愛し愛されて生きるのさ。

愛し愛されて生きるのさ。

2004.05.10
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2003年制作の日本映画。
監督は『バタアシ金魚』『きらきらひかる』などの松岡錠司。
主演は妻夫木聡。


こうしてクロは生徒や教師たちに愛され幸せに暮らすが、それでも別れの時はやってくる…。


正直に言おう。ボロ泣きしました。
とにかく犬が可愛い。可愛すぎてズルい。
そんな犬がメインの映画なんてある意味反則だが、それでもこの映画は実に叙情的で暖かくて自然と涙が出てくる。

この映画は完全なフィクションではない。
1961年から長野県松本市の高校に住み着いた実在の犬・クロをモデルにしているのだ。
この映画のシーンにもあるように、クロは職員会議に出席したこともあるほど、皆に愛されて過ごした犬なのだ。


高校生たちの友情・恋愛・別れといった人間ドラマが描かれつつ、そこにクロが絡んでくるのだ。

妻夫木聡演じる亮介と、新井浩文演じる孝二は無二の親友である。しかし同時に伊藤歩演じる雪子をめぐるライバル関係でもある。
受験を間近に控えたある日、そんな友情関係が崩れてしまう事件が起こってしまう。その事件によって、精神的に追い詰められた雪子を救ったのはクロだった。

このシーンが実に秀逸だ。
自殺を考えて校舎の窓から飛び降りようとする雪子を思いとどまらせようとするかのように小さく鳴くクロの姿に泣けて泣けて仕方なかった。

『さよなら、クロ』は単なる動物モノではなく、クロに関わる人間ドラマもしっかりと描かれていて、そのバランスがちょうど良い。
昭和の長野ののどかな情景がストーリーと相まって、懐かしくて何となく落ち着く映画でる。

クロは10年以上高校に住み着いて、生徒たちに様々な影響を与えていく。
しかしそんなクロも年には抗えなかった。
高校を卒業して獣医になった亮介によって、病気が発見されるのだ。
そんなクロを救うために、在校生賢治たちは一致団結してある行動を取る。


こういう「対立している人間が、何かのために心を1つにする」というストーリーは、映画としては常套手段であるが、でもやっぱり観ていて感動してしまう。
みんなこういうのに弱いんだよな。

ラストで、クロとの別れの時が来る。
クロを長年可愛がってきた、井川比佐志演じる用務員は優しくクロに言葉をかける。
井川比佐志はこういったしみじみした芝居が実に巧い。


たった2時間の映画だが、観ている私もずっとクロと過ごしてきたかのような思いに駆られてしまう。
それほどまでにクロの存在感が際立っている。

映画としては基本的というか古典的な手法であるが、その分骨組みがしっかりしているし、泣かせどころもきっちり押さえている。
このような題材は古典的な方法で描いたほうが、より観るものの心を捉えるのだろう。

ラストで、校長役の渡辺美佐子がクロに捧げた詩が印象的だった。
私は詩という文学に対してあまり心魅かれたことがないのだが、韓国の詩人・尹東柱(ユンドンジュ)が書いたこの『空と風と星と詩』という詩に強く魅かれた。

 死ぬ日まで空を仰ぎ
 一点の恥辱(はじ)なきことを、
 葉あいにそよぐ風にも
 わたしは心痛んだ。
 星をうたう心で
 生きとし生けるものをいとおしねば
 そしてわたしに与えられた道を
 歩みゆかねば。
 今宵も星が風に吹き晒される。

★★★★★





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最終更新日  2004.05.16 02:31:01
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