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2010.12.09
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カテゴリ: 映画/SF

「そうよ。私は麻酔係でこの子が名外科医よ」
「5歳だろ?!」
「(いいえ)9歳よ。でも4歳の時からやってるの」

今年はつくづくSF映画が充実していると思う。
とにかくしっかりとしたテーマに基づき、人類の近未来のあり方を問うている作品が多く、どれも秀逸なのだ。
風刺を越えたナンセンスは、実にSF的で、小説の世界観を映像の域まで見事に広げている。
人情とビジネスの狭間を、器用に割り切れなくなった人間が、世の中から追われる身となっていく姿など、あまりにも冷酷な資本主義の行き詰まりを想像せずにはいられない。
人間の命さえも金で買うことのできる社会になった時、果たして人類に命の重さなどを説く倫理観など、存在し得るのであろうか?


この人工臓器の販売は、アメリカのユニオン社が担っており、莫大な利益を上げていた。

高額な人工臓器は、一括で支払えない患者のために、ローン返済が可能となっていた。

だが万が一、支払いに遅延が生じた場合、回収人を差し向け、生きている人間から容赦なく臓器を回収するのだった。
20101209b

この作品のポイントとなるのは、やはり主人公レミーが、人工臓器の回収中に不慮の事故に遭い、心臓の損傷を受けてしまうところであろう。
このことにより、それまでレポ・メンとして鬼のような仕事人だったレミー自身が、人工心臓を取り付けられたことで負債を抱える身となってしまうのだ。
皮肉なことに、自分がレポ・メンに追われる身となり初めて恐怖感や絶望感を思い知らされるくだりは、この作品の核心部であろう。
作品は、たとえそれがビジネスであろうと、割り切ることのできる合法的殺人など存在してはならないのだと主張している。
傾きかけた人類の未来には、暗澹とした世界がはびこるのが関の山なのだ、と訴えているものだろうか?
いや、吟遊映人はそうは思わない。
人類崩壊の予感に反して、純粋に平和な世の中を実現するために、一体我々に何ができるだろうかと、本作は警鐘を鳴らしているのだ。
我々は常に、高雅な文明に対して客観性を保ち、生命を脅かす権力を真っ向から見据えなくてはならない。

※レポゼッション・メン・・・人工臓器の回収人の意。
20101209c

2010年公開
【監督】ミゲル・サポクニック
【出演】ジュード・ロウ、フォレスト・ウィテカー

また見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。





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最終更新日  2010.12.09 15:16:33 コメントを書く
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