。京之介の実家は極道で父親はその組長だった。おかげで人間関係にはえらく苦労したようで、仲が良かったのはその手のことに頓着しない梅乃と悠里のみ。あれから約10年、お互いの知り得ないこともあったろう。それにしても、足を洗うってそう簡単にいくもの?一応、面接は受けてくれとのことで、後日京之介の会社を尋ねると、碌な話もせずに一発採用されてビックリ。縁故採用と先輩社員達に思われなきゃいいけど、と思っていたら、そんな心配は杞憂だった。なんともアットホームな会社で、気の良い人達ばかり。そして、京之介は梅乃と知り合いだと言うことも隠そうともしなかった。だが、そんな彼は部下達からは厳しく怖いと恐れられているらしい。なのに、梅乃限定で激甘な態度。先輩たちからは、二人はそういう仲、ないしは社長がアタック中なる噂が広まり始め・・・。所謂極道モノですが、この作家さんの作風もあってか、その手の描写は少な目。クライマックスの組同士のトラブルくらいかな。恋人に二股を掛けられた挙句同じ職場だったせいで退職に追い込まれた梅乃に手を差し伸べた京之介。彼にとって、実家が極道だからと色眼鏡で見ずに接してくれていた梅乃達は大事な存在で、やがてそれは恋心に。悠里に惚れなかったのはあのさばさばした性格のせいか(苦笑)でも、その悠里から梅乃の近況は逐一聞いていて、彼女が幸せならと遠くから見守るにとどめようと思っていたら、クズ男に捨てられたと言う。元々、梅乃のために足を洗った事だし、ならば自分が彼女を守るとばかりに猛アタックを開始。社員達の応援もあって、二人はどんどん仲を深め、多少悶着は会ったもののハッピーエンドで終わっています。京之介の実家の組も、仁義を重んじカタギの人には云々みたいな気質のところなので、足を洗う際も割と円満に済んでました。個人的にあまり好きなジャンルではないんですが、この程度なら無理なく読めたので、作家さんにも寄るのかなと思ったり。評価:★★★★★キャラの面白さもポイント高しです。
2023.05.16
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2023年3月刊マーマレード文庫著者:砂川雨路さん天涯孤独のちづるは、大病院の御曹司・大我に世話を焼かれつつ、身分の違いから恋心を隠してきた。しかしちづるの縁談を発端に、彼も抑えていた激愛を溢れさせ…!?婚約し、妊娠も発覚して幸せの中、ある事情で大我と別れ姿を消すことに。ところが彼は執愛でちづるを捜し出し、「俺は諦めない。おまえを嫁にする」と熱情&子どもへの愛を注いできて…! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 雛木ちづる=町工場で働く事務員。 幼馴染の大我と恋仲になるが彼の父の頼みを聞き入れて姿を消す。 斯波大我=研修医。 大病院の後継だが、失踪したちづるを追って新潟までやって来た。ちづるの母と大我の父が幼馴染で家も近所だったことから、幼いころから親しくしていた二人。お互い大人になって、初恋同士の彼らは恋人となり、半同棲していたある日正式に大我からプロポーズされたのだが、彼女には懸念することが。それは、大我の両親、特に母の房江からこの交際を猛反対されていること。元々ちづるの母・千寿子と夫・和之との仲を長らく疑っていたからだった。坊主憎けりゃ袈裟までばりにちづるにまで憎しみの目を向ける房江の気持ちを慮ってか、和之から大我と別れて欲しいと頼まれた。その直前に妊娠も発覚していたちづるは考えた末、大我の元から姿を消した。彼女が移り住んだのは前職で祖母共々世話になった工場長の妹・靖世が暮らす新潟。そこでハンドメイドの教室やネット販売で生計を立てる靖世の手伝いをしながら出産に備える日々。そんな中、大我がちづるを探し出し、新潟に居を構え、そこの総合病院で働き始めた。諦めない彼に諭され、もう一度やり直すと決めたちづるはその後長男・守を出産。大我の両親が認めてくれるまで入籍は待つことになり、大我のマンションで暮らしていた3人の元に長らく失踪していた千寿子が現れ・・・。千寿子さんと和之さん、この二人の曖昧な関係がそもそも騒動の原因で、ちづると大我は随分振り回されてた感じ。房江さんの誤解は一応解けて初孫可愛いブーストでなんとか結婚は認められたから良かったものの、ホントにもういい加減にしなさいよ、いい歳した大人たち。自分らの子供たちがどれほど迷惑を被ったか。とはいえ、千寿子さんにとっても娘の結婚と孫の誕生には思う所はあったようだし、親子の会話は読んでてちょっとキました( ;∀;)肉親との縁は薄かったけれど、ちづるの周りにいた他人が本当に良い人たちばかりで、そこは恵まれてたなって印象です。なんだか、随所で泣ける内容でした。初回限定ペーパーは本編ラストから2年後の斯波家のお話。評価:★★★★★
2023.04.20
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2023年3月刊マーマレード文庫著者:若菜モモさんハリウッド女優の専属シェフとして働く絵麻は、雇用主の母娘から嫌がらせを受けるが、老舗ホテルのCBO・神楽健斗の“婚約者”になることで救われ、彼が滞在するホテルで同居することに。一時の関係だと思っていたのに、健斗は絵麻を甘やかし始めて!?さらに情熱的なまでに愛を注いでくる健斗に、絵麻も彼への想いを自覚しながら酔わされていき…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 堂本絵麻=ハリウッドの人気女優の専属シェフ。 神楽健斗=最高級ホテルのCBO イザベラ=女優で絵麻の雇用主。 アメリア=イザベラの娘。 サマンサ=イザベラの屋敷で働くフィリピン人のメイド今月上旬発売の本なので、ざっくり目に。海外セレブの専属シェフとして働いている絵麻の現在の雇い主はハリウッドの人気女優・イザベラ。彼女は絵麻の料理を甚く気に入り、給料も破格なのはありがたいのだが、碌に休暇も取れないのが悩みの種だった。イザベラのロケには必ず連れて行かれ、屋敷で友人を招いてのパーティーを開くことも多く、絵麻は多忙で心身ともに疲れ切っていた。こんな生活を続けていたのではいずれ体を壊しそうで、例えイザベラが引き留めようとも契約更新はしないと決めた。今日は珍しく休暇を貰えてカフェにやって来たものの、いつ呼び戻されるか落ち着かず、屋敷に帰ろうとしたとき、店内でちょっとしたトラブルに巻き込まれた絵麻は日本人の青年に助けられた。彼は神楽健斗と名乗り、名刺も貰ったが、ホテルのCBOという肩書から、再会することはないだろうと思っていた。それから暫く経ったある日、絵麻は思わぬ縁で健斗と再会を果たした。どうやら、投資家でもある彼とイザベラは顔見知りで、パーティーに招かれやって来たらしい。健斗は絵麻の作る料理を褒め、以降度々屋敷を訪れる様に。傍から見ても、彼が絵麻を気に入っているのは一目瞭然で、それを面白く思っていないのがイザベラの娘であるアメリアだった。母よりも我儘で気性の荒い彼女は、招待客の面前で絵麻を貶めるも、さすがに我慢の限界で絵麻は退職を願い出て、屋敷を出ることに。イザベラは渋り、契約途中な事で裁判沙汰になりかけたが、健斗が絵麻と結婚すること、これまでの雇用状況は違反だと逆に訴えると告げたことで漸く解放された。結婚云々はただ自分を助けるための方便かと思いきや、彼は一目惚れだったと彼女に告白。何度も会ううちに同じ想いであった絵麻も受け入れて二人は晴れて婚約を交わした。だが、健斗を狙っていたアメリアは収まりがつかず、偽造写真を使って二人の仲を裂こうと動き出し・・・。確かに、給料が良くても休みどころか自由時間が無いのはキツイなぁ。そもそもセレブ専用のシェフなので、我儘な雇用主も多そうではあるけれど、女優の家とか特に色々煩そうでストレスも半端なかったと思います。契約期間が終わるまで我慢しなくて正解。でもまぁ、イザベラ自体はそこまで悪人じゃなかったし、終盤謝罪もあったのでまだ許せるけど、アメリアがもう救いようもない。正直、あんまり頭良くなさそうだから、健斗に早々に目論見がバレて手を打たれ、素行の悪さを暴露するぞと逆に脅される始末。でも相変わらず、この作者さんはあんまりザマァ部分を描かないので、そこだけちょっとモヤりました。中盤も色々起こりますが、敢えて記載していません。割とさらっと読める内容なので気になる方は読んでみてください。同レーベルの過去作の登場人物も名前だけちょっと登場してて、ニヤリとできます。5周年記念で付いてるペーパーは、本編のすぐ後の仲睦まじい二人のお話。評価:★★★★☆
2023.03.24
