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かぐや姫は僕のキスで泣き止んだが、
まだ濡れてる瞳で見つめられると、切なくなってしまう。
キスだけにしておこうと思うのに。
彼女の体を覆ったタオルケットを引き剥がしたい衝動にかられるけど、
それを隠すように、タオルケットを彼女の顔にまでかぶせてしまった。
「何も見えないよ」
心細そうな声が愛しい。
「いいんだよ。僕がいるんだから。」
自分でも驚くほど、強い調子になってしまった。
肩を抱くとビクッとしたが、
僕がベットの方に引き寄せると、たどたどしく歩く。
足元を確かめながらゆっくりいくから、
まどろっこしくなって、横抱きにした。
お姫様だっこともいうんだよな。
そのまま歩いていき、ベットに下ろした。
彼女はタオルケットにくるまれたままだ。
まるでこれから蝶になるさなぎのようだ。
顔だけ出して、僕を見上げる。
何かを言いたそうな瞳。
でも、なぜか何も言わない。
「どうしたんだい。」
優しく聞いても、首を振るだけだ。
「帰ってしまうんだね。」
コクンとうなずき、横を向いてしまう。
目を合わせるのが辛いのか。
「何か言ってくれよ。
黙ってたら分からないじゃないか。」
ベッドの横にしゃがみこみ、
彼女を強く揺すってしまった。
「何もしてあげられなくてごめんね。」
僕が乱暴に言うから、か細い声になってしまうのか。
そんなことを言ってほしい訳じゃない。
僕の方が泣きたくなってしまう。
「いつまで居られるんだい?」
「満月の夜まで。」
「月の使者が迎えに来るのかい?」
ちょっと皮肉っぽく言ってしまった。
「だぶんそうだと思う。」
かぐや姫にしては頼りない返事だ。
本当に帰らなくてはいけないのかな。
十五夜に帰るなんて、昔のままじゃないか。
「なんとか変えられないのか?」
「無理だと思うわ。」
自分でも無理を言ってるのは分かってるのだが、
このまま引き離されるなんて辛すぎる。
いっそ、彼女と交わって、一緒に死のうか。
そんなことしても、救われないよな。
月の女と地球の男が交わったら死ぬなんて、
あまりにも酷すぎる。
それほど隔たりがあるものなのだろうか。
彼女を見てると、地球の女と変わりないように思えるけど。
もしかしたら本当はエイリアンの姿で、地球の女に変身してるのか?
想像すればするほど、バカらしくなってきた。
そんなことはどうでもいい。
とにかく今は、この目の前にいるかぐや姫と別れたくないというだけだ。
タオルケットの上から抱きしめてしまう。
「離したくない。」
「私だって、離れたくない。」
二人で抱き合いながら、涙ぐんでしまった。
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