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2008.08.25
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「俺では・・・力が足りない。自分が年を取ったら神が人生に入ってくると思った。・・・だが違った。神を責めはしない。」

ジョエル&イーサン・コーエン両監督は、言わずと知れたご兄弟である。
この二人の紡ぎ出す作品に秘められたテーマは、“この世の絶対悪”である。
作品全体を通して、砂漠のように枯渇した世界観が広がり、そこに夢や希望などのロマンは存在しない。
絶望的なまでにディープで、現実的で、神の存在を打ち消した普遍的な人間悪を表現しているのだ。
「ノーカントリー」は、そういう意味でこの世の絶対悪と真っ向から対峙した作品かもしれない。
生活の一部として殺しを継続する冷酷非情な行為は、ごくごく淡々としていて、むしろ超自然的だった。
このように、あまりの冷酷さをクローズアップする際、場面を盛り上げるためのBGMなんていらないのかもしれない。


1980年のアメリカ・テキサス州西部が舞台となっている。
狩りに出かけたモスは、偶然にも殺人現場に遭遇する。
そこには数台の車が放置され、銃撃戦の末、絶命した数人の死体が転がっていた。
モスは警戒しながらトラックの荷台を調べると、そこには大量の麻薬が積まれていた。

どうやら麻薬取引のこじれからこのような結果に至ったと推測された。
トラックの運転席に、すでに虫の息だが生存者がいた。
そのメキシコ人は「水をくれ」とモスに言う。
その場では「あいにく水はない」と答えたものの、帰宅後その瀕死のメキシコ人のことが気にかかり、水を持って現場に戻るモスなのであった。

殺し屋シガーが、砂漠の一本道で車を停車させていると、人の良さそうな農家のおじいさんが通りかかって声をかける。
「困った時にはお互い様」的な精神が漲っているわけだ。
ここでは、シガーがおじいさんに手をかけるシーンは出て来ないが、おそらく殺したであろうことが想像できる。

さらに、大金を持って逃走したモスを追い詰め、殺害したところでは終わらず、そのモスの妻の居所まで追及するシガー。
ここでもモスの妻を殺す場面は出て来ないが、やはりそれが想像できるのだ。
この凶悪な犯罪をここまで無慈悲に表現するのは、やはり監督の力量とも言える。
人物の異常性と言うより、犯罪そのものが日常的なまでに軽薄な行為になりつつあることに警鐘を鳴らしているのだ。
本作で殺し屋シガーを演じたハビエル・バルデムは、アカデミー賞助演男優賞を受賞している。

「ブラボー!!」

2007年(米)、2008年(日)公開
【監督】ジョエル&イーサン・コーエン
【出演】トミー・リー・ジョーンズ、ハビエル・バルデム

また見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。
See you next time !(^^)





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最終更新日  2008.08.25 06:20:02 コメントを書く
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