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2022年2月刊マーマレード文庫著者:西篠六花さん田舎の工房で働く陶芸家・葵の元に、有名シェフ・匡が訪れる。都会的で洗練された匡に気後れするものの、葵に惹かれたという彼から熱い想いを注がれ、溺愛に満たされて…。しかし、ある重大な事情を隠している苦悩から、葵は別れを決意!?一方、匡は秘密に囚われて雁字搦めになった葵を守り抜くと誓い、甘く蕩けるほどの熱情で彼女を包み込んでー。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 小谷葵=若手の女性陶芸家。 柏木匡=元有名フランス料理店の敏腕シェフ。御堂和之=紡績会社の御曹司。事情で高校の3年間、母方の伯父夫婦の家に預けられた葵は、その恩返しをしろとばかりに叔母から事故で下半身不随となった従兄弟の和之の世話を押し付けられていた。もう御堂の家を出て8年。今は陶芸家として生計を立てている身としては、プライベートの時間が無い現状の生活は苦痛でしかない。更に、事故後に趣味として絵を始めた和之からのある要求が嫌で堪らず葵を心底悩ませていた。そんなある日、葵の作る器が気に入ったと一人の青年が工房を訪れた。柏木匡と名乗った彼は、今度この町でフランス料理店を開店するそうで、そこで使う器の制作を依頼したいのだと言う。開店は3ヶ月後。依頼を受けた葵は、匡からイメージの参考になるからと後日ランチに招待され、その美味しさに感動したものだ。気になって依頼を受けた日に彼の名前を検索してみたら、神戸の有名店で腕を振るっていた敏腕シェフだったらしい。だが、有名店では味わえないお客とのコミュニケーションを大事にした自分の店を持ちたくてこの町にやって来たという匡の考えは素敵だと思う。とはいえ、長閑な町と言えば聞こえは良いが、余所者に対しての目が厳しく実際は閉鎖的で暮らし易い所とは言えない。つい匡に皮肉ってしまったものの、彼はどう感じているのやら。それからというもの、何回か彼に自宅ランチに誘われたが、そろそろ周囲の目が気になるので葵が断ると今度は店に出すメニューの試作品だと料理を持って工房を訪れる様に。そろそろ和之の耳にも入りそうで本当ならこれも断らなくてはいけないのに、無碍に出来ず段々と彼に惹かれて行く葵。そして匡もまた、同じ気持ちだった。二人の距離は急速に近付き、やがて正式に交際へと発展。仲睦まじく過ごしていたが、近ごろ態度が余所余所しく変わった葵に不信感を覚えていた和之が、二人の関係を知ってから、仲を引き裂くべく行動を開始して・・・。この従兄弟、事故前はかなりモテたし、友人も多かったものの、車椅子生活になってからというもの世界は一変。それからというもの、美人の従姉妹の葵に執着し始めたのでした。当然、匡に嫉妬メラメラで、開店の邪魔までする始末。この町の住民のほとんどが地元の名士である御堂家のいいなりなので、さぞ妨害し易かったろうとは思いますが、匡もやられっぱなしではなく、後に逆襲に転じたことで和之たちは手痛いしっぺ返しを食らう羽目に。葵の方は、匡との関係に思い悩み、和之から脅迫されたりと一人グルグル。そもそも、彼女が従兄弟の面倒見る義務なんてないのに、変な刷り込みされて反発できない所がかなりモヤりました。でもまぁ、最後は勇気を出せてよかった。やはり恋は偉大。ただ、タイトルにあるように、別段虐げられてはいなかったような。従兄弟のお世話と言いつつ、介護してたわけではないんですよね。あの家には家政婦もいるし、ヘルパーも通って来てたので。かと言って、母親がするべきことを姪に丸投げってのは酷いですよねぇ。あと、和之の要求のデッサンモデルはヌードって時点で断らないと。どんだけ、刷り込みされてたのか精神支配って怖いですね。匡と会わなきゃ一生縛られてたんじゃ。評価:★★★★☆
2023.03.01
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2023年1月刊マーマレード文庫著者:若菜モモさん過去の手術費用の取り立てにあい、大金が必要になった穂乃香。そんな時、祖母が病に倒れ、心臓外科医の冬貴と八年ぶりに再会する。とある事情で亡くなった双子の姉のふりをする穂乃香の正体に気づかぬまま、冬貴は借金の肩代わりと引き替えに契約結婚を持ちかけてきて…!?かりそめの結婚のはずが、独占欲剥き出しな旦那様の溺愛を刻み込まれ…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 石田穂乃香=大学病院勤務の管理栄養士。 18歳の時に両親と双子の妹を事故で亡くした。 綾瀬冬貴=心臓外科医。名家の御曹司で穂乃香に契約結婚を持ち掛ける。 川上凪咲=穂乃香の中学生時代からの親友。 石田奈乃香=穂乃香の双子の姉。故人。 西村=会社社長で穂乃香の父の友人。 西村道人=西村の一人息子。若菜モモさんの最新作です。発売からまだ10日くらいしか経ってないので、ざっくり目に。穂乃香は18歳の時に両親と双子の姉・奈乃香を事故で亡くした。身内と呼べるのは父方の祖母のみ。祖母はいっぺんに家族を亡くした彼女を引き取るつもりのようだったが、穂乃香はその申し出を断った。何故なら祖母は彼女のことを奈乃香と思い込んでいたから。穂乃香には先天性心疾患があり、亡き両親はいつも彼女のことを気にかけ大事にしていた。何回も手術を繰り返し、漸く無理をしなければ普通の生活を送れるくらいには回復したものの、妹ばかりを構って放って置かれたと思ったのかその頃には奈乃香がグレてしまい家族と一線を引くように。それでも、歩み寄ろうと努力を続けていた矢先、補導された奈乃香を迎えに行った両親はその帰り道で事故に遭ったのだった。祖母は、奈乃香を不憫に思っていたのだろう。両親に代わり随分と姉を可愛がっていたから。加えて一人息子の死に精神が耐えられず、亡くなったのは穂乃香の方だと思い込むように。今となってはたった一人の大事な肉親にずっと違う名前で呼ばれ、亡くなったのが穂乃香の方で良かったと言われ続けるのは精神的にキツイ。幸い、祖母は料理の腕を買われ、長らく綾瀬と言う資産家の屋敷で働いており、住居用に離れを提供されるなど随分良い待遇を受けているらしい。綾瀬家と言えば、一人息子の冬貴さまは随分聡明な少年で、幼い頃、発作で倒れた穂乃香を助けてくれた命の恩人でもあった。思えば淡い初恋みたいなものだった。彼が大人になってからは会う機会はあまりなかったけれど、家族を亡くした時には弔問の挨拶にも来てくれたっけ。偶然にもそれから7年も経ってから、同じ大学病院で働いていたと知った時には驚いた。勿論、向こうは心臓外科医になっていたので、厨房勤務の管理栄養士とは接点はほぼ無い。たまに食堂で見かけるくらいだ。そんな穂乃香の頭を悩ませるのが、亡き父が残した多額の借金だった。西村と言う会社経営者と父は付き合いの長い友人で、色々工面してくれていたらしい。その中には当然、穂乃香の手術費用等も含まれていて、子に支払い義務はないと判っても無視はできなかった。一先ず両親の保険金でかなりの額を返済したものの、まだ結構な額が残っている。西村も鬼ではないようで以降は催促も無いし無利子にしてくれたのはありがたかったのだが、ある日状況が一変。西村の長男・道人が穂乃香に一目惚れ。彼と結婚するなら借金をチャラにするとトンデモ要求をしてきた。借金返済のためにあくせく働き、恋愛する暇もなかった穂乃香にも、それなりに夢はあった。正直、男慣れしていない彼女から見ても、道人はどうにも好きになれないタイプで、速攻で断ったのだが、それなら残額は一括返金してもらうと言う。譲歩するとして、西村が紹介する高級クラブで働くなら待ってやらなくもないと。馴染みの店のようだし、客として道人に足繁く通わせるつもりなのだろう。ホステスは基本客の意向に逆らえないから。姑息な手段に腹も立ったが、道人との結婚は死んでも嫌。それに、紹介された店自体は高級と言うだけあってホステス含め品が良い。日給3万なのも魅力的だ。頑張れば3年で全額耳を揃えて返済できるではないか。かくして、日中は病院、夜はホステスと言う二足の草鞋生活が始まった。しかし、元々心疾患があった穂乃香は無理は禁物。ダブルワークのせいで早々に体調を崩し、眩暈を起こした所を冬貴に介抱される始末。彼は穂乃香と気付かなかったようだが。道人が週に3日はやってきては穂乃香を指名し、酒の相手をさせるのもかなりストレスになっているようだ。苦渋の決断の末、栄養士の仕事を退職し、ホステスで一先ず稼ぐ方を選び多少は体調もマシになったけど、ストレスの方は相変わらず。そんな折、祖母が家政婦の仕事中、綾瀬家で倒れ怪我をして入院。現在、屋敷で一人でいる冬貴の食事問題を心配した祖母を見かねて、昼なら空いているからと穂乃香が祖母の代理を務めることに。憧れの人の食事を作るのはドキドキしたけれど、作ったものを美味しいと褒められれば嬉しい。でも、彼もまた彼女を奈乃香と思っていることが辛い。自分は穂乃香と打ち明けてもいいのだが、祖母がボケてしまったと誤解されても厄介だ。一ヶ月ほどの代理だし、その程度は我慢して黙っていよう。でも、ある日、穂乃香の働く店に冬貴が接待で訪れ、当然問い質された彼女は、渋々事情を打ち明けた所、彼に提案があるから店を辞めろと説得された。翌日、冬貴が告げたのは残りの借金を肩代わりする代わりに、自分と1年間だけ契約結婚をして欲しいというもので・・・。最初は逡巡していた穂乃香もその提案を受け入れ、二人は早々に入籍。道人のストーカーに近い求愛からも逃げることに成功します。借金完済の際の西村の言い分は、まあ判らなくはない。クズな性質の息子を持ったが故の苦労があるんだろうなと。だからと言って、金で何の罪もない女性に背負わせようとするのはちょっと。最後は謝罪もあったのと穂乃香の父に無利子でポンとお金を貸してくれてたのを思うと、根は悪い人ではないのかも。だが、道人、オメーはダメだ。正直、読んでて気持ち悪くて、早くザマァされないかと心待ちにするくらい。この作家さんは、ページ数の都合もあるのかそこまで徹底的にはやらないので、モヤることも多いんですけど、当人がもう関わりない人だからと思ってるんでそれで良いのかも。当然の如く、終盤はお互い両想いなのが判り、契約ではなく本当の夫婦となってお終い。祖母の思い違いという記憶障害も後に改善しますが、この辺の件がちょっと泣けます。胸糞展開もありましたが、昨今のこの作家さんのお話では結構お気に入りになりました。評価:★★★★★
2023.01.20
