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今年もまた、近所で花火が上がるようになった。毎年の恒例だ。アパートの近くで音がする。小さな花火の音が、十分くらい続いてぱたりと止む。ここに住んで随分になるけれど、花火を見たことはない。酒を飲みながら、音だけを楽しんでいる。子供の頃、海沿いの町から二駅以上離れた地元の町の畦道を歩いているとき、ぽんっ、ぽんっ。と何かの弾ける音がした。山と山との間に、川が海まで流れていく切れ目があって、その先にテニスボールくらいの花火が上がっていた。空は薄い紫色をしていて、周りはまだ明るかった。畦道の真ん中に座って、しばらく花火を見ていた。花火が見えてから、少しして、ぽんっ、と音がするのが不思議で、見ているうちに周りは暗くなっていた。けれど、一本に伸びた白い畦道だけは、ぼんやりと浮き上がっているように見えた。散髪をして夏の夜に花開く鏡に映る銀色花火畦道の夕暮れに咲く遠花火静かに絹の舞い降りる町
2008/07/26
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玄関の電気カバーの中は、いつのまにか空になっていた。雀が巣をつくっていた藁がカバーの端からのぞいている。気のせいか、鳴き方の変な雀が、毎朝鳴くようになった。きゅう、ちっ、ちっ、ちっ。きゅう、ちっ、ちっ、ちっ。鳴いているのが窓を閉じていてもよく聞こえる。冷水を飲む初夏の雷鳴は鳥棲む丘を過ぎてはた止む
2008/07/19
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暑い夏だった。子供の頃、川で魚捕りをしていて、大きな鯉を捕まえた。黒い背に金色の腹をした真鯉だった。友達と一緒に捕まえた。バケツに入れて持って帰ると、祖父が見て五百円で売ってくれという。友人たちと相談して、迷ったあげく売らないことにした。売るには惜しい大物だった。その鯉が一日もたたないうちに死んでしまった。腹を水面に浮かべて動かない。そのとき初めて水道の水にはカルキが入れてあるので、魚を入れるなら一日くらい汲み置きしておかないとだめなのだと知った。結局、魚もお金も失ったことになった。盥水日向に置いて初夏の静寂というひとつの形
2008/07/12
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今はもう夜中エアコンが欠かせないが、先週の半ば、熟睡して、朝早く目覚めたとき、夜風を入れるために開けていた窓から雀の声が聞こえた。小鳥の声が段々に大きくなって、開けた窓という窓から囀りが聞こえ、次第に大きくなっていく様は感動的だった。生命が満ち溢れていく瞬間に立ち会っているような気がした。眠りとは靱い力がいるらしい秤の如く熟睡せぬ子
2008/07/05
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