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続百鬼園随筆(著者:内田百間|出版社:新潮文庫) 書名通り、「百鬼園随筆」の続集。 こちらの方が、屈折が多い。大学をやめるあたり、諧謔味を入れようとはしているのだが、それを上回る、奥底にわだかまった怒りがある。 一番驚いたのは「文章世界入選文」。何となく、文筆で生活をするようなってからの思い出話なのかと思って読んでいたが、そうではなかった。解説を読んで初めて知ったが、十代後半に書いた文章なのだ。それを知って読み返すと、なるほど、若々しさが感じられる面もある。しかし「大晦日の床屋」なんて、中年男の見た風景としても全く違和感がない。若いときからこういう文章を書く人だったのだ。 子どもの時に、素読の先生のところに通わされたことと無縁ではあるまい。 文章の屈折は少なく、前集よりすんなり読めた。 気になった点。 「六菖十菊」(p71)に「りくしょうじゅうきく」とルビがついている。「じゅうきく」ではなく「じっきく」の方が自然だと思うのだが。著者がルビを振ったのか、編集部でつけたのか気になる。 「什麼《どう》も御有り難う様で御座います」《p98》「什麼《どう》も」は、禅から入った言葉だろうか。 解説は、若合《わかい》春侑《すう》という人が書いている。 いろいろなことが書いてあって珍しく役に立つ解説なのだが、「若干十七歳」(p258)には驚いた。せめて「弱冠十七歳」ならよかったのに。
2003.11.14
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とりかへばや、男と女(著者:河合隼雄|出版社:新潮文庫) よんだことのない古典なので、あらすじが紹介されているのはありがたい。凝った物語で、あらすじだけでも感心する。 文学的な価値がどうこうというのではなく、「男」「女」というのは、心の中ではどういうものなのかが語られる。 心理学者として、カウンセリングの経験が豊富にあるのだが、生々しい事例はあえて出さない。 「内なる異性」「美と愛」など、それぞれの章を読んでいるときは、「ほうほう、なるほど」「そうだったのか!」などと思うのだが、こういう本を読んだときの常として、全体を読み終わると、何が書いてあったのか断片的にしか覚えていない。 「物語」というのは、それを語る側、受け入れる側のそれぞれの心に働きかけるものがある、という印象だけが残った。
2003.11.13
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浮世絵に見る江戸の子どもたち(著者:くもん子ども研究所|出版社:小学館) 書名通り、浮世絵から、子どもが描かれているものや、子どもを対象とした双六などを選びだして紹介している。 紹介したものはすべて「くもん子ども研究所」所蔵のものだというから驚く。 見ていると、子どもだけ、あるいは母子という絵ばかりで、父親が登場するものがないのに気づく。 それについては、なんと北山修の解説があって、男が見るものであり、子どもと女の図の子どもは父親の分身である、という説明がある。 絵というのは誇張されたものであり、現実そのままではないが、江戸時代の都市において、子どもがどのような生活をしていたのか、その一端を伺い知ることはできる。
2003.11.12
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大江戸路地裏人間図鑑(著者:岸井良衛|出版社:小学館文庫) 江戸時代のかわら版や随筆集から集めた逸話集。 江戸時代に耳目を集めた市井の事件あれこれで、著者は岡本綺堂の弟子。 七不思議や遊女・高尾については諸本の比較研究にもなっている。 ただ、残念なのは、それぞれの話の出典が一つ一つ明記されていないこと。 読み物としては面白いのだが、もっとよく調べたい、という人に対しては不親切。 とはいっても、著者はすでに故人なので「あとがき」の出典一覧の中から自分で探すしかないことになる。
2003.11.09
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ひかりごけ(著者:武田泰淳|出版社:新潮文庫) 「流人島にて」「異形の者」「海肌の匂い」「ひかりごけ」 物語の展開で読ませる小説ではない。 短期間の、凝縮された、濃厚な時間を描く小説集だ。 特に「ひかりごけ」は、何があったのか最初にすべて語った上で、戯曲の形でそれを描いてみせる。「何が書いてあるか」ではなく「どのように書いてあるか」が重要だという見本だ。 「流人島にて」は笹沢佐保の「木枯し紋次郎」シリーズの第1作「赦免花は散った」を思い起こさせるが、関連があるのかどうかはわからない。おそらくないのでは。 四作に共通するのは、いずれも「閉ざされた空間」を舞台にしている、ということ。 「流人島にて」は孤島、「異形の者」は、ある宗団の修行者集団、「海肌の匂い」は、地理的には他の村と隔絶しているわけではないが、「共産村」と呼ばれる独特の村、「ひかりごけ」は、遭難した船乗りたちがたどり着いた小屋。 「ひかりごけ」の場合は、小屋が舞台といってもいいのだが、最初に「私」がひかりごけを見る洞窟の中ですべての物語が行われると考えてもいい。
2003.11.07
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