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2022年11月刊マーマレード文庫著者:泉野あおいさん失恋のショックで幼馴染の相談相手・俺様ドSな律と一夜を共にし、初めてを捧げた直後に妊娠発覚した美海。しかも見合いが嫌な律は、美海との契約結婚を強引に決めてしまう。重荷になるのを恐れ、妊娠を隠し始まった新婚生活だけど…律は溺甘旦那様に豹変!熱を孕んだ律に毎日甘く攻め立てられ、封じ込めていた彼への想いが美海の中で疼き出し!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 法上美海=広告会社に勤める会社員。 幼馴染の律に押し切られ契約結婚をした。 夏目律=やり手の弁護士で美海一筋だったが、この度願いが叶い結婚に至る。 大和初美=美海と律共通の幼馴染。 村野裕太=美海の先輩社員で愛子の彼氏。 相馬愛子=律の父が経営する弁護士事務所に勤める秘書。ギリギリ積読から逃れました(^_^;)法上美海は助産師である母の厳しい言いつけにより、貞操観念が異常に高い。おかげで29になるまで恋愛経験ゼロ。でもいつまでもこのままじゃいけない。そうだ、いい加減自分も恋をしよう。そう宣言したのは良いものの、何故か美海は壊滅的に男を見る目が無かった。初めての彼氏は会社の先輩社員・村野の知り合いだったが、手をつなぐことすらできずたった一日でフラれ、合コンで知り合った銀行員はたった数回のデートをしたきりで破局。その後、離島にある支店に転勤したと言う。三度目の正直とばかりに、婚活アプリで漸く理想の人を見つけたと思ったら、つい数時間前、二股を掛けられていたことが判明し、向こうから別れを告げられた。その度に、幼馴染の初美は呆れ、律は慰めてくれていたけれど、どうしてこうも自分は男運が無いのか。それでも三番目の彼氏とは漸くキスまで行けたのだ、失恋の痛手は飲んで忘れて次へ行こう。だが、高々キスの経験談を律はついに美海が非処女になってしまったと勘違い。幼いころから美海に想いを寄せていた彼は一大決心の末、酔いも回った彼女をホテルに連れ込むと、積年の想いを告げるとともに、その夜幼馴染の関係から一線を越えたのだった。だが、焦ったのは翌朝素面に戻った美海。結婚するまでは恋人とは清い関係でいろ(意訳)と常々厳しく母から躾けられている彼女は、何より母の怒りが怖かった。律に余計なことを言わない様口止めしておかなければ。一人ホテルから逃げ帰った美海は久方ぶりに律と距離を置こうと決めた。しかし、そうは問屋は降ろさないとばかりに、律は徐々に外堀を埋めて来る。やり手の弁護士の考える策に彼女が勝てるわけがない。初美にもあの晩二人に起きたことは知られているし、もういい加減腹を決めて律と結婚すれば?と言われる始末。幼馴染と言えど馬が合わず、何かと衝突していた初美と律だったが、今度ばかりは彼女は律の方につくつもりのようだ。味方を得た律に追い詰められた美海はある日、自身が妊娠していることに気付き、頭を抱えた。よりにもよって初体験で妊娠とか、母はどう出るか。思えば、助産師をしている兼ね合いで、のっぴきならない事情の妊婦さんも多く見ている母だからこその言いつけだったのだろう。相手が子供時代から知っている律なのでまだ怒りも抑えてくれるかもだが、それ以前に当の律はどう思うやら。めんどくさいことになったと言われでもしたら立ち直れない。しかし嫌な予感は的中、律によって両親に美海と交際の末に子供が出来たので結婚したいと報告されてしまったのだ。厳しい母もあれほど口を酸っぱく言っていた癖に、デキ婚については言及せず両親共にこの結婚を祝福。納得いかないと怒る美海に、律から激しい見合い攻撃に合って困っている俺を助けてくれと頼まれ、生活費等全て面倒見ると言う条件の元、契約結婚ならと渋々承諾。正直、身重の身ではいずれ産休も必要、金銭面の心配が無くなるのは助かる。彼が妊娠に気付いていたのは意外だったが、どうやらカマを掛けられていただけの様で、挙式後にしっかりバレてしまって万事休す。おかげで子供が産まれるなら契約ではなく本当の夫婦になろうと言う律は嬉しそう。まぁ、おなかの子の父親は彼なのだし、これ程喜んでくれてるならあの心配も杞憂に過ぎなかったのだ。甲斐甲斐しく美海の世話をする律に戸惑いつつも、彼を慕っていた頃を思い出す。多感な時期に起こったあの出来事が無ければ、例え高校から違う学校に行ったとて一時期あんなに距離を置かずに済んだのかもしれない。今はもう、こうして夫婦となっている。素直になってもいいのかなと美海は考え始め・・・。両片想いの幼馴染カップルが、上手く纏まるまでのお話です。なので、タイトルはちょっと誇張気味かなとは思う。酔っぱらってる時に関係持つなんて卑怯だと思われる方もいそうですが、一応素面に戻った彼女に了解はとっています。単に美海が忘れてただけ。契約結婚云々も彼女にあの晩の記憶があればする必要無かったものだし、妊娠がバレてからは契約なんてしなくていいよねと早々に撤回されてしまいます。母の言いつけを律義に守り、気付くとアラサー。モテる幼馴染たちの様に恋愛位経験しなくちゃと張り切ってはみたけれど、恋愛初心者な分、騙されやすい。三番目の彼氏なんて完全に結婚詐欺師でしたからね。律がいなかったら騙されてたことも気付かなかったって言う。一番目と二番目は禄でもない男と判り律が裏から手を回して別れさせてたんですけど、クールに見えて涙ぐましい努力を。それにモテる人はモテるなりの苦労もあるんだなと。美海に惹かれた理由含め、律目線のエピソードでその辺は詳しく描かれています。デキ婚モノではありますが、お話自体はTL小説というよりラブコメに近いかも。評価:★★★★☆
2023.01.17
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2022年4月刊マーマレード文庫著者:古須 界さんホテルで働く遊は、体調を崩したところを容姿端麗な男性に助けられる。後日再会した彼は、新任のホテル支配人・正臣で!?クールな彼が垣間見せる優しさに触れ、遊は恋心を募らせるも、感情表現が下手な自分に自信が持てない。ところがある一夜をきっかけに、二人の距離は急接近!正臣の滾る情熱を教えられ、遊も抑えきれぬ想いを溢してしまい…!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 長澤 遊=ホテルのハウスキーピングスタッフ。早くに両親を亡くしている。 氷上正臣=ホテルの新任支配人。 橘 睦月=遊の従弟。同ホテルのバーで働いている。 涼宮世利=チーフコンシェルジュで正臣の友人。多分、大分前の購入作品紹介記事にも載せてたと思うんですが、発行月をご覧になるとお分かりの様に、積読になってました(^_^;)何のことは無い、既読の方の棚に仕舞ってたって言う凡ミス。よく物を失くすのもこういうウッカリな性格のせいだろうなぁ。幸い同じ本を2回買ったとかは無いんだけど。「天国に一番近いホテル」として人気のフルールロイヤルホテル。そうと呼ばれる所以も相俟って、近年若い女性憧れの場所である。このホテルで結婚式を挙げるのは一つのステータスのようで、ハウスキーピング作業中のスタッフも雑談に話を咲かせる程。そんな話題にも乗らず一人黙々と仕事をする遊は、感情の出にくい顔のせいで同僚達からも遠巻きにされており、その表情から、たまに怒られている気になると批難めいたことを言われることも。本人からしてみれば単に自己表現が下手なだけで、怒ってもいない。かと言って、そのような気など更々ないと弁明するには性格上ハードルが高く、誤解は解けぬまま。壊滅的に人付き合いベタな遊の態度にめげず、気安く接してくれるのは同じくハウスキーピングスタッフの香苗くらいだ。そして、同じホテルのバーで働く従弟の睦月。小学生の頃に事故で両親を亡くし、親戚をたらい回しにされた遊が最終的に落ち着いたのが睦月が暮らす叔父の家。厄介者として叔母には随分邪険な態度を取られたが肩身の狭い思いをしていた遊を気遣い、仲良くしてくれたのが睦月だったのだ。彼には感謝してもしきれない。彼女にしてみれば両親と同じく睦月も大事な家族の一人で、肉親のいない彼女の為に毎年誕生日も祝ってくれている。その従弟のいるバーをしょっちゅう訪れては、彼の作るおススメのカクテルを飲む。遊のストレス解消の場だ。だが、今日は少し飲み過ぎた。昼間、また同僚に誤解され投げかけられた言葉が思いの外効いていたらしい。と言うより、それが切欠で過去に言われた心無い一言を思い出したせいなのだが。酔いを冷ますためにテラスに出た遊はそこで一人の男性に出会うも、悪酔いして倒れると言う失態を晒してしまった。しかも、男性は新たに配属されてきた支配人だと言う。ミーティングにて氷上正臣と紹介された彼は、明るい場所で見るとやはりイケメンだった。早速年若い女性従業員たちが騒いでいる。その名字から、このホテルの運営グループの関係者のようだが。氷上は就任早々宿泊部門のスタッフのテコ入れに乗り出すつもりの様で、現状の従業員の質の悪さを指摘。改善案として若手スタッフの士気を高めるためと称し職種ごとに優秀な者を選出、リーダーとして業務を纏めてもらうと言う。働きが認められれば昇進及び給料アップも望めるとのことだが、最初は支配人直々にどれだけ仕事ができるかテストされ、報告書を纏めて持って行くなど作業も増える。誰もやりたがらない学級委員みたいな役回りに、遊が嫌な予感を覚えていると案の定、彼女が選出されてしまった。氷上による作業手順等のテストは真面目で仕事が早いおかげで褒められた。だがやはり指摘されたのはこの誤解されやすい表情と性格。およそホテル勤務に向いていない性分で何故このホテルに就職希望を出したのかと質問され、話し難い内容を根気強く待ち遊の事情を聞いてくれた。初対面時で迷惑をかけた時もそうだが、この人も根は暖かい人なのかもしれない。恋とは無縁の人生ではあったが、大小トラブルを乗り越え氷上の為人を知るうちに心惹かれて行く遊。そして氷上もまた友人の世利の後押しもあり、遊と急接近。不器用で孤独な彼女を気にかけ、好意を寄せる様に。やがて二人は交際に至るも、その頃から睦月の様子がおかしい。なにやら複雑な思いがあるようで・・・。その他、遊の両親が亡くなった原因とか、彼女なりに変わって行こうとする過程、睦月の本心など色々あるんですけど、あんまりネタバレしてもアレなんでそこは敢えて割愛。興味のある方は読んでみてください。氷上に遊が語った睦月との思い出は読んでて何だか泣けました。不遇というか、その原因を招いたのは自分と言う罪悪感を抱えるヒロインが周囲の優しさや恋を知ることで幸せを知っていく良い内容だと思います。評価:★★★★★
2023.01.13
