吟遊映人 【創作室 Y】

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2010.08.01
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カテゴリ: 映画/ヒューマン
「当時まだ未来は・・・南アの未来はまだ闇の中だった。だが世界中の人々が歌う声に耳を傾けているうちに、私は南ア人の誇りを感じた。国に尽くそうという意欲が芽生えた。持てる以上の力を引き出されたのだ」
「(その曲は)何という曲ですか?」
「“神よアフリカに祝福を”だよ。とても士気を高める曲だ」


本作を手掛けたのはクリント・イーストウッド監督である。
往年のスターと言えども、ハリウッドでは既に長老格に当たる。
このクリント・イーストウッドという人は、60年代にイタリアの巨匠セルジオ・レオーネ監督との出会いにより、その才能を開花するのである。
いわゆる“マカロニ・ウェスタン”と呼ばれるイタリアで制作された西部劇で、代表作に「荒野の用心棒」や「夕陽のガンマン」などがある。
それらのレオーネ作品の大ヒットにより、本国より先にヨーロッパで一躍脚光を浴びることになったのだ。
その後、70年代になって本国アメリカにおいて、言わずと知れた「ダーティーハリー」シリーズで大ブレイクするわけだ。
余談はさておき、そのイーストウッド監督の素晴らしいところは、人が多角的に自己分析を遂げたプロセスをスクリーン中に垣間見せる点であろう。
それは格調高く、哲学的でさえある。20100801b
華やかさと娯楽性を主とした昨今のハリウッド映画では、なかなかお目にかかれない代物である。

マンデラについては、「マンデラの名もなき看守」などの優れた作品が過去に公開されており、世界史の教科書には載っていない人物伝を学習することが出来る。
本作「インビクタス」と併せてご覧いただければ、さらにマンデラ像を掘り下げていくことが可能であろう。

1994年、南アフリカ共和国では、黒人初の大統領が誕生した。
ネルソン・マンデラである。
マンデラは南ア代表のラグビーチームであるスプリングボクスを見て、あまりに弱小だったため、チームの主将であるフランソワ・ピナールをお茶に招く。
ラグビーはもともと上流階級の、とりわけ白人のスポーツとされて来たことから、黒人の間では非常に不人気な存在であった。
そこでマンデラは、このラグビーチームが「白人と黒人の和解と団結の象徴になる」ように、ピナールを鼓舞、そして激励するのだった。

ネルソン・マンデラに扮するのはハリウッドの重鎮、モーガン・フリーマンである。20100801c
この役者さんの知的で紳士的で、しかも内なる情熱が沸々と湧き上がるような演技は見事であった。
本作を鑑賞した吟遊映人の友人は、マッド・デイモンのこれまでとは違った重厚な演技に脱帽したと、べた褒めであった。
無論、吟遊映人も同感である。

1995年のラグビーワールドカップ決勝戦は、南アが世界に向けて発信した自国の誇りであったに違いない。20100801d
その証拠に、ニュージーランド代表のオールブラックスは強豪チームであったが、見事な連携プレーで南アのスプリングボクスが勝利したのだ。
ノーサイドの笛が鳴った時、スタジアム中の、いや南ア中の観衆が一体となり、狂喜乱舞して自国を祝福する。
この模様は、ぜひともDVDにてご堪能いただきたい。
情熱的で活気ある南アの風に吹かれることだろう。


【監督】クリント・イーストウッド
【出演】モーガン・フリーマン、マッド・デイモン

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最終更新日  2013.12.06 13:30:11
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