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2010.12.17
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カテゴリ: 映画/ヒューマン

「80年代が最高よ」
「そう、ガンズ・アンド・ローゼズ」
「モトリー・クルー、デフ・レパード」
「でもニルヴァーナの登場で・・・」
「楽しさがぶち壊しよ」
「ああ、90年代は大嫌いだ」

昔、デパートの屋上などでヒーローモノのショーが催されたものだ。
正義の味方が悪い奴らをやっつけて、それを見ている子どもたちが大喜びするという、お約束のあれだ。

意外に仲良しだったりして、「この後、一杯どうだい?」なんて会話が飛び交っているに違いない。
本作「レスラー」も、プロレスラーたちの内幕をドキュメンタリータッチで描いたヒューマン・ドラマである。
リングの上ではいかにも憎々しげに振る舞う悪役レスラーも、一たびリングから降りて楽屋に戻ると、ヒーロー役レスラーと抱擁し、「お疲れさま」と言い合って互いをねぎらうのだ。
レスラーにとってリングは完全に舞台であり、観客を興奮させ、夢中にさせるためのエンターテインメントなのだ。
そういう大イベントが、レスラー一人一人の体を張ったショーであることに気付いてしまった時、我々はその勇姿に悲哀さえ覚えるであろう。
本作「レスラー」は、他に拠り所がなく、ただレスリングをするしか能のない男の生き様を淡々と追うもので、ヴェネツィア国際映画祭において金獅子賞を受賞している。

80年代、プロレス界では大人気を博したランディも、すでに50歳を越えていた。
現在は、生活のためにスーパーで働きながらレスラーも続けていた。
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一人身のランディの楽しみは、風俗店に出かけ、馴染みのストリッパーであるキャシディと一杯飲むことだった。
そんな折、試合直後、ランディは突然の吐き気をもよおし、意識を失う。
ランディは心筋梗塞で、心臓のバイパス手術を受け、医師からはレスラーを引退するようにとドクター・ストップをかけられるのだった。


ランディ役に扮したミッキー・ロークも、実際に80年代はそのセクシーな容姿と出で立ちが世間で持て囃され、セックス・シンボルとしてハリウッドに君臨していたのだから。
それがいつ頃からだろう、ミッキー・ロークの人気は、まるで潮が引いていくように話題にも上らなくなってしまった。
本作で久しぶりにミッキー・ロークを目の当たりにした時、正直、昔の彼の洗練されたカッコ良さからは遠くかけ離れ、別人かと思ってしまった。
だが、彼の歩んで来たこの20年の月日と、主人公ランディとがオーバーラップし、作品は見事なまでの出来栄えとなって完成された。
ミッキー・ロークが役者人生全てをかけ、渾身の演技で望んだ役柄だからこそ、そこには嘘がなく、真実が見えた。
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我々は一様に年を取る生きものであることを忘れてはならない。
この作品は、我々人間の越えられない本質をえぐるように表現した、最高のヒューマン・ドラマであった。
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2008年(米)、2009年(日)公開
【監督】ダーレン・アロノフスキー
【出演】ミッキー・ローク、マリサ・トメイ

また見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。
See you next time !(^^)





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最終更新日  2010.12.17 08:04:42 コメントを書く


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