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2022年12月刊マーマレード文庫著者:砂川雨路さん初心な茜に、老舗呉服商の御曹司・睦月との縁談が舞い込む。跡継ぎのための子作りに緊張しつつ、昔から憧れていた彼に甘いときめきを与えられ…。一方、普段はクールなはずの睦月も、ある出来事をきっかけに、箍が外れたかのように執着愛全開に!?さらに茜の妊娠が発覚。愛の結晶を宿した茜に注ぐ睦月の独占欲と情熱は、ますます溢れて止まらずー。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 夏目茜=商業施設経営会社営業部の若手エース。取引先の社長に気に入られて、 学生時代の憧れの人だった睦月とお見合い結婚をした。夏目睦月=老舗呉服商の御曹司で営業本部長。茜を見初める。興沢葉月=睦月の妹。大井茜は入社5年の会社員。商業施設に出店する企業への営業が主な仕事でやり甲斐を感じている。今日も、新規オープンするショッピングモールでの店舗について、呉服商・なつめ屋に打ち合わせに訪れていた。なつめ屋の営業本部長である夏目睦月は、偶然にも学生時代の茜の憧れの人で、初めて担当として顔を合わせた時は驚いたものだ。とはいえ、飽く迄茜の一方的な片想いで彼は全く覚えていなかった。一応、会話を交わしたこともあったのにな。内心ガッカリはしたものの、彼の記憶に無いのは仕方ない。何せ夏目睦月はその容姿と優秀さから学園では「王子様」と呼ばれており、それそれは人気だったのだから。彼が主役なら自分など大勢いるモブキャラの一人。あれから10年以上経っても、睦月は変わらずカッコイイ。指輪はしていないので独身だとは思うが、きっと美人な恋人がいるんだろう。そう思っていた矢先、上司から茜に見合い話が持ち込まれた。お相手は何とあの夏目睦月と聞いて心底驚いたのだが、どうもなつめ屋の社長に茜が気に入られたかららしい。年回りも丁度良いし、大井さんならと白羽の矢が立ったと言う経緯とは言え、実際は会社同士の政略結婚の様なものだった。引き受けるか否か自由意志で構わないとは言われたけれど、内心では喜んでいる自分がいる。多分、親から言われての見合いだろうから、あちらからお断りされることだろう。しかし、予想に反して睦月は茜と結婚したいと言う。彼女の仕事ぶりは信頼できるし人柄も申し分ないからと。どうせ結婚するなら信用できる人としたい。睦月の言い分は尤もではあるけれど、本当にモブの自分なんかでいいのだろうか。でも、こうして茜を買ってくれているのだから素直に嬉しい。かくして二人の結婚は早々に決まったのだった。交際らしい交際もしないまま、ひと月後に結納を済ませそのまま同居。入籍した二人。彼氏いない歴年齢と言うのが何となく憚られて黙っていたら、初夜に怖がらせてしまったと睦月が気に病み新婚なのに長らくレスが続いた。実は睦月は営業担当になった茜に長らく片思いをしており、告白のチャンスを狙っていたのだが、ずるずる時間だけが過ぎて親に結婚をせっつかれるように。良い相手がいないなら見合いをしろと、候補者の中に茜がいるのを知り、彼女ならと承諾したら父が乗り気になったと言うわけだった。おかげで、違和感なくプロポーズできたと思う。学生時代の茜を覚えていないのは失態だったが、当時は王子なんて言う変なレッテルを貼られてて外面を保つのに必死だったのもある。だが、これからは彼女と夫婦として生きていくのだ。がっついてるつもりはなかったものの、彼女を気遣えず怖い目に合わせてしまったと猛省した睦月は、茜に触れなくなってしまった。そのせいで、やはり仕方なく結婚したのだろうかと茜が気にする結果に。お互い真面目過ぎる性格故にすれ違いの日々が続くも、茜を快く思っていなかった義妹の葉月の暴言に反論しているうちに、本来睦月に対して自分がどう接すれば良いのか思い当たり・・・。生真面目夫婦のじれじれ新婚生活って感じのお話です。このトラブルを切欠にお互いの想いを知り、晴れて両想いのラブラブカップルになって行くんですが、その間に第一子の妊娠発覚、前時代的な義父の考えにより育児か仕事かの二者択一を迫られたりと大小さまざまな騒動が起こります。その度に二人で力を合わせて乗り越えていく。終盤、睦月の元カノが現れて浮気疑惑が持ち上がるも、睦月側の心境も描かれてるおかげで読者は安心して読めるのが良いですね。舅はちょっと時代遅れ感があって未だに好きになれない印象ですが、その代わり姑が良い人でその辺の争いとは無縁っぽいのは何より。義妹の葉月は最初何なのこの性格ブスはと憤慨したものの、突っかかって来てた理由が判り、和解した後は根は良い子と判ってかなり評価が変わりました。正直、この子より元カノの方にムカついたしな。新婚夫婦の2年間を描いた内容で、以降も苦労することはあるだろうけど家族がいれば乗り越えられるねって感じで終わってるのですが、読後感の良い内容でした。評価:★★★★★ヒーロー側の心境が判るから杞憂なくサクサク読めます。
2023.01.06
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2022年9月刊マーマレード文庫著者:有允ひろみさんまひろは合コンで出会ったエリート警察官僚・公貴と、想定外の電撃婚をすることに。「君と子作りがしたい」-天涯孤独なまひろに庇護欲全開な彼の溺愛が加速して、夜ごと甘く抱き尽くされる毎日が始まった。ある日、二人の仲を揺るがす人物が現れるがーそれでも公貴を愛し抜こうとするまひろの健気さに、彼の過保護な激愛もさらに増すばかりで!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 清水まひろ=スーパーマーケット勤務の正社員。 御堂公貴=名家生まれの警視正。 高倉優香=スーパーたかくらの社長令嬢。まひろの友人。 田代=公貴の大学時代からの友人。2023年一発目です。こちらも危うく積読になりかけてました(^_^;)このレーベルにしては少し厚めの内容なのでざっくり目に。育ての親である祖母を失くして以降、天涯孤独のまひろが上京して一人暮らしを始めてから早8年。地域密着型のスーパーたかくらで元気に働くまひろは、客からの評判も良い。そんな彼女の夢は、結婚して温かい家庭を築くこと。だが、同僚の男性はほとんどが既婚者だし、あとはパートのおばちゃん達ばかり。結婚願望はあれど出会いのチャンスがほとんど無いのが目下の悩みだ。おかげで彼氏いない歴年齢を更新し続けている。そんなある日、友人の優香から合コンに誘われたまひろは、そこで運命的な出会いをします。大学の元山岳サークルメンバーだと言う男性陣は日本の最高学府卒なだけあってエリート揃い。優香もちゃっかり、田代と言う青年といい雰囲気になっていた。そこに遅れてやって来たのが、警察庁に勤めていると言う御堂公貴なる人物。がたいは良いのに眼鏡をかけた理知的な顔。まひろは一目で恋に落ちていた。公貴の方もまひろを気に入ったのか、何かと会話が弾み、帰りも送ってくれることに。別れがたかったのはお互い様だったようで、喫茶店でもう少し話すことにした二人。つい色々あの場で言えなかった互いの身の上を話すうち、自らの結婚願望を語ったまひろに公貴は、ならば僕と結婚しようとプロポーズ。数時間前に会ったばかりだと言うのに、まひろも自分も同じ気持ちだと彼の申し出を受け、かくして交際0日のスピード婚となったのだった。とはいえ、公貴は仕事柄多忙なこともあり、一先ず間近に迫ったまひろの誕生日に入籍を決め、式は追々考えることとなった。名家で資産家の御堂家の一員になるのは少々勇気がいったものの、公貴の家族は驕った所が一切なく、それどころか息子が漸く結婚する気になってくれたとまひろを歓迎。正直、交際すらしていないので彼のことはまだ全然知れていないが、この人だと思った自分の勘を信じたい。それ以前に単にお節介おばさん達からのお見合い攻撃に辟易しての結婚かと内心疑ったりもしたけれど、それも早々に誤解だと判って、仲睦まじく暮らしていた。順風満帆に進んでいる結婚生活。それでも彼も仕事の兼ね合いでトラブルもあったりしたが、何とか乗り越え、まひろはそれを機に将来の目標を持つように。そして、とある出来事からまひろと公貴は20年ほど前に出会っていたことが判り・・・。電撃婚の二人が実は会うべくして出会っていたって言う偶然が重なった結果なんですけど、良いお話でした。事情があって祖母が亡くなって以来親戚とは疎遠だったヒロインも、結婚相手が名家の出で警視正だと判ったら手のひらクルクルしてたのには冷めた目で読んじゃいましたけど、人は得てして金と権力には弱いものですからね。よくよく思えば、ヒロインはかなりの玉の輿なんじゃ。登場人物も良い人ばかりだったし、ストレス無く読みたい時におススメしたい本です。評価:★★★★☆
2023.01.01
