MUSIC LAND -私の庭の花たち-

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2006年08月27日
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カテゴリ: 小説
出来たら、 「メビウスの輪」1 から読んでくださると嬉しいです。

Blue hills.jpg

信吾君に美術展に誘われて、ドキッとした。

なんで、私の好きな画家を知ってるの?

東山魁偉は以前からいいと思っていたのよね。

でも、いくら好きな画家でも、

嫌いな人とは見に行かない。

彼となら行ってもいいかなと思ってしまった。

彼に見つめられると、吸い込まれそうで、

ついうつむいてしまう。

私は大人しく見られるけど、

結構芯は強いつもり。

というより殻が固いのかも。

軽々しく返事したくはないけど、

思わず「私で良ければ・・・」と言ってしまった。

待ち合わせの時間より少し早めに行ったのに、

もう彼は来ていた。

いつから来ていたのだろう。

待ってる姿を見たら、胸が苦しくなった。

駆け寄りたい衝動にかられたけど、

抑えて、わざとゆっくり歩いた。

手を振って迎えてくれる彼。

私もつられて応えてしまった。

勿体つけてるわけではないけど、

なかなか飛び込めない私。

「待たせちゃった?」

「今来たところだよ。」

気を遣わせないように言ってくれたのか。

彼の優しさが嬉しい。

「じゃあ、行こうか。」

「うん。」

さりげなく私の手を取って、包み込む。

触れられるのは苦手だけど、なぜか嫌じゃない。

私の方が年上なのに、いたわってくれてるみたい。

守られてるように感じてしまう。

「東山魁偉って、知ってる?」

「好きな画家よ。」

声が柔らかいからかな。

温かい感じがするのだ。

私も穏やかな気持ちになれる。

「東山魁偉が好きだから、来てくれたの?」

「それだけじゃないけど・・・。

あなたこそ、どうして私を誘ったの?」

私が新歓コンパで介抱したから、そのお礼?」

あまり期待しちゃいけないと思うけど、

好意を持ってくれているんだろうとは思う。

「お礼なんかじゃない。」

急に強く言われてビクッとした。

彼はまっすぐに私を見つめるのだ。

目を伏せたけど、追いかけてくる。

握った手に力がこもって痛い。

私が泣きそうな顔で見上げると、

手を離してくれた。

「ごめん、驚かせて。でも、好きなんだ。」

真剣に言ってくれた彼の顔が忘れられない。

「ありがとう。」

思わずそう言ったけど、

他にどう言っていいかわからなかった。

私も彼のこと嫌いじゃない。

というより好きだけど、

そう言ったら、つき合うことになるかもしれない。

以前つきあった時の苦い思い出。

男性恐怖症とまではいかないけど、

触れられることが怖いのだ。

でもなぜか彼に手を握られても

怖くはなかった。

もしかして彼とならつきあえるのかも、

と思っていたら、

「私も好きになりそう・・・」

と言ってしまっていた。






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最終更新日  2006年08月28日 00時19分57秒


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