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酒を飲んでいつのまにか寝入ってしまった夜明け頃、故郷の田舎の町を飛ぶ夢をみた。本通りの突き当たりにある神社の境内から、一直線に伸びる長い石段を滑るように降りて、鳥居の下を潜り、そのまま空に浮かんだ。家並みを逸れて、田んぼに向かう。田んぼの真ん中には川が流れていて、その上を飛んでいる。鳥の影のように、水面には自分の姿が映っていた。川の中には魚が何匹も泳いでいて、水中の餌を食べるためなのか、魚が身をくねらせるので、時々、銀色の腹が見える。飛んでいる高度は低くて、山の稜線が、まだ目の上にある。くるり、と寝返って空を見ると、青空の中に二つの太陽が両目のように並んで浮かんでいた。雲もないのに、太陽は少しも眩しくなかった。背泳ぎのように仰向けになって、ゆっくり滑るように飛びながら、どこか変だと思っていて、ああ、僕は乱視なんだと思ったとき目が覚めた。僕は近眼だけれど、幸い乱視はない。太陽が二つ見えたからそう思ったのかもしれないが、自分が空を飛んでいることも、乱視ということで納得したような記憶がある。目が覚めた後も飛んでいた時の浮遊感は残っていて、くすぐったいような泣きたいような変な気持ちだった。滝壺に落ちる早さで眠りつく夏の終わりに飛ぶ夢をみる
2008/08/30
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僕の住む町辺りの上空の大気の状態が不安定なのか、今年は夕立というよりも、昼に大雨が降ってすぐに晴れ上がるということが、何度もおきているように思える。晴れた日、店に入ってしばらくして外に出てみると、道路は濡れているのに雨はすでに止んでいるということもあった。気温はそれほど下がらずに、昔飼っていた犬の体臭に似たアスファルトの濡れた匂いが辺り一面に立ちこめていて、ごつい顔した大型犬なのに、気の弱い犬だったロックを思い出した。犬小屋の匂い懐かし気が弱く不細工顔のロックとのこと飛沫飛ぶ夕立止んで陽が射せば働き蟻が苔の水飲む
2008/08/23
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ビールを飲み過ぎて、胃の辺りがきりきりと痛む。吐き気もする。こんなときは、生ぬるい水道水がちょうどいい。胃がきりきりとする度に、コップ一杯の水道水を飲む。浄水器が壊れたので、買い換えた新しいのは水が勢いよく出る。日の当たる縁側で、気の抜けたサイダーをよく飲んでいた子供の頃を思い出すのか、ぬるい水を飲んでいると、なぜか、少し懐かしい気持ちになる。飲み過ぎてぬるい水飲む夕べには蝉時雨降る記憶を覚ます
2008/08/16
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激しい雨が降った後、溝や樋から流れる水音に混じって、すぐにアブラゼミの声が聞こえる。子供の頃、小学校が夏休みに入ると、一日中川に入って魚を追いかけていた。雑貨屋には夏が始まる少し前から、魚捕り用の網が並んでいた。虫捕り網とは違って、柄が太く短くて、赤っぽい焦げ茶色した網の部分が大きかった。大抵夏中遊んだら、網は破れてしまう。泥だらけになりながら、夏中使った網は穴だらけになってしまう。去年破れた網を、木綿糸で繕うのが、僕ら子供の夏の始まりの恒例だった。遠くで鳴くアブラゼミの声を聞きながら、魚捕りするときのことをいろいろ想像するのが楽しかった。魚捕りする夏の日の幻影は乾いた泥を流す夕立缶ビール飲む夕暮れの蝉時雨川底歩くアカハライモリ雨止んで蝉時雨降る夏の日の沼には金の鯉潜み居る
2008/08/09
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同級生に養蜂家の家の子がいた。隣のクラスの女の子だったが、男子からいじめというか、からかわれているようだった。その子のことを、臭いとか汚いとか噂しているのも聞いたことがある。親に言われて、その子の家に蜂蜜を分けてもらいに何度か行った。大抵は母親らしき人が出てきて応対してくれたが、一度だけ、その子が出てきた。蜂蜜を分けて欲しいと言うと、慣れているのか、すぐに家の奥へ入り、しばらくして蜂蜜のたっぷりと入った瓶を渡してくれた。お金を払って表に出ると、空はとても青くて、夏の日射しの中で、家並みがくっきりと見えた。瓶を目の前に持ち上げると、黄金色の液体はきらきらと輝いていた。汗拭いて森のようなる菜園に羽音大きくミツバチは飛ぶ初恋は空気濃くなる緑陰の柔らかな翅持つミツバチの音ナスの花咲く菜園に人もなくミツバチが飛ぶ夏の未明は
2008/08/02
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