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2022年12月刊マーマレード文庫著者:伊月ジュイさん家業を助けるため、資産家のパーティーに参加した恵真は、美貌の男性・絢斗と出会う。甘く不敵な態度に翻弄されつつも、強く惹かれて一夜を過ごし…判明した彼の素性は、旧財閥の御曹司!?絢斗は実家の援助と結婚を申し入れ、恵真に蕩けるほどの愛を捧げてくれた。けれど、ある事件をきっかけに恵真は記憶を失い、さらに予想外の妊娠が発覚して…!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 天花寺恵真=製薬会社社長令嬢。 榊絢斗=旧財閥・榊家の次男。 榊弦哉=榊家の長男で後継者。 天花寺翔真=恵真の兄。こちらも発売日からあまり日が経っていないので、ネタバレは控えめに。現社長である父の意向で難病の治療薬開発に力を入れている「天花寺製薬」しかし、開発に時間がかかる割に、需要の問題で利益は少ない。おかげで会社は倒産の危機に瀕していた。恵真は実家の事情を知り、せめて力になりたいと融資を頼むべく兄と共に資産家のパーティーに参加。ターゲットはこのパーティーの主役・榊弦哉。彼に取り入り融資を引き出すのが目下の目的なのだが、噂ではやり手ではあるもののかなり横暴で傲慢な人物らしい。何とか伝手を作ろうと近付くと同じく融資目当ての親子に悪態をつき追い返している。正直言えば、恵真個人としては大嫌いなタイプの人間だ。思わず、先ほどの親子への仕打ちに口出ししてしまって、別な意味で彼の興味を引いてしまったようだ。女好きとも聞いていたけれど、早速美人な恵真を部屋に誘って来た。兄は妹を差し出して迄融資を貰いたいわけではないと、帰るよう恵真を促したが、これで会社が救えるならと彼女は半分決意していた。それでも今一歩踏み出せない彼女に声を掛けて来たのは、絢斗と名乗る青年。彼は弦哉の誘いに乗ることは勧められないと恵真を連れ出し、自分が天花寺製薬を救ってやると言う。どうやら絢斗は名うての投資家らしく、弦哉を嫌っているのも手を貸す理由の一つとのこと。恵真にしてみれば、確かに融資してくれるならば弦哉で無くとも問題はない。寧ろ、あの言動に眉をひそめてもいたので、本当に絢人が助けてくれるのならばそれに越したことはないのだ。だが、ホッとしたのも束の間、絢人が提示した融資の条件は恵真の身体。正直幻滅もしたのだが、何故だか弦哉の時ほど嫌悪感は無いのが不思議で、彼女は絢斗の条件に従ったのだった。あれから暫く経ち、果たして絢斗は本当に会社を助けてくれるのか恵真は悶々と過ごしていた。話を詰めたいから連絡をくれと名刺をもらっても電話できないのは、半信半疑だったからだ。たった一晩の関係で多額の融資をしてくれるもの?迷っているうちにしびれを切らして絢斗の方が会社の方にコンタクトを取って来て、現状ベストと呼べる方向で天花寺製薬を存続させてくれるらしい。その祭、恵真との結婚を提示され家族は渋っていたが、二人は実はあのパーティー以来交際していると言う体で話したことで、これは政略結婚ではないと納得させた。絢斗と弦哉は実の兄弟なのだが壊滅的に仲が悪かった。と言うより、絢人は兄を心底恨んでおり、どうやら本来の後継者だった長女の失脚が絡んでいるらしい。絢斗はどことなくその姉と重なる恵真を放って置けず、その為人を知り彼女に惹かれて行き、恵真もまた絢人にあの夜初めてあった時から好きだった。出会いの経緯はともかく、婚約者として仲睦まじく過ごしていた二人に弦哉が横やりを入れ、様々なトラブルに巻き込まれます。天花寺製薬の取り込み始め、何とか回避して来たものの、ある日恵真は弦哉によって歩道橋の階段から突き落とされて重症を負い・・・。弦哉がもう、こんな奴に金と権力を与えちゃいけないって言う典型的な奴で、中盤の胸糞展開はもう読むのも辛かった。こいつが何か話すたびにムカついてしょうがない。それでも諦めなかった絢斗や、弦哉から酷い目に合わされた被害者たちの反撃により彼は相応の報いを受けることに。終盤、ここまで来てやっとだよーと安堵。一応、タイトルにある通り途中恵真の妊娠が発覚。終盤には無事長女も産まれます。じれじれと言うか悶々展開もありましたが、ちゃんと悪役が成敗されただけで満足。ぶっちゃけ、どう見てもザマァ案件だろうと確信できる程のやらかしぶりだったもんなぁ。マジでヘイト溜めすぎィ。評価:★★★★★
2022.12.24
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2022年12月刊マーマレード文庫著者:西條六花さん依子が派遣された家事代行サービスの依頼主は、イケメンニュースキャスターとして話題の人物・慶一だった。彼のことを知らず、淡々と仕事をこなす依子の態度が慶一の独占欲を煽り…!? 真剣に迫られ、依子も心を動かされてしまう。有名人である慶一との関係は誰にも秘密のまま、甘い声で囁く彼との蕩けるような日々が始まり、怒涛の溺愛が加速して…。 ↑amazonより、あらすじ引用登場人物 掛井依子=とある事情でダブルワークで働く苦労人。 家事代行サービスのバイトで人気キャスター・伊尾木の担当になる。伊尾木慶一=クールキャラで人気のニュースキャスター。 喜瀬藍子=有名女優。 掛井麻美=依子の継母。昨日、行きつけの書店さんに並んでたので、今月のマーマレード文庫全部買っちゃいました。購入予定作は2点のみだったはずなのに・・・。多分、ベリーズ文庫の方も都内では今日か明日には店頭に並ぶはずなので、また積読本が増える(^_^;)とは言え、読みたい作家さんだから購入してるので、なるべく早めに読んで記事を上げます。先月の購入分もまだ全部上げれてないし。今作は発売ほやほやの文庫です。あんまりネタバレしてもアレなので、こういう内容ですよってことだけざっくりと。心臓に疾患がある異母弟が入退院を繰り返していると言う理由で、継母から毎月結構な額の仕送りを頼まれている依子は、大好きな花屋だけは辞めたくないと、週2回だけ家事代行サービスのアルバイトをしている。ある日、派遣されたのは人気ニュースキャスター・伊尾木慶一の住まいだった。しかし、多忙過ぎて依子はテレビをほとんど見ていない。自宅だと言うのに、マスクにサングラスまでして、顔を隠した対応をしていた伊尾木は拍子抜け。名前でバレてるかとは思ったが依子のあまりのスルーっぷりに逆に興味を惹かれます。芸能関係の人間に興味も示さず、黙々と掃除をこなし出て来る料理も美味い。慶一はその後も依子を指名してくれるように。依子の方も改めて敬一の顔を見てカッコイイ人だなと思いつつ、指名されると時給も上乗せされるので大喜び。それに初対面時の印象は悪かったものの、誤解が解けてちゃんと謝罪もしてくれたし、仕事柄警戒心を持つのも仕方ないと思う。今では結構打ち解けて来たし、規定で作業中の私語は禁じられているが、彼に請われてお互いのことをポツポツと話すように。思いがけない慶一の悩みなども聞いてしまい、つい自分もダブルワークをしているワケを話してしまった。だが、彼はその話を聞いて思う所があるよう。その頃から何故か、慶一からのアプローチが増え、彼からの告白で依子もまた慶一に心奪われていたこともあって二人は恋人関係に。彼から溺愛されて幸せの絶頂であったが、気になるのは継母から仕送りを増やして欲しいとひっきりなしに連絡が来るのと、慶一が密かに連絡を取っているらしい女性がいるらしいこと。仕送りの方は食費を削ればなんとかなるかと考えているものの、問題は女の影だ。嫌な予感は的中。慶一と有名女優・喜瀬藍子との熱愛報道が出て・・・。まぁ、これは写真を撮られた経緯が描かれてるのと、そもそも依子にベタ惚れの慶一が浮気するわけないのは読者目線方で見れば報道側の勇み足なのは一目瞭然。本人からの説明で依子の誤解も解けて事なきを得ます。継母の方は絶対になんかあると思いきや、やっぱり。正直、金が必要な理由については私も慶一と同じ予想してたんですが、そういえば今のご時世だとそれもあるのかと納得。知識が無い人は迂闊に手を出すものではないとしみじみ思いました。割とサクサク読める内容なので、買ってすぐ読み終わってしまいました。ヒーローが思ってたより可愛い人だし、ヒロインの仕事人ぶりも好印象。作中出て来る料理がどれも美味しそうで読んでるとお腹が空きます。評価:★★★★★
2022.12.07
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2022年11月刊マーマレード文庫著者:高田ちさきさん社内恋愛禁止の大手自動車メーカーで働く文乃と、敏腕御曹司・聡は急速に惹かれ合い、内緒で電撃婚をした禁断の新婚夫婦!バレないよう仕事に徹するつもりが、会社でも周りの目を盗んで濃密に迫ってくる聡に、困りながらも日々ときめいてしまう文乃。この関係は絶対秘密なのに、クールな彼からは想像できないほどの激しい愛欲に抗いきなくて…。 ↑公式サイトより、あらすじ引用登場人物 矢立文乃=自動車会社の経理部に勤める会社員。旧姓・十和田 矢立聡=神郷自動車の御曹司。文乃と交際の末入籍した。南部奈々恵=文乃の先輩社員で教育係。9日発売の新刊なので、本当にざっくりと。文乃は憧れていた神郷自動車に採用され、現在研修期間真っ最中。そんな折に出会った矢立聡と恋に落ちます。優しくハンサムな彼とラブラブな生活を送っていたある日、彼からプロポーズされ、承諾。文乃の母は大層喜んでくれたが、聡の両親に挨拶に行くと驚愕の事実が。何と、彼は神郷自動車の御曹司だったのだ。とは言え、聡の素性がどうあれ、気持ちは変わらないし母に認めてもらった際に入籍も済ませてしまっていた。当然、聡の両親は驚き息子を叱責したが、入籍済みと聞くと渋々だが認めてくれた。しかし、彼の両親は他にもこの結婚に関して懸念事項があるらしい。それというのも、この神郷自動車には「社内恋愛禁止」という厳しい規則があった。破ると即クビという、聊か時代錯誤なこの規則は誰もがバカらしいとは思っていたものの、会長の手前規則の撤廃を唱える者は誰一人いない。義両親の説得もあり、二人の入籍は暫く伏せられることになったのだった。だが如何せん新婚カップルなので、聡の方が我慢が効かず旧姓を名乗って働いている文乃に何かと理由を付けては会いに来る。ハンサムな彼は女性人気が高くモテるが、皮肉なことに例の規則のおかげで言い寄る輩がいないのは助かる。でも、代わりに自分達は陰で付き合っているのではと噂されていた。この状況は非常に拙い。そんな時、聡の入籍を知らない会長が、彼に縁談を進めて来て・・・。この見合い相手がお嬢様気質なせいか、結構な困ったちゃんで、恋人と噂のある文乃に彼と別れろと強要したり色々とトラブルを引き起こします。おかげで文乃は精神的ストレスを負うことになるんですが、辞退を察した聡も黙ってはおらず行動に移すことに。終盤はお家騒動も絡めてすったもんだあるものの大団円と呼べるほど、見事に解決を見せるのです。これからは社内結婚カップルが増えそうだねって感じでお終い。高校生じゃあるまいし、今時社則に恋愛禁止とか、こんなことでクビになった社員達が気の毒過ぎる。と思ってたら、この規則が出来たのも理由があったことも判明。これがまたしょーもない理由で、バカバカしいルールと言われるのもさもありなん。そもそも、ヒロインが退職すれば済む話だったのだけれど、この辺も事情があるのと悪習は改善されるべきとは思うので、綺麗に解決してくれて良かったかも。評価:★★★★☆細かい所に目を瞑れば良作。
