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流れては落ちる滝の水を見ていると、心が虚ろになる。水の辿る軌跡を見定めようと目で追うと、それより速く水は落ちて、呑み込まれるように、滝壺の水と混じり合う。猛り立った生き物が、スッと温和しくなるように、滝壺の流れは静かだ。日が翳り迷路のネズミ蹲る記憶違いのあやとりの糸逆さまに鳶が音無く舞い降りる廃線跡のレール赤錆び恋ですか音のみ高く滝壺に落ちる速さを競う雨粒
2008/11/29
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広い公園の真ん中にある芝生に寝転んでいると、ジェット機の轟音のような音が聞こえてくる。公園の外の車の音なのだろう。それが、夜嵐の日の風の音のように低く鳴り続けている。空には名も知らない小鳥が、四羽、横並びに並んで、素早く並ぶ順番を入れ替えながら、僕の真上を北から南に、鳴き交わして飛んで行った。噴水の上りて落ちる淋しさは真白い絹の揺れる煌めき紅葉をして散ってゆく桜の葉ものみなすべて死にたどり着く寝転がる芝生の上を風通る昔の約束ふと思い出す
2008/11/22
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台所の曇りガラスの外側に、落ち葉のように蛾が貼り付いているのが、灯りをつけた台所と外の暗さのコントラストで、影絵のように映る。温水の湯気が手元から立ち上って、外の寒さを感じさせる。木枯らしが弾き飛ばしはしないかと、蛾の影を何度も確認する。何故だかずっとそこにいて欲しいと思う。そんなことは知らないよ。とでもいうように、翌朝、蛾はいなくなっていた。凹凸の半透明の硝子戸を挟んで向かうふたつの命葡萄酒を飲んで腹より温まる機械のような虫の声してアア、アアと鴉が啼けば昼の月今日のこの身もみな過去になる
2008/11/15
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赤信号で止ったとき、屋根から落ちた紅葉が一枚フロントガラスをツーと滑っていった。三週間ほど前には、朝、車を出して走らせた途端に、ヤモリが運転席側の横のガラスに張り付いて、アッと思うまもなく後ろに落ちていった。風に煽られて飛ぶように落ちていったので、車では轢いていないと思う。朝早く、車の屋根で日向ぼっこでもしていたのだろうか。建物の陰になって日は当たらないから、体を陰干しでもしていたのかも知れない。紅葉が山の上より降りてくる紅色の町の静けさ交代の歩哨が映る休戦を守る兵士の帽子にヤモリが停止する車の屋根から落葉がフロントガラスを滑りゆく朝
2008/11/08
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子供の頃、近所にあった食料品店の親爺さんは、無口で、いつも奥さんに尻に敷かれていたような感じだった。太った体を自転車に乗せて、のたりのたりと食料品を配達に回っていた。奥さんにどやされて、渋々配達に回っていた親爺さんの姿は、子供心にも情けなく思えた。そんな親爺さんを、僕はずいぶん軽く見ていた。ある年の祭りの日、僕ら子供たちが遊んでいるときに、親爺さんが少し酔っぱらって来て、僕らに話を聞かせてくれた。死んだ男が仲間を連れて地獄巡りをする話だった。僕らは次第に話に引きつけられて、親爺さんの一挙手一投足に笑い転げた。大人になって落語が好きになって同じような話があるのを知った。志ん生のCDも持っているけれど、志ん生のを聞いても、嘗て聞いた親爺さんの話ほど面白くはない。寄席で聞けばまた違うのだろうけど、親爺さんの方がうまかったような気がする。うだつの上がらなそうな、あの親爺さんの生き生きした声音が、今もはっきりと記憶に残っている。柿の実の照り映える頃音高くパワーシャベルが川掘り返す田舎にも高速道路が貫きて海までの距離五分縮まる廃線のローカル駅に人無くて争い続ける殿様バッタ
2008/11/01
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