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秋風が冷たく心地よく感じられる。夜は窓を開けて虫の音を聞きながら、足先だけに布団を掛けて眠る。夜風が冷えているのが気持ちよく、酔いが回った身体を洗うように吹き抜ける。窓の外には明るい月が家並みを青白く照らしている。世界はすべて深い眠りに落ちているようだ。酔った頭の隅で、自分はひとりなんだな、と思う。淋しくはあるが、それがあたりまえで、納得するというか、了解する気持ちが、すとん、と胸に落ちてくる。永遠の果てまで行って戻り来るいつもひとりの野の花の露停留する川の緑の濃いときも流れは続き瀬音野に聞く胸の内の熱くもあるか哀しみが夜風の中で獅子の夢見る
2008/09/27
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稲の刈り取り時期が近づくと、田んぼの水を抜く。田舎でもそろそろ田んぼの水を抜いているころか。田んぼに向かう水門を閉ざした後、川を堰き止めていた板が外されて、溜まっていた水が放流される。子供の頃は、その時期子供たちは川に入らず、代わって大人たちが大きな網をもって、鯉や鮒の大物を捕っていた。田舎にはもう何年も帰っていないけれど、今もその光景が見られるだろうか。護岸工事でのっぺりしてしまった川の流れには、もう魚たちの棲む場所は無くなっているかもしれない。木星の公転周期が干支に似る田の水を抜く秋風の中風吹けば石の壊れる音のするミミズの棲み家イモリのねぐら今日いつか またいつか来る コウモリの羽もつ天使 秋の日暮れる
2008/09/20
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口笛が吹けなくなっていた。車を運転しているとき、ラジオから口笛のメロディが流れてきた。曲名は知らないけれど、馴染みあるメロディだったので、ラジオに合わせて一緒に口笛を吹こうとした。けれど、掠れた音がするだけで、少しも口笛にはならなかった。子供の頃は、当たり前のように出来ていた。自転車通学のときには、好きな曲を口笛で吹きながら帰ったりもした。それが、久しぶりに口笛を吹こうとしたら、息が漏れるだけで音が出ない。口笛というものは、自転車乗りや水泳のように、一度身体で覚えたら忘れないものだと思い込んでいた。口笛を吹いていたときの感覚が判らなくなっている。今は、部屋の中や車の運転中に、ひとり口笛を吹く練習をしている。口笛を吹いて呼び込む蛇二匹今年の秋の実りはどうか口笛の音掠れても星明かり蛙の子らは鳴く声持たず
2008/09/13
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各地で集中豪雨が続いている。僕の住む地域も雨が降ったり止んだりしている。夕方に雨が降り、しばらくして止んだ夜は、虫の鳴き声もはっきり聞こえる。蛙の鳴く声も近くに聞こえる。それらの虫達の声は却って夜の静けさを強く感じさせる。母親の実家はものすごく山奥にあった。子供の頃、母親の実家に泊まったとき、山に囲まれた家は虫の声で溢れていた。怖くなった僕は、夜中に泣いて母親を困らせた。山奥にひとり取り残されたような気がした。いま、虫の声を聞きながら、静かすぎる音というものもあるのだと気づいた。秋雨の濡れて静かな綻びが影をもたずに消えてゆく空
2008/09/06
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