2022.11.09
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2022年10月刊マーマレード文庫著者:ひなの琴莉さん老舗酒造の娘・雪華は実家を救うため大企業の御曹司・晴臣と政略結婚することに。彼は以前バーで出会い好意を持った相手だった。「探してたんだ。どんな手を使ってでも、君を手に入れたいと思って」愛のない結婚だと諦めていたのに、溺愛執着する晴臣に身も心も愛される雪華。彼に近付く元カノの噂に戸惑うも、妊娠が発覚し、愛情はさらに加速して!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 大元雪華=老舗酒造の長女。家業が傾き、援助を申し出た晴臣から政略結婚を 持ち掛けられる。 宇佐川晴臣=大手アルコールメーカーの御曹司で副社長。偶然出会って一緒に飲 んだ雪華に惚れて以降、彼女を探し出して求婚した。 村瀬紀夫=晴臣の高校時代からの友人で秘書。 杉崎愛子=雪華の同僚で友人。 倉敷真理=晴臣の元カノでタレント執着系ヒーローに惚れられた初心なヒロインの結婚話です。雪華は北海道の老舗酒造の長女。育った環境もあってか大の酒好きで飲み方についてもチト煩い。仕事を頑張ったご褒美として立ち寄ったお高めのホテルのバーにて一人飲みと洒落込んでいた雪華は、カウンターに座る青年のダメダメな飲み方が気になって仕方ない。何か嫌な事でもあったのか、急ピッチで飲み進めつまみのチョイスもなっておらず、思わず雪華は余計なお世話と思いつつも青年に声を掛けてしまった。これを飲んでるならこのつまみを選んでくれと言いかけた傍から、青年は逆ナンと思ったらしい。不機嫌そうな態度に思わず、酒のレクチャーをしたかっただけだと言うと、なっていない飲み方をしている自覚はあったのか、彼はバツが悪そうだった。態度も軟化し、改めて彼を見るとモデル化俳優かと思う程のハンサム。きっとモテるんだろう。そりゃ逆ナンかと警戒されるわけだ。謝罪されて、酒好き&酒造の娘という立場から余計なお世話をしてしまったと雪華も平謝り。でも、彼女おススメのつまみと清酒の組み合わせは確かに絶品で、彼は大喜びだった。どうせなら一緒に飲もうと二人で酒を酌み交わしていたら、アルコールのせいで雪華はつい自らの身の上話を彼にしてしまっていた。産まれは北海道で実家は酒造をしていること、本当は家業を手伝いたかったけれど5年前酒蔵が火事になりその時父も亡くなって現在は家業の存続が危ぶまれている等。聞き上手な彼にベラベラ喋ったことで、ずっとわだかまっていた不安が少し軽くなった気がする。お互いハルとユキと名乗って随分盛り上がってが、その場は別れた。この出会いのおかげで、仕事でも好成績を出し3か月の海外研修にも行かせてもらってホクホクしていたある日、実家から呼び出しが。弟が継いで細々と営んでいる酒造を援助したいと言う人物が現れたらしい。それもあの有名な大手アルコールメーカーだと言うから母と弟は驚きながらも喜んでいた。だが、先方は是非雪華を交えて契約等をしたいとの申し出があったそうで、一先ず帰ってきて欲しいとのこと。そういうことならと、久しぶりに実家に戻った雪華は、先方を出迎えたのだが、やって来た青年を見て驚愕。あのバーで出会った人ではないか。名刺を見るとメーカー名と副社長という肩書に宇佐川晴臣とあった。晴臣の申し出は大元酒造をUSAKAWAの子会社化して、販売諸々手を貸すので存続させたいとのことだった。それにある程度大元側は自由にしてもらっていいと言う。元々日本酒部門に力を入れるプランの一環と捉えてくれとは言うけれど、こんな好条件でUSAKAWAに利はあるんだろうか。と思っていたら案の定、条件を出して来た。彼はあろうことか雪華と結婚したいと言う。傘下企業の娘と本社社長の息子との結婚は割とある話で、彼の父もこの話に乗り気らしい。俗に言う政略結婚に母も弟も、雪華を気遣い自分を犠牲にすることはないと言ってくれたが、酒造を立て直す最大のチャンス。彼女の決心は既についていた。かくして雪華は晴臣と婚約したのだった。結婚したら家庭に入ってほしいと言われ、海外研修にまで行かせてくれた会社を辞めることになったのは心苦しいが、政略結婚といえど晴臣のことが嫌なわけではない。寧ろ好意的に思っている。愛子には退職を残念がられたものの、これは自分が決めたこと。晴臣は一見とっつきにくい印象はあるが、雪華に対しては穏やかで優しい。式に関しては大企業ともなると規模が大きいので後回しで、一先ず入籍をして同居することになった。交際期間がゼロに近い割には、二人は気が合った。雪華の家庭料理を喜ぶ晴臣は可愛いと思う。結婚の経緯はともかく、仲良くやっていきたいと彼は言っていたし、姑が跡継ぎを急かしたりはあってもまぁ上手くやっている。それでも口さがない噂は立つもので、今度新商品のCMに起用された女優の倉敷真理が晴臣の元カノだと知って愕然。どうしようもない不安に駆られるのは最近体調不良だからか。そんなある日、自分の妊娠に気付いた雪華。晴臣も義両親も大層な喜びようで嬉しい。だが、出産まであと2ヶ月を切った頃、真理がマンションを訪ねて来て・・・。この一件で誤解が生じ、二人の関係が拗れかけるも、真理とはもう何の関係も無い事が判ります。この女がまぁ性悪で、交際していた当時も何股もかけて晴臣を傷つけた人物でした。おかげで女性不信になった晴臣は暫く恋愛から遠ざかっていたのだけど、あの日雪華に会って、その人柄に惚れこみ絶対に逃がすまいと外堀を埋めた結果がこの政略結婚だったというワケ。大元酒造を助けたのも、雪華を手に入れるためだったんだからその執着たるや、凄まじい。そりゃ、秘書兼親友の村瀬さんにも呆れられるよ。真理からは金蔓としてまた迫られたものの、彼にはもう雪華がいたので、誘惑には乗らず夫婦仲も修復。姑も大喜びで、後に披露宴も執り行い、数か月後無事に長男を出産した雪華。ラストは夫婦仲睦まじい様子が描かれてお終い。このヒロイン、いい子だとは思うけれどそんなに執着される程の子かなぁと疑問に感じつつも、きっと何かがヒーローの琴線に触れたんでしょう。まぁ、元カノが顔だけの性格ブスだったしな。姑がちょっとテンプレな人ではありましたが、ヒロインも上手く扱ってるようなので害は無さそう。元カノについては結構な終盤に登場だったので、恐らく解決も早いだろうと予想してたら読み通り、全くヒーローに相手にされておらずでスッキリ。その分、つわりで精神不安定だったヒロインがグルグル悩んじゃってましたが、じれじれするのはそこくらいです。評価:★★★★☆実家も助かってウィンウィン。
2022.10.31
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2022年10月刊マーマレード文庫著者:有坂芽流さん老舗食器メーカーの家業を立て直そうと必死な花純は、義母と義妹の狡猾な罠で、怪物のように醜いと噂の北条財閥の御曹司・遥己と政略結婚をすることに!しかし遙己は、実は美しく怜悧な外科医だった。一途に尽くす花純に、遙己の過去の傷も溶け癒されていく。さらに義妹の悪意から救ってくれた夜、遥己に「待たない。もう」と甘い情熱で蕩かされ…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 北条花純=旧姓・南条。老舗食器メーカーの社長令嬢。 実家への融資を条件に義妹の身代わりで遥己に嫁いだ。 北条遥己=旧華族の家柄の御曹司で外科医。一切甘い顔をしない事から謂れの無 い悪評が立ち、中々縁談が決まらなかった。 南条薫子=花純の継母。 南条玲子=花純の義妹。 吉岡=北条家の住み込みの使用人。 和江=南条家の家政婦。花純は老舗食器メーカー会社の社長令嬢。だが、父の代になってからというもの、経営は火の車で、かつて流行った人気のデザインを復刻して再起を図ろうにもその資金繰りに難儀する始末。花純は事務の仕事の傍ら、ハウスキーピングのバイトで影ながら家計を支えていたのだが、この家にはとんでもない金食い虫がいた。病気で妻を亡くし落ち込んでいた父が親戚に紹介されて再婚した薫子とその連れ子である玲子は、経営が傾き金策に走り回っている父のことなどお構いなしに金を使う。終いには生活費にまで手を付けるので、水道光熱費は花純が働かなければ滞ってしまう程。薫子たちは生粋のお嬢様である花純に劣等感があるのか、南条家にやって来たときから殊更彼女に当たりがきつく、随分と虐められたものだ。父も、下手に自分が庇うと後で娘が余計にひどい目に合うのが判っているからか、近年では申し訳なさそうな顔をするだけ。花純の味方は、長年薄給でも働いてくれている住み込みの家政婦・和江だけであった。そんなある日、花純は薫子から見合いをしろと命じられた。相手は旧華族・北条家の当主遥己。しかも、既に輿入れすることは決まっており、飽く迄顔合わせの席になるようだ。寝耳に水の話に花純は突っぱねようとするも、断るなら和江を解雇すると言われれば受けるしかなかった。だが、本来はこの縁談は玲子宛に打診されたもので、義妹が嫌がったから花純に押し付けたらしい。遥己は優秀な外科医ながら、怪物の様に醜い男ともっぱらな評判で、今まで数々の縁談が破談となりお相手の令嬢からの評判が最悪。それを耳にし、真に受けた玲子が釣り書すら見ずに丸投げしたと言うことか。和江から事情を聞いて腹も立ったが、身寄りのない和江を路頭に迷わせるのは論外だ。それに、北条はいくつも会社を経営する資産家。南条家に多額の融資と経営の立て直しのための便宜も図ってくれるそうだ。自分が我慢すれば済む話と無理矢理納得して挑んだ見合いの席で出会った当の遥己はブ男どころか、長身で大層な美青年であった。