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灯りを消して眠ろうとするとき、虫の音が一斉に耳に響いてくる。その中のひとつの音色に集中していると、水の流れる音にも聞こえる。多くの鳴き声の中で、チロ、チロ、と細い水が流れているような響きに似て、その虫の音だけが浮き上がって、耳に届いてくる。溝を流れる水音のような虫の音を聞いていると、なぜか子供の頃を思い出して、懐かしい温かさが胸に広がる。水音に似て虫の音の止まぬ夜は咲き競う花も眠りに入る
2009/09/26
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電線に一羽、鳩がとまっていて、クルクル、クルクル、と鳴いている。二階の窓からは、金粉を疎らにまぶしたような暗緑色の風切り羽が、陽に照らされてきらきら光っている。電線には雀も列をなして止っている。その群れの間に、鳩は気にもせずに止って、クルクル、と鳴き続けている。雀の方も、まるで鳩などいないかのように、せわしなく入れ替わりながら電線に鈴なりになって止まり、囀り続けている。お互いを無視し合っているというより、お互いの存在に気づいていない風なのが、不思議な気がする。舞い降りて地に棲むものを眺め居る鳥一羽ただ高みより啼く
2009/09/19
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外が薄ぼんやりと白み始めた頃、雀が鳴き始める。虫の音は、まだ絶えず続いていて、ちょうど夜と朝とが一緒に訪れるかのようだ。目を閉じたまま、寝起きの、まだぼんやりした頭で、虫の音と雀の鳴き声を同時に聞いていると、時間が逆さに進んでゆくような錯覚に陥る。きっと、雀はまもなく鳴くのをやめて、虫の音ばかりが耳に残る。その虫の音ばかりが世界から取り残されて、永遠に鳴き続けるかのようだ。そうやって、虫の声ばかりに気を取られていると、いつの間にか、しきりに雀が鳴き交わし、囀りの声は大きくなっている。時間はやっぱり順序通りに流れていて、世界は何ごともなく、いつもの朝を迎える。そのことに少し違和感を覚えながら、寝床の中で、僕はまだ、ぐずぐずしている。永遠の始まり覗く心地して虫の鳴くのを聞き入る夜明け
2009/09/12
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今週、夏を越して初めて窓を開けて寝た。夜中に目が覚めて、ぼんやりと虫の声を聞いていると、週の初めは、一匹の鳴き声だけ大きくて、後は伴奏するように聞こえていた。その虫の音だけ聞き分けられるような気がした。それが、週の終わりにもう一度、目が覚めて聞くと、虫の鳴き声が一斉に押し寄せるように耳に響いてきた。たった数日で、こうも鳴く虫の数が増えているのかと、軽い驚きを感じた。昔の日本人は、僕なんかよりもっと耳が敏感だったろうから、日々の移り変わりをもっと強く感じて生きていたのだろう。虫の音に包まれ眠る秋の夜は昔の人を思いつつ過ぐ
2009/09/05
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