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透明の鈴をそっと振るように、虫が鳴く。眠る前の闇の中で、消え入りそうなその音を、耳を澄まして聞いている。以前のような勢いはなくなったけれど、まだ、虫たちは微かに鳴き続けている。涼しさを通り越して、肌寒ささえ感じる。もうそろそろ眠るとき窓を閉めなければ寒すぎるかも知れない。その代わり、部屋が冷えて来て、布団の温かさをしみじみ感じ、眠りが深くなった気がする。虫の音の絶えゆくときは秋深み月影満ちて風吹き渡る
2009/10/31
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秋のこの季節に思い出すのは、中学生くらいのとき、期末や中間試験の前の日の夜、遅くまで勉強していた頃のこと。勉強し終わって眠ろうと床につくと、決まって、遠くから何かを叩くような、パン、パン、という音が聞こえてきた。砧という言葉を知ったのもその頃だった。その音を聞く度に、妄執に囚われた誰かの怨念が音をたてているように聞こえて、気味が悪かった。通りの突き当たりに、鬱蒼と茂った森の中に神社があって、僕の妄想は、闇の中で柏手を叩くひとを想像していた。新しい靴馴染むまで萩の寺今日散る花は明日は消えゆく
2009/10/24
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開いた窓の下を、ギイギイ、と自転車をこぐ音が通り過ぎていった。夜の闇の中で、その音だけが、人間の意思を持つものとして残り、心は、しばらくその余韻を響かせていた。後はもう、虫の音ばかり。人間的なものの象徴として、自転車の軋む音が胸に残る。人はどういうこともなく、音だけでも、他人の存在を感じることで、孤独を紛らわせることが出来る。多くのいのちが鳴く虫の音と同じくらい、機械的な、ギイ、ギイ、という音に慰められる。萩の花の零れ落ちても夜の道 霧降る里に棲むこと愉し
2009/10/17
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台風の前日の早朝、雀が空を飛びながらせわしげに鳴き交わしていた。寝床の中で、屋根の上を飛び交い囀る雀の声を珍しく思って聞いていた。いつもは電線や屋根の天辺で鳴いている雀が、空を縦横に飛びながら切迫したように鳴いている。気圧の変化を感じて鳴くのか、不穏とでもいうような鳴き声をあげるのが理解できるような、それでもどこか不思議な思いで聞いた。台風の日は窓を閉めていたので雀の鳴き声はよく聞き取れなかったけれど、その次の日の朝はいつものように鳴いていた。せわしげに、でも、穏やかに鳴く声を聞いて、台風が去ったことを改めて実感した。粥を煮る柿の実落とす風吹いて昨夜の夢も忘れ去りゆく
2009/10/10
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真夜中に強い風が吹いて、どうやらその気配で目が覚めたようだ。しばらくぼうっとしていて、風が部屋を通り抜けるのを感じていた。家が揺れるほどの風が吹いて、ああ、僕はこの気配に揺り起こされたのだと思った。外を吹く風はざわざわと音を立てて、外にあるすべてのものを持ち去ろうと強く吹きつけてから弱まり、止んだ。その後は、風が残した、涼しい空気が部屋に満ちて、虫の音を聞きながらもう一度眠りの中に入っていった。空はいつか紺一色に染まりゆき地を這う虫も透明になる
2009/10/03
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