おまけに、花純はハウスキーピングのバイト先で彼に出会った事がある。随分とカッコイイ人だと思わず見惚れたものだが、確かに顔は綺麗だが無表情で少々怖い印象がある。目つきが厳しいから睨まれていると思うのも無理はない。それが周り回って変な噂になったのだろう。薫子のせいで見合いの席で少々ハプニングはあったものの、顔合わせは一先ず成功に終わり二人の政略結婚が決まった。玲子は遥己が美青年だったと知って後悔し切りで、挙式後はショックで寝込んでしまったそうだ。北条家に移り住んだ、花純は古参の使用人吉岡に北条夫人としての厳しい教えの洗礼を受けたが、お嬢様ながら実家でこき使われていた花純には屁でもなかった。逆に使用人たちからの信頼も得て、彼女の評判はうなぎのぼり。気難しい遥己も花純を気に掛けるように。夫婦仲も徐々にだが進展していったのだが、いざ花純が実家に様子見に行くと待っているのは辛い現実。義妹に妬まれ、継母からは大事な形見のティーセットを故意に割られるなどの嫌がらせは堪える。資金難から解放され、父に感謝されたのだけが救い。継母と義妹との折り合いが良くないことはさすがに遥己にも気付かれ、割れたティーセットの修復も手を尽くしてくれた。当初は仮面夫婦も覚悟していたのに、今では仲の良い夫婦となった二人。今年のクリスマスは団扇でパーティーをしようと使用人たちと楽しく準備をしていたら、招待もしていないのに薫子と玲子が北条邸を訪れて・・・。この継母と義妹がとんでもないクズで、薫子を後妻にと紹介した親戚は責任取れやっ!まあ、父親も我関せずな態度取ってたのが増長させてたんでしょうけど、この人も良くない。最後は自ら引導を渡したようだけど、決心するのが遅いんだよ(イラっ)タイトル通り薄幸過ぎるヒロイン・花純でしたが、感情表現は乏しいけど優しい人の元に嫁げてよかった。あの家を出たおかげで、いわれっぱなし&やられっぱなしじゃなくて戦う心を持てたのは大きいと思います。あのクソ義妹、離婚して遥己を譲れとまで言ってたからね。おまけに招待されていない家のパーティーに参加し、帰り際に義娘の部屋を漁ってブランド品を持ち去ろうとか性格悪いだけでなく泥棒とは質が悪すぎる。継母は離婚されて当然。南条家追い出されてどうやって生きていくのか見ものです。ヒーローの遥己については、この人目線の回想にて生い立ちが語られているんですが、彼もなかなかの苦労人というか、まぁこういう風に育ってしまうよねって印象でした。ラストは数年後、夫婦が3人もの子宝に恵まれて幸せそうな家族の様子が描かれてお終い。評価:★★★★☆お話は凄く良いんですけど、あの継母と義妹のせいでムカついてしょうがない。ストーリーは★5キャラが★4.5ってとこかな。
2022.10.28
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2022年9月刊マーマレード文庫著者:真彩mahya-さん寧々は貧しい両親を助けるため、不本意な政略結婚を強いられる。ところが相手は、以前助けてくれた憧れのエリート陸軍大尉・隆清で!?「本当の夫婦にならないか」-仮面夫婦と思いきや、『鬼大尉』の異名とは裏腹に寧々を過保護に愛でる彼。さらに、ある一夜をきっかけに、独占欲を煽られた隆清の情熱的な溺愛で、寧々は身も心も染められていき…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 有坂寧々=旧姓・高槻。無名の剣術道場の一人娘。 困窮する家の為に華族で大金持ちの有坂家へ嫁いだ。 有坂隆清=寧々の夫で陸軍大尉。シベリア出征の際に多大な功績を上げ、付いた渾名は「戦術の 天才」。縁談を断り続けるのが面倒になり、一番柵の無さそうな寧々を結婚相手に選 んだ。二条院晶子=華族の令嬢で隆清に入れ上げていたが敢無くフラれた。寧々を妬むも後に和解。友人 関係になる。 片岡=隆清の父方の叔父。百貨店を営む豪商で、寧々の父に職を斡旋するのを条件に隆清と の縁談を持ちこんだ。 相模=有坂家の使用人。今月の新刊です。タイトルに生贄とありますが、そこまでドロドロとはしていません。若干ミステリ要素も加味されてる程度。発売日からまだ一ヶ月経っていないので、ネタバレの方はざっくりと。寧々は無名の剣術道場の一人娘。無名なだけあって門下生も少なく、家族3人の生活は苦しい。彼女ももう20歳。自分が婿を取って少しでも両親に楽させてやりたいが、こんな貧乏道場に婿入りしてくれる奇特な人物など早々いないだろう。ある日、寧々は小銭稼ぎの出稽古の帰り路で学生らしき男たち数名に絡まれた。この程度、別段脅威に感じることも無い相手だったけれど、通りがかりの軍人が颯爽と現れ彼らを追い払ってくれた。よくよく見るとその軍人さんは背が高く、なんともカッコイイ青年だ。恐らく20代後半くらい?思わず見惚れてしまい、別れた後も何かにつけ思い出していた。それから数日後。夕食の席で何やら神妙な顔の両親から、家の為に嫁に行ってくれないかと頼まれます。道場の経営も芳しくなく、出稽古や内職などをこなして食いつないでいたものの、もう二進も三進も行かない状況らしい。加えて、母が過労のせいで病を患ってしまった。そんな折持ち込まれたのが、爵位持ちの軍人との縁談。どうしてそんな由緒正しい家がこんな貧乏道場の娘と。まさか、若い嫁が欲しいだけとかいうじいさんとか?寧々は納得いかず、更なる説明を求めたが、父もあまり詳しくは知らされていないようだ。だが、応じてくれれば仲介人が父に職を斡旋してくれるという。それも警察学校の剣術指南を。確かにかなりの好条件。自分が頷けば両親は助かる。泣き落とされて寧々は渋々承諾したのだった。善は急げと早々に結納が交わされた。相手は有坂隆清と言うらしい。伯爵家当主で陸軍大尉。大尉ってくらいだから、きっと30は超えてるか。どうせならあの人が相手ならなんぼか良かったのに。仲介人は隆清の叔父で片岡と名乗った。肝心の本人は仕事で抜けられずこうして代理できてくれたようで、取り敢えず夫になる人はどんな方なのか尋ねてみた。隆清は幼いころに両親を亡くし、屋敷で数人の使用人と暮らしているとかで、少なくとも嫁姑の柵は無さそうだ。数年前のシベリア出征にて功績を上げ異例の出世を果たし大尉にまで登り詰めたという。かなり厳しい人物らしく鬼大尉と迄呼ばれているようだが、飽く迄それは任務の時だけだから、とフォローされても不安しかない。取り敢えず、大まかな人物像は判った。まあ、向こうも一緒に暮らして見て期待外れだと思えば離縁してくれるかもしれない。それまで精々裕福な生活を味わうか。そう気楽に考えながら、いよいよ式本番。式場に現れたのはあのカッコイイ軍人さんではないか。異例の大出世ね、25歳だという彼が大尉とは相当優秀だということだ。夫があの人だったのは嬉しいが、隆清自体はこの結婚になんの感慨もないようでガッカリ。どうも、財産目当てやら出世株な事からひっきりなしに縁談を持ちこまれて嫌気がさし、片岡から柵が無いし良い子だからと是非と薦められたのが寧々だったらしい。なんかもう断るのも面倒だから、とまで言われてムカっとは来たが、自由に暮らしてくれて構わないと言われて気が変わった。食事も美味しいし、屋敷は綺麗な洋館。古参の使用人と言う相模はアレコレ口煩いが、隆清自身は先に宣言した通り、寧々に干渉する気はないようだ。ならば離縁する必要も無い。ここで気楽に暮らそうではないか。輿入れしてすぐの頃はあんな事を言ってはいたが一緒に暮らすうち、隆清は風変わりな寧々を気に入り、何かと気遣ってくれるように。時には嫉妬心バリバリな態度を見せたりと随分と変わったものだ。寧々自身も元々、結婚するならと思っていた相手だっただけにどんどん二人の仲は近付いて行きます。途中、彼に入れ上げていたという晶子が屋敷に乗り込んできて、自分は隆清と恋人関係だったのだ吹き込まれたが、どう考えてもあの面倒くさがりな彼がやりそうもない事ばかりで一笑に付していた。お嬢様なだけあって世間知らずで空想癖でもあるのだろう。そんなある日、寧々は外出先で男に襲われあわや殺されかけるも、隆清のおかげで事なきを得ます。まさか、あのお嬢様そこ迄私を恨んでるの?と、居ても立っても居られずに二条院邸に向かったが、あっさり本人に否定されて拍子抜け。晶子は先日の見合いで相手の御曹司に一目惚れしたとかで、もう隆清に未練はないという。これはきっと有坂家の財産狙いに違いないと晶子は決めつけていたが、となると怪しいのは片岡?隆清が心配し、部下を警護に着けてくれたものの、寧々の両親も狙われていたことが判り・・・。犯人は叔父さんではありません。隆清のシベリア出征時代に纏わることで、とある人物に恨まれていたってオチだったんですが、正直戦下じゃどうしようもないよなぁ。犯人の心情を考えると気の毒だとは思いますが。でも事件を経て、二人の仲は一層深まりラスト間際で寧々の妊娠が発覚。仲睦まじい夫婦の様子が描かれてお終い。個人的に晶子お嬢様が良いキャラしててお気に入り。逆に寧々の性格が中盤まで好きになれなかったんですが、隆清とラブラブになってからは随分と可愛らしくなったので、盛り返した印象。やっぱりヒロインは多少の可愛気は必要だと思います。評価:★★★★★お話自体は文句なしに面白いです。
2022.09.24
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2022年7月刊マーマレード文庫著者:宇佐木さん親に勧められるまま、突然のお見合いで政略結婚が決まった社長令嬢の七海。夫婦になったのに会社では秘密。しかも旦那様になった御曹司・良知は仕事第一のクールな性格で、愛のない淡白な新婚生活の始まり…と思いきや、想像以上の溺愛が待っていて!?甘く刺激的に囁かれ、大人の手練手管で迫られ、ウブな七海は初めて知る極上の愛から逃れられず…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 天嶺七海=旧姓・梶浦。コンサルティング会社社長令嬢。両親を尊敬し、言われ るがまま良知と政略結婚をした。 天嶺良知=大手商社の御曹司で七海の夫。3年前から七海の父親の会社に出向し ている。優秀でイケメンの為女性人気も高い。 甲本桜=七海の先輩社員。 天嶺藤子=良知の母親。妻は働かず、家を守るべきと七海に退職して専業主婦に なるよう再三促していた。先月購入して積読になってた本ですが、びっくりするほど内容が淡々としてるので、特にネタバレするような事柄が無く(^_^;)ヒロイン・七海は大好きな父からいずれお前は見合い結婚するんだぞ、と言われて以降、自分は親の決めた相手と政略結婚するのだと何となくだけれど覚悟していました。でも、それが嫌だと思うことは無く、両親が決めた相手なら間違いないと固く信じていたから。そんな彼女も、社会勉強と少しでも父の仕事を理解したいと父が社長を務める大手コンサルティング会社に就職します。特別扱いされたくなくて母の旧姓を名乗って務めるつもりだったが、父は却下。社員全員に社長の娘だとバレていた。入社して1年経つが、おかげで未だに遠巻きにされている。陰口ではないものの扱いにくいと言われているのを耳にしてかなりショックを受けた。周りの様子を気にせず、七海と仲良くしてくれているのはたまに組むことがある先輩社員・桜くらいだった。ある日、両親から見合いがあると聞かされた七海。いよいよ父のお眼鏡に叶う相手が見つかったのかと、ホテルのラウンジに向かうとそこにいたのは以前から気になっていた天嶺良知であった。どうやら、父が再三娘と結婚して欲しいと打診していたらしい。同じ会社に勤めているとはいえ部署が違う為、この1年で2,3回顔を合わせた程度。彼にしてみればよく知らない女性との結婚などいいのかと思いきや、この見合い自体、既に結婚は確定の顔合わせの場だったようだ。改めて良知から求婚の言葉もあって早々に結納を交わし、その3週間後には入籍。今は良知が暮らしていたタワマンで一緒に暮らしている。式は両家の仕事柄豪勢なものになりそうだったので、後日改めてとなった。良知は一見冷たそうな外見ながら、気配り上手で何かと七海を気遣ってくれている。花嫁修業として料理上手の母親からみっちり仕込まれている七海の手料理を褒め、食事の準備もあるだろうからと最近は帰るコールも忘れない。親が決めた相手とは言え、七海にとってはずっと気になっていた人との結婚生活。彼は優しいし何ら不満も無い。けれど、結婚したことは周りには伏せて欲しいとお願いした。気恥ずかしいのもあるが、近々昇進が決まっている彼が社長の娘と結婚したとなれば縁故のおかげと捉えられかねない。とは言え、良知は優秀なので、そんな陰口が出たとしてもすぐ払拭はされるだろうけれど。一先ず、普段から良知に気がある素振りをしていた桜には、彼との結婚を打ち明けた。何のことはない、自分でも呆れるくらい嫉妬してしまったからだ。軽く自己嫌悪に陥った七海の心とは裏腹に、桜は祝福してくれた。そんなある日、七海は良知が綺麗な女性と二人親し気に歩いている所を目撃してしまい・・・。まあ、これは普通に良知は普段から仲が良い叔母と遭ってただけで、このモヤモヤを切欠に何となく機会を逃していた初夜に漕ぎ着けます。多少は本音を言い合えるようになると、良知が七海に結婚指輪をして欲しいと懇願。結局、目ざとい女性社員達にお揃いの指輪をしているのを知られて二人の結婚はオープンに。七海の余計な気遣いで伏せていただけだったこともあり、特に騒ぎにもならなかった。しかし、結婚後も仕事を続けている七海に良知の母・藤子は思う所があるらしく、どうにも棘のある態度。良知自身や舅である義父は好きにしたらいいと言ってくれているだけに何だかいたたまれない。実母にさり気なくリサーチもしてみたが、社長夫人ともなるとやはり内助の功は必要ではないかと言う。でも、時代も違うし母も七海次第とも言っていた。色々考えた末、藤子ともじっくり話し合い、七海が行く行くは家庭に入ると約束したことで一応の決着となった。数か月後、諸々の準備期間を経て挙式と披露宴を行い、その1年半後長女が産まれた頃には七海は仕事を辞め、専業主婦として良知を支えるようになって、幕。終盤、良知に惚れていた勘違い女に七海が喧嘩売られたり、ちょっとした騒動もあるんですけど、それ以外は本当に淡々とした二人の新婚生活の話に終始。ヒロインが親の敷いたレールを歩くことに抵抗ない子なだけに、政略結婚でも波風も早々立たなかったなって印象です。まあ、元々良いなって思ってた人との結婚でしたしね。ので、この淡々さが退屈かそうでない人によって評価は分かれそう。余計な恋のライバルが現れなかった分、安心して読めるのは良かったかも。評価:★★★★
2022.09.09
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2022年8月刊マーマレード文庫著者:若菜モモさん古城取材でイギリスを訪れたライターの夏妃は、不動産投資会社のCEO・瑠偉と交渉し、彼が城主を務める憧れの城に滞在することに。爵位を持った高貴な身分にもかかわらず、瑠偉は夏妃を過保護に愛でて、溢れる大人の色気で魅了してくる。「早く君を、私のものにしたい」-身分違いだとわかっているのに、底なしの愛に惹かれる想いを止められず…!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 広瀬夏妃=27歳のフリーライター。イギリスの古城に魅せられ、城館の魅力や 歴史を纏めた書籍の出版に向けて努力していた。中でも一際惹かれた ブレイクリー城の取材許可を得る為に、イギリスに向かう。 瑠偉=ブレイクリー家の当主で子爵位を持つ日英ハーフの青年。不動産会社 のCEOでもあり、多忙ながら夏妃の熱意を気に入り取材許可を出した 関口智也=大手出版社の編集で夏妃の書籍企画の編集者。夏妃に気がある。 リリアン=バーネット家の当主。瑠偉とは旧知の仲で未亡人。 長らく瑠偉に想いを寄せていた。 アニタ=瑠偉の秘書。周囲には瑠偉の恋人だと匂わせるなど、本人の預かり知 らぬ所で外堀を埋めていた。若菜モモさんの最新作です。ヒーローは城主と言う、現代ものながら全体的に独特の雰囲気がありました。文庫本は情報量が多いのでざっくりと。フリーライターの夏妃は、古城に魅せられ、いつか城館に纏わる話などを纏めた書籍を出したいと努力していた。それなりにマニアがいるジャンルなれど、書籍化ともなると企画が通り難い。いざとなったら自費出版ででもと考えていた矢先、知り合いの編集・関口が相談に乗ってくれて、企画が形になりそうだ。当然、以降は夏妃の手腕に掛かってくるのだが、メジャーで人気の城は当然乗せるとして、どうしてもメインにしたいイギリスの城館があって、以前から取材依頼を3回ほど出している。そして、今日3回目の断りのメールが城主の秘書から送られて来てガックリ。夏妃が推しているブレイクリー城は、元々一般公開もされておらず年に一度だけ内部が解放される程度。メジャーではないけれど知る人ぞ知るな存在な上、何よりその壮麗さに惹かれたから紹介したかった。でも、相手は貴族なのだし、断っているのだからこれ以上取材依頼を出すのも失礼か。とは言え、返答をしてくるのはいつも秘書。もしかして、依頼自体、城主にまで行っていないのでは。諦めるのは直接本人に断られてからで遅くない、と。思い立ったが吉日、夏妃はイギリスへと旅立った。以前の旅行でも世話になったホステルにて、ブレイクリー氏を張ることにしたのだが、不動産会社のCEOでもあり、随分と多忙な人物らしい。しかも、現在は伯爵の子息が家督を継いでいるそうで、城に帰って来るのは2,3週間に一度。それも数日のみの滞在なのだとか。周期によってはかなり待たなくてはならない。宿泊費を考えるとキツイが、一先ず当主に直に会わなければ。それから更に一週間ほど経ち、漸く現当主と遭遇できた夏妃。その出会いも、城への道で派手に転んだのを目撃されると言う恥ずかしいものだったが、瑠偉と名乗った彼は夏妃の持ち込んだ企画書に目を通し、取材を許可してくれた。予想通り、断られ続けていた取材依頼は彼の耳には入っていなかったようで、苦労はしたけどイギリス迄来てよかったと改めて思った。瑠偉の全面協力によって、随分筆も進み、写真もかなりの枚数を撮れた。そんなある日、夏妃が地元の男性に襲われると言う事件が起き、心配した彼が城に泊まれと進言。幸い、未遂だったのだしと遠慮はしたものの、瑠偉は譲らず、結局世話になることに。共に過ごすうちに、惹かれ合う二人。瑠偉は資産家な上にハンサムな事から、女性に非常にモテ、未亡人のリリアンやら、秘書のアニタから妬まれるも、想いを通わせ、瑠偉と夏妃は恋人同士に。イギリスに滞在して早2ヶ月たった頃、進捗状況は知らせていたと言うのに、関口が心配して警察に通報した挙句、ブレイクリー城にまで乗り込んできて・・・。どうやら関口は、瑠偉が夏妃を監禁していると勘違いしていたようで、自分の婚約者が監禁されていると警察に駆け込んだらしい。当然、地元の名士がそんなことするわけがないと半信半疑な警察官たちは瑠偉から謂れのない誤解だと説明してその場は収まります。だが、貴族相手にこれはかなり拙い。しかも、夏妃を婚約者などと瑠偉はかなり腹を立てていた。彼女の方も瑠偉と交際してる事を関口に伝えたのだが、裏切られたと思ったのか彼はとんでもない暴挙に。何か嫌な男だなと思ってたらまさかの仕返しで、読んでて唖然。ホント、ちっさいわ。書籍化企画が流れそうになるも、捨てる神あれば拾う神あり、別の出版社が名乗りを挙げ、無事に出版に漕ぎ着けます。瑠偉と夏妃も結婚が決まってお終い。終盤かなり駆け足だった印象ですが、トントン拍子に上手く行って良かった。そして、恋のライバルたちに何を言われても揺るがないヒロインの強さよ(苦笑)逆にあの編集の女々しさが際立ってましたが、ざまぁされなかったのが残念。評価:★★★★☆少し、淡々としてる感がある内容なので、好き嫌いが判れそう。
2022.09.01
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